• UK-JSPS Alumni Association

13 Oct 2017 FY2018 JSPS London Call for the Short Term Pre/Post-doctoral Fellowship for Foreign Researchers (first call)

Applications to JSPS London

Fellowship Start Period: 1st May 2018 to 31st March 2019

Closing Date: Friday, 1st December 2017

Application Guidelines and Form

28 Sep 2017 JSPS Programme Information Event at Goldsmiths, University of London

introduction

Time and Date of Event: 13:00 - 14:00, Thursday 5th October, 2017

Venue: Room 110, Deptford Town Hall 

Agenda 

20 Sep 2017 JSPS Programme Information Event at the Japan Fair, University College Dublin

introduction

Time and Date of Event: 13:00 - 14:00, Wednesday 4th October, 2017

Venue: Red Room, UCD Student Centre, Belfield Campus

Link to complete Japan Fair Programme

13 Sep 2017 JSPS Programme Information Event at the University of Manchester

introduction

Time and Date of Event: 11:30 - 13:00, Monday 25th September, 2017

Venue: International Office 

08 Sep 2017 JSPS Programme Information Event at the University of York

introduction

Time and Date of Event: 09:00 - 13:45, Thursday 14th September, 2017

Venue: Room D/N/056 Derwent College 

2017年9月27日 2017年9月英国高等教育及び学術情報

英国学術情報 9月分

(1)大学における無条件合格者数の増加

  8月12日、Daily Telegraphによると、無条件で合格者を受け入れる英国の優秀大学が数が5年前に比べて倍増していると報告した。(高級紙Independentsによる報道)

 大学間で入学者獲得競争が激化する中で、より多くの学生を確保するためにこのような事態が生じているとされている。特に英国の優秀な大学で構成されているラッセルグループ加盟の大学が無条件合格者数を増やしていることを指摘している。

 統計によるとUniversity of Edinburgh における無条件合格者は2012/2013学事年度は125人だったが2016/2017学事年度は350人とほぼ3倍に、University of Birminghamでは 1,003人から2,471人へと倍増している。またKing’s College London , University of Warwick , University of Manchester でも同様の傾向が見られていると報道している。

  この傾向は2015年に施行された新しい助成金の規定により、イングランドにおいて学部定員が廃止された以降に顕著になっている。定員廃止を受け、大学は利益を出すために可能な限りの学生を受け入れようとしており、ビジネスライクだという非難を巻き起こしている。

 無条件合格数は2014年では12,100人であったところ、2015年には23,400人となり、2年前の定員廃止により着実にその数を伸ばしている。

 学生を取り込むために、入学資格を満たすSixth Formの成績を取得している学生に対し、もしこの大学を第一志望とするのであれば無条件にアップグレードする、という条件を出す大学も多くなっている、という傾向も見受けられる。 

 大学入試機関(UCAS:The Universities and Colleges Admissions Service)は報告書において、無条件合格者数が増加傾向にある原因のひとつとして、Aレベルに達する生徒数が2010年と2015年を比べると減少していることにあると警告している。

 ラッセルグループの報道官は「すべての申請は大学入学志願者の詳細な成績記録、及び入学者選考チームが、申請者が大学のプログラムでやっていけるかどうかを判断することによって決定されている。」と答えた。

 無条件合格者の増加に関わらず、学生数は減少している。最近の報告では大学進学を考えている若者の割合は年々減ってきており、学費など財政面が一番の原因とされている。

 ウェールズとイングランドの11歳から16歳の2,600人を対象に行われたサットントラストの調査によると、7人中1人(14%)は高等教育機関への進学を考えていないという。同じ質問で5年前の調査結果は11%であった。

 また最近の教育省(DfE: Department for Education)の統計によると、恵まれない学生を高等教育に参加させるプログラムに多額の資金を投入しているにもかかわらず、公立校と私立校出身者の大学進学者数の差がこれまでの最高を記録した。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/universities-allow-increasing-numbers-of-students-in-without-asking-for-any-grades-a7889426.html

【関係機関の反応】

・ラッセルグループ

 ラッセルグループの報道官は「ラッセルグループの大学の課程は知的挑戦に満ちたもので構成されている。入学担当スタッフが各学生の学習記録を分析し、当該大学の課程に十分に見合う能力を持つと判断した場合に学生にオファーをしている。いくつかの大学では例外的にごく少数の学生に対し無条件合格を出しているが、彼らは既にA levelの結果が出ているか、その他の高等資格を持つ学生である。無条件合格を出している場合、多くの大学では入学基準満たしている生徒だけに出している。」と語った。

http://russellgroup.ac.uk/news/university-unconditional-offers/

 

(2) アクセス協定2018/2019学次年度の概要発表

 8月23日、公正機会局(OFFA: Office for Fair Access) は2018/2019学事年度のアクセス協定における主な内容を発表した。

 最新のアクセス協定は、恵まれない環境にいる生徒の成績を向上させるプランや、生徒の可能性を引き出し、環境による障害に打ち勝つことを支援するために大学が学校と共に取り組むものとなっている。新プランは、新しい活動とすでに存在する活動の拡大及び再検討の組み合わせとなっている。その内容は:

  • 学校への資金的援助
  • フリースクールやテクニカルカレッジの創設
  • 学校のカリキュラム作成への参画
  • 情報/知識の共有
  • 学校運営、ガバナンスの支援
  • メンター、チュータープログラムなど長期的なアウトリーチ活動の実施
  • 教師や学校管理者を対象としたトレーニングの実施
  • 慈善活動組織など第三者機関とのパートナーシップの構築

 高等教育機関は学校の成績向上に重要な役割を果たすと認めた上で、OFFAは恵まれない環境にいる生徒の成績向上について学校と大学が連携することを、今年初めてアクセス協定に盛り込んだ。しかし、大学やカレッジはここ何年もの間、ボランティアで当該活動にコミットしてきている。この協定の実施状況については毎年モニタリングされる。

https://www.offa.org.uk/press-releases/access-agreements-2018-19/

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Jarvis 氏のコメント:

  大学が提供している支援は、恵まれない環境にいる生徒の記録的な大学進学率の上昇に貢献している。すべての大学は恵まれない環境にいる生徒の高等教育への参加機会の拡大のため努力し、また在学中の支援も行なっている。また、恵まれない環境にいる学生と他の学生層とのギャップを縮めるための更なる支援が大学には期待されている。社会的流動性を加速させるため、確固とした根拠に基づき、どのような支援が一番効果的なのかを見極めなければならない。大学はすでに様々な方法で学校と関与しており、参加拡大と生徒の可能性を最大限に引き出すためのこの活動を継続し、拡大していく。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/uuk-response-offa-annual-summary-institutions-access-agreements.aspx

・サットントラスト(教育を通して社会的流動性を改善するために設立された慈善団体:Sutton Trust)

同団体の創設者で会長であるPeter Lampi 卿のコメント:

 我々の調査によると大学進学者の割合が減少している。多くの学生が高等教育にかかる費用を心配しているためである。£57,000の負債と上昇する学生ローンの利子率などの問題がある中、恵まれない環境にある学生数を増やすためにはアクセス協定はさらに重要になってくる。大学がアクセス改善のために学校との連携や評価に時間や費用を投資していることは喜ばしいことである。我々はOFFAとともに活動基本方針が費用対効果に見合ったものであるかを見守り続ける。

https://www.suttontrust.com/newsarchive/sir-peter-lampl-comments-on-the-latest-offa-access-agreements/

 

(3) 第二次出国チェックプログラムの統計結果発表

 8月24日、内務省(Home office)は出国チェックプログラムの一環として英国の出入国の統計を発表した。

 移民法2014により導入された法により、航空、海運や国際鉄道産業などの各主体がその権限を持って統計調査が行なわれた。分析は出国チェックプログラムが開始された2015年4月以降出入国が認められた個人を対象にしている。

移民大臣のBrandon Lewis氏のコメント:

 内務省は英国国境を跨ぐより具体的で包括的な旅客情報を提供するために、2015年に出国チェックプログラムを導入した。この情報はすでに警察や警備会社などにとって、犯罪者やテロリストを追跡するための貴重な情報源となっている。

 報告書では、2016/2017学事年度中に期限が切れるビザを所持している1,340,000人の非EU圏からの入国者のうち、96.3%が期限以内に出国していることが報告されている。出国チェックは今後も長期的に統計を集計し、確固としたものにしていきたい。

https://www.gov.uk/government/news/home-office-publishes-second-report-on-statistics-collected-under-exit-checks-programme

 

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Jarvis 氏のコメント:

 留学生にとって有益な政府の調査を歓迎する。留学生がいかに英国経済や地域社会に良い影響を与えているかの証拠を今回の調査結果は示している。

 Oxford Economics の最近の調査によると、留学生は£250億以上を英国経済にもたらし、英国国内で20万件以上の職に就労している。また留学生は英国の大学のキャンパスを文化的、経済的に豊かにし英国人学生にも良い影響を与えている。多くの留学生が帰国後も個人的にもキャリア的にも我々と強い関係を築きあげ、英国にとって利益をもたらしている。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/uuk-response-government-commitment-study-international-students.aspx

 

・ラッセルグループ

同グループの理事代理Tim Bradshaw氏のコメント:

 留学生は英国に莫大な貢献をしている。大学が引き続き全世界から優秀な人材を誘致し雇用することが可能な移民法の制定が必要である。

 留学生が多様な学習環境の創出と莫大な経済効果を生み出していることに加えて、出国チェックデータにより、圧倒的な数の留学生がビザ規定に従っていることが確認された。

 目的に合った制度であることを証明するための第1歩は正確なデータである。この点において出国データを再度採用した内務省の決定を歓迎する。報告書は英国に滞在する留学生の価値を証明した重要な1歩である。我々は常々、留学生は大学だけでなく英国にとって価値があると考えている。英国移民システムの今後のあり方に関する調査を依頼されている移民諮問委員会(MAC: Migration Advisory Committee)に対し、今回の調査結果が前向きな影響を与えることを期待している。

http://russellgroup.ac.uk/news/student-immigration/

 

 (4)シンクタンク報告書:大学は企業同盟(カルテル)のようだ

 9月3日、BBCの報道によると、2020年の次期総選挙の公約作りのため創設された中道右派のシンクタンク、“UK2020”が大学に関する報告書を発表した。(”Time bomb: How the university cartel is failing Britain’s students”)

  この中で「大学はまるでカルテルのようであり、2年制学位コースを十分に提供していないと非難されている」と述べている。また「この短期学位コースは学生ローンの返済額を縮小することができる」と述べている。

 この意見は労働党の上院のLord Adnis やすでに2年制を実施している私立大学University of Buckingham の学長であるAnthony Seldon 卿にも支持されている。

 しかし公立大学を傘下に置く英国大学協会のスポークスマンは、そもそも2年制コースの採用は限定されてきた、と述べた。また、公的な調査により、高等教育機関間における競争は適切に行われてきていると報告されている、とも述べた。いくつかの大学ではすでに2年制コースを提供してきているが、現在の学費やローンのシステムのため学生からの需要が限定されている、とも述べている。

 この2年制学位号取得コースを増やす計画は今年2月に大学大臣であるJo Johnson氏から発表があった。

 今回の報告書UK2020は、実業家でLeave.EUの創設者であるRichard Tice 氏との共著であるが、2年制学位コースは学生の負債額を減らし、選択肢を広げ、住宅不足の解消の助けになる、と述べている。

 今年£9,250にまで学費が上昇したことにより、イングランドにおける「リアルな」大学の選択や学生間の競争がうまく機能せず、また多くの学生が負債や利子率に関して怒りを持っているが、これらを報告書では「時限爆弾を抱えている」と表現している。

 また企業同盟(カルテル)のごとくほとんどの大学が最大限の学費を設定し、のろのろとしか改革に取り組まず、民間の高等教育関係者の競争への参入を締め出している、と述べている。

 価格競争という点では大学は最も失敗した分野であり、長期的に学生を支援する資金調達法を探さなければならない、と報告書は指摘している。

 また2年制学位取得コースにすると、卒業生一人当たりで最大£20,000の節約ができると見積もっている。 

 保守党の議員でUK2020の議長であるOwen Paterson氏と労働党のAdnis卿は「異なる党の政治家がこのような国家的重要な要素を持つ問題で同意することは稀である。しかし学生や大学への資金提供の危機を解決したいという信念を持って団結している。」と述べた。

 ”Time bomb: How the university cartel is failing Britain’s students“:

http://www.uk2020.org.uk/timebomb/

http://www.bbc.co.uk/news/education-41125111

(5)THE 世界ランキング2018発表

 9月5日、Times Higher Education (THE)誌が,”World University Ranking 2018”を発表した。THEのランキング開始以来始めて2つの英国大学がトップを独占した。Oxford は昨年1位の座を保ち、Cambridgeは昨年4位から順位を上げて2位となった。

 Cambridge の健闘理由として、研究収益、研究の質の向上が見られ、一方で2位から転落してStanford ともに3位にランクを下げたCalifornia Institute of Technology (Caltech)は、博士号と学士号の比率が下がったこと、及び大学の収益がそれぞれ23%、24%下がったことなどが順位を落とした原因とみられる。OxfordとCambridgeはそれぞれ11%と24%の増収であった。

 Oxford 大学の学長であるLouise Richardson氏は2年連続首位を保ったことを喜びつつも、英国のEU離脱が今後、英国の大学の地位を脅かす恐れがあることも語った。Cambridge大学の研究助成金の4分の1がEU連盟から出資されている。Oxford大学 は5分の1である。

 今回のランキングは米国とオーストラリアの大学も将来的には安心できないことを示唆している。米国大学で200位以内に入った62大学中59大学は学術スタッフ一人当たりの研究収益が減少しており、トランプ政権下においては連邦政府の今後の研究収入の見込みも疑わしい。エリートグループとされる29大学のうち5分の2が順位を下げている。一方オーストラリアは比較的安定した結果を出しているが、政府が2.5%の助成金カット(A$28億/£17億)の計画を進めることになれば、その順位も下がる可能性がある。

 米国、オーストラリアだけでなくヨーロッパ諸国も加速するアジアの競争力に直面している。中国の北京大学は順位を2つ上げ、New York University とUniversity of Edinburghと同位の27位で、同じ中国の精華大学は5つ順位を上げ、オーストラリアのUniversity of Melbourne, 米国のGeorgia Institute of Technology,ドイツのLMU Munich ,スイスのEcole Polytehnique Federale de Lausanneなどの名門大学を抜いた。アジアでのトップの大学はシンガポールのNational University of Singaporeで昨年より2位順位を上げて22位であった。

the_world_university_rankings_2018.xlsxをダウンロード

japanese_universities_in_top_200.xlsxをダウンロード

countries_and_regions.xlsxをダウンロード

https://www.timeshighereducation.com/news/worlduniversity-rankings-2018-results-announced

【各機関の反応】

・Wonk HE (高等教育専門ウェブサイト)

 今回のランキングの主な点として:

  • Oxford とCambridgeが初めて世界ランキングの1,2位を維持、台頭した。
  • EU離脱が英国の大学の世界における地位を脅かしている。
  • 200位中、ヨーロッパの大学は半分が占めているが、アジアの大学の台頭に直面している。

 英国においてEUからの大学志願数が昨年と比べて5%減少しており、既にEU離脱による悪影響が現れてきている。

 また英国におけるスーパーエリートといわれる大学とその他の大学の格差が広がってきている。ゴールデントライアングルといわれるOxford, Cambridge とロンドンの大学は上位で安定した結果であった。しかし比較的下位の順位にいる大学は順位を下げている。Warwickは9位下がり91位, St Andrewは33位下がり143位で、英国で200以内に入っている大学の31大学中16大学が順位を下げた。

http://wonkhe.com/blogs/world-party-the-latest-the-world-university-rankings/

 

