2018年2月12日
(1) 23大学が試験的学生ビザ制度に参加。
(2) 新たな大学規制機関活動開始― 学生局 (Office for Students)
(3) 内閣改造結果
(4) 高等教育機関の報酬コード
(5) 留学生は受入れにかかる費用の10倍の価値をもたらし、英国民1人に対して£310の価値をもたらす
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(1) 23大学が試験的学生ビザ制度に参加。
12月18日、内務省(Home Office)は学生ビザ発行手順の簡素化を23大学に対して広げる事を発表した。この試験的学生ビザは修士課程の留学生に対して発給されるものである。
現在この制度は2年目を迎えており、すでにOxford, Cambridge, Imperial College, Bathの各大学で、期間が13ヶ月かそれ以下のコースの修士課程の留学生を対象として行われている。また労働ビザにも移行でき、コース終了後6ヶ月間、引き続き英国に滞在が認められるため学生にとっても大きな支援となっている。
本制度では、大学側に入国資格審査責任があるため、学生はビザ申告において通常より少ない書類の提出で済む。新たに加わる23大学はスコットランドの2大学、ウェールズの2大学、北アイルランドの1大学となっている。
最近の内務省の調査によると、学生ビザ申請の数は昨年に比べて8%増加しており、ラッセルグループの大学へは9%の増加があった。
23大学は2018/2019学事年度よりこの試験的手続きを開始できる。ビザ申請に当たって発給拒否率が常に低かった地区の大学が本制度の対象として選ばれている。
https://www.gov.uk/government/news/twenty-three-universities-join-student-visa-pilot
【各機関の反応】
○ラッセルグループ 事務局長のTim Bradshaw氏のコメント
留学生は我々のキャンパスを国際色豊かにし、地域産業が世界と繋がるきっかけをつくり、英国に大きな経済効果をもたらす。ラッセルグループ大学への留学生7人ごとに£100万(1億5000万円)が英国経済に恩恵をもたらしている。
パイロット対象大学の拡大は良いニュースである。英国は世界中の優秀な学生からの恩恵を受けることを可能にした。今回選ばれた大学が高いレベルでビザ規定を遵守し実行し、更に他の大学にも広げていけることを期待する。
http://russellgroup.ac.uk/news/tier-4-visa-pilot/
£1は150円で換算
○英国大学協会(UUK:Universities UK)会長のAlistar Javis 氏のコメント
留学生は文化的にも経済的にも英国に利益をもたらす。どんな大学であれ、ほとんどの学生がビザの規定に従っていることも証明されている。
政府が留学生の恩恵を認め、卒業後の就労機会までも与えることになれば、留学生にとって英国が留学先として魅力を増すことになる。近い将来政府が英国すべての大学に本制度を適用することを期待する。
世界的な留学獲得競争は激化しており、英国は更なる学生ビザの改定をすることで世界からの留学生を歓迎する、魅力的な国で居続けることが必要である。
http://www.universitiesuk.ac.uk/news/Pages/Twenty-three-universities-join-student-visa-pilot.aspx
(2) 新たな大学規制機関活動開始― 学生局 (Office for Students)
1月1日、教育省(DfE: Department for Education)は学生局(OfS)の本格的な活動開始を発表した。本組織は、学生の利益を守り、選択肢を拡大させ、より効率的な投資を受けることを保障して行くことを目的としている。
教育大臣であるJustine Greening 氏は最後の6名の理事会メンバーを発表し、合計15人のメンバーが明らかになった。
学生局は、高等教育機関の多様なニーズを反映していくだけでなく、雇用者と学生の両者にとっても有意義であるかどうかを検証する。また、学長の賃金や言論の自由などの問題について大学に対し責任を問う機関となる。
また、今までイングランド高等教育財政会議(HEFCE : Higher Education Funding Council for England)において行われてきた、高等教育機関に対する規制や、大学が提供する教育の質に関して責任の追及の役割も担う。
昨年決議された高等教育研究法(2017)に沿った改革となり、学生局は学生、雇用者及び納税者の利益や選択肢の拡大に考慮する明確な法的義務を負うことになる。
