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2017年9月27日 2017年9月英国高等教育及び学術情報

英国学術情報 9月分

(1)大学における無条件合格者数の増加

  8月12日、Daily Telegraphによると、無条件で合格者を受け入れる英国の優秀大学が数が5年前に比べて倍増していると報告した。(高級紙Independentsによる報道)

 大学間で入学者獲得競争が激化する中で、より多くの学生を確保するためにこのような事態が生じているとされている。特に英国の優秀な大学で構成されているラッセルグループ加盟の大学が無条件合格者数を増やしていることを指摘している。

 統計によるとUniversity of Edinburgh における無条件合格者は2012/2013学事年度は125人だったが2016/2017学事年度は350人とほぼ3倍に、University of Birminghamでは 1,003人から2,471人へと倍増している。またKing’s College London , University of Warwick , University of Manchester でも同様の傾向が見られていると報道している。

  この傾向は2015年に施行された新しい助成金の規定により、イングランドにおいて学部定員が廃止された以降に顕著になっている。定員廃止を受け、大学は利益を出すために可能な限りの学生を受け入れようとしており、ビジネスライクだという非難を巻き起こしている。

 無条件合格数は2014年では12,100人であったところ、2015年には23,400人となり、2年前の定員廃止により着実にその数を伸ばしている。

 学生を取り込むために、入学資格を満たすSixth Formの成績を取得している学生に対し、もしこの大学を第一志望とするのであれば無条件にアップグレードする、という条件を出す大学も多くなっている、という傾向も見受けられる。 

 大学入試機関(UCAS:The Universities and Colleges Admissions Service)は報告書において、無条件合格者数が増加傾向にある原因のひとつとして、Aレベルに達する生徒数が2010年と2015年を比べると減少していることにあると警告している。

 ラッセルグループの報道官は「すべての申請は大学入学志願者の詳細な成績記録、及び入学者選考チームが、申請者が大学のプログラムでやっていけるかどうかを判断することによって決定されている。」と答えた。

 無条件合格者の増加に関わらず、学生数は減少している。最近の報告では大学進学を考えている若者の割合は年々減ってきており、学費など財政面が一番の原因とされている。

 ウェールズとイングランドの11歳から16歳の2,600人を対象に行われたサットントラストの調査によると、7人中1人(14%)は高等教育機関への進学を考えていないという。同じ質問で5年前の調査結果は11%であった。

 また最近の教育省(DfE: Department for Education)の統計によると、恵まれない学生を高等教育に参加させるプログラムに多額の資金を投入しているにもかかわらず、公立校と私立校出身者の大学進学者数の差がこれまでの最高を記録した。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/universities-allow-increasing-numbers-of-students-in-without-asking-for-any-grades-a7889426.html

【関係機関の反応】

・ラッセルグループ

 ラッセルグループの報道官は「ラッセルグループの大学の課程は知的挑戦に満ちたもので構成されている。入学担当スタッフが各学生の学習記録を分析し、当該大学の課程に十分に見合う能力を持つと判断した場合に学生にオファーをしている。いくつかの大学では例外的にごく少数の学生に対し無条件合格を出しているが、彼らは既にA levelの結果が出ているか、その他の高等資格を持つ学生である。無条件合格を出している場合、多くの大学では入学基準満たしている生徒だけに出している。」と語った。

http://russellgroup.ac.uk/news/university-unconditional-offers/

 

(2) アクセス協定2018/2019学次年度の概要発表

 8月23日、公正機会局(OFFA: Office for Fair Access) は2018/2019学事年度のアクセス協定における主な内容を発表した。

 最新のアクセス協定は、恵まれない環境にいる生徒の成績を向上させるプランや、生徒の可能性を引き出し、環境による障害に打ち勝つことを支援するために大学が学校と共に取り組むものとなっている。新プランは、新しい活動とすでに存在する活動の拡大及び再検討の組み合わせとなっている。その内容は:

  • 学校への資金的援助
  • フリースクールやテクニカルカレッジの創設
  • 学校のカリキュラム作成への参画
  • 情報/知識の共有
  • 学校運営、ガバナンスの支援
  • メンター、チュータープログラムなど長期的なアウトリーチ活動の実施
  • 教師や学校管理者を対象としたトレーニングの実施
  • 慈善活動組織など第三者機関とのパートナーシップの構築