・BBC News

 THE Higher Education (THE)の編集ダイレクターであるPhil Baty氏は「今回、特に上位の大学の間ではすべての評価項目において極めて接戦であった。英国の高等教育システムは、£9,250の学費問題、留学生の継続的な誘致の努力、EU離脱後の研究費や研究者の流れの確保、学長の給与問題など、様々な政治的問題に直面している。  

 しかしひとつ言えることは、今回のランキングにおいて英国には多くの優秀な大学があり、世界でも最も強力な高等教育システムを持っているということである。

 また、データは、英国の大学がイノベーションにつながる革新的な新しい研究を一貫して生み出してきており、留学生や研究者を惹きつけ、世界クラスの教育環境を提供していることを示している。大学は巨大な国家財産である。」と述べた。

http://www.bbc.co.uk/news/education-41160914

 

(6)持続的な科学の成功(continued science success)のための明確な目標設定

 9月6日、欧州連合離脱担当省(Department for Exiting the Europe Union)は「将来のパートナーシップについての文書」において、英国とEUの将来にとって科学やイノベーションの連携が重要であると発表した。

 本政府文書では、英国が今後EUと協議するべき将来の連携のメカニズムや分野が提示されている。

 ガレリオ計画やコペルニクス計画など、商用衛星航法システムや地球観測衛星の汎欧州プログラムに既に参加しているEU以外の国との協議分野について述べられている。英国における宇宙事業は英国経済に£118億以上の効果をもたらしており、37,000人以上の雇用を生み出している。

 また原子力研究に関するプロジェクト、オックスフォードシャーに拠点を置くJET( Joint European Torus)や国際熱核融合実験炉(ITER:International Thermonuclear Experimental Reactor)についても計画が述べられている。EU加盟国ではない国々とも、例えばEUREKAネットワークや欧州原子核研究機構(CERN)等の国際機関を通じて引き続き提携していくとしている。

 欧州医薬品庁やホライズン2020など、7,300人を超える英国人が参加者し、連携により成功している革新的な医学に関するイニシアティブについても含まれている。

 

大学・科学大臣のJo Johnson 氏のコメント:

 英国とEUの素晴らしいパートナーシップを継続していくことはお互いにとって利益になる。EUとの将来の連携のあり方についてオープンな議論を持つための英国側の要望を本報告書で明確に示した。

 我々の産業戦略において、科学とイノベーションが核となっており、研究と開発に更に£47億の追加投資を行うことからわかるように、我々は常に新しい発見の最前線に位置し、今後もこの挑戦を欧州の仲間と共に続けていくことを望んでいる。

 英国は科学とイノベーションの分野におけるリーダーであり、今回の報告書で我々は引き続き国際的な英知のハブであり続けたいとして、研究コミュニティーが今後も我々の高いレベルのスキルにアクセス可能にすることで、科学とイノベーションセクターをサポートしていくことを約束している。また、専門資格の認定システムについても、今後も引き続き協働していきたいと考えている。

 https://www.gov.uk/government/news/uk-sets-clear-objectives-for-continued-science-success

【各機関の反応】

・王立協会

 同協会会長Venki Ramakrishnan氏のコメント:

 政府はEUの研究イノベーションの一部であり続けることで多くの利点があることを認識しており、離脱後もEUとの親密な関係を維持するべき理由を明確にしている。文書ではEU科学界との親密な関係維持のための強い願望が現れており、その姿勢を歓迎する。 

 しかしこれはまだ第1歩であり、EUとの親密な連携を維持するためには更に様々な条件を整えていく必要がある。世界の科学界における英国の地位を脅かす不確実要素を取り除いていくことが必要である。

 ホライズン2020終了までの財政的支援の継続や、既に英国内で働いている高い技術を持つEUの研究者のステイタスの保障等についても早急に検討する必要がある。また、次期EU研究プログラムにも参加することを約束すべきである、その計画の協議にも参加すべきである。優秀な人材をUKに迎えるための移民法の制定も必要である。

 科学は常に国境を越えるものであり、EU離脱がその妨げになってはならない。政府により示された今回の文書はお互いにとってWIN-WINの結果となるように提案されており、これはほかの分野の交渉においても同様に前向きなものになる可能性を示している。

https://royalsociety.org/news/2017/09/royal-society-response-to-science-and-innovation-position-paper/

・英国大学協会

 同協会会長Alistair Javis 氏のコメント:

 英国政府がEU離脱後もヨーロッパのパートナーと引き続き研究とイノベーションの分野で連携していく姿勢を示したことを歓迎する。これらを実現する最も良い方法は政府が次回のEU研究イノベーションプログラムに関与し影響力を持つことである。

 英国はEUの研究とイノベーションの分野において重要な役割を果たし、提携により多くの利益を生み、様々なネットワークのつながりを可能にしている。それにより研究者は世界の最高水準の専門家と共同で人生を一変させるような研究成果を生み出すことが可能となり、更には英国の経済、社会や個人に多くの利益をもたらすことになる。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-UK-government-position-on-Brexit-and-EU-research-innovation-collaboration.aspx

 

(7) 大学・科学担当大臣 Jo Johnsonn氏のスピーチ概要

 9月7日、学長100人以上の出席した英国大学協会(UUK: Universities UK)の年次大会で、大学・科学担当大臣 Jo Johnson氏が行ったスピーチの概要は以下のとおり。

  • 大学に進学する者以外の18歳以降の教育に関する新たな制度

 ・5年間で£28億、300万人分をアプレンタスシップ(インターンシップ賦課金制度)に出資する

 ・上記と関連して16歳以降のスキルプランとして新しくTレベル資格の導入を推進する

  • 次回のTEF3についての変更点

 ・学生満足度調査結果の評価への反映率を半分にする

 ・多くの割合を占めるパートタイム学生に対しての考慮も可能になる調査項目とする

 ・近年問題になっている成績の水増しに対応する新しい評価基準の検討

 ・学生の就職状況評価に、より信頼性の高いLEOデータ(教育省の実施する「長期的教育成果」調査)を採用  

  • 「成績の水増し問題」に対する大学側の主体的な対応への期待

  近年学生に対する成績のつけ方が大変甘くなっており、「First(優)」の学生が5年前に比べ40%も増えているという調査結果もある。本件は単位を授与する権限を持つ各大学が責任を持って対処すべきであり、大学間で単位の授与に関する共通の合意形成に取り組んでほしい。

  • 大学と学生との契約

 学生はどのような授業と評価を受け、それに対しどれだけの費用を支払う必要があるのか、明確な説明を受ける権利がある。また大学側はこれらの情報を学生に提供する義務があるがいまだに十分に対応できていない状況である。今後はこの問題について学生局が担当することとする。

  • 2年制学位課程の設置促進

 より多くの学生が学位を取得できるよう、経費の負担の軽減が見込める2年制学位課程の設置を促進する。

  • 学長の給与について

 学生局に対して以下の指示をした。

  • 年収£10万を超える職員名簿の公表。また年収£15万以上の者についてその明確な正当性を説明すること。
  • 指示に従わない大学機関に対して罰金を科すなどを含むペナルティを科すことの検討
  • 高等教育機関の職員の報酬に関する新しいガイダンスの策定
  • 高等教育機関のシニアスタッフの報酬に関するデータの蓄積と公開
  • 問題があるとされる機関に対し、その機関のガバナンスについて調査をする

  また、Committee of University chairsに対して機関間で共通認識として持つべき「報酬に関する取決め」を自主的に策定するようお願いしたい。

https://www.gov.uk/government/speeches/jo-johnson-speech-to-uuk-annual-conference

 

(8) 研究報告書:研究開発助成金は£430億の経済効果をもたらす

 9月7日、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)はハイテクイノベーションへの投資は雇用、売上、生産性の大幅な向上に貢献しており、経済的にも利益を上げているという新しい研究報告を発表した。

 過去13年間で研究開発助成金は投資額£80億の5倍以上の約£430億という経済効果をもたらし、約15,000の雇用を生み出した。

 この調査は、経済社会研究会議(ERC: Economic and Social Research Council)から資金提供されたEnterprise Research Centre(ERC)という、主に中小企業の成長や生産力に焦点を当てている研究センターが実施した。

 この調査研究は13年間に及び(2004―2016)、15,000件近くの企業に対する£80億の助成金についての調査研究結果である。

主な結果は:

  • 助成金を受けた企業は受けなかった企業と比べて雇用の面で短期的に6%、長期的(6年後)23%の伸びがあった。
  • 助成金を受けた全ての企業において、バイオテクノロジー、医療機器、工学、ライフサイエンス、ハイテク製造業など一般的に給与が高いとされる孝熟練労働者の雇用を約15万人分創出した。
  • 助成金を受けた企業は受けなかった企業と比べ、売上高において、短期的に6%、長期的に28%の伸びがあった。
  • 生産性はついて、短期的には影響はないが、長期的に見ると助成金を受けていない企業と比べて6%の伸びがあった。

 

https://www.ukri.org/news/the-taxpayer-tech-dividend-r-d-grants-provide-43bn-economic-boost-study-finds/

【メディアの反応】

・BBC News

 この研究を主導したERCのダイレクターWarwick Business SchoolのStephen Roper 教授のコメント:

 このような詳細に渡る分析が行なわれたのははじめてである。結果が示すように研究開発への出資は良い影響が出ていることが明白である。雇用、売上高においてもっとも成長した分野は製造業であった。生産性の低い企業、小規模企業がより多く助成金の恩恵を受けた。雇用の創出が増えた地域としてはロンドン、英国南東部や北西部が多く、売上高ではスコットランド、ヨークシャー、ロンドンでもっとも伸びた。

サービス業より製造業、大企業より小規模企業に大きな影響を与えたという結果がでた。将来的には小規模で可能性を持つ優秀な企業に焦点を当て、支援するべきである。

http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-41162534

 

(9) 政府は大学の学費は学部によって格差をつけるべき

 9月13日、英国政治関係サイトPolitics Home  のウェブサイトでPhillip Hammond 財務大臣は学部での学習課程と学費が連結すべきであると述べ、今度の学費に関して検討をしている旨を示唆した。

 大臣は、現在の学費のシステムは「 広範によく貢献して」おり、現行の制度の改革も「大変慎重に」考慮していると語った。他方科学、工学、数学の分野の学生の授業料を、芸術、人文学の分野の学生が間接的に負担していると言う批判も長い間あった。大臣は、大学運営補助金の削減、奨学金の廃止、学費の上昇、学生ローンの利率の上昇などの問題がある中で、学部間で授業料に格差をつける議論が高まっていることを認めた。

 12日の上院経済委員会でのスピーチで大臣は、「同じ額の負債を抱えた卒業生の間でも、より高所得を見込める学位と見込みづらい学位があると考えている。」と語った。

 11月の秋期財政報告を控え、Hammond財務大臣は保守党の議員に対し、世代間の格差、特に負債を負っている学生に対しどのように支援していくべきか、提案書の提出を求めたと報告されている。https://www.politicshome.com/news/uk/economy/news/88927/government-suggests-university-fees-could-be-linked-course-subject

 

2017年8月23日 2017年8月英国高等教育及び学術情報

(1) 高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Fund)が産業戦略支援のため£4,000万を追加投資

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for England)は、大学が産業界と連携して研究の商業化に取り組むことを後押しし政府の産業戦略の推進につなげるため、2017/2018学事年度より毎年追加として£4,000万を高等教育イノベーション基金(HEIF: Higher Education Innovation Fund)に支出することを発表した。

 HEIFは英国内の高等教育機関に対し投資をすることで、より広い世界とナレッジベースの交流を促進するとともに、投資£1当たり£9.70の利益を生むという彼らの経済、社会への影響力を強めることを目的としている。

 イングランド高等教育財政会議Research and Knowledge Exchange部長David Sweeney氏のコメント:

 大学は身近な大学-企業間のみだけでなく、国内外に対し経済的、社会的に有益な価値(benefit)を届ける存在である。2013年にAndrew Witty卿は「HEIFへの系統だった長期的な責任」を促した。この考え方は、後のDowling 報告書に「HEIFの重要な役割は産学連携を支援することである。」と述べられ反映されている。したがって我々はこの追加支援を歓迎する。大学が政府の産業政策の重要な担い手であることが認識され、英国が世界クラスの研究拠点であることから、知識の商業化という更なる挑戦を可能にしたのである。大学における知識交換の収益は2015/2016学事年度でも伸び続け、£35億に達している。この中には£1億4000万という30%の増加率のあった知的財産権の特許も含まれている。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114709,en.html

 

(2) 次期研究評価制度(REF)の審査議長の発表

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for Englandは、2021年研究評価制度(REF: Research Excellence Framework)の4人の審査議長を任命した。今年の終わりには他の審査員が選定される。

 4つの分野において指名された議長:

  • 医療、健康,生命科学 ― John Iredale 教授University of Bristol)
  • 物理科学、工学、数学 ― David Price 教授(University College London)
  • 社会科学 ― Jane Miller OBE 教授(University of Bath)
  • 芸術、人文 ― Dinah Birch CBE教授(University of Liverpool)

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114700,en.html

 

(3) £1億7,700万を9の大学と企業の研究プロジェクトに支援

 7月10日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding for Englandは、英国の大学が中心となり実施している9つの研究プロジェクトに対して英国パートナーシップ投資基金(UKRPIF: UK Research Investment Partnership Fund)から支援を行ったことを発表した。

 支援は、大学が産業界と連携して行っている世界最先端の研究に対して行われる。対象分野は電力工学、作物学、自動車関連及び航空デジタル技術。

 その他、初めて複数の高等教育機関の提携で実現した共同プロジェクトであるUK レールイノベーションネットワークの設立への支援も含まれている。

 UKRPIFの支援により、大学は産業界等との共同プロジェクトの実施が可能となり、英国の強みとしている研究分野の更なる進展、英国内の研究拠点の強化、更なる経済成長に寄与すること、が期待される。この基金による支援は政府の産業戦略の一環に位置づけられる。

 今回発表された9つのプロジェクトは第5期UKRPIF として2018/2019学事年度から2019/2020学事年度に支援される。これとは別に実施される総額£5,200万の2つの支援プロジェクトは今年初旬に発表されている。(Imperial College London£2,000万、London School of Economics£3,200万)

 9つのプロジェクトは、企業や慈善事業団体を通して更に民間から総額£3億6,000万以上を募ることに成功した。

9つのプロジェクト;

  1. 最新治療センター :King’s College London 支援額£10,164,789
  2. マンチェスター大学ビジネススクール:University of Manchester支援額£9,666,429
  3. デジタル航空研究技術センター:Cranfield University支援額£15,500,000
  4. 作物科学センター:University of Cambridge支援額£16,928,000
  5. 癌医薬開発センター新施設設立:Institute of Cancer Research 支援額£30,000,000
  6. 先進自動車推進システム研究所:University of Bath支援額£15,500,000
  7. 電力工学と機械工学研究イノベーションセンター:University of Nottingham支援額£9,365,000
  8. 脳神経科学:University College London支援額£28,850,000
  9. UK レールイノベーションネットワーク:University of Birmingham支援額£28,086,000

 2012年にUKRPIF設立して以来、HEFCEはこの基金を通して43プロジェクトに総額£6億8,000万を投資してきた。また、企業や慈善事業者、投資家から£16億5,000万の追加投資にも成功して来た。第6期は2021年に£2億2,000万が分配される予定。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114672,en.html

