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2018年3月20日 2018年3月英国高等教育及び学術情報

(1)英国大学長の95%が自身の給与委員会に出席可能

 2月14日、大学組合(UCU:University and College Union)は、英国の大学長の95%が自身の給与額を定める給与決定委員会の委員であるか、若しくは給与委員会への参加が許されているということを発表した。4分の3の大学機関は給与決定の全議事録の公開をしないとしている。

 この結果はCUCが2016/2017学事年度における大学トップの給与・手当及び透明性について検討している一環で公表された。CUCが158機関にそれぞれの給与委員会(学長の給与の決定権がある)の構成メンバー及び最新の議事録の公開を求めた。

 給与委員会に学長がメンバーとなっているかの質問に対して、15大学は返答を避け、1大学は給与委員会の存在を否定した。回答した大学のおよそ半分(47%)は学長もメンバーであることを認めた。7大学が学長はメンバーではなく、委員会に出席はしていないと答えた。

 89大学(55%)が議事録の提出に同意したが、40大学(25%)のみが最新の未編集の議事録を送付してきた

来週、14日間の職員のストライキが予定されている61大学の中でたった2大学のみが、学長は委員会や会議に出席が許されていないと答えている。

 近年の学長給与の上昇率はめまぐるしく、2005/2006学事年度の平均は£165,105(年金も含め)であったのに対し、10年後の2015/2016学事年度は56.2%も上昇し£257,904となった。

円換算:£1=148円

https://www.ucu.org.uk/article/9326/95-of-UK-university-heads-could-attend-committee-that-sets-their-pay?list=1676

 

(2) 首相が18歳以降の教育の見直し着手を発表

 2月19日、教育省(DfE:Department for Education)はMay首相が18歳以降の教育の在り方の見直しをすることを発表した。教育の質の向上、選択肢の拡大及び高等教育が学費の価値に見合うのかということが中心課題となる。

 恵まれない環境からの高等教育進学率等を含め、若者の進学率の記録的な高さにより、英国の高等教育システムは世界的に認知されている。現在も整備は進められており、Tレベルといわれる16歳以降の技能教育において既存の高等教育に匹敵するような高等技能資格の整備や、アプレンタスシップ制度(見習い制度)を改革することで将来必要な技術を提供していくこと等に取り組んでいる。

 今まで具体的な改革を行なってきたにもかかわらず、現在の18歳以降の教育制度は思うように機能を果たしていない。今回の再検討では、質の高い技術・専門職と学術の間にも相互に橋渡しができるようにすることで、学生や納税者は金銭的価値を見出すことができるようになり、また雇用者は必要な熟練労働力の確保が可能となることを目指す。

 又May首相は技術資格より学術を重んじるという「時代遅れな態度」に警告し、今回の再検討で「あらゆる角度から18歳以降の高等教育を見直し、継続教育と高等教育のあってはいけない境界線を取り除き、双方が統合したシステムを構築する」と宣言した。

 議長にはPhilip Augar 氏が任命され、また専門家委員会は18歳以降の教育機関、産業界、学術界など幅広い分野からの専門家により構成されることとなる。Philip Augar 氏は、著名な作家であり、元教育省の非業務執行取締役であった

議論される4つの重要な分野:

  • 選択

18歳以降の若者の将来展望のため、異なる職種の給与や必要資格など様々な情報を提供していくことで、それぞれに適した質の高い学術や技術、専門職へ導く。

  • 金銭的価値

学生や卒業生がどのように学費を工面しているのか、18歳以降の高等教育の奨学金申請について透明性を確保し、どのような場合でも高等教育への道をさえぎらせない。

  • 門戸を広げる

全ての環境からの若者が18歳以降の教育に進学、卒業することを可能にする。恵まれない環境からの学生はどのように政府、大学などから追加資金の援助を受けているか調査する。

  • 手に職

新しい教育システムは雇用者の需要に見合う技術を確実に提供することで、将来の保証となる。これは英国経済の強化と政府が推し進めている産業戦略の実現には大変重要なことである。

報告書は中間報告書が提出された後、2019年初頭に最終的報告書が発表される予定である。

https://www.gov.uk/government/news/prime-minister-launches-major-review-of-post-18-education

【メディアの反応】

○BBC News  

教育システム見直しを発表したMay首相は、「学費の廃止は“税率の引き上げと大学の定員数の制限”に繋がるため考えていない」と述べている。又「世界でも最も学費が高いシステムであり、これが学部の質と伴っていないと述べている」

イングランドの学費の現状:

  • 年間学費は£9250
  • 前払いをしなくてもいいが全額借用可能。
  • 生活費のローンも利用が可能
  • 恵まれた学生が両親からの援助があると仮定して、恵まれない環境の学生は生活費を多く借りることが可能
  • 学生ローンの利率は1%
  • 現在返済開始は年収が£21,000から。2018年4月から年収£25,000に引き上げ
  • 返済期間が30年を過ぎると返済金は抹消される。
  • スコットランド人のスコットランドの年間学費は無料
  • 北アイルランド人の北アイルランドの年間学費は£4,030
  • ウェールズ人のウェールズの大学の年間学費は£9,000、と優遇された生活費援助がある。

http://www.bbc.co.uk/news/education-43106736

円換算:£1=148円

 

(3)大学担当大臣、学生局成立のスピーチ

 2月28日、教育省(DfE: Department for Education)は、大学担当大臣のSam Gyimah氏が新しい高等教育規制機関である学生局(OfS: Office for Students)の設立総会に出席し、“レーザー光線のように学生に焦点を当てる”と当局を称えたことを伝えた。

 大学機関はかつてないほどに監視されている状態であるが、担当大臣はOfSの設立が「新時代― 学生の時代」の到来を意味すると語り、各大学機関に対しこの新時代に乗るように呼びかけた。また、OfSは学生の利益を追求することに重点を置いて活動することに期待していると述べた。

 設立総会では「OfSの新しい構想--高等教育の青写真」が発表され、OfSの設立は四半世紀の中で最も大きな規制改革として位置づけられた。この非常に現代的な構想により、世界クラスの大学は将来にわたってより高い基準への挑戦をし続けることが可能となるであろう。

 大臣の演説では、「大学はいかに学生の利益を保護し、どのように社会対する義務を果たしていくか」などを含めた高等教育機関のビジョンを発表した。

 OfSは、2018年4月よりイングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)と公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)が合併して高等教育の単一規制機関となり発足する。

https://www.gov.uk/government/news/minister-welcomes-accountability-revolution-in-higher-education

(4)産業戦略チャレンジ基金へのプロジェクト提案募集開始

 2月28日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省は、イノベートUKが産業戦略チャレンジ基金で支援するプロジェクトの提案の募集を開始する旨発表した。

 産業戦略チャレンジ基金により第三次産業革命を引き起こす産業分野を見極め、英国を、現代社会の課題解決に取り組む分野で世界をけん引する国家に導くことを目的としている。£10億が第一次基金として配分される。更に£7億2,500万が2018-19年の第2次基金として配分される予定である。

 プロポーザルは政府の産業戦略の4つのグランドチャレンジに沿ったものでなければならない。

・AI及びデータエコノミー

・クリーン成長

・移動に関する将来像

・高齢化社会のニーズ

 プロポーザルは、学術界及び産業界の最良のアイディアを組み合わせたもので、英国の生産性や経済成長に具体的に貢献するアイディアでなくてはならない、とされている。

 2018年3月18日に説明会を行い、4月18日が締切日。現段階では提出される内容にだけ関心がある。どのように最終選考するか後日発表予定である。2019年初頭を予定しており、同年4月から投資予定である。

円換算:£1=148円

https://www.gov.uk/government/news/industrial-strategy-challenge-fund-tell-us-what-to-support

 

(5)QS 大学学部別ランキング2018

 2月28日、Quacquarelli Symonds (QS)社はQS University Ranking 2018学部分野別を発表した。

 今年の学部別ランキングでは新たに古典学(Classics and Ancient History)と図書館・情報学(Library and Information Management)の分野が追加された。評価指標は学術評価、雇用者からの評判、被引用論文、Hインディックス(生産性と学術者の影響力)である。

芸術・美術 (Arts & Humanities) 考古学、建築学、文学、哲学等

工学・技術 (Engineering & Technology) コンピュータ科学、科学工学、数学等

生命科学・医療  (Life Science and Medicine) 生物学、医学、薬学、獣医学

自然科学 (Natural Science)化学、数学、物理学、環境科学、地球海洋学等

社会科学管理 (Social Science and Management) 会計/財務学,法学、人類学等

 

https://www.topuniversities.com/subject-rankings/2018

【メディアの反応】

○Guardian

 英国の大学は10学科でトップの座を獲得しているが、工学・技術分野は芸術・美術分野と比べてランクを下げている。またランキングの3位以内で3分の1を占めているが、それらは芸術・人文学分野に集中している。

 英国の大学はEU離脱に直面しているが、その中で復活力を示している。QSの研究部長Ben Sowter 氏は「英国とEU間の研究プログラムやEU離脱後の学生の流動性など心配材料はまだあるが、今回の結果は楽観的であった。」と述べた。

 英国の7つの大学が10領域で上位を占め、University of Oxfordが4学科(解剖学/生理学、考古学、英語英文学、地理学)においてトップを占めた。これはトップになった学部が1学科以上ある3つの大学のひとつであるということである。他の2大学はHarvard University とMassachusetts Institute of Technology(MIT)で、前者は14学科、後者は12学科でトップであった。

https://www.theguardian.com/higher-education-network/2018/feb/28/uk-universities-stronger-in-arts-and-humanities-than-science-rankings-suggest

 

(6)ホライゾン2020への英国の対応

 3月5日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省は英国のEU連盟離脱後のホライゾン2020における英国の立場の概要を発表した。これは昨年12月に英国-EU間で第1段階交渉を合意した共同報告書を基にしているものである。

 英国のEU連盟離脱後も、MEF2014-2020*により実施されているプログラムに引き続き参加できることとなったので、英国政府は英国の学術関係者に対し、引き続きホライゾン2020に積極的に参加することを、以下の理由により推奨する。

  • EU連盟離脱の時点までは英国はEU連盟のメンバーの一員であり、ホライズン2020の参加資格を保持している。
  • 英国及び欧州はホライゾン2020実施期間中の英国の参加資格に変わりはないことを英国EU離脱の第1段階交渉で合意した共同報告書においても確認している。
  • もしも離脱に向けた共同報告書が合意に至らなかった場合であっても、ホライゾン2020への参加資格については政府が保証している。

 ホライゾン2020は英国サイドにも、また欧州サイドにも多くの利益をもたらしてきた。27のEU諸国にとって英国はトップ5の連携相手であり、38,000を超える提携ができている。英国の連携国トップ5はドイツ、スペイン、イタリア、フランスそしてオランダとなっている。プロジェクトへの参加数は、英国はドイツに次ぐ第2位となっており、英国の研究者たちが受けてきた支援額は全体の15%で€40億となっている。

 英国政府がホライゾン2020への支援を引き受けたことにより英国のビジネス及び大学は更なる保証が得られたことになる。英国のEU連盟離脱前に採択されたプロジェクトは、離脱後であってもプロジェクト実施期間中はその実施が保証されることになるので、ビジネス関係者、大学関係者は自信をもってプロジェクトに応募してほしい。

 又ホライズン2020に続く新たな事業に関して英国は大変前向きであることを共同報告書に綴られているが、現段階で判断するのは時期尚早であることも述べられている。

*MFF20142020(多年次財務組み:Multiannual Financial Framework):EUとしての政策に長期計画性を持たせ、歳入以上の支出をさせない手段。EUの政策の優先度を十分に考慮した計画性ある予算を組むため、最低5年間にわたって(現行は2014年~2020年の7年間)、毎年の予算の上限額を設定するもの。EUの基本条約に規定されているMFFのかつての重要分野は、単一市場形成やユーロ導入、拡大などであったが、2007年~2013年からは持続可能な成長や競争力向上・雇用創造が重要課題となった(http://eumag.jp/feature/b0117/

円換算:€1=131円

https://www.ukro.ac.uk/authoring/public/Documents/uk_participation_h2020.pdf

 

(7)高等教育中退率の報告

 3月8日、高等教育統計局(HESA: Higher Education Statistics Agency)は高等教育機関において2年目に進学する前に中途退学した者の割合を発表した。これは英国の高等教育の成果を客観的に示す目的で行なわれた。この統計報告を作成するにあたり、HESAは入学当初の目的とは異なっていても資格獲得のために学業を継続、もしくは異なる学科に移っても同じ機関に在籍し続けた学生については在学学生と定義した。

 

【英国出身フルタイム学生における英国内各国の大学の中途退学者率】

full_timer_dropouts.docxをダウンロード

資料:HESAより

https://www.hesa.ac.uk/news/08-03-2018/non-continuation-summary

 

【メディアの反応】

○Guardian

 高等教育機関で12ヶ月以上在籍が継続しなかった中途退学者率は3年連続で上昇している。イギリスにおいて2015年に高等教育機関に入学した学生のうち、初年度中に26,000人中退したことがわかった。各機関間でも結果に大きな違いが見られるが、中途退学者が多い機関では5人中1人が脱落している一方で、Cambridge Universityでは退学率は1%以下であった。

 最新の2015/2016学事年度のイングランドの大学における中途退学者率は6.4%で、2011/2012学事年度の5.7%より上昇傾向にある。

 専門家はこの原因として、近年の高等教育機関への入学者の増加と、常に十分なサポートが受けられないという学生の立場の変化を示していると分析している。

 しかしながら通常、中途退学者の多くが恵まれない環境の出身者であるが、その率が減少しているという吉報もあった。

 London Metropolitan Universityの中途退学者率は19.5%と高く2年に進級する前に退学するものが1130人中220人におよぶ。

 イングランドの中途退学者の上昇傾向がある一方、スコットランドの大学在籍率は英国の平均を19年ぶりに上回った。

 公正機会局(OFFA: Office For Fair Access)のLes Edbon教授は「大学進学率の低い地域から高等教育機関に進学した学生の中途退学率の減少を喜んでいるが、たったの0.1%の減少は非常に低い。又、成人学生の中途退学率も引き続き上昇している。これは個人の能力が認められなくなるだけでなく、雇用者は従業員のスキルアップのためにも再教育を受けさせる必要がある、とされているので問題である。新しい高等教育規制局である学生局(OfS: Office for Student)は、学生生活の継続と成功に焦点を当てることを約束した。その約束は守ってもらい、すべての学生のために持続的な改善へと推進することを願いたい」と同氏は語った。

 又大学担当大臣のSam Gyimah氏はこの報告を受けて「これまで以上に若者の高等教育進学率が高くなり、多くが学位取得をしている。しかし我々の世界レベルの優れた高等教育システムの恩恵を一人でも多く受けてもらうためにまだまだやらなければならないことがある。すでに中途退学率の引き下げのため、教育の質向上を図るTEFなどを実施してきている。また透明性の義務を導入することで中途退学数、学業成績などを性別や人種や社会的背景によって区分されないよう、公開することを計画している。」と述べた。

https://www.theguardian.com/education/2018/mar/08/university-drop-out-rates-uk-rise-third-year

 

(8)政府が高齢化社会研究に£3億投資

 3月12日、ビジネス・エネルギー産業戦略大臣であるGreg Clark氏は、将来の英国を築くためのイノベーションと新技術開発のため競争的資金として、£3億の投資を発表した。

これは

  • 新研究拠点においてAI(人工知能)と新技術により、患者により良い診断をすることの支援
  • 病気の早期発見と新しい画期的な治療方法の開発のために、バイオバンクの500,000人のボランティアのゲノム解読データが利用される。
  • 英国認知症研究所(DRI:UK Dementia Research Institute)に新たな拠点のため追加投資として£4,000万を投資
  • 自宅においてなるべく長く暮らせるよう、独居対策や自立の増加をはかるための新商品やサービスの開発にも投資する。

 

 近い将来の高齢化社会のチャレンジに備えるため、英国の世界クラスの研究と産業投資が新しい技術の開発を進められるよう、政府は産業戦略チャレンジ基金(ISCF : Industrial Strategy Challenge Funding)により£3億以上を投資することとしている。

 現在英国では100歳を迎えている人は15,000人いるが、将来は1,000万人以上が100歳を迎えると予想されている。高齢化社会は世界的な現象であり新しい技術、サービスの提供が必須となっている。

 政府の£3億以上の投資は“健康的な老いプログラム”に£9,800万、“早期診断と精密医療のデータプログラム”に£2億1000万当てられる。

https://www.gov.uk/government/news/government-announces-300-million-for-landmark-ageing-society-grand-challenge

 

(9)学科別の評価

 3月12日、教育省(DfE; Department for Education)の大学担当大臣Sam Gyimah氏は、大学の学科ごとに教育の質、学習環境、卒業後の結果などを金銀銅で評価した結果の実施を発表した。この試みは世界初である。これは教育評価と長期的研究評価制度(TEF: Teaching Excellence  and Student Outcome Framework)から派生したもので、政府の狙いは以下のとおり。

  • 大学進学希望者に各大学の学科比較を可能にし、大学教育の最大限の有効利用を図る。
  • 学科に光を当てることで、どの大学が質の高い教育を行っているか、どの大学が順調に運営されているか、又研究の評価が頼りになるのかを明らかにする。

 DfEは10週間に及ぶ公開審議会を開始し、各方面からの意見を聞き新しい制度の内容の調整していく。これは試験的なもので、University of Cambridge やImperial Collegeなど50の大学カレッジが参加する。2017/2018学事年度と2018/2019学事年度は試験的な取り組みとして、2019/2020学事年度より本科的な学科別のTEFが開始する予定である。

https://www.gov.uk/government/news/universities-to-be-rated-by-subject-quality

 

【各メディアの反応】

○Guardian

 学科別のTEFはDfEによる卒業後の就職見通し、予想収入や中途退学率、などを金銀銅で評価している。

 政府によって実施され、高等教育進学希望者に多くの情報を与えることで、様々な大学との比較が可能となり、質の悪い大学を浮き彫りにするものである。大学担当大臣のSam Gyimah氏は「より多くの学生が学費に見合う高等教育を確実に受けられるための助けになる。」と述べている。

https://www.theguardian.com/education/2018/mar/12/university-degree-courses-ranking-teaching-excellence-framework

○BBC News

 英国学生連合(NUS: National Union of Students)は評価の対象となる情報の信憑性を問題定義している。同組合の副会長であるAmatey Doku氏は「TEFは教育の質を評価するものでは全く無く、それに続く学科別のTEFが出たところで何の解決にもならない。評価は教育の質を問い、教員の教育実践の改善を推し進めるというより、機関にとって評価ゲームを試みる機会の扉を開くことになった。独立した機関によるTEFの見直しを現在遂行中であるというが、それは他からの勧告や学生の声を考慮せずに行なっており、全く無責任である。」と述べている。

http://www.bbc.co.uk/news/education-43346678

 

(10)学生の学費に対する意識調査結果

 3月13日、学生局(OfS: Office for Students)が独自に行なった、「学生の学費に対する意識調査」の結果を発表した。この報告書は6,000人以上の学生と最近の卒業生を対象とした。

 報告書の主な結果:

  • 38%の学生は大学は学費に見合ったものを提供してくれていると答えており、54%の学生は高等教育に費やしたすべての投資を考えた場合、その価値はあったとしている。
  • 学生にとっては、教育の質、公平な評価、有益な参考意見や学習情報が、大学を評価する要因となっている。
  • 学生は、学費の使途の詳細についての透明性や、生活費やその他学費以外にかかる費用などを知りたがっている。

 

OfSの最高責任者Nicola Dandridge氏コメント

 今回の調査結果は学生が考えているお金の価値を理解することに役立つ。全国の大学やカレッジで学生に会い、異なる環境に居る学生では異なる意見が出てきているが、この報告書はまさにそれを証明している。

 高等教育機関はこの報告書を考慮して、如何に透明性を高めるか、高等教育全体の総費用など注意深く考えるべきである。そしてすべての学生が今後の生活や職業の価値を高められるような充実した高等教育を経験させるよう務める必要があり、我々もまた努力していくつもりである。

https://www.officeforstudents.org.uk/new-research-shines-spotlight-on-student-perceptions-of-value-for-money/

2018年2月22日 2018年2月英国高等教育及び学術情報

(1) UKRI議長にジョン・キングマン氏

 1月16日、ビジネス・エネルギー産業戦略省(BEIS:Department of Business, Energy &Industrial Strategy)は、2018年4月から発足するUKRI議長に、今まで暫定議長であったJohn Kingman氏を引き続き指名することを発表した。

 Kingman氏略歴:・Legal and General 株式会社会長

         ・2016年7月まで財務省第二事務次官を務め、在任中はサイエンスイノベーションに関する政策に携わる。

         ・2004年には政府のサイエンスイノベーション10年計画を主導。また、長年にわたり研究開発に関する税控除政策の立案にも携わってきた。

https://www.gov.uk/government/news/sir-john-kingman-announced-as-chair-of-uk-research-and-innovation

(2)EU離脱後、英国大学もEUファンドにアクセス可能に

 1月17日BBC Newsは、Imperial College Londonがフランスのトップの研究機関と提携を開始し、EU離脱後もEUの研究資金へのアクセスを可能としたことを伝えた。

 同大学はフランスの最大の政府研究機関であるフランス国立科学研究センター(CNRS: National Centre for Scientific Research)と共同で、ロンドンに数学のラボを設立した。これにより、同大学の研究者及び英国の研究機関の研究者で国際数学連合(UMI: Unite Mixte Internationale)の新しい数学ラボ「Abraham de Moivre」で研究している者は、英国のEU離脱後もフランスが受けるものと同等の資金援助の対象となる。

 Imperial College Londonの広報担当者は「UMIのメンバーはどの国籍であれ、資金、リソース、また特に重要な共同連携の機会、を平等に享受する事が可能となる」と話した。

 フランス政府が英国において研究ラボに共同出資するのは初めてとなる。フランスにとっては、この新しいロンドンラボはフランスにあるラボと同等の位置づけになる。

 フランス系数学ラボの設置は2016年6月のBREXIT国民投票以前から計画されていたが、今後EU離脱をする英国にとって、提携及び助成金調達の良い事例と期待されている。

 Abraham de Moivreというラボ名は18世紀のロンドンで研究をしたフランスの数学者の名前にちなんでおり、“世界最高の数学を結集する”という意味がこめれている。

http://www.bbc.co.uk/news/business-42690438

(3)ビジネス・エネルギー、産業戦略大臣、フランスと研究開発分野での緊密な連携について協議

 1月18日、英仏サミットにおいて、グレッグ・クラーク ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣はフランスのBrune Poirson環境連帯移行大臣付副大臣及びDelphine Geny-Stephann経済・財務大臣付 副大臣と会談し、2国間のより緊密な連携でお互いの強みを生かした研究成果を導き出していくことで合意した。これにより英国政府の産業戦略の実現が加速されることが期待される。

 両国はR&Dに関する専門機関であるイギリスのUK CatapultsとフランスのInstitutes Carnotのより緊密な連携などについて合意し、2018年には、デジタルセキュリティ技能やAI、デジタル政府をテーマにしたデジタル専門家会合を開催することとした。

 また、研究者同士の連携促進のため、年間あたり約£90,000(約1,350万円)投資する、研究者モビリティ基金の設立を発表した。

 また両国の宇宙局は、火星探査、宇宙気象観測、カリブ地域災害に際してのサテライト遠隔通信サービスに関する連携について合意書にサインした。

£1は150円で換算

https://www.gov.uk/government/news/business-and-energy-secretary-discusses-closer-research-and-development-ties-with-french-ministers

 

(4)TEF3 の審査委員発表、評価作業の開始

 1月22日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)は 第3回教育及び学生の成果評価制度(TEF: Teaching Excellence and Student Outcome Framework)に126の高等教育機関が参加する旨を発表するとともに、評価委員の詳細も発表した。TEFは政府によって導入された評価制度で、教育の質を評価し、高等教育の進学を考えている人に進学先の選択肢に関する情報を与えるものである。

 昨年は230の高等教育機関が3年間有効となる評価を受けたが、そのうちのいくつかの機関は今般の新しい評価基準の導入を受け、再度参加する。

 23大学と40の生涯学習機関、29の準高等教育機関のトータル92機関が全ての評価項目への参加を表明しており、その他の34の機関はデータが不足するため暫定的なTEFとして評価を受ける。

 92の全評価対象の高等機関のうち、3分の1は初めてTEFに参加する。他の3分の1はTEF2にすでに参加したが、評価の有効期間の期限となるための参加、残りの3分の1は再申請という内訳である。

 評価は学生、著名な学者、各分野の専門家などにより行われる。評価結果は「金・銀・銅」によって表される。結果は2018年6月初旬頃に発表される予定。

 またこれとは別に、50機関は試験的評価として、学科レベルのTEFに参加する。この試験的な学科レベルでの評価は開発中のため、結果は発表されない。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2018/Name,116459,en.html

 

(5)UKRIが研究とイノベーションのインフラに関するロードマップを作成

 1月22日、UKリサーチ・イノベーション(UKRI : UK Research Innovation)は今後の活動のロードマップを策定中であることを発表した。これまで英国でこのような大掛かりなロードマップ作成に着手したことがないため、困難な作業といえる。これにより英国の現状への理解を深め、将来の計画を理解することが可能となる。UKRIは大学・科学担当大臣よりこの作業着手依頼を受けて取り組んでおり、2027年までに英国GDPの2.4%が研究開発費に投資されるという政府の計画に貢献することが期待されている。

 ○研究とイノベーションのインフラとは?

 研究やイノベーションに係る機関が研究を実施するための施設や資源、サービス。例えば:

  • 主要な研究備品(用具一式)
  • コレクション、アーカイブ、データなど知識資源
  • データ、コンピュータシステムや通信網のITインフラ
  • 卓越した研究やイノベーションを達成するためのその他必須アイテム

 ○ロードマップとは?

 研究やイノベーションのための全体的なインフラの概観や、計画を達成するためのステップを示した戦略的プラン。

 ○その目的は?