 高等教育機関は学校の成績向上に重要な役割を果たすと認めた上で、OFFAは恵まれない環境にいる生徒の成績向上について学校と大学が連携することを、今年初めてアクセス協定に盛り込んだ。しかし、大学やカレッジはここ何年もの間、ボランティアで当該活動にコミットしてきている。この協定の実施状況については毎年モニタリングされる。

https://www.offa.org.uk/press-releases/access-agreements-2018-19/

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Jarvis 氏のコメント:

  大学が提供している支援は、恵まれない環境にいる生徒の記録的な大学進学率の上昇に貢献している。すべての大学は恵まれない環境にいる生徒の高等教育への参加機会の拡大のため努力し、また在学中の支援も行なっている。また、恵まれない環境にいる学生と他の学生層とのギャップを縮めるための更なる支援が大学には期待されている。社会的流動性を加速させるため、確固とした根拠に基づき、どのような支援が一番効果的なのかを見極めなければならない。大学はすでに様々な方法で学校と関与しており、参加拡大と生徒の可能性を最大限に引き出すためのこの活動を継続し、拡大していく。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/uuk-response-offa-annual-summary-institutions-access-agreements.aspx

・サットントラスト(教育を通して社会的流動性を改善するために設立された慈善団体:Sutton Trust)

同団体の創設者で会長であるPeter Lampi 卿のコメント:

 我々の調査によると大学進学者の割合が減少している。多くの学生が高等教育にかかる費用を心配しているためである。£57,000の負債と上昇する学生ローンの利子率などの問題がある中、恵まれない環境にある学生数を増やすためにはアクセス協定はさらに重要になってくる。大学がアクセス改善のために学校との連携や評価に時間や費用を投資していることは喜ばしいことである。我々はOFFAとともに活動基本方針が費用対効果に見合ったものであるかを見守り続ける。

https://www.suttontrust.com/newsarchive/sir-peter-lampl-comments-on-the-latest-offa-access-agreements/

 

(3) 第二次出国チェックプログラムの統計結果発表

 8月24日、内務省(Home office)は出国チェックプログラムの一環として英国の出入国の統計を発表した。

 移民法2014により導入された法により、航空、海運や国際鉄道産業などの各主体がその権限を持って統計調査が行なわれた。分析は出国チェックプログラムが開始された2015年4月以降出入国が認められた個人を対象にしている。

移民大臣のBrandon Lewis氏のコメント:

 内務省は英国国境を跨ぐより具体的で包括的な旅客情報を提供するために、2015年に出国チェックプログラムを導入した。この情報はすでに警察や警備会社などにとって、犯罪者やテロリストを追跡するための貴重な情報源となっている。

 報告書では、2016/2017学事年度中に期限が切れるビザを所持している1,340,000人の非EU圏からの入国者のうち、96.3%が期限以内に出国していることが報告されている。出国チェックは今後も長期的に統計を集計し、確固としたものにしていきたい。

https://www.gov.uk/government/news/home-office-publishes-second-report-on-statistics-collected-under-exit-checks-programme

 

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Jarvis 氏のコメント:

 留学生にとって有益な政府の調査を歓迎する。留学生がいかに英国経済や地域社会に良い影響を与えているかの証拠を今回の調査結果は示している。

 Oxford Economics の最近の調査によると、留学生は£250億以上を英国経済にもたらし、英国国内で20万件以上の職に就労している。また留学生は英国の大学のキャンパスを文化的、経済的に豊かにし英国人学生にも良い影響を与えている。多くの留学生が帰国後も個人的にもキャリア的にも我々と強い関係を築きあげ、英国にとって利益をもたらしている。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/uuk-response-government-commitment-study-international-students.aspx

 

・ラッセルグループ

同グループの理事代理Tim Bradshaw氏のコメント:

 留学生は英国に莫大な貢献をしている。大学が引き続き全世界から優秀な人材を誘致し雇用することが可能な移民法の制定が必要である。

 留学生が多様な学習環境の創出と莫大な経済効果を生み出していることに加えて、出国チェックデータにより、圧倒的な数の留学生がビザ規定に従っていることが確認された。

 目的に合った制度であることを証明するための第1歩は正確なデータである。この点において出国データを再度採用した内務省の決定を歓迎する。報告書は英国に滞在する留学生の価値を証明した重要な1歩である。我々は常々、留学生は大学だけでなく英国にとって価値があると考えている。英国移民システムの今後のあり方に関する調査を依頼されている移民諮問委員会(MAC: Migration Advisory Committee)に対し、今回の調査結果が前向きな影響を与えることを期待している。

http://russellgroup.ac.uk/news/student-immigration/

 

