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UK HE Information

2023年7月英国高等教育及び学術情報

2023年9月07日

(1) 教育における人工知能の利用に関する新しい原則

(2) 英国とEUがホライズン・ヨーロッパの参加協定案に合意?

(3) 2020年以降の進行状況:高等教育における人種的な嫌がらせに対する取り組み

(4) LEO: 卒業生と大学院生の成果

(5) AI 評議会:その最新情報

(6) 英国首相と欧州員会委員長はホライズン・ヨーロッパに関して合意できず

(7) 英国の18歳におけるコンピューターコースへの願書提出が最多記録

(8) UKRI年次報告書発表

(9) 投資家は英国のライフサイエンスを見捨てる、政府報告書で明らかに

(10) 研究評価制度:提出内容の包括的分析および、アウトプットの特性と採点の表現

(11) 英-独研究パートナーシップの高まり

(12) 学位取得に法外な値段をつけている大学の取り締まり

(13) リサーチ・イングランドは大学研究と知識交換の予算を発表

(14) 大学の成績インフレは減少し始めているが、上位成績の半数は未だに説明できず

(15) 英国の教育と研究の関係、それがなぜ重要なのかに関する新報告書発表

(16) 科学技術研究の推進のため英国が現状を打破するためのファンドを設立

(17) 英国の卒業生:73%は大学行ったことで念願の仕事に就けた

(18) 今年は英国の名門大学での競争の激化が予想される


(1) 教育における人工知能の利用に関する新しい原則
2023年7月4日、ラッセルグループに加盟している24の大学の学長は、生成AI、新しいテクノロジー、Chat GPTのようなソフトウェアにおける倫理的で責任ある利用を支援するため、教育機関や学部レベルの取り組みを形成する主旨の声明を発表した。大学が学生や職員に対して“人工知能(AI)リテラシー”という概念を導入することで、技術の急速な進化に対応し、教育や学習の機会を最大限に活用できるようにするための新しい原則を策定した。AIと教育の専門家が協力して策定された新原則は、生成AIのリスクとチャンスを認識し、職員と学生におけるAI活用が進む今日において、非常に重要なものとなる。
同日の共同声明にあった5つの原則:
1. 大学は学生と職員がAIリテラシーを獲得するよう支援する
2. 職員は学生が生成AIツールを効果的に使用できるよう、サポートする用意をするべきである
3. 大学は生成AIの倫理的な利用を行い、平等なアクセスを支援することを、教育と評価に取り入れる
4. 大学は学術の厳格さ、誠実さの維持に努める
5. 大学はAIリテラシーを教育へ応用させ、ベストプラクティスを共有する
この原則の声明は、政府がイングランドの教育において生成AIの利用に関する協議を開始した直後に発表された。
ラッセルグループの最高責任者であるTim Bradshaw氏のコメント:
「AIの画期的な躍進は、働き方を変革し、学生が充実したキャリアを築くために必要な新しいスキルを獲得する上で重要な役割を果たしている。大学職員も自身の教育の向上にAIを活用し、科目に新たな展開をもたらす方法をサポートする必要がある。この分野は急速に進化しており、そのテクノロジーのリスクと機会は日々変化している。教育におけるAIの選択は、明確に理解された価値に基づいて行われており、これによって全ての人々の利益が追求されている。AIによる改革のチャンスは大きく、我々の大学はこの機会を掴もうと決意している。この原則の声明では、学生と職員に利益をもたらし、ラッセルグループの大学が提供する高品質な教育を完全に保護するために取り組むことを強調している。」
Russell Group principles on the use of generative AI tools in education: https://russellgroup.ac.uk/media/6137/rg_ai_principles-final.pdf
Russell Group:
https://russellgroup.ac.uk/news/new-principles-on-use-of-ai-in-education/

関連記事 2023年7月4日掲載
The Guardian UK universities draw up guiding principles on generative AI:
https://www.theguardian.com/technology/2023/jul/04/uk-universities-draw-up-guiding-principles-on-generative-ai

