2018年2月21日
(1) UKRI議長にジョン・キングマン氏
(2) EU離脱後、英国大学もEUファンドにアクセス可能に
(3) ビジネス・エネルギー、産業戦略大臣、フランスと研究開発分野での緊密な連携について協議
(4) TEF3 の審査委員発表、評価作業の開始
(5) UKRIが研究とイノベーションのインフラに関するロードマップを作成
(6) 新時代に必要な技能習得を目標とした新課程開発のため、政府は大学等に£6,100,000を配分
(7) メイ首相、ダボス会議にてプログラミングのコンソーシアム(Institute of Coding)設立に£2千万の投資を発表
(8) 高等教育志願者18歳の上昇
(9) 科学担当大臣、EUの研究担当大臣たちと科学・研究イノベーション分野での共同研究の促進について約束
(10) Times Higher Education アジアランキング2018—被引用論文により、最新のアジアランキングで中国が急増
(11) イングランド高等教育財政会議(HEFCE)が専門課程別就職率をみる全く新しい指標を紹介
(12) 英国高等教育の研究活動に関する調査(Facts and Figures)
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(1) UKRI議長にジョン・キングマン氏
1月16日、ビジネス・エネルギー産業戦略省(BEIS:Department of Business, Energy &Industrial Strategy)は、2018年4月から発足するUKRI議長に、今まで暫定議長であったJohn Kingman氏を引き続き指名することを発表した。
Kingman氏略歴:・Legal and General 株式会社会長
・2016年7月まで財務省第二事務次官を務め、在任中はサイエンスイノベーションに関する政策に携わる。
・2004年には政府のサイエンスイノベーション10年計画を主導。また、長年にわたり研究開発に関する税控除政策の立案にも携わってきた。
https://www.gov.uk/government/news/sir-john-kingman-announced-as-chair-of-uk-research-and-innovation
(2)EU離脱後、英国大学もEUファンドにアクセス可能に
1月17日BBC Newsは、Imperial College Londonがフランスのトップの研究機関と提携を開始し、EU離脱後もEUの研究資金へのアクセスを可能としたことを伝えた。
同大学はフランスの最大の政府研究機関であるフランス国立科学研究センター(CNRS: National Centre for Scientific Research)と共同で、ロンドンに数学のラボを設立した。これにより、同大学の研究者及び英国の研究機関の研究者で国際数学連合(UMI: Unite Mixte Internationale)の新しい数学ラボ「Abraham de Moivre」で研究している者は、英国のEU離脱後もフランスが受けるものと同等の資金援助の対象となる。
Imperial College Londonの広報担当者は「UMIのメンバーはどの国籍であれ、資金、リソース、また特に重要な共同連携の機会、を平等に享受する事が可能となる」と話した。
フランス政府が英国において研究ラボに共同出資するのは初めてとなる。フランスにとっては、この新しいロンドンラボはフランスにあるラボと同等の位置づけになる。
フランス系数学ラボの設置は2016年6月のBREXIT国民投票以前から計画されていたが、今後EU離脱をする英国にとって、提携及び助成金調達の良い事例と期待されている。
Abraham de Moivreというラボ名は18世紀のロンドンで研究をしたフランスの数学者の名前にちなんでおり、“世界最高の数学を結集する”という意味がこめれている。
http://www.bbc.co.uk/news/business-42690438
