英国学術情報

ZOLD英国学術情報RSS

2012年2月21日 2012年度における高等教育助成金配分について

 1月25日、BIS1 はHEFCE2に対し、2012会計年度(4月~翌3月)における助成金の配分額と優先事項を定めたグラントレターを送付した3。HEFCEは、BISとの間で締結している“the Financial Memorandum”に記された条件に基づいて同省から予算を受け取り、それを各高等教育機関及び継続教育カレッジ(以下「大学等」とする。)へ配分しており、グラントレターは、BISがHEFCEへの助成金額を定め、政府の方針を伝えるために毎年送付される公式文書である。

 2012学事年度(8月~翌7月)は、新たな高等教育財政制度のもとで授業料ローンを国が負担することにより、大学等の収入が増えることとなっており、今回の助成金配分は、このような状況を反映したものとなっている。また、優先事項においては、HEFCEに対して、学生と公共の利益のために新たな制度へのスムーズな移行を求めるとともに、学生支援に予想外の支出を要したことで発生する財政負担に対応するため、BISとして実施する支出削減措置についても盛り込まれている。

 これに対し、2月1日、HEFCEは、2012学事年度の助成金配分に関するHEFCEとしての方針を発表した4 。発表においては、BISが示した会計年度(4月1日~3月31日)の配分額を、学事年度(8月1日~7月31日)に再計算した配分額が示されるとともに、優先事項への対処方針が述べられている。

 なお、HEFCEから各大学等への配分額については、3月22日に発表される見込みである。

 以下にグラントレターのポイントを示す。
①教育助成金
 ・前年度の暫定予算から変更なし
 ・SIVS科目5や多額の資金を要する芸術等の専門的施設に関する経費は削減の対象外
 ・高等教育への参加拡大のための資金提供を継続
②ソーシャル・モビリティ(階級移動能力)
 ・“National Scholarship Programme”6の導入と継続的なモニタリング
③学生の経験の充実
 ・リスクの度合いに基づく質保証システム7の採用
 ・学生のための情報提供サイトをリニューアルするとともに、大学等による主要情報パッケージの配布が確実に実施されるようHEFCEに監督を指示
④研究助成金
 ・前年度の暫定予算から変更なく、2014会計年度まで一定の配分額を保証8
 ・大学等と産業界との連携促進のための高等教育イノベーション基金9の継続
⑤大学院
 ・HEFCEによる大学院支援の継続を指示
⑥効率化
 ・大学等に対する税金コストシェア10の導入
⑦データ収集の負担の削減
⑧持続可能性(環境への配慮)
⑨学生定員
 ・今後の競争的追加定員枠「AAB枠」11の拡大を示唆(2013学事年度に関しては別途政策提案を行う予定)
 ・2011学事年度に定員を超過して学生を受け入れた大学等があったことで、財政が圧迫されていることから、定員を超過した分の罰金を大学等から徴収する等の措置を実施
 ・2012学事年度の定員を5,000人削減
 ・前年度(2011学事年度)に設けられた10,000人の追加定員枠を廃止
⑩戦略的計画の設定


【表】BISからHEFCEへの助成金配分額 

(単位:£百万) 


2011年度
2012年度

2013年度

(暫定)

教育助成金
4,645
3,815
2,883
研究助成金
1,549
1,587
1,573
BISから大学等への学生ローン立替
2,600
3,600
5,000
高等教育イノベーション基金
113
113
113
小計
8,907
9,115
9,569

(追加予算)

任意型マッチング基金12
63
0
0
Access to Learning Fund13
40
30
未定
National Scholarship Programme
0
50
100
小計
103
80
100

(資本形成予算)

