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UK HE Information

2019年7月英国高等教育及び学術情報

2019年12月04日

(1) *リサーチ・イングランドは、オープンアクセス改善と発展のための投資に係るプロジェクトに2.2mポンド出資する。

(2) *学生局が、2019年TEFの結果を公表

(3) 大学院卒業後の学部別就業率と収入

(4)大学職員の考える、研究評価制度(Research Excellence Framework :   REF)の影響の良い点と悪い点

(5)英国繁栄計画の鍵となる研究とイノベーション

(6)GDP2.4%の研究開発投資支援のための、リサーチ・イングランドのQR 関連研究の向上

(7) 学生の満足度は上昇、しかしまだ改善の余地はある。

(8) 英国の約10人に4人が大学に出願。これは新記録。

(9)成績のかさ上げへの取組

(10)11の国立最先端研究施設への国の投資2億強ポンドが、民間企業から5億ポンドの融資を引き出す

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(1) *リサーチ・イングランドは、オープンアクセス改善と発展のための投資に係るプロジェクトに2.2mポンド出資する。

 2019年6月14日、リサーチ・イングランド(Research England:RE)は、大学、研究者、図書館、出版社が、オープンアクセス可能な出版物をさらに多く出版し、そしてユーザーがより便利に利用できるようにするため、新たなリサーチ・イングランドの資金プロジェクトを立ち上げたことを発表した。本プロジェクトは、世界的な研究への広範なアクセスを可能にし、その影響を拡大する。

 コベントリー大学が主導するパートナーシップである*Community-led Open Publication Infrastructures for Monographs (COPIM)は、以下で構成される。

 ・バークベックカレッジ、ロンドン大学、ランカスター大学、トリニティカレッジ、ケンブリッジ大学

 ・オープンアクセス可能な出版社(Open Book Publishers, punctum books,Open Humanities Press, Mattering Press, and meson press)で構成されたThe ScholarLed consortium

 ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校図書館、ラフバラ大学図書館

 ・インフラ提供者であるthe Directory of Open Access Books (DOAB)、Jisc、それから国際的なメンバーシップ組織であるThe Digital Preservation Coalition (DPC)

 REは、COPIMに対し、220万ポンドをリサーチ・イングランド開発基金(Research England Development fund:RED)から授与した。この出資は、研究の革新と高等教育での知識の共有を支援し、公共の利益をもたらす。

 COPIMは、競争的な商業運営モデルから、より水平的で協力的な知識共有モデルに移行することで、オープンアクセス書籍出版を変える。

 そのためには、

 ・オープンアクセス書籍出版社及びオープンアクセス書籍への移行を行う出版社に使用されているインフラ(ビジネスモデル、保管の仕組み、ガバナンス手続)の改善と革新

 ・図書館員、出版社、研究者、およびオープンアクセスの展望に関係する者との間における、より生産的な協働を可能にする

 ・オープンアクセス書籍出版を運用するのに必要なスキルを開発するためのオープンソースツールキットを作り出すことによって、オープンアクセスの機会を拡大する

 

 そして、特に英国内及び国際的な人文学・社会科学分野において、多様で新たな取り組みやモデル等を発表することを支援、維持し、大学及び研究者が管理する持続可能な出版モデル、出版オプションの増加、及びコスト削減方法を提供する。

 

 *リサーチ・イングランド(Research England: RE):2017年に英国の研究と革新を目的とし、既存の評議会を統合して設立された評議会。イングランドの高等教育機関に資金を提供(1年間に22億ポンド以上)している。9つの研究機関等で構成するUKRIのひとつでもある。

 *Community-led Open Publication Infrastructures for Monographs (COPIM):コミュニティが主導して人文科学や社会科学における知識をオープンアクセス可能にすることで、最終的には公的資金による研究に全ての人が自由にアクセスできることを目指すプロジェクト。

 Research England awards £2.2m to project to improve and increase open access publishing

 

(2) *学生局が、2019年TEFの結果を公表

 2019年6月19日、学生局(Office for Students: OfS) が今年のTEF (The Teaching Excellence and Student Outcomes Framework)の結果を公表した。TEFは高等教育を通じた教育の卓越性と学生の成果に焦点が置かれた評価制度である。

 今年のTEFの結果では、様々な大学及びその他の高等教育機関における質の高い教育と学生の成果例と、対策が改良されるべき箇所が強調された。

 TEFから称号を付与されている英国の高等教育機関の総数は現在282機関であり、そのうち76が金賞で、132が銀賞、60が銅賞を付与されている。

 TEF格付けの対象になるために、高等教育機関は国が定める厳格な教育の質の要件を満たさなければならない。TEFは、この質に加えて卓越性を測る。そして、高等教育機関は金賞、銀賞、銅賞の格付けを授与され、総合評価に十分なデータがない場合は、暫定的に賞を授与される。

