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2017年8月23日 2017年8月英国高等教育及び学術情報

(1) 高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Fund)が産業戦略支援のため£4,000万を追加投資

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for England)は、大学が産業界と連携して研究の商業化に取り組むことを後押しし政府の産業戦略の推進につなげるため、2017/2018学事年度より毎年追加として£4,000万を高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Fund)に支出することを発表した。

 HEIFは英国内の高等教育機関に対し投資をすることで、より広い世界とナレッジベースの交流を促進するとともに、投資£1当たり£9.70の利益を生むという彼らの経済、社会への影響力を強めることを目的としている。

 イングランド高等教育財政会議Research and Knowledge Exchange部長David Sweeney氏のコメント:

 大学は身近な大学-企業間のみだけでなく、国内外に対し経済的、社会的に有益な価値(benefit)を届ける存在である。2013年にAndrew Witty卿は「HEIFへの系統だった長期的な責任」を促した。この考え方は、後のDowling 報告書に「HEIFの重要な役割は産学連携を支援することである。」と述べられ反映されている。したがって我々はこの追加支援を歓迎する。大学が政府の産業政策の重要な担い手であることが認識され、英国が世界クラスの研究拠点であることから、知識の商業化という更なる挑戦を可能にしたのである。大学における知識交換の収益は2015/2016学事年度でも伸び続け、£35億に達している。この中には£1億4000万という30%の増加率のあった知的財産権の特許も含まれている。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114709,en.html

 

(2) 次期研究評価制度(REF)の審査議長の発表

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for Englandは、2021年研究評価制度(REF: Research Excellence Framework)の4人の審査議長を任命した。今年の終わりには他の審査員が選定される。

 4つの分野において指名された議長:

  • 医療、健康,生命科学 ― John Iredale 教授University of Bristol)
  • 物理科学、工学、数学 ― David Price 教授(University College London)
  • 社会科学 ― Jane Miller OBE 教授(University of Bath)
  • 芸術、人文 ― Dinah Birch CBE教授(University of Liverpool)

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114700,en.html

 

(3) £1億7,700万を9の大学と企業の研究プロジェクトに支援

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for Englandは、英国の大学が中心となり実施している9つの研究プロジェクトに対して英国パートナーシップ投資基金(UKRPIF: UK Research Investment Partnership Fund)から支援を行ったことを発表した。

 支援は、大学が産業界と連携して行っている世界最先端の研究に対して行われる。対象分野は電力工学、作物学、自動車関連及び航空デジタル技術。

 その他、初めて複数の高等教育機関の提携で実現した共同プロジェクトであるUK レールイノベーションネットワークの設立への支援も含まれている。

 UKRPIFの支援により、大学は産業界等との共同プロジェクトの実施が可能となり、英国の強みとしている研究分野の更なる進展、英国内の研究拠点の強化、更なる経済成長に寄与すること、が期待される。この基金による支援は政府の産業戦略の一環に位置づけられる。

 今回発表された9つのプロジェクトは第5期UKRPIF として2018/2019学事年度から2019/2020学事年度に支援される。これとは別に実施される総額£5,200万の2つの支援プロジェクトは今年初旬に発表されている。(Imperial College London£2,000万、London School of Economics£3,200万)

 9つのプロジェクトは、企業や慈善事業団体を通して更に民間から総額£3億6,000万以上を募ることに成功した。

9つのプロジェクト;

  1. 最新治療センター :King’s College London 支援額£10,164,789
  2. マンチェスター大学ビジネススクール:University of Manchester支援額£9,666,429
  3. デジタル航空研究技術センター:Cranfield University支援額£15,500,000
  4. 作物科学センター:University of Cambridge支援額£16,928,000
  5. 癌医薬開発センター新施設設立:Institute of Cancer Research 支援額£30,000,000
  6. 先進自動車推進システム研究所:University of Bath支援額£15,500,000
  7. 電力工学と機械工学研究イノベーションセンター:University of Nottingham支援額£9,365,000
  8. 脳神経科学:University College London支援額£28,850,000
  9. UK レールイノベーションネットワーク:University of Birmingham支援額£28,086,000

 2012年にUKRPIF設立して以来、HEFCEはこの基金を通して43プロジェクトに総額£6億8,000万を投資してきた。また、企業や慈善事業者、投資家から£16億5,000万の追加投資にも成功して来た。第6期は2021年に£2億2,000万が分配される予定。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114672,en.html

 