(3)ビジネス・エネルギー、産業戦略大臣、フランスと研究開発分野での緊密な連携について協議
1月18日、英仏サミットにおいて、グレッグ・クラーク ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣はフランスのBrune Poirson環境連帯移行大臣付副大臣及びDelphine Geny-Stephann経済・財務大臣付 副大臣と会談し、2国間のより緊密な連携でお互いの強みを生かした研究成果を導き出していくことで合意した。これにより英国政府の産業戦略の実現が加速されることが期待される。
両国はR&Dに関する専門機関であるイギリスのUK CatapultsとフランスのInstitutes Carnotのより緊密な連携などについて合意し、2018年には、デジタルセキュリティ技能やAI、デジタル政府をテーマにしたデジタル専門家会合を開催することとした。
また、研究者同士の連携促進のため、年間あたり約£90,000(約1,350万円)投資する、研究者モビリティ基金の設立を発表した。
また両国の宇宙局は、火星探査、宇宙気象観測、カリブ地域災害に際してのサテライト遠隔通信サービスに関する連携について合意書にサインした。
£1は150円で換算
(4)TEF3 の審査委員発表、評価作業の開始
1月22日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)は 第3回教育及び学生の成果評価制度(TEF: Teaching Excellence and Student Outcome Framework)に126の高等教育機関が参加する旨を発表するとともに、評価委員の詳細も発表した。TEFは政府によって導入された評価制度で、教育の質を評価し、高等教育の進学を考えている人に進学先の選択肢に関する情報を与えるものである。
昨年は230の高等教育機関が3年間有効となる評価を受けたが、そのうちのいくつかの機関は今般の新しい評価基準の導入を受け、再度参加する。
23大学と40の生涯学習機関、29の準高等教育機関のトータル92機関が全ての評価項目への参加を表明しており、その他の34の機関はデータが不足するため暫定的なTEFとして評価を受ける。
92の全評価対象の高等機関のうち、3分の1は初めてTEFに参加する。他の3分の1はTEF2にすでに参加したが、評価の有効期間の期限となるための参加、残りの3分の1は再申請という内訳である。
評価は学生、著名な学者、各分野の専門家などにより行われる。評価結果は「金・銀・銅」によって表される。結果は2018年6月初旬頃に発表される予定。
またこれとは別に、50機関は試験的評価として、学科レベルのTEFに参加する。この試験的な学科レベルでの評価は開発中のため、結果は発表されない。
http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2018/Name,116459,en.html
(5)UKRIが研究とイノベーションのインフラに関するロードマップを作成
1月22日、UKリサーチ・イノベーション(UKRI : UK Research Innovation)は今後の活動のロードマップを策定中であることを発表した。これまで英国でこのような大掛かりなロードマップ作成に着手したことがないため、困難な作業といえる。これにより英国の現状への理解を深め、将来の計画を理解することが可能となる。UKRIは大学・科学担当大臣よりこの作業着手依頼を受けて取り組んでおり、2027年までに英国GDPの2.4%が研究開発費に投資されるという政府の計画に貢献することが期待されている。
○研究とイノベーションのインフラとは?
研究やイノベーションに係る機関が研究を実施するための施設や資源、サービス。例えば:
○ロードマップとは?
研究やイノベーションのための全体的なインフラの概観や、計画を達成するためのステップを示した戦略的プラン。
○その目的は?