 既存の国内インフラ及び英国が参加している主要な国際的施設の利活用、研究上あるいは経済的社会的な将来のニーズ、及び投資の重点化計画などを考慮しながら長期的(2030年まで)なロードマップを考えている。

その他に以下の点が含まれる:

  • 将来の研究とイノベーションの優先順位を見極める。
  • 相互連携の機会の増加。
  • UKRIの長期投資計画の策定。
  • 研究やイノベーション分野でのグローバルリーダーとしての英国のプロモーション。
  • 長期的なビジョンを達成するための重要なステップの立案。

 ○各セクターのテーマ

 ロードマップは下記の分野横断的課題で構成される。多くのインフラは複数の課題に貢献することになる。

  • 生物化学、健康、食品
  • 環境
  • エネルギー
  • 物理科学、工学
  • 社会科学、芸術、人文科学
  • コンピューター、 ITインフラ

 ○スケジュール

  • プログラム開始-- 2018年1月
  • 中間報告発表- 2018年11月
  • 最終報告発表- 2019年 春

https://www.ukri.org/news/infrastructure-roadmap/

 

(6) 新時代に必要な技能習得を目標とした新課程開発のため、政府は大学等に£6,100,000を配分 

 1月23日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE)は新時代に必要となる技能習得のための新課程開発費用として、£6,100,000(約9億1,500万円)をイングランドの30以上の大学に配分することを発表した。政府の新産業戦略目標達成に向け、各機関は産業界と連携して新課程開発を行うことになる。

 HEFCEのCatalyst Funding Programmeを通して1機関あたり£200,000(約3,000万円)を上限として予算が配分され、それに大学独自の予算及び各企業等からの投資を加えて開発に取り組む。

 取組み例:University of Bristol クラウドコンピューティング(£2,000,000)

      University of Cambridge ヘルスケアデータに関する技能習得(£199,400) 

£1は150円で換算

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2018/Name,116468,en.html

 

(7)メイ首相、ダボス会議にてプログラミングのコンソーシアム(Institute of Coding)設立に£2千万の投資を発表

 1月25日、メイ首相はスイスで開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)において、政府の産業戦略達成のため、デジタル技能者の育成のためにプログラミングに関するコンソーシアムを設立し、£2千万(約30億円)を投資することを発表した。

 コンソーシアムには、産業界からはIBM、Cisco、BT、マイクロソフトやその他中小企業、25の大学や専門機関(British Computer Society やCRESTなど)など、合計60以上の機関が参加する。参加予定大学は、UCL、Newcastle University、University of Arts、Open University and Birkbeck、University of London等となっている。

 政府からの投資£2千万に加えて、民間からも同額の£2千万と技能トレーニング及び備品無料提供などが投資されることとなっている。

 Institute of Codingの主な5つのテーマ

  • The Open University担当「大学の学習者に対する支援」:新産業で求められる標準的な技能をターゲットにした単位を習得させることで、卒業生の就業率を上げる。実社会のビジネスにおけるトラブル解決やビジネス開発能力の育成、技術・技能習得を目指す。
  • Aston university担当「デジタル人材育成」:戦略的な開発分野にかかる専門家の育成に取り組む。
  • Coventry University担当「専門技能育成手法のデジタル化」:オンラインやFace to Faceでデジタルの新技能習得に取り組む手法の開発。
  • Queen Mary University of London担当「より幅広い人材のデジタル技能習得促進」:未だ就業率の少ない女性等にテクノロジー関連の学習やキャリアへの参入を促進させるため、専門のワークショップやキャンプの開催など、アウトリーチ活動に取り組む。
  • University of Bath担当「知識の共有と持続性」:プログラミングコンソーシアムの継続的な活動と成果の共有のため、調査分析や将来必要とされる技能の予測等を行う。

£1は150円で換算

 https://www.gov.uk/government/news/prime-minister-announces-20-million-institute-of-coding

 

(8)高等教育志願者18歳の上昇

 2月5日、大学入試機関(UCAS:Universities and Colleges Admissions Service)は1月15日に締め切られた2018年度の英国大学(学部)志願状況を発表した。

主なポイント:

・イングランドの18歳の志願者数は記録的で前年より0.4% 上昇し志願率37.4%、ウェールズは0.3%上昇で32%、北アイルランドは安定して42.7%。スコットランドは0.2%の減少で32.5%、しかしスコットランド学生の3分の1はUCASを通して志願をしないため、正確な数字は把握できていない。

・英国全体では、18歳人口の高等教育機関への志願率は昨年に比べ1%の伸びを示した。

・1月15日までに全体でおよそ559,000人が入学希望願書を提出し、昨年に比べて0.9%減少した。これは全国で2.5%減少した18歳人口と、19歳と25才以上の志願者数の減少が要因と見られる。

・EU圏(3.4%増加,43,510人)と非EU圏(11%,58,450人で記録上最高)からの留学生増加があった。

・イギリスでのすべての年齢層で、看護科への志願数が13%減少した。

・イングランドでは18歳の志願率は男女共に過去を上回っており、2018年の男女の志願率は英国全体で高い。また男性より女性の方が高等教育への進学を希望しており、志願者は36%であった。これは昨年に比べ若干の増加であった。

・スコットランドでは男性の志願率が増加。女性の志願率は減ったものの56%であった。ウェールズでは志願率は増え、女性の志願率は48%であった。北アイルランドでは若干の志願率増加があり、女性の志願率は40%であった。

・イングランドの恵まれない環境に住む生徒の志願率は22.6%と記録的に伸びている。北アイルランドも伸びており24.5%、ウェールズでも19.7%と昨年と同様程度であった。最も恵まれている環境とそうでない環境では志願率の溝は埋まってきている。昨年に比べると恵まれた環境の学生の方がそうでない学生に比べ2.3倍志願している。

 UCASでは6月30日までまだ志願をすることが可能であることを呼びかけている。2018年12月にはその総括的な結果を発表する予定である。

asia_university_ranking_2018docx.docxをダウンロード

asia_university_ranking_by_countries_and_areadocx.docxをダウンロード

japanese_universities_in_asia_university_ranking_2018_docx.docxをダウンロード

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/rise-rate-18-year-olds-applying-uk-higher-education

UCASの詳細データ

https://www.ucas.com/corporate/data-and-analysis/ucas-undergraduate-releases/2018-cycle-applicant-figures-january-deadline

 

(9)科学担当大臣、EUの研究担当大臣たちと科学・研究イノベーション分野での共同研究の促進について約束

 2月5日、Sam Gyimah科学担当大臣はブルガリアで開催されたEU競争力担当相理事会主催のResarch dayに出席し、欧州の研究担当大臣たちと研究・イノベーション開発について意見交換した。

 会議においてSam Gyimah大臣は、欧州が科学イノベーション分野において卓越性、競争力、世界に向けて開かれた門戸を維持し続けるという野心的な目標のために、英国は将来にわたって先導的な役割を果たしていくことを約束した。

 また、各国との二国間会合においては、特に懸念されている英国と欧州の研究者の流動性について意見交換を行った。大臣は、EUとの間で科学イノベーション協定を結ぶ用意があることを強調し、英国がEUメンバーにとどまっている間のEUの競争的資金獲得への参加資格の保証を求めた。

 EU競争力担当相理事会は、EUの研究担当大臣にEUの研究とイノベーションに関する政策について協議する場を提供してきており、今回のテーマは「イノベーションの加速化と人々への投資」であった。

https://www.gov.uk/government/news/science-minister-promotes-joint-working-in-science-research-and-innovation-with-eu-ministers

(10) Times Higher Education  アジアランキング2018—被引用論文により、最新のアジアランキングで中国が急増

 2月6日、英国高等教育専門雑誌Times Higher Education は2018年のアジア大学ランキングを発表した。350位(リスト上350+の大学)まで発表した評価結果は①教育 ②研究 ③被引用論文 ④国際性 ⑤産業収入、に分類される13指標から導き出された結果である。

 1位は3年連続でシンガポールのNational University of Singapore。日本からは89大学がランクインし、国別では昨年に続き最多であった。また中国の活躍が目立ち、同誌世界ランキング論説員のPhil Baty氏は“中国は過去20年に渡り卓越した研究に投資したことが実っている。”と述べた。

https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/asia-university-rankings-2018-results-announced

 

(11) イングランド高等教育財政会議(HEFCE)が専門課程別就職率をみる全く新しい指標を紹介

 2月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England )は、OSCR(the occupations subject concentration ratio)という、それぞれの専門課程で学んだことがどの程度実務に結びついているかを計る新しい指標を導入した。これは高等教育機関卒業生の就業・進学先のデータ(DLHE: Destination of Leavers from Higher Education Survey)をもとに導き出されている。

 薬学、歯学、看護学など、全ての専門課程のうち約10%は非常に実務的であるとされた。次いで土木工学、IT、造園設計などが続く。それ以外の課程の卒業生は幅広い分野の仕事に就いており、その分実務性は前述の課程に比べると低いとみなされる。

 OSCRの分析結果によると、より実務性が高いとされる専門課程の卒業生は、学んだことを生かし、より収入の高い職業に就く機会に恵まれている、としている。また、あまり実務に直結しないとされた数学や物理学、経営学などの分野の卒業生も、キャリアの早い段階においてよい成果を生み出していることが分かった。

 これらの指標は、各専門課程で学ぶべき内容がより実務的であるべき、ということを意図しているものではない。むしろあまり実務的ではないとされる分野で学んだ卒業生のほうが、より幅広い選択肢があることがわかった。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2018/Name,116506,en.html 

 

(12) 英国高等教育の研究活動に関する調査(Facts and Figures)

  2月9日、英国大学協会(UUK: Universites UK)は英国高等教育の研究活動に関する調査結果を発表した。それによると英国大学の研究は世界中から評価が高く、経済的にも多くの利潤を得られるとしている。

レポートの主な点:

  • 英国大学は世界クラスの研究成果を産出している

 世界シェアでたった4.7%の研究者とわずかな投資であるが、論文については世界中の10%のダウンロード、11%の引用と15%の被引用論文があった。

  • 国際共同研究は英国にとって重要である

 1981年、英国研究の90%は純国産であったが、現在は半分以下となっている。英国でのトップ10研究のうち6の国際共同研究のパートナーはEUである。

  • 英国大学は英国以外の学術スタッフをますます頼りにしている

 2004/2005学事年度以降英国人以外の研究スタッフ数の割合が増加している。2004/2005学事年度は34%であったのに対して、2015/2016学事年度は47%まで上昇している。

  • 英国研究収入の£10億(約1,500億円)以上は海外から

 2015/2016学事年度では英国大学は£78億(約1兆1700億円)の研究収入があった。そのうち£8億4000万(約1,260億円)は英国以外のEUから、£4億4000万(約660億円)はそれ以外の国からであった。

  • 知識交換活動(Knowledge exchange)は英国に大きな利潤をもたらす

 知識交換活動による大学収入はGDPの成長率を上回っている。2015/2016学事年度では£42億(約6300億円)であった。政府は研究開発に対して投資額を引き上げ、10年以内にOECDの平均に到達することを約束した。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/UK-produces-world-leading-research.aspx

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年2月06日 2018年1月英国高等教育及び学術情報

(1) 23大学が試験的学生ビザ制度に参加。

 12月18日、内務省(Home Office)は学生ビザ発行手順の簡素化を23大学に対して広げる事を発表した。この試験的学生ビザは修士課程の留学生に対して発給されるものである。

 現在この制度は2年目を迎えており、すでにOxford, Cambridge, Imperial College, Bathの各大学で、期間が13ヶ月かそれ以下のコースの修士課程の留学生を対象として行われている。また労働ビザにも移行でき、コース終了後6ヶ月間、引き続き英国に滞在が認められるため学生にとっても大きな支援となっている。

 本制度では、大学側に入国資格審査責任があるため、学生はビザ申告において通常より少ない書類の提出で済む。新たに加わる23大学はスコットランドの2大学、ウェールズの2大学、北アイルランドの1大学となっている。

 最近の内務省の調査によると、学生ビザ申請の数は昨年に比べて8%増加しており、ラッセルグループの大学へは9%の増加があった。

 23大学は2018/2019学事年度よりこの試験的手続きを開始できる。ビザ申請に当たって発給拒否率が常に低かった地区の大学が本制度の対象として選ばれている。

https://www.gov.uk/government/news/twenty-three-universities-join-student-visa-pilot

【各機関の反応】

○ラッセルグループ 事務局長のTim Bradshaw氏のコメント

 留学生は我々のキャンパスを国際色豊かにし、地域産業が世界と繋がるきっかけをつくり、英国に大きな経済効果をもたらす。ラッセルグループ大学への留学生7人ごとに£100万(1億5000万円)が英国経済に恩恵をもたらしている。

 パイロット対象大学の拡大は良いニュースである。英国は世界中の優秀な学生からの恩恵を受けることを可能にした。今回選ばれた大学が高いレベルでビザ規定を遵守し実行し、更に他の大学にも広げていけることを期待する。

http://russellgroup.ac.uk/news/tier-4-visa-pilot/

£1は150円で換算

 

○英国大学協会(UUK:Universities UK)会長のAlistar Javis 氏のコメント

  留学生は文化的にも経済的にも英国に利益をもたらす。どんな大学であれ、ほとんどの学生がビザの規定に従っていることも証明されている。

 政府が留学生の恩恵を認め、卒業後の就労機会までも与えることになれば、留学生にとって英国が留学先として魅力を増すことになる。近い将来政府が英国すべての大学に本制度を適用することを期待する。

 世界的な留学獲得競争は激化しており、英国は更なる学生ビザの改定をすることで世界からの留学生を歓迎する、魅力的な国で居続けることが必要である。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Twenty-three-universities-join-student-visa-pilot.aspx

 

(2) 新たな大学規制機関活動開始― 学生局 (Office for Students)

 1月1日、教育省(DfE: Department for Education)は学生局(OfS)の本格的な活動開始を発表した。本組織は、学生の利益を守り、選択肢を拡大させ、より効率的な投資を受けることを保障して行くことを目的としている。

 教育大臣であるJustine Greening 氏は最後の6名の理事会メンバーを発表し、合計15人のメンバーが明らかになった。

 学生局は、高等教育機関の多様なニーズを反映していくだけでなく、雇用者と学生の両者にとっても有意義であるかどうかを検証する。また、学長の賃金や言論の自由などの問題について大学に対し責任を問う機関となる。

 また、今までイングランド高等教育財政会議(HEFCE : Higher Education Funding Council for England)において行われてきた、高等教育機関に対する規制や、大学が提供する教育の質に関して責任の追及の役割も担う。

 昨年決議された高等教育研究法(2017)に沿った改革となり、学生局は学生、雇用者及び納税者の利益や選択肢の拡大に考慮する明確な法的義務を負うことになる。

https://www.gov.uk/government/news/new-universities-regulator-comes-into-force#history

(3)内閣改造結果

 1月9日、BBC NewsはMay内閣の改造を報道した。高等教育/研究機関関係である、教育省(DfE: Department for Education) とビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS: Department for Business, Energy and Industrial Strategy )の担当大臣は以下の通り。

教育省

大臣職

  • 旧:Justine Greening 氏
  • 新;Damian Hinds氏

Damian Hinds氏略歴:

オックスフォード大学で政治、哲学、経済学を専攻。18年に渡り英国内外のパブ醸造およびホテル業界に従事。2010年5月の総選挙でEast Hampshireで初当選。下院教育委員会(Education Select Committee)に選出され2012年10月まで務めた。国会議員で構成される社会的流動性審議委員会(All-Party Parliamentary Group)の議長も務めた。その後2014年7月から2015年1月まで与党院内幹事補(Assistant Government Whip)、2015年5月から2016年7月まで財務省秘書官(Exchequer Secretary to the Treasury)。前職は2016年7月から2018年1月まで労働・年金担当大臣(Minister of State for the Department of Work and Pensions)。

ビジネス、エネルギー、産業戦略省

ビジネス、エネルギー、産業戦略省大臣のGreg Clark 氏は続投。

担当大臣 (DfEとBEISともに所属している担当大臣)

  • 旧:Jo Johnson氏 (大学・科学担当大臣)
  • 新:Sam Gyimah氏 (大学・科学担当大臣)

Sam Gyimah氏略歴:

オックスフォード大学、Somerville Collegeで政治、哲学、経済学を専攻。ゴールドマンサックスで5年間過ごした後、数々の中小企業の訓練、雇用、インターネット部門の育成開発会社を起業し、2005年その功績が認められ、CBIの「未来の起業家」に選出された。2010年5月の総選挙でEast Surreyで初当選し, 2013年10月から2014年7月まで財務省で財務長官(Lord Commissioner (HM Treasury) Whip), 2014年7月から2015年3月まで内閣省で議会政務次官(Parliamentary Secretary)、2015年5月から2017年7月まで教育省で政務次官(Parliamentary Under-Secretary)を務める。前職は2016年7月から2018年1月まで法務省で政務次官を務めた。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-42619018

Daimian Hinds : https://www.gov.uk/government/people/damian-hinds

Sam Gyimah : https://www.gov.uk/government/people/sam-gyimah

 

(4) 高等教育機関の報酬コード

 1月9日、大学議長委員会(CUC: Committee of University Chairs )は、大学の上級職に対する給与額決定過程を透明化し、適切かどうかを確認するため、自主的な規範の草案を作成したことを発表した。

 CUCは本ガイドラインの正式な審議期間を設け、意見募集を行っている。意見提出期限は2018年3月12日。

http://www.universitychairs.ac.uk/home/remunerationcodeconsultation/

【各メディア、関係機関の反応】

○BBC News:

大学上級職の給与は平均的な学術スタッフより昇給率が早いということは期待されていない。CUCのこの草案に対し、学生局(OfS: Office for Students)の最高責任者であるNicola Dandrige 氏は”不十分である。我々は給与額に関心があり、給与額の決定過程に関心があるのではない“と述べた。

 昨年は大学長の過剰報酬が問題となり、前大学・科学担当大臣のJo Johnson氏との会合後、各大学長は新しい給与ガイドラインの作成に合意していた。又同氏は高額な給与に対して抑制を求め、新しい規制機関である学生局の介入を求めていた。

http://www.bbc.co.uk/news/education-42623935

○Guardian:

 大学長は大学職員の平均的な給与額の約8.5倍の給与報酬を受けている、ということについて、大学側は今後過剰な報酬を抑制するガイドラインに沿って、その支払い額の正当性を説明することを求められることとなる。 

 大学職員の労働組合である大学組合(UCU:University and College Union)は毎年、大学長の給与を発表しているが、大学議長委員会(CUC)が作成した新しいガイドラインを却下した。同組合の書記長であるSally Hunt氏は「大学上層部の給与について真剣に取り組みたいのであれば、CUCのように近しい関係ではない機関がやるべきである。先月CUCは大学長の給与は不等に高額な金額が支払われているという証拠が見られなかったと発表している。何年も前から大臣たちは大学長の給与の著しい上昇に関して調査するように求めている。これまでも我々は給与委員会が身内の給与を決定してきているということを強調してきた。」と述べた。

 また、新しい規制機関、学生局(OfS: Office for Students)の最高責任者であるNicola Dandrige 氏は報酬コードを歓迎しながらも不適切であることを述べている。「大学側が正当な給与額を定めるというリーダーシップが必要である。給与水準に関心があり、決定された過程を知りたいのではない。提案されたCUCの規範の精神に基づき各高等教育機関が行動し、この過剰給与そのものに取り組むことを望む。しかし不等な給与水準に直面した場合、OfSは介入をすることに躊躇はしない」と述べた。

https://www.theguardian.com/education/2018/jan/09/universities-vice-chancellors-excessive-pay-new-guidelines

○英国大学協会(UUK : Universities UK)

 UUKの広報担当者のコメント:

 大学上層部の給与決定過程は厳格で透明性が期待される。新しい規範は大学給与委員会に重要な指針を与えるとともに、上級職の給与が公正、説明責任に基づいており、理にかなっていることも確認している。一方で競争力のある給与は優秀な人材をひきつける原動力でもあるということが認められている。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Committee-of-University-Chairs-consultation-senior-staff-pay.aspx

○ラッセルグループ(Russell Group)

同グループの会長であるAlistair Jarvis氏のコメント:

 CUCから発表を歓迎する。大学の上級職の給与を適当な水準に設定するには、透明で公平な決定過程と説明責任があることが重要である。新規範案やガイダンスはそれらの分野を網羅しており、大学の今後の発展に役立つだろう。

http://russellgroup.ac.uk/news/higher-education-remuneration-code/

 

(5) 留学生は受入れにかかる費用の10倍の価値をもたらし、英国民1人に対して£310の価値をもたらす

 高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)とKaplan International Pathwayは共同研究成果「議会選挙区別による留学生の費用と利益」を発表した。分析は政策経済のコンサルタントのロンドンエコノミックスが行った。

 これまでに研究と異なり、毎年新しく訪れる231,000人の留学生にかかる費用とその利益を分析したものである。

例として:

  • 総利益- 留学生の学費も含み、その他の支出の波及効果は£226億(3兆3,900億円)

→上記の総利益はEU留学生は平均で£87,000(1,305万円)、非EU留学生£102,000(1,530万円)の費用から出ている。

  • 留学生の受入れにかかる公費用- 教育,保健、社会保障などの総額は£23億(3450億円)

→上記の公費用は平均でEU留学生は£19,000(285万円)、非EU留学生は£7,000(105万円)

  • 留学生受入の純利益― 総額£203億(3兆450億円)

→上記の純利益はEU留学生£68,000(1,020万円)、非EU留学生£95,000(1,425万円)

£1は150円で換算

http://www.hepi.ac.uk/2018/01/11/new-figures-show-international-students-worth-22-7-billion-uk-cost-2-3-billion-net-gain-31-million-per-constituency-310-per-uk-resident/

【メディアの反応】

○インディペンデント紙

 留学生が毎年£20億も英国経済にもたらしているという報告は、留学生を移民法で規制しようとしているメイ首相をますます議会で孤立する可能性を強めた。

 留学生の恩恵を受けている20選挙区のうち19選挙区が労働党の議席である。

http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/international-students-uk-brexit-costs-benefits-non-eu-university-immigration-figures-a8152151.html

○BBC News

 HEPIの理事長Nick Hilmman氏は「留学生が少ない地区では雇用も少ない。なぜなら留学生は大学だけでなく地域にもお金を落としているからである。それがサンドウィッチ屋、自転車屋、タクシー会社、ナイトクラブや書店だったりする。留学生が減少した場合、地域の小企業は破産に追い込まれる可能性がある。」と語った。

 また、「英国は世界レベルの大学が多く存在するが、同時に世界でも最も学生に敵意を持った政府がある。」というインドのHindustan Times 紙の読者からの最近の投稿を引用した。HEPIは政府に対して留学生の数を純移民数から取り除くようにと訴えているが、内務省は現時点ではその予定がないという回答であった。

もっとも留学生から利益を受けている選挙区トップ10

  1. Sheffield Central
  2. Newcastle upon Tyne
  3. Nottingham South
  4. Oxford East
  5. Manchester Central
  6. Holborn and St Pancras
  7. Liverpool, Riverside
  8. Cambridge
  9. East Ham
  10. Birmingham, Ladywood

(トップ10すべて労働党議員選出)

http://www.bbc.co.uk/news/education-42637971

2017年12月19日 2017年12月英国高等教育及び学術情報

(1) 大学と企業間連携促進のための新しいウェブツール

 11月14日、UKリサーチイノベーションの暫定最高責任者であるMark Walport卿が立ち上げた、大学-企業間連携を促進する新しいウェブツール“Konfer”が正式に開始された。Konferには100万を超える研究・研究者・施設・設備・資金・支援に関するデータが収められ、ビジネスの連携機会を創出することを目的としている。

 このシステムはイングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)、英国研究会議(RCUK: Research Council UK)と提携して国立大学産業センター(NUUB: National Centre for Universities and Business)によって製作されたもので、大学側も研究パートナーを探すことができる。英国議会下院の科学技術委員会は“企業が最短の方法でアカデミックのパートナーを探すことができる方法”であると説明した。

国立産業センター David Docherty会長コメント:  

 Konferツールを通して事業者、新規事業立ち上げ者や大規模組織がそれぞれに助成金、リソース、専門家、イノベーションの機会の情報に簡単にアクセス可能となり、また大学側も簡単に商業パートナーを見つけることができるようになった。

 Konferに含まれる情報は以下のとおり:

  • 12,076人の学術研究者
  • 14,386施設および設備リスト
  • 1,732,279の大学とSNSのWebページ
  • 27,526の大学のチャンネルからのYouTube動画
  • 精選された238,274のニュース、助成金とイベントの情報
  • 51,537件の公的資金提供研究プロジェクト

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,116214,en.html

 

(2) EU離脱が英国の科学研究の地位を脅かす可能性(ガーディアン記事)

 11月15日、英国はEU離脱によって科学研究のトップの座を奪われる危機にあるとの警告が発表された。

 行政監視をする公会計委員会(PAC: Public Accounts Select Committee)の議長を務めるMeg Hillier氏は、ロボット工学や気候変動などの分野において、EU離脱後も英国の地位を保持するための政府のリーダーシップが「まったく欠けている」と述べた。これは国家会計検査院(NAO: National Audit Office )が発表したロボット工学と応用材料研究のリーダーシップの欠点を警告した報告書に基づいてコメントしたものである。

 15日に発表された報告書によると、2015年の研究開発に対する政府からの支出合計は£87億5千万*(約1兆3,125億円)であった。また昨年政府は2021年までに追加として£47億(約7,050億円)を出資すると発表している。

 2007年から2013年の間のEUから英国への助成金の純受取額は€88億**(約1兆1,440億円)であり、同期間の英国からEUへの出資額は€54億(約7,020億円)であったため、EU離脱後、英国の研究に対しどの程度資金提供されるのかで影響があるだろうと警告している。

 政府の支援は「一貫性の無い」データに基づいて行われており、どの分野が後れを取っていて、どのプログラムがEU離脱により打撃を受けるのかを正確に分析しなければ、成果の上がる投資とならない、と報告書では警告している。気候変動、ロボット工学、先端材料学の分野で投資を集中させる必要があると述べている。

*£1=150円で換算

**€1=130円で換算

 https://www.theguardian.com/education/2017/nov/15/brexit-threatens-uks-reputation-for-scientific-research-watchdog-says

 

参考National Audit Office report (summery):

https://www.nao.org.uk/wp-content/uploads/2017/11/Cross-government-funding-of-research-and-development-Summary.pdf

 

(3) 卓越した才能を持つ人材受け入れのため、ビザ発給数を倍増

 11月15日、内務省(Home Office)はテクノロジー、科学、芸術などの分野で卓越した才能を持ち、最前線で活躍している者に対するビザの発給数を倍にすることを発表した。

 全世界から優秀な人材を確保するため、ビザカテゴリーTier 1 (卓越人材対象)枠を現在の年間1000件から2000件にする。

 これにより、英国の経済を強化するより多くの高等技能保持者を受け入れることができることとなる。また産業界において英国が世界トップクラスの座に居続けるための方策のひとつとして、個人のグローバルな移動に対し英国政府が貢献していることを表している。