 (4)シンクタンク報告書:大学は企業同盟(カルテル)のようだ

 9月3日、BBCの報道によると、2020年の次期総選挙の公約作りのため創設された中道右派のシンクタンク、“UK2020”が大学に関する報告書を発表した。(”Time bomb: How the university cartel is failing Britain’s students”)

  この中で「大学はまるでカルテルのようであり、2年制学位コースを十分に提供していないと非難されている」と述べている。また「この短期学位コースは学生ローンの返済額を縮小することができる」と述べている。

 この意見は労働党の上院のLord Adnis やすでに2年制を実施している私立大学University of Buckingham の学長であるAnthony Seldon 卿にも支持されている。

 しかし公立大学を傘下に置く英国大学協会のスポークスマンは、そもそも2年制コースの採用は限定されてきた、と述べた。また、公的な調査により、高等教育機関間における競争は適切に行われてきていると報告されている、とも述べた。いくつかの大学ではすでに2年制コースを提供してきているが、現在の学費やローンのシステムのため学生からの需要が限定されている、とも述べている。

 この2年制学位号取得コースを増やす計画は今年2月に大学大臣であるJo Johnson氏から発表があった。

 今回の報告書UK2020は、実業家でLeave.EUの創設者であるRichard Tice 氏との共著であるが、2年制学位コースは学生の負債額を減らし、選択肢を広げ、住宅不足の解消の助けになる、と述べている。

 今年£9,250にまで学費が上昇したことにより、イングランドにおける「リアルな」大学の選択や学生間の競争がうまく機能せず、また多くの学生が負債や利子率に関して怒りを持っているが、これらを報告書では「時限爆弾を抱えている」と表現している。

 また企業同盟(カルテル)のごとくほとんどの大学が最大限の学費を設定し、のろのろとしか改革に取り組まず、民間の高等教育関係者の競争への参入を締め出している、と述べている。

 価格競争という点では大学は最も失敗した分野であり、長期的に学生を支援する資金調達法を探さなければならない、と報告書は指摘している。

 また2年制学位取得コースにすると、卒業生一人当たりで最大£20,000の節約ができると見積もっている。 

 保守党の議員でUK2020の議長であるOwen Paterson氏と労働党のAdnis卿は「異なる党の政治家がこのような国家的重要な要素を持つ問題で同意することは稀である。しかし学生や大学への資金提供の危機を解決したいという信念を持って団結している。」と述べた。

 ”Time bomb: How the university cartel is failing Britain’s students“:

http://www.uk2020.org.uk/timebomb/

http://www.bbc.co.uk/news/education-41125111

(5)THE 世界ランキング2018発表

 9月5日、Times Higher Education (THE)誌が,”World University Ranking 2018”を発表した。THEのランキング開始以来始めて2つの英国大学がトップを独占した。Oxford は昨年1位の座を保ち、Cambridgeは昨年4位から順位を上げて2位となった。

 Cambridge の健闘理由として、研究収益、研究の質の向上が見られ、一方で2位から転落してStanford ともに3位にランクを下げたCalifornia Institute of Technology (Caltech)は、博士号と学士号の比率が下がったこと、及び大学の収益がそれぞれ23%、24%下がったことなどが順位を落とした原因とみられる。OxfordとCambridgeはそれぞれ11%と24%の増収であった。

 Oxford 大学の学長であるLouise Richardson氏は2年連続首位を保ったことを喜びつつも、英国のEU離脱が今後、英国の大学の地位を脅かす恐れがあることも語った。Cambridge大学の研究助成金の4分の1がEU連盟から出資されている。Oxford大学 は5分の1である。

 今回のランキングは米国とオーストラリアの大学も将来的には安心できないことを示唆している。米国大学で200位以内に入った62大学中59大学は学術スタッフ一人当たりの研究収益が減少しており、トランプ政権下においては連邦政府の今後の研究収入の見込みも疑わしい。エリートグループとされる29大学のうち5分の2が順位を下げている。一方オーストラリアは比較的安定した結果を出しているが、政府が2.5%の助成金カット(A$28億/£17億)の計画を進めることになれば、その順位も下がる可能性がある。

