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2017年7月25日 2017年7月英国高等教育及び学術情報

(1) 統計:高等教育卒業生の就業と収入

 6月13日、教育省(DfE: Department of Education)は高等教育修了者の就業と収入に関する試験的統計として「長期的教育成果(LEO: Longitudinal education outcomes)」 を発表した。

 今回初めて発表された本調査結果は、下記のデータから構成されている。

  • 教育省提供による教育データ
  • 雇用年金局 (DWP :Department for Work and Pension)及び英国歳入税関庁 (HMRC: Her Majesty’s Revenue and Customs)提供による雇用、福祉手当、収入データ

 

  これらの試験的統計は2003/2004学事年度から2012/2013学事年度に渡るデータであり、下記について分析されている。

  • 卒業後3年、5年及び10年の就業率と収入
  • 個人の属性(性別、人種、年齢)
  • 出身大学
  • 専攻、資格取得状況

 

https://www.gov.uk/government/collections/statistics-higher-education-graduate-employment-and-earnings

 

【各機関の反応】

・英国大学協会(Nicola Dandridge会長):

 調査結果からは、大学や専攻にかかわらず、大学修了者は雇用に関して今でも有利であることが明らかになった。大学を卒業していない者よりも平均して確実に収入が高い。

 しかし収入額だけが高等教育の成功を測る物差しではない。芸術、創造産業、看護、公共部門専門職などを専門とする大学は社会や経済に大きく貢献しているにもかかわらず、平均より低い収入となっている。多くの学生は高い収入ではなく、生きがいのある職種を求めている。また、地理的な属性など、収入に影響する要因は他にもいくつか考えられる。

 特殊技能を持つ卒業生の需要は今後益々増していくだろう。英国の大学はこれまで以上に学生に対し、生涯を通じて必要となる技能を様々な分野で習得させ、また、雇用者側が求める大学院レベルの高い技術を習得させる努力をしていくことになる。

 批判的に物事を考え、分析し、証拠提示する能力はまさに「生涯を通じて人生を豊かにするもの」である。

 

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Comment-on-new-graduate-employment-and-earnings-statistics.aspx

 

・ラッセルグループ(事務局長代理Tim Bradshaw氏)

大学で学ぶことは将来の収入に関る以上の価値があるものであるが、多くの若者は大学進学の理由として将来の収入も考慮していることは事実である。

雇用者はラッセルグループ大学卒業者を高く評価しており、本調査結果をみても、雇用者がラッセルグループの卒業者に対し高い給与を支払うことを異としていない。

心理学から社会科学、法律、またコンピュータサイエンスから工学、物理化学まで統計データ上ではラッセルグループ卒業者は収入において群を抜いて優れている。ラッセルグループの11大学が法律の分野における収入トップを占めている。数学ではトップ8までを占めており、他の分野においても同様の傾向が見られる。

長期的教育成果調査は今回が初めての結果公表ではあるが、大学進学希望者にとって大学の選択がどれだけ将来の収入に影響を及ぼすかを知ることができるものとなっている。

 

http://russellgroup.ac.uk/news/leo-data/

 

(2) 研究の商業化に関するグッドプラクティスの収集

 6月15日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE;Higher Education Funding Council for England)の大学間知識交換構想ステアリンググループ(KE Framework Steering Group)は、Association for University Research and Industry Links (AURIL)及びPaxisUnico, Association Research Manager and Administrators (ARMA)に対して、研究の商業化に関するグッドプラクティスを提出するように求めた。対象事例は、大学と企業の間の様々な形の共同研究、パートナーシップ構築や契約関係に焦点を当てている。提出締め切りは2017年9月4日。

 知識交換構想プログラムは、大学が常に改革し続ける姿勢を支援することを目的としている。ステアリンググループ議長はKeele University の学長であるTrevor McMillan教授が務めている。2016年9月に発表された技術移転のグッドプラクティスに続くものとして事例を収集し、可能性をレビューする。すでに前回の調査で評価されたものは今回の対象ではない。

 

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114431,en.html

 

 

