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UK HE Information

2018年7月英国高等教育及び学術情報

2018年7月20日

(1)ステファン・ホーキング教授を記念して、傑出した学生のための新しい奨学金制度が発足

(2)イングランドとウェールズで高等教育を受けている学生の自殺数の推計

(3)大学担当大臣、大学比較のためのデジタルツール開発を公開募集

(4)学生のメンタルヘルスに関して発表された新しい施策パッケージ

(5)イングランドにおけるEU離脱後のEU学生の授業料等の発表(2019/2020学事年度)

(6)リサーチ・イングランドの資本計画が英国の大学での研究に17億3千万ポンドの共同投資を誘引している

(7)渡英しようとする海外研究者のための新しいビザ制度

(8)大学入試での背景要因データの活用

(9)研究者不正の監視強化に向けた動き

(10)2018年6月締め切りの大学進学希望者数発表

 

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(1)ステファン・ホーキング教授を記念して、傑出した学生のための新しい奨学金制度が発足

 6月11日、Sam Gyimah科学担当大臣は、世界を先導する科学者であり、2018年3月に死去した故ステファン・ホーキング教授に捧げる新たな奨学金制度が、数学と物理学の分野で設けられる予定であると発表した。

 採用枠は50人で、数学者、物理学者、コンピューター科学者で博士課程を修了した者が対象で、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research Innovation)から最大3年間の支援が行われる。

https://www.gov.uk/government/news/new-fellowships-for-exceptional-students-launched-in-memory-of-professor-stephen-hawking

 

(2)イングランドとウェールズで高等教育を受けている学生の自殺数の推計

 6月25日、国家統計局(ONS:Office for National Statistics)は、死亡記録と高等教育統計機構(HESA:Higher Education Statistics Agency)の学生記録とを用いて、イングランド及びウェールズにおける高等教育機関の学生の自殺数の推計を行った。この推計では、2001年から2017年にかけ、性別、年齢、民族的背景別で高等教育を受けている学生の自殺数が分析されている。全体数としては、ここ数年間の学生自殺率は、学生10万人あたり4.7人という値になっている※。

 自殺率の傾向としては、女性より男性の方が高く※※、フルタイムよりパートタイムの方が高く※※※、院生より学部生の方が高かった※※※※。また、初年度自殺率は他の学年よりも低く※※※※※、人種別の平均ではアジア人系>白人系>黒人系となる傾向が見られる※※※※※※。

(記事)

https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/birthsdeathsandmarriages/deaths/articles/estimatingsuicideamonghighereducationstudentsenglandandwalesexperimentalstatistics/2018-06-25

(データ)

https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/birthsdeathsandmarriages/deaths/datasets/estimatingsuicideamonghighereducationstudentsenglandandwales

 

 英国大学協会(UUK:Universities UK)はこの発表に関し、イングランドとウェールズの大学生の自殺率は同年代の一般的な人々に比べてより低い値を示してはいるものの、油断するつもりはないとしたコメントを6月26日付けで掲載した。

https://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/New-data-published-on-student-suicide-rates.aspx

 

(参考:同統計報告書に関するBBCの報道(図表入り))

https://www.bbc.co.uk/news/health-44583922

 

※ 政府発表データ内table1

※※ 政府発表データ内table2

※※※ 政府発表データ内table3

※※※※ 政府発表データ内table4

※※※※※ 政府発表データtable5

※※※※※※ 政府発表データtable10、ただしアジア人系と黒人系は母数が少ないため年毎の変動が大きい。

 

(3)大学担当大臣、大学比較のためのデジタルツール開発を公開募集

 6月26日、教育省(DfE:Department for Education)は、Sam Gyimah大学担当大臣が、学生が自分に最適な大学や課程を選ぶために役立つ新しいデジタルツールを開発するため、技術系の企業やプログラマーに対し12万5000ポンドのコンペの公募を発表した。

 このツールは、修得した学位から得られる収入や就職実績に関する情報のアクセスを全ての学生に可能にすることで、志願者の間で「均等機会」を与えるものである。公共料金から病院に至るまで、技術によって指先一つでより多くの情報が得られる時代であるため(注:英国では公共料金の一部は提供事業者を選択可能)、政府はこのツールが高等教育の透明性にも同様の改革をもたらすものと考えている。