(2) 英国とEUがホライズン・ヨーロッパの参加協定案に合意?
2023年7月5日、アメリカの政治に特化した新聞社であるPolitico紙は、英国首相のRishi Sunak氏と欧州委員会の委員長であるUrsula von der Leyen氏が来週、英国のホライズン・ヨーロッパへの再参加に関する長期的な厳しい話し合いに終止符を打つ予定であると報じた。ロンドンからの情報によれば、「来週火曜日に開催されるvon der Leyen氏とSnak氏の重要な会議に先立ち、今週末に協定に関する草案が合意される可能性がある」と2人の英国政府関係者(重要な内容のため匿名希望)が述べた。
政府関係者の一人は、「2021-2027年の期間にホライズン・ヨーロッパへの再加盟に加えコペルニクスの地球観測プログラムへの再参加も予定しているが、原子力研究及び開発計画であるユーラトムに関しては、英国政府と英国の原子力分野は、費用対効果が悪いという理由から参加しない」と述べた。
英国は2020年1月のEU離脱により、これらの3つのプログラムすべてから正式に撤退したが、離脱後の北アイルランドの貿易規制に関する問題により、英国の第3国としての再加盟交渉が難航していた。英国とEUがWindsor Frameworkの協定に合意した今年3月からは、本格的な交渉が再開された。EUは英国がホライズン・ヨーロッパへ参加できなかった2年に関して、参加費の支払いを要求しなかったため、英国の参加に向けた早急な解決が期待された。しかし、英国政府はこの2年間の不在により、英国を拠点とする研究者や企業が複数の国際研究コンソーシアムに参加できなかったため、英国の研究計画の不透明性がより浮き彫りになっていると主張し、欧州全体の研究者より不利な立場にあることから、参加料の大幅な割引を要求した。
英国政府関係者は、「英国を拠点とする研究者が”過去5年間でどれだけ助成金を支払い戻せるかを予想するモデル”を作成し、そのギャップの埋め合わせのために更なる割引を求めた」と述べた。
一方、英国の官僚たちは昨年、国内向けにPioneerを発表するなど、プランBとしての選択肢を示した。英国の拠出金に関する交渉は今週火曜日の深夜に終了し、財務省の関係者はこの提案に合意する見込みであるが、詳細については言及を避けた。Sunak氏は、来週火曜日にリトアニアのビリニュスで開催されるNATO首脳会議に合間に、von der Leyen氏との二国間会談を行う予定である。この会合では、今週末に合意内容の詳細を検討し、合意に至るかどうかの決定が下されると予想されている。
2人目の政府関係者は、「今週末は重要な時期となるだろう」と述べ、来週火曜日の会議が大きな分岐点となるとの見方を示した。Sunak氏によると、2024年1月にホライズン・ヨーロッパとコペルニクスに参加する予定であり、EUもその日付で同意しているとのことだが、最初の政府関係者によると、具体的な日付に関する合意も来週火曜日に行われる予定である。また、首相と委員長の協定が署名された後、法的な文書が作成される予定であると、政府関係者は説明した。
政府の広報担当者は水曜日に、「話し合いは続行中であり、まだ合意に至っていない」と述べた。
Politico:
https://www.politico.eu/article/britain-and-eu-agree-draft-horizon-deal/

関連記事 2023年7月5日掲載
Science Business: UK talks on Horizon Europe still ongoing, Brussels sources say
https://sciencebusiness.net/news/horizon-europe/uk-talks-horizon-europe-still-ongoing-brussels-sources-say


(3) 2020年以降の進行状況:高等教育における人種的な嫌がらせに対する取り組み
2023年7月5日、英国大学協会(Universities UK: UUK)は、2020年11月以来取り組んでいる英国高等教育における人種的な不平等の問題に対処する一環として、”Tackling racial harassment in higher education”と題する、人種的嫌がらせへの取り組みに関する一連の勧告を含んだガイダンスを発表した。2023年の最新版では、このガイダンスの影響を見直し、大学による改善策の詳細な方法を提示している。調査結果や人種的な嫌がらせを専門に担当する上級職員と、実際に嫌がらせを経験した学生とのフォーカスグループの成果も盛り込まれている。
UUKから上級リーダーへの推奨内容は以下のとおり:
• 人種的な嫌がらせに対する取り組みは、大学内外の専門知識に基づいて行うべきである
• 人種的な嫌がらせの対策を進めるための説明責任を確保し、成功基準を明確に定義し、理解されるようにする
• 人種的な嫌がらせの経験を持つ職員や学生の意義ある参加と協力を奨励し、その目的を明確にし、心身の健康を最優先とするよう努める
• 人種的な嫌がらせに対する取り組みの成果や結果を、職員や学生に対して明確に報告する
• 職員と学生向けのトレーニングを改善し、情報が全体に浸透し、反省の機会を提供することで意義を持たせる
高等教育機関が人種的な嫌がらせに強い態度で取り組むことは、黒人、アジア系、少数民族系の職員や学生がキャンパス内で安全を感じるために重要である。UUKはAdvance HEの人種的な平等への取り組みを支援し、高等教育機関がこれらの推奨事項を実行する際には、有意義な変化をもたらすために必要な能力、ガイダンス、専門知識を持つことが求められる。
UUKの調査は以下の内容を含んでいる:
• 2020年11月の報告書発表以降の進展状況を調査するため、大学の上級職員に対するオンライン調査を実施、25人から回答を得た
• 人種的な嫌がらせに取り組む大学の上級職員とのフォーカスグループの実施
• 人種的な嫌がらせを経験した学生とのフォーカスグループの実施
UUKの大学長によるStudent Policy Networkからの意見:
また、2019年にEHECが行った世論調査を再び実施し、人種的嫌がらせに関する調査を828人の対象者を対象に依頼した。学生対象の調査(828人の学生が回答)を通じて、少数民族系の学生の間で人種的な嫌がらせがまだ存在していることが明らかになったが、同時に報告数の増加など、改善の兆候も見つかった。24%の少数民族系学生が高等教育で何らかの形の人種的嫌がらせを経験しており、黒人学生では45%に達している。最も頻繁に経験する人種的嫌がらせは、人種的な中傷、侮辱、または冗談であり、このような嫌がらせを経験した学生の55%以上がこれに該当する。2021/22学事年度において、10人に4人(42%)の学生が人種的な嫌がらせを大学に報告しており、この数字は2019年にEquality and Human Rights Commission(EHRC)が実施した調査よりも9%増加してる。
Universities UK (UUK):
https://www.universitiesuk.ac.uk/what-we-do/policy-and-research/publications/tackling-racial-harassment-higher-0