 今回がTEF評価の3年目となる。282の受賞機関のうち、204は前回の評価から継続しており、78は今年からである。今年の申請結果は以下のとおり。

   ・64の高等教育機関は過去に受賞経験があり、再び申請してきた。そのうち12機関は格付けを上げ、4機関は下げた。

  ・14の高等教育機関が今年初めて申請した。

  ・授賞対象は、学生、学者、雇用に関する専門家から成る独立した専門家パネルと、高等教育における幅広い参画者によって決定される。各大学からの詳細な提出物と国の様々なデータを参考に、TEFは教育の質、学習環境、学生が達成した教育的および就職状況に関する成果を測定する。  

 

*学生局 (Office for Students: OfS):イングランドの高等教育の独立監視機関。

 Office for Students announces results of TEF 2019

 

 (3) 大学院卒業後の学部別就業率と収入

 2019年6月28日、Advance HEは、教育省(Department for Education : DfE)が長期的教育成果(Longitudinal Education Outcomes :LEO)の大学院卒の成果に加え、First classを取得した英国在住者の大学、学部別の収入など高等機関関係者には興味深いデータを発表したと伝えた。

 学科によって収入における中央値にかなりばらつきがある。特に医学、歯学の卒業生の年収の幅は9600ポンドでビジネス管理学や法律など他の科目と比較するとかなり狭い。DfEは卒業前の所属機関・大学によって収入が影響されていることを認めている。例えば、レベルの高い大学(全体で4分の1以上に位置する)グループ1に属する高等教育機関の卒業生の平均収入は36900ポンドから65500ポンドだった。一方でレベルの低い大学(全体の下位4分の1に位置する)グループ3の卒業生の収入は22700ポンドから28300ポンドであった。

https://www.advance-he.ac.uk/news-and-views/dfe-releases-updates-provider-and-subject-level-employment-and-earnings-outcomes-uk

 (4)大学職員の考える、研究評価制度(Research Excellence Framework :   REF)の影響の良い点と悪い点

 リサーチ・イングランド(Research England: RE) 、カーディフ大学、シェフィールド大学は、2019年6月24日、研究者がREFに対して様々な意見を持っており、良い影響ももたらしているが、まだ改善の余地があると考えているいう報告書を発表した。

 調査とインタビューにおいて、4つの大学の学者とその他大学関係者は、REFは多くの点でプラスの影響を与えると回答した。例えば、

  • REFは、学外での取組、例えばコミュニティとの取組を奨励する
  • 大学の学部は、しばしば優れた研究成果と社会的影響をもたらすことを通じ、研究者たちをより良いREFの結果に向けて動機付けし、導くような支援活動を行う。
  • REFでのオープンアクセスとオープンな研究慣習に焦点を置くことは、研究者自身の活動と、英国の学術文化双方に対し、より硬軟にプラスの影響を継続的にもたらしている。

  直近に行われた2014年のREFと比較して、現在のREF2021における変更点についても好意的に捉えられている。例えば、

   ・リサーチマネージャーは、REF2021における平等性と多様性に対する考慮が、REF2014 と比較して学者の幸福にプラスの影響を与えることを期待する。

  ・調査回答者は、REF2021がREF2014よりも協力的であるという意見に緩やかな同意を示した。

  ・研究者は、REF2021をREF2014よりもやや柔軟性が高いとみなした。

  ・回答者は、REF2014よりもREF2021 が研究成果の量よりも質に焦点を置いていることに肯定的だった。

 

 しかし、今後の研究評価において、学術界が解決したいと考えている問題がいくつかある。例えば、

   ・一部の大学は、都合の良い結果を導くため、必要とされる戦略を超えた追加の戦略を実施しようとしている。このことは、創造性や学術文化の他の側面に影響を与える。

  ・回答者の6分の1未満が、所属機関が研究に対して圧力を加えている可能性を指摘している。

  ・研究コミュニティの健康と幸福への潜在的なネガティブな影響

  ・回答者の大半は、REFに適応するため自らの研究内容を変えるよう要求されたことはなかったが、15%の回答者がそのように要求されたと回答した。

  この研究は、REF2021を履行するときに優れた慣習を実践する高等教育機関の重要性と、そのような場合に学者がより肯定的な経験を積む可能性が高いことを強調する。

 回答者は、研究者が公正に扱われていることを確実にするためのREF2021内の平等性と多様性の規程強化について肯定的である。これらの規程は、高等教育機関がREF2021での評価のための研究を提出する際に従う必要のあるガイダンスの柱である。

 この調査は試験的なものであり、REFに対する認識と姿勢に関する初めての根拠を得るために実施された。REは、将来の研究評価を配慮した研究活動で幅広い評価から得た一連の証拠と並行して、これらの結果をREF2021以降の研究評価の開発の情報として利用する。