(4) 年間学費が£9000の上限越える見込み ―― ウェールズの大学授業料値上がり発表

 7月11日、ウェールズ政府は2018年秋、大学の学費がインフレ上昇率にあわせて最高£9,295にあがることを発表した。インフレ率によってこの先3年間毎年上昇する見込みである。

 英国の学費の最高額はすでに£9,250となっており、2018年秋は£9500を超える見込みである。

 ウェールズの教育大臣のKirsty Williams 氏は「値上がりはイングランドの政策によるものでウェールズ政府はイングランド内外の情勢から直接的な影響を受けている。

 我々の大学は国内的にも国際的にも競争力を持たなくてはならない。今後も公的な学費ローンの利用は可能であり、卒業後収入がある水準を達したときのみ返済開始のシステムを継続する。」と同氏は強調した。

 しかしウェールズ学生組合の代表であるEllen Jones氏は「 学費の値上げにはまったく賛成していない。高等教育への参加を更に困難にした。英国政府の公共支出の退行的なやり方の影響を受けて予算が圧迫されていることは理解できるが、最悪の状態になったのはウェールズ政府の対応のまずさによるものだ。学生にすべての負担をかけることが当然になっている事実が耐えられない。各セクターで予算の取り合いをするのではなく、医療予算を守るように全教育予算を守ることを大臣にお願いしたい。」と述べた。

 一方でウェールズ政府は新しい学生支援策を発表した。昨年発表されたダイアモンドレビューに基づき、2018/2019学事年度より全学生は資産調査に基づく給付調査を受ける前に、年間£1,000が支給されるというものである。

 3分の1のフルタイムの学生が最高で£8,100受給でき、年間収入が約£25,000の家庭の出身の場合、年間£7,000の奨学金が受けられると試算している。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-politics-40568065

 

【メディアの反応】

・ガーディアン

 ウェールズ教育大臣のKirsty Williams 氏は同紙に寄稿した。

 「イングランドではどのように学生を支援するかという論争がしばしば話題に上るが、ウェールズではその解決策を見つけた。Ian Diamond教授の「Diamond Review」における高等教育財政への提言を受け、全ての学生の生活費を負担するというものである。

 新しいシステムは2018/2019学事年度から英国の大学に進学する学生対象で、すべての学生は国民生活賃金(最低賃金)相当を支給されるというものである。例えばフルタイムの学生でロンドン市内の大学に通う場合、生活補助費として年間£11,250、それ以外の地域であれば£9,000支給される。イングランドではこのような制度は皆無であり、スコットランドでは多少行われているものの現在その制度の見直しが行なわれている。

 しかし今回のもっとも斬新な改革は、パートタイム学生や大学院生も同様な支援が受けられることである。ヨーロッパ中でもウェールズが初めて実施することになる。

 大学院生に対する支援制度は2019年から実施予定であるが、その前には更なる支援も実施される。イングランド国内どこでも利用可能なローンや、ウェールズの大学に対し、大学院生を対象にした支援をするための財政支出をするというものである。これにより学生一人あたり約£4,000が支給されるようになると見込んでいる。

 ウェールズはヨーロッパの中でも唯一このような大きな第一歩を前進させた。他の政府も共有する事を待っている。」

 https://www.theguardian.com/higher-education-network/2017/jul/14/higher-education-tuition-fees-maintenance-wales

 

(5) 英国の大学志願者4%減少:大学入試機関(UCAS発表

 7月12日、大学入試機関(UCAS: Universities &  College Admission Service )が6月30日締切の大学志願者数を発表した。英国大学への志願者総数は649,700人であった。昨年に比べて4%(約25,000人)減少した。

 英国出身者の志願者数は529,620人(昨年比:4%減少)、EUからの志願者数は49,250人(5%減)非EU圏からの志願者数は70,830人(2%増)であった。

 英国各地域別の出身者の数も減少している。イングランド437,860人(5%減)、スコットランド48,940人(1%減)、ウェールズ 22,530人 (5%減)、北アイルランド 20,290人 (4%減)。

 年齢別でも志願者数の変化がみられる。18歳の志願者は321,950人で昨年より1,510人増加している。イングランドの18歳の大学進学率は37.9% (2016年37.2%) と上昇しており、過去最高を記録した。ウェールズは32.9%から32.5%に減少した。19歳以上の志願者は315,200人で昨年より27,180人減少した。