 

(4) 年間学費が£9000の上限越える見込み ―― ウェールズの大学授業料値上がり発表

 7月10日、ウェールズ政府は2018年秋、大学の学費がインフレ上昇率にあわせて最高£9,295にあがることを発表した。インフレ率によってこの先3年間毎年上昇する見込みである。

 英国の学費の最高額はすでに£9,250となっており、2018年秋は£9500を超える見込みである。

 ウェールズの教育大臣のKirsty Williams 氏は「値上がりはイングランドの政策によるものでウェールズ政府はイングランド内外の情勢から直接的な影響を受けている。

 我々の大学は国内的にも国際的にも競争力を持たなくてはならない。今後も公的な学費ローンの利用は可能であり、卒業後収入がある水準を達したときのみ返済開始のシステムを継続する。」と同氏は強調した。

 しかしウェールズ学生組合の代表であるEllen Jones氏は「 学費の値上げにはまったく賛成していない。高等教育への参加を更に困難にした。英国政府の公共支出の退行的なやり方の影響を受けて予算が圧迫されていることは理解できるが、最悪の状態になったのはウェールズ政府の対応のまずさによるものだ。学生にすべての負担をかけることが当然になっている事実が耐えられない。各セクターで予算の取り合いをするのではなく、医療予算を守るように全教育予算を守ることを大臣にお願いしたい。」と述べた。

 一方でウェールズ政府は新しい学生支援策を発表した。昨年発表されたダイアモンドレビューに基づき、2018/2019学事年度より全学生は資産調査に基づく給付調査を受ける前に、年間£1,000が支給されるというものである。

 3分の1のフルタイムの学生が最高で£8,100受給でき、年間収入が約£25,000の家庭の出身の場合、年間£7,000の奨学金が受けられると試算している。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-politics-40568065

 

【メディアの反応】

・ガーディアン

 ウェールズ教育大臣のKirsty Williams 氏は同紙に寄稿した。

 「イングランドではどのように学生を支援するかという論争がしばしば話題に上るが、ウェールズではその解決策を見つけた。Ian Diamond教授の「Diamond Review」における高等教育財政への提言を受け、全ての学生の生活費を負担するというものである。

 新しいシステムは2018/2019学事年度から英国の大学に進学する学生対象で、すべての学生は国民生活賃金(最低賃金)相当を支給されるというものである。例えばフルタイムの学生でロンドン市内の大学に通う場合、生活補助費として年間£11,250、それ以外の地域であれば£9,000支給される。イングランドではこのような制度は皆無であり、スコットランドでは多少行われているものの現在その制度の見直しが行なわれている。

 しかし今回のもっとも斬新な改革は、パートタイム学生や大学院生も同様な支援が受けられることである。ヨーロッパ中でもウェールズが初めて実施することになる。

 大学院生に対する支援制度は2019年から実施予定であるが、その前には更なる支援も実施される。イングランド国内どこでも利用可能なローンや、ウェールズの大学に対し、大学院生を対象にした支援をするための財政支出をするというものである。これにより学生一人あたり約£4,000が支給されるようになると見込んでいる。

 ウェールズはヨーロッパの中でも唯一このような大きな第一歩を前進させた。他の政府も共有する事を待っている。」

 https://www.theguardian.com/higher-education-network/2017/jul/14/higher-education-tuition-fees-maintenance-wales

 

(5) 英国の大学志願者4%減少:大学入試機関(UCAS発表

 7月12日、大学入試機関(UCAS: Universities &  College Admission Service )が6月30日締切の大学志願者数を発表した。英国大学への志願者総数は649,700人であった。昨年に比べて4%(約25,000人)減少した。

 英国出身者の志願者数は529,620人(昨年比:4%減少)、EUからの志願者数は49,250人(5%減)非EU圏からの志願者数は70,830人(2%増)であった。

 英国各地域別の出身者の数も減少している。イングランド437,860人(5%減)、スコットランド48,940人(1%減)、ウェールズ 22,530人 (5%減)、北アイルランド 20,290人 (4%減)。

 年齢別でも志願者数の変化がみられる。18歳の志願者は321,950人で昨年より1,510人増加している。イングランドの18歳の大学進学率は37.9% (2016年37.2%) と上昇しており、過去最高を記録した。ウェールズは32.9%から32.5%に減少した。19歳以上の志願者は315,200人で昨年より27,180人減少した。

 看護学コースは志願数が全体で53,010人であり、昨年より19%の減少した。

 UCASの分析研究部長Mark Corver氏は「主要な大学の出願期限は終了し、昨年より25,000人、4%の減少であった。2つの対照的な傾向があるようである。主な出願者数の減少はイングランド、ウェールズ、EUであり、非EU圏からの出願は2%増であった。英国内では18歳より上の年齢層の出願者数は減少したが、18歳は上昇し、人口比過去最高の出願割合37.9%を記録した。最終的に大学やカレッジにおける年齢構成比等がわかるのは様々なプロセス(Aレベルの結果等)を経て、入学先大学が決定する6週間後である。」と述べた。

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/ucas-30-june-deadline-uk-higher-education-shows-uk-applicants-down-4-and-eu-applicants-down-5

 

【各機関の反応】

・英国大学協会

 同協会理事長Julia Goodfellow

 志願者減少の原因はいくつか考えられる。昨年、志願者数は記録的であった。EU離脱や、看護士、助産師など医療従事者の学位制度の改定が大きな原因であろう。英国の18-19歳の人口が2010年から減少傾向であるが、この年齢層が英国大学の志願者の半分以上を占めている。しかもこのグループの大学志願率は過去最高であった。

 対処しなければならない問題がいくつかある。EUからの学生に対して英国は彼らを歓迎していることを示し、また、パートタイムや成人学生数の減少に対しても何らかの措置を講じなくてはならない。また、大学に進学することでかかるコストにも懸念がある。生活費や学生ローンの利率に関しても分析が必要である。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-latest-UCASJune-applicant-figures.aspx

 

・ラッセルグループ

 同グループの政策担当責任者Sarah Stevens氏

 EUからの志願者が5%減少したが、もし減少の原因がEU離脱であればこれは問題である。非EU圏からの志願者数がわずかながら増えたことは喜ばしいことである。留学生は社会的文化的な多様性をキャンパスにもたらし、これらは学生によい影響を与える。また、英国経済にも£258億の効果をもたらしている。

 イングランドの18歳の志願者数は記録的であった。これは大学の価値を見出している若者が増えていることを示している。

http://russellgroup.ac.uk/news/ucas-application-figures/

 

(6) 留学生のTEFに対する意識調査

 7月18日、教育関連企業のHobsonsは、最近発表されたTEFに対する留学生の意識調査を実施した。英国留学を考えている学生3,335人を対象に実施した調査結果は下記の通りである。

  • 1%の学生がTEFの存在を知っており、その中で64.4%は自分達に十分な説明がなされていないと答えている。
  • TEFの存在を知っていると答えた中の5%は大学と大学院の教育の質の評価であると誤って認識していた。
  • TEFが大学と大学院の教育の両方の質の評価と考えていたかどうかに関わらず、3%は大学の教育評価が良いところは大学院も同様に良いだろうと考えている。
  • TEFの存在を知っていた内の5%は銅と評価された大学は教育の質が"十分でない”と評価されたと間違って考えていた。
  • TEFを知っていた者のうち6%は、TEF評価は退学率、学生満足度の調査結果、卒業後の雇用率等の集計によるものと正しく理解していた。しかし55.3%はTEFの結果は教育省からの視察官による大学の講義の抜き打ち検査による結果と思っていた。
  • TEFを認識している、認識していないに関わらず、大学を選ぶ際の基準を聞いたところ、以下のような結果となった。
  • TEFについて正しく理解してもらえるよう、大学は志願者と十分なコミュニケーションをとる必要がある、ということを調査結果は示している。TEF評価は今後留学生が大学を選択する際に重要な役割を果たすことになるため、TEFの結果は何を意味しているのか、どのように活用すれば効果的な選択につながるのか、を理解させることが急務である。

https://www.hobsons.com/emea/resources/entry/blog-tef-ratings-or-university-rankings-new-Hobsons-research

 

(7) 学科レベルのTEFの試験的評価の実施

 7月20日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は政府が発表したTEF (Teaching Excellence Framework)の学科レベルのパイロット評価方法の詳細を歓迎した。この学科レベルの試みは2017年秋から2018年春まで実施予定。

 教育省の委託でTEFを実施しているHEFCEは、TEFに既に参加しているか否かに関わらず、幅広い高等教育関係機関のパイロット調査への参加を呼びかけている。2017年9月25日が参加申込締切で、応募した大学、カレッジの中からパイロット調査評価対象として30~40の機関が選ばれる。このパイロット調査は学科レベルのTEFプログラム開発のために行われるものなので、格付けの評価はなされない。

 パイロット版の結果を元に学科レベルのTEFは2019/2020学事年度に実施され、2020年春に発表される予定。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114768,en.html

 

(8) 学生と納税者のため大学価値の保障 ― 大学・科学担当大臣のスピーチ

 7月20日、大学・科学担当大臣Jo Johnson 氏は学生と納税者からこれまで以上に理解を得られるための高等教育制度計画を発表した。

 大学学長やその関係機関の関係者を前に行われたスピーチでは、すべての大学は学生が大学において何を学ぶことができるのか、について今まで以上に明確なcontractを提示するように強く求めた。また、急上昇している学長の給与の更なる値上げに終止符を打つように求めた。首相より上回る給与の場合、その正当性を公に対し説明するよう要求した。新しく設立される学生局(OfS: Office for Students)がこの問題に対応することになる。

 また、大臣は次の段階のTEFとして、学科レベルの教育評価のパイロット版を秋から実施することも発表した。次段階のTEFでは卒業生の進路分析も調査に加え、将来のキャリアを見通した大学の選択ができるようにする。

 Johnson 氏は一定の所得以上の者が学生ローンを返済をするという現在の大学助成金制度の持続を支持した。

https://www.gov.uk/government/news/securing-value-for-money-for-students-and-taxpayers

【各機関の反応】

・英国大学協会 (理事長:Julia Goodfellow氏)

 現行の学費と所得による学費ローンの返済システムは学生達が求めている世界クラスの高等教育を受けられることを可能にしている。

 現行のシステムは補助金によって学費を補っており比較的低収入の大学卒業生を保護している一方で、学生やその家族から問題視されている学生ローンの負債がどのように処理されていくのかを説明する必要がある。我々は現行のシステムが公平で誰にでも参加できるものでありたいと考えている。

 大学は運営資金が学生やその両親にとってアクセスしやすく有意義であることを公開し情報提供してきている。最近の統計調査では、学生はかなり高い率で大学を信頼しているが、一方でもっと個々に即したアドバイスや支援を希望している。

 学科レベルのTEFのパイロット調査は実効性があるか、学生にとって価値がある調査であるのかを見定めるいい機会である。

 すべての大学は在籍学生と契約を交わしている。また大学側は公平かつ透明であることを証明するために公正取引委員会(CMA: Competition and Markets Authority)の助言にも応えてきている。学生は大学内の担当部署とのみならず、外部の独立した仲裁機関や、最終的に裁判により問題を解決する道筋が保障されている。学生と大学との契約が守られることが重要であり、政府と学生局とともに真摯に取り組んでいきたい。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-response-to-Universities-Minister's-speech.aspx

・ラッセルグループ (Sarah Stevens : 政策担当部長) 

 学生は大学に対して質のよい教育を期待する権利があり、我々グループはその点

に常に真摯に取り組んでいる。ラッセルグループの各大学は、学生団体と連携協力して「大学が学生たちに求める役割・責任・期待、また学生が大学に対し求める役割・責任・期待」を明文化したcharterの作成に取り組んでいる。

 学生を保護するシステムは必要であるが、それは同時に大学にとってフェアなものでなければならない。大学は学生にチャレンジをするように仕向けており、わざとぬるま湯に浸かった状態から引き出すように仕向けている。誰も法の縛りにより大学の基準がむしばまれて弱体化していく大学の姿を見たくはない。現状で言えることは、大学に対する数々の新しい要求が予期せぬ結果に終わらぬように気をつけなければならない、ということである。 

http://russellgroup.ac.uk/news/jo-johnson-speech/

 

(9) 政府が移民諮問委員会(MAC)に調査を委託 

 7月27日、内務省(Home Office )は移民諮問委員会(MAC: Migration Advisory Committee)に対して、EU離脱が英国労働市場にどのような影響を及ぼすか、及び英国移民システムの今後のあり方に関する調査を依頼した。MACは独立した調査機関であり、政府に対し調査結果に基づく助言を行っている。

 政府は調査結果提出期限を2018年9月と定めた。今後数週間以内に、MACのウェブサイト上で資料(evidence)収集を開始する。政府、企業、労働組合、関係団体等と協力し、質の高い資料(evidence)に基づいた報告書の提出を目指す。

https://www.gov.uk/government/news/migration-advisory-committee-mac-commissioned-by-government

 

【各機関反応】

・ラッセルグループ政策担当部長Sarah Stevens氏  

 ラッセルグループの大学は教授・研究の分野で世界を牽引してきている。EUからの職員や学生は英国のサクセスストーリーに大きく貢献している。

数学や現代外国言語学など戦略的に重要な部門で働いている全スタッフ約3分の1がEUから来ており、他の分野においても同じような傾向がある。ラッセルグループの大学及び学生は、いろいろな意味でEU市民の働きにより支えられていると言える。我々はEU離脱後もEUの同僚とともに共に働き続けたい。

 この調査は必要であり、大学や個人の将来のためにも身分の保障を一刻も早くはっきりさせたい。内務省が「崖っぷち離脱 'cliff-edge' situation」にはしないと保障したことは喜ばしく、大学の職員雇用や世界の優秀な人材確保を維持できるような移民制度となることを期待している。

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-migration-review/

 

・英国大学協会会長代行Alistair Javis

 政府が大学や関係機関からEU移民に関する証拠や助言を求めることは良いことである。留学生や海外からの職員は英国の大学や地域経済に貢献している。我々は優秀な人材を受け入れる門戸は開かれていることを世界に向けて呼びかけることが重要である。現在英国大学で学術スタッフの17%(33,725人)はEU圏から来ており、EUからの留学生125,000人が大学で学んでいる。

 まさに今、海外から優秀な職員や留学生を受け入れる新しい移民法を制定をするべき時である。大学は数年先を計画しているため、政府が「崖っぷち状態」を避ける方法を検討していることは歓迎すべきことである。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-comment-Brexit-EU-migration-study.aspx

 

(10) EU市民の保護

 8月3日、ラッセルグループはEU離脱後の英国在住EU市民の将来の権利に対し、より明確なものを求める概略を発表した。概略は、政府から更なる情報が求められるとしている10項目の分野と、今後EU市民が定住可能となるために必要となる最も重要な原理原則について記されている。