 REF2021は既に実施されており、影響は受けない。

 REのリサーチディレクターであり、REF2021ステアリンググループの議長であるSteven Hill氏は以下のとおり述べた。(以下発言内容は抜粋)

 「REは、REFが常に公平、平等、透明性の原則に基づいていることを保証するために、英国の他の高等教育資金提供機関と密接に協力している。」

 「この研究の目的は、研究評価の将来的発展に役立つ確実な証拠を収集すること」

 「調査結果によって、REFに関して世界をリードする高等教育部門の学者の実際の経験と、どの側面がプラスまたはマイナスに見られるかについて貴重な理解を得ることができた。」

 「この報告書には、プロセスについて好評価もあった一方で改善できるという証拠もいくつか得られたため、今後の実践で活用することを検討する。」

 カーディフ大学の上級講師として動機付けと行動の変化を研究し、この報告書の共同著者でもあるNetta Weinstein氏は以下のとおり述べた。

 「REFは、学者の行動と「心身ともに良好な状態(well-being)」に影響を与える可能性が高いが、その影響と研究活動への影響を理解するための経験的証拠はほとんど収集されていない。」

 「高等教育の現場における認識が、研究者の「心身ともに良好な状態(well-being)」と生産性を決定する鍵であることが分かっているため、様々な状況において、研究者がREFをどのように理解し、受け取るかを慎重に評価することが重要である。事実、証拠に基づいた意思決定を基本的に重視するREFを研究することが重要である。」

 シェフィールド大学の研究政策教授であり、報告書の共同著者であるJames Wilsdon氏は以下のとおり述べた。

 「今回の試験的調査は、最前線の研究者や研究マネージャーが経験したREFの長所と短所のより微妙な関係性をさらに深く掘り下げて明らかにしようとした。そして、REF2021が実施されている間に、このことをリアルタイムで研究しようとした。」

 

University staff see positive and negative impacts of Research Excellence Framework, study shows

  

(5)英国繁栄計画の鍵となる研究とイノベーション

 2019年6月27日、英国大学協会(University UK: UUK)は、英国が研究及びイノベーションの世界的リーダーであり続けられるよう、英国産業界の代表や、学会、高等教育機関などと、これまでに前例の無い連名で、共同声明を発表したと伝えた。

 この共同声明において、次期首相に対して、ブレグジット後の英国の繁栄のための計画の中核に、研究とイノベーションを置くように要求している。

 UUKを含むこの団体は、次期保守党党首に、既存の公約に基づく英国の研究開発に向け、強固で機が熟したビジョンを果たし、雇用促進、重要な医療、技術、社会的な飛躍をもたらすよう促している。

 2027年までに研究開発に対し、国家予算の2.4%を費やすという確固たる公約にも関わらず、政府は目標を達成するための軌道に乗っておらず、英国は既に国際的競争相手に既に遅れを取っており、新たながん治療の開発や、気候変動への取組、未来の知識集約型産業への支援などの努力を無駄にしつつある。

 これらの公約を元の軌道に戻し、言葉ではなく行動でリーダーであることを証明するのは次期首相次第である。

 共同声明の全文は以下のとおり。

 「保守党の次期党首は、英国が研究及びイノベーションの世界的リーダーであり続けられるよう約束すべきである。

 我々は、保守党の党首候補に対し、英国が世界的な競争力を維持し、ブレグジット後の経済と社会に、強固で豊かな未来を提供することを保証するために必要な研究開発の公約を誓約してほしい。

 研究開発への投資が、生産性を高め、生活水準を向上させ、英国全土の人々とコミュニティに対して利益をもたらすのは明らかである。がん、気候変動、食料安全保障、高齢化社会への対応を含む我々の時代の大きな課題から、高度技術職と新たなビジネスの創造、及びNHSに力を供給するイノベーション-英国研究とイノベーションは、まさに実生活に影響をもたらすのである。

 次期政権が国内外の投資家に、英国はビジネスにオープンであり、世界を変える機会を受け入れる準備が整っているという明確なメッセージを送ることが重要である。我々の国際的な競合相手であるドイツ、イスラエル、韓国、そして日本は、既にGDPの3%以上を研究開発に投資している。

 次期首相は、2030年までの研究とイノベーション投資に関する長期計画を策定しなければならない。これは、2027年までにGDPの2.4%、長期的にはGDPの3%、に研究開発全体への投資を引き上げるという政府の目標に基づいている。

 しかし、言葉と目標だけでは不十分である。英国は、世界をリードする新たな技術のグローバルハブとしての地位を確立し、複数の分野に跨る英国の長所を引き出し、世界中から才能を惹きつけ、英国の企業家精神を促進するための首尾一貫した長期計画を必要とする。

