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2017年12月19日 2017年12月英国高等教育及び学術情報

(1) 大学と企業間連携促進のための新しいウェブツール

 11月14日、UKリサーチイノベーションの暫定最高責任者であるMark Walport卿が立ち上げた、大学-企業間連携を促進する新しいウェブツール“Konfer”が正式に開始された。Konferには100万を超える研究・研究者・施設・設備・資金・支援に関するデータが収められ、ビジネスの連携機会を創出することを目的としている。

 このシステムはイングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)、英国研究会議(RCUK: Research Council UK)と提携して国立大学産業センター(NUUB: National Centre for Universities and Business)によって製作されたもので、大学側も研究パートナーを探すことができる。英国議会下院の科学技術委員会は“企業が最短の方法でアカデミックのパートナーを探すことができる方法”であると説明した。

国立産業センター David Docherty会長コメント:  

 Konferツールを通して事業者、新規事業立ち上げ者や大規模組織がそれぞれに助成金、リソース、専門家、イノベーションの機会の情報に簡単にアクセス可能となり、また大学側も簡単に商業パートナーを見つけることができるようになった。

 Konferに含まれる情報は以下のとおり:

  • 12,076人の学術研究者
  • 14,386施設および設備リスト
  • 1,732,279の大学とSNSのWebページ
  • 27,526の大学のチャンネルからのYouTube動画
  • 精選された238,274のニュース、助成金とイベントの情報
  • 51,537件の公的資金提供研究プロジェクト

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,116214,en.html

 

(2) EU離脱が英国の科学研究の地位を脅かす可能性(ガーディアン記事)

 11月15日、英国はEU離脱によって科学研究のトップの座を奪われる危機にあるとの警告が発表された。

 行政監視をする公会計委員会(PAC: Public Accounts Select Committee)の議長を務めるMeg Hillier氏は、ロボット工学や気候変動などの分野において、EU離脱後も英国の地位を保持するための政府のリーダーシップが「まったく欠けている」と述べた。これは国家会計検査院(NAO: National Audit Office )が発表したロボット工学と応用材料研究のリーダーシップの欠点を警告した報告書に基づいてコメントしたものである。

 15日に発表された報告書によると、2015年の研究開発に対する政府からの支出合計は£87億5千万*(約1兆3,125億円)であった。また昨年政府は2021年までに追加として£47億(約7,050億円)を出資すると発表している。

 2007年から2013年の間のEUから英国への助成金の純受取額は€88億**(約1兆1,440億円)であり、同期間の英国からEUへの出資額は€54億(約7,020億円)であったため、EU離脱後、英国の研究に対しどの程度資金提供されるのかで影響があるだろうと警告している。

 政府の支援は「一貫性の無い」データに基づいて行われており、どの分野が後れを取っていて、どのプログラムがEU離脱により打撃を受けるのかを正確に分析しなければ、成果の上がる投資とならない、と報告書では警告している。気候変動、ロボット工学、先端材料学の分野で投資を集中させる必要があると述べている。

*£1=150円で換算

**€1=130円で換算

 https://www.theguardian.com/education/2017/nov/15/brexit-threatens-uks-reputation-for-scientific-research-watchdog-says

 

参考National Audit Office report (summery):

https://www.nao.org.uk/wp-content/uploads/2017/11/Cross-government-funding-of-research-and-development-Summary.pdf

 

(3) 卓越した才能を持つ人材受け入れのため、ビザ発給数を倍増

 11月15日、内務省(Home Office)はテクノロジー、科学、芸術などの分野で卓越した才能を持ち、最前線で活躍している者に対するビザの発給数を倍にすることを発表した。

 全世界から優秀な人材を確保するため、ビザカテゴリーTier 1 (卓越人材対象)枠を現在の年間1000件から2000件にする。

 これにより、英国の経済を強化するより多くの高等技能保持者を受け入れることができることとなる。また産業界において英国が世界トップクラスの座に居続けるための方策のひとつとして、個人のグローバルな移動に対し英国政府が貢献していることを表している。

 2000件のビザは、デジタル工学、科学、芸術分野で将来のグローバルリーダーとなりうる個人、もしくは以下の5つの団体から推薦を受けた者が対象である。

5つの推薦団体;

  • テックシティUK (Tech City UK)
  • イングランド芸術評議 (Art Council England)
  • 英国学士院 (The British Academy)
  • 王立学会 (The Royal Society)
  • 王立工学アカデミー (The Royal Academy of Engineering )

https://www.gov.uk/government/news/government-doubles-exceptional-talent-visa-offer

 

(4) 次世代のエンジニア育成のための画期的なキャンペーンの開始

 11月16日、教育省は「エンジニアリング2018」キャンペーンの立ち上げを発表した。100社以上の産業界のパートナーが参加し、年間を通じて若者にエンジニアリングに接し体験する機会を提供することになる。

 テクノロジー、ヘルスケア、食品製造からエネルギー、文化や輸送まで、ありとあらゆる分野の関係団体が参加して、産業界、国会議員、父兄や教師達を活気づけることで次世代のエンジニアを育てることを目的としている。

 シェルグループによる児童生徒を対象にした「将来のエンジニア向けエネルギークエストプログラム(Tomorrow’s Engineers Energy Quest programme)」に対し£100万(約1億5千万円)の出資、出版業Usborne社による子供向けエンジニアリングの本の出版や、家族向けの工場見学ツアーなど、大規模なアウトリーチプログラムが含まれる。また、個人的な活動として、父兄が子供の算数の宿題を手伝うことやコードクラブに参加させること、エンジニアが自身の経験を学校で語ったりSMSを通じてシェアしたりすることなども含まれる。