 これは、より幅広い高等教育情報の透明性改革の一環であり、政府は既に、予想収入や雇用可能性、そして教育評価(TEF:Teaching Excellence and Student Outcomes Framework)※として知られている大学での教育の質などに関する幅広い範囲のデータを公表している。同大臣は、どこで学ぶかの選択の役に立つこういった情報の利用が、若者にとってより簡単になってもらいたいと考えている。

https://www.gov.uk/government/news/universities-minister-launches-open-data-competition

 

 これらの動向に対して、ガーディアン紙は、大臣は学位の価値が将来の収入として矮小化されるかのようなことを言っているが、大学は価格・サービス比較ウェブサイトで調べられるような商品ではない、過去の卒業生の平均年収を提示したところで将来に対しては何の保証にもならない、大学教育の真の価値である驚嘆、啓蒙、文化といった部分はウェブサイトのチェックボタンをクリックすることで測れるようなものではないなどとして、大臣の考えは無謀な市場主義だと批判する記事を掲載した。

https://www.theguardian.com/education/2018/jul/03/university-education-not-product-checked-gocomparecom

 

※教育評価:大学等各高等教育機関の教育の実績を明確に示すため、2015年に導入が決定された評価制度。各機関における「教育の質」、「学習環境」、「学習の成果」に基づき、「金」、「銀」、「銅」の3種類の評価が与えられる。一度得た評価は最大3年間有効。

  イングランド政府により任意参加で実施されている事業だが、イングランド以外の英国の大学も参加が可能。公的助成を受けているイングランドの大学がTEFを受けた場合、授業料の値上げが可能な仕組みとなっている。

1ポンド≒146円(2018年6月26日)

 

(4)学生のメンタルヘルスに関して発表された新しい施策パッケージ

 英国教育省は6月28日付けで、Sam Gyimah大学担当大臣が学生のメンタルヘルスに関する新たな基準を設けるという発表を行った。

 大臣は、大手慈善団体と高等教育機関が連携して新しい憲章(注:上記の基準を指す)を設け、大学が適合すべき一定の基準が示され、また大学に対し「学生世代を見捨てるようなことがないよう」同意するよう呼び掛けるということを、大臣主催の学生メンタルヘルスサミットで公表するとした。

 また、担当大臣による一連の新しい学生メンタルヘルスの施策の一つとして以下が発表された。

1.大学メンタルヘルス憲章の公表で、学生と教職員のメンタルヘルスや幸福を促進する新しい基準を発展させること。

2.学生が、特に重要な学生初年度における変化について正しい支援を受けられるよう、大学入学によって学生が直面する変化に対応する教育省主導の部会の創設。

3.大学にとって選択式となる要件を検討すべきかどうか調査が行われること。この要件は、大学が、両親または信頼できる人物に学生のメンタルヘルスに関する情報を共有する許可を得られるようにするためのものである。

 とされている。

 同大臣は、「こうでもしなければ学生世代をまるごと見捨てるような危険を冒してしまうので、この重要な行動指針を大学が支持することを期待している。」などと述べた。

 なお、英国の慈善団体であるStudent Mindsが各機関を主導する形のパートナーシップでメンタルヘルス憲章が作成される。このパートナーシップには、UPP Foundation(University Partnerships Programme Foundation)、学生局(OfS:Office for Students)、英国学生連合(NUS:National Union of Students)、英国大学協会(UUK:Universities UK)が参加する。

https://www.gov.uk/government/news/new-package-of-measures-announced-on-student-mental-health

 ラッセルグループ※はこの政府発表を受け、現状でも既にラッセルグループの大学や高等教育界は相当の努力をしているが、大臣、慈善団体やラッセルグループのパートナーと協力できることを楽しみにしているという趣旨のコメントを7月28日付けで掲載した。

https://www.russellgroup.ac.uk/news/student-mental-health-charter/

 

(参考:本発表を取り上げたBBCの報道)

https://www.bbc.co.uk/news/education-44635474

 

※ラッセルグループは、英国国内で最高水準の研究レベルを持つ24大学で構成される団体。

 

(5)イングランドにおけるEU離脱後のEU学生の授業料等の発表(2019/2020学事年度)

 7月2日、教育省(DfE:Department for Education)は、Demian Hinds教育大臣は、2019/2020学事年度からイングランドで課程を開始するEU出身の学生の学費は「home fee status」であり続けられると確約したことを発表した。これは、彼らの授業料は引き続きイングランド出身学生と同じものとなるということである。また、EU出身学生は、自分の課程を継続している限り、今日可能なものと同じ基準で経済的支援を受けることが可能となるということも発表された。

https://www.gov.uk/government/news/further-financial-support-for-uk-and-eu-students

