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UK HE Information

2018年4月英国高等教育及び学術情報

2018年4月20日

(1) 2030年までに高等教育機関は現在より30万人増の定員確保する必要がある

(2) パートタイム学生の減少

(3) 長期的教育成果の結果 2015/2016学事年度

(4) Advance HEの設立

(5) 18歳以降の高等教育と資金の見直し— 根拠にに基づく情報提供

(6) EU離脱最終離脱交渉に向けて英国大学側からの要求を提示

(7) 英国質保証常任委員会が新しい品質コードを発表

(8) UKリサーチ・イノベーション正式な活動開始

(9) 学生局の課題の優先順位

(10) 逆さまなランキング― 大学進学機会の指標

(11) イングランド高等教育機関の資金決定

(12) 60万人の卒業生が経済的に画期的な恩恵を受ける


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(1)2030年までに高等教育機関は現在より30万人増の定員確保する必要がある

3月15日、高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)はイギリスの高等教育の今後約10年間の将来の需要ついての新しい報告書を発表した。
 報告書『Demand for Higher Education to 2030』はHEPIの長い歴史において高等教育の需要を研究しているもので、同様な報告は7年前にも発表されている。
 この中で主要な政策変更、人口統計、及び高等教育入学者の入学基準率における影響を調査してものである。
その結果として:
· イングランドの18歳の人口は2030年までに23%増加する
· 人口のみが要因であれば、2030年までにフルタイムの高等教育参加数は現在より50000人の需要がある
· もし高等教育の在籍数が今後12年間に増えるか、過去15年間で平均して増加した率と同じであれば、2030年までに35万人の需要が増える
· EU離脱など悪影響に繋がった場合は56000人減少が起こる
· 今後10年間で最も可能性的に高いことは純増加として30万人のフルタイムの学生が見込まれる
· さらに高等教育参加数の増加の要因として同時期に男性の参加率が女性の参加率と同等になった場合が考えられる。我々はそうなるとは予想はしていないが、仮にそうなった場合は50000人のフルタイムの学生が見込まれる。
 2016/2017学事年度、イングランドでは120万人のフルタイムの高等教育学生がおり、約33万人の追加需要は25%の成長率に相当する。


 同研究所所長で、報告書の作者の一人でもあるBahram Berkharadnia氏のコメント:
 新しい高等教育進学者(わずかな例外を除く)が政府の補助する学生ローンの需要増加を意味するのであれば、現在の学生ローンシステムと定員数廃止を継続するは難しいところに来ている。この分析報告書は18歳以降の高等教育見直しの際に委員会で採用され、将来の卒業生に少しでも負担が減るものになるよう一石を投じたい。

http://www.hepi.ac.uk/2018/03/15/new-hepi-report-reveals-300000-higher-education-places-will-needed-england-2030-keep-demand/


 (2)パートタイム学生の減少


 3月15日、Sutton Trust は2012/2013学事年度でイングランドにおける学費上昇以来パートタイム学生数の激減を示す報告書を発表した。”The Lost Part-Timers”というBirkbeck, University of London (英国で唯一の夜間のみの大学)Claire Callender氏とJohn Thompson氏の共著。
主な結果:
· 2010年以来イングランド在住者で英国の高等教育及び継続教育機関へパートタイム学生の入学者数が年々減少している。2015年までに英国全体で51%の減少(Open University のみで63%減少、英国高等教育、継続教育機関では45%の減少)
· 報告書では実質的な学費の値上げをし、資産調査に基づく奨学金を廃止し、学生ローン開始した2012年の学生ファンディングの改革に焦点を置いている。しかし最近の落ち込みは次のような要因で長期化している。
・第二学位取得した卒業生のファンディングの終了
・不況の影響
・オンラインコース(MOOCS等)の大規模な開設などで学位資格取得にはならないが学びの機会を手軽に持てる機会が増えた。
· 報告書ではこの傾向が学費値上がり当初で顕著だったことを示している。Open University のデータがもっとも傾向がでているデータとなっている。2011年から2012年にかけて学費がスコットランド、ウェールズは2%上昇であったのに対してイングランド出身の学生にとって247%も学費が値上がりした。2015年までに2010年の学生数と比較してスコットランドでは22%減、ウェールズは46%減、イングランドは63%減となっている。これはイングランドの学生の減少は2012年の学費値上がりが原因だったことを示している。しかし学費値上がりの結果としてはかなり高い数字である。
· 約40%が学費値上がりによる減少である。もしイングランドの学費上昇の影響のなかったウェールズ在住と同じ率で減少した場合、パートタイム学生は149000人ではなく106000人にとどまったであろう。
· 最も激減したのは35歳以上のパートタイム学生層で高等教育機関の学位取得可能だか通常より25%ほど低いとされる準学位の取得層である。
· パートタイム学生の減少は全体的な高等教育参加率の波状効果が出ている。特にパートタイム学生には恵まれない環境の学生がフルタイム学生より多い。恵まれない環境の学生率パートタイム学生は17%、それに対してフルタイムは12%であった。
· しかし2010年から2015年間に減少したのは恵まれた環境からの学生であり、59%減少に対して恵まれない環境からの学生の減少率は42%であった。とはいうものの42%の減少率は特に高等教育進学を推進しなければならない層にとっては大きな打撃である。