(4) LEO:卒業生と大学院生の成果
2023年7月6日、教育省(Department for Education; DfE)は長期的教育的成果(Longitudinal Education Outcomes: LEO)に関する卒業生と大学院生の雇用と年収の成果を発表した。この発表は、第一学位(レベル6)からレベル8までの資格を取得して卒業した者に焦点を当て、入手可能な最新データ(2020/21年度)を元にした公式の統計情報である。雇用と収入の結果は、イングランドの高等教育機関(Higher Education Institutes: HEIs)、代替教育機関(Alternative Provider: Aps)、継続教育機関(Further Education Colleges: FECs)での卒業生と大学院生を対象にしている。これらの結果は、卒業後1年目、3年目、5年目、および10年目の時点でのものである。この発表では、収入に関する数字は、雇用を続けている卒業生のみを対象として報告されている。また、2014/15年度から2019/20年度までの課税年度を比較するデータも含まれており、英国在住者と海外(EUおよび非EU居住者)の結果は個別に示されている。2020/21年度はCOVID-19の流行と重なる年度であり、公式なロックダウンや地域的制限があった。これらの要因が卒業生の収入と雇用に影響を及ぼした可能性がある。政府の雇用計画に関するデータも参考にされている。また、2020年1月に英国がEUを離脱したことも考慮されており、これがEU出身の卒業生と非EU出身の卒業生の雇用と収入に影響を与えた可能性が示唆されている。この発表は、第一学位取得卒業生と大学院生の成果と収入を比較し、特に大学院に進学した者に焦点を当てている。大学院進学者は典型的な一部ではないことが考慮されるべきである。
主な結果と数字は以下のとおり:
英国在住の第一学位取得者と大学院生の収入中央値は増加傾向にある。卒業5年後の第一学位取得者の収入中央値は28,880ポンドで、前年度と比べて2.3%上昇した。レベル7(座学)の大学院生の収入は35,000ポンドで、4.1%増加し、レベル8の大学院生は40,500ポンドで3.5%増加した。一方、新卒者の収入はCOVID-19の影響を受け、前年より減少している。収入中央値はインフレ調整を考慮すると、実際の増加幅は減少する。2019/20年度の収入中央値の増加率は、インフレ調整を行わなかった場合の増加率と比較して1ポイント減少する。雇用が継続的である割合は、卒業5年目で減少傾向にある。例えば、第一学位取得者の雇用が継続している割合は86.6%で、前年度より1.1ポイント減少した。性別による収入の格差も存在する。卒業5年後の女性の収入中央値は男性の収入中央値より低い傾向があるが、近年はわずかに減少している。家族の経済状況による格差も見受けられる。無料で学校給食を支給されていた卒業生は、そうでない卒業生と比べて収入が低い傾向がある。英国在住の卒業生と大学院生で、EU出身と非EU出身の収入中央値に差があるが、その差は縮小してきている。EU出身の卒業生の場合、雇用が継続的である割合は前年度より減少しており、これがEU離脱の影響を示唆しているが、COVID-19の影響も考慮すべきである。これにより、2020/21年度の教育的成果に関する様々な要因と影響が明らかにされている。
Department for Education (DfE):
https://explore-education-statistics.service.gov.uk/find-statistics/leo-graduate-and-postgraduate-outcomes


(5) AI 評議会:その最新情報
2023年7月7日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)はAI評議会(AI Council)に関する最新の報告を行った。2019年の成立以来、AI評議会(AI Council)は国家安全保障、防衛、データ倫理、スキル、規制などAIの政策について政府に助言を行っており、国家AI戦略や最近のAI規制白書を含む重要な政策の決定に大きな役割を果たしてきた。また、同評議会は政府の初期段階でCovid-19の取り組みにも支援を行い、AIのスタートアップエコシステムの緊急な必要性を強調し、Covid-19の流行の対応としてテクノロジー分野への政府支援を具体化し、至急の機密情報収集を促進した。AI評議会のメンバーの任期満了に伴い、DSITは人工知能を含むDSIT全体の様々な優先事項について意見を求めるため、より幅広い専門顧問グループを設立することを決定した。これにより、最近設立されたFoundation Model Taskforceを補佐し、AIの安全性と研究に関する重要な活動を推進する役割を果たす。AI評議会の設立以来、英国のテクノロジーの状況は急速に発展してきた。科学、イノベーション、テクノロジーの省庁となったDSITは英国の科学と技術の超大国となるという野望を推進し、世界のAI分野で優れた人材がロンドンに集まる状況を作り出した。また、今年の後半にはロンドンで開催される世界AIサミットが予定されている。DSITの大臣は近く退任する評議会のメンバーや議長に対して、英国のAIエコシステムの基盤を強化し、AI政策の初期戦略の開発に貢献してくれたことに感謝の意を示した。政府は今後も元AI評議会メンバーの幅広い専門知識を重要な情報源として活用していく予定である。
Department for Science, Innovation and Technology (DSIT):
https://www.gov.uk/government/news/ai-council