 2000件のビザは、デジタル工学、科学、芸術分野で将来のグローバルリーダーとなりうる個人、もしくは以下の5つの団体から推薦を受けた者が対象である。

5つの推薦団体;

  • テックシティUK (Tech City UK)
  • イングランド芸術評議 (Art Council England)
  • 英国学士院 (The British Academy)
  • 王立学会 (The Royal Society)
  • 王立工学アカデミー (The Royal Academy of Engineering )

https://www.gov.uk/government/news/government-doubles-exceptional-talent-visa-offer

 

(4) 次世代のエンジニア育成のための画期的なキャンペーンの開始

 11月16日、教育省は「エンジニアリング2018」キャンペーンの立ち上げを発表した。100社以上の産業界のパートナーが参加し、年間を通じて若者にエンジニアリングに接し体験する機会を提供することになる。

 テクノロジー、ヘルスケア、食品製造からエネルギー、文化や輸送まで、ありとあらゆる分野の関係団体が参加して、産業界、国会議員、父兄や教師達を活気づけることで次世代のエンジニアを育てることを目的としている。

 シェルグループによる児童生徒を対象にした「将来のエンジニア向けエネルギークエストプログラム(Tomorrow’s Engineers Energy Quest programme)」に対し£100万(約1億5千万円)の出資、出版業Usborne社による子供向けエンジニアリングの本の出版や、家族向けの工場見学ツアーなど、大規模なアウトリーチプログラムが含まれる。また、個人的な活動として、父兄が子供の算数の宿題を手伝うことやコードクラブに参加させること、エンジニアが自身の経験を学校で語ったりSMSを通じてシェアしたりすることなども含まれる。

 このキャンペーンは、英国が年間約20,000人の技術者不足に陥るという推計、及び技術関係企業の約半数が技術者不足により業績に悪影響が出ているという報告を受けて立ち上げられたものである。あらゆる層の若者にエンジニアリングの経験を直接させたり、身近なロールモデルと交流させたりすることで、エンジニアという職業のもつ豊かな想像性や革新性を実感してもらい、将来エンジニアになりたいという若者を育てると共に、エンジニアのうちの91%が男性であり、94%が白人であるという現在の偏りを解消することを目的としている。

 シーメンス、自然博物館グループ、Ocado(スーパーマーケットグループ)、Usborne(出版業), BAE Systems(セキュリティ関係)及びCrossrail(鉄道会社)などが支援を表明している。政府は年間を通じて学校訪問や展示会、見学会などを企画している。

https://www.gov.uk/government/news/government-announces-landmark-campaign-to-inspire-next-generation-of-engineers

 

(5) 政府が研究開発に記録的な投資

 11月20日、メイ英国首相は研究開発分野に対して記録的増額投資及び英国内の都市を結ぶ交通システム整備に対する新たな投資を発表した。これは産業戦略の一環で、生産性の向上と英国内でのより高額な雇用を創出することが目的である。

研究開発費への投資に関し抜粋:

 産業界と協力して2027年までに研究開発費をGDPの2.4%に引き上げる。これにより公共及び民間セクターへの研究開発投資が今後10年間で£800億(約12兆円)増加する可能性がある。2021/2022学事年度から追加投資として£23億(約3,450億円)の投資を開始し、研究開発費の全投資額は同学事年度だけで£125億(約1兆8,750億円)になる。

 メイ首相のコメント:

 私が首相になって始めて取り組んだもののひとつが産業戦略の策定である。産業戦略によりハイクオリティなビジネス創出を助け、高賃金の仕事を創出することを目的とする。産業戦略は英国を将来、産業分野において世界的なリーダーに押し上げるだろう。人口知能、ビックデータ、AI、クリーンエネルギーから自動運転自動車まで、チャンスをモノにするときである。

 今後5年間でGDPの研究開発費への投資を増加させ、1980年代のレベルまで回復させる。昨年発表した、投資額を2015/2016学事年度の£90億(約1,350億円)から2020/21学事年度には£120億(約1兆8,000億円)にまで引き上げると公約したことに基づくものである。

 来週月曜日(11月27日)に発表される産業戦略白書では、英国の強い分野であり、かつ我々の将来を形作る世界的潮流を反映した4つの大きなチャレンジが発表される。それらは人工知能、データエコノミー、低炭素社会、健康な高齢化、そして将来の流動性である。政府は産官学と連携し、わが国の得意分野を伸ばし英国経済の成長を確保するため努力していく。

£1=150円で換算

https://www.gov.uk/government/news/record-boost-to-rd-and-new-transport-fund-to-help-build-economy-fit-for-the-future

 

【各機関の反応】

UKリサーチ・イノベーションの暫定最高責任者であるMark Walport卿のコメント

 政府が研究開発費の支出に意欲的な目標を掲げたことは喜ばしい。このようは大胆な行動は英国が研究・イノベーション分野において世界のトップの座を維持することを裏付けるだろう。

 この責任を果たすには協調努力が必要である。UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research and Innovation)はすでに産業戦略の一環として様々なアイディを展開させており、これらの投資が最大の効果を出すための努力をしている。政府、産業界、学術界と今後も協力し、目的の実現のため生産性を高め、生活水準の向上に貢献していきたい。

https://www.ukri.org/news/uk-research-and-innovation-welcomes-government-r-d-commitment/

 

(6) 研究評価制度(REF:Research Excellence Framework)2021の概要が明らかに

 11月21日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding for England)は次期REF2021の実施方針を発表した。1年間に及ぶ協議の結果、研究スタッフの再雇用制度や研究成果のアウトプットの評価方針について確認されている。

 発表された方針には、研究に多大なる貢献をした研究者は全てREFの評価対象とすること、研究者の流動性に左右されることなく研究成果はその結果を出した機関が提出すること、研究成果の総数や実際にどのようなインパクトを与えたかという実例を提出すること、等が含まれている。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,116247,en.html

 

(7) 労働市場における大学卒業者雇用状況調査結果

 11月24日、国家統計局(ONS: Office for National Statistics)は2017年7月-9月に卒業した1,400万人の学生の雇用状況調査を発表した。結果概要は以下のとおり。

  • 2017年7月-9月に大学を卒業した者は約1,400万人だが、過去10年間着実に増え続けている。
  • 大学卒業者のほうが大学を卒業していない者よりも雇用される割合が高い。
  • 21歳から30歳の大学を卒業していない者は未就業率が高く、活動が活発でない割合が高い。
  • 40%の大学卒業生は行政、教育、医療関係に従事しており、大学卒業生は卒業していないものより高等技術職に就いている。
  • 大学卒業者の年収のほうが大学を卒業してない者よりも高く、より年を重ねてから年収のピークを迎える。
  • 2017年7月~9月の卒業生で薬学や工学の学位を持つ者は就職率が高く年収も高い。
  • 男性の卒業生のほうが女性の卒業生に比べ、より高い技能職に就職が決まる傾向がある。

https://www.ons.gov.uk/employmentandlabourmarket/peopleinwork/employmentandemployeetypes/articles/graduatesintheuklabourmarket/2017

 

(8) 産業戦略白書の発表

 11月27日、ビジネス、エネルギー産業戦略省 (BEIS: Department of Business, Energy and Industrial Strategy) の大臣である、Greg Clark氏は政府の野心的な産業戦略を発表した。

発表内容の概要:

  • 経済強化を図り、英国の得意分野に基づき技術革新の機会を利用する計画として同省の最重要な取り組みである産業戦略を立ち上げた。

 

  • イノベーション創出のための産業戦略チャレンジ基金プログラムに£7億2500万(約1,090億円)を投資
  • 世界的な生命科学関連企業のMSDが英国への投資を確保したことで産業戦略が開始する。
  • 建設、人口知能(AI), 自動車、ライフサイエンス分野において、初の試みである”Sector Deals”へ取り組む。
  • 4つの“大きな課題”への取り組み。将来産業の最前線の座に英国をすえるため世界的なトレンドを掴む。

 

 2030年までに世界で最も革新的な国になることを目標に、政府は地球規模課題に対応するため、今後3年間で£7億2500万(約1,090億円)を産業戦略チャレンジ基金(ISCF: Industrial Strategy Challenge Fund)に投資する。このうち£1億7000万(約255億円)が建設部門に投資され、より安全で健康的、かつ省エネの手ごろな価格の住宅やオフィス環境の開発に取り組む。また、医療における早期診断の向上や、精度の高い医療の開発に最高£2億1000万(約315億円)の投資などが予定されている。

 政府は昨年第1期ISCFとして£10億(約1,500億円)の投資を約束しており、その中には次世代バッテリーテクノロジーへの£2億4600万(約369億円)、及び英国中のロボッテックハブへの£8600万(約129億円)が含まれている。

 先週、メイ首相は研究開発費の投資水準を2027年までにGDP1.7%から2.4%に引き上げることを発表している。これは今後10年間、先端技術分野に£800億(約12兆円)を追加投資し、新産業やイノベーションの創出を支援していくことを意味している。

 白書には建設、ライフサイエンス、自動車、人工知能の分野において様々な”セクターディール“活動に取り組むことも含まれている。これは政府が民間との共同出資によって長期的な提携で取り組んでいくものである。ライフサイエンスのセクターディールとして、世界トップクラスのライフサイエンス企業MSDが英国に対し大規模な投資をすることを発表した。最先端の治療方法や薬の開発などが活動内容となる。また、最先端研究施設を英国内に建設し、950人の雇用も創出される予定である。

 産業戦略において定められた4つの大きな課題(Grand Challenge)は、以下のとおり。

  • 人工知能
  • クリーン成長
  • 高年齢化社会
  • 物流、人の流動性

 

 白書では5つの基盤に焦点をあわせ、政府、学術界、産業界のユニークなパートナーシップのもとで生産性が高く、将来世界において競争力のある英国経済を作り上げていくこととしている。

5つの基盤:

  • アイディア
  • 人々:技術教育制度の確立。£4億600万(約600億円)を数学、デジタル、技術教育に投資しSTEM(Science, Technology, Engineering and Math)人材不足の解消を図る。新しい「職業再訓練制度」を立ち上げ、£6,400万(約96億円)をデジタル及び建設技能のトレーニングのために投資する。
  • インフラ:英国生産力投資基金(National Productivity Investment Fund)に£310億(約4兆6,500億円)を増資し、輸送、ハウジング、デジタルインフラ整備を支援する。電気自動車開発のために£4億(約600億円)、更に£2億(約300億円)をプラグイン車導入の補助金として出資する。£10億(約1500億円)以上をデジタルインフラ整備のために出資し、5Gの整備やファイバーネットワークが脆弱な地方の整備を行う。
  • ビジネス環境
  • 場所:地方を強化し、経済面でのチャンスを広げるために、地方の産業戦略に合意する。新しい都市転換基金(transforming cities fund)を創設し、都市間交通の整備のために£17億(約2,550億円)を出資する。教員育成プレミアム事業に£4,200万(約円)を出資し、成績が伸び悩んでいる学問分野の教員の育成に努める。

£1=150円で換算

 

https://www.gov.uk/government/news/government-unveils-industrial-strategy-to-boost-productivity-and-earning-power-of-people-across-the-uk

 

【各機関の反応】

○英国学士院(British Academy)

同院の経営最高責任者Alan Evans氏のコメント:

 前例のない変化の時代において我々や社会について理解することは重要になっている。つまり政府の産業戦略の中心が人文社会学なのである。政府の掲げたチャレンジは人文社会科学から多くの思索と洞察力が求められるものである。我々の特別研究員制度を利用する優秀な研究者と継続的に連携し、政府の産業戦略への支援と情報提供に協力していきたい。

 

https://www.britac.ac.uk/news/british-academy-responds-industrial-strategy-white-paper

 

○王立協会(Royal Society)

同協会Venki Ramakrishnan会長のコメント:

 我々の強みである知識基盤経済(knowledge-based economy)に投資するという政府の産業戦略は、英国は世界の研究及びイノベーションのリーダーであるという自信のある前向きなメッセージを発信している。新たな研究開発への投資は技術開発の最先端に居続けるために必要な人材、アイディア、機関への支援をさらに強化するということである。将来のための賢い投資だが、次世代の新産業や繁栄の基礎となる新しい知識を得るためにも、基礎科学への投資も継続して必要であることも確認しておきたい。

https://royalsociety.org/news/2017/11/royal-society-responds-to-industrial-strategy/

 

(9) 芸術、人文、社会科学学部卒業生の就職状況

  11月27日, 英国学士院(British Academy)は初めて芸術、人文、社会科学部(AHSS: Arts, Humanities and Social Science)卒業生125万人を対象にした調査を行い、学位獲得過程において就職に対応できる十分なスキルを身につけることができる証拠を発表した。 AHSS卒業生は全体の卒業生の55%を占めるが、これまでどのようなスキルを身につけ、卒業後どのような進路に進んでいるのか、のデータがなかった。

 今回の調査結果では、雇用者側が求めるスキルはAHSSの学部で学ぶこととほぼ同じであった。

  • コミュニケーション力とコラボレーション力
  • 研究力と分析力
  • 独立力と適用力

 今回の結果では、柔軟性、適応力の高い者の多くがAHSSの卒業生であり、学位そのものが就業職種とは全く関係なくても雇用者からの歓迎されていることが明らかになった。

 報告書ではAHSS卒業生の経済への貢献度も調査している。それによるとウェブデザインから公務員、教師から金融サービスまで、実に様々な分野で活躍をしている。Financial Times Stock Exchange 100社(FTSE100)の中で実に58%の企業のトップがAHSSの卒業生であった。

 また、英国経済の80%近くが所謂サービス業といわれる法律業、会計業、ホスピタリティ、小売業、広告業に由来しており、これらすべての分野でAHSSのスキルと知識が必要とされている。

 英国学士院は人文、社会科学分野の国家的機関であり、発表された報告書は2020年まで実施しているスキルに関する研究プログラムの一環で初めて発行されたものである。

https://www.britac.ac.uk/news/future-proof-grads-new-study-pinpoints-arts-humanities-and-social-science-graduates%E2%80%99-skills

 

(10) FP9初期段階への英国研究会議のコミットメント

 11月28日、英国研究会議(RCUK : Research UK)は、ブラッセルで次期多年次資金助成プログラムであるFP9に関して話し合いが開始されたことを伝えた。「ホライズン2020」プログラムはEUにおける研究・イノベーションプログラムとして、2014年から2020年まで間に最大規模の€800億(約12兆円)が投資されるものである。まだ現在のプログラムも半ばを過ぎただけではあるがすでに次期プログラムの話し合いが開始されている。

 焦点となる点として:

  • ホライズン2020の継続性
  • ヨーロッパイノベーション協議会設立などの新しい概念
  • 社会的課題(Societal challenge)から目的を持った研究(mission-oriented approach)への移行

 RCUKはFP9を形作るための過程に積極的に関わっている。

 次のステップは、2018年の早い時期に欧州委員会(European Commission)からアナウンスされる予定のFP9関係者との協議である。欧州議会と協議するためのFP9の提案は、2018年7月に予定されている。

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/171128/

 

(11) EUからの大学入学者減少(2017/2018学事年度 2017年9月入学対象)

 11月28日、大学入試機関(UCAS: Universities & Colleges Admissions Service)は2017年の英国大学入学志願者の総数を発表した。

 2017年学事年度は699,850人が願書を提出し、2016年より2.6%(18,500人)の減少であった。内訳は英国学生が82%、EU学生が7%、非EU学生が11%であった。非EU学生の大学願書提出者は2.8%増加し、76,380人と記録的な数であった。英国学生は3.1%減り572,285人、EU学生も4.4%減り51,185人であった。

 合格者した者は上記の傾向と同じくEU学生は減り、非EU学生が増加した。2017年の英国学生合格者は2,535人(-0.5%)減り、又EU学生の合格者も2.1%(-650人)減り30,700人となった。非EU学生の合格者は5%(1,900人)増加し40,245人で記録的な数であった。非EU学生の合格者は1.8%の伸びを見せ70,945人で5年連続の増加を示した。

https://thepienews.com/news/uk-non-eu-undergrad-applicants-up-2-8-but-eu-drop/

UCASからの発表内容:

https://www.ucas.com/file/135626/download?token=pQL3AOVK

 

(12)知識交換制度(KEF: Knowledge Excellence Framework)の比較内容の協議進行中

 12月1日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)は知識交換制度(KEF)の評価内容の作成のため技術諮問会を立ち上げたことを発表した。

 新しいKEFの評価システムの開発は大学・科学担当大臣であるJo Johnson氏によって発表され、最近政府が発表した産業戦略白書でも強調されていた。KEFはHEFCEに政策の準備を委託し、2018年4月からリサーチイングランド(RE: Research England)で管理する。

 KEFの評価システムは知識交換に対する大学のパフォーマンス(どのように情報・専門知識・その他経済や社会に貢献できる資産などを共有するか)を一般、企業に提供する。その目的は、知識交換の分野における各機関のパファーマンスを公平に比較し、定期的に更新されたデータを提供することである。これにより大学の更なる改善やより明確な説明責任を促進し、経済的社会的なニーズへの対応及び公共資金の効果的な利用に役立つことになる。

 またKEFは2020/2021学事年度までに高等教育イノベーション基金(HEIF:Higher Education Innovation Fund)に対して£2億5000万(375億円)の増資など、産業戦略も支援することになる。この増資により、大学が様々な方法で様々な規模の企業と協力することで産業戦略に貢献することを可能としていくことになる。

£1=150円で換算

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,116323,en.html

 

(13) UK-CHINA科学技術イノベーション戦略に調印

 12月6日、政府は中国と科学とイノベーション分野の連携を強めるための共同戦略を締結した。

 新戦略は両国の学術界、研究者、そして産業界の連携をサポートし、地球規模課題に共同で取り組んでいくための新たな機会を創出することを目的としている。

 英国政府が産業戦略として研究開発費に£23億(約3,450億円)の追加投資を発表して以降始めての国際共同戦略の合意となる。

 新戦略は中国との間で40年以上にわたり築き上げてきた科学・イノベーション連携をグレードアップしたものであり、中国がバイラテラルで調印をするのは初めてとなる。

 英国と中国の間には既に強いつながりがあり、2014年に立ち上げられたパートナーシップ基金により支援を受けた共同プロジェクトは460以上に上る。

 中国の研究成果が与えるインパクトは年々増加しており、論文引用率は20%以上増加している。英国と中国の共著論文の引用率は世界の平均の2倍以上のインパクトとなっている。

£1=150円で換算

 

https://www.gov.uk/government/news/joint-uk-china-strategy-for-science-technology-and-innovation-cooperation-sets-new-horizons-for-closer-international-collaborations

(14) EU離脱の第1段階の交渉で合意

 12月8日、BBCはメイ首相が英国とEUと第1段階の交渉で合意し、次段階交渉に発展することを発表した。今回の主要な合意点は下記の3点。

  1. 精算金
  2. 在英EU市民の権利
  3. アイルランドの国境問題

http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-42277040

【各機関の反応】

英国大学協会(UUK : Universities UK) 会長Alistair Jarvis氏のコメント

  EUと第1段階の交渉合意を歓迎する。大学として第一優先の課題であった市民権の合意は大変喜ばしい。本日の発表で英国の大学等機関で働くEU市民46,000人の英国での定住と就労が確定された。又5年連続で国外にいても定住の権利を失効しないことも歓迎したい。ホライズン2020やエラスムス+など英国の大学や学生、研究者がプログラム終了まで継続できるということは肯定的なニュースである。

 第二段階の交渉は大学にとってとても重要である。英国大学協会は政府やEUの関係者と協力し、英国の大学が離脱後も十分な成果を出し続けられるよう、また次期研究とイノベーションプログラム(FP9)などに悪影響がないように努力をしていく。優秀なEUの研究者や学生が英国において就業、学業を行なうため障壁を最小限にするための移民制度は離脱後の最優先課題である。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Initial-Brexit-deal-good-news-for-universities.aspx

ラッセルグループ 事務局長Tim Bradshaw氏のコメント

 EU離脱の過程が始まって以来、EU市民の権利が最優先課題であった。離脱の時点まで英国に到着する者に対して退去協定が適用することが確認された。至急この協定を英国法に取り入れることを希望する。ホライズン2020、エラスムス+に関しても大きな前進となり、大学もこの機会を十分に活用することを期待する。

  第二段階の交渉は、40年間かけて築いてきた関係を元に、野心的な研究取極めを早急に進める必要がある。包括協定において共同連携を長期的に継続することは英国・EU双方にとって有益である。

 http://russellgroup.ac.uk/news/brexit-sufficient-progress/ 

2017年12月01日 2017年11月英国高等教育及び学術情報

(1)英国大学の願書10月締切分の内訳概要発表

 10月23日、大学入試機関(UCAS: Universities & Colleges Admissions Service)は2018/2019学事年度入学希望で10月締切分の結果を発表した。

 10月15日に締め切られた願書総数は61,440人で前年より7%(4,250人)の増加であった。締切の対象は英国内大学の医科、歯科、獣医科、医薬科およびCambridge, Oxford の全学科である。

 UCASの理事長であるClare Marchant氏は「これらの学科や大学は常に人気がある。将来に対して不透明感ある現在、英国の高等教育は英国の学生だけでなく、EUの学生や全世界的にも魅力的だということは大変うれしく思う。しかし2018年1月15日の締め切りの結果を待って英国高等教育の需要を知る必要がある。」と述べた。

 英国の学生の志願数は6%(2,530人)増加し41,970人となった。2010年以来の最高記録となる。英国では18歳の人口が減少(-3%)しているにも関わらず18歳の志願数が増えており、イングランドでは+8%、ウェールズでは+7%、合計で2,190人増加している。

 今回の締切で初志願者数は8%増し、56,020人、再志願者数は1%減り4,220人であった。

 EUからの志願者は6%(370人)増加し6,610人、昨年の9%減少から一転増加した。EU以外からの志願者は12%(1,350人)増加し12,860人であった。

 イングランドの医学系の志願者数は、19歳の初志願者の確実な人数に支えられ16%(1080人)増加し、7,770人となった。この増加は2018年からの医学部定員の500人増が影響している。

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/number-applicants-october-deadline-university-courses-reaches-highest-recorded-ucas-figures-reveal

 

(2) ヨーロッパの大学指導者がEU離脱に関する早急な取り組みと明確さを要求

 10月25日、将来のヨーロッパにおける研究・連携・学生の流動性などについての議論に取り掛かるため、ヨーロッパの高等教育機関の首脳陣が英国政府に対し、離脱交渉を早めることを要求した声明に署名をしたことを伝えた。(英国大学協会(UUK: Universities UK)発表。)

 声明はヨーロッパ全土の大学や大学長会議など22の機関により発表されたもので、2019年3月に英国がEU連合を離脱後、ヨーロッパの研究、イノベーションプログラムであるホライズン2020や、交換留学プログラムであるエラスムス+の今後のあり方を明確にさせたいという意図により発表されたものである。

 研究、高等教育分野についてはEU離脱交渉の第1期の結果に従い第2期に討議される予定であったが、2017年10月20日に終了した欧州理事会サミットでは第2期を開始させるほど十分な進展がなかった。交渉の遅れは高等教育機関が直面する不透明な状態を先延ばししたことになった。

 同協会の理事長でLiverpool University のJanet Beer学長のコメント:

 我々欧州の高等教育機関は、2019年の研究・連携。交換留学について方針を決める最終段階に入っている。離脱後のホライズン2020への英国の参加に関しての早急な対応も迫られている。このプログラムからアクティブなネットワーク、優秀な人材、資金の提供を受けることで我々の研究は大きく前進した。このままではヨーロッパの研究が失速する危機がある。

 2019年も引き続き英国はエラスムス+に参加するのかしないのか、海外で勉強ができると希望を持って各国に留学したヨーロッパ中の学生が知りたがっている。エラスムス+などの海外留学プログラムは学生や大学、雇用者に大きな利益をもたらすものである。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Europe%E2%80%99s-University-Leaders-Call-for-Urgent-Brexit-Clarification.aspx

 

(3)英国政府、重点ライフサイエンス分野に£1,700万(約26億円)を投資

 10月25日、英国財務省は国民保健サービス(NHS:National Health Service)と病気治療に役立つライフサイエンス分野に関する投資を発表した。これらの資金は政府の野心的な産業戦略の一環で、新薬開発とメンタルヘルス治療支援、最新の研究開発技術を臨床研究に転換させるものである。

 ライフサイエンス産業は毎年6千万人の患者に対して医療を提供しており、英国経済における重要な産業でもある。5,000社以上で約23万5千人が雇用されており、£635億(約9兆5千億円)の売上高を生み出している。

 財務大臣Philip Hammond氏は1,250人の科学者と250人のスタッフが新薬開発と将来の治療への応用に向け、最先端のバイオメディカル研究に取り組んでいる、欧州最大のバイオメディカル機関で、政府から£3,500万(約53億円)の投資を受けたフランシスクリック・インスティテュートを訪問し投資発表をした。

 投資は以下の3つの新分野に対して行われる。

  1. 低温電子顕微鏡:£500万(約7億5千万円)を、生体成分の3Dモデル作成のための最新の顕微鏡開発に充てる。これにより新薬の開発がより早く廉価にできるようになる。
  2. イノベーションハブ:£700万(約10億5千万円)を最新設備整備と研究者のための新しいラボ設立に充てる。このラボはエンジニアリング生物学、計測学および標準のための英国センターとしてイギリス国立物理学研究所(NPL: National Physical Laboratory), 国立生物学的製剤研究所(NIBSC :National Institute for Biological Standards and Control)とその他企業の共同研究の場として設立される。
  3. ビジネス促進:£500万(約7億5千万円)を、医学研究会議の“Confidence in Concept”(応用可能な基盤研究への支援プロジェクト)の商業化プロジェクトの拡大としてメンタルヘルス治療の促進に充てる。

 また、フランシスクリック、キングスカレッジ、キャンサーリサーチUKによって設立された英国企業、“GummaDelta Therapeutics” が25の新たな職を公募した。同社は今年はじめに新薬開発のため£1億(約150億円)の投資を受けている。

 英国はライフサイエンスの分野では世界を先導している。英国民は世界の総人口のたった0.9%を占めるのみであるが、世界で最も引用される論文の15.2%を占めている。この分野における研究の生産性は米国の2倍であり、ドイツの約3倍である。英国南東部(オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドン含む)は世界的に有名なライフサイエンスクラスターとなっている。これらには世界大学ランキングのトップ20に入る4機関と、メディカルサイエンス分野において世界ランキングでトップ10に入る4つの学科と世界で最大の研究機関が含まれている。政府は、毎年20億ポンド(約3千億円)を追加支出し、支援していくこととしている。