推奨事項
1. 政府は現在検討中の18歳以降の高等教育見直しで、高等教育進学の障害を減らすためパートタイム学生および成人学生の学費について考慮する必要があることを認識するべきである。
2. 長期的に政府は成人とパートタイム学生の減少を食い止めるため、最も効果的な追加支援サポートの利用を考慮するべきである。
3. 学費ローン資格情報を大学進学希望者にもっと明確にするべきである。
4. 特に恵まれない学生のため、学生支援サポートは生涯学習を再度活発にさせるため投資すべきである。
5. 将来の政策に影響するデータ収集は改善すべきである。

https://www.suttontrust.com/research-paper/lost-part-timers-mature-students/


(3)長期的教育成果の結果 2015/2016学事年度


 3月15日、教育省(DfE: Department for Education)は長期的教育成果2015―2016(LEO: the Longitudinal Education Outcome)を発表した。
LEOのデータは下記のデータから構成されている。
· 教育省提供によるデータ
· 雇用年金局(DWP: Department for Work and Pension)と英国歳入税関庁(HMRC: Her Majesty's Revenue and Customs)提供によるデータ
 今回の試験的な段階にあるLEOは高等教育卒業生の雇用、収入を卒業後1.2.10年のもので2014年から2015年と2015年から2016年の課税年度のものである。又今回初めてEUや海外留学生の成果や継続教育カレッジで学位取得者の結果も記載されている。

https://www.gov.uk/government/statistics/graduate-outcomes-2015-to-2016


【メディアの反応】
○Wonk HE
第5回目となる試験的な試みの統計は新しい分析や留学生の結果などあり様々なデータを発表している。その中でも明確になった内容を6つ挙げた。
1. 過去の成績はこれまで以上に重要
     過去の成績次第で年間収入が£1万も差が出るためその重要さがみえる。
2. イングランド南/東部が高収入
     学生の出身地がロンドン以外でイングランド東部及びイングランド南東部が高収入であった。
3. 地域参加率*(POLAR:Participation of Local Area)の積極的な活用傾向
     同じ地域でも高等教育受けたものの方の収入が高い。
4. 無料給食データはない
     無料給食を受けているグループは低収入と考えられてるが、そのようなデータはない。高収入の結果が出たグループというのは私立出身と関連しているため最初からそのようなデータが存在しないということである。
5. パートタイムやサンドウィッチ課程**は単なるフルタイムより高給
     サンドウィッチ課程の卒業生は通常より収入は高い。卒業段階ですでに経験があり、関係ネットワークを持っている。またパートタイム学生はフルタイム学生より平均的に収入が高い。近年のパートタイム教育の助成金の変更で今後この状況が変化する可能性はある。
6. 自宅学生は収入が低い
     高等教育機関中に自宅以外から通っていたものの方が高収入。自宅通学の学生は財政困難から理由からでもあるが、それが将来の収入にも影響が出ている。

*POLAR:各地域の18―19歳の高等教育参加率を出し1-5段階に分けて参加状況の統計。(POLAR1が低くPOLAR5が高い)
**サンドウィッチ課程:就学中に実地研修がある課程
£1=148円(2018年3月15日現在)
https://wonkhe.com/blogs/a-first-look-at-the-latest-leo-data/
○Guardian
 昨年の教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)より改定され、次回の評価に卒業後の収入状況のデータである長期的教育成果も入り教育評価と長期的研究評価制度(TEF: Teaching Excellence  and Student Outcome Framework)となる。この動きに対していくかの大学長から非難が出ている。このような政策は低収入とされる看護、社会福祉、警察などの学位コースの存在が脅かされると指摘している。
Northampton University のNick Petford学長のコメント:
教育評価と政府が給与を決めている公共機関に就職した卒業生の収入を結び付けるとはまったくばかげたことである。看護婦の給与は大学側の範疇ではないが、我々が提供している国の基準である素晴らしい看護婦養成を誇りにしている。ありのままの情報を入れたところで正確なデータなど出てこず、反対にいくつかの学科コースの存続の危機に追い込まれるだけである。もし卒業後の収入がX大学よりY大学が多いというのであれば常に痴呆看護や小学生教員を学んだより獣医や銀行学を学んだ方が常に恩恵受けることになる。https://www.theguardian.com/education/2018/mar/27/new-university-rankings-nursing-social-work-degrees-graduate-earnings