 このキャンペーンは、英国が年間約20,000人の技術者不足に陥るという推計、及び技術関係企業の約半数が技術者不足により業績に悪影響が出ているという報告を受けて立ち上げられたものである。あらゆる層の若者にエンジニアリングの経験を直接させたり、身近なロールモデルと交流させたりすることで、エンジニアという職業のもつ豊かな想像性や革新性を実感してもらい、将来エンジニアになりたいという若者を育てると共に、エンジニアのうちの91%が男性であり、94%が白人であるという現在の偏りを解消することを目的としている。

 シーメンス、自然博物館グループ、Ocado(スーパーマーケットグループ)、Usborne(出版業), BAE Systems(セキュリティ関係)及びCrossrail(鉄道会社)などが支援を表明している。政府は年間を通じて学校訪問や展示会、見学会などを企画している。

https://www.gov.uk/government/news/government-announces-landmark-campaign-to-inspire-next-generation-of-engineers

 

(5) 政府が研究開発に記録的な投資

 11月20日、メイ英国首相は研究開発分野に対して記録的増額投資及び英国内の都市を結ぶ交通システム整備に対する新たな投資を発表した。これは産業戦略の一環で、生産性の向上と英国内でのより高額な雇用を創出することが目的である。

研究開発費への投資に関し抜粋:

 産業界と協力して2027年までに研究開発費をGDPの2.4%に引き上げる。これにより公共及び民間セクターへの研究開発投資が今後10年間で£800億(約12兆円)増加する可能性がある。2021/2022学事年度から追加投資として£23億(約3,450億円)の投資を開始し、研究開発費の全投資額は同学事年度だけで£125億(約1兆8,750億円)になる。

 メイ首相のコメント:

 私が首相になって始めて取り組んだもののひとつが産業戦略の策定である。産業戦略によりハイクオリティなビジネス創出を助け、高賃金の仕事を創出することを目的とする。産業戦略は英国を将来、産業分野において世界的なリーダーに押し上げるだろう。人口知能、ビックデータ、AI、クリーンエネルギーから自動運転自動車まで、チャンスをモノにするときである。

 今後5年間でGDPの研究開発費への投資を増加させ、1980年代のレベルまで回復させる。昨年発表した、投資額を2015/2016学事年度の£90億(約1,350億円)から2020/21学事年度には£120億(約1兆8,000億円)にまで引き上げると公約したことに基づくものである。

 来週月曜日(11月27日)に発表される産業戦略白書では、英国の強い分野であり、かつ我々の将来を形作る世界的潮流を反映した4つの大きなチャレンジが発表される。それらは人工知能、データエコノミー、低炭素社会、健康な高齢化、そして将来の流動性である。政府は産官学と連携し、わが国の得意分野を伸ばし英国経済の成長を確保するため努力していく。

£1=150円で換算

https://www.gov.uk/government/news/record-boost-to-rd-and-new-transport-fund-to-help-build-economy-fit-for-the-future

 

【各機関の反応】

UKリサーチ・イノベーションの暫定最高責任者であるMark Walport卿のコメント

 政府が研究開発費の支出に意欲的な目標を掲げたことは喜ばしい。このようは大胆な行動は英国が研究・イノベーション分野において世界のトップの座を維持することを裏付けるだろう。

 この責任を果たすには協調努力が必要である。UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research and Innovation)はすでに産業戦略の一環として様々なアイディを展開させており、これらの投資が最大の効果を出すための努力をしている。政府、産業界、学術界と今後も協力し、目的の実現のため生産性を高め、生活水準の向上に貢献していきたい。

https://www.ukri.org/news/uk-research-and-innovation-welcomes-government-r-d-commitment/

 

(6) 研究評価制度(REF:Research Excellence Framework)2021の概要が明らかに

 11月21日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding for England)は次期REF2021の実施方針を発表した。1年間に及ぶ協議の結果、研究スタッフの再雇用制度や研究成果のアウトプットの評価方針について確認されている。

 発表された方針には、研究に多大なる貢献をした研究者は全てREFの評価対象とすること、研究者の流動性に左右されることなく研究成果はその結果を出した機関が提出すること、研究成果の総数や実際にどのようなインパクトを与えたかという実例を提出すること、等が含まれている。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,116247,en.html

 

(7) 労働市場における大学卒業者雇用状況調査結果

 11月24日、国家統計局(ONS: Office for National Statistics)は2017年7月-9月に卒業した1,400万人の学生の雇用状況調査を発表した。結果概要は以下のとおり。

  • 2017年7月-9月に大学を卒業した者は約1,400万人だが、過去10年間着実に増え続けている。
  • 大学卒業者のほうが大学を卒業していない者よりも雇用される割合が高い。
  • 21歳から30歳の大学を卒業していない者は未就業率が高く、活動が活発でない割合が高い。
  • 40%の大学卒業生は行政、教育、医療関係に従事しており、大学卒業生は卒業していないものより高等技術職に就いている。
  • 大学卒業者の年収のほうが大学を卒業してない者よりも高く、より年を重ねてから年収のピークを迎える。
  • 2017年7月~9月の卒業生で薬学や工学の学位を持つ者は就職率が高く年収も高い。
  • 男性の卒業生のほうが女性の卒業生に比べ、より高い技能職に就職が決まる傾向がある。

https://www.ons.gov.uk/employmentandlabourmarket/peopleinwork/employmentandemployeetypes/articles/graduatesintheuklabourmarket/2017

 

(8) 産業戦略白書の発表

 11月27日、ビジネス、エネルギー産業戦略省 (BEIS: Department of Business, Energy and Industrial Strategy) の大臣である、Greg Clark氏は政府の野心的な産業戦略を発表した。

発表内容の概要:

  • 経済強化を図り、英国の得意分野に基づき技術革新の機会を利用する計画として同省の最重要な取り組みである産業戦略を立ち上げた。

 