 行動に移す時である。保守党の次期党首は、英国の研究開発について大胆なビジョンを作り上げ、それを実現するための確固たる道に我々を導く首相になる機会を得るのである。」

 この声明は、医学アカデミー、医学研究慈善協会、ブリティッシュアカデミー、化学工学キャンペーン、英国がん研究協会、英国産業連盟、英国物理学会、王立アカデミー、ラッセルグループ、そしてUUKによって署名された。

【政府の取組について】

 ・GDPに占める研究開発への現在の投資は以下のとおり。

韓国4.55% イスラエル4.55% ドイツ3.02% 米国2.79% 中国2.13% 英国1.69%

 ・英国の研究開発は、3分の2が民間部門から、3分の1が公共部門から投資されている。(2017年)

【実生活への研究による影響例】

  ・研究に積極的な病院で治療を受ける患者は良い結果を得る。研究活動のレベルが高いほど、緊急入院後の患者の死亡率が低くなる。研究は1970年以降、英国での癌患者の生存率を2倍に高めている。

  ・世界の上位100の処方薬のうち、約25%は英国で発見され開発された。

  ・研究者がビニール袋料金の導入を推奨する鍵だった。これにより、イングランドで使われるビニール袋の数は、既に83%減少した。料金が導入される前の年は、7つの主要なスーパーマーケットから70億以上のビニール袋が配布されたが、この数は、料金が導入されてから最初の6ヶ月で、5億にまで減少した。

  ・組織犯罪のパターン研究は、詐欺やマネーロンダリング対策や、社会での数十億ポンドのコスト削減に役立つ。

  ・米は人類によって消費されるカロリーの23%をもたらすが、rice blastという壊滅的な病気がその将来を脅かしている。英国の研究者は、食物の安全を守るため、病気に強い新たな品種開発に取り組んでいる。 

【研究による経済の後押し】

  ・英国の生産性レベルは、他国よりも相変わらず低い。2016年の英国の労働時間あたりのGDP(国内総生産)は、ドイツより26.2%、フランスより22.8%、米国より22.6%低かった。

  ・研究開発への投資は、生産性向上と経済成長に直接結びつく

  ・ロンドンエコノミクスが実施した調査に基づくラッセルグループの分析によると、公的研究基金1ポンドごとに、英国の大学は平均して8.35ポンドの利益を英国経済にもたらしている。

  ・継続的に研究開発に投資している企業は、投資していない会社より13%生産性が高い。

  ・ライフサイエンス業種は、英国経済においてそれ以外の業種1人の雇用に対して2.5人分の雇用を提供している。

Research and innovation key to plans for UK prosperity

  

(6)GDP2.4%の研究開発投資支援のための、リサーチ・イングランドのQR 関連研究の向上

 2019年7月2日、リサーチ・イングランド(Research England:RE)は、大学研究と知識交換のための全体予算を発表した。REは、2019-2020年度に英国の大学に対し9,100万ポンドを追加で投資し、2019-2020年度の全投資額は約22億ポンドになる。

 この追加投資は、2027年までにGDPの2.4%を研究開発に投資することを推し進める英国政府の公約の実現を加速させる。この増額された資金は、政府の産業戦略を実行する大学を支援する*国家生産力投資基金(National Productivity Investment Fund:NPIF)から出資されている。

  9,100万ポンドの内訳

   ・4,500万ポンドが、主流のQR(Quality-Related)資金に割り当てられる。QR資金は、RE最大の資金となっており、大学での中核的役割を果たし、学術的卓越性を促進し、地球上の人々の生活にプラスの影響を与えることを可能にする。QR資金は、厳格な研究評価制度(the Research Excellence Framework: REF)にリンクされており、新しく強力な大学パートナーシップを通じて、ビジネス界や慈善団体からの追加の資金を活用しつつ、研究能力及び可能性の形成に重要な役割を果たす。主流であるQR資金は、2018-19年度の10億5000万ポンドから2019-20年度の10億9500万ポンドまで増えた。

  ・2300万ポンドは、国家イニシアティブ(国家の優先課題)であるI3スキームのような国際的研究協力のサポート、及びE3スキームを通じての小さいが卓越した部門における研究能力を向上させる研究に増資される。国の施設とイニシアチブに対する予算は、2300万ポンドから4600万ポンドに増える。

  ・地球規模課題研究基金(Global Challenge Research Fund:GCRF)からの1000万ポンドは、大学が世界の貧しい国の一部の人々の生活に真の変化をもたらすようなODA適格国とのさらなる協力を追求することを可能にする。REの地球規模課題研究基金は、5800万ポンドから6800万ポンドに増える。