 看護学コースは志願数が全体で53,010人であり、昨年より19%の減少した。

 UCASの分析研究部長Mark Corver氏は「主要な大学の出願期限は終了し、昨年より25,000人、4%の減少であった。2つの対照的な傾向があるようである。主な出願者数の減少はイングランド、ウェールズ、EUであり、非EU圏からの出願は2%増であった。英国内では18歳より上の年齢層の出願者数は減少したが、18歳は上昇し、人口比過去最高の出願割合37.9%を記録した。最終的に大学やカレッジにおける年齢構成比等がわかるのは様々なプロセス(Aレベルの結果等)を経て、入学先大学が決定する6週間後である。」と述べた。

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/ucas-30-june-deadline-uk-higher-education-shows-uk-applicants-down-4-and-eu-applicants-down-5

 

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会理事長Julia Goodfellow

 志願者減少の原因はいくつか考えられる。昨年、志願者数は記録的であった。EU離脱や、看護士、助産師など医療従事者の学位制度の改定が大きな原因であろう。英国の18-19歳の人口が2010年から減少傾向であるが、この年齢層が英国大学の志願者の半分以上を占めている。しかもこのグループの大学志願率は過去最高であった。

 対処しなければならない問題がいくつかある。EUからの学生に対して英国は彼らを歓迎していることを示し、また、パートタイムや成人学生数の減少に対しても何らかの措置を講じなくてはならない。また、大学に進学することでかかるコストにも懸念がある。生活費や学生ローンの利率に関しても分析が必要である。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-latest-UCASJune-applicant-figures.aspx

 

・ラッセルグループ

 同グループの政策担当部長Sarah Stevens氏

 EUからの志願者が5%減少したが、もし減少の原因がEU離脱であればこれは問題である。非EU圏からの志願者数がわずかながら増えたことは喜ばしいことである。留学生は社会的文化的な多様性をキャンパスにもたらし、これらは学生によい影響を与える。また、英国経済にも£258億の効果をもたらしている。

 イングランドの18歳の志願者数は記録的であった。これは大学の価値を見出している若者が増えていることを示している。

http://russellgroup.ac.uk/news/ucas-application-figures/

 

(6) 留学生のTEFに対する意識調査

 7月18日、教育関連企業のHobsonsは、最近発表されたTEFに対する留学生の意識調査を実施した。英国留学を考えている学生3,335人を対象に実施した調査結果は下記の通りである。

  • 1%の学生がTEFの存在を知っており、その中で64.4%は自分達に十分な説明がなされていないと答えている。
  • TEFの存在を知っていると答えた中の5%は大学と大学院の教育の質の評価であると誤って認識していた。
  • TEFが大学と大学院の教育の両方の質の評価と考えていたかどうかに関わらず、3%は大学の教育評価が良いところは大学院も同様に良いだろうと考えている。
  • TEFの存在を知っていた内の5%は銅と評価された大学は教育の質が"十分でない”と評価されたと間違って考えていた。
  • TEFを知っていた者のうち6%は、TEF評価は退学率、学生満足度の調査結果、卒業後の雇用率等の集計によるものと正しく理解していた。しかし55.3%はTEFの結果は教育省からの視察官による大学の講義の抜き打ち検査による結果と思っていた。
  • 留学生でTEFを聞いたことある、ないと答えたにも関わらず、金を獲得している大学であればそちらを選択する可能性が高い。しかしながら銀,銅を獲得しているのであれば獲得していないところよりそちらを選ぶ可能性が強い。

TEFについて正しく理解してもらえるよう、大学は志願者と十分なコミュニケーションをとる必要がある、ということを調査結果は示している。TEF評価は今後留学生が大学を選択する際に重要な役割を果たすことになるため、TEFの結果は何を意味しているのか、どのように活用すれば効果的な選択につながるのか、を理解させることが急務である。

https://www.hobsons.com/emea/resources/entry/blog-tef-ratings-or-university-rankings-new-Hobsons-research

 

(7) 学科レベルのTEFの試験的評価の実施

 7月20日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は政府が発表したTEF (Teaching Excellence Framework)の学科レベルのパイロット評価方法の詳細を歓迎した。この学科レベルの試みは2017年秋から2018年春まで実施予定。

 教育省の委託でTEFを実施しているHEFCEは、TEFに既に参加しているか否かに関わらず、幅広い高等教育関係機関のパイロット調査への参加を呼びかけている。2017年9月25日が参加申込締切で、応募した大学、カレッジの中からパイロット調査評価対象として30~40の機関が選ばれる。このパイロット調査は学科レベルのTEFプログラム開発のために行われるものなので、格付けの評価はなされない。