(4)Advance HEの設立


 3月21日、Equality Challenge Unit(ECU)、Higher Education Academy(HEA)、Leadership Foundation for Higher Education(LFHE)が合併しAdvance HEという新組織を成立した。
 新組織のAdvance HEの最高責任者であるAlison Johns 氏は”Advance HEが高等教育界の一部を担うことを喜ばしく思う。3つの組織が合併し、これまで以上に関係機関と良い関係を築いていきたい。我々は高等教育機関を支援し、使命を実行し、学生や教職員及び社会の利益のため努力していくつもりである。新しいチャレンジに向けて全職員は張り切っている。当面の課題として新学事年度に向けて我々が提案している構造に対して幅広い機関からのコンサルテーションである。高等教育機関において豊富な多様性を反映できるように各方面から意見に耳を傾けたいと思う。“と述べた。
 5月にはAdvance HEは2018/2019学事年度に向けてメンバーシップの移行に関する内容を発表する予定。2018年秋には2019/2020学事年度から実行される正式なメンバーシップンの内容審議が開始する予定である。

https://www.advance-he.ac.uk/news-and-views/advance-he-formally-launched


(5)18歳以降の高等教育と資金の見直し— 根拠にに基づく情報提供


 3月21日、教育省(DfE: Department for Education)は18歳以降の高等教育と資金の見直しのため設置された独立委員会が根拠に基づく情報提供の募集を開始したことを発表した。
 委員会では特に下記の内容のついての意見を求めている。
· どのように18歳以降の学術、技術、職業の進路を効果的に選択するため援助するか。
· どのように教育や技術訓練をもっとダイナミックに市場に振興させるか。
· どのように18歳以降の高等教育システムをすべての人が利用できるか。
· どのように英国が求めているスキルを提供するため最善の教育成果を支援するか。
· どのように18歳以降の高等教育システムが卒業生や納税者にとって金銭価値が最大限に生かされるのか。
締切は2018年5月2日。https://consult.education.gov.uk/he-fe-student-finance-strategy/review-of-post-18-education-and-funding-call-for-e/


(6)EU離脱最終離脱交渉に向けて英国大学側からの要求を提示


 3月23日、英国大学協会(UUK:Universities UK)は同日21ヶ月のEU離脱移行期間で暫定合意をしたことを前向きに受け止め、今後の最終離脱交渉に向けて英国大学側からの要求の声明を発表した。
声明の主な主旨:
· 交渉第2段階で合意した英国―EUの将来の関係は英国とEUの高等教育及び研究において引き続き強い責任を持って提携を継続することも含むべきである。
· 英国はホライズン2020の後継プログラムFP9と提携を確保し、卓越性の追及を目指すべきである。
· 英国は2020年に法制化したのちエラスムス+の後継プログラムとも引き続気提携することに合意するべきである。エラスムス+は学生と職員にとって海外に向け流動性を持つ重要なプログラムであり、英国全体の55%の学生がこのプログラムを通して海外進出をしている。
· 政府は2019/2020学事年度以降の移行期間中は現行のようにEU学生を引き続き学生ローン、奨学金など地元学生と同様な待遇を持たせるべきである。
· 英国はEU離脱後優秀な留学生や職員の受け入れのため、新しい移民法の制定が必要である。http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/UK-universities-set-out-calls-ahead-of-final-phase-of-Brexit-talks.aspx