(3) 英国高等教育機関の卓越した教育に関する調査:TEF2 の結果発表

 6月22日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)2年目の結果を発表をした。

 調査結果は2018年秋入学予定の学生の進路選択の指標となり、また英国内での優れた教育、学習を奨励するものである。

 教育評価制度(TEF)は英国内の世界トップクラスの高等教育機関の実績を明確に示すために政府により導入されたもので、教授と学習の成果の分析結果により、既存の研究評価制度を補足するものである。

 合計295の大学、カレッジやその他教育機関が任意に参加し、参加機関は「金」「銀」「銅」「条件つき(データが不十分である)」の4つで評価され、金は59機関、銀は116機関、銅が56機関であった。条件つきを除くと金は全体の26%、銀は50%、銅は24%を占めた。

 評価者は学術会からを含む専門家、学生や雇用者の代表により構成される。国から提供されたデータ、各機関から提供されたデータを元に、教授の質、学習環境、学生の学習の成果の3分野について評価を行った。

 

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114556,en.html

 

【各機関やメディアの反応】

・Times Higher Education

 世界的にも有名な英国高等教育機関であるThe London School of Economics (LSE)やUniversity of Southampton がTEFで銅の評価を受けた。また、研究主体の大学で構成され、Russell GroupのメンバーであるUniversity of Liverpoolは一番低いランキングであった。

  その他有名大学で銅と評価されたところはUniversity of London の傘下であるSOAS, Goldsmiths、又医学部として評価の高いSt. George であった。又ロンドンに位置する25大学のうち12大学が銅であった。

 

 Times Higher Educationの世界ランキング(2016―2017)では5位であったLondon School of Economics(LSE)は低い評価を受け、London Metropolitan University, University of East London と同位になったことでTEFの評価方法(卒業生の進路、学生満足度、卒業率、15ページにも及ぶ申告書など)について今後議論を起こすことになろう。

 最終的に137の高等教育機関のうちの3分の1が金の評価を受けた。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学やラッセルグループの6大学( Birmingham, Exeter, Leeds, Nottingham, Imperial College London , Newcastle)なども含まれている。ラッセルグループの21大学のうち48%である10大学(Leeds, Nottingham, Imperial College London and Newcastle University)は銀と評価された。これは、ノミネートした全ての大学の49%が銀の評価を受けたのとほぼ同じ割合である。

 しかし伝統的にランキングの常連でないいくつかの大学が金の評価を受けた。Bangor, Derby, Northampton, Coventry, Portsmouth等 1992年以降に設立された新大学がWarwick (銀), Southampton (銅)などの伝統大学を差し置いて金の評価であった。

 

https://www.timeshighereducation.com/news/tef-lse-southampton-and-liverpool-get-bronze 

 

・BBC News

 TEFは学生の大学選考の際の指標となることを目的として行われているが、銅と評価された多くの大学はこの評価方式は不平等で信用ならないと非難している。各機関がTEFに参加するかは任意であるが、銅以上を獲得した機関はインフレの上昇率に合わせ2018/2019学事年度の学費の値上げが可能となる。

 評価は実際に講義や教育内容を視察したデータは含まれておらず、施設、学生の満足度、退学率、就職先や卒業後の更なる学習の状況などを元に行われる。

 14の生涯教育機関で学位を発行している機関が優秀大学とともに金を獲得した。

 出願資格や学部など機関ごとの差異については、審査委員会により考慮された。審査委員は27人の学術関係者、学生、雇用者、専門家、など幅広い分野からのパネルで構成された。

 「金」とは英国内で最高の教育の質の大学で、「学生に最高の教育と学習の成果を提供している」と評価されるものである。「銀」は「英国高等教育が要求する厳格な標準以上を提供している」と評価されるもので、「銅」は「国内水準に達している」と評価されるものである。

 HEFCEは、学生が大学を選ぶ際に心がけている点に考慮した以下の点を評価基準にしていると述べている。

  • 高い質の教育を提供しているか
  • 協力的で刺激的な学習環境であるか
  • 自身の可能性を引き出すために必要な知識とスキルを備えているか
  • 将来の就職先もしくは更なる研究に繋がる機会が提供されているか