 パイロット版の結果を元に学科レベルのTEFは2019/2020学事年度に実施され、2020年春に発表される予定。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114768,en.html

 

(8) 学生と納税者のため大学価値の保障 ― 大学・科学担当大臣のスピーチ

 7月20日、大学・科学担当大臣Jo Johnson 氏は学生と納税者からこれまで以上に理解を得られるための高等教育制度計画を発表した。

 大学学長やその関係機関の関係者を前に行われたスピーチでは、すべての大学は学生が大学において何を学ぶことができるのか、について今まで以上に明確なcontractを提示するように強く求めた。また、急上昇している学長の給与の更なる値上げに終止符を打つように求めた。首相より上回る給与の場合、その正当性を公に対し説明するよう要求した。新しく設立される学生局(OfS: Office for Students)がこの問題に対応することになる。

 また、大臣は次の段階のTEFとして、学科レベルの教育評価のパイロット版を秋から実施することも発表した。次段階のTEFでは卒業生の進路分析も調査に加え、将来のキャリアを見通した大学の選択ができるようにする。

 Johnson 氏は一定の所得以上の者が学生ローンを返済をするという現在の大学助成金制度の持続を支持した。

https://www.gov.uk/government/news/securing-value-for-money-for-students-and-taxpayers

【各機関の反応】

・英国大学協会 (理事長:Julia Goodfellow氏)

 現行の学費と所得による学費ローンの返済システムは学生達が求めている世界クラスの高等教育を受けられることを可能にしている。

 現行のシステムは補助金によって学費を補っており比較的低収入の大学卒業生を保護している一方で、学生やその家族から問題視されている学生ローンの負債がどのように処理されていくのかを説明する必要がある。我々は現行のシステムが公平で誰にでも参加できるものでありたいと考えている。

 大学は運営資金が学生やその両親にとってアクセスしやすく有意義であることを公開し情報提供してきている。最近の統計調査では、学生はかなり高い率で大学を信頼しているが、一方でもっと個々に即したアドバイスや支援を希望している。

 学科レベルのTEFのパイロット調査は実効性があるか、学生にとって価値がある調査であるのかを見定めるいい機会である。

 すべての大学は在籍学生と契約を交わしている。また大学側は公平かつ透明であることを証明するために競争・市場庁(CMA: Competition and Markets Authority)の助言にも応えてきている。学生は大学内の担当部署とのみならず、外部の独立した仲裁機関や、最終的に裁判により問題を解決する道筋が保障されている。学生と大学との契約が守られることが重要であり、政府と学生局とともに真摯に取り組んでいきたい。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-response-to-Universities-Minister's-speech.aspx

・ラッセルグループ (Sarah Stevens : 政策担当部長) 

 学生は大学に対して質のよい教育を期待する権利があり、我々グループはその点

に常に真摯に取り組んでいる。ラッセルグループの各大学は、学生団体と連携協力して「大学が学生たちに求める役割・責任・期待、また学生が大学に対し求める役割・責任・期待」を明文化したcharterの作成に取り組んでいる。

 学生を保護するシステムは必要であるが、それは同時に大学にとってフェアなものでなければならない。大学は学生にチャレンジをするように仕向けており、わざとぬるま湯に浸かった状態から引き出すように仕向けている。誰も法の縛りにより大学の基準がむしばまれて弱体化していく大学の姿を見たくはない。現状で言えることは、大学に対する数々の新しい要求が予期せぬ結果に終わらぬように気をつけなければならない、ということである。 

http://russellgroup.ac.uk/news/jo-johnson-speech/

 

(9) 政府が移民諮問委員会(MAC)に調査を委託 

 7月27日、内務省(Home Office )は移民諮問委員会(MAC: Migration Advisory Committee)に対して、EU離脱が英国労働市場にどのような影響を及ぼすか、及び英国移民システムの今後のあり方に関する調査を依頼した。MACは独立した調査機関であり、政府に対し調査結果に基づく助言を行っている。

 政府は調査結果提出期限を2018年9月と定めた。今後数週間以内に、MACのウェブサイト上で資料(evidence)収集を開始する。政府、企業、労働組合、関係団体等と協力し、質の高い資料(evidence)に基づいた報告書の提出を目指す。

https://www.gov.uk/government/news/migration-advisory-committee-mac-commissioned-by-government

 