  • イノベーション創出のための産業戦略チャレンジ基金プログラムに£7億2500万(約1,090億円)を投資
  • 世界的な生命科学関連企業のMSDが英国への投資を確保したことで産業戦略が開始する。
  • 建設、人口知能(AI), 自動車、ライフサイエンス分野において、初の試みである”Sector Deals”へ取り組む。
  • 4つの“大きな課題”への取り組み。将来産業の最前線の座に英国をすえるため世界的なトレンドを掴む。

 

 2030年までに世界で最も革新的な国になることを目標に、政府は地球規模課題に対応するため、今後3年間で£7億2500万(約1,090億円)を産業戦略チャレンジ基金(ISCF: Industrial Strategy Challenge Fund)に投資する。このうち£1億7000万(約255億円)が建設部門に投資され、より安全で健康的、かつ省エネの手ごろな価格の住宅やオフィス環境の開発に取り組む。また、医療における早期診断の向上や、精度の高い医療の開発に最高£2億1000万(約315億円)の投資などが予定されている。

 政府は昨年第1期ISCFとして£10億(約1,500億円)の投資を約束しており、その中には次世代バッテリーテクノロジーへの£2億4600万(約369億円)、及び英国中のロボッテックハブへの£8600万(約129億円)が含まれている。

 先週、メイ首相は研究開発費の投資水準を2027年までにGDP1.7%から2.4%に引き上げることを発表している。これは今後10年間、先端技術分野に£800億(約12兆円)を追加投資し、新産業やイノベーションの創出を支援していくことを意味している。

 白書には建設、ライフサイエンス、自動車、人工知能の分野において様々な”セクターディール“活動に取り組むことも含まれている。これは政府が民間との共同出資によって長期的な提携で取り組んでいくものである。ライフサイエンスのセクターディールとして、世界トップクラスのライフサイエンス企業MSDが英国に対し大規模な投資をすることを発表した。最先端の治療方法や薬の開発などが活動内容となる。また、最先端研究施設を英国内に建設し、950人の雇用も創出される予定である。

 産業戦略において定められた4つの大きな課題(Grand Challenge)は、以下のとおり。

  • 人工知能
  • クリーン成長
  • 高年齢化社会
  • 物流、人の流動性

 

 白書では5つの基盤に焦点をあわせ、政府、学術界、産業界のユニークなパートナーシップのもとで生産性が高く、将来世界において競争力のある英国経済を作り上げていくこととしている。

5つの基盤:

  • アイディア
  • 人々:技術教育制度の確立。£4億600万(約600億円)を数学、デジタル、技術教育に投資しSTEM(Science, Technology, Engineering and Math)人材不足の解消を図る。新しい「職業再訓練制度」を立ち上げ、£6,400万(約96億円)をデジタル及び建設技能のトレーニングのために投資する。
  • インフラ:英国生産力投資基金(National Productivity Investment Fund)に£310億(約4兆6,500億円)を増資し、輸送、ハウジング、デジタルインフラ整備を支援する。電気自動車開発のために£4億(約600億円)、更に£2億(約300億円)をプラグイン車導入の補助金として出資する。£10億(約1500億円)以上をデジタルインフラ整備のために出資し、5Gの整備やファイバーネットワークが脆弱な地方の整備を行う。
  • ビジネス環境
  • 場所:地方を強化し、経済面でのチャンスを広げるために、地方の産業戦略に合意する。新しい都市転換基金(transforming cities fund)を創設し、都市間交通の整備のために£17億(約2,550億円)を出資する。教員育成プレミアム事業に£4,200万(約円)を出資し、成績が伸び悩んでいる学問分野の教員の育成に努める。

£1=150円で換算

 

https://www.gov.uk/government/news/government-unveils-industrial-strategy-to-boost-productivity-and-earning-power-of-people-across-the-uk

 

【各機関の反応】

○英国学士院(British Academy)

同院の経営最高責任者Alan Evans氏のコメント:

 前例のない変化の時代において我々や社会について理解することは重要になっている。つまり政府の産業戦略の中心が人文社会学なのである。政府の掲げたチャレンジは人文社会科学から多くの思索と洞察力が求められるものである。我々の特別研究員制度を利用する優秀な研究者と継続的に連携し、政府の産業戦略への支援と情報提供に協力していきたい。

 

https://www.britac.ac.uk/news/british-academy-responds-industrial-strategy-white-paper

 

○王立協会(Royal Society)

同協会Venki Ramakrishnan会長のコメント:

 我々の強みである知識基盤経済(knowledge-based economy)に投資するという政府の産業戦略は、英国は世界の研究及びイノベーションのリーダーであるという自信のある前向きなメッセージを発信している。新たな研究開発への投資は技術開発の最先端に居続けるために必要な人材、アイディア、機関への支援をさらに強化するということである。将来のための賢い投資だが、次世代の新産業や繁栄の基礎となる新しい知識を得るためにも、基礎科学への投資も継続して必要であることも確認しておきたい。

https://royalsociety.org/news/2017/11/royal-society-responds-to-industrial-strategy/

 

(9) 芸術、人文、社会科学学部卒業生の就職状況

  11月27日, 英国学士院(British Academy)は初めて芸術、人文、社会科学部(AHSS: Arts, Humanities and Social Science)卒業生125万人を対象にした調査を行い、学位獲得過程において就職に対応できる十分なスキルを身につけることができる証拠を発表した。 AHSS卒業生は全体の卒業生の55%を占めるが、これまでどのようなスキルを身につけ、卒業後どのような進路に進んでいるのか、のデータがなかった。

 今回の調査結果では、雇用者側が求めるスキルはAHSSの学部で学ぶこととほぼ同じであった。

  • コミュニケーション力とコラボレーション力
  • 研究力と分析力
  • 独立力と適用力

 今回の結果では、柔軟性、適応力の高い者の多くがAHSSの卒業生であり、学位そのものが就業職種とは全く関係なくても雇用者からの歓迎されていることが明らかになった。

 報告書ではAHSS卒業生の経済への貢献度も調査している。それによるとウェブデザインから公務員、教師から金融サービスまで、実に様々な分野で活躍をしている。Financial Times Stock Exchange 100社(FTSE100)の中で実に58%の企業のトップがAHSSの卒業生であった。