 HEFCEの会長であるMadeleine Atkins氏は「学生は高等教育を受けるために莫大な時間と資金を投資しており、質の高い教育環境とアウトカムを当然期待する。」と述べた。

 TEFの評価委員会の議長を務めたChris Husbands 教授は「TEFは、他の情報とともに明確でわかり易い評価として利用されることを望んでいる。」と語った。又全体評価は銅と低かったが、様々な要素の中で優秀と評価されるものがあったことを強調した。

 高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)のNick Hillman 理事長は「驚くような結果が出たが、TEFはその目的を果たしているようである。もしTEFが以前の評価をただ複製したに過ぎないのであれば失敗していたであろう。他のランキングとは異なるように設計されており、今まで無視されてきた優秀な機関を見出し、又改善が必要なところに目を向けるものである。」と述べた。しかしながら「教室で実際に行なわれていることを正確に反映しているわけではないことを学生は念頭においておくべきだ」と付け加え、と釘を指した。また、「大学進学希望者はこの結果を進路決定として利用する際に、あくまでも個々の学部ではなく大学全体の評価であること肝に銘じてほしい。」とも述べている。

また銅の評価を受けたUniversity of Southamptonの学長であるChristopher Snowdon卿は「TEFに対して信用を持つことが難しい。透明性の欠如、機関によって基準が異なり、公平公正な評価がされていないと懸念しているのは私だけではない。我々の学生満足度や教育満足度は、今回金や銀を獲得した大学より勝っている。」と述べ、評価に対して抗議する事を考えている。

 SOASのDeborah Johnson 氏は「TEFは我々の活動を正確に反映していない。」と懸念している。「明らかにロンドンという場所が影響しており、ロンドンにある大学は、3大学に1大学の割合で銅の評価を受けた一方、ロンドン以外の大学は8大学に1大学の割合で銅という傾向となっている。つまりこの評価基準はロンドンにある大学に当てはまらない。例えばロンドンの高い生活費が原因による大学中退などがある。」と語った。

 University of Liverpoolは声明で「銅という結果は非常に残念であるが、TEFは質を測る絶対的なものではない。広く知られている他の世界ランクでは我々は常に200位以内にランキングしている。」と述べた。とはいうものの、「我々はTEFで使われている内容に対して改善するため最善の努力をする」とも語った。

 

http://www.bbc.co.uk/news/education-40356423

 

・英国大学協会(Dame Julia Goodfellow 会長 :ケント大学学長)

  「英国の大学は世界的にも質の高い教育と学習機会が担保されていると広く認識されている。また、クオリティコードとして設定されているハイレベルなアカデミックスタンダードを満たすことを要求されている。

 新しいTEFの評価は公式に発表されている多くのデータに基づいて決定されており、学生にとって他の情報とともに選択の助けになるものである。

 今回のTEFは試験的であり自主参加によるものであった。データ使用は的確で、範囲が広く、かつ大学機関内の多様性も考慮されていることが重要である。今後この評価制度を学生の大学選択の際に役立つ情報に更に開発していくことが重要である。

 TEFの手法は一応完成したことになるが、2019年のレビューによりTEFは学生に役立っているか、その目的が果たされているかどうかの評価が下される。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-response-to-the-Teaching-Excellence-Framework-results.aspx#sthash.dV1MP4so.dpbs

 

・ラッセルグループ

 TEFは学生が大学や専攻を決定する際に手助けとなる新しい情報源として開発された。しかしここで3つほど知っておきたいことがある。

  1. 今回の調査はトライアルの段階のものであり、すでにレビューを行うことが発表されている。

 政府はすでにTEFの評価手法の向上のためにレビューを実施することを発表している。現時点では全国学生調査(NSS: National Student Survey)が評価の対象となっているが、この結果は大学が提供している教育の真の姿を反映しているのか疑問を持つ者もいる。

  1. TEFは大学の質を測る完璧なものではない。

 今回高評価を得た大学は現在の学生数を反映することで勝ち得たものである。どこかのポイントでトップのスコアだからといってTEFで高い評価を得られたわけではない。非常に低い退学率の大学よりも、卒業率が高い大学の方が優位に加算されるように評価手法が設計されている。肯定的な変化を認めることはよいことであり、喜ぶべきであるが、TEFの評価手法は決して期待しているほど各大学の本当の教育実態を表していないという点に注意してほしい。