(6) 英国首相と欧州員会委員長はホライズン・ヨーロッパに関して合意できず
2023年7月12日、Research Professional Newsは、NATO首脳会議がリトアニアのヴィリニュスで行われている中、英国首相と欧州委員会委員長の待望の会談が行われ、ホライズン・ヨーロッパ提携に関する合意に至らず、交渉が続いているとの理解を伝えた。ホライズン・ヨーロッパ・プログラムを含むEUの研究開発プログラムへの再参加に関して、先週、英国首相Rishi Sunak氏と欧州委員会委員長であるvon der Leyen氏とのビリニュスでの会談が7月11日か12日に行われる予定であると報道されたが、実際の会談では合意には至っていない。英国政府関係者によれば、EUのプログラムへの再参加に関する交渉は依然として続いていると述べている。英国の公式な立場としては、ホライズン・ヨーロッパへの参加を目指しているものの、合意に至る場合には納税者にとって費用対効果があり、英国の科学研究にとっても有益なものである必要があるとされている。Sunak氏はNATO首脳会議で多くの世界のリーダーと会談を行っており、またvon der Leyen氏との会談ではウクライナ情勢やロシアの侵攻に対する状況についても話し合ったとされている。しかし、政府はこの会談に関する詳細を公表しない方針である。また、この会議に先立って、Sunak氏とvon der Leyen氏による会談が6月16日に行われた。政府は当時、英国とEUの科学技術分野の協力が進展する機会になると述べ、英国のホライズン・ヨーロッパ・プログラムへの参加に関する議論が進展し、英国とEUが電気自動車バッテリー製造に関して合意し、大陸全体の自動車産業を支援することを期待していることを述べた。科学者を代表するProspect Unionの副書記長であるGarry Graham氏は、
「ホライズン・ヨーロッパへの参加に合意ができなかったことは英国の科学とイノベーションにとって大きな機会損失である」
と述べ、国境を超えた提携が卓越した研究と世界的な人材を引き寄せるために不可欠であると指摘した。
Research Professional News:
https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-politics-2023-7-sunak-and-von-der-leyen-fail-to-agree-horizon-europe-deal/


(7) 英国の18歳におけるコンピューターコースへの願書提出が最多記録
2023年7月13日、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)の新しいデータによると、英国の18歳の大学進学希望者のうち、コンピューターコースへの申請数が過去最大を記録した。6月30日はUCASへの大学進学願書受付最終日で、同日に最大5つのコースに願書申請が可能である。この日のデータによれば、コンピューターコースへの志願数は94,870件となった。昨年は86,630件で、2021年は71,150件であったため、コンピューターコースへの志願者数は大幅に増加している。なお、コース別の申請数の上位は以下のとおり:
ビジネス・経営コース(184,000件)
社会科学コース(178,680件)
医療関係コース(156,460件)
デザイン・クリエイティブ・舞台芸術コース(126,310件)
生物・スポーツ科学コース(105,490件)
工学・技術コース(96,180件)
コンピューターコース(94,870件)
この傾向は、以下の分野における関心の増加によるものである。
コンピューター・サイエンス系(2022年比、11%増、2021年比、35%増)
ソフト・エンジニアリング系(2022年比、16%増、2021年比、45%増)
コンピューター・ゲーム、アニメーション系(2022年比、2%増、2021年比、28%増)
人工知能系(2022年比、4%増、2021年比、16%増)
また、英国の18歳の中でコンピューター関連に興味を持つ学生が増加しており、特に恵まれない環境(POLAR4 Quintile 1)にいる学生の願書数も増えている。コンピューター系全体の願書数も、2022年比で9%、2021年比で26%増加した。ただし、コンピューター系全体としては依然として男性が多く、全18歳のうち女性の割合は18%であった。これに対して2022年は17%、2021年は16%であった。デジタル・テクノロジーの進化やAIの普及が進む中で、コンピューター系の学位に対する関心が高まっていることが示唆されている。このトレンドは今後も続き、2030年には100万人以上の高等教育志願者が出ることが予想されている。
Universities and Colleges Admissions Service (UCAS):
https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/uk-18-year-olds-make-record-number-applications-computing-courses

(8) UKRI年次報告書発表
2023年7月13日UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は2022年から2023年の財政年度の年次報告書と決算を発表した。この報告書は“UKRIの戦略:明日を共に変革する“の初年度の進行状況と経営計画の中にある活動について報告している。議会に提出された報告書は、UKRIの実績と財政概要が記載されている業績報告書も含まれている。この戦略の中で6つの戦略目標に対してどのように達成しているかの概要を記す。
1. 人材とキャリア:20億ポンドの総合人材予算を作り、人材に対する投資の方法を変革する
2. 場所:高い可能性のあるイノベーションクラスターの成長の加速のために科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)と都市地域パートナーシップと共にInnovation Accelerators のパイロット版を共同開発する
3. アイディア:英国全土で6,216件の新しい研究やイノベーションプロジェクトに投資を行い、優秀な人材やチームが研究の継続ができるようにする
4. イノベーション:研究者やイノベーターに対して、商業化に必要な投資を活用し、ビジネスを迅速に成長させ、英国全土で効果的で、最先端なイノベーションを行えるネットワークとインフラへのアクセスの支援を行う
5. インパクト:人工知能、量子技術、工学生物学などを含む、明日のテクノロジーにおいて世界のトップの地位を確保するため、2億5000万ポンドの技術の発展のための基金を立ち上げる
6. 世界クラスの組織:新しい資金提供サービスの初期トライアルなどを含む、組織変革プログラムを通して我々の取り組み方の改善を行い、研究やイノベーション資金提供に対する申請者に対して、より良い利用者としての経験を作る
Annual report and accounts:
https://www.ukri.org/publications/annual-report-and-accounts/
https://www.ukri.org/news/ukri-publishes-annual-report-2022-to-2023/