 米国、オーストラリアだけでなくヨーロッパ諸国も加速するアジアの競争力に直面している。中国の北京大学は順位を2つ上げ、New York University とUniversity of Edinburghと同位の27位で、同じ中国の精華大学は5つ順位を上げ、オーストラリアのUniversity of Melbourne, 米国のGeorgia Institute of Technology,ドイツのLMU Munich ,スイスのEcole Polytehnique Federale de Lausanneなどの名門大学を抜いた。アジアでのトップの大学はシンガポールのNational University of Singaporeで昨年より2位順位を上げて22位であった。

the_world_university_rankings_2018.xlsxをダウンロード

japanese_universities_in_top_200.xlsxをダウンロード

countries_and_regions.xlsxをダウンロード

https://www.timeshighereducation.com/news/worlduniversity-rankings-2018-results-announced

【各機関の反応】

・Wonk HE (高等教育専門ウェブサイト)

 今回のランキングの主な点として:

  • Oxford とCambridgeが初めて世界ランキングの1,2位を維持、台頭した。
  • EU離脱が英国の大学の世界における地位を脅かしている。
  • 200位中、ヨーロッパの大学は半分が占めているが、アジアの大学の台頭に直面している。

 英国においてEUからの大学志願数が昨年と比べて5%減少しており、既にEU離脱による悪影響が現れてきている。

 また英国におけるスーパーエリートといわれる大学とその他の大学の格差が広がってきている。ゴールデントライアングルといわれるOxford, Cambridge とロンドンの大学は上位で安定した結果であった。しかし比較的下位の順位にいる大学は順位を下げている。Warwickは9位下がり91位, St Andrewは33位下がり143位で、英国で200以内に入っている大学の31大学中16大学が順位を下げた。

http://wonkhe.com/blogs/world-party-the-latest-the-world-university-rankings/

 

・BBC News

 THE Higher Education (THE)の編集ダイレクターであるPhil Baty氏は「今回、特に上位の大学の間ではすべての評価項目において極めて接戦であった。英国の高等教育システムは、£9,250の学費問題、留学生の継続的な誘致の努力、EU離脱後の研究費や研究者の流れの確保、学長の給与問題など、様々な政治的問題に直面している。  

 しかしひとつ言えることは、今回のランキングにおいて英国には多くの優秀な大学があり、世界でも最も強力な高等教育システムを持っているということである。

 また、データは、英国の大学がイノベーションにつながる革新的な新しい研究を一貫して生み出してきており、留学生や研究者を惹きつけ、世界クラスの教育環境を提供していることを示している。大学は巨大な国家財産である。」と述べた。

http://www.bbc.co.uk/news/education-41160914

 

(6)持続的な科学の成功(continued science success)のための明確な目標設定

 9月6日、欧州連合離脱担当省(Department for Exiting the Europe Union)は「将来のパートナーシップについての文書」において、英国とEUの将来にとって科学やイノベーションの連携が重要であると発表した。

 本政府文書では、英国が今後EUと協議するべき将来の連携のメカニズムや分野が提示されている。

 ガレリオ計画やコペルニクス計画など、商用衛星航法システムや地球観測衛星の汎欧州プログラムに既に参加しているEU以外の国との協議分野について述べられている。英国における宇宙事業は英国経済に£118億以上の効果をもたらしており、37,000人以上の雇用を生み出している。

 また原子力研究に関するプロジェクト、オックスフォードシャーに拠点を置くJET( Joint European Torus)や国際熱核融合実験炉(ITER:International Thermonuclear Experimental Reactor)についても計画が述べられている。EU加盟国ではない国々とも、例えばEUREKAネットワークや欧州原子核研究機構(CERN)等の国際機関を通じて引き続き提携していくとしている。

 欧州医薬品庁やホライズン2020など、7,300人を超える英国人が参加者し、連携により成功している革新的な医学に関するイニシアティブについても含まれている。

 

大学・科学大臣のJo Johnson 氏のコメント:

 英国とEUの素晴らしいパートナーシップを継続していくことはお互いにとって利益になる。EUとの将来の連携のあり方についてオープンな議論を持つための英国側の要望を本報告書で明確に示した。

 我々の産業戦略において、科学とイノベーションが核となっており、研究と開発に更に£47億の追加投資を行うことからわかるように、我々は常に新しい発見の最前線に位置し、今後もこの挑戦を欧州の仲間と共に続けていくことを望んでいる。