  1. TEFは多くの情報の中の1つでしかない。

 今回はまだ試験的な実施であり、すべての大学が参加したわけではないので、ほかの情報も参考にすることを薦める。UCASや他の機関の情報で大学生活について提供しているものも参考にするとよい。

 

http://russellgroup.ac.uk/news/tef-3-things-you-need-to-know/

 

(4)産業戦略チャレンジ基金の募集の開始

 6月22日、英国研究会議(RCUK:Research Council UK)とイノベーションUKは、政府の

産業戦略チャレンジ基金への応募者募集を開始した。

2017年4月の予算案で発表された6つの分野は次のとおり:

  • “ファラディチャレンジ”という電気自動車のバッテリーの開発と製造

低炭素経済の移行機会の実践のため4年間に渡り£2億4600万の投資。資金は研究、イノベーション、スケールアップの3要素に分けられる。

  • 極限環境に活用するロボット、人口知能の開発

洋上発電、原子力発電、宇宙や深層鉱業等に4年間に渡り£9300万の投資。産業と公共サービスの生産力強化を目的とする。

  • 医療製造のための新たなテクノロジーの開発。

新薬や治療への患者の早期アクセスを可能にするため、4年間に渡り£1億9700万を投資し、英国のバイオ医療分野の輸出を強化。

  • 無人自動車革命最前線にいる英国の次世代の人口知能と自動運転システムの開発

産業界との共同研究と開発プロジェクトに£3800万を投資。

  • 次世代の低価格軽量合成材料の製造開発

宇宙航空、自動車やその他応用製造分野の研究と開発プログラムに£2600万の投資。

  • 衛星試験施設―新しい宇宙技術開発、運用実験に£9900万を投資

衛星の製造と観測機器を軌道に乗せるための開発

 産業戦略チャレンジ基金は英国が科学とイノベーション分野において世界の最高峰のひとつでありつづけるための政府戦略である。

 イノベーションUKとRCUKが基金の提供、全国での実施、また科学とイノベーション分野における最大の利益を確保するための役割を果たしている。

 

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/220617/

 

(5) ラッセルグループ大学がTEFの結果に抗議

 6月27日、高等教育専門誌のTimes Higher Education は22日に発表されたTEFの結果に不満なラッセルグループの大学、Liverpool, Durham, York, Southamptonが抗議をすることを発表した。

 Times Higher Educationの世界ランキング200位に入るLiverpool大学, Southampton大学は、最低の評価である銅と評価されたラッセルグループの3大学のうちの2つである。3つ目の大学であるLondon School of Economics (LSE)は、現在態度を明らかにしていない。

 DurhamとYorkはそれぞれ銀と評価されたが、いずれも卒業生の雇用、学生満足度やコース修了率、それに15ページに及ぶ説明文の扱いに対して抗議すると述べている。

 抗議の多くは15ページの説明文の扱い方と審査委員の間で評価基準が異なったのではないか、が焦点となっている。 

 Southampton の学長であるChristopher Snowdon卿は「評価基準は根本的に欠陥があり、結果は論理的でない」と抗議している。

 しかしTEFを担当している英国高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は「大学は"明らかな手続き上の瑕疵”についてのみ抗議ができ、TEFの根拠となる原理原則や審査委員の判断には抗議できない。」と述べている。

 オックスフォード大学高等教育政策研究センター(Oxford Centre for Higher Education Policy Studies)のFarrington教授は「TEFは自主参加であり、参加したものはTEFの評価に関する条件を受け入れているはずである。今頃になって評価過程に間違いがあったというのは大きな問題で、ならば最初に警鐘を鳴らすべきだった。技術的な欠陥があったとしても簡単に修正できることであるし、この結果を覆すということは考えられないことである」と述べた。

 

https://www.timeshighereducation.com/news/tef-russell-group-universities-appeal-results

 