(7)英国質保証常任委員会が新しい品質コードを発表


 3月27日、大学質保証機関(QAA: Quality Assurance Agency)は同機関によって組織化された英国質保証常任委員会(UKSCQA: UK Standing Committee for Quality Assessment)が英国高等教育の質コードを発表した。これは期待と実践のコードの改訂版でUKSCQAに替わりQAAが英国の高等機関全体と調整し広範な協議の結果から構成されている。又2018年11月に出版が予定されている英国品質規定の完全版の基礎となる。改訂版は品質保証の主要原則、実現可能にするための改善策、進化している規定環境の中でその目的のための適合性を保証することに再度焦点を当てている。これらの品質コードは状況が変化するにも関わらず、英国高等教育の質の基礎としてその役割を果たすことになる。
 英国各地からの意見が寄せられ、全国的な取り組みが維持されていることが保証された。学生グループや様々な高等教育機関からの回答は学生を含む多様な高等教育機関とその関係機関の品質コードの可能実現に重要である。
 UKSCQAは第1段階の協議中に関係機関と関与したことを歓迎している。品質コード検討の次段階葉2018年の春も引き続き行なわれ、品質コードの助言と指針の基礎を開発する。http://www.qaa.ac.uk/newsroom/uk-standing-committee-for-quality-assessment-publishes-new-quality-code-expectations-and-practices#.WsdRHi7OUdU


  (8)UKリサーチ・イノベーション正式な活動開始


 4月3日、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)の最高顧問Mark Walport卿が同機関の正式な活動開始として、書簡を発表した。今後の目的として、研究やイノベーションの提携者、関係者と共に協力して下記のことを実現するように述べた。
· 人間の知識や理解の開拓の推進。
· 経済的影響や社会の繁栄の機会を増加。
· 社会的及び文化的な影響を創造。

https://www.ukri.org/news/today-is-the-first-day-of-uk-research-and-innovation/


(9)学生局の課題の優先順位


 4月3日、学生局(OfS: Office for Students)の最高責任者であるNicola Dandridge氏が声明を発表した。この日は3月末で解体したイングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)と公正機会局(OFFA: Office for Fair Access)がすでに起動していたOfSと統合し完成した学生局としての活動の初日となった。
声明であげた4つの目標
1. 大学門下を広げる
優先課題として恵まれない環境の若者の高等教育への参入である。現在は恵まれない環境の高等教育参加数が記録的ではあるがまだまだ課題はある。出身先は人生において最終目的にいけるかどうか左右される大きな要因であり、学位の結果や雇用においてバックグランドのグループでかなりの開きが出ている。そのギャップをなくすように大学、カレッジ、又学校や関係機関とも協力し努力する。

2. 教育と貴重な体験
高等教育が貴重な体験であるため、学生は高質な教育と学習支援の提供に努力する。学生への正確な情報、アドバイス、指導を提供し、適切な高等教育機関への誘導は大切である。又学校や雇用者やキャリアアドバイザーとも協力し、数多くのコースから希望に沿った進路を大学進学希望者に情報提供をする必要がある。

3. 学生の成果の改善
我々の使命は大学やカレッジが学生の成果を改善に努めさせることである。現世代の学生は稀に見る時代、それは同様に刺激的でもあり挑戦的な時代に卒業している。又今の学生はこれまでなかったような仕事やまだ存在していないような仕事をすることになるだろう。そんな不透明な時期でさえ、卒業生から前向きな成果が出るよう務めていく必要がある。

4. 学費分だけの価値
学生が高等教育において学費分の価値を見出してもらうことも我々の使命である。学生組合の結果では3分の1の学生がその価値があったと答えているという結果が出ている。又その回答も様々であった。又この調査でその価値を見出せる3つの点を挙げている。教育の質、良い評価とフィードバック及び学習リソースであった。

“学生に耳を傾ける”これはOfSの使命の真髄である。そのため我々の委員会メンバーには現在学部生、大学院生や新卒や大学進学希望者などで構成されている13人の学生メンバーがいる。これらのメンバーの声が約200万人のイングランドの学生の声となる。我々はできる限りの力を尽くして学生とその利益を守るように努力していくつもりである。

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/news-and-blog/what-are-the-office-for-students-priorities/


(10) 逆さまなランキング― 大学進学機会の指標


 4月5日、高等教育政策研究所(HEPI:Higher Education Policy Institute)はAnglia Ruskin University の学長であるIain Martin教授の著作した“大学進学機会拡大の指標—どのように評価、進展状況を報告するか”発表した。これは各大学がすべて環境出身者の学生に高等教育機会の拡大が成功しているかを報告している。又英国内の高等機関で最も機会拡大に平等である大学及び、最も不平等である大学を図表にて示されている。
 今回の報告書で使われた指標基準方法はジニ係数を用いた。これは地域などの区分のデータ(地域参加率,POLAR: Participation of Local Area) を基づいたもので公平性では認められているものである。
http://www.hepi.ac.uk/2018/04/05/5576/ (図表も含む)