  ・1300万ポンドは、英国リサーチ・イノベーション(UK Research and Inovation: UKRI)を構成する個々の評議会が、共通の関心事項に取り組むため協働していることを認識し、戦略的優先事項に対応する大学に割り当てられる。REの戦略的優先事項資金は、1,600万ポンドから2900万ポンドに増える。

 

 それ以外の資金の流れについては、昨年と同レベルで維持されている。(減額はされていない)

   ・高等教育イノベーション基金(Higher Education Innovation Funding:HEIF)は、大学と、より広い世界の間の様々な相互作用を支援し、最新の産業戦略の実行を助けており、2億1000万ポンドを維持している。

  ・大学が慈善のための研究にかかる全費用を賄うのを助けるQR助成金の慈善研究的要素は2億400万ポンドで、昨年度から増額された。

  ・QR助成金のビジネス研究要素は、6400万ポンドで維持されている。

  ・大学が次世代の研究者を養成し、大学院での研究を通じて、研究や、より幅広い経済界への人材のパイプラインの健全性を保護することを支援するQR助成金の大学院研究の質監督にかかる要素は、2億6000万ポンドで、昨年度から増額された。

  ・国立研究図書館の資金は700万ポンドで維持されている。

  ・HEI Research Capital Englandの資金は、9600万ポンドで維持されている。

  ・高等教育研究基金は、8700万ポンドで維持されている。

  合計約22億ポンドの予算から、REは、大学が実行する知識交換活動と研究の質に関する基準に従って、イングランドの高等教育機関それぞれに個別の金額を割り当てる。

 Chris Skidmore大学担当大臣は以下述べた。

 「2012年以来初めて、大学のQR資金が大幅に増加したことを嬉しく思う。個人的な優先事項の一つは、将来に向けて大学をイノベーションの中心にすえることであり、これを実現するために努力できたことを嬉しく思う。

 今日のこの声明が、大学研究の重要な認識と、研究の最強国家としての英国の国際的立場を発展させられる大きな利益を有するより柔軟で好奇心に基づく研究に投資する必要性を示している。

 研究開発への投資増は、2027年までにGDPの2.4%を投資するという我々の産業戦略の重要部を果たす政府の目標の鍵となっている。政府は既に2021年までに研究開発に70億ポンドを追加投資することを既に約束しており、これは40年間で最大の増額である。

 REのDavid Sweeney会長は次のように述べた。

 「来年、イングランドの大学への資金レベルが増加することを発表できて嬉しく思う。この公的投資の増額は、イングランドの大学における世界レベルの学術研究の補強となり、知識交換型資金とともに、我々の社会のあらゆる場面に利益をもたらす大学のパートナーシップの中心となる。

 イングランドの大学研究は、地球的課題に取り組む鍵となる。そして、地球規模課題研究基金(GCRF)からの投資増は世界の貧しい地域との更なるパートナーシップを可能にし、人々の生活に違いをもたらすだろう。

 本日発表された資金は、UKRIの内部研究評議会とInnovate UKを通じて提供された分野別及びプログラムに焦点を当てた資金とのパートナーシップにおいて機能し、2027年までにGDPの2.4%を研究開発投資に充てるという政府公約の一部である。

 Uplift for Research England Quality-related Research funding to support the Government’s 2.4% commitment to R&D

 

(7) 学生の満足度は上昇、しかしまだ改善の余地はある。

 2019年7月3日に公表された今年の全国学生満足度調査(National Student Survey:NSS)によると、英国の学生は、所属する学位課程に、以前の調査より満足している。 しかし、多くの大学、高等教育機関は、未だ修正すべき箇所を多く抱えている、と学生局(Office for Students: OfS)は述べている。

 今回の調査に回答した英国の33万の学生のうち、84%以上が、所属する学位課程の質に満足しており、前年の83%から上昇している。

 イングランドでは、83%の学生が学位課程の質に満足しており、それは2018年と同じだった。

 満足度合いは、大学や学位によって様々であった。イングランドでは、全体的な満足度合いは73%から91%だった。各大学ごとの結果と他の高等教育成績提供者の結果は、今年度初めてOfSによって作成し視覚化されたデータによって見ることが出来る。

 近年の改善にもかかわらず、学生は、調査の対象となっている他の分野と比較して、課程に対する評価と批評に対しては低い満足度を未だに示している。この調査はイングランドのフルタイムの学生が対象だった。

 ・72%が、採点に使われている基準が明確だと考えている。

 ・72%が、採点と評価は公正だったと同意した。

 ・74%が、時宜にかなった批評を受け取ったと述べた。

 

 この調査では、学生がどれだけ自身の意見を大学職員が聞いてくれているかという問いでは低い結果になったことも分かった。

 ・76%は、大学職員が課程に関する学生の考えや意見を重視していると考えている。

 ・62%は、学生の課程へのフィードバックがどれだけ適用されているか明確であると考えている。

 ・69%は、自分は大学職員と学生のコミュニティの一員だと感じている。

 