*£1を150円にて換算

https://www.gov.uk/government/news/17-million-boost-to-the-uks-leading-life-sciences-sector

 

4)次期経済社会研究会議(ESRC)議長とUKリサーチイノベーション(UKRI)イノベーション推進理事を発表

 10月26日、Jo Johnson大学・科学担当大臣はJennifer  Rubin 教授(キングスカレッジ政策研究所所長)を次期経済社会研究会議(ESRC:Economic and Social Research Council)議長に指名した。またHarpal Kumar卿(キャンサーリサーチUK理事長)が英国研究会議(UKRI:UK Research and Innovation)のイノベーション推進理事に指名された。

 Rubin教授は2018年3月末までESRCの理事長を務め、4月1日にUKRIの設立と同時にESRCの議長となる。

 英国が研究とイノベーションの分野で世界を牽引し続けるために発足するUKRIの議長職は非常に重要なポストである。UKRIを形作る9機関それぞれに議長職が置かれるが、その役目は現在の各機関における議長と理事長双方の職務内容を果たすものになる。

 Harpal卿の新役職であるイノベーション推進理事はUKRI理事メンバーとして新しく設定され、イノベーションUKの一員としてUKRI内でのイノベーション促進と事業利益の拡大に務めることになる。

https://www.gov.uk/government/news/science-minister-announces-new-esrc-executive-chair-designate-and-ukri-innovation-champion

 

(5)英国政府、£1,500万(約23億円)を新しい工学系高等教育機関に投資

 10月26日、Jo Johnson大学・科学担当大臣は質の高い工学コースの提供に特化した新しい高等教育機関に£1,500万(約23億円)を投資することを発表した。

 次世代テクノロジー&エンジニアリング高等機関(NMiTE: New Model in Technology & Engineering)は、近年技術者の需要が急激に伸びている高度製造業やAI、サイバーセキュリティーの分野など、最先端工学分野について学ぶ大学になることを目指している。

 NMiTEは最初の入学者を2020年9月に受け入れ、次世代エンジニアの育成のために革新的な手法を採用することとしているほか、2年間短期集中コースで学位取得も目指す。

ユニークな手法として:

  • 講義ではなく実践ベースの学習プロジェクト。授業は教授と実務従事者により進められる。
  • 教育課程は事業主と共に開発する。卒業前に半年から1年の実務経験を必修とする。
  • 50:50のジェンダーバランス目標達成に向け、女子学生の受け入れを促進し女性の工学系卒業者数を増やす。
  • 多様性と社会的流動性を支えるため、奨学金受給者が学生全体の25%となることを目標とする。
  • 見習いとして業務に従事したことで高い技能を身に付けた者や軍隊除隊者等、工学系の学問のバックグラウンドを持たない者の積極的受け入れ。

 

 今回の投資は教授陣、キャンパス整備、カリキュラム開発に充てられる。NMiTEは多くのエンジニアや専門家を社会に送り出し、現在の社会における技能熟練者不足の解消に役立つことになる。

 新高等機関開設に当たっては、ワーウィック大学とQinetiQやHeinekenなどの事業主がカリキュラム開発に協力し、卒業後即雇用市場で実践できる人材の育成を目的とする。

 本計画は、生活水準を向上させ、生産性を上げることで経済成長につなげ、国全体の成長を促すという、政府の「産業戦略」の一環に基づくものである。

 工学系の卒業生数は近年急激に落ち込んでおり需要に供給が遠く及んでいない。非営利団体"エンジニアリングUK“の試算によると、年間20,000人の技術者が足りないとしている。

 今回の取り組みは、質の高い教育機関が高等教育のマーケットに参入しやすくすることで高等教育の質と競争を高めることを目的として制定された、2017年の高等教育研究法に基づいて行われるものである。

 政府は既に、若者が将来高賃金の高技術職につくための訓練が受けられるよう、£5億(約750億円)以上を投資する技術教育改革に取り組んでいる。

*£1を150円にて換算

https://www.gov.uk/government/news/multi-million-pound-funding-for-new-higher-education-provider

 

(6)英国大学協会国際部が 3年間の“Go International:Stand out” キャンペーンを立ち上げ

 11月2日,英国大学協会国際部(UUKi)は、2週間以上海外で学び、働き、若しくはボランティア活動に従事する学生数の増加を目指す、3年間の“Go International: Stand out”キャンペーンを立ち上げた。

 現在海外に出ていく学生はほんの6.6%に過ぎない。2017年4月、UUKiは政府の目標である「海外に出て行く学生の割合を2020年までに現在の2倍以上の13%にする」という目標をサポートするための活動を開始した。

 海外での経験が無い学生に比べ、海外経験のある学生の方が成績が良く、就職率も高いという調査結果が出ている。この効果は特に社会的に不利な立場にある学生に顕著に現れている。彼らの卒業後の平均収入は、海外の経験が無い学生に比べ6.1%以上多い。特に黒人については、海外経験者の無就業率は海外経験の無い者に比べ41%少なくなっている。

 海外での経験を通して得られることが期待されるスキルが、現時点では学生に十分に備わっていない。2017年に英国産業連盟(CBI:Confederation of British IndustryとPearson(教育出版社)の共同調査によると、事業主の39%が大学卒業生は国際的な感覚を十分に身に付けていないと考えており、47%が外国語力が十分でないと考えていることが明らかになった。

 また、ブリティッシュアカデミーの調査によると、中小企業の10社に7社は、将来社長になる者は外国語が話せ、また海外経験があるべきである、と考えていることがわかった。

 米国では15%、オーストラリアでは19%、ドイツでは25%の学生が海外留学の経験があり、英国は非常に立ち遅れている。しかもこれらの国々は更に学生の流動性を高めることを目指している。例えばドイツは2020年までに学生の半分が海外での経験を積むことを目標としている。

 Go International: Stand outキャンペーンでは、以下の活動を通して国家戦略をサポートしていく。

  • 各大学長にキャンペーンへの参加を促し、海外に出て行く学生数を増やすための活動に取り組んでもらう。
  • 各大学が学生の流動性を高めることに役立つリソースを開発する。
  • アカデミックや同窓会なども含めた海外留学に関するネットワークを構築する。
  • 海外留学に関する調査を実施しその効果をデータ上で示す。
  • 政府や海外機関と共に学生の海外留学の推進を支援する。

 このキャンペーンは英国政府その他関係団体から公認されているもので、すでに54大学がキャンペーン参加の意思を示している。

http://www.universitiesuk.ac.uk/International/Pages/uuki-calls-for-students-to-Go-International-Stand-Out.aspx

 

(7)英国政府、AI、ロボティクスリサーチ、スマートエナジー分野の研究に£8,400万(約126億円)を投資

11月8日、気候変動・産業担当大臣Claire Perry氏は、我々が直面する環境問題改善に役立つロボティックスやAIプロジェクト推進のため、産業戦略チャレンジ基金(ISCF: Industrial Strategy Challenge Fund)に£6,800万(約102億円)を投資することを発表した。

 この投資により、核エネルギー生成の際に発生する物質や宇宙ごみ、深海採掘などに対応するための北海の凍結深度で活動できるロボットやAIの開発に取り組むことになる。

 £約4,500万(約67億円)がマンチェスター大学、バーミンガム大学、サリー大学、及びエジンバラのヘリオットワット大学をベースにした新しいリサーチハブ設置のために使われる。

 工学・物理化学研究会議(EPSRC: Engineering and Physical Sciences Research Council)によって運営される中核的研究機関(COE: Centres of Excellence)においては、宇宙での活動や深部採掘、核エネルギーや沖合い風力など危険の多い厳しい環境でも安全に働けるロボティクス技術の開発に当たる。

 政府からの出資と共に、4つのハブは商業界や国際パートナーから約5,200万ポンド(約78億円)の支援を受けることになっており、またサリー大学のハブは英国宇宙局からの共同出資を受ける。

 またドイツで行われた気候変動会議COP23に先んじて、大臣は2件のスマートエナジーイノベーションコンペのために£1,600万(約24億円)を投資することを発表した。これは、10月に政府が決定した低炭素社会に向けた戦略“Clean Growth Strategy”の中で掲げられたクリーンテクノロジーイノベーションのために£25億(約3750億円)を投資する、という目標の一部となっている。

 これらのコンペは、ピーク時間帯の電力供給網の需要を抑え、低炭素発電の需要を増やすことで、コストと炭素排出量を減らしていくための技術開発に焦点を充てる。また、スマートエナジーシステムが学校や小規模サービス産業におけるエネルギー消費量を削減するための手法の開発にも活用される予定である。

 これらの取り組みは、今年7月に政府により発表された「Smart Systems and Flexibility Plan」に基づいて行われるものである。

*1ポンドを150円にて換算

 

 https://www.gov.uk/government/news/funding-for-84-million-for-artificial-intelligence-and-robotics-research-and-smart-energy-innovation-announced

 

(8) 教育費利益が研究費の穴埋めに。留学生一人当たり£8,000貢献

 11月9日、高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)は新しい報告書”How much is too much? Cross-subsidies from teaching to research in British universities” (著:Vicky Olive)で大学が教育で得た利益を研究費に当てている実態を指摘し、財務大臣であるPhilip Hammond氏に研究・開発費の予算の増額を呼びかけた。

 

報告書で指摘している点:

  • 研究費の赤字は£33億(約5000億円) ― 研究費収入の37%
  • 学費収入からの黒字は£13億(約2000億円)(非公的資金の教育収入の28%)
  • 研究費の13%は教育ファンドの余剰金(およそ£7ごとに£1)
  • 英国にいる留学生は平均で£8,000(120万円)、英国の研究に貢献している。
  • もし研究ファンドの増額がなければ、英国の地方都市で多大な損害が出る。
  • 保守党が掲げるGDPの3%を研究開発費に当てるという目標を達成しようとするとさらに£248億必要。

報告書での3つの推奨内容:

  • 本年度の予算で研究費として£10億(1500億円)の増資。
  • 大学/慈善団体の連携のため余分な公的資金を別に蓄えておく。
  • 政府の研究開発費に関する新しいロードマップの作成

University of Oxfordで経済学を専攻する大学院生であり、報告書の著者であるVickey Olive 氏は“教育で得た余剰金を研究に当てることで英国の大学を世界クラスに押し上げているが、大学がこれまでにないほどの危機に迫られている。政府は学生の学費を凍結をしたが、学生達はお金の使途をはっきりするように要求している。また留学生数は常に脅威である。学生が講義やセミナーで恩恵を受けていると考えているのであれば、教育から出た利益を研究に当てることは道徳的には間違いではない。しかしどの規模でこのようなことが行なわれているか、余剰金の行方を調査する権利はあり、その結果その価値や継続性などを議論できる。

 このプロジェクトを始めたときは特に隠された意思などなかったが、最終的にもっと予算が必要ということを強く確信した。より多くの民間資金、より多くの私的資金、そして明確な戦略が必要ということである。

 高等教育政策研究所の理事長であるNick Hillman氏は”研究費の不足分の穴埋めを教育費で賄っている理由として

  • 公的、私的支援金、及び慈善団体からの資金は研究・開発費をすべてカバーしていない。
  • 教育費から研究費の穴埋めは現在のレベルでは決して持続的ではない。
  • 政府は研究・開発費をGDPの約2倍とすることを目標にしているが、投入額は現状維持が精一杯という額でしかない。

戦略としてOECDレベルの研究費の増額投資を数年続けた後にドイツレベルの投資をすることである。(これは2017年の保守党の公約にも入っていた) 

http://www.hepi.ac.uk/2017/11/09/new-report-shows-international-student-pays-8000-towards-filling-gaps-uk-rd-spending-calls-philip-hammond-invest-1-billion-budget/

*1ポンドを150円にて換算

 

(9)教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)に学生は何を求めているのか?

 11月13日、英国内20を超える学生組合コンソーシアムが実施した「TEFはどのような調査内容、形態、評価であるべきか」(Teaching Excellence Framework: The Student perspective) の調査結果を発表した。国内123機関、8,994名の学生を対象に行われた。結果概要は以下のとおり。

  1. 84%の学生が、政府が教育評価を行い教育の質の向上を促す取り組みをすることを強く支持している。
  2. 多くの学生が現在TEFに含まれていない教育や学習環境に関する要素についても評価が行われていると考えていた。(IT環境:86%、図書館:93%、教育教材:94%)
  3. 学生のフィードバックが調査に活用されることを望んでいる。(教授やチューター、講師に対するフィードバック結果の活用:59%、学年末のコース全体のフィードバック結果の活用56%) 全国学生調査(NSS: National Student Survey)がTEF3では比重が半分になったことにより、学生のフィードバックはTEFにおいては重要な要素ではなくなりつつある。
  4. 大学における教育において最も重要な要素は何かという問いに対しては、「教育や教授等の質」が一番重要である、と考えており、「卒業生の就職状況」については一番低い(7番目)要素であった。
  5. 大学が質の高い教育をしているかどうかの判断要素として、リソースへのアクセスのしやすさよりも、卒業後の俸給の高さを重視する者が3倍弱であった。
  6. 68%が「学生が十分に成功できない」場合に大学は責任を追うべきであると考えており、34%が「就職率が低い」場合に大学は責任を負うべきだと考えている。また、18%が「学生が中退した」場合に大学は責任を負うべきだと考えている。
  7. 大学を「金・銀・銅」でランク付けすることに反対する学生はほんの20%であったが、60%の学生が学費の上昇とランク付けをリンクさせることに反対している。
  8. 大学が「銅」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた学生は50%に上った。
  9. 対して大学が「金」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた学生は6%であった。
  • 人種的マイノリティグループに属する学生のうち11%が、大学が「金」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた。他方白人学生で同様に回答した者は5%であった。
  • 学科レベルで同様の評価がされた場合についても、「金」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた人種的マイノリティグループと白人学生の割合は、上記と同様の結果であった。

http://wonkhe.com/wp-content/uploads/2017/11/tef-pr-research-report.pdf

 

(10)予算2017発表を前に

 11月13日、ラッセルグループの会長であるAston Muscatelli卿は11月22日の秋期財政報告書の発表に先駆けて政府に対して研究資金の増額を要求する書簡を提出した。

 書簡の中でAston Muscatelli卿は財務大臣宛に、以下を要求している。

 

・高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Funding)の増額

・英国全土の大学と企業間の知識ベースの相互交換支援のためHEIFと同様な助成金

・新しいテクノロジーが市場への参入を図るための資金

 HEIFに対して投資された£1ごとに£9.70(1455円)の利益が出ているという分析結果が出ている。Muscatelli卿はHEIFに対して毎年£2億5000万(375億円)の増額を提案している。また研究投資の影響力として品 質 関連の”QR”の資金の保護の重要性を強調した。

*1ポンドを150円にて換算

 

http://russellgroup.ac.uk/news/budget-2017/

 

2017年11月02日 2017年10月英国高等教育及び学術情報

(1) 米国との間で6,500万ポンド(約97億5000万円)のサイエンスパートナーシップ協定を締結

 9月20日、宇宙の謎を解明する米国とのグローバルサイエンス共同プロジェクトのために、政府は6,500万ポンドを投資すると発表した。この投資は新たに締結された英米間科学技術協定に基づき行われる。

 今回締結された米国エネルギー省との協定は、長期基礎ニュートリノ観測施設(LBNU:Long-Baseline Neutrino Facility)及び地下深部ニュートリノ実験(DUNE:Deep Underground Neutrino Experiment)実施のためのものである。この投資により、英国が国際的なDUNE実験に将来的に関わり続けていくことが可能となった。

 英国リサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation)のひとつとなる、英国科学技術施設会議(STFC: Science and Technology Facilities Council)が英国側の施設の管理や研究者の支援に当たる。

*1ポンドを150円にて換算

 

http://www.stfc.ac.uk/news/uk-signs-65m-science-partnership-agreement-with-us/

(2) 創造産業クラスタープログラムの創設

 9月22日、Greg Clarkビジネス・エネルギー・産業戦略大臣は、芸術・人文学研究会議 (AHRC: Arts and Humanities Research Council)が「創造産業クラスタープログラム」を新たに立ち上げたことを発表した。英国内のグローバル企業と大学がコラボレーションし新たな創造が生み出されることが期待される。

 2018年中に開始予定の本事業には約8千万ポンド(約120億円)が投資されることになっており、経済成長を促すエンジンとなるような革新的な製品やサービスを早い段階で発掘し助成していくことを目的としている。8つの産学連携事業を支援していく予定。また、画期的な取り組みをしている企業であれば、どのような規模であっても支援していくこととしている。

 同時に、国立創造産業政策評価センター(national Creative Industries Policy and Evidence Centre)が設立される。このセンターでは、社会の中でより幅広く産学連携を促進させる方策など、創造産業に関するより深い理解のための分析が行われ、将来の政策に役立てることを目的としている。

 AHRCのAndrew Thompson議長コメント:

 映画、テレビやゲームなどのデザインから建築やファッションまで、イギリスは世界でも有数のパワフルで革新的に創造性を進化させている国である。創造産業はわが国の将来の繁栄に重要な役割を果たす。本事業は人文学の分野における研究とイノベーションのための投資としては過去最大規模のものになるだろう。革新的な製品とサービスの開発、高い価値のある技術や新しい職の創造という面から、長期的な英国社会の成長を支えていくであろう。

*1ポンドを150円にて換算

http://www.ahrc.ac.uk/newsevents/news/cicp-launch-greg-clark/

(3) タイムズ紙、サンデータイムズ紙がGood University Guide 2018を発表

 9月23日、タイムズ紙、サンデータイムズ紙は学生の大学選択に資するためのGood University Guide2018を発表した。

 総合ランキングで昨年に引き続きケンブリッジ大学が首位を獲得し、2位はオックスフォード大学、3位はセントアンドリュース大学という結果となった。

 評価項目は、①学生の満足度(教育の質、大学での経験)、②研究評価、③入学時の成績、④卒業後の就職率、⑤学位取得時の成績優秀者の割合、⑥卒業率、⑦教員一人当たりの学生数、⑧学生サービス・施設への投資額、となっている。

 また、ランキングのほかにUniversity of the Year(今年を代表する大学)として、ランカスター大学が選ばれた。受賞理由は教育と研究両面における積極的な取り組み、多様な留学生の受け入れで国際色豊かなキャンパスと積極的な設備投資であった。

good_university_guide_201820.xlsxをダウンロード

 http://nuk-tnl-editorial-prod-staticassets.s3.amazonaws.com/2016/bespoke/university-guide/index.html

 

(4) 大学・科学大臣がUKリサーチイノベーション理事会の非常勤執行委員を発表

 9月28日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省の大学、科学大臣であるJo Johnson氏は、新しく創設されるUKリサーチイノベーション(UKRI: UK Research and Innovation)の理事会非常勤執行委員、12名を発表した。

 理事会はUKRIの議長や理事長、及び運営チームと協力し、今後数か月にわたってUKRIの立ち上げとUKRIの今後の方向性の戦略を築いていく。産業戦略チャレンジ基金など研究とイノベーションの予算の割り振りの助言を大臣に対して行っていく予定。

 理事会の主な任務は以下のとおり。

・UKRIの母体である英国研究会議(RCUK: Research Councils UK)とイノベーションUK及び新しい組織リサーチイングランドの強みを維持し、強化すること。

  ・政府からの年間60億ポンド(約9,000億円)の投資に対してその価値と利益を最大限に引き出すこと。

 理事会メンバー

  • John Kingman 卿(UKRI暫定議長)-- Legal & Generalグループ会長/財務省第二事務次官
  • Peter Bazalgette 卿―テレビプロダクション会社創設者/ITVテレビ局会長
  • Julia Black 教授―LSEの研究に於けるプロダイレクター
  • Leszek Borysiewicz 卿―University of Cambridge の学長(2017年9月末まで)/Cancer Research UKの議長
  • John Browne of Madingley 卿―L1 Energyの会長/BP |Plcの元最高責任者
  • Ian Diamond卿―University of Aberdeenの学長
  • Fiona Driscoll 氏(UKRI監査委員長)―Nuffield Health監査委員会委員長
  • Alice Gast 教授―Imperial College London学長
  • Harpal Kumar 卿―Cancer Research UK最高責任者
  • Max Lu 教授―University of Surrey学長
  • Vivienne Parry 氏―ゲノミクスイングランドの企画長
  • Mustafa Suleyman 氏―DeepMIndの共同創設者及び応用AIの責任者
  • David Willetts 卿―Resolution Foundation 理事長/元大学・科学担当大臣
  • Sally Davis教授―医務部長(公務員のためメンバーになれないが個人の裁量により参加する)

https://www.ukri.org/news/science-minister-announces-non-executive-board-members-of-uk-research-and-innovation/

(5) メイ首相が学生への学費の支援を公約

  10月1日、メイ首相は来学事年度の大学の授業料を今年と同額の9,250ポンドに据え置き、今後学生財政システムの再検討をと発表した。(BBCニュース配信)

また、卒業生が学生ローンの支払いを開始する年収基準額を、21,000ポンド(約315万円)から25,000ポンド(約375万円)に引き上げるとした。

  高等教育機関の改革は、2年制の学位取得コースの導入など、金銭的な負担がかからない方法が模索されている。また、授業料のローンの利率を下げたり、人手が不足しているエンジニアリング関係の学科の学費の値下げなどのアイディアも検討、また卒業税に関しても示唆した。

BBC教育部記者 Sean Coughlan氏コメント:

 授業料の凍結は好感触をもって受け止められた。しかし選挙のたびに政策がいかに変わるものであるかをも示した。授業料の値上がりと学生ローンの焦げ付きへの対処は、いずれの党にとっても若い有権者を取り込むための重要な政策のひとつとなっている。

 高等教育研究法制定により毎年学費値上げの方向を示したが、大学側はすで暗礁に乗り上げてしまっていると予想している。なぜなら多数の支持がない限り政府はそれをごり押しすることは現実的ではないからである。恐らくもっと重要なことは学生ローンの支払い開始の年収基準額を£21,000から£25,000に引き上げ、すでにこの秋から学生ローンの利率を6.1%に引き上げたがこれについて再検討することを約束したことである。  

*1ポンドを150円にて換算  

http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-41456555

【関連記事】  

 メイ首相の公約を受けて英財政研究所(IFS: Institute of Fiscal Studies)による「授業料据え置き及び学生ローンの支払い開始の年収基準額の引き上げに関する試算」

   ・年収基準額を2021年まで25,000ポンドに引き上げ続けた場合、平均して一人当たり約10,000ポンドの支払い減額が生じる。中所得者層が一番恩恵を受け、最大15,700ポンドの支払い減額となる。これにより30年間の返済期限内に返済できない卒業生は83%に上ると試算される。(現在は77%が期限内に返済できていない)

  ・授業料を9,250ポンドに据え置くことで短期的な影響はさほど無いが、長期的に据え置きとなると多大な影響が出てくることが見込まれる。授業料を値上げせず、据え置きにすることで、この秋から3年制の学位コースに通う学生の将来の負債額は50,600ポンドから£49,800ポンドと減少することになるが、多くの学生はいずれにせよこれらの負債を完済することはできず、高収入の卒業生だけが返済額の減額の恩恵を受けるという状況を意味する。

  ・これらの変更により、政府の高等教育分野への長期的な支出が増えることになり、毎年約£20億を支出する必要が出てくるだろう。

  ・他との相殺の無い単なる授業料値上げの凍結は、大学の財政を圧迫することになる。短期的には影響は小さいが長期的な影響は避けられない。このような対応をするのであれば、政府が新たにTEF(教育評価制度)を導入したことについて疑問符がつくし、大学の長期的な財政運営の見通しに不確定さをもたらすことにもなる。

https://www.ifs.org.uk/publications/9964

【各機関の反応】

 ・英国大学協会理事長 Janet Beer 教授:

 現行の高等教育システムは大学の経営維持を可能にし、社会が必要とする熟練した技能をもつ者を輩出し、様々なバックグラウンドを持つ学生が新たな環境への扉を開く機会を提供している。他方、学費が適切で正当な額であるかどうかをチェックすることもまた重要である。

 政府が学生のお金に関わることについて注力していることは喜ばしい。学生ローンの支払い開始の年収基準額の引き上げ計画も歓迎する。同協会は政府が生活奨学金制度を再導入し、低~中所得者の学生ローンの利率の引き下げに取り組むことを期待する。また、社会人学生やパートタイム学生の数が減っていることに対し、何らかの対策を講じる必要があると考えている。世界クラスの教育機関を持つ英国での大学に対する助成金の継続が重要である。IFSが発表したように学費を凍結してもその代わりとなる助成金の支給がなければ、世界級の教育を期待する学生に応えることが不可能になるという危機が起こることになるであろう。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-PM's-planned-review-of-English-university-funding.aspx

(6) 起業家に大学での研究場所を提供―ロイヤルソサエティが一人当たり4万ポンド(約600万円)の資金を準備

 10月10日、ロイヤルソサイエティは’Entrepreneur in Residence scheme’を新たに実施することを発表した。この事業は大学での研究をスムーズに産業に転用することができるよう、これらを妨げる障壁への対処について研究ができるようにすること、大学内に起業の文化を根付かせること、及び産業界で必要とされているスキルを身に付けさせるためのカリキュラムを現在産業界で働く卒業生に開発してもらうこと、を目的とするものである。

 支援対象として選ばれた者は最新の産業科学をもとに学生向けのコースを開発したり、産業界で働くことを希望する学生に対しキャリアについてのアドバイスを行ったりすることが期待される。また起業に興味のある学生や教授陣へのアドバイスや、大学において現在行われている研究の商業化の可能性についての評価・アドバイスも行う。

 このスキームでは最大10名が2年間にわたり40,000ポンドを支給される。支援期間中は業務時間のうちの20%を大学で働く時間とすることが条件となる。  

*1ポンドを150円にて換算

 https://royalsociety.org/news/2017/10/royal-society-launches-40000-scheme-to-place-entrepreneurs-into-universities/

 (7) 産業戦略の中心となる大学の知識交換評価: TEF, REFに続く新評価制度KEF(Knowledge Exchange Framework)構想

 10月12日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は2017年HEFCE会議にて行われた大学・科学担当大臣のJo Johnson氏のスピーチ内容の概略を発表した。