(9) 投資家は英国のライフサイエンスを見捨てる、政府報告書で明らかに
2023年7月13日、Pharmaletter(ヘルスケア業界の製薬、バイオテクノロジー、ジェネリック医療品分野専門のウェブサイト)によると、英国政府によって発表された最新のライフサイエンス競争力指標によれば、投資家たちは投資に対する利益の還元が厳しくなり始めたため、英国のライフサイエンス分野を見捨てつつある。2022年のライフサイエンスの海外直接投資(foreign direct investment: FDI)の推定価値が2021年と比較して48%減少し、19億ポンドから10億ポンド(13億USドル)に低下した。この低下によって、2022年において比較対象国18か国の中で9位に転落し、アイルランド、インド、シンガポール、ベルギーなどが主な受益国となった。また、英国のエクイティファイナンスも2021年の72億ポンドから2022年の33億ポンドと大きく減少した。新規株式公開(initial public offerings : IPOs)の数と調達金の両方で大幅に減少し、2021年に11件のIPOで7億5150ポンドを調達したことに比べ、2022年では3件のIPOで710万ポンドが調達された。英国のライフサイエンス投資の崩壊は、ブランド製薬品の製造者が英国の収益に対して支払うべき収益率が2022年の15%から2023年の23%に上昇したことが原因とされている。2014年から2021年の平均リベート率は6.88%だった。英国製薬産業協会(Association of the British Pharmaceutical Industry)の会長であるRichard Torbett氏は次のように述べている:
「国際市場から見放された場合、その信頼を取り戻すことは極めて難しい。業界は英国が過度に国際的で非競争的なリベート率に対処しない限り、企業や投資家が英国に拠点を置くことは期待できないと何度も警告してきた。」
「英国は引き続き世界のライフサイエンスのリーダーとしての特色を持つが、閣僚が英国経済成長を促進する産業の可能性を選び出すことは正しい判断である。しかし、話し合いだけでは限界がある。我々は商業環境を改善して、英国を真に投資に魅力的な場所にする必要がある。」とも述べている。
Pharmaletter
https://www.thepharmaletter.com/article/investors-abandoning-uk-life-sciences-government-report-shows
*エクイティファイナンス:企業が新株発行を通じて、事業のため資金を調達する行為)


(10) 研究評価制度:提出内容の包括的分析および、アウトプットの特性と採点の表現
2023年7月13日、研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)は研究における重要な役割を果たしており、REF2021で研究を提出した学術職員の集団的な特徴を英国の広範な人口と比較し、提出された職員の間でのアウトプットの特性の分布、専門家委員会によるアウトプットの採点についての報告書を発表した。
Analysis of inclusion for submission, representation in outputs attribution and scoring : https://www.ref.ac.uk/media/1917/ref-2021-analysis-of-inclusion-for-submission-representation-in-outputs-attribution-and-scoring.pdf
Research Excellence Framework (REF):
https://www.ref.ac.uk/publications-and-reports/analysis-of-inclusion-for-submission-representation-in-outputs-attribution-and-scoring/

(11) 英-独研究パートナーシップの高まり
2023年7月14日、英国リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)とドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft: DFG)の間で交わされた覚書は、両国が大きな変革を遂げる重要な契約となった。この覚書は、研究者主導の共同研究の促進や、ドイツと英国の研究者間の二国間協力の強化を目指すものである。最初の二国間協力の機会はUKRIによって展開されていく。
以下の分野においては具体的な進展がある:
• 統合的なマイクロバイオームに関するバイオテクノロジー・生物科学研究会議(Biotechnology and Biological Science Research Council: BBSRC)の分野では、今後数週間後に詳細な情報が入る予定
• 工学・物理科学研究会議(Engineering and Physical Sciences Research Council)
• 医学研究会議(Medical Research Council)
成功を収めている共同研究の歴史
この過去5年間にわたる協定は、DFGとUKRI全体で初めての覚書であり、英国の各研究会議とDFGとの間で成功を収めてきた共同研究の歴史に基づいている。例えば、芸術・アート人文科学研究会議はDFGと継続的な覚書を交わしており、この提携により英国とドイツの芸術と人文科学の研究者が協力し、優れたDiscovery Researchプロジェクトを共同で実施するための年間資金提供の機会が提供され、現在76のプロジェクトが進行中である。
UK Research and Innovation (UKRI):
https://www.ukri.org/news/uk-germany-research-partnership-grows/