(6)政府によるEU市民の権利に関する提案

 6月26日、内務省(Home Office)は英国におけるEU市民とEUにおける英国人の権利をいかに保護するかという提案書の詳細を発表した。

  May首相は英国におけるEU市民の顕著な貢献に鑑み、引き続き英国に居住するための権利を保障すると述べた。なお、本件は英国に在住するEU市民の権利の保護とEUに在住する英国人の権利の保護の互恵を求めるための提案であることを強調した。

 英国に滞在しているEU市民に対して「在留」というカテゴリーを設け、すでに5年以上英国に在留している場合、この権利は即座に適用される。また、英国に滞在しているが5年に達していないものは5年に達するまで滞在を認められ、以後「在留」の権利を得られる。「在留」の権利を得たEU市民は英国市民と同様の権利と保障を与えられる。すべての在留申請者は犯罪記録の調査を受ける。

 

https://www.gov.uk/government/news/uk-government-publishes-proposals-on-rights-of-eu-citizens

 

【関連記事】

 6月27日、世界4大会計事務所のひとつであるDeloitteは、英国政府やビジネス界が直面する問題を調査し、競争力、イノベーションや企業成長のための実務的なアドバイスを提供する初めてのレポート「Power Up-英国の職場」を発表した。

 本調査は2,000人の非英国人労働者(半分がUK国内在住、半分がUK国外在住)を対象とし、英国の職場環境と生活環境を理解するために実施された。

結果概要:

  • 英国は米国、オーストラリア、カナダを押さえ、優秀な高熟練労働者にとって最も人気のある国である。
  • 十分な雇用機会と多様性は英国の強みと見られる。
  • EU離脱は意識を変えた。― UK国外労働者の21%, UK国内の労働者の48%がUKに対して魅力が薄れたと感じている。
  • UK国内の外国人労働者の36%は5年以内に英国から離れることを考えている。
  • 高熟練のEU労働者に至っては47%が今後5年以内に英国から離れることを考えている。
  • 地域により結果が異なっている。例えばノーザンパワーハウスと呼ばれる北イングランドのマンチェスター、リバプール、ニューキャッセル地域は21%だが、ロンドンでは59%の労働者が英国から離れることを考えている。
  • 英国は人材不足の危機に直面する可能性がある。― 高熟練労働者が最初に移動する傾向があるので、短期的にその埋め合わせをする必要に迫られる可能性がある。
  • 特定の分野への非英国人労働者の集中とオートメーション化は関連がある。
  • EU労働者数が最も多い3つの分野はオートメーション化の可能性が高い。

提案事項:

 報告書は段階的な4つの推奨事項を提案している。

  • 高い才能をもつ者の個人的な選択を認める新しい移民法の制定。
  • 現在もしくは将来の労働者に対するスキルアップのための投資
  • デジタルの採用と、単純作業のオートメーション化のため技術開発への投資。
  • 地域レベルで対応できるよう、地域レベルでの仕事の創出。

 政策立案者、教育者、あらゆる規模の企業が団結し、英国における潜在的な問題点等を提唱し、コアスキルや生産性を高めることは重要である。

 

https://www2.deloitte.com/uk/en/pages/international-markets/articles/power-up.html

 

(7) 公正機会局によるアクセス協定2015/2016学事年度の結果発表

 6月29日、公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)が発表した報告書によると、大学やカレッジは恵まれない環境にいる若者に対して高等教育機会を広げている一方で、成人の大学生に対しては対応が遅れが見えることを発表した。

 本報告書(Outcomes of access agreement monitoring for 2015-16)は2015/2016学事年度で設定されたアクセス協定(access agreements)に対する各機関の取組状況や参加機会拡大のための投資や支援についてOFFAが行った調査結果である。

 同局の理事長であるLes Ebdon教授は報告書序文で「高等教育機関への期待値を段階的に高く掲げてきているが、各機関はそれに応える努力を続けている。各機関が各自で設定した新たな目標に対し80%以上が進展しており、大変喜ばしいことだ。