英国政府がEU市民に対し明確な立場を示すべき重点10項目

  1. 学者や学生は研究、トレーニング、キャリア開発、研究提携などのため長期間国外に身をおく場合がある。それについて政府は下記の点で努力をするべきである。
  • 様々な規則(180日ルール等)が適用されないように、学業や研究により国外にいた期間が在住規定期間に影響を及ぼさないようにする。
  • "強い絆”という解釈を広げ、学生や学者が2年以上国外にいた場合でも、一度獲得できた定住権を剥奪されないようにする。
  1. 申請者に対して負担をかけない効率的なシステムの構築。政府の対処が間に合わない場合は、猶予期間を必要に応じて与える。
  2. 申請者の提出物を最低限にするため、既存データを利用するという政府の方針を歓迎。保持データから短期不在や定住可能者が確認できるのであれば、内務省側から自動的に連絡を取るべきである。
  3. 永住権を持っているものは自動的に定住権を与え、新たな申請を必要としないようにする。
  4. 申請費用を手頃な価格にするという方針は賛成。費用を最低限とし永住権申請費用の£65を上回らないようにすること。
  5. 政府はEU市民を雇用している様々機関と意見交換することで明確な雇用者ガイダンスをつくり、企業や大学を支援する必要がある。
  6. 期限(the cut-off date)はEU離脱日とする。これにより個人や組織などは今後の計画がはっきりと立てられる。
  7. 2017/2018学事年度、及び2018/2019学事年度から英国大学に入学するEU留学生に対して、卒業後も英国での学業の継続や就職を認め、5年以上滞在すれば定住権を認める権利を与える。
  8. EU市民の家族の権利に対して共に英国に滞在可能であることを早急に決定し、不透明性を最低限にする。英国で出生したEU市民の子が即時に定住権や英国市民権を得る事ができ、5年間の定住期間を経て初めて得られる定住権の決まりの対象外であることを明確にする。
  9. EU離脱前にEUまたは英国で獲得した専門資格などについて、離脱後も引き続き承認されるようにするべきである。

 ラッセルグループの政策部長Jessica Cole 氏は「同グループの全大学で約25,000人のEU市民を雇用しており、質の高い教育、最先端の研究が行なわれている。このような価値のある同僚を失いたくない。大学もEUからのスタッフも学生も、はっきりとした将来を見通したいと考えており、そのためにも政府がEU市民の立場を一刻も早く明らかにするべきである。」と述べている。

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-nationals/

概略内容:http://russellgroup.ac.uk/media/5547/rg-position-on-eu-nationals-july-2017.pdf

 

(11) 2017年学生満足度調査(NSS)結果発表  

 8月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は2017年全国学生満足度調査(NSS: National Student Survey)の結果を発表した。30万人以上の最終学年の学生が参加し、回答率は68%だった。そのうち84%が全体的な教育の質に満足していると答えた。

 学生の満足度は高く、85%の学生は教員の講義の質が良く、興味を引く内容であり、知的好奇心が刺激されたと答えている。

 今年のNSSは「学習コミュニティ」、「学習機会」、「学生からの意見」という新しい質問事項を設け、学生の授業参加に関する新しい分析が加わった。この改訂は英国の大学、カレッジ、学生間の協議によって行われた。

 今回の改訂部分に関する調査結果によると、84%がより深く概念を探求でき、学んだことを応用できる学習環境が与えられたと答えている。77%が学習コミュニティに属していると実感し、他の学生とともに学べる良い機会であったとしている。

 調査内容の変更により、2017年の結果をこれまでの結果と比べることは妥当ではないとしている。

 この調査結果は、学生のアカデミックな経験の向上のために各高等教育機関により利用される。今回新たに加えられた調査の結果は今度の課題として注目されることになるだろう。

 また調査結果はUnisatsのウェブサイトに掲載され、学生がどこの大学で何を学ぶか、を選択する際の重要な材料となる。

 2017年の調査は、530の大学やカレッジの情報がカバーされており、継続教育機関などの代替高等教育機関が多く参加したため昨年度より掲載数が増加した。

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,115244,en.html

【メディアの反応】

BBC News

  今回の調査結果は大半の英国学生は大学の教育の質に満足しているというものだった。

しかし、6月に発表された高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)の同様の調査結果では、35%の学生のみが大学の教育は学費に見合うものであったと答えており、これは5年前の結果では53%よりも更に落ち込んでいる。

 また調査実施に当たり、学費を巡り全国学生組合(NUS:The National Union of Students)が調査ボイコットを呼びかけたことが多少結果に影響を及ぼしているとみられる。昨年より参加人数が8,000人減少している。

 この調査結果は大学・科学担当大臣のJo Johnson氏が懸念している「大学が提供する教育の質が学費に見合うか」という問題に焦点を当てたことになった。

http://www.bbc.co.uk/news/education-40861126

・Times Higher Education

 NUSが呼びかけた教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)に対する抗議のためにCambridge, Manchester, Oxford, Sheffield 等の大学でNSS調査へのボイコットが行なわれたのため、それらの大学の結果が反映されなかった。

 12大学の調査結果が50%以下の回答率のため結果に含まれなかった。昨年は約300,000人の回答を得られたが、昨年の312,000人から減少しており、回答率も72%から68%と減少している。

 これは、TEFの評価基準項目にNSSの調査結果が反映されると発表されたため、25の学生組合が調査へのボイコットを呼びかけたことが原因とされている。TEFの評価結果に基づき、大学がインフレ率にあわせて学費を値上げすることを可能にすることに対する抗議である。しかし本案は政府により延期が決定されている。

 "TEFを潰せ!"をモットーに展開された全国学生満足度調査のボイコットは、調査結果を使用不可能にすることが目的であった。しかしTEFの議長であるChris Husbands氏は「全国学生満足度調査野結果はTEFで金銀銅のいずれかの評価になった大学に大きな影響は与えておらず、教育の質を見るための正確なものではない」とコメントしている。

 教育省は「学生のNSSのボイコットの悪影響はどの大学にもない」と表明している。が、他方でKings’s College London上級講師のCamille Kandiko Howson氏は「どのような影響が出るかもはっきりしていない。TEFが思ってもいなかった結果に終わった大学が抗議をする言い訳を与えるだけである。TEFを評価する側にとって良い結果が出たところと十分な調査結果が得られなかったところを区別するのが難しくなる。また、無回答の大学が広がっている中で、学生が真剣に回答せず、すべての質問項目に低い点にチェックして提出した場合などもあり、NSSをTEFなどの評価に使うことは困難になっていくのではないか。」と述べた。

 大学組合(UCU: Universities and College Union)の書記長であるSally Hunt氏は「TEFの廃止を求める。今年のTEFの結果発表後の反応を見ると、学術界の支持を得ているとは思えず、一方今年のNSSに対する支持もまた欠如しており、学生も同じ思いである。もし政府が本気で学生への教育の質の向上を考えているのであれば、これら欠陥のある評価制度を廃止するべきで、教育者に対する不安定な雇用契約の広がりの改善に対して取り組むべきである。」と述べた。

https://www.timeshighereducation.com/news/national-student-survey-2017-campuses-omitted-after-nus-boycott

2017年7月25日 2017年7月英国高等教育及び学術情報

(1) 統計:高等教育卒業生の就業と収入

 6月13日、教育省(DfE: Department of Education)は高等教育修了者の就業と収入に関する試験的統計として「長期的教育成果(LEO: Longitudinal education outcomes)」 を発表した。

 今回初めて発表された本調査結果は、下記のデータから構成されている。

  • 教育省提供による教育データ
  • 雇用年金局 (DWP :Department for Work and Pension)及び英国歳入税関庁 (HMRC: Her Majesty’s Revenue and Customs)提供による雇用、福祉手当、収入データ

 

  これらの試験的統計は2003/2004学事年度から2012/2013学事年度に渡るデータであり、下記について分析されている。

  • 卒業後3年、5年及び10年の就業率と収入
  • 個人の属性(性別、人種、年齢)
  • 出身大学
  • 専攻、資格取得状況

 

https://www.gov.uk/government/collections/statistics-higher-education-graduate-employment-and-earnings

 

【各機関の反応】

・英国大学協会(Nicola Dandridge会長):

 調査結果からは、大学や専攻にかかわらず、大学修了者は雇用に関して今でも有利であることが明らかになった。大学を卒業していない者よりも平均して確実に収入が高い。

 しかし収入額だけが高等教育の成功を測る物差しではない。芸術、創造産業、看護、公共部門専門職などを専門とする大学は社会や経済に大きく貢献しているにもかかわらず、平均より低い収入となっている。多くの学生は高い収入ではなく、生きがいのある職種を求めている。また、地理的な属性など、収入に影響する要因は他にもいくつか考えられる。

 特殊技能を持つ卒業生の需要は今後益々増していくだろう。英国の大学はこれまで以上に学生に対し、生涯を通じて必要となる技能を様々な分野で習得させ、また、雇用者側が求める大学院レベルの高い技術を習得させる努力をしていくことになる。

 批判的に物事を考え、分析し、証拠提示する能力はまさに「生涯を通じて人生を豊かにするもの」である。

 

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Comment-on-new-graduate-employment-and-earnings-statistics.aspx

 

・ラッセルグループ(事務局長代理Tim Bradshaw氏)

大学で学ぶことは将来の収入に関る以上の価値があるものであるが、多くの若者は大学進学の理由として将来の収入も考慮していることは事実である。

雇用者はラッセルグループ大学卒業者を高く評価しており、本調査結果をみても、雇用者がラッセルグループの卒業者に対し高い給与を支払うことを異としていない。

心理学から社会科学、法律、またコンピュータサイエンスから工学、物理化学まで統計データ上ではラッセルグループ卒業者は収入において群を抜いて優れている。ラッセルグループの11大学が法律の分野における収入トップを占めている。数学ではトップ8までを占めており、他の分野においても同様の傾向が見られる。

長期的教育成果調査は今回が初めての結果公表ではあるが、大学進学希望者にとって大学の選択がどれだけ将来の収入に影響を及ぼすかを知ることができるものとなっている。

 

http://russellgroup.ac.uk/news/leo-data/

 

(2) 研究の商業化に関するグッドプラクティスの収集

 6月15日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE;Higher Education Funding Council for England)の大学間知識交換構想ステアリンググループ(KE Framework Steering Group)は、Association for University Research and Industry Links (AURIL)及びPaxisUnico, Association Research Manager and Administrators (ARMA)に対して、研究の商業化に関するグッドプラクティスを提出するように求めた。対象事例は、大学と企業の間の様々な形の共同研究、パートナーシップ構築や契約関係に焦点を当てている。提出締め切りは2017年9月4日。

 知識交換構想プログラムは、大学が常に改革し続ける姿勢を支援することを目的としている。ステアリンググループ議長はKeele University の学長であるTrevor McMillan教授が務めている。2016年9月に発表された技術移転のグッドプラクティスに続くものとして事例を収集し、可能性をレビューする。すでに前回の調査で評価されたものは今回の対象ではない。

 

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114431,en.html

 

 

(3) 英国高等教育機関の卓越した教育に関する調査:TEF2 の結果発表

 6月22日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)2年目の結果を発表をした。

 調査結果は2018年秋入学予定の学生の進路選択の指標となり、また英国内での優れた教育、学習を奨励するものである。

 教育評価制度(TEF)は英国内の世界トップクラスの高等教育機関の実績を明確に示すために政府により導入されたもので、教授と学習の成果の分析結果により、既存の研究評価制度を補足するものである。

 合計295の大学、カレッジやその他教育機関が任意に参加し、参加機関は「金」「銀」「銅」「条件つき(データが不十分である)」の4つで評価され、金は59機関、銀は116機関、銅が56機関であった。条件つきを除くと金は全体の26%、銀は50%、銅は24%を占めた。

 評価者は学術会からを含む専門家、学生や雇用者の代表により構成される。国から提供されたデータ、各機関から提供されたデータを元に、教授の質、学習環境、学生の学習の成果の3分野について評価を行った。

 

http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2017/Name,114556,en.html

 

【各機関やメディアの反応】

・Times Higher Education

 世界的にも有名な英国高等教育機関であるThe London School of Economics (LSE)やUniversity of Southampton がTEFで銅の評価を受けた。また、研究主体の大学で構成され、Russell GroupのメンバーであるUniversity of Liverpoolは一番低いランキングであった。

  その他有名大学で銅と評価されたところはUniversity of London の傘下であるSOAS, Goldsmiths、又医学部として評価の高いSt. George であった。又ロンドンに位置する25大学のうち12大学が銅であった。

 

 Times Higher Educationの世界ランキング(2016―2017)では5位であったLondon School of Economics(LSE)は低い評価を受け、London Metropolitan University, University of East London と同位になったことでTEFの評価方法(卒業生の進路、学生満足度、卒業率、15ページにも及ぶ申告書など)について今後議論を起こすことになろう。

 最終的に137の高等教育機関のうちの3分の1が金の評価を受けた。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学やラッセルグループの6大学( Birmingham, Exeter, Leeds, Nottingham, Imperial College London , Newcastle)なども含まれている。ラッセルグループの21大学のうち48%である10大学(Leeds, Nottingham, Imperial College London and Newcastle University)は銀と評価された。これは、ノミネートした全ての大学の49%が銀の評価を受けたのとほぼ同じ割合である。

 しかし伝統的にランキングの常連でないいくつかの大学が金の評価を受けた。Bangor, Derby, Northampton, Coventry, Portsmouth等 1992年以降に設立された新大学がWarwick (銀), Southampton (銅)などの伝統大学を差し置いて金の評価であった。

 

https://www.timeshighereducation.com/news/tef-lse-southampton-and-liverpool-get-bronze 

 

・BBC News

 TEFは学生の大学選考の際の指標となることを目的として行われているが、銅と評価された多くの大学はこの評価方式は不平等で信用ならないと非難している。各機関がTEFに参加するかは任意であるが、銅以上を獲得した機関はインフレの上昇率に合わせ2018/2019学事年度の学費の値上げが可能となる。

 評価は実際に講義や教育内容を視察したデータは含まれておらず、施設、学生の満足度、退学率、就職先や卒業後の更なる学習の状況などを元に行われる。

 14の生涯教育機関で学位を発行している機関が優秀大学とともに金を獲得した。

 出願資格や学部など機関ごとの差異については、審査委員会により考慮された。審査委員は27人の学術関係者、学生、雇用者、専門家、など幅広い分野からのパネルで構成された。

 「金」とは英国内で最高の教育の質の大学で、「学生に最高の教育と学習の成果を提供している」と評価されるものである。「銀」は「英国高等教育が要求する厳格な標準以上を提供している」と評価されるもので、「銅」は「国内水準に達している」と評価されるものである。

 HEFCEは、学生が大学を選ぶ際に心がけている点に考慮した以下の点を評価基準にしていると述べている。

  • 高い質の教育を提供しているか
  • 協力的で刺激的な学習環境であるか
  • 自身の可能性を引き出すために必要な知識とスキルを備えているか
  • 将来の就職先もしくは更なる研究に繋がる機会が提供されているか

 HEFCEの会長であるMadeleine Atkins氏は「学生は高等教育を受けるために莫大な時間と資金を投資しており、質の高い教育環境とアウトカムを当然期待する。」と述べた。

 TEFの評価委員会の議長を務めたChris Husbands 教授は「TEFは、他の情報とともに明確でわかり易い評価として利用されることを望んでいる。」と語った。又全体評価は銅と低かったが、様々な要素の中で優秀と評価されるものがあったことを強調した。

 高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)のNick Hillman 理事長は「驚くような結果が出たが、TEFはその目的を果たしているようである。もしTEFが以前の評価をただ複製したに過ぎないのであれば失敗していたであろう。他のランキングとは異なるように設計されており、今まで無視されてきた優秀な機関を見出し、又改善が必要なところに目を向けるものである。」と述べた。しかしながら「教室で実際に行なわれていることを正確に反映しているわけではないことを学生は念頭においておくべきだ」と付け加え、と釘を指した。また、「大学進学希望者はこの結果を進路決定として利用する際に、あくまでも個々の学部ではなく大学全体の評価であること肝に銘じてほしい。」とも述べている。