既存の国内インフラ及び英国が参加している主要な国際的施設の利活用、研究上あるいは経済的社会的な将来のニーズ、及び投資の重点化計画などを考慮しながら長期的(2030年まで)なロードマップを考えている。
その他に以下の点が含まれる:
○各セクターのテーマ
ロードマップは下記の分野横断的課題で構成される。多くのインフラは複数の課題に貢献することになる。
○スケジュール
https://www.ukri.org/news/infrastructure-roadmap/
(6) 新時代に必要な技能習得を目標とした新課程開発のため、政府は大学等に£6,100,000を配分
1月23日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE)は新時代に必要となる技能習得のための新課程開発費用として、£6,100,000(約9億1,500万円)をイングランドの30以上の大学に配分することを発表した。政府の新産業戦略目標達成に向け、各機関は産業界と連携して新課程開発を行うことになる。
HEFCEのCatalyst Funding Programmeを通して1機関あたり£200,000(約3,000万円)を上限として予算が配分され、それに大学独自の予算及び各企業等からの投資を加えて開発に取り組む。
取組み例:University of Bristol クラウドコンピューティング(£2,000,000)
University of Cambridge ヘルスケアデータに関する技能習得(£199,400)
£1は150円で換算
http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2018/Name,116468,en.html
(7)メイ首相、ダボス会議にてプログラミングのコンソーシアム(Institute of Coding)設立に£2千万の投資を発表
1月25日、メイ首相はスイスで開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)において、政府の産業戦略達成のため、デジタル技能者の育成のためにプログラミングに関するコンソーシアムを設立し、£2千万(約30億円)を投資することを発表した。
コンソーシアムには、産業界からはIBM、Cisco、BT、マイクロソフトやその他中小企業、25の大学や専門機関(British Computer Society やCRESTなど)など、合計60以上の機関が参加する。参加予定大学は、UCL、Newcastle University、University of Arts、Open University and Birkbeck、University of London等となっている。
政府からの投資£2千万に加えて、民間からも同額の£2千万と技能トレーニング及び備品無料提供などが投資されることとなっている。
Institute of Codingの主な5つのテーマ
£1は150円で換算
https://www.gov.uk/government/news/prime-minister-announces-20-million-institute-of-coding
(8)高等教育志願者18歳の上昇
2月5日、大学入試機関(UCAS:Universities and Colleges Admissions Service)は1月15日に締め切られた2018年度の英国大学(学部)志願状況を発表した。
主なポイント:
・イングランドの18歳の志願者数は記録的で前年より0.4% 上昇し志願率37.4%、ウェールズは0.3%上昇で32%、北アイルランドは安定して42.7%。スコットランドは0.2%の減少で32.5%、しかしスコットランド学生の3分の1はUCASを通して志願をしないため、正確な数字は把握できていない。
・英国全体では、18歳人口の高等教育機関への志願率は昨年に比べ1%の伸びを示した。
・1月15日までに全体でおよそ559,000人が入学希望願書を提出し、昨年に比べて0.9%減少した。これは全国で2.5%減少した18歳人口と、19歳と25才以上の志願者数の減少が要因と見られる。
・EU圏(3.4%増加,43,510人)と非EU圏(11%,58,450人で記録上最高)からの留学生増加があった。
・イギリスでのすべての年齢層で、看護科への志願数が13%減少した。
・イングランドでは18歳の志願率は男女共に過去を上回っており、2018年の男女の志願率は英国全体で高い。また男性より女性の方が高等教育への進学を希望しており、志願者は36%であった。これは昨年に比べ若干の増加であった。
・スコットランドでは男性の志願率が増加。女性の志願率は減ったものの56%であった。ウェールズでは志願率は増え、女性の志願率は48%であった。北アイルランドでは若干の志願率増加があり、女性の志願率は40%であった。
・イングランドの恵まれない環境に住む生徒の志願率は22.6%と記録的に伸びている。北アイルランドも伸びており24.5%、ウェールズでも19.7%と昨年と同様程度であった。最も恵まれている環境とそうでない環境では志願率の溝は埋まってきている。昨年に比べると恵まれた環境の学生の方がそうでない学生に比べ2.3倍志願している。
UCASでは6月30日までまだ志願をすることが可能であることを呼びかけている。2018年12月にはその総括的な結果を発表する予定である。
asia_university_ranking_2018docx.docxをダウンロード
asia_university_ranking_by_countries_and_areadocx.docxをダウンロード