 

 この発表はBBCでも報じられた。なお、BBCによればスコットランドやウェールズでは既に両政府がこれと同様の取り扱いを行うと表明している(注:スコットランドの場合、スコットランド出身学生に準じ授業料無料)。BBCの報道では、教育大臣がメイ首相の公約事項であるイングランドの授業料上限据え置き(年9250ポンド)について繰り返していること、一方で奨学金の返還利率はこの秋に6.3%へと上昇することが関連して報じられた。

 なお、BBCによれば英国には現在135,000人のEU出身学生がおり、各学長は2019年秋以降のEU学生の立場について至急明確にするよう求めていた(注:英国は秋入学であり、入学の約一年前となる現在の時点で学費が不明だと学生募集に大きく影響する)。BBCの調べでは、EU出身学生はラッセルグループの大学やロンドンまたはスコットランドの大学に集中していて、その割合が高い大学として英国の10大学があげられている。

 1.University of Aberdeen (スコットランド)

 2.London School of Economics (イングランド)

 3.Imperial College London (イングランド)

 4.Queen Margaret University, Edinburgh (スコットランド)

 5.School of Oriental and African Studies, London (イングランド)

 6.University of the Arts, London (イングランド)

 7.University of Cambridge (イングランド)

 8.University of Essex (イングランド)

 9.King’s College London (イングランド)

 10.Edinburgh Napier University (スコットランド)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン (イングランド)

https://www.bbc.co.uk/news/education-44676843

1ポンド≒146円(2018年7月2日)

 

(6)リサーチ・イングランドの資本計画が英国の大学での研究に17億3千万ポンドの共同投資を誘引している

 7月5日、リサーチ・イングランド(RE:Research England)は、その主力事業が、産業界、慈善団体、その他慈善家の寄付者から2012年の立ち上げ以降これまでに17億3千万ポンドの共同投資を誘引してきたと発表した。

 これは、英国研究パートナーシップ投資基金(UKRPIF:UK Research Partnership Investment Fund)という、REが持つ最大の競争的資金制度の中間評価書で示されているもの。なお、同報告書によれば、UKRPIFはすべての目的を達しているほか、重要な共同投資を活用し、感銘を与えるような研究成果を導き、経済成長に貢献しうるような初期の兆候も見せているとされている。

 とりわけ、研究事業に対する約6億8千万ポンドの資本投資は、シーメンス、ロールスロイス、サムスンや他の一流企業から英国の大学に向けておよそ10億ポンドの共同投資を誘引している。ほか、3億2千万ポンド以上の共同投資が慈善団体からで、約4億2千万ポンドが慈善家からであった。

http://re.ukri.org/news-events-publications/news/capital-projects-funded-by-research-england-attract-1-73bn-of-co-investment-for-research-at-uk-universities/

 

1ポンド≒146円(2018年7月5日)

 

(7)渡英しようとする海外研究者のための新しいビザ制度

 7月6日、Caroline Nokes移民担当大臣は、新しく“UKRI-科学、研究、学術スキーム”として、欧州経済領域※外からの研究者、科学者などに最高2年間まで英国への滞在を許可するビザの発行を発表した。

 この新しい制度は、長期滞在ビザのひとつであるTier 5(臨時労働者-GAE(Government Authorised Exchange):政府認定人材交流)の区分として加えられ、英国の研究部門の継続的な成長を反映しまた促進するために導入されている。

 この制度はUKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research Innovation)によって運営され、自然歴史博物館などの12の認証された研究機関とともに、技術的専門家といった高い技能を持った専門家が英国で労働・訓練できるよう、UKRIが直接その保証人となることができる。

 保証人となる機関は、制度を管理する立場のUKRIによってチェックされ、また個別にTier 5の保証人としての許可を得ていることも求められる。

 この新しい試みは、英国を活動的で解放的な国際貿易国家にするという政府の公約を実際に示すものであり、また最近の他のビザ制度の変更を基礎としている。これらの制度変更には以下のものが含まれている:

 ・優秀な才能へのビザ(注:英国のTier1ビザ区分の一部の名称)について発給されるビザ件数を倍増させ、年間2000件とする

 ・Tier 1のうち、新卒起業家ビザに替えて新しい起業用のビザを設け、高等教育機関に推薦された卒業生(注:従来の制度ではそういった推薦が求められていた)のみならず、英国で新しい事業を立ち上げることのできる候補者の枠を広げる