教育資本形成資金
95
90
59
研究資本形成資金
204
175
101
小計
299
265
160

合計
9,309
9,460
9,829

 また、グラントレターに対するHEFCEの発表において特筆すべき点を以下に示す(番号は上記「グラントレターのポイント」に対応)。
①教育助成金
 ・教育経費別グループにおいて高額の部類に位置するグループA(医歯学系学部)及びグループB(物理・科学・工学・地学・技術系学部)のみに支給
 ・2013会計年度の教育助成金を1%(£3,000万相当)削減(2012学事年度と重複する2013年4月から7月までに影響)
⑤大学院
 ・教育経費別グループA、B、C14に属する大学院生について、一人あたり£1,100を追加支援
⑨学生定員
 ・2012学事年度の追加定員枠「core and margin枠」15については、2月末に最終的な人数を決定する予定
 ・2011学事年度において定員を超過して学生を受け入れた大学等に対し、超過学生一人につき£3,800の罰金を徴収


 なお、これらの動向に対し、Russell Group16が反応を示すとともに、メディアによる報道も行われている。


【Russell Groupの反応】
HEFCE grant letter

http://www.russellgroup.ac.uk/russell-group-latest-news/151-2012/5155-hefce-grant-letter-/


【関連報道】
・Times Higher Education
5,000 places - 'the first of many cuts'
http://www.timeshighereducation.co.uk/story.asp?sectioncode=26&storycode=418895&c=1
・BBC
Doubts over new private university expansion plan
http://www.bbc.co.uk/news/education-16700743
・The Times
※ ID登録をしなければオンラインで記事を閲覧できないため、記事の見出しのみを掲載 Universities face £830m funding cut and squeeze on student numbers

                                  (以上)

---------------------------------------------------------------

1 Department for Business Innovation and Skills:ビジネス・イノベーション・技能省

2 Higher Education Funding Council for England:イングランド高等教育財政会議 イングランドの大学等に基盤的経費(教育資金及び研究資金)の配分などを行う機関

3 http://www.bis.gov.uk/news/topstories/2012/Jan/University-funding-confirmed-for-2012-13

4 http://www.hefce.ac.uk/news/hefce/2012/funding.htm

5 “Strategically important and vulnerable subjects”:戦略的に重要分野及び財政的影響を受けやすい分野 SIVS科目には、STEM科目と呼ばれる自然科学、技術、工学、数学に加え、現代語学、計量社会学等が含まれる

6 年間所得が£25,000以下の世帯出身で、2012学事年度から大学等に入学する学生を対象とする新たな奨学金制度

7 各大学等のこれまでの評価実績によって外部監査の頻度に変化を与える制度であり、QAA(Quality Assurance Agency for Higher Education:英国高等教育質保証機構)による評価記録が良好である大学等に対しては、監査頻度が現行より少なくなる

8 英国では、3か年度を基準期間とする支出計画(Spending Review:包括的歳出見直し)に基づいて複数年度予算が編成されており、単年度の予算は、このSpending Reviewに基づいて編成される(最新のSpending Reviewは、2010年の政権交代のため1年遅れの策定となり、予算の期間も例外的に2011~2014年までの4年間となっている)

9 Higher Education Innovation Fund 高等教育機関が広く社会経済の利益のために実施する活動を支援する基金

10 企業や団体が一定の条件を満たせば、VAT(付加価値税)の支払いを控除されたり、複数の団体がグループでコスト節約を行うことを許可したりする制度

11 2012学事年度から導入される追加定員枠の一つであり、統一入学試験「Aレベル」において、A二つとB一つ以上という好成績を修めた生徒を大学等が競争的に受け入れることを認める制度12 Voluntary Matched Giving 大学等が外部からファンドレイジングしたプロジェクトに対し、政府が一定の割合で支援するマッチングファンド

13 生活に困難が生じた学生に対して財政的な支援を行うことを目的とするファンド

14 上述のグループAとBに加え、フィールドワークを伴う分野であるグループC(グループDはそれら以外の分野)

15 2012学事年度から導入される追加定員枠の一つであり、年間授業料を£7,500以下に設定し、かつ授業料に見合った価値や質について一定の基準を満たす大学等に対して、最大20,000人の学生を競争的に受け入れることを認める制度

16 英国の大規模研究型大学20校で構成されるグループで、政府などへの大学側の要望を伝える団体として1994年に設立

Page top