 また、英国経済の80%近くが所謂サービス業といわれる法律業、会計業、ホスピタリティ、小売業、広告業に由来しており、これらすべての分野でAHSSのスキルと知識が必要とされている。

 英国学士院は人文、社会科学分野の国家的機関であり、発表された報告書は2020年まで実施しているスキルに関する研究プログラムの一環で初めて発行されたものである。

https://www.britac.ac.uk/news/future-proof-grads-new-study-pinpoints-arts-humanities-and-social-science-graduates%E2%80%99-skills

 

(10) FP9初期段階への英国研究会議のコミットメント

 11月28日、英国研究会議(RCUK : Research UK)は、ブラッセルで次期多年次資金助成プログラムであるFP9に関して話し合いが開始されたことを伝えた。「ホライズン2020」プログラムはEUにおける研究・イノベーションプログラムとして、2014年から2020年まで間に最大規模の€800億(約12兆円)が投資されるものである。まだ現在のプログラムも半ばを過ぎただけではあるがすでに次期プログラムの話し合いが開始されている。

 焦点となる点として:

  • ホライズン2020の継続性
  • ヨーロッパイノベーション協議会設立などの新しい概念
  • 社会的課題(Societal challenge)から目的を持った研究(mission-oriented approach)への移行

 RCUKはFP9を形作るための過程に積極的に関わっている。

 次のステップは、2018年の早い時期に欧州委員会(European Commission)からアナウンスされる予定のFP9関係者との協議である。欧州議会と協議するためのFP9の提案は、2018年7月に予定されている。

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/171128/

 

(11) EUからの大学入学者減少(2017/2018学事年度 2017年9月入学対象)

 11月28日、大学入試機関(UCAS: Universities & Colleges Admissions Service)は2017年の英国大学入学志願者の総数を発表した。

 2017年学事年度は699,850人が願書を提出し、2016年より2.6%(18,500人)の減少であった。内訳は英国学生が82%、EU学生が7%、非EU学生が11%であった。非EU学生の大学願書提出者は2.8%増加し、76,380人と記録的な数であった。英国学生は3.1%減り572,285人、EU学生も4.4%減り51,185人であった。

 合格者した者は上記の傾向と同じくEU学生は減り、非EU学生が増加した。2017年の英国学生合格者は2,535人(-0.5%)減り、又EU学生の合格者も2.1%(-650人)減り30,700人となった。非EU学生の合格者は5%(1,900人)増加し40,245人で記録的な数であった。非EU学生の合格者は1.8%の伸びを見せ70,945人で5年連続の増加を示した。

https://thepienews.com/news/uk-non-eu-undergrad-applicants-up-2-8-but-eu-drop/

UCASからの発表内容:

https://www.ucas.com/file/135626/download?token=pQL3AOVK

 

(12)知識交換制度(KEF: Knowledge Excellence Framework)の比較内容の協議進行中

 12月1日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)は知識交換制度(KEF)の評価内容の作成のため技術諮問会を立ち上げたことを発表した。

 新しいKEFの評価システムの開発は大学・科学担当大臣であるJo Johnson氏によって発表され、最近政府が発表した産業戦略白書でも強調されていた。KEFはHEFCEに政策の準備を委託し、2018年4月からリサーチイングランド(RE: Research England)で管理する。

 KEFの評価システムは知識交換に対する大学のパフォーマンス(どのように情報・専門知識・その他経済や社会に貢献できる資産などを共有するか)を一般、企業に提供する。その目的は、知識交換の分野における各機関のパファーマンスを公平に比較し、定期的に更新されたデータを提供することである。これにより大学の更なる改善やより明確な説明責任を促進し、経済的社会的なニーズへの対応及び公共資金の効果的な利用に役立つことになる。

 またKEFは2020/2021学事年度までに高等教育イノベーション基金(HEIF:Higher Education Innovation Fund)に対して£2億5000万(375億円)の増資など、産業戦略も支援することになる。この増資により、大学が様々な方法で様々な規模の企業と協力することで産業戦略に貢献することを可能としていくことになる。

£1=150円で換算

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,116323,en.html

 

(13) UK-CHINA科学技術イノベーション戦略に調印

 12月6日、政府は中国と科学とイノベーション分野の連携を強めるための共同戦略を締結した。

 新戦略は両国の学術界、研究者、そして産業界の連携をサポートし、地球規模課題に共同で取り組んでいくための新たな機会を創出することを目的としている。

 英国政府が産業戦略として研究開発費に£23億(約3,450億円)の追加投資を発表して以降始めての国際共同戦略の合意となる。

 新戦略は中国との間で40年以上にわたり築き上げてきた科学・イノベーション連携をグレードアップしたものであり、中国がバイラテラルで調印をするのは初めてとなる。

 英国と中国の間には既に強いつながりがあり、2014年に立ち上げられたパートナーシップ基金により支援を受けた共同プロジェクトは460以上に上る。

 中国の研究成果が与えるインパクトは年々増加しており、論文引用率は20%以上増加している。英国と中国の共著論文の引用率は世界の平均の2倍以上のインパクトとなっている。

£1=150円で換算

 

https://www.gov.uk/government/news/joint-uk-china-strategy-for-science-technology-and-innovation-cooperation-sets-new-horizons-for-closer-international-collaborations