【各機関反応】

・ラッセルグループ政策担当部長Sarah Stevens氏  

 ラッセルグループの大学は教授・研究の分野で世界を牽引してきている。EUからの職員や学生は英国のサクセスストーリーに大きく貢献している。

数学や現代外国言語学など戦略的に重要な部門で働いている全スタッフ約3分の1がEUから来ており、他の分野においても同じような傾向がある。ラッセルグループの大学及び学生は、いろいろな意味でEU市民の働きにより支えられていると言える。我々はEU離脱後もEUの同僚とともに共に働き続けたい。

 この調査は必要であり、大学や個人の将来のためにも身分の保障を一刻も早くはっきりさせたい。内務省が「崖っぷち離脱 'cliff-edge' situation」にはしないと保障したことは喜ばしく、大学の職員雇用や世界の優秀な人材確保を維持できるような移民制度となることを期待している。

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-migration-review/

 

・英国大学協会会長代行Alistair Javis

 政府が大学や関係機関からEU移民に関する証拠や助言を求めることは良いことである。留学生や海外からの職員は英国の大学や地域経済に貢献している。我々は優秀な人材を受け入れる門戸は開かれていることを世界に向けて呼びかけることが重要である。現在英国大学で学術スタッフの17%(33,735人)はEU圏から来ており、EUからの留学生125,000人が大学で学んでいる。

 まさに今、海外から優秀な職員や留学生を受け入れる新しい移民法を制定をするべき時である。大学は数年先を計画しているため、政府が「崖っぷち状態」を避ける方法を検討していることは歓迎すべきことである。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-comment-Brexit-EU-migration-study.aspx

 

(10) EU市民の保護

 8月3日、ラッセルグループはEU離脱後の英国在住EU市民の将来の権利に対し、より明確なものを求める概略を発表した。概略は、政府から更なる情報が求められるとしている10項目の分野と、今後EU市民が定住可能となるために必要となる最も重要な原理原則について記されている。

英国政府がEU市民に対し明確な立場を示すべき重点10項目

  1. 学者や学生は研究、トレーニング、キャリア開発、研究提携などのため長期間国外に身をおく場合がある。それについて政府は下記の点で努力をするべきである。
  • 様々な規則(180日ルール等)が適用されないように、学業や研究により国外にいた期間が在住規定期間に影響を及ぼさないようにする。
  • "強い絆”という解釈を広げ、学生や学者が2年以上国外にいた場合でも、一度獲得できた定住権を剥奪されないようにする。
  1. 申請者に対して負担をかけない効率的なシステムの構築。政府の対処が間に合わない場合は、猶予期間を必要に応じて与える。
  2. 申請者の提出物を最低限にするため、既存データを利用するという政府の方針を歓迎。保持データから短期不在や定住可能者が確認できるのであれば、内務省側から自動的に連絡を取るべきである。
  3. 永住権を持っているものは自動的に定住権を与え、新たな申請を必要としないようにする。
  4. 申請費用を手頃な価格にするという方針は賛成。費用を最低限とし永住権申請費用の£65を上回らないようにすること。
  5. 政府はEU市民を雇用している様々機関と意見交換することで明確な雇用者ガイダンスをつくり、企業や大学を支援する必要がある。
  6. 期限(the cut-off date)はEU離脱日とする。これにより個人や組織などは今後の計画がはっきりと立てられる。
  7. 2017/2018学事年度、及び2018/2019学事年度から英国大学に入学するEU留学生に対して、卒業後も英国での学業の継続や就職を認め、5年以上滞在すれば定住権を認める権利を与える。
  8. EU市民の家族の権利に対して共に英国に滞在可能であることを早急に決定し、不透明性を最低限にする。英国で出生したEU市民の子が即時に定住権や英国市民権を得る事ができ、5年間の定住期間を経て初めて得られる定住権の決まりの対象外であることを明確にする。
  9. EU離脱前にEUまたは英国で獲得した専門資格などについて、離脱後も引き続き承認されるようにするべきである。

 ラッセルグループの政策担当部長Jessica Cole 氏は「同グループの全大学で約25,000人のEU市民を雇用しており、質の高い教育、最先端の研究が行なわれている。このような価値のある同僚を失いたくない。大学もEUからのスタッフも学生も、はっきりとした将来を見通したいと考えており、そのためにも政府がEU市民の立場を一刻も早く明らかにするべきである。」と述べている。

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-nationals/

概略内容:http://russellgroup.ac.uk/media/5547/rg-position-on-eu-nationals-july-2017.pdf

 

(11) 2017年学生満足度調査(NSS)結果発表  

 8月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は2017年全国学生満足度調査(NSS: National Student Survey)の結果を発表した。30万人以上の最終学年の学生が参加し、回答率は68%だった。そのうち84%が全体的な教育の質に満足していると答えた。