また銅の評価を受けたUniversity of Southamptonの学長であるChristopher Snowdon卿は「TEFに対して信用を持つことが難しい。透明性の欠如、機関によって基準が異なり、公平公正な評価がされていないと懸念しているのは私だけではない。我々の学生満足度や教育満足度は、今回金や銀を獲得した大学より勝っている。」と述べ、評価に対して抗議する事を考えている。

 SOASのDeborah Johnson 氏は「TEFは我々の活動を正確に反映していない。」と懸念している。「明らかにロンドンという場所が影響しており、ロンドンにある大学は、3大学に1大学の割合で銅の評価を受けた一方、ロンドン以外の大学は8大学に1大学の割合で銅という傾向となっている。つまりこの評価基準はロンドンにある大学に当てはまらない。例えばロンドンの高い生活費が原因による大学中退などがある。」と語った。

 University of Liverpoolは声明で「銅という結果は非常に残念であるが、TEFは質を測る絶対的なものではない。広く知られている他の世界ランクでは我々は常に200位以内にランキングしている。」と述べた。とはいうものの、「我々はTEFで使われている内容に対して改善するため最善の努力をする」とも語った。

 

http://www.bbc.co.uk/news/education-40356423

 

・英国大学協会(Dame Julia Goodfellow 会長 :ケント大学学長)

  「英国の大学は世界的にも質の高い教育と学習機会が担保されていると広く認識されている。また、クオリティコードとして設定されているハイレベルなアカデミックスタンダードを満たすことを要求されている。

 新しいTEFの評価は公式に発表されている多くのデータに基づいて決定されており、学生にとって他の情報とともに選択の助けになるものである。

 今回のTEFは試験的であり自主参加によるものであった。データ使用は的確で、範囲が広く、かつ大学機関内の多様性も考慮されていることが重要である。今後この評価制度を学生の大学選択の際に役立つ情報に更に開発していくことが重要である。

 TEFの手法は一応完成したことになるが、2019年のレビューによりTEFは学生に役立っているか、その目的が果たされているかどうかの評価が下される。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-response-to-the-Teaching-Excellence-Framework-results.aspx#sthash.dV1MP4so.dpbs

 

・ラッセルグループ

 TEFは学生が大学や専攻を決定する際に手助けとなる新しい情報源として開発された。しかしここで3つほど知っておきたいことがある。

  1. 今回の調査はトライアルの段階のものであり、すでにレビューを行うことが発表されている。

 政府はすでにTEFの評価手法の向上のためにレビューを実施することを発表している。現時点では全国学生調査(NSS: National Student Survey)が評価の対象となっているが、この結果は大学が提供している教育の真の姿を反映しているのか疑問を持つ者もいる。

  1. TEFは大学の質を測る完璧なものではない。

 今回高評価を得た大学は現在の学生数を反映することで勝ち得たものである。どこかのポイントでトップのスコアだからといってTEFで高い評価を得られたわけではない。非常に低い退学率の大学よりも、卒業率が高い大学の方が優位に加算されるように評価手法が設計されている。肯定的な変化を認めることはよいことであり、喜ぶべきであるが、TEFの評価手法は決して期待しているほど各大学の本当の教育実態を表していないという点に注意してほしい。

  1. TEFは多くの情報の中の1つでしかない。

 今回はまだ試験的な実施であり、すべての大学が参加したわけではないので、ほかの情報も参考にすることを薦める。UCASや他の機関の情報で大学生活について提供しているものも参考にするとよい。

 

http://russellgroup.ac.uk/news/tef-3-things-you-need-to-know/

 

(4)産業戦略チャレンジ基金の募集の開始

 6月22日、英国研究会議(RCUK:Research Council UK)とイノベーションUKは、政府の

産業戦略チャレンジ基金への応募者募集を開始した。

2017年4月の予算案で発表された6つの分野は次のとおり:

  • “ファラディチャレンジ”という電気自動車のバッテリーの開発と製造

低炭素経済の移行機会の実践のため4年間に渡り£2億4600万の投資。資金は研究、イノベーション、スケールアップの3要素に分けられる。

  • 極限環境に活用するロボット、人口知能の開発

洋上発電、原子力発電、宇宙や深層鉱業等に4年間に渡り£9300万の投資。産業と公共サービスの生産力強化を目的とする。

  • 医療製造のための新たなテクノロジーの開発。

新薬や治療への患者の早期アクセスを可能にするため、4年間に渡り£1億9700万を投資し、英国のバイオ医療分野の輸出を強化。

  • 無人自動車革命最前線にいる英国の次世代の人口知能と自動運転システムの開発

産業界との共同研究と開発プロジェクトに£3800万を投資。

  • 次世代の低価格軽量合成材料の製造開発

宇宙航空、自動車やその他応用製造分野の研究と開発プログラムに£2600万の投資。

  • 衛星試験施設―新しい宇宙技術開発、運用実験に£9900万を投資

衛星の製造と観測機器を軌道に乗せるための開発

 産業戦略チャレンジ基金は英国が科学とイノベーション分野において世界の最高峰のひとつでありつづけるための政府戦略である。

 イノベーションUKとRCUKが基金の提供、全国での実施、また科学とイノベーション分野における最大の利益を確保するための役割を果たしている。

 

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/220617/

 

(5) ラッセルグループ大学がTEFの結果に抗議

 6月27日、高等教育専門誌のTimes Higher Education は22日に発表されたTEFの結果に不満なラッセルグループの大学、Liverpool, Durham, York, Southamptonが抗議をすることを発表した。

 Times Higher Educationの世界ランキング200位に入るLiverpool大学, Southampton大学は、最低の評価である銅と評価されたラッセルグループの3大学のうちの2つである。3つ目の大学であるLondon School of Economics (LSE)は、現在態度を明らかにしていない。

 DurhamとYorkはそれぞれ銀と評価されたが、いずれも卒業生の雇用、学生満足度やコース修了率、それに15ページに及ぶ説明文の扱いに対して抗議すると述べている。

 抗議の多くは15ページの説明文の扱い方と審査委員の間で評価基準が異なったのではないか、が焦点となっている。 

 Southampton の学長であるChristopher Snowdon卿は「評価基準は根本的に欠陥があり、結果は論理的でない」と抗議している。

 しかしTEFを担当している英国高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は「大学は"明らかな手続き上の瑕疵”についてのみ抗議ができ、TEFの根拠となる原理原則や審査委員の判断には抗議できない。」と述べている。

 オックスフォード大学高等教育政策研究センター(Oxford Centre for Higher Education Policy Studies)のFarrington教授は「TEFは自主参加であり、参加したものはTEFの評価に関する条件を受け入れているはずである。今頃になって評価過程に間違いがあったというのは大きな問題で、ならば最初に警鐘を鳴らすべきだった。技術的な欠陥があったとしても簡単に修正できることであるし、この結果を覆すということは考えられないことである」と述べた。

 

https://www.timeshighereducation.com/news/tef-russell-group-universities-appeal-results

 

(6)政府によるEU市民の権利に関する提案

 6月26日、内務省(Home Office)は英国におけるEU市民とEUにおける英国人の権利をいかに保護するかという提案書の詳細を発表した。

  May首相は英国におけるEU市民の顕著な貢献に鑑み、引き続き英国に居住するための権利を保障すると述べた。なお、本件は英国に在住するEU市民の権利の保護とEUに在住する英国人の権利の保護の互恵を求めるための提案であることを強調した。

 英国に滞在しているEU市民に対して「在留」というカテゴリーを設け、すでに5年以上英国に在留している場合、この権利は即座に適用される。また、英国に滞在しているが5年に達していないものは5年に達するまで滞在を認められ、以後「在留」の権利を得られる。「在留」の権利を得たEU市民は英国市民と同様の権利と保障を与えられる。すべての在留申請者は犯罪記録の調査を受ける。

 

https://www.gov.uk/government/news/uk-government-publishes-proposals-on-rights-of-eu-citizens

 

【関連記事】

 6月27日、世界4大会計事務所のひとつであるDeloitteは、英国政府やビジネス界が直面する問題を調査し、競争力、イノベーションや企業成長のための実務的なアドバイスを提供する初めてのレポート「Power Up-英国の職場」を発表した。

 本調査は2,000人の非英国人労働者(半分がUK国内在住、半分がUK国外在住)を対象とし、英国の職場環境と生活環境を理解するために実施された。

結果概要:

  • 英国は米国、オーストラリア、カナダを押さえ、優秀な高熟練労働者にとって最も人気のある国である。
  • 十分な雇用機会と多様性は英国の強みと見られる。
  • EU離脱は意識を変えた。― UK国外労働者の21%, UK国内の労働者の48%がUKに対して魅力が薄れたと感じている。
  • UK国内の外国人労働者の36%は5年以内に英国から離れることを考えている。
  • 高熟練のEU労働者に至っては47%が今後5年以内に英国から離れることを考えている。
  • 地域により結果が異なっている。例えばノーザンパワーハウスと呼ばれる北イングランドのマンチェスター、リバプール、ニューキャッセル地域は21%だが、ロンドンでは59%の労働者が英国から離れることを考えている。
  • 英国は人材不足の危機に直面する可能性がある。― 高熟練労働者が最初に移動する傾向があるので、短期的にその埋め合わせをする必要に迫られる可能性がある。
  • 特定の分野への非英国人労働者の集中とオートメーション化は関連がある。
  • EU労働者数が最も多い3つの分野はオートメーション化の可能性が高い。

提案事項:

 報告書は段階的な4つの推奨事項を提案している。

  • 高い才能をもつ者の個人的な選択を認める新しい移民法の制定。
  • 現在もしくは将来の労働者に対するスキルアップのための投資
  • デジタルの採用と、単純作業のオートメーション化のため技術開発への投資。
  • 地域レベルで対応できるよう、地域レベルでの仕事の創出。

 政策立案者、教育者、あらゆる規模の企業が団結し、英国における潜在的な問題点等を提唱し、コアスキルや生産性を高めることは重要である。

 

https://www2.deloitte.com/uk/en/pages/international-markets/articles/power-up.html

 

(7) 公正機会局によるアクセス協定2015/2016学事年度の結果発表

 6月29日、公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)が発表した報告書によると、大学やカレッジは恵まれない環境にいる若者に対して高等教育機会を広げている一方で、成人の大学生に対しては対応が遅れが見えることを発表した。

 本報告書(Outcomes of access agreement monitoring for 2015-16)は2015/2016学事年度で設定されたアクセス協定(access agreements)に対する各機関の取組状況や参加機会拡大のための投資や支援についてOFFAが行った調査結果である。

 同局の理事長であるLes Ebdon教授は報告書序文で「高等教育機関への期待値を段階的に高く掲げてきているが、各機関はそれに応える努力を続けている。各機関が各自で設定した新たな目標に対し80%以上が進展しており、大変喜ばしいことだ。

アクセス協定関連の投資は予想を大幅に上回るものであり、高等教育機関への入学の準備から卒業後までの学生生活のバランスが取れてきている。とは言うものの、我々の分析では成人やパートタイムの学生に対する改善が微々たるもの、もしくは全くなされておらず、今後の課題となる。多くの恵まれない環境の学生グループ、特に勉学、仕事、家庭のバランスをうまくとらなくてはならない成人学生にとって柔軟な選択肢が欠如しており、超えられない障壁となっている。成人学生が適切な支援を受けて大学に入学した場合、多くの場合成績がよく、良い就職先を得られている。このような可能性のある人材が通常の学生より2倍近く志半ばで学業を去らざるをえないことは、非常にもったいないことだ。」

 

 また報告書では、各高等教育機関が同学事年度のアクセス協定に£7億2520万の投資をしていることも発表している。内訳は以下のとおり。

  • £2億7770万を公正なアクセス活動のために投資

・£1億1950万:恵まれない環境にいる学生が高等教育参加をめざすための動機づけや成績の向上のための長期的支援活動

・£1億1710万:恵まれない環境の学生が学業継続できるような研修やボランティアプログラム実施のための支援

・£4100万:恵まれない環境の学生の就職の面接準備などを含む就職活動支援や修士課程進学のための専門家からの支援。

  £4億4750万を財政的な支援のために投資:

・£4億2880万:奨学金、諸経費免除や学生寮割引などの支援

・£1870万:困難基金(Hardship funds)として、最も経済的支援を必要とする学生に対する支援。

 

https://www.offa.org.uk/press-releases/offa-monitoring-outcomes-2015-16/

 

【各メディアの反応】

・BBC News

  恵まれない環境の家庭の学生の初年度の退学率の割合が過去5年間で最高値を示していると、OFFAの報告書が示している。データによると2014/2015学事年度では8.8%の学生が初年度で退学しており、前年の8.2%から増加している。対照的に同学事年度における富裕層の学生の退学率は5%以下であった。報告書は退学率において貧困層と富裕層の学生の差が広がってきていることを示している。貧困層の学生の高等教育参加の数が今までになく増加しているが、2年連続で卒業前に学校を去る学生の数が増え続けている。この事実は学生にとって非常に大きな意味がある。高等教育は良い就職先や社会的階層の流動性の扉を開くことを可能にしてくれるが、それは卒業した者だけにしか開かれていない。

 報告書ではまた、黒人学生は白人やアジア人に比べて1.5倍も退学率が多いことを示している。学位を得たものでも成績結果は大きな違いがある。白人学生の76%は「優秀」であったが、黒人学生は52%にとどまっている。

 また、OFFAはパートタイムの成人学生に対しての対応が十分でない現状を指摘した。成人学生の93%がパートタイム学生であるため、パートタイム学生の減少は成人学生の減少に負の影響を及ぼしている。パートタイムの入学者の数は7年連続で落ち続け2010/2011学事年度から58%も減少しており、緊急な対処が必要である。

 また報告書では2015/2016学事年度に、恵まれない環境の学生を広く高等教育に参加させることに取り組んだ機関の進捗状況も評価した。各機関は貧困層の学生を支援するため以前より多くの金額を投資している。2015/2016学事年度に高等教育機関が高等教育への幅広い参加のために投資した金額は£8億8350万であった。(2014/2015学事年度:£8億4210万、2013/2014学事年度:£8億260万)

http://www.bbc.co.uk/news/education-40429263

 

・Guardian

  OFFAの理事長であるLes Ebdon教授はオックスブリッジはもっと貧困層の学生の高等教育参加に努力をするべきだと語った。この2大学は不利な立場にある志願者の潜在的な能力を見出すことに失敗している。入学者選抜の際の成績に頼り、志願者の背景データの系統的な活用ができていないことを批判した。

 Oxford の広報担当者はEbdon教授の発言に対して「幅広く秩序だったデータにより、恵まれない環境にいる学生の可能性を見出してきている。支援プログラムとして年にサマースクールに£400万、財政的支援として年間£800万の投資を行なっている。」と反論し、「2016年は学部生の31.5%は恵まれない環境にある学生であった。2017年の入学者に至っては恵まれない環境にある学生の割合は、イギリスの大学全体の平均よりも高い割合となっている。」と述べた。

 Cambridgeの広報担当者も「入学者の決定は学術的能力でのみ決定している。我々は高い学術レベルを保ちながらも入学者の多様化を目指している。恵まれない環境の学生の大学への入学の障壁は高校での成績の低さである。恵まれない環境にある学生の選抜に当たっては、総合的に将来の可能性のある者を選んでいる」と異議を唱えた。

 

https://www.theguardian.com/education/2017/jun/29/oxford-cambridge-improve-access-disadvantaged-students

 

(8) UKイノベーション・リサーチの概要発表

 