 大臣は、大学の研究・知識交換について担当する新組織であり、UKリサーチイノベーション(UKRI: UK Research Innovation)に属するリサーチ・イングランド(Research England)に対し、高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Funding)への投資額増加の適切なレベルについての検討を依頼した。これはHEIFの年間の投資額を2億5000万ポンド(375億円)にするべきというWittey Review の調査報告書の提言と、質の高い研究を支援するにあたっての根拠が必要であることによる。大臣は商業化に成功した、既成概念を打ち砕くようなハイレベルの研究例としてNew York University のRemicadeやCancer Research のAbirateroneの事例を挙げた。

 また、大臣はリサーチイングランドに対して、学生局(OfS: Office for Students)と共に、Keele University 学長Trevor McMillan教授が主導して取り組んでいる知識交換評価制度(KEF: Knowledge Exchange Framework)に早急に協力することを指示した。KEFは知識の交換、交流、協働そして商業化を通じて大学が経済に及ぼす影響の大きさを測り評価するものである。

 知識主導型経済が今後進んでいく中で、大学は政府が注力する研究開発の中心となる役割を果たすこととなる。KEFは大学のパフォーマンス向上に貢献するばかりではなく、社会や地域へのアカウンタビリティも高めてくれるだろう。

 KEFは毎年の高等教育調査(HE-BCI: Business and Community Interaction Survey)をもとに導き出される。今まで本調査により評価された大学は、HEIFのパファーマンス基金から資金提供がなされてきている。

 HEFCEは科学関連予算から知識交換(knowledge exchange)に対し、1999年から予算支出を行っている。同時にHE-BCI調査の開発も行なってきた。HE-BCIは国際的、国家的、地域的な視点を含み、長期的社会貢献のための最も包括的なデータである。

 HE-BCIの調査結果によると、知識の面について英国の実績は、初めてデータが発表された2003/2004学事年度の£25.3億から2015/2016学事年度は£42.1と66%の伸びを示している。今年のデータでは大臣が主要分野とした分野において大きな成長を遂げている。大企業の収入は昨年に比べると5.1%、中小企業の収入は11%、知的財産の収入は13%の増加があった。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,115859,en.html

 大学・科学担当大臣 Jo Johnson 氏のスピーチ全文

https://www.gov.uk/government/speeches/how-universities-can-drive-prosperity-through-deeper-engagement

*1ポンドを150円にて換算

【各機関の反応】

・ラッセルグループ

事務局長代理Tim Bradshaw氏のコメント

 我々は中小企業から多国籍大企業まで様々な企業や公共機関と提携をしてきている。メンバーの大学は年間20,000ほどの小規模企業と協力し、イノベーションや経済成長に貢献している。昨年はラッセルグループの卒業生やそのスタッフによる起業が688件に上った。これはまったく偶然の産物ではない。ラッセルグループの大学は知識交換にプライオリティを置いており、「研究から商業化へ結びつく発見数の増加」という政府の目標を共有しているためである。

 知識化交換は幅広い活動分野と幅広い多くのパートナーに及ぶ。もし新しいKEFがすでに大学で行なっている素晴らしい業績を正しく判断しようとするのであれば、その多様性を評価のポイントに加える必要がある。大学とそのパートナーのために新たな有効なツールを作成しようとするのであれは、英国全体で行なわれている知識交換の全容を注意深く見極めて取り組む必要がある。

http://russellgroup.ac.uk/news/knowledge-exchange/

2017年9月27日 2017年9月英国高等教育及び学術情報

英国学術情報 9月分

(1)大学における無条件合格者数の増加

  8月12日、Daily Telegraphによると、無条件で合格者を受け入れる英国の優秀大学が数が5年前に比べて倍増していると報告した。(高級紙Independentsによる報道)

 大学間で入学者獲得競争が激化する中で、より多くの学生を確保するためにこのような事態が生じているとされている。特に英国の優秀な大学で構成されているラッセルグループ加盟の大学が無条件合格者数を増やしていることを指摘している。

 統計によるとUniversity of Edinburgh における無条件合格者は2012/2013学事年度は125人だったが2016/2017学事年度は350人とほぼ3倍に、University of Birminghamでは 1,003人から2,471人へと倍増している。またKing’s College London , University of Warwick , University of Manchester でも同様の傾向が見られていると報道している。

  この傾向は2015年に施行された新しい助成金の規定により、イングランドにおいて学部定員が廃止された以降に顕著になっている。定員廃止を受け、大学は利益を出すために可能な限りの学生を受け入れようとしており、ビジネスライクだという非難を巻き起こしている。

 無条件合格数は2014年では12,100人であったところ、2015年には23,400人となり、2年前の定員廃止により着実にその数を伸ばしている。

 学生を取り込むために、入学資格を満たすSixth Formの成績を取得している学生に対し、もしこの大学を第一志望とするのであれば無条件にアップグレードする、という条件を出す大学も多くなっている、という傾向も見受けられる。 

 大学入試機関(UCAS:The Universities and Colleges Admissions Service)は報告書において、無条件合格者数が増加傾向にある原因のひとつとして、Aレベルに達する生徒数が2010年と2015年を比べると減少していることにあると警告している。

 ラッセルグループの報道官は「すべての申請は大学入学志願者の詳細な成績記録、及び入学者選考チームが、申請者が大学のプログラムでやっていけるかどうかを判断することによって決定されている。」と答えた。

 無条件合格者の増加に関わらず、学生数は減少している。最近の報告では大学進学を考えている若者の割合は年々減ってきており、学費など財政面が一番の原因とされている。

 ウェールズとイングランドの11歳から16歳の2,600人を対象に行われたサットントラストの調査によると、7人中1人(14%)は高等教育機関への進学を考えていないという。同じ質問で5年前の調査結果は11%であった。

 また最近の教育省(DfE: Department for Education)の統計によると、恵まれない学生を高等教育に参加させるプログラムに多額の資金を投入しているにもかかわらず、公立校と私立校出身者の大学進学者数の差がこれまでの最高を記録した。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/universities-allow-increasing-numbers-of-students-in-without-asking-for-any-grades-a7889426.html

【関係機関の反応】

・ラッセルグループ

 ラッセルグループの報道官は「ラッセルグループの大学の課程は知的挑戦に満ちたもので構成されている。入学担当スタッフが各学生の学習記録を分析し、当該大学の課程に十分に見合う能力を持つと判断した場合に学生にオファーをしている。いくつかの大学では例外的にごく少数の学生に対し無条件合格を出しているが、彼らは既にA levelの結果が出ているか、その他の高等資格を持つ学生である。無条件合格を出している場合、多くの大学では入学基準満たしている生徒だけに出している。」と語った。

http://russellgroup.ac.uk/news/university-unconditional-offers/

 

(2) アクセス協定2018/2019学次年度の概要発表

 8月23日、公正機会局(OFFA: Office for Fair Access) は2018/2019学事年度のアクセス協定における主な内容を発表した。

 最新のアクセス協定は、恵まれない環境にいる生徒の成績を向上させるプランや、生徒の可能性を引き出し、環境による障害に打ち勝つことを支援するために大学が学校と共に取り組むものとなっている。新プランは、新しい活動とすでに存在する活動の拡大及び再検討の組み合わせとなっている。その内容は:

  • 学校への資金的援助
  • フリースクールやテクニカルカレッジの創設
  • 学校のカリキュラム作成への参画
  • 情報/知識の共有
  • 学校運営、ガバナンスの支援
  • メンター、チュータープログラムなど長期的なアウトリーチ活動の実施
  • 教師や学校管理者を対象としたトレーニングの実施
  • 慈善活動組織など第三者機関とのパートナーシップの構築

 高等教育機関は学校の成績向上に重要な役割を果たすと認めた上で、OFFAは恵まれない環境にいる生徒の成績向上について学校と大学が連携することを、今年初めてアクセス協定に盛り込んだ。しかし、大学やカレッジはここ何年もの間、ボランティアで当該活動にコミットしてきている。この協定の実施状況については毎年モニタリングされる。

https://www.offa.org.uk/press-releases/access-agreements-2018-19/

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Jarvis 氏のコメント:

  大学が提供している支援は、恵まれない環境にいる生徒の記録的な大学進学率の上昇に貢献している。すべての大学は恵まれない環境にいる生徒の高等教育への参加機会の拡大のため努力し、また在学中の支援も行なっている。また、恵まれない環境にいる学生と他の学生層とのギャップを縮めるための更なる支援が大学には期待されている。社会的流動性を加速させるため、確固とした根拠に基づき、どのような支援が一番効果的なのかを見極めなければならない。大学はすでに様々な方法で学校と関与しており、参加拡大と生徒の可能性を最大限に引き出すためのこの活動を継続し、拡大していく。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/uuk-response-offa-annual-summary-institutions-access-agreements.aspx

・サットントラスト(教育を通して社会的流動性を改善するために設立された慈善団体:Sutton Trust)

同団体の創設者で会長であるPeter Lampi 卿のコメント:

 我々の調査によると大学進学者の割合が減少している。多くの学生が高等教育にかかる費用を心配しているためである。£57,000の負債と上昇する学生ローンの利子率などの問題がある中、恵まれない環境にある学生数を増やすためにはアクセス協定はさらに重要になってくる。大学がアクセス改善のために学校との連携や評価に時間や費用を投資していることは喜ばしいことである。我々はOFFAとともに活動基本方針が費用対効果に見合ったものであるかを見守り続ける。

https://www.suttontrust.com/newsarchive/sir-peter-lampl-comments-on-the-latest-offa-access-agreements/

 

(3) 第二次出国チェックプログラムの統計結果発表

 8月24日、内務省(Home office)は出国チェックプログラムの一環として英国の出入国の統計を発表した。

 移民法2014により導入された法により、航空、海運や国際鉄道産業などの各主体がその権限を持って統計調査が行なわれた。分析は出国チェックプログラムが開始された2015年4月以降出入国が認められた個人を対象にしている。

移民大臣のBrandon Lewis氏のコメント:

 内務省は英国国境を跨ぐより具体的で包括的な旅客情報を提供するために、2015年に出国チェックプログラムを導入した。この情報はすでに警察や警備会社などにとって、犯罪者やテロリストを追跡するための貴重な情報源となっている。

 報告書では、2016/2017学事年度中に期限が切れるビザを所持している1,340,000人の非EU圏からの入国者のうち、96.3%が期限以内に出国していることが報告されている。出国チェックは今後も長期的に統計を集計し、確固としたものにしていきたい。

https://www.gov.uk/government/news/home-office-publishes-second-report-on-statistics-collected-under-exit-checks-programme

 

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Jarvis 氏のコメント:

 留学生にとって有益な政府の調査を歓迎する。留学生がいかに英国経済や地域社会に良い影響を与えているかの証拠を今回の調査結果は示している。

 Oxford Economics の最近の調査によると、留学生は£250億以上を英国経済にもたらし、英国国内で20万件以上の職に就労している。また留学生は英国の大学のキャンパスを文化的、経済的に豊かにし英国人学生にも良い影響を与えている。多くの留学生が帰国後も個人的にもキャリア的にも我々と強い関係を築きあげ、英国にとって利益をもたらしている。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/uuk-response-government-commitment-study-international-students.aspx

 

・ラッセルグループ

同グループの理事代理Tim Bradshaw氏のコメント:

 留学生は英国に莫大な貢献をしている。大学が引き続き全世界から優秀な人材を誘致し雇用することが可能な移民法の制定が必要である。

 留学生が多様な学習環境の創出と莫大な経済効果を生み出していることに加えて、出国チェックデータにより、圧倒的な数の留学生がビザ規定に従っていることが確認された。

 目的に合った制度であることを証明するための第1歩は正確なデータである。この点において出国データを再度採用した内務省の決定を歓迎する。報告書は英国に滞在する留学生の価値を証明した重要な1歩である。我々は常々、留学生は大学だけでなく英国にとって価値があると考えている。英国移民システムの今後のあり方に関する調査を依頼されている移民諮問委員会(MAC: Migration Advisory Committee)に対し、今回の調査結果が前向きな影響を与えることを期待している。

http://russellgroup.ac.uk/news/student-immigration/

 

 (4)シンクタンク報告書:大学は企業同盟(カルテル)のようだ

 9月3日、BBCの報道によると、2020年の次期総選挙の公約作りのため創設された中道右派のシンクタンク、“UK2020”が大学に関する報告書を発表した。(”Time bomb: How the university cartel is failing Britain’s students”)

  この中で「大学はまるでカルテルのようであり、2年制学位コースを十分に提供していないと非難されている」と述べている。また「この短期学位コースは学生ローンの返済額を縮小することができる」と述べている。

 この意見は労働党の上院のLord Adnis やすでに2年制を実施している私立大学University of Buckingham の学長であるAnthony Seldon 卿にも支持されている。

 しかし公立大学を傘下に置く英国大学協会のスポークスマンは、そもそも2年制コースの採用は限定されてきた、と述べた。また、公的な調査により、高等教育機関間における競争は適切に行われてきていると報告されている、とも述べた。いくつかの大学ではすでに2年制コースを提供してきているが、現在の学費やローンのシステムのため学生からの需要が限定されている、とも述べている。

 この2年制学位号取得コースを増やす計画は今年2月に大学大臣であるJo Johnson氏から発表があった。

 今回の報告書UK2020は、実業家でLeave.EUの創設者であるRichard Tice 氏との共著であるが、2年制学位コースは学生の負債額を減らし、選択肢を広げ、住宅不足の解消の助けになる、と述べている。

 今年£9,250にまで学費が上昇したことにより、イングランドにおける「リアルな」大学の選択や学生間の競争がうまく機能せず、また多くの学生が負債や利子率に関して怒りを持っているが、これらを報告書では「時限爆弾を抱えている」と表現している。

 また企業同盟(カルテル)のごとくほとんどの大学が最大限の学費を設定し、のろのろとしか改革に取り組まず、民間の高等教育関係者の競争への参入を締め出している、と述べている。

 価格競争という点では大学は最も失敗した分野であり、長期的に学生を支援する資金調達法を探さなければならない、と報告書は指摘している。

 また2年制学位取得コースにすると、卒業生一人当たりで最大£20,000の節約ができると見積もっている。 

 保守党の議員でUK2020の議長であるOwen Paterson氏と労働党のAdnis卿は「異なる党の政治家がこのような国家的重要な要素を持つ問題で同意することは稀である。しかし学生や大学への資金提供の危機を解決したいという信念を持って団結している。」と述べた。

 ”Time bomb: How the university cartel is failing Britain’s students“:

http://www.uk2020.org.uk/timebomb/

http://www.bbc.co.uk/news/education-41125111

(5)THE 世界ランキング2018発表

 9月5日、Times Higher Education (THE)誌が,”World University Ranking 2018”を発表した。THEのランキング開始以来始めて2つの英国大学がトップを独占した。Oxford は昨年1位の座を保ち、Cambridgeは昨年4位から順位を上げて2位となった。

 Cambridge の健闘理由として、研究収益、研究の質の向上が見られ、一方で2位から転落してStanford ともに3位にランクを下げたCalifornia Institute of Technology (Caltech)は、博士号と学士号の比率が下がったこと、及び大学の収益がそれぞれ23%、24%下がったことなどが順位を落とした原因とみられる。OxfordとCambridgeはそれぞれ11%と24%の増収であった。

 Oxford 大学の学長であるLouise Richardson氏は2年連続首位を保ったことを喜びつつも、英国のEU離脱が今後、英国の大学の地位を脅かす恐れがあることも語った。Cambridge大学の研究助成金の4分の1がEU連盟から出資されている。Oxford大学 は5分の1である。

 今回のランキングは米国とオーストラリアの大学も将来的には安心できないことを示唆している。米国大学で200位以内に入った62大学中59大学は学術スタッフ一人当たりの研究収益が減少しており、トランプ政権下においては連邦政府の今後の研究収入の見込みも疑わしい。エリートグループとされる29大学のうち5分の2が順位を下げている。一方オーストラリアは比較的安定した結果を出しているが、政府が2.5%の助成金カット(A$28億/£17億)の計画を進めることになれば、その順位も下がる可能性がある。

 米国、オーストラリアだけでなくヨーロッパ諸国も加速するアジアの競争力に直面している。中国の北京大学は順位を2つ上げ、New York University とUniversity of Edinburghと同位の27位で、同じ中国の精華大学は5つ順位を上げ、オーストラリアのUniversity of Melbourne, 米国のGeorgia Institute of Technology,ドイツのLMU Munich ,スイスのEcole Polytehnique Federale de Lausanneなどの名門大学を抜いた。アジアでのトップの大学はシンガポールのNational University of Singaporeで昨年より2位順位を上げて22位であった。

the_world_university_rankings_2018.xlsxをダウンロード

japanese_universities_in_top_200.xlsxをダウンロード

countries_and_regions.xlsxをダウンロード

https://www.timeshighereducation.com/news/worlduniversity-rankings-2018-results-announced

【各機関の反応】

・Wonk HE (高等教育専門ウェブサイト)

 今回のランキングの主な点として:

  • Oxford とCambridgeが初めて世界ランキングの1,2位を維持、台頭した。
  • EU離脱が英国の大学の世界における地位を脅かしている。
  • 200位中、ヨーロッパの大学は半分が占めているが、アジアの大学の台頭に直面している。

 英国においてEUからの大学志願数が昨年と比べて5%減少しており、既にEU離脱による悪影響が現れてきている。

 また英国におけるスーパーエリートといわれる大学とその他の大学の格差が広がってきている。ゴールデントライアングルといわれるOxford, Cambridge とロンドンの大学は上位で安定した結果であった。しかし比較的下位の順位にいる大学は順位を下げている。Warwickは9位下がり91位, St Andrewは33位下がり143位で、英国で200以内に入っている大学の31大学中16大学が順位を下げた。

http://wonkhe.com/blogs/world-party-the-latest-the-world-university-rankings/

 

・BBC News

 THE Higher Education (THE)の編集ダイレクターであるPhil Baty氏は「今回、特に上位の大学の間ではすべての評価項目において極めて接戦であった。英国の高等教育システムは、£9,250の学費問題、留学生の継続的な誘致の努力、EU離脱後の研究費や研究者の流れの確保、学長の給与問題など、様々な政治的問題に直面している。  

 しかしひとつ言えることは、今回のランキングにおいて英国には多くの優秀な大学があり、世界でも最も強力な高等教育システムを持っているということである。

 また、データは、英国の大学がイノベーションにつながる革新的な新しい研究を一貫して生み出してきており、留学生や研究者を惹きつけ、世界クラスの教育環境を提供していることを示している。大学は巨大な国家財産である。」と述べた。

http://www.bbc.co.uk/news/education-41160914

 

(6)持続的な科学の成功(continued science success)のための明確な目標設定

 9月6日、欧州連合離脱担当省(Department for Exiting the Europe Union)は「将来のパートナーシップについての文書」において、英国とEUの将来にとって科学やイノベーションの連携が重要であると発表した。

 本政府文書では、英国が今後EUと協議するべき将来の連携のメカニズムや分野が提示されている。

 ガレリオ計画やコペルニクス計画など、商用衛星航法システムや地球観測衛星の汎欧州プログラムに既に参加しているEU以外の国との協議分野について述べられている。英国における宇宙事業は英国経済に£118億以上の効果をもたらしており、37,000人以上の雇用を生み出している。

 また原子力研究に関するプロジェクト、オックスフォードシャーに拠点を置くJET( Joint European Torus)や国際熱核融合実験炉(ITER:International Thermonuclear Experimental Reactor)についても計画が述べられている。EU加盟国ではない国々とも、例えばEUREKAネットワークや欧州原子核研究機構(CERN)等の国際機関を通じて引き続き提携していくとしている。

 欧州医薬品庁やホライズン2020など、7,300人を超える英国人が参加者し、連携により成功している革新的な医学に関するイニシアティブについても含まれている。

 

大学・科学大臣のJo Johnson 氏のコメント:

 英国とEUの素晴らしいパートナーシップを継続していくことはお互いにとって利益になる。EUとの将来の連携のあり方についてオープンな議論を持つための英国側の要望を本報告書で明確に示した。

 我々の産業戦略において、科学とイノベーションが核となっており、研究と開発に更に£47億の追加投資を行うことからわかるように、我々は常に新しい発見の最前線に位置し、今後もこの挑戦を欧州の仲間と共に続けていくことを望んでいる。

 英国は科学とイノベーションの分野におけるリーダーであり、今回の報告書で我々は引き続き国際的な英知のハブであり続けたいとして、研究コミュニティーが今後も我々の高いレベルのスキルにアクセス可能にすることで、科学とイノベーションセクターをサポートしていくことを約束している。また、専門資格の認定システムについても、今後も引き続き協働していきたいと考えている。

 https://www.gov.uk/government/news/uk-sets-clear-objectives-for-continued-science-success

【各機関の反応】

・王立協会

 同協会会長Venki Ramakrishnan氏のコメント:

 政府はEUの研究イノベーションの一部であり続けることで多くの利点があることを認識しており、離脱後もEUとの親密な関係を維持するべき理由を明確にしている。文書ではEU科学界との親密な関係維持のための強い願望が現れており、その姿勢を歓迎する。 

 しかしこれはまだ第1歩であり、EUとの親密な連携を維持するためには更に様々な条件を整えていく必要がある。世界の科学界における英国の地位を脅かす不確実要素を取り除いていくことが必要である。

 ホライズン2020終了までの財政的支援の継続や、既に英国内で働いている高い技術を持つEUの研究者のステイタスの保障等についても早急に検討する必要がある。また、次期EU研究プログラムにも参加することを約束すべきである、その計画の協議にも参加すべきである。優秀な人材をUKに迎えるための移民法の制定も必要である。

 科学は常に国境を越えるものであり、EU離脱がその妨げになってはならない。政府により示された今回の文書はお互いにとってWIN-WINの結果となるように提案されており、これはほかの分野の交渉においても同様に前向きなものになる可能性を示している。

https://royalsociety.org/news/2017/09/royal-society-response-to-science-and-innovation-position-paper/

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Javis 氏のコメント:

 英国政府がEU離脱後もヨーロッパのパートナーと引き続き研究とイノベーションの分野で連携していく姿勢を示したことを歓迎する。これらを実現する最も良い方法は政府が次回のEU研究イノベーションプログラムに関与し影響力を持つことである。

 英国はEUの研究とイノベーションの分野において重要な役割を果たし、提携により多くの利益を生み、様々なネットワークのつながりを可能にしている。それにより研究者は世界の最高水準の専門家と共同で人生を一変させるような研究成果を生み出すことが可能となり、更には英国の経済、社会や個人に多くの利益をもたらすことになる。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-UK-government-position-on-Brexit-and-EU-research-innovation-collaboration.aspx

 

(7) 大学・科学担当大臣 Jo Johnsonn氏のスピーチ概要

 9月7日、学長100人以上の出席した英国大学協会(UUK: Universities UK)の年次大会で、大学・科学担当大臣 Jo Johnson氏が行ったスピーチの概要は以下のとおり。

  • 大学に進学する者以外の18歳以降の教育に関する新たな制度

 ・5年間で£28億、300万人分をアプレンタスシップ(インターンシップ賦課金制度)に出資する

 ・上記と関連して16歳以降のスキルプランとして新しくTレベル資格の導入を推進する

  • 次回のTEF3についての変更点

 ・学生満足度調査結果の評価への反映率を半分にする

 ・多くの割合を占めるパートタイム学生に対しての考慮も可能になる調査項目とする

 ・近年問題になっている成績の水増しに対応する新しい評価基準の検討

 ・学生の就職状況評価に、より信頼性の高いLEOデータ(教育省の実施する「長期的教育成果」調査)を採用  

  • 「成績の水増し問題」に対する大学側の主体的な対応への期待

  近年学生に対する成績のつけ方が大変甘くなっており、「First(優)」の学生が5年前に比べ40%も増えているという調査結果もある。本件は単位を授与する権限を持つ各大学が責任を持って対処すべきであり、大学間で単位の授与に関する共通の合意形成に取り組んでほしい。

  • 大学と学生との契約

 学生はどのような授業と評価を受け、それに対しどれだけの費用を支払う必要があるのか、明確な説明を受ける権利がある。また大学側はこれらの情報を学生に提供する義務があるがいまだに十分に対応できていない状況である。今後はこの問題について学生局が担当することとする。

  • 2年制学位課程の設置促進

 より多くの学生が学位を取得できるよう、経費の負担の軽減が見込める2年制学位課程の設置を促進する。

  • 学長の給与について

 学生局に対して以下の指示をした。

  • 年収£10万を超える職員名簿の公表。また年収£15万以上の者についてその明確な正当性を説明すること。
  • 指示に従わない大学機関に対して罰金を科すなどを含むペナルティを科すことの検討
  • 高等教育機関の職員の報酬に関する新しいガイダンスの策定
  • 高等教育機関のシニアスタッフの報酬に関するデータの蓄積と公開
  • 問題があるとされる機関に対し、その機関のガバナンスについて調査をする

  また、Committee of University chairsに対して機関間で共通認識として持つべき「報酬に関する取決め」を自主的に策定するようお願いしたい。

https://www.gov.uk/government/speeches/jo-johnson-speech-to-uuk-annual-conference

 

(8) 研究報告書:研究開発助成金は£430億の経済効果をもたらす

 9月7日、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)はハイテクイノベーションへの投資は雇用、売上、生産性の大幅な向上に貢献しており、経済的にも利益を上げているという新しい研究報告を発表した。

 過去13年間で研究開発助成金は投資額£80億の5倍以上の約£430億という経済効果をもたらし、約150,000の雇用を生み出した。

 この調査は、経済社会研究会議(ERC: Economic and Social Research Council)から資金提供されたEnterprise Research Centre(ERC)という、主に中小企業の成長や生産力に焦点を当てている研究センターが実施した。

 この調査研究は13年間に及び(2004―2016)、15,000件近くの企業に対する£80億の助成金についての調査研究結果である。

主な結果は:

  • 助成金を受けた企業は受けなかった企業と比べて雇用の面で短期的に6%、長期的(6年後)23%の伸びがあった。
  • 助成金を受けた全ての企業において、バイオテクノロジー、医療機器、工学、ライフサイエンス、ハイテク製造業など一般的に給与が高いとされる高熟練労働者の雇用を約15万人分創出した。
  • 助成金を受けた企業は受けなかった企業と比べ、売上高において、短期的に6%、長期的に28%の伸びがあった。
  • 生産性はついて、短期的には影響はないが、長期的に見ると助成金を受けていない企業と比べて6%の伸びがあった。

 

https://www.ukri.org/news/the-taxpayer-tech-dividend-r-d-grants-provide-43bn-economic-boost-study-finds/