 学生の満足度は高く、85%の学生は教員の講義の質が良く、興味を引く内容であり、知的好奇心が刺激されたと答えている。

 今年のNSSは「学習コミュニティ」、「学習機会」、「学生からの意見」という新しい質問事項を設け、学生の授業参加に関する新しい分析が加わった。この改訂は英国の大学、カレッジ、学生間の協議によって行われた。

 今回の改訂部分に関する調査結果によると、84%がより深く概念を探求でき、学んだことを応用できる学習環境が与えられたと答えている。77%が学習コミュニティに属していると実感し、他の学生とともに学べる良い機会であったとしている。

 調査内容の変更により、2017年の結果をこれまでの結果と比べることは妥当ではないとしている。

 この調査結果は、学生のアカデミックな経験の向上のために各高等教育機関により利用される。今回新たに加えられた調査の結果は今度の課題として注目されることになるだろう。

 また調査結果はUnisatsのウェブサイトに掲載され、学生がどこの大学で何を学ぶか、を選択する際の重要な材料となる。

 2017年の調査は、530の大学やカレッジの情報がカバーされており、継続教育機関などの代替高等教育機関が多く参加したため昨年度より掲載数が増加した。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,115244,en.html

【メディアの反応】

BBC News

  今回の調査結果は大半の英国学生は大学の教育の質に満足しているというものだった。

しかし、6月に発表された高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)の同様の調査結果では、35%の学生のみが大学の教育は学費に見合うものであったと答えており、これは5年前の結果では53%よりも更に落ち込んでいる。

 また調査実施に当たり、学費を巡り全国学生組合(NUS:The National Union of Students)が調査ボイコットを呼びかけたことが多少結果に影響を及ぼしているとみられる。昨年より参加人数が8,000人減少している。

 この調査結果は大学・科学担当大臣のJo Johnson氏が懸念している「大学が提供する教育の質が学費に見合うか」という問題に焦点を当てたことになった。

http://www.bbc.co.uk/news/education-40861126

・Times Higher Education

 NUSが呼びかけた教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)に対する抗議のためにCambridge, Manchester, Oxford, Sheffield 等の大学でNSS調査へのボイコットが行なわれたのため、それらの大学の結果が反映されなかった。

 12大学の調査結果が50%以下の回答率のため結果に含まれなかった。昨年は約300,000人の回答を得られたが、昨年の312,000人から減少しており、回答率も72%から68%と減少している。

 これは、TEFの評価基準項目にNSSの調査結果が反映されると発表されたため、25の学生組合が調査へのボイコットを呼びかけたことが原因とされている。TEFの評価結果に基づき、大学がインフレ率にあわせて学費を値上げすることを可能にすることに対する抗議である。しかし本案は政府により延期が決定されている。

 "TEFを潰せ!"をモットーに展開された全国学生満足度調査のボイコットは、調査結果を使用不可能にすることが目的であった。しかしTEFの議長であるChris Husbands氏は「全国学生満足度調査野結果はTEFで金銀銅のいずれかの評価になった大学に大きな影響は与えておらず、教育の質を見るための正確なものではない」とコメントしている。

 教育省は「学生のNSSのボイコットの悪影響はどの大学にもない」と表明している。が、他方でKings’s College London上級講師のCamille Kandiko Howson氏は「どのような影響が出るかもはっきりしていない。TEFが思ってもいなかった結果に終わった大学が抗議をする言い訳を与えるだけである。TEFを評価する側にとって良い結果が出たところと十分な調査結果が得られなかったところを区別するのが難しくなる。また、無回答の大学が広がっている中で、学生が真剣に回答せず、すべての質問項目に低い点にチェックして提出した場合などもあり、NSSをTEFなどの評価に使うことは困難になっていくのではないか。」と述べた。

 大学組合(UCU: Universities and College Union)の書記長であるSally Hunt氏は「TEFの廃止を求める。今年のTEFの結果発表後の反応を見ると、学術界の支持を得ているとは思えず、一方今年のNSSに対する支持もまた欠如しており、学生も同じ思いである。もし政府が本気で学生への教育の質の向上を考えているのであれば、これら欠陥のある評価制度を廃止するべきで、教育者に対する不安定な雇用契約の広がりの改善に対して取り組むべきである。」と述べた。

https://www.timeshighereducation.com/news/national-student-survey-2017-campuses-omitted-after-nus-boycott

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