 ・医師と看護士をTier 2(注:主に技能職に出されるビザ区分)の年間発給数の上限から除く

https://www.gov.uk/government/news/new-scheme-for-overseas-researchers-to-come-to-the-uk

※EU加盟国にアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを加えた地域

 

(8)大学入試での背景要因データの活用

 7月10日、Fair Alliance Education(FAE、注:英国における教育の不公平撲滅の活動をしている監視団体)は、高等教育機関、特に優秀大学の入試での学生の背景要因データ利用のの効率性改善に関して、行動を呼び掛ける報告書を発表した。(注:記事には明示されていないが、背景要因データの活用が一種のアファーマティブアクションであると考えると本記事を理解しやすい)

 この報告書はエクセター大学の研究に基づいており、FAEのSam Butters会長は、「我々は優秀大学への学生の参加幅を広げる変化をもたらしたい。我々は、両親の所得や通った学校の質などの無数の背景要因が、試験成績や高等教育への進学可能性を含めた、若者の教育的成果に影響することを知っている。背景要因を加味した入試は、この課題を克服し、恵まれない若者が直面する余計な障壁を認識する一つの方法だが、この方法が効率的に用いられるためは多少の修正を必要とする。」と述べている。

 この報告書で明らかになったことには、以下のものが含まれる:

 ・多くの大学が、入試の課程で「背景要因データを加味すること」を通じて、入試手続きで新しい取り組みを行っている。そういった手続きでは、志願者の学習成績とその成績が得られた状況を照合し、志願者が高等教育において成功する可能性を評価している。

 ・入試での背景要因データの利用はここ5年間でより受け入れられてきており、この取り組みは広い範囲で拡散している。

 ・広く受け入れられているとは言え、背景要因データを用いた入試は高等教育機関の間で極めてたくさんの方法で利用されており、正確にはどういった方法が取られているのかがしばしば志願者にとって不透明になっている。

 ・現在、英国全土でのデータの不均衡や、データ不足といった問題を含め、「恵まれない」ということがどう定義されるかを明らかにするため、各機関で幅広い取り組みが行われている。

 ・最も重要なこととして、様々な背景要因データのソースや手法により、能力のある志願者や、志願者に助言をする者にとって、どこで、そしてどうやって志願者の見込みを伸ばせるかの見極めが困難になってきており、また、非伝統的な出自(注:恵まれない層)からより多くの志願者が出るよう奨励することの利益が失われている。

 明らかになったこれらのことについて、FAEは次の事項を含むいくつかの勧告を提示している。

 ・背景要因データの取り組みに対する公的な積極姿勢と学生局(OfS:Office for Students)の支援

 ・関連するデータへの各高等教育機関のアクセス改善

 ・関連するデータの利用方法に関する各機関の説明責任

 ・志願者への透明性の改善

 ・原則や専門用語の使用の一貫性向上

 ・背景要因が学生の成果に及ぼす影響を評価する上での決まりごとの共有

http://www.faireducation.org.uk/news-and-features/

 BBCでもこのことが取り上げられ、多くの大学が恵まれない志願者に対して手を差し伸べているが、このやり方がどう運用されているかは開示されていないと同報告が警鐘を鳴らしている、として紹介された。BBCによれば、ラッセルグループ※の大学は全てこうした方法を採用している。また、トップ校は社会的な意味で排他性があり、民族的マイノリティから合格する志願者が少なすぎるという非難を浴びているが、一方で、自分よりも成績の悪い恵まれない志願者に蹴落とされる可能性がある個々の志願者にとっては不公平となるということについて監視される立場にもあるとしてBBCでは取り上げられている。

 また、BBCは、学生局(OfS:Office for Students)のChris Millward公平アクセス・学生参加担当部長が、政府、学生や世間の期待に応じるならば、背景要因データの活用は我々の戦略の中心となるし、志願者の出自を考慮するのであれば、Aレベルの成績を取っていることが学生の能力の強固な尺度になるだろうと述べたとしている。

 上位校における、大学進学者の少ない地域からの入学者数の割合の一例(BBC調べ):

 ・ケンブリッジ大学 3%

 ・ブリストル大学 3.7%

 ・オックスフォード大学 4.6%

 ・エクセター大学 5.3%

https://www.bbc.co.uk/news/education-44770772

※ラッセルグループは、英国国内で最高水準の研究レベルを持つ24大学で構成される団体。

 