(14) EU離脱の第1段階の交渉で合意

 12月8日、BBCはメイ首相が英国とEUと第1段階の交渉で合意し、次段階交渉に発展することを発表した。今回の主要な合意点は下記の3点。

  1. 精算金
  2. 在英EU市民の権利
  3. アイルランドの国境問題

http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-42277040

【各機関の反応】

英国大学協会(UUK : Universities UK) 会長Alistair Jarvis氏のコメント

  EUと第1段階の交渉合意を歓迎する。大学として第一優先の課題であった市民権の合意は大変喜ばしい。本日の発表で英国の大学等機関で働くEU市民46,000人の英国での定住と就労が確定された。又5年連続で国外にいても定住の権利を失効しないことも歓迎したい。ホライズン2020やエラスムス+など英国の大学や学生、研究者がプログラム終了まで継続できるということは肯定的なニュースである。

 第二段階の交渉は大学にとってとても重要である。英国大学協会は政府やEUの関係者と協力し、英国の大学が離脱後も十分な成果を出し続けられるよう、また次期研究とイノベーションプログラム(FP9)などに悪影響がないように努力をしていく。優秀なEUの研究者や学生が英国において就業、学業を行なうため障壁を最小限にするための移民制度は離脱後の最優先課題である。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Initial-Brexit-deal-good-news-for-universities.aspx

ラッセルグループ 事務局長Tim Bradshaw氏のコメント

 EU離脱の過程が始まって以来、EU市民の権利が最優先課題であった。離脱の時点まで英国に到着する者に対して退去協定が適用することが確認された。至急この協定を英国法に取り入れることを希望する。ホライズン2020、エラスムス+に関しても大きな前進となり、大学もこの機会を十分に活用することを期待する。

  第二段階の交渉は、40年間かけて築いてきた関係を元に、野心的な研究取極めを早急に進める必要がある。包括協定において共同連携を長期的に継続することは英国・EU双方にとって有益である。

 http://russellgroup.ac.uk/news/brexit-sufficient-progress/ 

2017年12月01日 2017年11月英国高等教育及び学術情報

(1)英国大学の願書10月締切分の内訳概要発表

 10月23日、大学入試機関(UCAS: Universities & Colleges Admissions Service)は2018/2019学事年度入学希望で10月締切分の結果を発表した。

 10月15日に締め切られた願書総数は61,440人で前年より7%(4,250人)の増加であった。締切の対象は英国内大学の医科、歯科、獣医科、医薬科およびCambridge, Oxford の全学科である。

 UCASの理事長であるClare Marchant氏は「これらの学科や大学は常に人気がある。将来に対して不透明感ある現在、英国の高等教育は英国の学生だけでなく、EUの学生や全世界的にも魅力的だということは大変うれしく思う。しかし2018年1月15日の締め切りの結果を待って英国高等教育の需要を知る必要がある。」と述べた。

 英国の学生の志願数は6%(2,530人)増加し41,970人となった。2010年以来の最高記録となる。英国では18歳の人口が減少(-3%)しているにも関わらず18歳の志願数が増えており、イングランドでは+8%、ウェールズでは+7%、合計で2,190人増加している。

 今回の締切で初志願者数は8%増し、56,020人、再志願者数は1%減り4,220人であった。

 EUからの志願者は6%(370人)増加し6,610人、昨年の9%減少から一転増加した。EU以外からの志願者は12%(1,350人)増加し12,860人であった。

 イングランドの医学系の志願者数は、19歳の初志願者の確実な人数に支えられ16%(1080人)増加し、7,770人となった。この増加は2018年からの医学部定員の500人増が影響している。

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/number-applicants-october-deadline-university-courses-reaches-highest-recorded-ucas-figures-reveal

 

(2) ヨーロッパの大学指導者がEU離脱に関する早急な取り組みと明確さを要求

 10月25日、将来のヨーロッパにおける研究・連携・学生の流動性などについての議論に取り掛かるため、ヨーロッパの高等教育機関の首脳陣が英国政府に対し、離脱交渉を早めることを要求した声明に署名をしたことを伝えた。(英国大学協会(UUK: Universities UK)発表。)

 声明はヨーロッパ全土の大学や大学長会議など22の機関により発表されたもので、2019年3月に英国がEU連合を離脱後、ヨーロッパの研究、イノベーションプログラムであるホライズン2020や、交換留学プログラムであるエラスムス+の今後のあり方を明確にさせたいという意図により発表されたものである。

 研究、高等教育分野についてはEU離脱交渉の第1期の結果に従い第2期に討議される予定であったが、2017年10月20日に終了した欧州理事会サミットでは第2期を開始させるほど十分な進展がなかった。交渉の遅れは高等教育機関が直面する不透明な状態を先延ばししたことになった。

 同協会の理事長でLiverpool University のJanet Beer学長のコメント:

 我々欧州の高等教育機関は、2019年の研究・連携。交換留学について方針を決める最終段階に入っている。離脱後のホライズン2020への英国の参加に関しての早急な対応も迫られている。このプログラムからアクティブなネットワーク、優秀な人材、資金の提供を受けることで我々の研究は大きく前進した。このままではヨーロッパの研究が失速する危機がある。

 2019年も引き続き英国はエラスムス+に参加するのかしないのか、海外で勉強ができると希望を持って各国に留学したヨーロッパ中の学生が知りたがっている。エラスムス+などの海外留学プログラムは学生や大学、雇用者に大きな利益をもたらすものである。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Europe%E2%80%99s-University-Leaders-Call-for-Urgent-Brexit-Clarification.aspx

 

(3)英国政府、重点ライフサイエンス分野に£1,700万(約26億円)を投資

 10月25日、英国財務省は国民保健サービス(NHS:National Health Service)と病気治療に役立つライフサイエンス分野に関する投資を発表した。これらの資金は政府の野心的な産業戦略の一環で、新薬開発とメンタルヘルス治療支援、最新の研究開発技術を臨床研究に転換させるものである。