アクセス協定関連の投資は予想を大幅に上回るものであり、高等教育機関への入学の準備から卒業後までの学生生活のバランスが取れてきている。とは言うものの、我々の分析では成人やパートタイムの学生に対する改善が微々たるもの、もしくは全くなされておらず、今後の課題となる。多くの恵まれない環境の学生グループ、特に勉学、仕事、家庭のバランスをうまくとらなくてはならない成人学生にとって柔軟な選択肢が欠如しており、超えられない障壁となっている。成人学生が適切な支援を受けて大学に入学した場合、多くの場合成績がよく、良い就職先を得られている。このような可能性のある人材が通常の学生より2倍近く志半ばで学業を去らざるをえないことは、非常にもったいないことだ。」

 

 また報告書では、各高等教育機関が同学事年度のアクセス協定に£7億2520万の投資をしていることも発表している。内訳は以下のとおり。

  • £2億7770万を公正なアクセス活動のために投資

・£1億1950万:恵まれない環境にいる学生が高等教育参加をめざすための動機づけや成績の向上のための長期的支援活動

・£1億1710万:恵まれない環境の学生が学業継続できるような研修やボランティアプログラム実施のための支援

・£4100万:恵まれない環境の学生の就職の面接準備などを含む就職活動支援や修士課程進学のための専門家からの支援。

  £4億4750万を財政的な支援のために投資:

・£4億2880万:奨学金、諸経費免除や学生寮割引などの支援

・£1870万:困難基金(Hardship funds)として、最も経済的支援を必要とする学生に対する支援。

 

https://www.offa.org.uk/press-releases/offa-monitoring-outcomes-2015-16/

 

【各メディアの反応】

・BBC News

  恵まれない環境の家庭の学生の初年度の退学率の割合が過去5年間で最高値を示していると、OFFAの報告書が示している。データによると2014/2015学事年度では8.8%の学生が初年度で退学しており、前年の8.2%から増加している。対照的に同学事年度における富裕層の学生の退学率は5%以下であった。報告書は退学率において貧困層と富裕層の学生の差が広がってきていることを示している。貧困層の学生の高等教育参加の数が今までになく増加しているが、2年連続で卒業前に学校を去る学生の数が増え続けている。この事実は学生にとって非常に大きな意味がある。高等教育は良い就職先や社会的階層の流動性の扉を開くことを可能にしてくれるが、それは卒業した者だけにしか開かれていない。

 報告書ではまた、黒人学生は白人やアジア人に比べて1.5倍も退学率が多いことを示している。学位を得たものでも成績結果は大きな違いがある。白人学生の76%は「優秀」であったが、黒人学生は52%にとどまっている。

 また、OFFAはパートタイムの成人学生に対しての対応が十分でない現状を指摘した。成人学生の93%がパートタイム学生であるため、パートタイム学生の減少は成人学生の減少に負の影響を及ぼしている。パートタイムの入学者の数は7年連続で落ち続け2010/2011学事年度から58%も減少しており、緊急な対処が必要である。

 また報告書では2015/2016学事年度に、恵まれない環境の学生を広く高等教育に参加させることに取り組んだ機関の進捗状況も評価した。各機関は貧困層の学生を支援するため以前より多くの金額を投資している。2015/2016学事年度に高等教育機関が高等教育への幅広い参加のために投資した金額は£8億8350万であった。(2014/2015学事年度:£8億4210万、2013/2014学事年度:£8億260万)

http://www.bbc.co.uk/news/education-40429263

 

・Guardian

  OFFAの理事長であるLes Ebdon教授はオックスブリッジはもっと貧困層の学生の高等教育参加に努力をするべきだと語った。この2大学は不利な立場にある志願者の潜在的な能力を見出すことに失敗している。入学者選抜の際の成績に頼り、志願者の背景データの系統的な活用ができていないことを批判した。

 Oxford の広報担当者はEbdon教授の発言に対して「幅広く秩序だったデータにより、恵まれない環境にいる学生の可能性を見出してきている。支援プログラムとして年にサマースクールに£400万、財政的支援として年間£800万の投資を行なっている。」と反論し、「2016年は学部生の31.5%は恵まれない環境にある学生であった。2017年の入学者に至っては恵まれない環境にある学生の割合は、イギリスの大学全体の平均よりも高い割合となっている。」と述べた。