 学生は、課程や大学間で満足度合いは異なるものの、教育、学習教材、学術的支援に対して全体的に満足していると報告している。例えば、89%の職員は物事を説明するのが明確であると考えており、87%は図書館の資料や情報が学習にとても役立っていると述べている。

 英国の資金団体や規制団体の代わりにOfSによって実施されるNSSは、今年は英国全土で33万人を超える学生の意見を取り上げた、世界で最も規模の大きな学生対象の調査のひとつである。403の大学、民間の高等教育機関から参加資格のある学生の72%が参加した。

 この調査の結果は、大学や学生団体によって、学生の学業経験の複数の分野にまたがって、改善を推進するために用いられる。

 データは後日、ユニスタッツのウェブサイトに公開され、どこで何を学ぶかについて、未来の大学生に対して選択肢を示す価値ある根拠を提供するだろう。

 

 OfSの最高責任者であるNicola Dandridgeは以下のように述べた。

「高等教育課程に対する全体的な満足度が今年も高いことは朗報だが、同時に、全ての学生がポジティブな経験を積んでいるわけではないことも示している。

 明確な採点基準と前向きな批評、これらは学生の能力を伸ばす鍵となる要素だが、これらが学生に提供されることを確実にするために大学がすべきことがまだある。高等教育は学生にとって人生を変える機会になるが、大学は、学生からの大学への意見に耳を傾けなければならないし、必要に応じて改善を行わなければならない。

 我々は、NSSの開発を続け、現役の学生と未来の学生両者のため、学生の意見を収集し、NSSが部門にまたがって改善を推進するための価値ある道具であり続けることを保証する。」

 Chris Skidmore大学担当大臣は、以下のように述べた。

 「我々は、授業と評価の質が学生の大学での経験において大きな要素であり、学生たちが学費など費やしたお金に見合うだけの価値を有していると感じるかどうか承知している。

 大学の課程と受ける教育の質に満足している学生が増えていることは喜ばしいが、これらの結果は、全学生が肯定的な学術経験を積むために、さらに取り組む必要があることを示している。世界をリードする大学学部を英国は有しているが、けっして満足してはならない。」

 

 *全国学生満足度調査(National Student Survey:NSS):主に英国の高等教育機関やイングランド、北アイルランド、ウェールズの継続教育カレッジにおいて高等教育資格取得のための勉強をしている最終学年の学生を主にカバーしている。この調査は、4つの高等教育規制機関と資金配分機関(Office for Students、the Scottish Funding Council, the Higher Education Funding Council for Wales and the Department for Economy Northern Ireland))及びHealth Education Englandによって資金が拠出されている。 

 

 Student satisfaction rises but universities should do more to improve feedback

 (8) 英国の約10人に4人が大学に出願。これは新記録。

 2019年7月11日、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service :UCAS)は、2019年6月30日まで行われたフルタイムの全てのUCAS学部出願に関する分析を公開した。この日は、最大で5つの大学もしくはカレッジに出願できる最後の締切日である。

 

 英国全体を通じての主要な調査結果は以下のとおり

  ・イングランドの全18歳人口の39.5%がUCAS出願書を提出した。これは、昨年の同じ時点での38.1%から上がっており、新記録である。

  ・北アイルランドでは、18歳人口の46.9%が出願した。(0.7%のダウン)

  ・スコットランドでは、18歳の出願率は32.7%である(0.1%のダウン)

  ・ウェールズでは、出願率は32.9%で0.2%アップしたが、2016年の同時期と同等の記録である。

 

 英国の18歳人口全体は1.9%下がったにもかかわらず、英国出身の出願者の数字は1%増加した。2018年の272,920人から増加して、275,520人の若者が出願した。

 EUからの出願者数は1%上昇して50,650人になった。EU外からの出願者数は記録的な数字となり、81,340人の学生が英国で学ぶため出願し、これは8%の増加である。

 中国は急速な増加を続けており、出願者数は30%増の19,760人である。このことは、初めて北アイルランドからの出願者(18,520人)よりも中国からの出願者数が多くなったことを意味している。

 全体では638,030人が大学に出願したが、これは2018年と比べて1,000人以上増加している。

 初めて、UCASは英国全体の複数の貧困に関する様々な指標を用いた報告書を公開した。

 ・英国では、もっとも恵まれない地域からの出願者数は、6%上昇し、38,770人となった。一方で、最も恵まれた地域からの出願者数は減少した。

  ・北アイルランドでは、全ての地域で2~7%出願者数が減少した。

  ・スコットランドでは、最も恵まれない地域からの出願者数が3%増加したが、他の全ての地域では減少が見られた。

  ・ウェールズでは、様々な地域が入り混じった状況もあり、最も恵まれない地域からの出願者数は1,390のままだった。

 