 ライフサイエンス産業は毎年6千万人の患者に対して医療を提供しており、英国経済における重要な産業でもある。5,000社以上で約23万5千人が雇用されており、£635億(約9兆5千億円)の売上高を生み出している。

 財務大臣Philip Hammond氏は1,250人の科学者と250人のスタッフが新薬開発と将来の治療への応用に向け、最先端のバイオメディカル研究に取り組んでいる、欧州最大のバイオメディカル機関で、政府から£3,500万(約53億円)の投資を受けたフランシスクリック・インスティテュートを訪問し投資発表をした。

 投資は以下の3つの新分野に対して行われる。

  1. 低温電子顕微鏡:£500万(約7億5千万円)を、生体成分の3Dモデル作成のための最新の顕微鏡開発に充てる。これにより新薬の開発がより早く廉価にできるようになる。
  2. イノベーションハブ:£700万(約10億5千万円)を最新設備整備と研究者のための新しいラボ設立に充てる。このラボはエンジニアリング生物学、計測学および標準のための英国センターとしてイギリス国立物理学研究所(NPL: National Physical Laboratory), 国立生物学的製剤研究所(NIBSC :National Institute for Biological Standards and Control)とその他企業の共同研究の場として設立される。
  3. ビジネス促進:£500万(約7億5千万円)を、医学研究会議の“Confidence in Concept”(応用可能な基盤研究への支援プロジェクト)の商業化プロジェクトの拡大としてメンタルヘルス治療の促進に充てる。

 また、フランシスクリック、キングスカレッジ、キャンサーリサーチUKによって設立された英国企業、“GummaDelta Therapeutics” が25の新たな職を公募した。同社は今年はじめに新薬開発のため£1億(約150億円)の投資を受けている。

 英国はライフサイエンスの分野では世界を先導している。英国民は世界の総人口のたった0.9%を占めるのみであるが、世界で最も引用される論文の15.2%を占めている。この分野における研究の生産性は米国の2倍であり、ドイツの約3倍である。英国南東部(オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドン含む)は世界的に有名なライフサイエンスクラスターとなっている。これらには世界大学ランキングのトップ20に入る4機関と、メディカルサイエンス分野において世界ランキングでトップ10に入る4つの学科と世界で最大の研究機関が含まれている。政府は、毎年20億ポンド(約3千億円)を追加支出し、支援していくこととしている。

*£1を150円にて換算

https://www.gov.uk/government/news/17-million-boost-to-the-uks-leading-life-sciences-sector

 

4)次期経済社会研究会議(ESRC)議長とUKリサーチイノベーション(UKRI)イノベーション推進理事を発表

 10月26日、Jo Johnson大学・科学担当大臣はJennifer  Rubin 教授(キングスカレッジ政策研究所所長)を次期経済社会研究会議(ESRC:Economic and Social Research Council)議長に指名した。またHarpal Kumar卿(キャンサーリサーチUK理事長)が英国研究会議(UKRI:UK Research and Innovation)のイノベーション推進理事に指名された。

 Rubin教授は2018年3月末までESRCの理事長を務め、4月1日にUKRIの設立と同時にESRCの議長となる。

 英国が研究とイノベーションの分野で世界を牽引し続けるために発足するUKRIの議長職は非常に重要なポストである。UKRIを形作る9機関それぞれに議長職が置かれるが、その役目は現在の各機関における議長と理事長双方の職務内容を果たすものになる。

 Harpal卿の新役職であるイノベーション推進理事はUKRI理事メンバーとして新しく設定され、イノベーションUKの一員としてUKRI内でのイノベーション促進と事業利益の拡大に務めることになる。

https://www.gov.uk/government/news/science-minister-announces-new-esrc-executive-chair-designate-and-ukri-innovation-champion

 

(5)英国政府、£1,500万(約23億円)を新しい工学系高等教育機関に投資

 10月26日、Jo Johnson大学・科学担当大臣は質の高い工学コースの提供に特化した新しい高等教育機関に£1,500万(約23億円)を投資することを発表した。

 次世代テクノロジー&エンジニアリング高等機関(NMiTE: New Model in Technology & Engineering)は、近年技術者の需要が急激に伸びている高度製造業やAI、サイバーセキュリティーの分野など、最先端工学分野について学ぶ大学になることを目指している。

 NMiTEは最初の入学者を2020年9月に受け入れ、次世代エンジニアの育成のために革新的な手法を採用することとしているほか、2年間短期集中コースで学位取得も目指す。

ユニークな手法として:

  • 講義ではなく実践ベースの学習プロジェクト。授業は教授と実務従事者により進められる。
  • 教育課程は事業主と共に開発する。卒業前に半年から1年の実務経験を必修とする。
  • 50:50のジェンダーバランス目標達成に向け、女子学生の受け入れを促進し女性の工学系卒業者数を増やす。
  • 多様性と社会的流動性を支えるため、奨学金受給者が学生全体の25%となることを目標とする。
  • 見習いとして業務に従事したことで高い技能を身に付けた者や軍隊除隊者等、工学系の学問のバックグラウンドを持たない者の積極的受け入れ。

 

 今回の投資は教授陣、キャンパス整備、カリキュラム開発に充てられる。NMiTEは多くのエンジニアや専門家を社会に送り出し、現在の社会における技能熟練者不足の解消に役立つことになる。

 新高等機関開設に当たっては、ワーウィック大学とQinetiQやHeinekenなどの事業主がカリキュラム開発に協力し、卒業後即雇用市場で実践できる人材の育成を目的とする。

 本計画は、生活水準を向上させ、生産性を上げることで経済成長につなげ、国全体の成長を促すという、政府の「産業戦略」の一環に基づくものである。

 工学系の卒業生数は近年急激に落ち込んでおり需要に供給が遠く及んでいない。非営利団体"エンジニアリングUK“の試算によると、年間20,000人の技術者が足りないとしている。