https://www.gov.uk/government/news/new-universities-regulator-comes-into-force#history
(3)内閣改造結果
1月9日、BBC NewsはMay内閣の改造を報道した。高等教育/研究機関関係である、教育省(DfE: Department for Education) とビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS: Department for Business, Energy and Industrial Strategy )の担当大臣は以下の通り。
教育省
大臣職
Damian Hinds氏略歴:
オックスフォード大学で政治、哲学、経済学を専攻。18年に渡り英国内外のパブ醸造およびホテル業界に従事。2010年5月の総選挙でEast Hampshireで初当選。下院教育委員会(Education Select Committee)に選出され2012年10月まで務めた。国会議員で構成される社会的流動性審議委員会(All-Party Parliamentary Group)の議長も務めた。その後2014年7月から2015年1月まで与党院内幹事補(Assistant Government Whip)、2015年5月から2016年7月まで財務省秘書官(Exchequer Secretary to the Treasury)。前職は2016年7月から2018年1月まで労働・年金担当大臣(Minister of State for the Department of Work and Pensions)。
ビジネス、エネルギー、産業戦略省
ビジネス、エネルギー、産業戦略省大臣のGreg Clark 氏は続投。
担当大臣 (DfEとBEISともに所属している担当大臣)
Sam Gyimah氏略歴:
オックスフォード大学、Somerville Collegeで政治、哲学、経済学を専攻。ゴールドマンサックスで5年間過ごした後、数々の中小企業の訓練、雇用、インターネット部門の育成開発会社を起業し、2005年その功績が認められ、CBIの「未来の起業家」に選出された。2010年5月の総選挙でEast Surreyで初当選し, 2013年10月から2014年7月まで財務省で財務長官(Lord Commissioner (HM Treasury) Whip), 2014年7月から2015年3月まで内閣省で議会政務次官(Parliamentary Secretary)、2015年5月から2017年7月まで教育省で政務次官(Parliamentary Under-Secretary)を務める。前職は2016年7月から2018年1月まで法務省で政務次官を務めた。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-42619018
Daimian Hinds : https://www.gov.uk/government/people/damian-hinds
Sam Gyimah : https://www.gov.uk/government/people/sam-gyimah
(4) 高等教育機関の報酬コード
1月9日、大学議長委員会(CUC: Committee of University Chairs )は、大学の上級職に対する給与額決定過程を透明化し、適切かどうかを確認するため、自主的な規範の草案を作成したことを発表した。
CUCは本ガイドラインの正式な審議期間を設け、意見募集を行っている。意見提出期限は2018年3月12日。
http://www.universitychairs.ac.uk/home/remunerationcodeconsultation/
【各メディア、関係機関の反応】
○BBC News:
大学上級職の給与は平均的な学術スタッフより昇給率が早いということは期待されていない。CUCのこの草案に対し、学生局(OfS: Office for Students)の最高責任者であるNicola Dandrige 氏は”不十分である。我々は給与額に関心があり、給与額の決定過程に関心があるのではない“と述べた。
昨年は大学長の過剰報酬が問題となり、前大学・科学担当大臣のJo Johnson氏との会合後、各大学長は新しい給与ガイドラインの作成に合意していた。又同氏は高額な給与に対して抑制を求め、新しい規制機関である学生局の介入を求めていた。
http://www.bbc.co.uk/news/education-42623935
○Guardian:
大学長は大学職員の平均的な給与額の約8.5倍の給与報酬を受けている、ということについて、大学側は今後過剰な報酬を抑制するガイドラインに沿って、その支払い額の正当性を説明することを求められることとなる。
大学職員の労働組合である大学組合(UCU:University and College Union)は毎年、大学長の給与を発表しているが、大学議長委員会(CUC)が作成した新しいガイドラインを却下した。同組合の書記長であるSally Hunt氏は「大学上層部の給与について真剣に取り組みたいのであれば、CUCのように近しい関係ではない機関がやるべきである。先月CUCは大学長の給与は不等に高額な金額が支払われているという証拠が見られなかったと発表している。何年も前から大臣たちは大学長の給与の著しい上昇に関して調査するように求めている。これまでも我々は給与委員会が身内の給与を決定してきているということを強調してきた。」と述べた。
また、新しい規制機関、学生局(OfS: Office for Students)の最高責任者であるNicola Dandrige 氏は報酬コードを歓迎しながらも不適切であることを述べている。「大学側が正当な給与額を定めるというリーダーシップが必要である。給与水準に関心があり、決定された過程を知りたいのではない。提案されたCUCの規範の精神に基づき各高等教育機関が行動し、この過剰給与そのものに取り組むことを望む。しかし不等な給与水準に直面した場合、OfSは介入をすることに躊躇はしない」と述べた。
○英国大学協会(UUK : Universities UK)
UUKの広報担当者のコメント:
大学上層部の給与決定過程は厳格で透明性が期待される。新しい規範は大学給与委員会に重要な指針を与えるとともに、上級職の給与が公正、説明責任に基づいており、理にかなっていることも確認している。一方で競争力のある給与は優秀な人材をひきつける原動力でもあるということが認められている。
○ラッセルグループ(Russell Group)
同グループの会長であるAlistair Jarvis氏のコメント:
CUCから発表を歓迎する。大学の上級職の給与を適当な水準に設定するには、透明で公平な決定過程と説明責任があることが重要である。新規範案やガイダンスはそれらの分野を網羅しており、大学の今後の発展に役立つだろう。
http://russellgroup.ac.uk/news/higher-education-remuneration-code/
(5) 留学生は受入れにかかる費用の10倍の価値をもたらし、英国民1人に対して£310の価値をもたらす
高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)とKaplan International Pathwayは共同研究成果「議会選挙区別による留学生の費用と利益」を発表した。分析は政策経済のコンサルタントのロンドンエコノミックスが行った。
これまでに研究と異なり、毎年新しく訪れる231,000人の留学生にかかる費用とその利益を分析したものである。
例として:
→上記の総利益はEU留学生は平均で£87,000(1,305万円)、非EU留学生£102,000(1,530万円)の費用から出ている。
→上記の公費用は平均でEU留学生は£19,000(285万円)、非EU留学生は£7,000(105万円)
→上記の純利益はEU留学生£68,000(1,020万円)、非EU留学生£95,000(1,425万円)
£1は150円で換算
【メディアの反応】
○インディペンデント紙
留学生が毎年£20億も英国経済にもたらしているという報告は、留学生を移民法で規制しようとしているメイ首相をますます議会で孤立する可能性を強めた。
留学生の恩恵を受けている20選挙区のうち19選挙区が労働党の議席である。
○BBC News
HEPIの理事長Nick Hilmman氏は「留学生が少ない地区では雇用も少ない。なぜなら留学生は大学だけでなく地域にもお金を落としているからである。それがサンドウィッチ屋、自転車屋、タクシー会社、ナイトクラブや書店だったりする。留学生が減少した場合、地域の小企業は破産に追い込まれる可能性がある。」と語った。
また、「英国は世界レベルの大学が多く存在するが、同時に世界でも最も学生に敵意を持った政府がある。」というインドのHindustan Times 紙の読者からの最近の投稿を引用した。HEPIは政府に対して留学生の数を純移民数から取り除くようにと訴えているが、内務省は現時点ではその予定がないという回答であった。
もっとも留学生から利益を受けている選挙区トップ10
(トップ10すべて労働党議員選出)
http://www.bbc.co.uk/news/education-42637971