 7月4日、英国研究会議(RCUK: Research Council UK)は、UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation)の最高顧問Mark Walport 卿が組織の構想、目標、次段階の開発に関して概要を発表したこと伝えた。 

 UKRIは2018年4月に設立される予定で、現在のRCUK 、イノベーションUK及び新たな組織リサーチUKから成る。世界でもトップの研究イノベーションの機関になることを目指すとしている。

 研究及びイノベーションの関係者を前にWalport 卿は、英国の現在の研究・イノベーション体系の長所を強調するとともに、英国において生じている社会、テクノロジー、研究やビジネスにおいて既存の価値基準を打ち砕くような変化に対するアプローチや戦略について詳細を述べた。

 Mark Walport 卿は「我々は大変強力な資金調達組織を形成しようとしている。しかし単に個別をあわせただけでは不十分である。創造性やイノベーションが積極的に取り入れられ、重要な提案が人為的な分断の犠牲にならないよう、大胆さ、熱意、機敏性を促進し評価していく必要がある。」と述べた。

 また、「UKRIの成功は、人類の英知の最先端を開拓し、経済に影響を与え、新たな雇用を生み出すことで、強く健康で回復力のある社会になることにどれだけ貢献できるかにかかっている。」と語った。

 

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/1704071/

 

(9)優秀な研究者の英国誘致のためRutherford 基金の設立

 7月4日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS: Department of Business, Energy & Industrial Strategy)は、大学・科学担当大臣であるJo Johnson 氏が高いスキルを持つ研究者誘致のために政府がRutherford 基金*を開設し、£1億の投資をする事を発表した。

 Rutherford 基金は開発途上国や新興研究国といわれるインド、中国、ブラジル、メキシコの若手研究者~シニア研究者に対し奨学金を支給し、英国を世界トップレベルの科学研究国として維持することに貢献してもらうことを目的としている。

 Jo Johnson氏は設立に当たり以下のようにコメントしている。

「研究とイノベーションは政府の産業戦略の目玉である。2016年秋期財政報告書において、政府は公共の研究開発に対して£47億という大幅な投資増加を発表した。首相は科学者やイノベーター、テクノロジー投資家に対し、英国が最も優れ魅力的な国であるよう、明確に指示した。 我々はEU離脱を控えているが、いつでも世界に向けて門戸を開いており、英国をイノベーションと発見のための世界の頭脳が集結する国にするため努力をしていく。」

  研究とイノベーションは政府の産業戦略のメインとなるものである。2016年秋の予算案では、公共の研究と開発のための予算を大幅に増加させ、合計£47億支出するとした。2020-21年までに毎年£20億を追加で支出することになる。これは、1979年以来の政府支出のいずれの項目よりも高い増加率(約20%)となっている。

 2017年、BEISの大臣であるGreg Clark氏は産業戦略チャレンジ基金を成立し、今後4年間に渡って£10億の投資を発表した。春の予算案では高い技術を持つ研究者の継続的な育成のため4年間にかけて£2億5000万投資することも発表した。

 基金は新組織UKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research Innovation) が2018年に設立されるまでは、イノベーションUKと英国研究会議(RCUK: Research Council UK)が管理する予定である。UKRIは最高責任者に指名されたMark Walport卿の指導の下で産業戦略を通して英国の競争力を強化する役割を担う。

* Rutherford 基金 - University of Manchester とUniversity of Cambridgeで教鞭をとり,原子核物理学の父と呼ばれ、ノーベル賞科学賞受賞のアーネストラザフォード卿にちなんでいる。24歳で出身国のニュージーランドからの英国に移民した。

 

https://www.gov.uk/government/news/100-million-rutherford-fund-to-attract-best-researchers-to-the-uk

 

(10)学生の負債は£50,000以上に上昇 - 英国財政研究所発表

  7月5日、BBCは英国のシンクタンクである財政研究所(IFS : Institution for Fiscal Studies)の実施した学生の財務状況報告で、学生が学生ローンを借りた場合の借金は、卒業時に利息6.1%も含めて平均£50,800に上るということ発表した。

 利息は入学直後から発生し、卒業時には利子だけで平均£5,800になっている。この利子は“高利”であり、他のローンと比べてもかなり高いと分析している。

 報告書は、学費が£9,000に値上げされた2012年と学費が£3000であった2006年とを比較している。 学生ローン返済開始の収入基準も£21,000に上昇したため、卒業生で収入が低い者のほうが以前より恵まれている。返済開始収入基準は2012年より凍結されており、以前のローン返済制度に比べ、現在の方がすべての収入レベルにおいて状況が悪化し

ている。

 恵まれない環境にある学生は生活支援をより必要としているが、現在は返済不要の奨学金ではなくローンで支援を受けるため、卒業時には高額の負債を抱えることになる。

 利子の上昇及び学費が年間£9,250に値上げされたことにより、卒業生の負債額が増加し、高所得者は利子だけでも£40,000を支払うことになるであろう。報告書の著者Mr. Belfieldは、「現在のマーケットと比較しても、学生ローンの6.1%という利率は非常に高い。」と述べている。

 しかし卒業後30年間返済がなければ、債務は免責される。報告書では、50歳代でも返済し続けている者がいる一方で、4分の3がまったく返済をしていないという現状があるとしている。

 また政府は2012年以前の学生ローンがすでに売却開始されているように、学生ローンを個人投資家に売却することを望んでいる。

 現在のシステムで恩恵を受けているのは大学と政府の財政であると報告書では述べている。大学は政府からの財政支援がなくなることを考慮して、学費を£9,000に値上げして以来、学生一人当たりに対する助成金を25%上昇させた。奨学金から学生ローンに切り替え、ローン返済基準金額を凍結したことで、政府は財政的負担を減らした。

 卒業生のうちの3分の1を占める低所得者は、返済基準開始収入が£21,000になった2012年に比べ、30%も多額の借金を返済している。学生に負担が行くようになってから政府は長期的に£30億の負債を減らしたことになる。

 総選挙での労働党の想定外の躍進は、毎年若者の間で話題となる学費廃止を選挙公約に取り入れたことである。

 報告書では学費を廃止した場合の費用は年間£110億であると分析した。しかし「高額借金、高利子、低返済率」という状況を続けていた場合、卒業生と公共財政の両方に問題となると警告している。また最近の傾向として、大学独自の資金調達の増加、政府の高等教育に対する出資の減少の一方で卒業生、特に高所得の卒業生に対する負担の大幅な増加が特徴として挙げられている。

 

http://www.bbc.co.uk/news/education-40493658 

 

(11) 新組織学生局の最高責任者の発表

 7月5日、教育省(DfE: Department for Education )の大臣であるJustin Greening は学生局の最高責任者にNicola Dandridge 氏を指名した。

 Dandridge 氏は公職任命コミッショナー局*の監督によってオープンで、透明性のある採用手続きを経て選ばれた。

  学生局(OfS: Office for Students)は2017年の高等教育、研究法に基づいて設置される新組織である。高等教育部門の監視機関であり、学生への利益を第一に活動する。学生の高等教育への参加や雇用に対して革新的は方法で取り組むことが期待されている。

 イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)と公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)に代わるものとして2018年4月から本格的に活動を開始する。

 Dandridge 氏は英国大学協会(UUK: Universities UK)のchief  executiveとしてこれまでの8年間、様々な成功を収めた。

 

*公職任命コミッショナー局(the office of The Commissioner for Public Appointments):

大臣が特殊法人などの公的機関の代表者や役員を任命する際、任命が公正に行われるように監督することを職務としている機関。 

https://www.gov.uk/government/news/chief-executive-of-new-office-for-students-announced

 

 

2017年6月21日 2017年6月英国高等教育及び学術情報

(1)バーミンガム大学がドバイ・アラブ首長国連邦にキャンパスを開校予定  

  5月24日、BBCによると、University of Birminghamはアラブ首長国連邦のドバイにキャンパスを開校することを発表した。同大学、学長のDavid Eastwood卿は、ドバイキャンパスは同大学の“グローバルな任務”を果たすであろう、と述べた。  

  アラブ首長国連邦の新しいキャンパスはこの秋に開校するが、本格的な大学、大学院の授業は2018年秋から行なわれる予定である。  

  University of Birminghamのキャンパスは10年前にキャンパス用に建設されたドバイ・インターナショナル・アカデミー・シティに開校予定で、そこではすでに9カ国から26大学が存在しており、25000人の学生が学んでいる。  

  同キャンパスの学生はドバイを離れることなく、授業を英語で学びUniversity of Birminghamの学位を取得可能となる。ドバイではすでに英国から他にExeter, Bradford, London Business School, Heriot –Wattの各大学がキャンパスを開校しており、他にオーストラリア、米国、アイルランド、インド、ロシアからの大学もあり、ドバイからあまり離れていないアブダビにはフランスのSorbonne, 米国のNew York Universityがあり、カタールには英国のUCL、最近開校したAberdeenと米国のCarnegie Mellon Universityがある。  

  大規模なオンラインオープンコース”Moocs”の出現で留学生は、地元のキャンパスに通うよりもオンラインで授業が受ける方を選ぶのではないか言われていた。しかし大学はそのブランドを持って海外への拡大を続けている。  

  米国、State University of New York の調査によると、現在、全世界で240以上の海外キャンパスが存在している。現在、新たに20キャンパスが開校予定であるが、これまですべてが成功しているわけでなく、すでに40キャンパスが閉鎖されている。米国、英国、フランスが海外キャンパスの半分以上の割合を占めている。  

  ホスト国としては、特に中国、ペルシア湾岸諸国、マレーシアやシンガポールなどが最も収益性があり拡大している市場とされ、これらの国に海外キャンパスが集中している。  海外キャンパスは欧米の大学にとっては市場拡大を可能にし、学生にとっては海外留学にかかる高額な経費やビザ問題を気にせずに、欧米の一流大学からの学位を取得することができる。英国の大学にとっては、イギリス国内での学生獲得の熾烈な競争と資金的な不確実性に直面しており、海外キャンパスは新たな授業料獲得源となる。  

  Nottingham, Liverpool, Southampton, Newcastle, Bolton, Middlesex, Reading 等の大学もすでに海外にキャンパスがある。  

  このような国際化はヨーロッパ内での競争も激化させてきており、留学生獲得のため英語で教えるコースはヨーロッパでも増えている。フランスの大学は英国を含む留学生に対して、英語で教えるコースに力を注いでいる。  

  英語圏の国々では留学生市場の傾向は変動している。米国や英国は常に留学生獲得においてトップであったが、今月カナダの大学は留学生の出願数が”前例にない”ほどの上昇だと発表している。カナダの健闘ぶりは米国とヨーロッパの”孤立主義”が台頭してきていいることが原因とされている。

http://www.bbc.co.uk/news/business-40013077  

(2) 英国・オーストラリア大学学長が協力拡大の会議  

  5月26日、英国大学協会(UUK: Universities UK)は、25日に英国とオーストラリアの大学の協力拡大に関してハイレベルな関係者による会談を行ったことを発表した。UUKが主催し、9つの英国大学の学長、英国政府高官、英国におけるオーストラリア高等弁務官Alexander Downer氏、オーストラリア大学協会(Universities Australia)の代表者及びUUK、スコットランド大学協会(Universities Scotland)とその代表者が出席したUUKはオーストラリア大学協会と政策に関する交流と共同プロジェクトにおいて数年前から密接な関係を築いており、以前も大学学長で構成された諮問グループの討議等を開催している。

 会合では大学に関連する現在の様々な社会・経済情勢を前提に、近い将来、英国とオーストラリア間で結ばれる見通しの貿易協定や、英国のEU離脱に先駆けた両国間の交流の再評価及び再活性化など、建設的でターゲットを絞った議論が行われた。  

 両国関係の学術、及び優秀な研究者、大学研究交流、相互のデータやインフラへのアクセス、研究者への特別なビザの設定などでいかに両国の関係を深めるか、又これまでない新しい段階の交流事業として両国間の新しい研究助成金の創設の可能性も考察した。   King’s College London の学長であるEd Byrne氏は“英国とオーストラリアの研究者が連携し、難題に取り組んだときの研究は質が高く、インパクトも大きい。それは明確な目的がない研究(Blue Skies Research)であっても産業のための応用ソリューションにおいてでも同様である。このようなパートナーシップは将来の確固たる連携を築くための基盤となる。”と語った。  

  英国におけるオーストラリア高等弁務官Alexander Downer氏は”我々は古くからの友人であり、英国のEU離脱の過程において両国間の関係強化を望む。高等教育機関がそれを先導し、特に学術研究において両国間の更なる連携協力を計画していることを心強く感じた。“と述べている。  

  オーストラリアのUniversity of WollongongのPaul Wellings学長は“英国のEUとの関係が変化するときに、オーストラリアには、英国との二国間関係を高め、また英国を含む多国間の連携に参加するユニークな機会がある。オーストラリアの教育・研究機関が今後、英国との研究ネットワークを拡大できるように、オーストラリア政府の役割は重要である。”と述べた。

http://www.universitiesuk.ac.uk/International/Pages/british-australian-university-leaders-meet-discuss-expanded-cooperation.aspx

(3) ラッセルグループは研究と高等教育をEU離脱の最重要課題にするように懇願  

  5月31日、ラッセルグループは、同グループ大学の学長、首脳達がEU関係者との建設的な会談において、研究、高等教育がEU離脱交渉の際に最優先事項であることを強調した、と発表した。  

  同グループの大学学長や幹部で構成された代表団は、欧州議会議員と欧州委員会及び欧州理事会における離脱交渉チーム高官との会談を行った。  

  会談後University College London の学長であるMichael Arthur 氏は、次のように語った。“ブリュッセルのEU高官は英国の高等教育の優秀さを認めており、過去40年間で築いた関係を評価している。誰もEU離脱交渉の困難さを理解していない。昨日のように善意を反映した会談であれば、交渉を前向きに進めることができる。今回の会談は、英国、EU双方の参加者、また各国選出の欧州議会議員の参加も得て、大変建設的であった。又会談中に明らかにしたことは、離脱交渉において勝者というものはなく、離脱交渉が英国とEUの大学間の世界レベルの研究交流を困難にさせている、ということだ。我々は引き続きヨーロッパと友人であり続け、親密な関係を築いていきたい。まず手始めに我々ラッセルグループの大学に所属しているEUからの学生、職員86000人の権利をはっきりさせることが必要である。”

http://russellgroup.ac.uk/news/eu-brexit-delegation/

(4) EU離脱後に英国独自の国際研究助成金機関が必要?  