 今回の取り組みは、質の高い教育機関が高等教育のマーケットに参入しやすくすることで高等教育の質と競争を高めることを目的として制定された、2017年の高等教育研究法に基づいて行われるものである。

 政府は既に、若者が将来高賃金の高技術職につくための訓練が受けられるよう、£5億(約750億円)以上を投資する技術教育改革に取り組んでいる。

*£1を150円にて換算

https://www.gov.uk/government/news/multi-million-pound-funding-for-new-higher-education-provider

 

(6)英国大学協会国際部が 3年間の“Go International:Stand out” キャンペーンを立ち上げ

 11月2日,英国大学協会国際部(UUKi)は、2週間以上海外で学び、働き、若しくはボランティア活動に従事する学生数の増加を目指す、3年間の“Go International: Stand out”キャンペーンを立ち上げた。

 現在海外に出ていく学生はほんの6.6%に過ぎない。2017年4月、UUKiは政府の目標である「海外に出て行く学生の割合を2020年までに現在の2倍以上の13%にする」という目標をサポートするための活動を開始した。

 海外での経験が無い学生に比べ、海外経験のある学生の方が成績が良く、就職率も高いという調査結果が出ている。この効果は特に社会的に不利な立場にある学生に顕著に現れている。彼らの卒業後の平均収入は、海外の経験が無い学生に比べ6.1%以上多い。特に黒人については、海外経験者の無就業率は海外経験の無い者に比べ41%少なくなっている。

 海外での経験を通して得られることが期待されるスキルが、現時点では学生に十分に備わっていない。2017年に英国産業連盟(CBI:Confederation of British IndustryとPearson(教育出版社)の共同調査によると、事業主の39%が大学卒業生は国際的な感覚を十分に身に付けていないと考えており、47%が外国語力が十分でないと考えていることが明らかになった。

 また、ブリティッシュアカデミーの調査によると、中小企業の10社に7社は、将来社長になる者は外国語が話せ、また海外経験があるべきである、と考えていることがわかった。

 米国では15%、オーストラリアでは19%、ドイツでは25%の学生が海外留学の経験があり、英国は非常に立ち遅れている。しかもこれらの国々は更に学生の流動性を高めることを目指している。例えばドイツは2020年までに学生の半分が海外での経験を積むことを目標としている。

 Go International: Stand outキャンペーンでは、以下の活動を通して国家戦略をサポートしていく。

  • 各大学長にキャンペーンへの参加を促し、海外に出て行く学生数を増やすための活動に取り組んでもらう。
  • 各大学が学生の流動性を高めることに役立つリソースを開発する。
  • アカデミックや同窓会なども含めた海外留学に関するネットワークを構築する。
  • 海外留学に関する調査を実施しその効果をデータ上で示す。
  • 政府や海外機関と共に学生の海外留学の推進を支援する。

 このキャンペーンは英国政府その他関係団体から公認されているもので、すでに54大学がキャンペーン参加の意思を示している。

http://www.universitiesuk.ac.uk/International/Pages/uuki-calls-for-students-to-Go-International-Stand-Out.aspx

 

(7)英国政府、AI、ロボティクスリサーチ、スマートエナジー分野の研究に£8,400万(約126億円)を投資

11月8日、気候変動・産業担当大臣Claire Perry氏は、我々が直面する環境問題改善に役立つロボティックスやAIプロジェクト推進のため、産業戦略チャレンジ基金(ISCF: Industrial Strategy Challenge Fund)に£6,800万(約102億円)を投資することを発表した。

 この投資により、核エネルギー生成の際に発生する物質や宇宙ごみ、深海採掘などに対応するための北海の凍結深度で活動できるロボットやAIの開発に取り組むことになる。

 £約4,500万(約67億円)がマンチェスター大学、バーミンガム大学、サリー大学、及びエジンバラのヘリオットワット大学をベースにした新しいリサーチハブ設置のために使われる。

 工学・物理化学研究会議(EPSRC: Engineering and Physical Sciences Research Council)によって運営される中核的研究機関(COE: Centres of Excellence)においては、宇宙での活動や深部採掘、核エネルギーや沖合い風力など危険の多い厳しい環境でも安全に働けるロボティクス技術の開発に当たる。

 政府からの出資と共に、4つのハブは商業界や国際パートナーから約5,200万ポンド(約78億円)の支援を受けることになっており、またサリー大学のハブは英国宇宙局からの共同出資を受ける。

 またドイツで行われた気候変動会議COP23に先んじて、大臣は2件のスマートエナジーイノベーションコンペのために£1,600万(約24億円)を投資することを発表した。これは、10月に政府が決定した低炭素社会に向けた戦略“Clean Growth Strategy”の中で掲げられたクリーンテクノロジーイノベーションのために£25億(約3750億円)を投資する、という目標の一部となっている。

 これらのコンペは、ピーク時間帯の電力供給網の需要を抑え、低炭素発電の需要を増やすことで、コストと炭素排出量を減らしていくための技術開発に焦点を充てる。また、スマートエナジーシステムが学校や小規模サービス産業におけるエネルギー消費量を削減するための手法の開発にも活用される予定である。

 これらの取り組みは、今年7月に政府により発表された「Smart Systems and Flexibility Plan」に基づいて行われるものである。

*1ポンドを150円にて換算

 

 https://www.gov.uk/government/news/funding-for-84-million-for-artificial-intelligence-and-robotics-research-and-smart-energy-innovation-announced

 

(8) 教育費利益が研究費の穴埋めに。留学生一人当たり£8,000貢献

 11月9日、高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)は新しい報告書”How much is too much? Cross-subsidies from teaching to research in British universities” (著:Vicky Olive)で大学が教育で得た利益を研究費に当てている実態を指摘し、財務大臣であるPhilip Hammond氏に研究・開発費の予算の増額を呼びかけた。

 