(9)研究者不正の監視強化に向けた動き

 7月12日、英国議会の科学技術委員会は、研究における誤りや疑わしい研究、不正行為などから生じる問題について何が知られており、またその問題が適切に取り扱われることが保証される上で何がなされるべきかについての報告書を公表した。

 調査の一環として、委員会は研究不正の調査の実施件数に関する情報を毎年公開しているかどうかを問う書簡を136の大学へ書簡を送付した。

 報告書では以下のことが判明している:

 ・2012年の研究健全性支援協定での合意事項にもかかわらず、4分の1の大学が研究の健全性に関する年次報告書を提示していない。

 ・研究不正の調査件数を報告するデータの透明性にばらつきがあることや、情報の記録方法に一貫性がないことにより、英国での研究不正の規模を算出することが困難である。

 ・協定の遵守は、厳密に言えば研究や高等教育関係のカウンシルから資金を受ける上での前提となっているが、遵守していないことで研究機関に対し資金面で何らかの動きが起きているわけではない。

 ・大学において協定の勧告事項を実施する上でリーダーシップの調整が取れていなかった。

 委員会の勧告事項の要点:

 ・100%遵守させるための工程表を備えた、研究の健全性に関するより厳しい協定が設けられるべき。

 ・大学での研究不正調査が適切に扱われているかどうかを検証する手段を用意するために、政府として国の研究健全性委員会を設置すべき。研究不正を調査する責任は一次的には雇用者の側にあるが、新しい委員会は、既存の自己規制制度の信頼性を向上させ、研究不正を自己監視する大学に起こりうる利害対立に対する警鐘ともなる。(注:「起こりうる利害対立」は抽象的な表現だが、勧告の原文によれば、この委員会を設けない場合に将来生じうる法規制が念頭に置かれている。また、勧告では、こうしてもたらされうる「高圧的な」規制は不利益になるとの強いコンセンサスが研究コミュニティに存在し、そういった結果を回避する責任がコミュニティにあるとされている(いずれも勧告のパラグラフ122より))

 ・新委員会は英国の大学での研究健全性の状態に関する年次報告書を発表するべきである。

https://www.parliament.uk/business/committees/committees-a-z/commons-select/science-and-technology-committee/news-parliament-2017/research-integrity-report-publication-17-19/

 

(10)2018年6月締め切りの大学進学希望者数発表

 7月12日、大学入試機関(UCAS:Universities and Colleges Admissions Service)は2018/2019学事年度の大学、カレッジ進学希望者数(6月30日締め切り)を発表した。

 主な状況:

 ・イングランドの18歳人口の内38.1%が大学入学の志願をした。これは昨年同時期に比べて0.2%の増加となる。志願率は増加したが、18歳人口全体は2.3%減少している。

 ・北アイルランドの18歳人口のうち47.6%が申請し、昨年に比べて0.1%の減少。

 ・スコットランドでは32.8%で0.2%の減少。

 ・ウェールズでは32.7%で0.2%の上昇。

 全ての年齢で見ると、英国全体での志願者は511,460人で昨年現時点に比べて3%の減少

 ・イングランド : 421,610人 (4%減)

 ・北アイルランド : 19,310人 (5%減)

 ・スコットランド : 48,710人 (1%未満の減)

 ・ウェールズ : 21,830人 (3%減)

 EUからの志願者数は2%上昇し、50,130人となった。EU圏外からの志願者数は記録的で、75,380人で6%の上昇であった。

 全体として、今年は636,960人が志願しており、2017年と比べて2%減少している。

 看護学科への申請は現在のところ48,170人(昨年の現時点と比べて9%の減少)で、その内イングランド出身者は35,260人であり、昨年の現時点から12%減少している。

 UCASのClare Marchant会長は、大学入学資格試験の結果は7月から8月にかけて発表されるが、その結果をもって大学に志願しようとしている者は今からでも「クリアリング制度」で直接願書を出すことが可能であるし、そういったルートは年配の学生を中心に近年人気が出ていると述べた。(注:クリアリング制度は、大学からのオファーを持っていない志願者への最後の出願機会で、空きのある課程へ自由に志願できる)

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/english-18-year-olds-are-more-likely-ever-apply-university

この結果についてはインディペンデント紙も7月12日に取り上げ、男女の志願者数差が前年に比べわずかに拡大したことなどが報じられた(注:女性の方が多い)。

https://www.independent.co.uk/news/education/gender-gap-university-students-men-women-applications-uk-a8442941.html