 英国は科学とイノベーションの分野におけるリーダーであり、今回の報告書で我々は引き続き国際的な英知のハブであり続けたいとして、研究コミュニティーが今後も我々の高いレベルのスキルにアクセス可能にすることで、科学とイノベーションセクターをサポートしていくことを約束している。また、専門資格の認定システムについても、今後も引き続き協働していきたいと考えている。

 https://www.gov.uk/government/news/uk-sets-clear-objectives-for-continued-science-success

【各機関の反応】

・王立協会

 同協会会長Venki Ramakrishnan氏のコメント:

 政府はEUの研究イノベーションの一部であり続けることで多くの利点があることを認識しており、離脱後もEUとの親密な関係を維持するべき理由を明確にしている。文書ではEU科学界との親密な関係維持のための強い願望が現れており、その姿勢を歓迎する。 

 しかしこれはまだ第1歩であり、EUとの親密な連携を維持するためには更に様々な条件を整えていく必要がある。世界の科学界における英国の地位を脅かす不確実要素を取り除いていくことが必要である。

 ホライズン2020終了までの財政的支援の継続や、既に英国内で働いている高い技術を持つEUの研究者のステイタスの保障等についても早急に検討する必要がある。また、次期EU研究プログラムにも参加することを約束すべきである、その計画の協議にも参加すべきである。優秀な人材をUKに迎えるための移民法の制定も必要である。

 科学は常に国境を越えるものであり、EU離脱がその妨げになってはならない。政府により示された今回の文書はお互いにとってWIN-WINの結果となるように提案されており、これはほかの分野の交渉においても同様に前向きなものになる可能性を示している。

https://royalsociety.org/news/2017/09/royal-society-response-to-science-and-innovation-position-paper/

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Javis 氏のコメント:

 英国政府がEU離脱後もヨーロッパのパートナーと引き続き研究とイノベーションの分野で連携していく姿勢を示したことを歓迎する。これらを実現する最も良い方法は政府が次回のEU研究イノベーションプログラムに関与し影響力を持つことである。

 英国はEUの研究とイノベーションの分野において重要な役割を果たし、提携により多くの利益を生み、様々なネットワークのつながりを可能にしている。それにより研究者は世界の最高水準の専門家と共同で人生を一変させるような研究成果を生み出すことが可能となり、更には英国の経済、社会や個人に多くの利益をもたらすことになる。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-UK-government-position-on-Brexit-and-EU-research-innovation-collaboration.aspx

 

(7) 大学・科学担当大臣 Jo Johnsonn氏のスピーチ概要

 9月7日、学長100人以上の出席した英国大学協会(UUK: Universities UK)の年次大会で、大学・科学担当大臣 Jo Johnson氏が行ったスピーチの概要は以下のとおり。

  • 大学に進学する者以外の18歳以降の教育に関する新たな制度

 ・5年間で£28億、300万人分をアプレンタスシップ(インターンシップ賦課金制度)に出資する

 ・上記と関連して16歳以降のスキルプランとして新しくTレベル資格の導入を推進する

  • 次回のTEF3についての変更点

 ・学生満足度調査結果の評価への反映率を半分にする

 ・多くの割合を占めるパートタイム学生に対しての考慮も可能になる調査項目とする

 ・近年問題になっている成績の水増しに対応する新しい評価基準の検討

 ・学生の就職状況評価に、より信頼性の高いLEOデータ(教育省の実施する「長期的教育成果」調査)を採用  

  • 「成績の水増し問題」に対する大学側の主体的な対応への期待

  近年学生に対する成績のつけ方が大変甘くなっており、「First(優)」の学生が5年前に比べ40%も増えているという調査結果もある。本件は単位を授与する権限を持つ各大学が責任を持って対処すべきであり、大学間で単位の授与に関する共通の合意形成に取り組んでほしい。

  • 大学と学生との契約

 学生はどのような授業と評価を受け、それに対しどれだけの費用を支払う必要があるのか、明確な説明を受ける権利がある。また大学側はこれらの情報を学生に提供する義務があるがいまだに十分に対応できていない状況である。今後はこの問題について学生局が担当することとする。