  5月30日、英国の高等教育専門雑誌Times Higher Educationによると、第一線にいる研究者が、英国はEU離脱後にEUからの研究費が絶たれることなれば、全世界の研究者に門戸が開かれている英国独自の国際研究助成機関の設置が必要だと語った。  

  欧州研究会議の科学委員会のメンバーであるDame Janet Thorntonは“英国の研究者が引き続き世界の競争の舞台で活躍するには、欧州研究会議のプログラムと似た、研究者の好奇心に基づく研究を推進するプロジェクトが必要である。”と述べた。  

  現在の欧州委員会の研究プログラムであるホライズン2020は2014年から2020年の間に€800億(£692億)が投資されることになっている。その中で欧州研究会議は€131億の予算を短期的な応用研究ではなく、目標が限定されないBlue sky researchに対して、学術的卓越性のみに基づいて助成している。  

  Dame Janet Thorntonは“欧州研究会議の研究費を獲得することは、ヨーロッパの他の研究者と競争している、という名誉の証であり、欧州研究会議のプログラムに参画できないということは英国の学術研究の弱体化につながると思う。”と述べた。  

  Dame Janet Thorntonが提案するシステムは、EUには加盟していないが拠出金を負担することで準メンバーとして欧州研究会議の研究プログラムに参加可能というシステムと同じように,各国が英国に基盤を置く国際研究助成機関の予算に貢献するとともに、助成金にも申請できる、というものである。  

  Dame Janet Thorntonはさらに次のように述べている。“欧州研究会議はすべての応用研究よりも優れた最先端研究を推進するスキームを作り上げた。研究者が我々のところに来て、"これこそが私たちがほしかったものだ"と言っている。今は、このように大成功した欧州研究会議がある。英国の研究者もこのような例を作るべきだと思う。”

https://www.timeshighereducation.com/news/post-brexit-uk-may-need-launch-global-funding-council

(5) QS世界ランキング2018年発表  

  6月8日、Quacquarelli Symonds (QS)社はQS University Ranking 2018を発表した。 評価指標は世界的な高等教育機関の主要な活動を包含する6つの項目からなる。

  1. (学術界の)研究者による評判(40%)
  2. 雇用者による評判(10%)
  3. 学生一人当たりの教員数(20%)
  4. 教員一人当たりの被引用論文数(20%)
  5. 外国人教員比率(5%)
  6. 留学生比率(5%)  

  第14回目の本ランキングでは84カ国から950大学の順位を示している。6年連続でMassachusetts Institute of Technology (MIT)が首位をキープし、米国の3大学が僅差でそれに続いている。10位内の顔ぶれは昨年と変化がない一方で、中国の6大学が100位以内に躍進し、政府の投資や学生の流動性に対処したロシアの大学はその努力が実った結果となっている。  

  ケンブリッジ、オックスフォード、UCL、インペリアルは10位以内に留まっているが、2年連続で英国の大学は苦戦を強いられている。EU離脱や2017年の総選挙の影響で英国の大学の海外との連携がさらに困難になるかはこれから明らかになるだろう。また、フランス、ドイツやその他ヨーロッパ諸国での政治的な変化が今後高等教育界に様々な変化をもたらすだろう。  

https://www.topuniversities.com/university-rankings-articles/world-university-rankings/out-now-qs-world-university-rankings-2018

【QS World University Ranking ®2018】

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メディアの反応

・ガーディアン紙  

  ランキングされた76の英国大学のうち51大学は順位を下げた。昨年より400位以内、200位以内、100位以内の大学が減少した。まだEUにいるためEU離脱が原因とはできない。もっとも評価が下がったのは教員一人当たりの被引用論分数の指標である。76大学中57大学において昨年より下がっている。単純にこの結果は英国の大学の研究機関としての競争力低下を意味している。  

  競争力低下はこの数年の実質的な研究資金の停滞が原因と考えられる。このランキングで上位に位置する大学は十分な公的/私的の助成を受けているが、例えば英国の公的研究助成金は2010/2011学事年度のレベルに戻っていない。また、英国の大学拡大に伴う補助的な大学教員の増加も影響している。補助的な大学教員は、シニア教員の教育の負担を軽減しているが、研究への関心が低いため、教員総数増加に応じて被引用論分数が増加していない。  

  他の心配の種は英国大学における国際化である。QSのデータでは世界の高等教育界はどんどん国際化を推進しており、留学生の比率は増加の傾向にある。しかし英国の76大学はその傾向から外れている。56の英国大学は毎年留学生比率が減少しており、英国の平均は昨年より低い。今年初めに大学入試機関(UCAS)が発表したEUからの願書は7%も減少したという結果もこの事実を裏付けている。  

  しかしこれは英国に限ったことではなく、米国でも留学生比率において157大学中、107大学が減少している。これは最近の政権交代の影響の可能性もある。  

  国際化というのはいろいろな意味で高等教育の質に影響が出る。第一の影響は財政で、公的資金援助が減少している英/米国の大学では、留学生の割り増し授業料で競争力を維持することが可能である。  

  第二に研究の質への影響である。1981年において英国の論文引用指標は90%が国内の論文のものであったが、その後、国内論文の割合は減少し半分となった。現在の主な英国の論文引用指標は国際的な共著論文のもので、増え続けている。  

  国際化の良い面は国際関係を育み、国としてのソフトパワーを向上し、英国高等教育の名声を高めることである。島国根性のままでは、海外からの教員と留学生は減っていくだろう。もし英国政府が断固として人の移動の自由を認めないのであれば、過去のスイスと同様にホライズン2020のような資金援助プログラムにアクセスできなくなる恐れがある。つまり国際化/移動の自由がなくなった場合、被引用論文数や研究者の評判といった指標に、もっと致命的な打撃があるであろう。政治的姿勢に関わらず、英国高等教育の脅威であるEU離脱をうまく切り抜けることが、将来の成功を考える上で、英国大学の優先課題でなくてはならない。

https://www.theguardian.com/higher-education-network/2017/jun/07/top-200-universities-in-the-world-2016-the-uks-rise-and-fall 

(6)大学の「世界のトップ1%」広告を取り下げ  

  BBCの6月8日の報道によると、The University of Reading は世界の“トップ1%”に位置する、と載せた広告に対して苦情があり、広告規制局からの指導によりこの広告を取り下げた。   

  苦情はThe University of Readingが世界のトップ1%に位置するという広告の数字はまったく実証できるものではなく、誤解を招く可能性があるというものであった。  

  広告規制局は大学側がその内容を取り下げることで“非公式に解決”したとし、本格的な調査を取りやめた。  

  大学ランキングは学生獲得、特に留学生に対して影響力を増している。学科別、大学別など様々な大学ランキングが存在し、この結果は各大学の国際的な位置づけの証拠としてしばしば使われることがある。  

  University of Southampton のウェブサイトでは”世界の大学の中のトップ1%“、University of Liverpool、Queen's University Belfastも同様に自大学を紹介している。  

  これに対してThe University of Readingの広報担当者は次のように述べた。” 広告規制局は、個別の大学に対する苦情を受けて指摘するのではなく、「トップ1%」と主張する英国の全ての大学を調査する必要がある。The University of Reading はTimes Higher Education やQSの世界ランキングで200位以内にランキングしている。このランキングから、他の多くの英国の大学と同じように、The University of Readingが世界の20000大学の中でトップ1%にあると判断してきた。しかし、世界の全大学を網羅するランキングが存在しない以上、我々が世界トップ1%に位置することは証明できない、という広告規制局の指摘を受け入れる。“

http://www.bbc.co.uk/news/education-40187452

(7) 戦いの後-総選挙結果と高等教育界への影響  

  6月9日、高等教育専門ウェブサイトのWonkheは前日6月8日に行なわれた英国総選挙結果の高等教育界への影響と「大学町選挙区」の結果について分析を発表した。  

  与党、保守党は過半数に達することができず、TEF2(教育評価制度試行第2回)の結果発表、LEOデータ(大学卒業生の卒業後の年数と収入に関するデータ)発表、学生局長官人事の発表など、今後の高等教育界にも影響する可能性がある。  

  間違いなく、保守党に打撃を与えたのは多くの大学のある選挙区の若者、特に学生の票であった。出口調査では18―34歳の63%が労働党に投票したという結果がでており、又それ以前の兆候として過去の選挙よりこの年代層の投票率が高いといわれていた。労働党の公約の一つである授業料廃止は同党の成功の鍵であったといわれている。  

  大学キャンパスでは投票所に有権者の長い行列ができた。ガーディアン紙によるとUniversity of East Anglia が位置する選挙区の投票所ではもっとも長いと思われる行列ができ、University of Oxford やUniversity of Kentの選挙区でも同様な長蛇の列があったと報告されている。  

  では高等教育関係の選挙結果はどうなったのか。  

  元教育省の公務員で高等教育のロビーストとして有名なMatt Rodda氏は学生の多いReading East選挙区で労働党候補として予想外の当選を果たした。  

  他に学生選挙区といわれる、Cardiff- Central , Bristol West, Manchester Central, Newcastle-upon-Tyne East, Norwich South, Nottingham Southでも労働党が勝利した。自由民主党が議席を守ってきたLeeds North Westも労働党の勝利であった。   Bathは驚くことに保守党から自由民主党の議席となった。又自由民主党はOxford West and Abingdonでも保守党から議席を奪った。  

  Cambridgeでは労働党が13000票の差をつけて勝利を収めた。  

  Aberdeen Northはスコットランド国民党が獲得。(学生が少ないAberdeen Southでは保守党が獲得した。)  

  最も多くの学生を抱える選挙区Sheffield Central は労働党が圧勝した。Sheffield Hallamは2010年連立政権時に自由民主党の党首で2010-2015まで副首相であったNick Clegg氏が落選、同選挙区は労働党が確保した。 

  University of Kent が位置するCanterburyは予想以上の学生票により100年ぶりに労働党が勝利した。  

  教育大臣のJustine Greening氏 はたった1500票の差で辛うじて勝利を収めた。なお、大学大臣のJo Johnson氏はOrpingtonで圧勝した。

http://wonkhe.com/blogs/the-morning-after-conservatives-fall-short-of-an-overall-majority/

2017年英国総選挙結果

議席総数:650 (過半数議席数:326)

主要な獲得議席数:(改選前議席数)

  • 保守党(Conservative Party): 318 (331)
  • 労働党(Labour Party):262(232)
  • 自由民主党(Liberal Democrats Party):12 (8)
  • スコットランド国民党(Scotland National Party):35 (56)
  • 民主統一党 (Democratic Unionist Party):10 (8)

http://www.bbc.co.uk/news/election/2017/results

(8)TEF2の結果発表延期  

  6月9日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)は各大学学長に TEF2 (Teaching Excellence Framework Year Two)の結果発表延期を書簡で通知した。  

  予定では6月12日に各大学に結果報告、14日に公表することになっていた。  

  TEF2に参加した機関にはすでに通知されている通り、総選挙の結果を受けて、現在はまだ本格的な新内閣が形成されていないため、選挙期間中と同様に公式な発表は避けるよう、内閣府から通達があった。これを受けて、HEFCEはTEF2の結果発表を延期するよう教育省から通知された。  

  発表日は改めて報告する予定である。

http://www.hefce.ac.uk/media/HEFCE,2014/Content/Pubs/2017/CL,182017/CL2017_18.pdf

(9) Jo Johnson氏大学・科学担当大臣に再任、新内閣閣僚発表  

  6月12日、高等教育専門雑誌Times Higher Education によると、総選挙後の新内閣でJo Johnson氏が大学・科学担当大臣に再任された。以前と同様に教育省およびビジネス・エネルギー・産業戦略省の閣外大臣である。  

  また、教育大臣にはJustine Greening 氏、ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣にはGreg Clark氏が再任され、高等教育、科学政策に関わる大臣達には総選挙後も変更がなかった。  

  総選挙前の予想ではJohnson氏は留学生数を移民の純目標数に含めることに関して首相と対立していたため大学・科学大臣への再任はないと思われていた。また、Greening教育大臣の役職も変わると予想されていた。  

  しかし総選挙で保守党が過半数に達することができず、メイ首相が当初考えていた大きな内閣再編が出来なかったと見られる。  

  Johnson氏はEU残留を問う国民投票ではEUへの残留を支持し、総選挙直前に高等教育法を制立させ、イングランドの高等教育業界をより民間の大学に開放する、Johnson氏の言う”古典的な規制市場”を目指している。  

  当面の優先課題は、イングランドの大学の学生満足度、持続率や卒業後の就業率を測る教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)の結果発表を監督することである。この結果発表は6月14日に予定されていたが、総選挙後の不透明な状況のために発表が延期された。 

https://www.timeshighereducation.com/news/jo-johnson-reappointed-uk-universities-and-science-minister

大臣の詳細:

ministers_details_from_jsps_portal_site_26jul2016.docxをダウンロード

2017年5月22日 2017年5月英国高等教育及び学術情報

(1) 政府は2018/2019学事年度もEU連盟国からの留学生に引き続き財政支援

 4月21日、政府は、英国の大学に籍を置くEU加盟国からの学部生、大学院生等の留学生に対して、引き続き2018/2019学事年度も財政支援すると発表した。2018/2019学事年度入学者は、英国のEU離脱後も、学位獲得までは学生ローンや奨学金の援助を受けられる。

 EUからの留学生に対する学費は、英国出身の学生と同額のままで、これは非EUからの留学生よりも割安である。また、EUからの留学生は2018/2019学事年度も英国研究会議(Research Councils)の博士号奨学金に申請可能で、奨学金は在籍期間中、継続する。

https://www.gov.uk/government/news/government-confirms-funding-for-eu-students-for-2018-to-2019

 関係機関の反応

・英国大学協会(UUK: Universities UK)

 英国大学協会の副会長のAlistair Jarvis氏は以下のように語った。

”2018/2019学事年度に英国の大学に進学希望のEUからの学生にとって事態を明確にすることができたので、我々はこの発表を歓迎している。すでに入学希望者からこのような問い合わせが多くあり、我々は政府に対して早急の対応を要請していた。 

 政府がEUからの留学生の価値を確認し、学部生から博士課程まで財政的な支援を保証したことは喜ばしいことだ。

 今回の発表が意味するところは、EUからの留学生は2018年の秋開始の英国の大学のコースに経費的な心配をせずに申請でき、今までどおりに政府からの財政支援を受けることが可能となり、英国がEU離脱後も、大学在学中の学費は英国出身の学生と同額のままである。今後は、EU各国から英国大学へ入学を希望する者にこの発表を伝えていくことが重要である。英国は世界中の優秀な留学生にとって魅力的であり続けるべきである。 

 今後の課題として、留学生の英国に対する多大な社会的、経済的貢献を歓迎する政府のメッセージと合わせて、すべての留学生が英国を留学先として選択することを促すようなEU離脱後の新しい移民政策が公表されることを期待している。”

 

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/response-funding-confirmation-eu-students-2018-19.aspx

 

(2) リサーチ・イングランド の会長にDavid Sweeney氏を任命

 4月21日、科学大臣のJo Johnson氏はリサーチ・イングランドの会長にDavid Sweeney氏を任命した。国会で審議中の高等教育研究法案では、UKリサーチ・イノベーション(UKRI)の一機関として、リサーチ・イングランドの設立を予定しており、リサーチ・イングランドは現在イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education funding Council for England)が担当しているイングランドの研究知識交換に関する機能を引き継ぐ。UKRIへの移行期間中、Sweeney氏は現職のHEFCEの研究・知識交換部門の部長も継続し、又平行して新組織成立に向けて準備チームの一員としても業務を遂行する。その後2018年4月にはUKRIの創設とともにリサーチ・イングランドの初代の会長に就任する予定である。

 リサーチ・イングランドは(英国全体ではなく)イングランドの大学に対する研究、知識交換の活動のファンディングを担当し、英国の高等教育に対するファンド機関、大学機関と連携し研究評価制度(REF)を実施する。またイングランドにおける高等教育研究基盤の持続性と、9億ポンドの英国研究パートナーシップ投資基金の監督を担当する。

https://www.gov.uk/government/news/david-sweeney-appointed-executive-chair-designate-of-research-england

 

(3) 英国大学の保護:職員確保、移民法と研究に関する問題

 4月25日、下院教育委員会はEU離脱に際して、英国政府がEUからの大学職員に対して英国内での権利を保証し、高等教育のニーズに沿う新しい移民制度を制定することが必要であるという報告書 (Exiting the EU: challenges and opportunities for higher education) を発表した。