(12) 学位取得に法外な値段をつけている大学の取り締まり
2023年7月17日、教育省(Department for Education: DfE)は、良い成果が出せず、高い退学率や有利とは言えない就職率を持つ大学コースを厳しく取り締まることを発表した。この措置は学生と納税者を保護するための強化策であり、高い退学率や就職の見通しが良くないコース、低賃金の仕事で高額の借金を抱えるような状況をもたらすような質の悪い大学学位コースを対象とするものである。これについては英国首相と教育大臣が発表した。この計画により、学生局(Office for Students: OfS)は学生が成果を出せなかったコースで大学の学生定員を制限することができるようになる。英国には多くの世界有数の大学があるが、ごく一部のコースでは学生に負債を抱えさせ、低収入で将来の見通しが立たない状況に陥ってしまうこともある。政府は高等教育への膨大な投資を行っており、卒業後に低収入である場合、納税者は膨大な学費を負担することになるため、公平な制度の構築を目指している。OfSによると、卒業後15か月を経過しても10人に3人は高度なスキルが必要とされる職に就かず、または進学していないというデータがある。英財政研究所(Institution for Fiscal Studies:IFS)の統計によれば、もし大学に進学しなかった場合、5人に1人は経済的に今よりも良い状況にあるとされている。政府は大学やカレッジが高品質な教育を提供し、学生が自分に合った進路を選ぶことを支援するため、技術訓練や技能実習の強化を行う考えである。この発表の一環として、政府は教室での講義が主な、大学入学1年前のファンディション・イヤー(基礎学位コース)の学費を、現在の最大額である9,250ポンドから5,760ポンドに削減する方針を打ち出している。ファンディションコースは、医学系や獣医学系など特定の入学要件や知識が必要な学部への入学前に備えるための追加的な1年の課程である。ただし、ビジネスなどでファンディション・イヤーが必要でないコースに対しても勧められているケースが多すぎることが調査で明らかになった。OfSは、学生がどこで何を学べるかを決定するための情報を提供するために努力し、将来の収入などを含む大学コースの質に関する情報を容易に入手できるようにするとともに、収入が見込めないコースに関して厳格な規制を行うよう政府の要請を受けている。英国首相であるRishi Sunak氏は、英国が世界有数の大学を持ち、学位取得によるリターンが大きいと述べている。しかしながら、多くの若者が間違った期待に導かれ、質の低いコースに進学してまともな職に就けない状況になってしまっていると指摘し、暴利をむさぼるような大学コースに対する取り締まりが行われる一方で、技術訓練や技能実習の強化も行われると述べている。
教育大臣であるGillian Keegan氏は、学生や納税者は高等教育への投資において、「費用対効果と良い見返りを期待している」と述べている。新たな措置は、低品質のコースを提供し続けている高等教育機関を取り締まり、学生に誤った約束をしてしまう状況を防ぐためのものであり、どの大学で学ぼうとも、学生が成功するために必要なスキルを得るためには重要なことだとしている。
独立した委員会の議長であるPhilip Augar氏は、「この措置は学生勧誘に対する強いメッセージであり、高等教育機関は建設的な対応をするべきだ」と述べている。Department for Education (DfE):
https://www.gov.uk/government/news/crackdown-on-rip-off-university-degrees

参考記事 
英国大学協会(Universities UK: UUK)
https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/president-universities-uk-responds
https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/chief-executive-universities-uk-responds
ラッセル・グループ(Russell Group)
https://russellgroup.ac.uk/news/russell-group-responds-to-government-higher-education-announcement/
ユニバーシティ・アライアンス(University Alliance )
https://www.unialliance.ac.uk/2023/07/17/university-alliance-responds-to-the-department-for-educations-announcement-on-higher-education-reform/
ミリオンプラス (MillionPlus)
https://www.millionplus.ac.uk/news/press-releases/millionplus-comment-on-the-governments-response-to-the-he-reform-consultation
British Academy
https://www.thebritishacademy.ac.uk/the-british-academy-responds-to-government-proposals-to-apply-student-number-caps-to-university-courses/the-british-academy-responds-to-government-proposals-to-apply-student-number-caps-to-university-courses/
The Guardian
https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/jul/17/the-guardian-view-on-rip-off-degrees-another-low-value-government-intervention


(13) リサーチ・イングランドは大学研究と知識交換の予算を発表

2023年7月19日、リサーチ・イングランド(Research England: RE)は大学研究と知識交換(Knowledge Exchange: KE)の予算を発表し、歳出見直し(Spending Review)の期間内に総額80億ポンドと予想される資金提供に向けて進んでいる。英国の研究とKEの基盤の優秀性に対する国内外からの認識は、これらの資金提供の決定により強化されるであろう。持続可能な経済成長、生産性の強化、政府の科学技術戦略の目標達成に向けて、英国の大学は重要な役割を果たすことになる。この継続的な資金提供により、REは活気に満ちた研究およびイノベーションのシステムを育て、それによって国全体で他の研究と知識交換のパートナーシップの恩恵を受けることができるようになるだろう。
大学、企業と地域のパートナー
REによるイングランドの大学への長期的かつ実績重視の投資は、個々の研究プロジェクトに安定した基盤を提供するだけでなく、大学、企業、地域のパートナーとの迅速な提携も可能にしている。同日、REは社会や経済の利益のために研究と知識交換をもたらすため、歳出見直しの期間中に安定した予算配分の継続を確認した。科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)からの資金提供とDSITの優先順位に関する書簡は、資金提供の決定を支えるものであり、DSITはUKRIの戦略的な計画で特定された優先順位を承認している。
Research England (RE):
https://www.ukri.org/news/research-england-publishes-university-research-and-ke-budget/