  UCASの最高経営責任者であるClare Marchant氏は、以下のように述べた。

 「英国の高等教育の世界的人気は、イングランドとウェールズにおける記録的な出願率、そして特に中国からの国際出願者の急激な上昇により、かつて無いほど明確になった。」

 「今回の分析は、大学が進むべき唯一のルートではないが、大学進学が若者にとってどれだけ魅力的であり続けているかを示している。調査分析によると、約4分の1の学生が代替選択肢として技術見習生制度に関心を持っている。」

 

Almost four in ten young people in England apply to university – a new record

参考:2019年7月11日 Guardian 紙の記事

「英国大学への中国人学生の出願者数が30%増加」

 英国の高等教育は、米国と中国の間の緊張状態から恩恵を受けていると専門家は言う。

 UCASの統計によると、今年英国の学部課程に出願した中国人学生は約20000人である。

 公式統計によると、英国の大学で学びたい中国からの出願者数は、昨年度から30%増加しており、この数字は、初めて北アイルランドからの出願者数を上回った。

 UCASは、北アイルランドからの出願者数18,520人と比較して、中国から学部課程への出願者数が約20,000人(2018年の15,420人から増えて19,760人)であることを明らかにした。実際の数字は、全ての出願がUCASを経由して作成されるわけではないので、さらに増える。

 英国の高等教育で学ぶ中国本土からの学生数は、最近10年間で2倍以上となった。しかし専門家は、中国人の学生が学業のためアメリカ以外の目的地を探すため、最近の中国とアメリカの間の緊張がさらに英国の大学に利益をもたらすだろう、と述べている。

 Chris Skidmore大学担当大臣はこの数字を歓迎しつつ、以下述べた。

 「留学生は、英国に多大な文化的経済的な利益をもたらす。これらの数字は、その恩恵を受けたいと望む誰に対しても世界的な高等教育をオープンにするという我々の野心の元で上手く進んでいることを示しており、私は、我々がさらに進んでいけることを確信している。」

 「UCASが示す数字は、また、英国の18歳人口全体が1.9%減少しているにもかかわらず、昨年と比較して1%多い275,520人もの英国人の18歳が出願したことを明らかにした。EUからの出願者は、ブレグジットが不透明にもかかわらず1%上昇し、50,650人となった。そしてUCASは、EU外からの記録的出願者数81,340人を発表し、これは8%の増加であった。

 中国は、既に英国の大学における留学生の最大の供給源となっている。高等教育統計部局(Higher Education Statistics Agency :HESA)によると、2007-08年において、英国には43,530人の中国人学生がいた。10年後、合計数は106,530人まで上昇し、そのうち60,460人が大学院生で、46,070人が学部生だった。

 マンチェスター大学は、ヨーロッパで最も多くの中国人留学生が在籍している。合計4万人以上の学生のうち、約5,000人が中国人留学生で、これは8人に1人が中国人であることを示している。マンチェスター大学の学生及び奉仕活動の責任者Richard Cotton氏は「大学は中国でとても知られている」と言う。「フットボールのおかげが一部」と続けた。そして2015年には、中国の習金平国家主席がマンチェスター大学にあるグラフェン研究所(NGI)を訪問した。「その後、中国からの出願者の顕著な増加が見られた」

Chinese students’ application to UK universities up by 30%

(9)成績のかさ上げへの取組

 2019年7月11日、学生局(Office for Students: OfS)は学位取得時における成績の価値が下落しているとの報告を行った。

 「学位を取得する人が増え、その中でも特に優等学位である*First及び2:1の成績を取得する人数が増えており、学位基準の信頼性に関する国民からの関心の高まりは当然のことである。各界のリーダーによって一般的に知られるようになり、全国メディアで取り上げられてきた成績のインフレについての懸念は、雇用主と将来の学生になる若者の観点から大学教育の価値を落とす恐れがある。したがって、我々が成績等級の信頼性に関する世間からの信頼をもう一度取り戻し、維持することが不可欠である。

 このことが、OfSの規制目標の一つが、成績等級が長期に亘ってその価値の保持を保証することの理由である。今回発表した成績等級における傾向の新たなデータは、そのプロセスのひとつである。我々は、透明性が重要な規制手段であるため、個々のプロバイダーや部門全体に対して、経年経過に関するデータを公開する。透明性は、重要な規制手段である。それは重要問題として注意を集め、高等教育機関全体にそのやり方についての疑問を促す。

 我々がこのようなデータを公開するのは二度目である。12月に、2017年までの分析結果を公開した。7月11日に我々は2018年も含む分析結果を公開した。必然的に、データにはタイムラグが生じる。そのため新たなデータは12月の行動要求よりも前のものであり、これらの複雑な問題に対応する部門による正しい努力が実を結ぶかどうか見通すには早すぎるのである。