・EU域内からの市民に将来にわたる在留の権利を

 英国に現在在住しているEU市民のEU離脱後の在留権がどうなるかは、未だに明らかにされていない。委員会の報告書ではEU域内からの大学職員にとってのこの不確実性を直ちに改善するように求めている。又決定が遅れた場合でも、2017年末までに一方的に在留権の保証をすることで、この問題について政府による早期解決を要請している。

・留学生を移民数の純目標数に含めないように

 報告書は、EUのみならず、全世界から優秀な学生を英国に受け入れるため、留学生を移民数の純目標数に含めないように、政府に求めている。移民制度の改正は、大学内外の人の移動を促進し、高等教育の障害になるのではなく、必要性を反映するべきであり、学術交流や高等教育の国際的な競争を引き続き促すべきであると述べている。委員会は政府に対して、全世界から最高の人材を求めていることに積極的であるということを示すためにも、すべての研究者にTier 2(熟練労働者)ビザより簡素な手続きのビザ制度の導入を勧告している。

・移動の自由の維持

 英国で就学している学生について、EU域内からだけでなく全留学生の最良のモデルとして障害のない開かれた方法を推奨している。ある程度規制はするものの対等で開かれた方法、例えばビザ免除措置など、移動の自由を維持するような制度を要求している。

・政府のEU離脱交渉の優先分野

 報告書は、英国高等教育機関が様々な課題とチャンスに直面するであろうEU離脱に備えるため、EU離脱交渉の優先分野として、人材確保、学生、研究プログラムおよび将来の研究交流をあげている。

・地方成長基金

 高等教育機関を支援し、経済のバランスを取り戻すため、EUからの経費支援の代替として、政府に新たに地方成長基金の設立を勧告している。そして、すべての地域がこの地方成長基金の恩恵を受けることを求めている。

・ホライズン2020とフレームワーク・プログラム

 政府は現在継続中のEUとの研究交流の継続を保証するためにも、英国がホライズン2020や将来のフレームワーク・プログラムに引き続き参加することを勧告している。しかし参加が不可となった場合を想定して、EUのファンディングに相当するような代替策を作るよう求めている。

・エラスムス・プラス・プログラム:学生と職場の交流プログラム

 報告書ではエラスムス・プラス・プログラムが学生と職員の流動性に重要であることを認めており、英国はこのプログラムへの参加を継続するべきだとしている。しかし継続が不可能であれば、ヨーロッパを越えた人材の流動性を可能にする英国独自の代替プログラムの開発を推奨している。

https://www.parliament.uk/business/committees/committees-a-z/commons-select/education-committee/news-parliament-2015/brexit-higher-education-report-published-16-17/

報告書全詳細:Exiting the EU: challenges and opportunities for higher education :

https://www.publications.parliament.uk/pa/cm201617/cmselect/cmeduc/683/683.pdf

関係機関の反応

・ラッセルグループ

 下院教育委員会の報告書はまったく適切な報告をしており、EUからの学生と職員の不安をすぐにでも解消する必要がある。英国に在住し働いているEU市民の権利をはっきりさせることは優先課題である。我々は、現在ビザなしで就労できるEUからの大学の職員とその家族が現在と同じ権利を維持することを強く求めている。また、英国の大学が今後も優秀な職員や学生を、EUからだけでなく、全世界から、簡素化したビザで集め続けられることが重要である。

http://russellgroup.ac.uk/news/education-select-committee/

 

(4) Complete University Guide 2018年の英国大学ランキング発表

 4月26日、Complete University Guideは2018年版の英国大学ランキングを発表した。。卒業生の雇用の見通しの向上と大学による学生のための施設やサービスの投資が改善された要因として示されている。

129大学の総合ランキングのほか、70の研究分野ごとのランキングが10項目の評価項目に基づいてランキングされている。

TheCompleteGuide.co.uk 2018 のランキング

Rank 2018

Rank 2017

昨年との差

Institutions

1

1

→0

University of Cambridge

2

2

→0

University of Oxford

3

5

↑2

University of St Andrew

4

3

↓1

London School of Economic and Political Science

5

4

↓1

Imperial College London

6

6

→0

Durham University

7

10

↑3

University College London

8

8

→0

Univerity of Warwick

9

9

→0

Lancaster University

10

7

↓3

Loughborough University

11

11

→0

University of Bath

12

14

↑2

Unversity of East Anglia

13

11

↓2

University of Surrery

14

13

↓1

University of Exeter

14

16

↑2

University of Leeds

16

15

↓1

University of Birmingham

17

24

↑7 

University of Bristol

18

21

↑3 

The University of Nottingham

19

18

↓1

University of Sussex

20

20

→0

University of York

 

The Complete University Guide:University League Table 2018

https://www.thecompleteuniversityguide.co.uk/league-tables/rankings

 

(5) 高等教育研究法 (2017)制定

 4月27日、議会は高等教育研究法案を可決した。これはこの25年間で高等教育機関にとってもっとも重要な法律といわれ、今後長期にわたりすべての高等教育機関の法的な基盤となる。

高等教育研究法(2017)の概略

・来年度、大学の業務監査及びファンディングの機能を持つ学生局(OfS: Office for Students)が新しく設立される。学生局は高等教育機関の質や基準に関する法的な責任を担い、高等教育への新規参入の承認を高等教育機関登録簿によって管理し、又大学の称号や学位授与権を付与する権限を持つ。

・学生局は現在、教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)といわれる大学教育の質評価の実施準備の権限が与えられる。TEFはすでに試行されており(6月に第二回目の結果発表予定)大学は金銀銅で評価される。TEFは2019年末までに実施方法の評価と見直しが行われる予定である。

・2020年まで、政府はTEFに参加し最低限の条件を満たしている大学に対して、物価上昇率に沿った学費の値上げを許可する。2020年以降は、学費の値上げはTEFの評価結果と連動することになる。

・学生局は大学の質と基準に関連してその法的義務を遂行する独立機関を指名することができる。

・学生局は公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)の機能を統合する。大学は学生の入学に関する公平性に関する情報や留学生にとって有益と思われる情報を公表しなければならない。又学生局は高等教育機関の財政状況の監視および効率の改善に関する権限も持つ。

・大学は通常よりも短期集中型の授業コースに対して通常より高い授業料を提示することが可能となる。学生ローン会社はこれまで宗教上の理由などで学生ローンを受けることができなかった学生にも代替の資金調達方法を提示することが可能になった。

・7つの研究会議(Research Councils)、イノベーションUK, 及びイングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)の研究関係部門は“1つの戦略的研究機関”であるUKリサーチ・イノベーション(UKRI: UK Research and Innovation)に統合される。研究会議はUKRI内で現在の構成を維持するが、会計に関しては共通の責任者が監督する。現在の業務は継続するが、新たに学際的研究の責任を担う。新設のリサーチ・イングランドはQR(Quality-related Research)ファンディング*を担当する。

* QR(Quality-related Research)ファンディング:従来HEFCEが配分してきた研究の質評価(研究評価制度、REF:Research Excellence Framework)に基づくブロック・グラント。

http://wonkhe.com/blogs/be-it-enacted-the-higher-education-and-research-act-2017/

関係機関の反応

・英国大学協会(UUK: Universities UK)

 同協会の会長であるDame Julia Goodfellow氏は“世界レベルの大学を持つ英国にとって、現在の先行き不透明な時期に確固とした新しい法律が制定されたことは喜ばしい。我々は新しい法律制定の必要性に同意していたが、当初の法案には問題があった。しかし上下院議員および、関係閣僚や関係者の多大な努力により最終法案は大幅に改善された。特に、大学の独立性や基準を保護し、大学の称号や学位授与権の付与に対して高い基準を設けたことは喜ばしいことである。又我々の大学の海外での評判向上のための新たな国際戦略が策定される、という本日の大臣の声明には大きな希望を持った。しかしながら我々はこれからも職員や学生のため、もっと進歩的な移民法の制定に引き続き努力する所存だ。

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Response-to-passing-of-the-Higher-Education-and-Research-Bill.aspx

・Times Higher Education

 高等教育研究法が成立し、英国の大学はさらにマーケット・アプローチを強めることとなった。しかし、政府は、高等教育機関の新規参入を開放し、大学の競争と学生の選択肢を増やす必要がある、という当初の政府案に対する変更を受け入れた。また、新しい教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)と授業料値上げを連動させる仕組みの導入を、専門家による再検討の結論が出るまでは延期することに合意した。

 労働党は6月8日の総選挙のため現行の議会が解散する5月3日の前の駆け込み期間に未処理の法案を通過させるために、政府からの譲歩を勝ち取ったことになった。

 上院で反対にあったこの法律により、大きな権限を持つ学生局(OfS: Office for Students)が新設されるが、これはイングランドの高等教育にとってはマーケット式の業務監査機関である。また、英国の研究助成の構造も大きく変わることになる。

 しかし、上院からの修正案として留学生数を移民数制限に含めないよう求められたが、政府はこれを拒否した。メイ首相は強い圧力をかけられたが、修正案に同意しなかった。この修正案を提出したHannay 卿は政府から“もし修正案が残っているのであれば、法案全体を無効にする”という上院に対する脅迫があったと述べている。

 法律は成立したものの問題はまだある。私立の高等教育機関について、上院議員達の懸念は、現行では4年間の審査期間を経てから学位授与権が付与されるが、今後は学生局が新規高等教育機関の運営開始時からその権利を与える、とされていたことであった。これに対して政府は法案の修正を受け入れ、学生局が学位授与権を付与する前に、適切な機関より助言を受けることとなった。大学大臣のJo Johnson氏は“この役割を果たすのは大学質保証機関(QAA: Quality Assurance Agency)に相当する機関になるであろう。新しいシステムはこれまでのQAAの長年にわたって培ってきたものを取り入れていく。”と述べている。

 新規参入機関の大学の称号使用についても、政府は、上院からの修正案を受け入れ、今後作成されるガイドラインを踏まえて学生局は大学の称号使用の許可を出すこととなった。

又政府は、教育評価制度(TEF)が学費に反映されることがないように、という上院の修正案を退けたが、TEFが学費値上げに反映される仕組みの導入は3年間、延期された。上院議員が持つTEFの評価項目に関する懸念に対して、政府はTEF結果の学費値上げへの反映の仕組みを導入する前に、統計などを利用して実施方法の評価と見直しを行う、という修正を加えた。

https://www.timeshighereducation.com/news/higher-education-and-research-bill-passed-uk-parliament 

・BBC News

 イングランドのほとんどの大学は2020年まで毎年学費の値上げが可能となった。当初の法案は教育評価の結果により学費の値上げを可能にする予定であったが、これは2020/2021学事年度まで行なわれないこととなった。それまでは教育の質とは関係なく、物価上昇に伴う値上げが可能となった。

 2017年は£9250に上がる予定で、学生ローンの利率はこの秋から4.6%から6.1%に引き上げられることとなり、すでに問題視されている。

 高等教育研究法案は議会上院において多数の修正案を提出されていたが、一連の妥協案が総選挙前の議会解散の前に議会を通過し法律として制定された。

 教育評価制度は導入されるが、この評価結果はこの先3年は学費の値上げには連動しない。それまでは、教育評価制度に参加している大学は物価上昇に伴い毎年学費の値上げが可能となる。

http://www.bbc.co.uk/news/education-39736310

 

(6) 欧州理事会議長への書簡

 英国のEU離脱交渉に向けたEUの基本原則が採択された4月29日のEUの欧州理事会(特別首脳会議)にさきがけ、ラッセル・グループのイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを代表する4大学の学長が連名で、欧州理事会議長であるDonald Tusk氏に書簡を送付したことを5月3日、同グループは明らかにした。

 書簡では“英国とEUの科学研究は引き続き連携を続けるならば、より強くなる”と述べ、また、Tusk議長が意図するEUと英国の国民の相互の権利を優先することを同グループも支持していると述べている。今後の共同研究の継続を保証するためにも現在の関係の維持と関係協力の存続に働きかけるようTusk議長に呼びかけている。

http://russellgroup.ac.uk/news/letter-to-president-tusk/

 

(7) 選挙期間中の規則 ― 研究者へ影響

 5月4日、英国研究会議は来る6月8日の総選挙に向けて研究者への制限事項を発表した。

 選挙期間中、英国研究会議を含む公共機関は、選挙に関する規則によって活動の制限を受ける。今回対象となる期間は4月21日から6月9日の間で、この間は選挙結果に影響すると考えられる活動は一切禁止されており、英国研究会議は、公共の場での立候補者との競争を避けなければならない。この規則は新しい内閣が組閣された時点で解除となるが、連立政権となる場合は選挙終了後、解除まで時間を要することになる。

 選挙に関する規則は英国研究会議内の就業者、英国研究会議に雇用されている研究者にも適用され、該当者にはガイダンスが各自に告知される。ガイダンスでは選挙期間中に予定していた新しい研究の報道発表を控え、選挙や地域問題などに対して専門家としてのコメントを求められた場合には、研究会議の所属ではなく、大学の所属としてコメントすることを求めている。また、学会等で選挙に関連する研究発表を行う場合には、研究会議による研究であると述べてはならない。また研究会議の助成金による研究データ、投票傾向や予想、投票に影響のあるようなデータで未発表のものを選挙期間中に新たに発表することは控えること、すでに発表済みのデータに関してコメントする場合は必ず所属大学名を使用し、研究会議の名前は伏せることを求めている。

http://www.rcuk.ac.uk/media/news/040517/

 

(8) 6月8日の総選挙に向けた高等教育関係機関の反応

5月4日、高等教育関係機関が6月の総選挙に向けて優先課題を公表し、各政党に公約に盛り込むように要請している。

・英国大学協会(UUK: Universities UK) 

 次期政府に期待する5つの優先課題

  1. 効果的なEU離脱後策による大学の安定確保
  2. 地域経済の成長の支えとしての大学への支援
  3. 競合相手に匹敵するような科学、研究、イノベーションに対する助成金の増額
  4. 世界レベルの教育、学生経験、及び成果改善のための支援
  5. 効果的な移民法の導入

 同協会の会長でケント大学学長であるDame Julia Goodfellow氏は以下のように述べた。“この選挙の課題の多くは直接大学にも影響がある。特にEU離脱や移民政策である。選挙戦の討論で大学からの声に耳を傾けてもらうことは大変重要である。選挙を前にUUKはすべての政党に、大学が引き続き経済成長、雇用、技術、研究、社会流動性を強化する役割を果たすことができるような政策を求める。EU離脱と総選挙は英国の移民法を再考する前代未聞の機会である。世界との競争から遅れたくないのであれば、留学生や外国人職員を受け入れ、英国の高等教育や研究を世界でもっとも優秀な地位に押し上げるような新しい制度が必要である。”

http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Universities-UK-sets-out-priorities-for-next-government.aspx

・ラッセル・グループ

ラッセル・グループが掲げる2017年総選挙の優先課題

  1. EU離脱: 人の流動性と多国間国際交流の重要性を認識し、大学と研究にとって有利 な結果の保証。
  2.  留学生と外国人職員: 大学が引き続き、全世界からの優秀なスタッフと学生を確保できるような新しいビザと移民法の制定。
  3. 産業戦略: 地域レベル、全国レベルで経済と雇用の支えとなっている世界クラスの英国大学と協働し、英国全体の成長に寄与する。
  4. 科学、研究、イノベーション: 英国がさらに世界的な競争力をつけるため最低でも現在の科学研究に対する投資のレベルの維持。
  5. 学生の経験: 最高の教育、学習経験を提供するため、特に高コストなSTEM+の学科のため、大学に継続的な資金援助。

 http://russellgroup.ac.uk/policy/policy-documents/2017-general-election-briefing/

 

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