(14) 大学の成績インフレは減少し始めているが、上位成績の半数は未だに説明できず
2023年7月20日、学生局(Office for Students: OfS)によって発表された数字によれば、卒業時の上位成績獲得者が2010/11学事年度以来初めて減少したが、Covid-19の流行以前のレベルにまだ戻っていないことが分かった。発表された数字によると、2021/22学事年度において卒業生が授与した第一学位取得者の半数は、過去10年間の学生の成績と比較して、入学前の学生の成績や専攻科目の変化では説明できないことが指摘されている。報告書の分析によれば、2010/11学事年度から2021/22学事年度までの間、学生が授与した学位について、分野や科目のレベル、各大学やカレッジのデータが示されている。2011/12学事年度には第一学位を授与された割合は15.5%であった。その後、最も優秀な学位の授与割合は2倍以上に増加し、2021/22学事年度には32.8%に達した。ただし、これは2020/21学事年度の37.4%からは減少している。高等教育進学時に学生が取得した資格に関わらず、第一学位の授与は2021/22学事年度に減少したが、2010/11学事年度と比較すると高い水準である。2021/22学事年度で、Aレベルの成績がAAA以上を取得して大学進学した56.2%が第一学位を授与された。しかし、2020/21学事年度では60.7%、2010/11学事年度では33.6%であった。Aレベルの成績がAABだった学生は、2020/21学事年度から2021/22学事年度の間で第一学位の授与割合が最も増加し、22.6%から47.1%に上昇した。第一学位に関して、説明できない学位取得の最近の変化は各大学ごとにかなり異なり、特定の高等教育機関では増加から減少まで幅広い違いがあった。全体的には4.8%ポイントの減少であった。
Office for Students (OfS):
https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/university-grade-inflation-starts-to-drop-but-half-of-top-grades-still-unexplained/

関連記事 2023年7月20日 掲載
BBC News Top degrees fall for the first time in a decade
https://www.bbc.co.uk/news/education-66259391

(15) 英国の教育と研究の関係、それがなぜ重要なのかに関する新報告書発表
2023年7月20日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)は、学生局(Office for Students: OfS)前最高責任者で、現在University of Bristolの実務教授であるNicola Dandridge氏の著作である新しい報告書、”The Relationship between teaching and research in UK universities - what is it and does it matter?”を発表した。この報告書は、教育と研究に関して、高等教育機関、学生、研究者、政策立案者によって取られる異なるアプローチを検討し、研究に基づく教育という概念が謙虚に示されながらも、いかに曖昧に実行されているかに焦点を当てている。この関係は人によって異なる意味を持ち、さまざまな政治的な文脈でその価値が確認されていないようである。HEPIのレポートは、教育と研究の価値を評価し、学生に与える変革の影響方法を探求している。また、この2つの活動には明確な関連性がないケースや、学生の観点から必要のないケースも示されている。
報告書の内容の要点は以下のとおり:
研究に基づく教育という概念は引用されることがあるが、学生にとっては現実的ではない場合もある。これは学生に誤解を招く可能性があり、教育の質を曖昧にするかもしれない。また、研究に基づく教育の優れた事例があるにもかかわらず、それを無駄にする可能性がある。教育と研究という2つの活動は、大学内または大学間で分離されつつある。これにより、多くの学生、特に恵まれない環境の学生が研究活動に触れる機会を持たず、学部教育の経験をする可能性がある。これは多くの学生にとって問題ではないが、他の学生にとっては卒業後の進路選択に影響を及ぼす可能性がある。これは将来のキャリアに影響を及ぼすだけでなく、学術の労働人口の構成にも影響を与える可能性がある。2つの活動の分離は、キャリアの進展や学術職員にとって学問の特性にも影響を与える可能性がある。特に、教育が研究よりも低い地位と認識される場合に顕著である。研究と教育の関係が納得のいく形でない場合、政府の政策に影響を及ぼし、重要な政策、社会、産業目標に支障を来す可能性がある。
Nicola Dandridge氏のコメント:
教育と研究は大学の活動の中心であり、英国の高等教育制度は教育と研究の両面で優れている。しかし、これら2つの関係については明確さに欠けることがある。あるレベルでは関係が重要ではなく、2つの活動が互いに適切であったり、全く異なる成果をもたらすこともある。しかし、他のレベルでは2つの活動の関連性が重要であり、学生とのコミュニケーションの透明性、教職員の地位、学問のキャリア、広範な社会的、政治的目標の達成に影響を与えている。特に、教育と研究が共に変革をもたらす可能性は無視されていることがある。この報告書は研究に基づいたものであり、複雑な問題に触れているが、少なくとも私たちの分野でさらなる議論を呼び起こすことを期待している。
Higher Education Policy Institute (HEPI):
https://www.hepi.ac.uk/2023/07/20/new-report-explores-the-relationship-between-teaching-and-research-in-uk-universities-and-why-it-matters/