 Cambridgeの広報担当者も「入学者の決定は学術的能力でのみ決定している。我々は高い学術レベルを保ちながらも入学者の多様化を目指している。恵まれない環境の学生の大学への入学の障壁は高校での成績の低さである。恵まれない環境にある学生の選抜に当たっては、総合的に将来の可能性のある者を選んでいる」と異議を唱えた。

 

https://www.theguardian.com/education/2017/jun/29/oxford-cambridge-improve-access-disadvantaged-students

 

(8) UKイノベーション・リサーチの概要発表

 

 7月4日、英国研究会議(RCUK: Research Council UK)は、UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation)の最高顧問Mark Walport 卿が組織の構想、目標、次段階の開発に関して概要を発表したこと伝えた。 

 UKRIは2018年4月に設立される予定で、現在のRCUK 、イノベーションUK及び新たな組織リサーチUKから成る。世界でもトップの研究イノベーションの機関になることを目指すとしている。

 研究及びイノベーションの関係者を前にWalport 卿は、英国の現在の研究・イノベーション体系の長所を強調するとともに、英国において生じている社会、テクノロジー、研究やビジネスにおいて既存の価値基準を打ち砕くような変化に対するアプローチや戦略について詳細を述べた。

 Mark Walport 卿は「我々は大変強力な資金調達組織を形成しようとしている。しかし単に個別をあわせただけでは不十分である。創造性やイノベーションが積極的に取り入れられ、重要な提案が人為的な分断の犠牲にならないよう、大胆さ、熱意、機敏性を促進し評価していく必要がある。」と述べた。

 また、「UKRIの成功は、人類の英知の最先端を開拓し、経済に影響を与え、新たな雇用を生み出すことで、強く健康で回復力のある社会になることにどれだけ貢献できるかにかかっている。」と語った。

 

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/1704071/

 

(9)優秀な研究者の英国誘致のためRutherford 基金の設立

 7月4日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS: Department of Business, Energy & Industrial Strategy)は、大学・科学担当大臣であるJo Johnson 氏が高いスキルを持つ研究者誘致のために政府がRutherford 基金*を開設し、£1億の投資をする事を発表した。

 Rutherford 基金は開発途上国や新興研究国といわれるインド、中国、ブラジル、メキシコの若手研究者~シニア研究者に対し奨学金を支給し、英国を世界トップレベルの科学研究国として維持することに貢献してもらうことを目的としている。

 Jo Johnson氏は設立に当たり以下のようにコメントしている。

「研究とイノベーションは政府の産業戦略の目玉である。2016年秋期財政報告書において、政府は公共の研究開発に対して£47億という大幅な投資増加を発表した。首相は科学者やイノベーター、テクノロジー投資家に対し、英国が最も優れ魅力的な国であるよう、明確に指示した。 我々はEU離脱を控えているが、いつでも世界に向けて門戸を開いており、英国をイノベーションと発見のための世界の頭脳が集結する国にするため努力をしていく。」

  研究とイノベーションは政府の産業戦略のメインとなるものである。2016年秋の予算案では、公共の研究と開発のための予算を大幅に増加させ、合計£47億支出するとした。2020-21年までに毎年£20億を追加で支出することになる。これは、1979年以来の政府支出のいずれの項目よりも高い増加率(約20%)となっている。

 2017年、BEISの大臣であるGreg Clark氏は産業戦略チャレンジ基金を成立し、今後4年間に渡って£10億の投資を発表した。春の予算案では高い技術を持つ研究者の継続的な育成のため4年間にかけて£2億5000万投資することも発表した。

 基金は新組織UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation) が2018年に設立されるまでは、イノベーションUKと英国研究会議(RCUK: Research Council UK)が管理する予定である。UKRIは最高責任者に指名されたMark Walport卿の指導の下で産業戦略を通して英国の競争力を強化する役割を担う。

* Rutherford 基金 - University of Manchester とUniversity of Cambridgeで教鞭をとり,原子核物理学の父と呼ばれ、ノーベル賞科学賞受賞のアーネストラザフォード卿にちなんでいる。24歳で出身国のニュージーランドからの英国に移民した。