【メディアの反応】

・BBC News

 この研究を主導したERCのダイレクターWarwick Business SchoolのStephen Roper 教授のコメント:

 このような詳細に渡る分析が行なわれたのははじめてである。結果が示すように研究開発への出資は良い影響が出ていることが明白である。雇用、売上高においてもっとも成長した分野は製造業であった。生産性の低い企業、小規模企業がより多く助成金の恩恵を受けた。雇用の創出が増えた地域としてはロンドン、英国南東部や北西部が多く、売上高ではスコットランド、ヨークシャー、ロンドンでもっとも伸びた。

サービス業より製造業、大企業より小規模企業に大きな影響を与えたという結果がでた。将来的には小規模で可能性を持つ優秀な企業に焦点を当て、支援するべきである。

http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-41162534

 

(9) 政府は大学の学費は学部によって格差をつけるべき

 9月13日、英国政治関係サイトPolitics Home  のウェブサイトでPhillip Hammond 財務大臣は学部での学習課程と学費が連結すべきであると述べ、今度の学費に関して検討をしている旨を示唆した。

 大臣は、現在の学費のシステムは「 広範によく貢献して」おり、現行の制度の改革も「大変慎重に」考慮していると語った。他方科学、工学、数学の分野の学生の授業料を、芸術、人文学の分野の学生が間接的に負担していると言う批判も長い間あった。大臣は、大学運営補助金の削減、奨学金の廃止、学費の上昇、学生ローンの利率の上昇などの問題がある中で、学部間で授業料に格差をつける議論が高まっていることを認めた。

 12日の上院経済委員会でのスピーチで大臣は、「同じ額の負債を抱えた卒業生の間でも、より高所得を見込める学位と見込みづらい学位があると考えている。」と語った。

 11月の秋期財政報告を控え、Hammond財務大臣は保守党の議員に対し、世代間の格差、特に負債を負っている学生に対しどのように支援していくべきか、提案書の提出を求めたと報告されている。https://www.politicshome.com/news/uk/economy/news/88927/government-suggests-university-fees-could-be-linked-course-subject

 

2017年8月23日 2017年8月英国高等教育及び学術情報

(1) 高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Fund)が産業戦略支援のため£4,000万を追加投資

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for England)は、大学が産業界と連携して研究の商業化に取り組むことを後押しし政府の産業戦略の推進につなげるため、2017/2018学事年度より毎年追加として£4,000万を高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Fund)に支出することを発表した。

 HEIFは英国内の高等教育機関に対し投資をすることで、より広い世界とナレッジベースの交流を促進するとともに、投資£1当たり£9.70の利益を生むという彼らの経済、社会への影響力を強めることを目的としている。

 イングランド高等教育財政会議Research and Knowledge Exchange部長David Sweeney氏のコメント:

 大学は身近な大学-企業間のみだけでなく、国内外に対し経済的、社会的に有益な価値(benefit)を届ける存在である。2013年にAndrew Witty卿は「HEIFへの系統だった長期的な責任」を促した。この考え方は、後のDowling 報告書に「HEIFの重要な役割は産学連携を支援することである。」と述べられ反映されている。したがって我々はこの追加支援を歓迎する。大学が政府の産業政策の重要な担い手であることが認識され、英国が世界クラスの研究拠点であることから、知識の商業化という更なる挑戦を可能にしたのである。大学における知識交換の収益は2015/2016学事年度でも伸び続け、£35億に達している。この中には£1億4000万という30%の増加率のあった知的財産権の特許も含まれている。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114709,en.html

 

(2) 次期研究評価制度(REF)の審査議長の発表

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for Englandは、2021年研究評価制度(REF: Research Excellence Framework)の4人の審査議長を任命した。今年の終わりには他の審査員が選定される。

 4つの分野において指名された議長:

  • 医療、健康,生命科学 ― John Iredale 教授University of Bristol)
  • 物理科学、工学、数学 ― David Price 教授(University College London)
  • 社会科学 ― Jane Miller OBE 教授(University of Bath)
  • 芸術、人文 ― Dinah Birch CBE教授(University of Liverpool)

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114700,en.html

 

(3) £1億7,700万を9の大学と企業の研究プロジェクトに支援

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for Englandは、英国の大学が中心となり実施している9つの研究プロジェクトに対して英国研究パートナーシップ投資基金(UKRPIF: UK Research Investment Partnership Fund)から支援を行ったことを発表した。

 支援は、大学が産業界と連携して行っている世界最先端の研究に対して行われる。対象分野は電力工学、作物学、自動車関連及び航空デジタル技術。

 その他、初めて複数の高等教育機関の提携で実現した共同プロジェクトであるUK レールイノベーションネットワークの設立への支援も含まれている。

 UKRPIFの支援により、大学は産業界等との共同プロジェクトの実施が可能となり、英国の強みとしている研究分野の更なる進展、英国内の研究拠点の強化、更なる経済成長に寄与すること、が期待される。この基金による支援は政府の産業戦略の一環に位置づけられる。

 今回発表された9つのプロジェクトは第5期UKRPIF として2018/2019学事年度から2019/2020学事年度に支援される。これとは別に実施される総額£5,200万の2つの支援プロジェクトは今年初旬に発表されている。(Imperial College London£2,000万、London School of Economics£3,200万)

 9つのプロジェクトは、企業や慈善事業団体を通して更に民間から総額£3億6,000万以上を募ることに成功した。

9つのプロジェクト;

  1. 最新治療センター :King’s College London 支援額£10,164,789
  2. マンチェスター大学ビジネススクール:University of Manchester支援額£9,666,429
  3. デジタル航空研究技術センター:Cranfield University支援額£15,500,000
  4. 作物科学センター:University of Cambridge支援額£16,928,000
  5. 癌医薬開発センター新施設設立:Institute of Cancer Research 支援額£30,000,000
  6. 先進自動車推進システム研究所:University of Bath支援額£15,500,000
  7. 電力工学と機械工学研究イノベーションセンター:University of Nottingham支援額£9,365,000
  8. 脳神経科学:University College London支援額£28,850,000
  9. UK レールイノベーションネットワーク:University of Birmingham支援額£28,086,000

 2012年にUKRPIF設立して以来、HEFCEはこの基金を通して43プロジェクトに総額£6億8,000万を投資してきた。また、企業や慈善事業者、投資家から£16億5,000万の追加投資にも成功して来た。第6期は2021年に£2億2,000万が分配される予定。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114672,en.html

 

(4) 年間学費が£9000の上限越える見込み ―― ウェールズの大学授業料値上がり発表

 7月11日、ウェールズ政府は2018年秋、大学の学費がインフレ上昇率にあわせて最高£9,295にあがることを発表した。インフレ率によってこの先3年間毎年上昇する見込みである。

 英国の学費の最高額はすでに£9,250となっており、2018年秋は£9500を超える見込みである。

 ウェールズの教育大臣のKirsty Williams 氏は「値上がりはイングランドの政策によるものでウェールズ政府はイングランド内外の情勢から直接的な影響を受けている。

 我々の大学は国内的にも国際的にも競争力を持たなくてはならない。今後も公的な学費ローンの利用は可能であり、卒業後収入がある水準を達したときのみ返済開始のシステムを継続する。」と同氏は強調した。

 しかしウェールズ学生組合の代表であるEllen Jones氏は「 学費の値上げにはまったく賛成していない。高等教育への参加を更に困難にした。英国政府の公共支出の退行的なやり方の影響を受けて予算が圧迫されていることは理解できるが、最悪の状態になったのはウェールズ政府の対応のまずさによるものだ。学生にすべての負担をかけることが当然になっている事実が耐えられない。各セクターで予算の取り合いをするのではなく、医療予算を守るように全教育予算を守ることを大臣にお願いしたい。」と述べた。

 一方でウェールズ政府は新しい学生支援策を発表した。昨年発表されたダイアモンドレビューに基づき、2018/2019学事年度より全学生は資産調査に基づく給付調査を受ける前に、年間£1,000が支給されるというものである。

 3分の1のフルタイムの学生が最高で£8,100受給でき、年間収入が約£25,000の家庭の出身の場合、年間£7,000の奨学金が受けられると試算している。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-politics-40568065

 

【メディアの反応】

・ガーディアン

 ウェールズ教育大臣のKirsty Williams 氏は同紙に寄稿した。

 「イングランドではどのように学生を支援するかという論争がしばしば話題に上るが、ウェールズではその解決策を見つけた。Ian Diamond教授の「Diamond Review」における高等教育財政への提言を受け、全ての学生の生活費を負担するというものである。

 新しいシステムは2018/2019学事年度から英国の大学に進学する学生対象で、すべての学生は国民生活賃金(最低賃金)相当を支給されるというものである。例えばフルタイムの学生でロンドン市内の大学に通う場合、生活補助費として年間£11,250、それ以外の地域であれば£9,000支給される。イングランドではこのような制度は皆無であり、スコットランドでは多少行われているものの現在その制度の見直しが行なわれている。

 しかし今回のもっとも斬新な改革は、パートタイム学生や大学院生も同様な支援が受けられることである。ヨーロッパ中でもウェールズが初めて実施することになる。

 大学院生に対する支援制度は2019年から実施予定であるが、その前には更なる支援も実施される。イングランド国内どこでも利用可能なローンや、ウェールズの大学に対し、大学院生を対象にした支援をするための財政支出をするというものである。これにより学生一人あたり約£4,000が支給されるようになると見込んでいる。

 ウェールズはヨーロッパの中でも唯一このような大きな第一歩を前進させた。他の政府も共有する事を待っている。」

 https://www.theguardian.com/higher-education-network/2017/jul/14/higher-education-tuition-fees-maintenance-wales

 

(5) 英国の大学志願者4%減少:大学入試機関(UCAS発表

 7月12日、大学入試機関(UCAS: Universities &  College Admission Service )が6月30日締切の大学志願者数を発表した。英国大学への志願者総数は649,700人であった。昨年に比べて4%(約25,000人)減少した。

 英国出身者の志願者数は529,620人(昨年比:4%減少)、EUからの志願者数は49,250人(5%減)非EU圏からの志願者数は70,830人(2%増)であった。

 英国各地域別の出身者の数も減少している。イングランド437,860人(5%減)、スコットランド48,940人(1%減)、ウェールズ 22,530人 (5%減)、北アイルランド 20,290人 (4%減)。

 年齢別でも志願者数の変化がみられる。18歳の志願者は321,950人で昨年より1,510人増加している。イングランドの18歳の大学進学率は37.9% (2016年37.2%) と上昇しており、過去最高を記録した。ウェールズは32.9%から32.5%に減少した。19歳以上の志願者は315,200人で昨年より27,180人減少した。

 看護学コースは志願数が全体で53,010人であり、昨年より19%の減少した。

 UCASの分析研究部長Mark Corver氏は「主要な大学の出願期限は終了し、昨年より25,000人、4%の減少であった。2つの対照的な傾向があるようである。主な出願者数の減少はイングランド、ウェールズ、EUであり、非EU圏からの出願は2%増であった。英国内では18歳より上の年齢層の出願者数は減少したが、18歳は上昇し、人口比過去最高の出願割合37.9%を記録した。最終的に大学やカレッジにおける年齢構成比等がわかるのは様々なプロセス(Aレベルの結果等)を経て、入学先大学が決定する6週間後である。」と述べた。

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/ucas-30-june-deadline-uk-higher-education-shows-uk-applicants-down-4-and-eu-applicants-down-5

 

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会理事長Julia Goodfellow

 志願者減少の原因はいくつか考えられる。昨年、志願者数は記録的であった。EU離脱や、看護士、助産師など医療従事者の学位制度の改定が大きな原因であろう。英国の18-19歳の人口が2010年から減少傾向であるが、この年齢層が英国大学の志願者の半分以上を占めている。しかもこのグループの大学志願率は過去最高であった。

 対処しなければならない問題がいくつかある。EUからの学生に対して英国は彼らを歓迎していることを示し、また、パートタイムや成人学生数の減少に対しても何らかの措置を講じなくてはならない。また、大学に進学することでかかるコストにも懸念がある。生活費や学生ローンの利率に関しても分析が必要である。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-latest-UCASJune-applicant-figures.aspx

 

・ラッセルグループ

 同グループの政策担当部長Sarah Stevens氏

 EUからの志願者が5%減少したが、もし減少の原因がEU離脱であればこれは問題である。非EU圏からの志願者数がわずかながら増えたことは喜ばしいことである。留学生は社会的文化的な多様性をキャンパスにもたらし、これらは学生によい影響を与える。また、英国経済にも£258億の効果をもたらしている。

 イングランドの18歳の志願者数は記録的であった。これは大学の価値を見出している若者が増えていることを示している。

http://russellgroup.ac.uk/news/ucas-application-figures/

 

(6) 留学生のTEFに対する意識調査

 7月18日、教育関連企業のHobsonsは、最近発表されたTEFに対する留学生の意識調査を実施した。英国留学を考えている学生3,335人を対象に実施した調査結果は下記の通りである。

  • 1%の学生がTEFの存在を知っており、その中で64.4%は自分達に十分な説明がなされていないと答えている。
  • TEFの存在を知っていると答えた中の5%は大学と大学院の教育の質の評価であると誤って認識していた。
  • TEFが大学と大学院の教育の両方の質の評価と考えていたかどうかに関わらず、3%は大学の教育評価が良いところは大学院も同様に良いだろうと考えている。
  • TEFの存在を知っていた内の5%は銅と評価された大学は教育の質が"十分でない”と評価されたと間違って考えていた。
  • TEFを知っていた者のうち6%は、TEF評価は退学率、学生満足度の調査結果、卒業後の雇用率等の集計によるものと正しく理解していた。しかし55.3%はTEFの結果は教育省からの視察官による大学の講義の抜き打ち検査による結果と思っていた。
  • 留学生でTEFを聞いたことある、ないと答えたにも関わらず、金を獲得している大学であればそちらを選択する可能性が高い。しかしながら銀,銅を獲得しているのであれば獲得していないところよりそちらを選ぶ可能性が強い。

TEFについて正しく理解してもらえるよう、大学は志願者と十分なコミュニケーションをとる必要がある、ということを調査結果は示している。TEF評価は今後留学生が大学を選択する際に重要な役割を果たすことになるため、TEFの結果は何を意味しているのか、どのように活用すれば効果的な選択につながるのか、を理解させることが急務である。

https://www.hobsons.com/emea/resources/entry/blog-tef-ratings-or-university-rankings-new-Hobsons-research

 

(7) 学科レベルのTEFの試験的評価の実施

 7月20日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は政府が発表したTEF (Teaching Excellence Framework)の学科レベルのパイロット評価方法の詳細を歓迎した。この学科レベルの試みは2017年秋から2018年春まで実施予定。

 教育省の委託でTEFを実施しているHEFCEは、TEFに既に参加しているか否かに関わらず、幅広い高等教育関係機関のパイロット調査への参加を呼びかけている。2017年9月25日が参加申込締切で、応募した大学、カレッジの中からパイロット調査評価対象として30~40の機関が選ばれる。このパイロット調査は学科レベルのTEFプログラム開発のために行われるものなので、格付けの評価はなされない。

 パイロット版の結果を元に学科レベルのTEFは2019/2020学事年度に実施され、2020年春に発表される予定。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114768,en.html

 

(8) 学生と納税者のため大学価値の保障 ― 大学・科学担当大臣のスピーチ

 7月20日、大学・科学担当大臣Jo Johnson 氏は学生と納税者からこれまで以上に理解を得られるための高等教育制度計画を発表した。

 大学学長やその関係機関の関係者を前に行われたスピーチでは、すべての大学は学生が大学において何を学ぶことができるのか、について今まで以上に明確なcontractを提示するように強く求めた。また、急上昇している学長の給与の更なる値上げに終止符を打つように求めた。首相より上回る給与の場合、その正当性を公に対し説明するよう要求した。新しく設立される学生局(OfS: Office for Students)がこの問題に対応することになる。

 また、大臣は次の段階のTEFとして、学科レベルの教育評価のパイロット版を秋から実施することも発表した。次段階のTEFでは卒業生の進路分析も調査に加え、将来のキャリアを見通した大学の選択ができるようにする。

 Johnson 氏は一定の所得以上の者が学生ローンを返済をするという現在の大学助成金制度の持続を支持した。

https://www.gov.uk/government/news/securing-value-for-money-for-students-and-taxpayers

【各機関の反応】

・英国大学協会 (理事長:Julia Goodfellow氏)

 現行の学費と所得による学費ローンの返済システムは学生達が求めている世界クラスの高等教育を受けられることを可能にしている。

 現行のシステムは補助金によって学費を補っており比較的低収入の大学卒業生を保護している一方で、学生やその家族から問題視されている学生ローンの負債がどのように処理されていくのかを説明する必要がある。我々は現行のシステムが公平で誰にでも参加できるものでありたいと考えている。

 大学は運営資金が学生やその両親にとってアクセスしやすく有意義であることを公開し情報提供してきている。最近の統計調査では、学生はかなり高い率で大学を信頼しているが、一方でもっと個々に即したアドバイスや支援を希望している。

 学科レベルのTEFのパイロット調査は実効性があるか、学生にとって価値がある調査であるのかを見定めるいい機会である。

 すべての大学は在籍学生と契約を交わしている。また大学側は公平かつ透明であることを証明するために競争・市場庁(CMA: Competition and Markets Authority)の助言にも応えてきている。学生は大学内の担当部署とのみならず、外部の独立した仲裁機関や、最終的に裁判により問題を解決する道筋が保障されている。学生と大学との契約が守られることが重要であり、政府と学生局とともに真摯に取り組んでいきたい。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-response-to-Universities-Minister's-speech.aspx

・ラッセルグループ (Sarah Stevens : 政策担当部長) 

 学生は大学に対して質のよい教育を期待する権利があり、我々グループはその点

に常に真摯に取り組んでいる。ラッセルグループの各大学は、学生団体と連携協力して「大学が学生たちに求める役割・責任・期待、また学生が大学に対し求める役割・責任・期待」を明文化したcharterの作成に取り組んでいる。

 学生を保護するシステムは必要であるが、それは同時に大学にとってフェアなものでなければならない。大学は学生にチャレンジをするように仕向けており、わざとぬるま湯に浸かった状態から引き出すように仕向けている。誰も法の縛りにより大学の基準がむしばまれて弱体化していく大学の姿を見たくはない。現状で言えることは、大学に対する数々の新しい要求が予期せぬ結果に終わらぬように気をつけなければならない、ということである。 

http://russellgroup.ac.uk/news/jo-johnson-speech/

 

(9) 政府が移民諮問委員会(MAC)に調査を委託 

 7月27日、内務省(Home Office )は移民諮問委員会(MAC: Migration Advisory Committee)に対して、EU離脱が英国労働市場にどのような影響を及ぼすか、及び英国移民システムの今後のあり方に関する調査を依頼した。MACは独立した調査機関であり、政府に対し調査結果に基づく助言を行っている。

 政府は調査結果提出期限を2018年9月と定めた。今後数週間以内に、MACのウェブサイト上で資料(evidence)収集を開始する。政府、企業、労働組合、関係団体等と協力し、質の高い資料(evidence)に基づいた報告書の提出を目指す。

https://www.gov.uk/government/news/migration-advisory-committee-mac-commissioned-by-government

 

【各機関反応】

・ラッセルグループ政策担当部長Sarah Stevens氏  

 ラッセルグループの大学は教授・研究の分野で世界を牽引してきている。EUからの職員や学生は英国のサクセスストーリーに大きく貢献している。

数学や現代外国言語学など戦略的に重要な部門で働いている全スタッフ約3分の1がEUから来ており、他の分野においても同じような傾向がある。ラッセルグループの大学及び学生は、いろいろな意味でEU市民の働きにより支えられていると言える。我々はEU離脱後もEUの同僚とともに共に働き続けたい。

 この調査は必要であり、大学や個人の将来のためにも身分の保障を一刻も早くはっきりさせたい。内務省が「崖っぷち離脱 'cliff-edge' situation」にはしないと保障したことは喜ばしく、大学の職員雇用や世界の優秀な人材確保を維持できるような移民制度となることを期待している。

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-migration-review/

 

・英国大学協会会長代行Alistair Javis

 政府が大学や関係機関からEU移民に関する証拠や助言を求めることは良いことである。留学生や海外からの職員は英国の大学や地域経済に貢献している。我々は優秀な人材を受け入れる門戸は開かれていることを世界に向けて呼びかけることが重要である。現在英国大学で学術スタッフの17%(33,735人)はEU圏から来ており、EUからの留学生125,000人が大学で学んでいる。

 まさに今、海外から優秀な職員や留学生を受け入れる新しい移民法を制定をするべき時である。大学は数年先を計画しているため、政府が「崖っぷち状態」を避ける方法を検討していることは歓迎すべきことである。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-comment-Brexit-EU-migration-study.aspx

 

(10) EU市民の保護

 8月3日、ラッセルグループはEU離脱後の英国在住EU市民の将来の権利に対し、より明確なものを求める概略を発表した。概略は、政府から更なる情報が求められるとしている10項目の分野と、今後EU市民が定住可能となるために必要となる最も重要な原理原則について記されている。

英国政府がEU市民に対し明確な立場を示すべき重点10項目

  1. 学者や学生は研究、トレーニング、キャリア開発、研究提携などのため長期間国外に身をおく場合がある。それについて政府は下記の点で努力をするべきである。
  • 様々な規則(180日ルール等)が適用されないように、学業や研究により国外にいた期間が在住規定期間に影響を及ぼさないようにする。
  • "強い絆”という解釈を広げ、学生や学者が2年以上国外にいた場合でも、一度獲得できた定住権を剥奪されないようにする。
  1. 申請者に対して負担をかけない効率的なシステムの構築。政府の対処が間に合わない場合は、猶予期間を必要に応じて与える。
  2. 申請者の提出物を最低限にするため、既存データを利用するという政府の方針を歓迎。保持データから短期不在や定住可能者が確認できるのであれば、内務省側から自動的に連絡を取るべきである。
  3. 永住権を持っているものは自動的に定住権を与え、新たな申請を必要としないようにする。
  4. 申請費用を手頃な価格にするという方針は賛成。費用を最低限とし永住権申請費用の£65を上回らないようにすること。
  5. 政府はEU市民を雇用している様々機関と意見交換することで明確な雇用者ガイダンスをつくり、企業や大学を支援する必要がある。
  6. 期限(the cut-off date)はEU離脱日とする。これにより個人や組織などは今後の計画がはっきりと立てられる。
  7. 2017/2018学事年度、及び2018/2019学事年度から英国大学に入学するEU留学生に対して、卒業後も英国での学業の継続や就職を認め、5年以上滞在すれば定住権を認める権利を与える。
  8. EU市民の家族の権利に対して共に英国に滞在可能であることを早急に決定し、不透明性を最低限にする。英国で出生したEU市民の子が即時に定住権や英国市民権を得る事ができ、5年間の定住期間を経て初めて得られる定住権の決まりの対象外であることを明確にする。
  9. EU離脱前にEUまたは英国で獲得した専門資格などについて、離脱後も引き続き承認されるようにするべきである。

 ラッセルグループの政策担当部長Jessica Cole 氏は「同グループの全大学で約25,000人のEU市民を雇用しており、質の高い教育、最先端の研究が行なわれている。このような価値のある同僚を失いたくない。大学もEUからのスタッフも学生も、はっきりとした将来を見通したいと考えており、そのためにも政府がEU市民の立場を一刻も早く明らかにするべきである。」と述べている。

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-nationals/

概略内容:http://russellgroup.ac.uk/media/5547/rg-position-on-eu-nationals-july-2017.pdf

 

(11) 2017年学生満足度調査(NSS)結果発表  

 8月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は2017年全国学生満足度調査(NSS: National Student Survey)の結果を発表した。30万人以上の最終学年の学生が参加し、回答率は68%だった。そのうち84%が全体的な教育の質に満足していると答えた。

 学生の満足度は高く、85%の学生は教員の講義の質が良く、興味を引く内容であり、知的好奇心が刺激されたと答えている。

 今年のNSSは「学習コミュニティ」、「学習機会」、「学生からの意見」という新しい質問事項を設け、学生の授業参加に関する新しい分析が加わった。この改訂は英国の大学、カレッジ、学生間の協議によって行われた。

 今回の改訂部分に関する調査結果によると、84%がより深く概念を探求でき、学んだことを応用できる学習環境が与えられたと答えている。77%が学習コミュニティに属していると実感し、他の学生とともに学べる良い機会であったとしている。

 調査内容の変更により、2017年の結果をこれまでの結果と比べることは妥当ではないとしている。

 この調査結果は、学生のアカデミックな経験の向上のために各高等教育機関により利用される。今回新たに加えられた調査の結果は今度の課題として注目されることになるだろう。

 また調査結果はUnisatsのウェブサイトに掲載され、学生がどこの大学で何を学ぶか、を選択する際の重要な材料となる。

 2017年の調査は、530の大学やカレッジの情報がカバーされており、継続教育機関などの代替高等教育機関が多く参加したため昨年度より掲載数が増加した。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,115244,en.html

【メディアの反応】

BBC News

  今回の調査結果は大半の英国学生は大学の教育の質に満足しているというものだった。

しかし、6月に発表された高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)の同様の調査結果では、35%の学生のみが大学の教育は学費に見合うものであったと答えており、これは5年前の結果では53%よりも更に落ち込んでいる。

 また調査実施に当たり、学費を巡り全国学生組合(NUS:The National Union of Students)が調査ボイコットを呼びかけたことが多少結果に影響を及ぼしているとみられる。昨年より参加人数が8,000人減少している。

 この調査結果は大学・科学担当大臣のJo Johnson氏が懸念している「大学が提供する教育の質が学費に見合うか」という問題に焦点を当てたことになった。

http://www.bbc.co.uk/news/education-40861126

・Times Higher Education

 NUSが呼びかけた教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)に対する抗議のためにCambridge, Manchester, Oxford, Sheffield 等の大学でNSS調査へのボイコットが行なわれたのため、それらの大学の結果が反映されなかった。

 12大学の調査結果が50%以下の回答率のため結果に含まれなかった。昨年は約300,000人の回答を得られたが、昨年の312,000人から減少しており、回答率も72%から68%と減少している。

 これは、TEFの評価基準項目にNSSの調査結果が反映されると発表されたため、25の学生組合が調査へのボイコットを呼びかけたことが原因とされている。TEFの評価結果に基づき、大学がインフレ率にあわせて学費を値上げすることを可能にすることに対する抗議である。しかし本案は政府により延期が決定されている。