  • 2年制学位課程の設置促進

 より多くの学生が学位を取得できるよう、経費の負担の軽減が見込める2年制学位課程の設置を促進する。

  • 学長の給与について

 学生局に対して以下の指示をした。

  • 年収£10万を超える職員名簿の公表。また年収£15万以上の者についてその明確な正当性を説明すること。
  • 指示に従わない大学機関に対して罰金を科すなどを含むペナルティを科すことの検討
  • 高等教育機関の職員の報酬に関する新しいガイダンスの策定
  • 高等教育機関のシニアスタッフの報酬に関するデータの蓄積と公開
  • 問題があるとされる機関に対し、その機関のガバナンスについて調査をする

  また、Committee of University chairsに対して機関間で共通認識として持つべき「報酬に関する取決め」を自主的に策定するようお願いしたい。

https://www.gov.uk/government/speeches/jo-johnson-speech-to-uuk-annual-conference

 

(8) 研究報告書:研究開発助成金は£430億の経済効果をもたらす

 9月7日、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)はハイテクイノベーションへの投資は雇用、売上、生産性の大幅な向上に貢献しており、経済的にも利益を上げているという新しい研究報告を発表した。

 過去13年間で研究開発助成金は投資額£80億の5倍以上の約£430億という経済効果をもたらし、約15,000の雇用を生み出した。

 この調査は、経済社会研究会議(ERC: Economic and Social Research Council)から資金提供されたEnterprise Research Centre(ERC)という、主に中小企業の成長や生産力に焦点を当てている研究センターが実施した。

 この調査研究は13年間に及び(2004―2016)、15,000件近くの企業に対する£80億の助成金についての調査研究結果である。

主な結果は:

  • 助成金を受けた企業は受けなかった企業と比べて雇用の面で短期的に6%、長期的(6年後)23%の伸びがあった。
  • 助成金を受けた全ての企業において、バイオテクノロジー、医療機器、工学、ライフサイエンス、ハイテク製造業など一般的に給与が高いとされる孝熟練労働者の雇用を約15万人分創出した。
  • 助成金を受けた企業は受けなかった企業と比べ、売上高において、短期的に6%、長期的に28%の伸びがあった。
  • 生産性はついて、短期的には影響はないが、長期的に見ると助成金を受けていない企業と比べて6%の伸びがあった。

 

https://www.ukri.org/news/the-taxpayer-tech-dividend-r-d-grants-provide-43bn-economic-boost-study-finds/

【メディアの反応】

・BBC News

 この研究を主導したERCのダイレクターWarwick Business SchoolのStephen Roper 教授のコメント:

 このような詳細に渡る分析が行なわれたのははじめてである。結果が示すように研究開発への出資は良い影響が出ていることが明白である。雇用、売上高においてもっとも成長した分野は製造業であった。生産性の低い企業、小規模企業がより多く助成金の恩恵を受けた。雇用の創出が増えた地域としてはロンドン、英国南東部や北西部が多く、売上高ではスコットランド、ヨークシャー、ロンドンでもっとも伸びた。

サービス業より製造業、大企業より小規模企業に大きな影響を与えたという結果がでた。将来的には小規模で可能性を持つ優秀な企業に焦点を当て、支援するべきである。

http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-41162534

 

(9) 政府は大学の学費は学部によって格差をつけるべき

 9月13日、英国政治関係サイトPolitics Home  のウェブサイトでPhillip Hammond 財務大臣は学部での学習課程と学費が連結すべきであると述べ、今度の学費に関して検討をしている旨を示唆した。

 大臣は、現在の学費のシステムは「 広範によく貢献して」おり、現行の制度の改革も「大変慎重に」考慮していると語った。他方科学、工学、数学の分野の学生の授業料を、芸術、人文学の分野の学生が間接的に負担していると言う批判も長い間あった。大臣は、大学運営補助金の削減、奨学金の廃止、学費の上昇、学生ローンの利率の上昇などの問題がある中で、学部間で授業料に格差をつける議論が高まっていることを認めた。

 12日の上院経済委員会でのスピーチで大臣は、「同じ額の負債を抱えた卒業生の間でも、より高所得を見込める学位と見込みづらい学位があると考えている。」と語った。

 11月の秋期財政報告を控え、Hammond財務大臣は保守党の議員に対し、世代間の格差、特に負債を負っている学生に対しどのように支援していくべきか、提案書の提出を求めたと報告されている。https://www.politicshome.com/news/uk/economy/news/88927/government-suggests-university-fees-could-be-linked-course-subject

 

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