報告書で指摘している点:

  • 研究費の赤字は£33億(約5000億円) ― 研究費収入の37%
  • 学費収入からの黒字は£13億(約2000億円)(非公的資金の教育収入の28%)
  • 研究費の13%は教育ファンドの余剰金(およそ£7ごとに£1)
  • 英国にいる留学生は平均で£8,000(120万円)、英国の研究に貢献している。
  • もし研究ファンドの増額がなければ、英国の地方都市で多大な損害が出る。
  • 保守党が掲げるGDPの3%を研究開発費に当てるという目標を達成しようとするとさらに£248億必要。

報告書での3つの推奨内容:

  • 本年度の予算で研究費として£10億(1500億円)の増資。
  • 大学/慈善団体の連携のため余分な公的資金を別に蓄えておく。
  • 政府の研究開発費に関する新しいロードマップの作成

University of Oxfordで経済学を専攻する大学院生であり、報告書の著者であるVickey Olive 氏は“教育で得た余剰金を研究に当てることで英国の大学を世界クラスに押し上げているが、大学がこれまでにないほどの危機に迫られている。政府は学生の学費を凍結をしたが、学生達はお金の使途をはっきりするように要求している。また留学生数は常に脅威である。学生が講義やセミナーで恩恵を受けていると考えているのであれば、教育から出た利益を研究に当てることは道徳的には間違いではない。しかしどの規模でこのようなことが行なわれているか、余剰金の行方を調査する権利はあり、その結果その価値や継続性などを議論できる。

 このプロジェクトを始めたときは特に隠された意思などなかったが、最終的にもっと予算が必要ということを強く確信した。より多くの民間資金、より多くの私的資金、そして明確な戦略が必要ということである。

 高等教育政策研究所の理事長であるNick Hillman氏は”研究費の不足分の穴埋めを教育費で賄っている理由として

  • 公的、私的支援金、及び慈善団体からの資金は研究・開発費をすべてカバーしていない。
  • 教育費から研究費の穴埋めは現在のレベルでは決して持続的ではない。
  • 政府は研究・開発費をGDPの約2倍とすることを目標にしているが、投入額は現状維持が精一杯という額でしかない。

戦略としてOECDレベルの研究費の増額投資を数年続けた後にドイツレベルの投資をすることである。(これは2017年の保守党の公約にも入っていた) 

http://www.hepi.ac.uk/2017/11/09/new-report-shows-international-student-pays-8000-towards-filling-gaps-uk-rd-spending-calls-philip-hammond-invest-1-billion-budget/

*1ポンドを150円にて換算

 

(9)教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)に学生は何を求めているのか?

 11月13日、英国内20を超える学生組合コンソーシアムが実施した「TEFはどのような調査内容、形態、評価であるべきか」(Teaching Excellence Framework: The Student perspective) の調査結果を発表した。国内123機関、8,994名の学生を対象に行われた。結果概要は以下のとおり。

  1. 84%の学生が、政府が教育評価を行い教育の質の向上を促す取り組みをすることを強く支持している。
  2. 多くの学生が現在TEFに含まれていない教育や学習環境に関する要素についても評価が行われていると考えていた。(IT環境:86%、図書館:93%、教育教材:94%)
  3. 学生のフィードバックが調査に活用されることを望んでいる。(教授やチューター、講師に対するフィードバック結果の活用:59%、学年末のコース全体のフィードバック結果の活用56%) 全国学生調査(NSS: National Student Survey)がTEF3では比重が半分になったことにより、学生のフィードバックはTEFにおいては重要な要素ではなくなりつつある。
  4. 大学における教育において最も重要な要素は何かという問いに対しては、「教育や教授等の質」が一番重要である、と考えており、「卒業生の就職状況」については一番低い(7番目)要素であった。
  5. 大学が質の高い教育をしているかどうかの判断要素として、リソースへのアクセスのしやすさよりも、卒業後の俸給の高さを重視する者が3倍弱であった。
  6. 68%が「学生が十分に成功できない」場合に大学は責任を追うべきであると考えており、34%が「就職率が低い」場合に大学は責任を負うべきだと考えている。また、18%が「学生が中退した」場合に大学は責任を負うべきだと考えている。
  7. 大学を「金・銀・銅」でランク付けすることに反対する学生はほんの20%であったが、60%の学生が学費の上昇とランク付けをリンクさせることに反対している。
  8. 大学が「銅」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた学生は50%に上った。
  9. 対して大学が「金」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた学生は6%であった。
  • 人種的マイノリティグループに属する学生のうち11%が、大学が「金」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた。他方白人学生で同様に回答した者は5%であった。
  • 学科レベルで同様の評価がされた場合についても、「金」とランク付けされた場合、進学先として適切かどうか再考をする/志願しない、と答えた人種的マイノリティグループと白人学生の割合は、上記と同様の結果であった。

http://wonkhe.com/wp-content/uploads/2017/11/tef-pr-research-report.pdf

 

(10)予算2017発表を前に

 11月13日、ラッセルグループの会長であるAston Muscatelli卿は11月22日の秋期財政報告書の発表に先駆けて政府に対して研究資金の増額を要求する書簡を提出した。

 書簡の中でAston Muscatelli卿は財務大臣宛に、以下を要求している。

 

・高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Funding)の増額

・英国全土の大学と企業間の知識ベースの相互交換支援のためHEIFと同様な助成金

・新しいテクノロジーが市場への参入を図るための資金

 HEIFに対して投資された£1ごとに£9.70(1455円)の利益が出ているという分析結果が出ている。Muscatelli卿はHEIFに対して毎年£2億5000万(375億円)の増額を提案している。また研究投資の影響力として品 質 関連の”QR”の資金の保護の重要性を強調した。

*1ポンドを150円にて換算

 

http://russellgroup.ac.uk/news/budget-2017/

 

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