 

https://www.gov.uk/government/news/100-million-rutherford-fund-to-attract-best-researchers-to-the-uk

 

(10)学生の負債は£50,000以上に上昇 - 英国財政研究所発表

  7月5日、BBCは英国のシンクタンクである財政研究所(IFS : Institution for Fiscal Studies)の実施した学生の財務状況報告で、学生が学生ローンを借りた場合の借金は、卒業時に利息6.1%も含めて平均£50,800に上るということ発表した。

 利息は入学直後から発生し、卒業時には利子だけで平均£5,800になっている。この利子は“高利”であり、他のローンと比べてもかなり高いと分析している。

 報告書は、学費が£9,000に値上げされた2012年と学費が£3000であった2006年とを比較している。 学生ローン返済開始の収入基準も£21,000に上昇したため、卒業生で収入が低い者のほうが以前より恵まれている。返済開始収入基準は2012年より凍結されており、以前のローン返済制度に比べ、現在の方がすべての収入レベルにおいて状況が悪化し

ている。

 恵まれない環境にある学生は生活支援をより必要としているが、現在は返済不要の奨学金ではなくローンで支援を受けるため、卒業時には高額の負債を抱えることになる。

 利子の上昇及び学費が年間£9,250に値上げされたことにより、卒業生の負債額が増加し、高所得者は利子だけでも£40,000を支払うことになるであろう。報告書の著者Mr. Belfieldは、「現在のマーケットと比較しても、学生ローンの6.1%という利率は非常に高い。」と述べている。

 しかし卒業後30年間返済がなければ、債務は免責される。報告書では、50歳代でも返済し続けている者がいる一方で、4分の3がまったく返済をしていないという現状があるとしている。

 また政府は2012年以前の学生ローンがすでに売却開始されているように、学生ローンを個人投資家に売却することを望んでいる。

 現在のシステムで恩恵を受けているのは大学と政府の財政であると報告書では述べている。大学は政府からの財政支援がなくなることを考慮して、学費を£9,000に値上げして以来、学生一人当たりに対する助成金を25%上昇させた。奨学金から学生ローンに切り替え、ローン返済基準金額を凍結したことで、政府は財政的負担を減らした。

 卒業生のうちの3分の1を占める低所得者は、返済基準開始収入が£21,000になった2012年に比べ、30%も多額の借金を返済している。学生に負担が行くようになってから政府は長期的に£30億の負債を減らしたことになる。

 総選挙での労働党の想定外の躍進は、毎年若者の間で話題となる学費廃止を選挙公約に取り入れたことである。

 報告書では学費を廃止した場合の費用は年間£110億であると分析した。しかし「高額借金、高利子、低返済率」という状況を続けていた場合、卒業生と公共財政の両方に問題となると警告している。また最近の傾向として、大学独自の資金調達の増加、政府の高等教育に対する出資の減少の一方で卒業生、特に高所得の卒業生に対する負担の大幅な増加が特徴として挙げられている。

 

http://www.bbc.co.uk/news/education-40493658 

 

(11) 新組織学生局の最高責任者の発表

 7月5日、教育省(DfE: Department for Education )の大臣であるJustin Greening は学生局の最高責任者にNicola Dandridge 氏を指名した。

 Dandridge 氏は公職任命コミッショナー局*の監督によってオープンで、透明性のある採用手続きを経て選ばれた。

  学生局(OfS: Office for Students)は2017年の高等教育、研究法に基づいて設置される新組織である。高等教育部門の監視機関であり、学生への利益を第一に活動する。学生の高等教育への参加や雇用に対して革新的は方法で取り組むことが期待されている。

 イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)と公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)に代わるものとして2018年4月から本格的に活動を開始する。

 Dandridge 氏は英国大学協会(UUK: Universities UK)のchief  executiveとしてこれまでの8年間、様々な成功を収めた。

 

*公職任命コミッショナー局(the office of The Commissioner for Public Appointments):

大臣が特殊法人などの公的機関の代表者や役員を任命する際、任命が公正に行われるように監督することを職務としている機関。 

https://www.gov.uk/government/news/chief-executive-of-new-office-for-students-announced

 

 

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