 "TEFを潰せ!"をモットーに展開された全国学生満足度調査のボイコットは、調査結果を使用不可能にすることが目的であった。しかしTEFの議長であるChris Husbands氏は「全国学生満足度調査野結果はTEFで金銀銅のいずれかの評価になった大学に大きな影響は与えておらず、教育の質を見るための正確なものではない」とコメントしている。

 教育省は「学生のNSSのボイコットの悪影響はどの大学にもない」と表明している。が、他方でKings’s College London上級講師のCamille Kandiko Howson氏は「どのような影響が出るかもはっきりしていない。TEFが思ってもいなかった結果に終わった大学が抗議をする言い訳を与えるだけである。TEFを評価する側にとって良い結果が出たところと十分な調査結果が得られなかったところを区別するのが難しくなる。また、無回答の大学が広がっている中で、学生が真剣に回答せず、すべての質問項目に低い点にチェックして提出した場合などもあり、NSSをTEFなどの評価に使うことは困難になっていくのではないか。」と述べた。

 大学組合(UCU: Universities and College Union)の書記長であるSally Hunt氏は「TEFの廃止を求める。今年のTEFの結果発表後の反応を見ると、学術界の支持を得ているとは思えず、一方今年のNSSに対する支持もまた欠如しており、学生も同じ思いである。もし政府が本気で学生への教育の質の向上を考えているのであれば、これら欠陥のある評価制度を廃止するべきで、教育者に対する不安定な雇用契約の広がりの改善に対して取り組むべきである。」と述べた。

https://www.timeshighereducation.com/news/national-student-survey-2017-campuses-omitted-after-nus-boycott

2017年7月25日 2017年7月英国高等教育及び学術情報

(1) 統計:高等教育卒業生の就業と収入

 6月13日、教育省(DfE: Department of Education)は高等教育修了者の就業と収入に関する試験的統計として「長期的教育成果(LEO: Longitudinal education outcomes)」 を発表した。

 今回初めて発表された本調査結果は、下記のデータから構成されている。

  • 教育省提供による教育データ
  • 雇用年金局 (DWP :Department for Work and Pension)及び英国歳入税関庁 (HMRC: Her Majesty’s Revenue and Customs)提供による雇用、福祉手当、収入データ

 

  これらの試験的統計は2003/2004学事年度から2012/2013学事年度に渡るデータであり、下記について分析されている。

  • 卒業後3年、5年及び10年の就業率と収入
  • 個人の属性(性別、人種、年齢)
  • 出身大学
  • 専攻、資格取得状況

 

https://www.gov.uk/government/collections/statistics-higher-education-graduate-employment-and-earnings

 

【各機関の反応】

・英国大学協会(Nicola Dandridge会長):

 調査結果からは、大学や専攻にかかわらず、大学修了者は雇用に関して今でも有利であることが明らかになった。大学を卒業していない者よりも平均して確実に収入が高い。

 しかし収入額だけが高等教育の成功を測る物差しではない。芸術、創造産業、看護、公共部門専門職などを専門とする大学は社会や経済に大きく貢献しているにもかかわらず、平均より低い収入となっている。多くの学生は高い収入ではなく、生きがいのある職種を求めている。また、地理的な属性など、収入に影響する要因は他にもいくつか考えられる。

 特殊技能を持つ卒業生の需要は今後益々増していくだろう。英国の大学はこれまで以上に学生に対し、生涯を通じて必要となる技能を様々な分野で習得させ、また、雇用者側が求める大学院レベルの高い技術を習得させる努力をしていくことになる。

 批判的に物事を考え、分析し、証拠提示する能力はまさに「生涯を通じて人生を豊かにするもの」である。

 

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Comment-on-new-graduate-employment-and-earnings-statistics.aspx

 

・ラッセルグループ(事務局長代理Tim Bradshaw氏)

大学で学ぶことは将来の収入に関る以上の価値があるものであるが、多くの若者は大学進学の理由として将来の収入も考慮していることは事実である。

雇用者はラッセルグループ大学卒業者を高く評価しており、本調査結果をみても、雇用者がラッセルグループの卒業者に対し高い給与を支払うことを異としていない。

心理学から社会科学、法律、またコンピュータサイエンスから工学、物理化学まで統計データ上ではラッセルグループ卒業者は収入において群を抜いて優れている。ラッセルグループの11大学が法律の分野における収入トップを占めている。数学ではトップ8までを占めており、他の分野においても同様の傾向が見られる。

長期的教育成果調査は今回が初めての結果公表ではあるが、大学進学希望者にとって大学の選択がどれだけ将来の収入に影響を及ぼすかを知ることができるものとなっている。

 

http://russellgroup.ac.uk/news/leo-data/

 

(2) 研究の商業化に関するグッドプラクティスの収集

 6月15日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE;Higher Education Funding Council for England)の大学間知識交換構想ステアリンググループ(KE Framework Steering Group)は、Association for University Research and Industry Links (AURIL)及びPaxisUnico, Association Research Manager and Administrators (ARMA)に対して、研究の商業化に関するグッドプラクティスを提出するように求めた。対象事例は、大学と企業の間の様々な形の共同研究、パートナーシップ構築や契約関係に焦点を当てている。提出締め切りは2017年9月4日。

 知識交換構想プログラムは、大学が常に改革し続ける姿勢を支援することを目的としている。ステアリンググループ議長はKeele University の学長であるTrevor McMillan教授が務めている。2016年9月に発表された技術移転のグッドプラクティスに続くものとして事例を収集し、可能性をレビューする。すでに前回の調査で評価されたものは今回の対象ではない。

 

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114431,en.html

 

 

(3) 英国高等教育機関の卓越した教育に関する調査:TEF2 の結果発表

 6月22日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)2年目の結果を発表をした。

 調査結果は2018年秋入学予定の学生の進路選択の指標となり、また英国内での優れた教育、学習を奨励するものである。

 教育評価制度(TEF)は英国内の世界トップクラスの高等教育機関の実績を明確に示すために政府により導入されたもので、教授と学習の成果の分析結果により、既存の研究評価制度を補足するものである。

 合計295の大学、カレッジやその他教育機関が任意に参加し、参加機関は「金」「銀」「銅」「条件つき(データが不十分である)」の4つで評価され、金は59機関、銀は116機関、銅が56機関であった。条件つきを除くと金は全体の26%、銀は50%、銅は24%を占めた。

 評価者は学術会からを含む専門家、学生や雇用者の代表により構成される。国から提供されたデータ、各機関から提供されたデータを元に、教授の質、学習環境、学生の学習の成果の3分野について評価を行った。

 

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114556,en.html

 

【各機関やメディアの反応】

・Times Higher Education

 世界的にも有名な英国高等教育機関であるThe London School of Economics (LSE)やUniversity of Southampton がTEFで銅の評価を受けた。また、研究主体の大学で構成され、Russell GroupのメンバーであるUniversity of Liverpoolは一番低いランキングであった。

  その他有名大学で銅と評価されたところはUniversity of London の傘下であるSOAS, Goldsmiths、又医学部として評価の高いSt. George であった。又ロンドンに位置する25大学のうち12大学が銅であった。

 

 Times Higher Educationの世界ランキング(2016―2017)では5位であったLondon School of Economics(LSE)は低い評価を受け、London Metropolitan University, University of East London と同位になったことでTEFの評価方法(卒業生の進路、学生満足度、卒業率、15ページにも及ぶ申告書など)について今後議論を起こすことになろう。

 最終的に137の高等教育機関のうちの3分の1が金の評価を受けた。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学やラッセルグループの6大学( Birmingham, Exeter, Leeds, Nottingham, Imperial College London , Newcastle)なども含まれている。ラッセルグループの21大学のうち48%である10大学(Leeds, Nottingham, Imperial College London and Newcastle University)は銀と評価された。これは、ノミネートした全ての大学の49%が銀の評価を受けたのとほぼ同じ割合である。

 しかし伝統的にランキングの常連でないいくつかの大学が金の評価を受けた。Bangor, Derby, Northampton, Coventry, Portsmouth等 1992年以降に設立された新大学がWarwick (銀), Southampton (銅)などの伝統大学を差し置いて金の評価であった。

 

https://www.timeshighereducation.com/news/tef-lse-southampton-and-liverpool-get-bronze 

 

・BBC News

 TEFは学生の大学選考の際の指標となることを目的として行われているが、銅と評価された多くの大学はこの評価方式は不平等で信用ならないと非難している。各機関がTEFに参加するかは任意であるが、銅以上を獲得した機関はインフレの上昇率に合わせ2018/2019学事年度の学費の値上げが可能となる。

 評価は実際に講義や教育内容を視察したデータは含まれておらず、施設、学生の満足度、退学率、就職先や卒業後の更なる学習の状況などを元に行われる。

 14の生涯教育機関で学位を発行している機関が優秀大学とともに金を獲得した。

 出願資格や学部など機関ごとの差異については、審査委員会により考慮された。審査委員は27人の学術関係者、学生、雇用者、専門家、など幅広い分野からのパネルで構成された。

 「金」とは英国内で最高の教育の質の大学で、「学生に最高の教育と学習の成果を提供している」と評価されるものである。「銀」は「英国高等教育が要求する厳格な標準以上を提供している」と評価されるもので、「銅」は「国内水準に達している」と評価されるものである。

 HEFCEは、学生が大学を選ぶ際に心がけている点に考慮した以下の点を評価基準にしていると述べている。

  • 高い質の教育を提供しているか
  • 協力的で刺激的な学習環境であるか
  • 自身の可能性を引き出すために必要な知識とスキルを備えているか
  • 将来の就職先もしくは更なる研究に繋がる機会が提供されているか

 HEFCEの会長であるMadeleine Atkins氏は「学生は高等教育を受けるために莫大な時間と資金を投資しており、質の高い教育環境とアウトカムを当然期待する。」と述べた。

 TEFの評価委員会の議長を務めたChris Husbands 教授は「TEFは、他の情報とともに明確でわかり易い評価として利用されることを望んでいる。」と語った。又全体評価は銅と低かったが、様々な要素の中で優秀と評価されるものがあったことを強調した。

 高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)のNick Hillman 理事長は「驚くような結果が出たが、TEFはその目的を果たしているようである。もしTEFが以前の評価をただ複製したに過ぎないのであれば失敗していたであろう。他のランキングとは異なるように設計されており、今まで無視されてきた優秀な機関を見出し、又改善が必要なところに目を向けるものである。」と述べた。しかしながら「教室で実際に行なわれていることを正確に反映しているわけではないことを学生は念頭においておくべきだ」と付け加え、と釘を指した。また、「大学進学希望者はこの結果を進路決定として利用する際に、あくまでも個々の学部ではなく大学全体の評価であること肝に銘じてほしい。」とも述べている。

また銅の評価を受けたUniversity of Southamptonの学長であるChristopher Snowdon卿は「TEFに対して信用を持つことが難しい。透明性の欠如、機関によって基準が異なり、公平公正な評価がされていないと懸念しているのは私だけではない。我々の学生満足度や教育満足度は、今回金や銀を獲得した大学より勝っている。」と述べ、評価に対して抗議する事を考えている。

 SOASのDeborah Johnson 氏は「TEFは我々の活動を正確に反映していない。」と懸念している。「明らかにロンドンという場所が影響しており、ロンドンにある大学は、3大学に1大学の割合で銅の評価を受けた一方、ロンドン以外の大学は8大学に1大学の割合で銅という傾向となっている。つまりこの評価基準はロンドンにある大学に当てはまらない。例えばロンドンの高い生活費が原因による大学中退などがある。」と語った。

 University of Liverpoolは声明で「銅という結果は非常に残念であるが、TEFは質を測る絶対的なものではない。広く知られている他の世界ランクでは我々は常に200位以内にランキングしている。」と述べた。とはいうものの、「我々はTEFで使われている内容に対して改善するため最善の努力をする」とも語った。

 

http://www.bbc.co.uk/news/education-40356423

 

・英国大学協会(Dame Julia Goodfellow 会長 :ケント大学学長)

  「英国の大学は世界的にも質の高い教育と学習機会が担保されていると広く認識されている。また、クオリティコードとして設定されているハイレベルなアカデミックスタンダードを満たすことを要求されている。

 新しいTEFの評価は公式に発表されている多くのデータに基づいて決定されており、学生にとって他の情報とともに選択の助けになるものである。

 今回のTEFは試験的であり自主参加によるものであった。データ使用は的確で、範囲が広く、かつ大学機関内の多様性も考慮されていることが重要である。今後この評価制度を学生の大学選択の際に役立つ情報に更に開発していくことが重要である。

 TEFの手法は一応完成したことになるが、2019年のレビューによりTEFは学生に役立っているか、その目的が果たされているかどうかの評価が下される。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-response-to-the-Teaching-Excellence-Framework-results.aspx#sthash.dV1MP4so.dpbs

 

・ラッセルグループ

 TEFは学生が大学や専攻を決定する際に手助けとなる新しい情報源として開発された。しかしここで3つほど知っておきたいことがある。

  1. 今回の調査はトライアルの段階のものであり、すでにレビューを行うことが発表されている。

 政府はすでにTEFの評価手法の向上のためにレビューを実施することを発表している。現時点では全国学生調査(NSS: National Student Survey)が評価の対象となっているが、この結果は大学が提供している教育の真の姿を反映しているのか疑問を持つ者もいる。

  1. TEFは大学の質を測る完璧なものではない。

 今回高評価を得た大学は現在の学生数を反映することで勝ち得たものである。どこかのポイントでトップのスコアだからといってTEFで高い評価を得られたわけではない。非常に低い退学率の大学よりも、卒業率が高い大学の方が優位に加算されるように評価手法が設計されている。肯定的な変化を認めることはよいことであり、喜ぶべきであるが、TEFの評価手法は決して期待しているほど各大学の本当の教育実態を表していないという点に注意してほしい。

  1. TEFは多くの情報の中の1つでしかない。

 今回はまだ試験的な実施であり、すべての大学が参加したわけではないので、ほかの情報も参考にすることを薦める。UCASや他の機関の情報で大学生活について提供しているものも参考にするとよい。

 

http://russellgroup.ac.uk/news/tef-3-things-you-need-to-know/

 

(4)産業戦略チャレンジ基金の募集の開始

 6月22日、英国研究会議(RCUK:Research Council UK)とイノベーションUKは、政府の

産業戦略チャレンジ基金への応募者募集を開始した。

2017年4月の予算案で発表された6つの分野は次のとおり:

  • “ファラディチャレンジ”という電気自動車のバッテリーの開発と製造

低炭素経済の移行機会の実践のため4年間に渡り£2億4600万の投資。資金は研究、イノベーション、スケールアップの3要素に分けられる。

  • 極限環境に活用するロボット、人口知能の開発

洋上発電、原子力発電、宇宙や深層鉱業等に4年間に渡り£9300万の投資。産業と公共サービスの生産力強化を目的とする。

  • 医療製造のための新たなテクノロジーの開発。

新薬や治療への患者の早期アクセスを可能にするため、4年間に渡り£1億9700万を投資し、英国のバイオ医療分野の輸出を強化。

  • 無人自動車革命最前線にいる英国の次世代の人口知能と自動運転システムの開発

産業界との共同研究と開発プロジェクトに£3800万を投資。

  • 次世代の低価格軽量合成材料の製造開発

宇宙航空、自動車やその他応用製造分野の研究と開発プログラムに£2600万の投資。

  • 衛星試験施設―新しい宇宙技術開発、運用実験に£9900万を投資

衛星の製造と観測機器を軌道に乗せるための開発

 産業戦略チャレンジ基金は英国が科学とイノベーション分野において世界の最高峰のひとつでありつづけるための政府戦略である。

 イノベーションUKとRCUKが基金の提供、全国での実施、また科学とイノベーション分野における最大の利益を確保するための役割を果たしている。

 

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/220617/

 

(5) ラッセルグループ大学がTEFの結果に抗議

 6月27日、高等教育専門誌のTimes Higher Education は22日に発表されたTEFの結果に不満なラッセルグループの大学、Liverpool, Durham, York, Southamptonが抗議をすることを発表した。

 Times Higher Educationの世界ランキング200位に入るLiverpool大学, Southampton大学は、最低の評価である銅と評価されたラッセルグループの3大学のうちの2つである。3つ目の大学であるLondon School of Economics (LSE)は、現在態度を明らかにしていない。

 DurhamとYorkはそれぞれ銀と評価されたが、いずれも卒業生の雇用、学生満足度やコース修了率、それに15ページに及ぶ説明文の扱いに対して抗議すると述べている。

 抗議の多くは15ページの説明文の扱い方と審査委員の間で評価基準が異なったのではないか、が焦点となっている。 

 Southampton の学長であるChristopher Snowdon卿は「評価基準は根本的に欠陥があり、結果は論理的でない」と抗議している。

 しかしTEFを担当している英国高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は「大学は"明らかな手続き上の瑕疵”についてのみ抗議ができ、TEFの根拠となる原理原則や審査委員の判断には抗議できない。」と述べている。

 オックスフォード大学高等教育政策研究センター(Oxford Centre for Higher Education Policy Studies)のFarrington教授は「TEFは自主参加であり、参加したものはTEFの評価に関する条件を受け入れているはずである。今頃になって評価過程に間違いがあったというのは大きな問題で、ならば最初に警鐘を鳴らすべきだった。技術的な欠陥があったとしても簡単に修正できることであるし、この結果を覆すということは考えられないことである」と述べた。

 

https://www.timeshighereducation.com/news/tef-russell-group-universities-appeal-results

 

(6)政府によるEU市民の権利に関する提案

 6月26日、内務省(Home Office)は英国におけるEU市民とEUにおける英国人の権利をいかに保護するかという提案書の詳細を発表した。

  May首相は英国におけるEU市民の顕著な貢献に鑑み、引き続き英国に居住するための権利を保障すると述べた。なお、本件は英国に在住するEU市民の権利の保護とEUに在住する英国人の権利の保護の互恵を求めるための提案であることを強調した。

 英国に滞在しているEU市民に対して「在留」というカテゴリーを設け、すでに5年以上英国に在留している場合、この権利は即座に適用される。また、英国に滞在しているが5年に達していないものは5年に達するまで滞在を認められ、以後「在留」の権利を得られる。「在留」の権利を得たEU市民は英国市民と同様の権利と保障を与えられる。すべての在留申請者は犯罪記録の調査を受ける。

 

https://www.gov.uk/government/news/uk-government-publishes-proposals-on-rights-of-eu-citizens

 

【関連記事】

 6月27日、世界4大会計事務所のひとつであるDeloitteは、英国政府やビジネス界が直面する問題を調査し、競争力、イノベーションや企業成長のための実務的なアドバイスを提供する初めてのレポート「Power Up-英国の職場」を発表した。

 本調査は2,000人の非英国人労働者(半分がUK国内在住、半分がUK国外在住)を対象とし、英国の職場環境と生活環境を理解するために実施された。

結果概要:

  • 英国は米国、オーストラリア、カナダを押さえ、優秀な高熟練労働者にとって最も人気のある国である。
  • 十分な雇用機会と多様性は英国の強みと見られる。
  • EU離脱は意識を変えた。― UK国外労働者の21%, UK国内の労働者の48%がUKに対して魅力が薄れたと感じている。
  • UK国内の外国人労働者の36%は5年以内に英国から離れることを考えている。
  • 高熟練のEU労働者に至っては47%が今後5年以内に英国から離れることを考えている。
  • 地域により結果が異なっている。例えばノーザンパワーハウスと呼ばれる北イングランドのマンチェスター、リバプール、ニューキャッセル地域は21%だが、ロンドンでは59%の労働者が英国から離れることを考えている。
  • 英国は人材不足の危機に直面する可能性がある。― 高熟練労働者が最初に移動する傾向があるので、短期的にその埋め合わせをする必要に迫られる可能性がある。
  • 特定の分野への非英国人労働者の集中とオートメーション化は関連がある。
  • EU労働者数が最も多い3つの分野はオートメーション化の可能性が高い。

提案事項:

 報告書は段階的な4つの推奨事項を提案している。

  • 高い才能をもつ者の個人的な選択を認める新しい移民法の制定。
  • 現在もしくは将来の労働者に対するスキルアップのための投資
  • デジタルの採用と、単純作業のオートメーション化のため技術開発への投資。
  • 地域レベルで対応できるよう、地域レベルでの仕事の創出。

 政策立案者、教育者、あらゆる規模の企業が団結し、英国における潜在的な問題点等を提唱し、コアスキルや生産性を高めることは重要である。

 

https://www2.deloitte.com/uk/en/pages/international-markets/articles/power-up.html

 

(7) 公正機会局によるアクセス協定2015/2016学事年度の結果発表

 6月29日、公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)が発表した報告書によると、大学やカレッジは恵まれない環境にいる若者に対して高等教育機会を広げている一方で、成人の大学生に対しては対応が遅れが見えることを発表した。

 本報告書(Outcomes of access agreement monitoring for 2015-16)は2015/2016学事年度で設定されたアクセス協定(access agreements)に対する各機関の取組状況や参加機会拡大のための投資や支援についてOFFAが行った調査結果である。

 同局の理事長であるLes Ebdon教授は報告書序文で「高等教育機関への期待値を段階的に高く掲げてきているが、各機関はそれに応える努力を続けている。各機関が各自で設定した新たな目標に対し80%以上が進展しており、大変喜ばしいことだ。

アクセス協定関連の投資は予想を大幅に上回るものであり、高等教育機関への入学の準備から卒業後までの学生生活のバランスが取れてきている。とは言うものの、我々の分析では成人やパートタイムの学生に対する改善が微々たるもの、もしくは全くなされておらず、今後の課題となる。多くの恵まれない環境の学生グループ、特に勉学、仕事、家庭のバランスをうまくとらなくてはならない成人学生にとって柔軟な選択肢が欠如しており、超えられない障壁となっている。成人学生が適切な支援を受けて大学に入学した場合、多くの場合成績がよく、良い就職先を得られている。このような可能性のある人材が通常の学生より2倍近く志半ばで学業を去らざるをえないことは、非常にもったいないことだ。」

 

 また報告書では、各高等教育機関が同学事年度のアクセス協定に£7億2520万の投資をしていることも発表している。内訳は以下のとおり。

  • £2億7770万を公正なアクセス活動のために投資

・£1億1950万:恵まれない環境にいる学生が高等教育参加をめざすための動機づけや成績の向上のための長期的支援活動

・£1億1710万:恵まれない環境の学生が学業継続できるような研修やボランティアプログラム実施のための支援

・£4100万:恵まれない環境の学生の就職の面接準備などを含む就職活動支援や修士課程進学のための専門家からの支援。

  £4億4750万を財政的な支援のために投資:

・£4億2880万:奨学金、諸経費免除や学生寮割引などの支援

・£1870万:困難基金(Hardship funds)として、最も経済的支援を必要とする学生に対する支援。

 

https://www.offa.org.uk/press-releases/offa-monitoring-outcomes-2015-16/

 

【各メディアの反応】

・BBC News

  恵まれない環境の家庭の学生の初年度の退学率の割合が過去5年間で最高値を示していると、OFFAの報告書が示している。データによると2014/2015学事年度では8.8%の学生が初年度で退学しており、前年の8.2%から増加している。対照的に同学事年度における富裕層の学生の退学率は5%以下であった。報告書は退学率において貧困層と富裕層の学生の差が広がってきていることを示している。貧困層の学生の高等教育参加の数が今までになく増加しているが、2年連続で卒業前に学校を去る学生の数が増え続けている。この事実は学生にとって非常に大きな意味がある。高等教育は良い就職先や社会的階層の流動性の扉を開くことを可能にしてくれるが、それは卒業した者だけにしか開かれていない。

 報告書ではまた、黒人学生は白人やアジア人に比べて1.5倍も退学率が多いことを示している。学位を得たものでも成績結果は大きな違いがある。白人学生の76%は「優秀」であったが、黒人学生は52%にとどまっている。

 また、OFFAはパートタイムの成人学生に対しての対応が十分でない現状を指摘した。成人学生の93%がパートタイム学生であるため、パートタイム学生の減少は成人学生の減少に負の影響を及ぼしている。パートタイムの入学者の数は7年連続で落ち続け2010/2011学事年度から58%も減少しており、緊急な対処が必要である。

 また報告書では2015/2016学事年度に、恵まれない環境の学生を広く高等教育に参加させることに取り組んだ機関の進捗状況も評価した。各機関は貧困層の学生を支援するため以前より多くの金額を投資している。2015/2016学事年度に高等教育機関が高等教育への幅広い参加のために投資した金額は£8億8350万であった。(2014/2015学事年度:£8億4210万、2013/2014学事年度:£8億260万)

http://www.bbc.co.uk/news/education-40429263

 

・Guardian

  OFFAの理事長であるLes Ebdon教授はオックスブリッジはもっと貧困層の学生の高等教育参加に努力をするべきだと語った。この2大学は不利な立場にある志願者の潜在的な能力を見出すことに失敗している。入学者選抜の際の成績に頼り、志願者の背景データの系統的な活用ができていないことを批判した。

 Oxford の広報担当者はEbdon教授の発言に対して「幅広く秩序だったデータにより、恵まれない環境にいる学生の可能性を見出してきている。支援プログラムとして年にサマースクールに£400万、財政的支援として年間£800万の投資を行なっている。」と反論し、「2016年は学部生の31.5%は恵まれない環境にある学生であった。2017年の入学者に至っては恵まれない環境にある学生の割合は、イギリスの大学全体の平均よりも高い割合となっている。」と述べた。

 Cambridgeの広報担当者も「入学者の決定は学術的能力でのみ決定している。我々は高い学術レベルを保ちながらも入学者の多様化を目指している。恵まれない環境の学生の大学への入学の障壁は高校での成績の低さである。恵まれない環境にある学生の選抜に当たっては、総合的に将来の可能性のある者を選んでいる」と異議を唱えた。

 

https://www.theguardian.com/education/2017/jun/29/oxford-cambridge-improve-access-disadvantaged-students

 

(8) UKイノベーション・リサーチの概要発表

 

 7月4日、英国研究会議(RCUK: Research Council UK)は、UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation)の最高顧問Mark Walport 卿が組織の構想、目標、次段階の開発に関して概要を発表したこと伝えた。 

 UKRIは2018年4月に設立される予定で、現在のRCUK 、イノベーションUK及び新たな組織リサーチUKから成る。世界でもトップの研究イノベーションの機関になることを目指すとしている。

 研究及びイノベーションの関係者を前にWalport 卿は、英国の現在の研究・イノベーション体系の長所を強調するとともに、英国において生じている社会、テクノロジー、研究やビジネスにおいて既存の価値基準を打ち砕くような変化に対するアプローチや戦略について詳細を述べた。