 そして、独立した高等教育機関は、我々が成績基準を維持されていることを証明する部門を支援することを求めている部門や学生団体と協力して、基準を設置し維持する責任を有することを認識しているのである。

 我々は英国質保証常任委員会(UK Standing Committee for Quality Assessment:UKSCQA、高等教育界主導による高等教育質評価方法監視機関)が、一連の分類データを「セクター認識基準」として合意し、成績評価の価値を守るための措置を講じたことを歓迎する。これらの措置には、評価が学生を伸ばし、挑戦を促し、レビューすること、最終成績分類がどのように算定されているか説明し、最終試験のシステムを支援し強化すること、更なるデータを公開すること、学生の成績結果に関する分析を含んでいる。我々は、OfSがいかに、そして、いつ、規制枠組みの中でこれらの新たな部門主導による活動の一部を実施するかについて、これからの数ヶ月間相談する予定である。

 それまでの間、我々は今回の分析について注意深く検討する。分析結果は、事実上すべての高等教育機関によって授与されたFirst学位の割合に関して、統計的に大きな変化があったことを示している。我々の分析は、学生の特性の変化の幅を考慮しているが、その増加の割合はこれらの特性の変化によって説明できないことを示している。全分野に亘って、最優秀成績の占める割合が、13.9%と予期せぬ上昇をしている。我々は、異なる背景の学生間の成績達成の差を埋めることが、この上昇を説明できるわけではないと分かっており、証拠を重んじる規制当局として、我々は説明できないままになっている上昇の要因に関する理解を改善したいと考えている。

 全大学、カレッジ、その他登録された高等教育機関が、学位の基準を維持するための役割を果たしているか確認するため、2010-11学事年度に学位授与の権利を持つこととなった機関、2010-11学事年度と2017-18学事年度の間にFirst学位の割合がもっとも増加した機関に我々は尋ねたい。特に焦点を当てる機関は:

  ・説明できないほどFirst学位を増加させた機関、もしくは

 ・2010-11学事年度と2017-18学事年度での間に、First学位を説明できないほどの割合で増加させた機関

 

 高等教育機関がこれらの増加をどのように説明するかを我々が理解するのを助ける、さらなる情報を提供するように、我々は高等教育機関にお願いする。我々は、例えば、成績授与機関が成績等級の算定方法に最近変更を加えたかどうか、もしくは、スタッフ、教育、サービス、施設への投資など説明できない増加を確実に説明できるほかの証拠を成績授与機関が見つけたのかどうかについて理解したい。我々は、また、アカデミックガバナンスの取り決めが適切で効果的であることを保証するために、統治機関が実施した措置にも関心がある。

 この追加情報を求める際に、我々が公的データにて確認できる潮流が、これらの成績授与者による不正を指し示すと暗に意味するわけではない。我々は、公的監視もしくはそのようなものに従うであろう動きについての理由が、我々の注意を最も大きい説明できない増加を抱える高等教育機関に焦点を当てることを、より理解したい。学位基準の厳格な公的監視を受けて、我々は高等教育機関が一貫した基準を適用し続けることをどのように保証するのかを、理解したいと考えている。

 そうすることが、学位への国民からの信頼を維持するのに不可欠である。」

Getting to grips with grade inflation

  

(10)11の国立最先端研究施設への国の投資2億強ポンドが、民間企業から5億ポンドの融資を引き出す

 2019年7月10日に、英国リサーチ・イノベーション(UK Research Innovation:UKRI)が以下のように発表した。

  ・7億2,100万ポンドの国や民間からの投資は、産業の専門家集団を育成し、サウスウェールズ、サウスウェスト、イーストミッドランド、ノースウェスト、ロンドン、サウスウェストにおける経済成長を促す11の新たな大学研究センターを生み出す。

  ・11の新たな施設は、衛星技術や次世代半導体の開発を加速させることから、心肺の病気、目の健康、がんの治療の進歩まで、幅広い範囲の分野における最先端の研究とイノベーションを支援する。

  ・リサーチ・イングランド(Research England:RE)は、UKRIの主力である英国研究パートナーシップ投資ファンド(UKRPIF:UK Research Partnership Investment Fund)を通じて2億2,100万ポンドの投資を行う。BT、シーメンス、South West Water、British Heart Foundationのような、100近いビジネス、慈善団体、慈善的な寄付者が、追加で5億ポンド投資した。

 

 2012年に設立され、今年で6度目となるUKRPIFは、世界的課題や好機に対処し、国家の生産力を改善するイノベーションを促し、2027年までにGDPの2.4%を研究開発に投資するという政府の産業戦略目標の主要な支援となっている。

Research England investment of £221m attracts £500m for 11 state-of-the-art research facilities