japanese_universities_in_asia_university_ranking_2018_docx.docxをダウンロード
UCASの詳細データ
(9)科学担当大臣、EUの研究担当大臣たちと科学・研究イノベーション分野での共同研究の促進について約束
2月5日、Sam Gyimah科学担当大臣はブルガリアで開催されたEU競争力担当相理事会主催のResarch dayに出席し、欧州の研究担当大臣たちと研究・イノベーション開発について意見交換した。
会議においてSam Gyimah大臣は、欧州が科学イノベーション分野において卓越性、競争力、世界に向けて開かれた門戸を維持し続けるという野心的な目標のために、英国は将来にわたって先導的な役割を果たしていくことを約束した。
また、各国との二国間会合においては、特に懸念されている英国と欧州の研究者の流動性について意見交換を行った。大臣は、EUとの間で科学イノベーション協定を結ぶ用意があることを強調し、英国がEUメンバーにとどまっている間のEUの競争的資金獲得への参加資格の保証を求めた。
EU競争力担当相理事会は、EUの研究担当大臣にEUの研究とイノベーションに関する政策について協議する場を提供してきており、今回のテーマは「イノベーションの加速化と人々への投資」であった。
(10) Times Higher Education アジアランキング2018—被引用論文により、最新のアジアランキングで中国が急増
2月6日、英国高等教育専門雑誌Times Higher Education は2018年のアジア大学ランキングを発表した。350位(リスト上350+の大学)まで発表した評価結果は①教育 ②研究 ③被引用論文 ④国際性 ⑤産業収入、に分類される13指標から導き出された結果である。
1位は3年連続でシンガポールのNational University of Singapore。日本からは89大学がランクインし、国別では昨年に続き最多であった。また中国の活躍が目立ち、同誌世界ランキング論説員のPhil Baty氏は“中国は過去20年に渡り卓越した研究に投資したことが実っている。”と述べた。
(11) イングランド高等教育財政会議(HEFCE)が専門課程別就職率をみる全く新しい指標を紹介
2月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England )は、OSCR(the occupations subject concentration ratio)という、それぞれの専門課程で学んだことがどの程度実務に結びついているかを計る新しい指標を導入した。これは高等教育機関卒業生の就業・進学先のデータ(DLHE: Destination of Leavers from Higher Education Survey)をもとに導き出されている。
薬学、歯学、看護学など、全ての専門課程のうち約10%は非常に実務的であるとされた。次いで土木工学、IT、造園設計などが続く。それ以外の課程の卒業生は幅広い分野の仕事に就いており、その分実務性は前述の課程に比べると低いとみなされる。
OSCRの分析結果によると、より実務性が高いとされる専門課程の卒業生は、学んだことを生かし、より収入の高い職業に就く機会に恵まれている、としている。また、あまり実務に直結しないとされた数学や物理学、経営学などの分野の卒業生も、キャリアの早い段階においてよい成果を生み出していることが分かった。
これらの指標は、各専門課程で学ぶべき内容がより実務的であるべき、ということを意図しているものではない。むしろあまり実務的ではないとされる分野で学んだ卒業生のほうが、より幅広い選択肢があることがわかった。
http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2018/Name,116506,en.html
(12) 英国高等教育の研究活動に関する調査(Facts and Figures)
2月9日、英国大学協会(UUK: Universites UK)は英国高等教育の研究活動に関する調査結果を発表した。それによると英国大学の研究は世界中から評価が高く、経済的にも多くの利潤を得られるとしている。
レポートの主な点:
世界シェアでたった4.7%の研究者とわずかな投資であるが、論文については世界中の10%のダウンロード、11%の引用と15%の被引用論文があった。
1981年、英国研究の90%は純国産であったが、現在は半分以下となっている。英国でのトップ10研究のうち6の国際共同研究のパートナーはEUである。
2004/2005学事年度以降英国人以外の研究スタッフ数の割合が増加している。2004/2005学事年度は34%であったのに対して、2015/2016学事年度は47%まで上昇している。
2015/2016学事年度では英国大学は£78億(約1兆1700億円)の研究収入があった。そのうち£8億4000万(約1,260億円)は英国以外のEUから、£4億4000万(約660億円)はそれ以外の国からであった。
知識交換活動による大学収入はGDPの成長率を上回っている。2015/2016学事年度では£42億(約6300億円)であった。政府は研究開発に対して投資額を引き上げ、10年以内にOECDの平均に到達することを約束した。
http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/UK-produces-world-leading-research.aspx