 Mark Walport 卿は「我々は大変強力な資金調達組織を形成しようとしている。しかし単に個別をあわせただけでは不十分である。創造性やイノベーションが積極的に取り入れられ、重要な提案が人為的な分断の犠牲にならないよう、大胆さ、熱意、機敏性を促進し評価していく必要がある。」と述べた。

 また、「UKRIの成功は、人類の英知の最先端を開拓し、経済に影響を与え、新たな雇用を生み出すことで、強く健康で回復力のある社会になることにどれだけ貢献できるかにかかっている。」と語った。

 

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/1704071/

 

(9)優秀な研究者の英国誘致のためRutherford 基金の設立

 7月4日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS: Department of Business, Energy & Industrial Strategy)は、大学・科学担当大臣であるJo Johnson 氏が高いスキルを持つ研究者誘致のために政府がRutherford 基金*を開設し、£1億の投資をする事を発表した。

 Rutherford 基金は開発途上国や新興研究国といわれるインド、中国、ブラジル、メキシコの若手研究者~シニア研究者に対し奨学金を支給し、英国を世界トップレベルの科学研究国として維持することに貢献してもらうことを目的としている。

 Jo Johnson氏は設立に当たり以下のようにコメントしている。

「研究とイノベーションは政府の産業戦略の目玉である。2016年秋期財政報告書において、政府は公共の研究開発に対して£47億という大幅な投資増加を発表した。首相は科学者やイノベーター、テクノロジー投資家に対し、英国が最も優れ魅力的な国であるよう、明確に指示した。 我々はEU離脱を控えているが、いつでも世界に向けて門戸を開いており、英国をイノベーションと発見のための世界の頭脳が集結する国にするため努力をしていく。」

  研究とイノベーションは政府の産業戦略のメインとなるものである。2016年秋の予算案では、公共の研究と開発のための予算を大幅に増加させ、合計£47億支出するとした。2020-21年までに毎年£20億を追加で支出することになる。これは、1979年以来の政府支出のいずれの項目よりも高い増加率(約20%)となっている。

 2017年、BEISの大臣であるGreg Clark氏は産業戦略チャレンジ基金を成立し、今後4年間に渡って£10億の投資を発表した。春の予算案では高い技術を持つ研究者の継続的な育成のため4年間にかけて£2億5000万投資することも発表した。

 基金は新組織UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation) が2018年に設立されるまでは、イノベーションUKと英国研究会議(RCUK: Research Council UK)が管理する予定である。UKRIは最高責任者に指名されたMark Walport卿の指導の下で産業戦略を通して英国の競争力を強化する役割を担う。

* Rutherford 基金 - University of Manchester とUniversity of Cambridgeで教鞭をとり,原子核物理学の父と呼ばれ、ノーベル賞科学賞受賞のアーネストラザフォード卿にちなんでいる。24歳で出身国のニュージーランドからの英国に移民した。

 

https://www.gov.uk/government/news/100-million-rutherford-fund-to-attract-best-researchers-to-the-uk

 

(10)学生の負債は£50,000以上に上昇 - 英国財政研究所発表

  7月5日、BBCは英国のシンクタンクである財政研究所(IFS : Institution for Fiscal Studies)の実施した学生の財務状況報告で、学生が学生ローンを借りた場合の借金は、卒業時に利息6.1%も含めて平均£50,800に上るということ発表した。

 利息は入学直後から発生し、卒業時には利子だけで平均£5,800になっている。この利子は“高利”であり、他のローンと比べてもかなり高いと分析している。

 報告書は、学費が£9,000に値上げされた2012年と学費が£3000であった2006年とを比較している。 学生ローン返済開始の収入基準も£21,000に上昇したため、卒業生で収入が低い者のほうが以前より恵まれている。返済開始収入基準は2012年より凍結されており、以前のローン返済制度に比べ、現在の方がすべての収入レベルにおいて状況が悪化し

ている。

 恵まれない環境にある学生は生活支援をより必要としているが、現在は返済不要の奨学金ではなくローンで支援を受けるため、卒業時には高額の負債を抱えることになる。

 利子の上昇及び学費が年間£9,250に値上げされたことにより、卒業生の負債額が増加し、高所得者は利子だけでも£40,000を支払うことになるであろう。報告書の著者Mr. Belfieldは、「現在のマーケットと比較しても、学生ローンの6.1%という利率は非常に高い。」と述べている。

 しかし卒業後30年間返済がなければ、債務は免責される。報告書では、50歳代でも返済し続けている者がいる一方で、4分の3がまったく返済をしていないという現状があるとしている。

 また政府は2012年以前の学生ローンがすでに売却開始されているように、学生ローンを個人投資家に売却することを望んでいる。

 現在のシステムで恩恵を受けているのは大学と政府の財政であると報告書では述べている。大学は政府からの財政支援がなくなることを考慮して、学費を£9,000に値上げして以来、学生一人当たりに対する助成金を25%上昇させた。奨学金から学生ローンに切り替え、ローン返済基準金額を凍結したことで、政府は財政的負担を減らした。

 卒業生のうちの3分の1を占める低所得者は、返済基準開始収入が£21,000になった2012年に比べ、30%も多額の借金を返済している。学生に負担が行くようになってから政府は長期的に£30億の負債を減らしたことになる。

 総選挙での労働党の想定外の躍進は、毎年若者の間で話題となる学費廃止を選挙公約に取り入れたことである。

 報告書では学費を廃止した場合の費用は年間£110億であると分析した。しかし「高額借金、高利子、低返済率」という状況を続けていた場合、卒業生と公共財政の両方に問題となると警告している。また最近の傾向として、大学独自の資金調達の増加、政府の高等教育に対する出資の減少の一方で卒業生、特に高所得の卒業生に対する負担の大幅な増加が特徴として挙げられている。

 

http://www.bbc.co.uk/news/education-40493658 

 

(11) 新組織学生局の最高責任者の発表

 7月5日、教育省(DfE: Department for Education )の大臣であるJustin Greening は学生局の最高責任者にNicola Dandridge 氏を指名した。

 Dandridge 氏は公職任命コミッショナー局*の監督によってオープンで、透明性のある採用手続きを経て選ばれた。

  学生局(OfS: Office for Students)は2017年の高等教育、研究法に基づいて設置される新組織である。高等教育部門の監視機関であり、学生への利益を第一に活動する。学生の高等教育への参加や雇用に対して革新的は方法で取り組むことが期待されている。

 イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)と公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)に代わるものとして2018年4月から本格的に活動を開始する。

 Dandridge 氏は英国大学協会(UUK: Universities UK)のchief  executiveとしてこれまでの8年間、様々な成功を収めた。

 

*公職任命コミッショナー局(the office of The Commissioner for Public Appointments):

大臣が特殊法人などの公的機関の代表者や役員を任命する際、任命が公正に行われるように監督することを職務としている機関。 

https://www.gov.uk/government/news/chief-executive-of-new-office-for-students-announced

 

 

2017年6月21日 2017年6月英国高等教育及び学術情報

(1)バーミンガム大学がドバイ・アラブ首長国連邦にキャンパスを開校予定  

  5月24日、BBCによると、University of Birminghamはアラブ首長国連邦のドバイにキャンパスを開校することを発表した。同大学、学長のDavid Eastwood卿は、ドバイキャンパスは同大学の“グローバルな任務”を果たすであろう、と述べた。  

  アラブ首長国連邦の新しいキャンパスはこの秋に開校するが、本格的な大学、大学院の授業は2018年秋から行なわれる予定である。  

  University of Birminghamのキャンパスは10年前にキャンパス用に建設されたドバイ・インターナショナル・アカデミー・シティに開校予定で、そこではすでに9カ国から26大学が存在しており、25000人の学生が学んでいる。  

  同キャンパスの学生はドバイを離れることなく、授業を英語で学びUniversity of Birminghamの学位を取得可能となる。ドバイではすでに英国から他にExeter, Bradford, London Business School, Heriot –Wattの各大学がキャンパスを開校しており、他にオーストラリア、米国、アイルランド、インド、ロシアからの大学もあり、ドバイからあまり離れていないアブダビにはフランスのSorbonne, 米国のNew York Universityがあり、カタールには英国のUCL、最近開校したAberdeenと米国のCarnegie Mellon Universityがある。  

  大規模なオンラインオープンコース”Moocs”の出現で留学生は、地元のキャンパスに通うよりもオンラインで授業が受ける方を選ぶのではないか言われていた。しかし大学はそのブランドを持って海外への拡大を続けている。  

  米国、State University of New York の調査によると、現在、全世界で240以上の海外キャンパスが存在している。現在、新たに20キャンパスが開校予定であるが、これまですべてが成功しているわけでなく、すでに40キャンパスが閉鎖されている。米国、英国、フランスが海外キャンパスの半分以上の割合を占めている。  

  ホスト国としては、特に中国、ペルシア湾岸諸国、マレーシアやシンガポールなどが最も収益性があり拡大している市場とされ、これらの国に海外キャンパスが集中している。  海外キャンパスは欧米の大学にとっては市場拡大を可能にし、学生にとっては海外留学にかかる高額な経費やビザ問題を気にせずに、欧米の一流大学からの学位を取得することができる。英国の大学にとっては、イギリス国内での学生獲得の熾烈な競争と資金的な不確実性に直面しており、海外キャンパスは新たな授業料獲得源となる。  

  Nottingham, Liverpool, Southampton, Newcastle, Bolton, Middlesex, Reading 等の大学もすでに海外にキャンパスがある。  

  このような国際化はヨーロッパ内での競争も激化させてきており、留学生獲得のため英語で教えるコースはヨーロッパでも増えている。フランスの大学は英国を含む留学生に対して、英語で教えるコースに力を注いでいる。  

  英語圏の国々では留学生市場の傾向は変動している。米国や英国は常に留学生獲得においてトップであったが、今月カナダの大学は留学生の出願数が”前例にない”ほどの上昇だと発表している。カナダの健闘ぶりは米国とヨーロッパの”孤立主義”が台頭してきていいることが原因とされている。

http://www.bbc.co.uk/news/business-40013077  

(2) 英国・オーストラリア大学学長が協力拡大の会議  

  5月26日、英国大学協会(UUK: Universities UK)は、25日に英国とオーストラリアの大学の協力拡大に関してハイレベルな関係者による会談を行ったことを発表した。UUKが主催し、9つの英国大学の学長、英国政府高官、英国におけるオーストラリア高等弁務官Alexander Downer氏、オーストラリア大学協会(Universities Australia)の代表者及びUUK、スコットランド大学協会(Universities Scotland)とその代表者が出席したUUKはオーストラリア大学協会と政策に関する交流と共同プロジェクトにおいて数年前から密接な関係を築いており、以前も大学学長で構成された諮問グループの討議等を開催している。

 会合では大学に関連する現在の様々な社会・経済情勢を前提に、近い将来、英国とオーストラリア間で結ばれる見通しの貿易協定や、英国のEU離脱に先駆けた両国間の交流の再評価及び再活性化など、建設的でターゲットを絞った議論が行われた。  

 両国関係の学術、及び優秀な研究者、大学研究交流、相互のデータやインフラへのアクセス、研究者への特別なビザの設定などでいかに両国の関係を深めるか、又これまでない新しい段階の交流事業として両国間の新しい研究助成金の創設の可能性も考察した。   King’s College London の学長であるEd Byrne氏は“英国とオーストラリアの研究者が連携し、難題に取り組んだときの研究は質が高く、インパクトも大きい。それは明確な目的がない研究(Blue Skies Research)であっても産業のための応用ソリューションにおいてでも同様である。このようなパートナーシップは将来の確固たる連携を築くための基盤となる。”と語った。  

  英国におけるオーストラリア高等弁務官Alexander Downer氏は”我々は古くからの友人であり、英国のEU離脱の過程において両国間の関係強化を望む。高等教育機関がそれを先導し、特に学術研究において両国間の更なる連携協力を計画していることを心強く感じた。“と述べている。  

  オーストラリアのUniversity of WollongongのPaul Wellings学長は“英国のEUとの関係が変化するときに、オーストラリアには、英国との二国間関係を高め、また英国を含む多国間の連携に参加するユニークな機会がある。オーストラリアの教育・研究機関が今後、英国との研究ネットワークを拡大できるように、オーストラリア政府の役割は重要である。”と述べた。

http://www.universitiesuk.ac.uk/International/Pages/british-australian-university-leaders-meet-discuss-expanded-cooperation.aspx

(3) ラッセルグループは研究と高等教育をEU離脱の最重要課題にするように懇願  

  5月31日、ラッセルグループは、同グループ大学の学長、首脳達がEU関係者との建設的な会談において、研究、高等教育がEU離脱交渉の際に最優先事項であることを強調した、と発表した。  

  同グループの大学学長や幹部で構成された代表団は、欧州議会議員と欧州委員会及び欧州理事会における離脱交渉チーム高官との会談を行った。  

  会談後University College London の学長であるMichael Arthur 氏は、次のように語った。“ブリュッセルのEU高官は英国の高等教育の優秀さを認めており、過去40年間で築いた関係を評価している。誰もEU離脱交渉の困難さを理解していない。昨日のように善意を反映した会談であれば、交渉を前向きに進めることができる。今回の会談は、英国、EU双方の参加者、また各国選出の欧州議会議員の参加も得て、大変建設的であった。又会談中に明らかにしたことは、離脱交渉において勝者というものはなく、離脱交渉が英国とEUの大学間の世界レベルの研究交流を困難にさせている、ということだ。我々は引き続きヨーロッパと友人であり続け、親密な関係を築いていきたい。まず手始めに我々ラッセルグループの大学に所属しているEUからの学生、職員86000人の権利をはっきりさせることが必要である。”

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-brexit-delegation/

(4) EU離脱後に英国独自の国際研究助成金機関が必要?  

  5月30日、英国の高等教育専門雑誌Times Higher Educationによると、第一線にいる研究者が、英国はEU離脱後にEUからの研究費が絶たれることなれば、全世界の研究者に門戸が開かれている英国独自の国際研究助成機関の設置が必要だと語った。  

  欧州研究会議の科学委員会のメンバーであるDame Janet Thorntonは“英国の研究者が引き続き世界の競争の舞台で活躍するには、欧州研究会議のプログラムと似た、研究者の好奇心に基づく研究を推進するプロジェクトが必要である。”と述べた。  

  現在の欧州委員会の研究プログラムであるホライズン2020は2014年から2020年の間に€800億(£692億)が投資されることになっている。その中で欧州研究会議は€131億の予算を短期的な応用研究ではなく、目標が限定されないBlue sky researchに対して、学術的卓越性のみに基づいて助成している。  

  Dame Janet Thorntonは“欧州研究会議の研究費を獲得することは、ヨーロッパの他の研究者と競争している、という名誉の証であり、欧州研究会議のプログラムに参画できないということは英国の学術研究の弱体化につながると思う。”と述べた。  

  Dame Janet Thorntonが提案するシステムは、EUには加盟していないが拠出金を負担することで準メンバーとして欧州研究会議の研究プログラムに参加可能というシステムと同じように,各国が英国に基盤を置く国際研究助成機関の予算に貢献するとともに、助成金にも申請できる、というものである。  

  Dame Janet Thorntonはさらに次のように述べている。“欧州研究会議はすべての応用研究よりも優れた最先端研究を推進するスキームを作り上げた。研究者が我々のところに来て、"これこそが私たちがほしかったものだ"と言っている。今は、このように大成功した欧州研究会議がある。英国の研究者もこのような例を作るべきだと思う。”

https://www.timeshighereducation.com/news/post-brexit-uk-may-need-launch-global-funding-council

(5) QS世界ランキング2018年発表  

  6月8日、Quacquarelli Symonds (QS)社はQS University Ranking 2018を発表した。 評価指標は世界的な高等教育機関の主要な活動を包含する6つの項目からなる。

  1. (学術界の)研究者による評判(40%)
  2. 雇用者による評判(10%)
  3. 学生一人当たりの教員数(20%)
  4. 教員一人当たりの被引用論文数(20%)
  5. 外国人教員比率(5%)
  6. 留学生比率(5%)  

  第14回目の本ランキングでは84カ国から950大学の順位を示している。6年連続でMassachusetts Institute of Technology (MIT)が首位をキープし、米国の3大学が僅差でそれに続いている。10位内の顔ぶれは昨年と変化がない一方で、中国の6大学が100位以内に躍進し、政府の投資や学生の流動性に対処したロシアの大学はその努力が実った結果となっている。  

  ケンブリッジ、オックスフォード、UCL、インペリアルは10位以内に留まっているが、2年連続で英国の大学は苦戦を強いられている。EU離脱や2017年の総選挙の影響で英国の大学の海外との連携がさらに困難になるかはこれから明らかになるだろう。また、フランス、ドイツやその他ヨーロッパ諸国での政治的な変化が今後高等教育界に様々な変化をもたらすだろう。  

https://www.topuniversities.com/university-rankings-articles/world-university-rankings/out-now-qs-world-university-rankings-2018

【QS World University Ranking ®2018】

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メディアの反応

・ガーディアン紙  

  ランキングされた76の英国大学のうち51大学は順位を下げた。昨年より400位以内、200位以内、100位以内の大学が減少した。まだEUにいるためEU離脱が原因とはできない。もっとも評価が下がったのは教員一人当たりの被引用論分数の指標である。76大学中57大学において昨年より下がっている。単純にこの結果は英国の大学の研究機関としての競争力低下を意味している。  

  競争力低下はこの数年の実質的な研究資金の停滞が原因と考えられる。このランキングで上位に位置する大学は十分な公的/私的の助成を受けているが、例えば英国の公的研究助成金は2010/2011学事年度のレベルに戻っていない。また、英国の大学拡大に伴う補助的な大学教員の増加も影響している。補助的な大学教員は、シニア教員の教育の負担を軽減しているが、研究への関心が低いため、教員総数増加に応じて被引用論分数が増加していない。  

  他の心配の種は英国大学における国際化である。QSのデータでは世界の高等教育界はどんどん国際化を推進しており、留学生の比率は増加の傾向にある。しかし英国の76大学はその傾向から外れている。56の英国大学は毎年留学生比率が減少しており、英国の平均は昨年より低い。今年初めに大学入試機関(UCAS)が発表したEUからの願書は7%も減少したという結果もこの事実を裏付けている。  

  しかしこれは英国に限ったことではなく、米国でも留学生比率において157大学中、107大学が減少している。これは最近の政権交代の影響の可能性もある。  

  国際化というのはいろいろな意味で高等教育の質に影響が出る。第一の影響は財政で、公的資金援助が減少している英/米国の大学では、留学生の割り増し授業料で競争力を維持することが可能である。  

  第二に研究の質への影響である。1981年において英国の論文引用指標は90%が国内の論文のものであったが、その後、国内論文の割合は減少し半分となった。現在の主な英国の論文引用指標は国際的な共著論文のもので、増え続けている。  

  国際化の良い面は国際関係を育み、国としてのソフトパワーを向上し、英国高等教育の名声を高めることである。島国根性のままでは、海外からの教員と留学生は減っていくだろう。もし英国政府が断固として人の移動の自由を認めないのであれば、過去のスイスと同様にホライズン2020のような資金援助プログラムにアクセスできなくなる恐れがある。つまり国際化/移動の自由がなくなった場合、被引用論文数や研究者の評判といった指標に、もっと致命的な打撃があるであろう。政治的姿勢に関わらず、英国高等教育の脅威であるEU離脱をうまく切り抜けることが、将来の成功を考える上で、英国大学の優先課題でなくてはならない。

https://www.theguardian.com/higher-education-network/2017/jun/07/top-200-universities-in-the-world-2016-the-uks-rise-and-fall 

(6)大学の「世界のトップ1%」広告を取り下げ  

  BBCの6月8日の報道によると、The University of Reading は世界の“トップ1%”に位置する、と載せた広告に対して苦情があり、広告規制局からの指導によりこの広告を取り下げた。   

  苦情はThe University of Readingが世界のトップ1%に位置するという広告の数字はまったく実証できるものではなく、誤解を招く可能性があるというものであった。  

  広告規制局は大学側がその内容を取り下げることで“非公式に解決”したとし、本格的な調査を取りやめた。  

  大学ランキングは学生獲得、特に留学生に対して影響力を増している。学科別、大学別など様々な大学ランキングが存在し、この結果は各大学の国際的な位置づけの証拠としてしばしば使われることがある。  

  University of Southampton のウェブサイトでは”世界の大学の中のトップ1%“、University of Liverpool、Queen's University Belfastも同様に自大学を紹介している。  

  これに対してThe University of Readingの広報担当者は次のように述べた。” 広告規制局は、個別の大学に対する苦情を受けて指摘するのではなく、「トップ1%」と主張する英国の全ての大学を調査する必要がある。The University of Reading はTimes Higher Education やQSの世界ランキングで200位以内にランキングしている。このランキングから、他の多くの英国の大学と同じように、The University of Readingが世界の20000大学の中でトップ1%にあると判断してきた。しかし、世界の全大学を網羅するランキングが存在しない以上、我々が世界トップ1%に位置することは証明できない、という広告規制局の指摘を受け入れる。“

http://www.bbc.co.uk/news/education-40187452

(7) 戦いの後-総選挙結果と高等教育界への影響  

  6月9日、高等教育専門ウェブサイトのWonkheは前日6月8日に行なわれた英国総選挙結果の高等教育界への影響と「大学町選挙区」の結果について分析を発表した。  

  与党、保守党は過半数に達することができず、TEF2(教育評価制度試行第2回)の結果発表、LEOデータ(大学卒業生の卒業後の年数と収入に関するデータ)発表、学生局長官人事の発表など、今後の高等教育界にも影響する可能性がある。  

  間違いなく、保守党に打撃を与えたのは多くの大学のある選挙区の若者、特に学生の票であった。出口調査では18―34歳の63%が労働党に投票したという結果がでており、又それ以前の兆候として過去の選挙よりこの年代層の投票率が高いといわれていた。労働党の公約の一つである授業料廃止は同党の成功の鍵であったといわれている。  

  大学キャンパスでは投票所に有権者の長い行列ができた。ガーディアン紙によるとUniversity of East Anglia が位置する選挙区の投票所ではもっとも長いと思われる行列ができ、University of Oxford やUniversity of Kentの選挙区でも同様な長蛇の列があったと報告されている。  

  では高等教育関係の選挙結果はどうなったのか。  

  元教育省の公務員で高等教育のロビーストとして有名なMatt Rodda氏は学生の多いReading East選挙区で労働党候補として予想外の当選を果たした。  

  他に学生選挙区といわれる、Cardiff- Central , Bristol West, Manchester Central, Newcastle-upon-Tyne East, Norwich South, Nottingham Southでも労働党が勝利した。自由民主党が議席を守ってきたLeeds North Westも労働党の勝利であった。   Bathは驚くことに保守党から自由民主党の議席となった。又自由民主党はOxford West and Abingdonでも保守党から議席を奪った。  

  Cambridgeでは労働党が13000票の差をつけて勝利を収めた。  

  Aberdeen Northはスコットランド国民党が獲得。(学生が少ないAberdeen Southでは保守党が獲得した。)  

  最も多くの学生を抱える選挙区Sheffield Central は労働党が圧勝した。Sheffield Hallamは2010年連立政権時に自由民主党の党首で2010-2015まで副首相であったNick Clegg氏が落選、同選挙区は労働党が確保した。 

  University of Kent が位置するCanterburyは予想以上の学生票により100年ぶりに労働党が勝利した。  

  教育大臣のJustine Greening氏 はたった1500票の差で辛うじて勝利を収めた。なお、大学大臣のJo Johnson氏はOrpingtonで圧勝した。

http://wonkhe.com/blogs/the-morning-after-conservatives-fall-short-of-an-overall-majority/

2017年英国総選挙結果

議席総数:650 (過半数議席数:326)

主要な獲得議席数:(改選前議席数)

  • 保守党(Conservative Party): 318 (331)
  • 労働党(Labour Party):262(232)
  • 自由民主党(Liberal Democrats Party):12 (8)
  • スコットランド国民党(Scotland National Party):35 (56)
  • 民主統一党 (Democratic Unionist Party):10 (8)

http://www.bbc.co.uk/news/election/2017/results

(8)TEF2の結果発表延期  

  6月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は各大学学長に TEF2 (Teaching Excellence Framework Year Two)の結果発表延期を書簡で通知した。  

  予定では6月12日に各大学に結果報告、14日に公表することになっていた。  

  TEF2に参加した機関にはすでに通知されている通り、総選挙の結果を受けて、現在はまだ本格的な新内閣が形成されていないため、選挙期間中と同様に公式な発表は避けるよう、内閣府から通達があった。これを受けて、HEFCEはTEF2の結果発表を延期するよう教育省から通知された。  

  発表日は改めて報告する予定である。

http://www.hefce.ac.uk/media/HEFCE,2014/Content/Pubs/2017/CL,182017/CL2017_18.pdf

(9) Jo Johnson氏大学・科学担当大臣に再任、新内閣閣僚発表  

  6月12日、高等教育専門雑誌Times Higher Education によると、総選挙後の新内閣でJo Johnson氏が大学・科学担当大臣に再任された。以前と同様に教育省およびビジネス・エネルギー・産業戦略省の閣外大臣である。  

  また、教育大臣にはJustine Greening 氏、ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣にはGreg Clark氏が再任され、高等教育、科学政策に関わる大臣達には総選挙後も変更がなかった。  

  総選挙前の予想ではJohnson氏は留学生数を移民の純目標数に含めることに関して首相と対立していたため大学・科学大臣への再任はないと思われていた。また、Greening教育大臣の役職も変わると予想されていた。  

  しかし総選挙で保守党が過半数に達することができず、メイ首相が当初考えていた大きな内閣再編が出来なかったと見られる。  

  Johnson氏はEU残留を問う国民投票ではEUへの残留を支持し、総選挙直前に高等教育法を制立させ、イングランドの高等教育業界をより民間の大学に開放する、Johnson氏の言う”古典的な規制市場”を目指している。  

  当面の優先課題は、イングランドの大学の学生満足度、持続率や卒業後の就業率を測る教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)の結果発表を監督することである。この結果発表は6月14日に予定されていたが、総選挙後の不透明な状況のために発表が延期された。 

https://www.timeshighereducation.com/news/jo-johnson-reappointed-uk-universities-and-science-minister

大臣の詳細:

ministers_details_from_jsps_portal_site_26jul2016.docxをダウンロード

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