【メディアの反応】
Guardian
 各大学がいかにすべての背景の学生に高等教育機関の参加すること明らかにするための報告書で今回試用的に始めて出されて結果である。University of Hullが第一位を獲得、University of Cambridge は最下位であった。他にUniversity of Derby, Edge Hill, Chester and Plymouth School of Artは上位に食い込んだ。通常、伝統であり優秀大学とされているUniversity of St Andrew, University of Bristol, University of Oxford, University of Aberdeenなどがランキングの下に並ぶ結果となった。
 大学進学率は1980年代では10%―15%の参加率であったが、現在では45%となっている。しかし出身先によってかなりのばらつきが出ている。恵まれない環境の学生の優秀大学の参加率は低いということをこの報告書は指摘している。
 Russell Groupの伝統大学は通常ランキングでは上位の常連であるが今回の指標では下位に留まっている。反対に比較的歴史の浅い現代の大学の方が多様性ということで成功している。
https://www.theguardian.com/education/2018/apr/05/cambridge-ranked-last-in-university-fair-access-table


(11)イングランド高等教育機関の資金決定


 4月5日、学生局(OfS: Office for Students)は2018/2019学事年度のイングランド高等教育機関の教育、プログラムなどに対しての予算を発表した。決定をした委員会は費用が高額な学部には4%の増加、政府の保健医療改革の支援には追加資金をすることに合意した。
 各高等教育機関の配分額は2018年5月11日の発表となる。https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/news-and-blog/funding-for-higher-education-in-england-for-2018-19-ofs-board-decisions/


(12)60万人の卒業生が経済的に画期的な恩恵を受ける


 4月6日、教育省(DfE: Department for Education)は2012年以来大きな変化として学生ローンの施行するもので、およそ60万人の卒業生で2012年以降学生ローンを利用しているものは返済開始年収額が£25000に上昇したことを発表した。
 同日から施行するもので、2012年以降学生ローンを利用したおよそ60万人の卒業生は返済開始年収額が£21000から£25000に上昇したことで恩恵を受けることになる。 学生ローンの返済期間は30年間で、未納となった額は政府によって損金処理とされるが、これは最大で£24000が卒業生の予想貯金額に相当すると見られている。
変更にともなる各年収額の1ヶ月返済額の変化:
· 年収£25000は£30から£0へ
· 年収£27000は£45から£15へ
· 年収£30000は£67から£37へ
· 年収£33000は£90から£60へ
· 年収£35000は£105から£75へ
· 年収£40000は£142から£112へ

 英国に在住している卒業生はこの改定に対して何もする必要はない。返済に関しては雇用者が提出するPAYE(収入で得た分だけ支払うシステム)か英国歳入関税局に提出する自己申請書に基づき請求される。
尚、フルタイム学生は卒業後の翌会計年度開始である4月までローン返済する必要はない。
https://www.gov.uk/government/news/600000-graduates-to-benefit-from-financial-milestone


【メディアの反応】
BBVC News
英国学生連合(NUS: National Union of Students)はこの動きは多くにとって”ありがたい救い“であると述べている。
 2012年9月以降のローン返済開始年収は2020/2021会計年度まで£21000で凍結していた。しかし昨秋、May首相は2018/2019会計年度から引き上げを発表した。この変更によって£25000以上の年収があっても返済額の割合が少なくなるので、返済額が少なくなる。
 財政研究所(IFS: Institute for Fiscal Studies)の調査では返済開始年収が上がったことで中層年収入のグループが最大で生涯をとおして£15700と最も恩恵を受けることになる。
 生涯のほとんどの雇用期間で返済開始年収より低い低層年間収入の卒業生は生涯の返済額が減少し、一方で、学生ローンを完済する高層年収グループは年間の返済額が減り、返済期間が多少延びることになるので、生涯を通しての返済ではあまり影響がない。これにより卒業生は平均で£10000ほど全体返済額が減ることになり、政府にとっては高等教育の負担が長期的な年間経費として£20億(40%)の増加となる。
 又2012年以前に学生ローンを利用したイギリス人、ウェールズ人だけでなく、スコットランド人や北アイルランド人も対象で、この場合はインフレ上昇にともなり返済年収開始額も上昇している。今年度の返済年収開始額は昨年の£17775より3.1%上昇し、£18330である。
http://www.bbc.co.uk/news/education-43629399
£1=151円(2018年4月6日現在)