(16) 科学技術研究の推進のため英国が現状を打破するためのファンドを設立
2023年7月26日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、民間企業と慈善事業投資家とのパートナーシップに基づいて築き上げられ、最先端研究の支援を目指すResearch Ventures Catalystとして5,000万ポンドの投資を発表した。
• 新しく政府によって設立された基金は最先端研究の支援を促進するために民間企業と慈善事業投資家とのパートナーシップによって築かれ、健康、技術、科学の新たな発見を推進し、数千万ポンドの資金調達を目指す
• Research Ventures Catalystは産業や慈善事業投資家の支援により、政府からの最大5,000万ポンドの投資を実現し、英国の共同研究の新たな試みを推進し、その後の経済成長に貢献することを目指す
• 英国の強力な世界金融センターの地位を活用し、新たな資金源を創出し、これを通じて英国の科学者やイノベーターがリスクを取りながらも世界的な重要課題に取り組む支援を行う
新しい政府の投資案により、英国の研究ベンチャーへの最大5,000万ポンドの資金提供が行われ、民間企業と慈善事業投資家の支援を通じて英国の科学、研究、イノベーションを促進する新しい構想が発表された。これにより、新しい方法で致命的な疾患へのアプローチを発見したり、将来の経済を支える新技術を利用したりするための重要な資金提供が可能となる。Research Ventures Catalystの発足により、英国の研究開発への民間資金や慈善資金の投入が一層促進され、科学者やイノベーターのために、シティ・オブ・ロンドンの強固な地位を背景にした利益をもたらすことが期待される。新しい基金は英国で新しい研究アプローチを試みるために設立され、英国の優れた研究者が大きなリスクを取りながら、従来の資金ではサポートが難しかった新しい研究手法を模索できるようになる。Catalystは、研究者が提案するベンチャー企業の計画全体を支援するための"シードコーン(初期段階の企業への投資で、将来の機会を活用する画期的な技術を持つ企業に対して行われる投資)"基金として、最大10万ポンドの入札を受け付けている。最終的に、民間企業や慈善事業投資家との共同投資により、政府の支援を受けて最大5,000万ポンドの投資が実現される予定である。
DSITの大臣であるMichelle Donelan氏のコメント(一部抜粋):
新しい革新的かつ機敏な基金の実現は、Paul Nurse卿の研究界の風景レビューの成果を踏まえ、政府が採用するものであり、既に研究開発への公共部門の支出が記録的な水準に達していることに基づいている。政府は2024年から2025年にかけて研究開発への200億ポンドの投資を約束している。
Department for Science, Innovation and Technology (DSIT):
https://www.gov.uk/government/news/game-changing-fund-opens-in-uk-to-boost-science-and-tech-research


(17) 英国の卒業生:73%は大学行ったことで念願の仕事に就けた
2023年7月31日、英国大学協会(Universities UK: UUK)は新しい大卒者に関するデータを発表した。このデータは、英国の卒業生3,505人(2023年6月16日から26日まで実施)と企業のトップ(経営者、創立者、取締役のメンバー、最高責任者、役員、上級管理者等)3,506人(2023年6月16日から27日まで)を対象としたCensuswideによる調査の結果である。
• この調査によれば、大学進学の価値に焦点を当て、英国の卒業生の73%が大学教育を受けたことで1年以内に希望の職に就けたと回答した。
• 重要なことは、この調査において、生活費の危機にもかかわらず、ほぼ3分の2(64%)が大学進学により雇用の安定性が向上したと回答したことである。
• 78%の大学卒業生は、大学から受けたサポートが就職に有利だと感じ、また、97%の企業のトップは大学教育を受けたことで卒業後の管理職への昇進が迅速になったと述べた。
• 71%の企業のトップは、大学進学を通じて卒業生が他の分野でも役立つ重要なスキルを習得できると考え、英国の大学は英国の産業界にとって必要不可欠な訓練機関であり、次世代にスキルを提供し、英国の企業の成長に寄与できると見ている。
• この調査は、大学進学が社会の流動性を向上させる刺激になる可能性があることを示唆しており、初めて家族で大学進学をした卒業生の78%と企業のリーダーの71%は、大学進学が企業での雇用に門戸を開き、初任給が大学進学しなかった者よりも高い可能性があると考えている。
Universities UK (UUK):
https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/73-uk-graduates-say-going-university-got


(18) 今年は 英国の名門大学での競争の激化が予想される
2023年7月31日、Guardian紙は英国大学協会(Universities UK: UUK)の会長であるSteve West 卿が、「Covid-19流行後、大学への志願者数が大幅に増加したことから、今年、名門大学の一部のコースへの入学競争が激化する可能性がある」と警告していることを報じた。また、「Aレベルの学生は、8月17日の結果を待っており、過去2年間の急増によりラッセルグループの医学、歯学などの研究集約型大学のコースへの入学が難しくなる可能性がある」と付け加え、「Covid-19の流行中の最初の入学プロセスでは、大学がオファーを提示し、受けた学生がほとんどオファーを拒否しなかったため、研究集約型の大学の学生数が大幅に増加した」と述べた。
さらに、彼は「現在、その状況がインフラやスタッフの確保などにプレッシャーをかけ、大学は正常化を試みている」と補足した。
英国を代表する大学で構成されるラッセルグループは、イングランドの大学が資金制約のため、学生一人当たり年平均2,500ポンドの補助を提供しなければならないことについて警告している。資金の制約により、ラッセルグループの大学で昨年よりも競争が激化する可能性があるかどうかについてWest 卿に尋ねると、「特定の学部において、学生寮、教室、講義室などの環境、スタッフの配置などに圧力がかかる可能性があるだろう」と述べた。「科学、医学、歯学などは実習室や実験室が必要なため、この分野では競争が激しい。一部の研究集約型大学では他の分野のコースでの受け入れ人数を制限している場合もあり、これは純粋に大学の収容人数に起因している。」
2020年と2021年において、学生はAレベルの試験を正式に受けず、代わりにより寛大な地域評価システムに基づいたため、記録的な高得点を収めた。West 卿はまた、「成績の予測が難しいため、大規模な増員が行われた」と述べた。
今年の成績はCovid-19の流行前の水準に戻るとされており、ラッセルグループの会長であるTim Bradshaw博士は、「名門大学への入学競争は依然として激しいものであり、今年、第一志望のオファーを受けた学生の割合が増加したことは歓迎すべきである。これは学校の試験成績がCovid-19の流行前の水準に戻るにつれて、大学がオファーを出すことに対する自信を示している。」と述べた。一部の学術専門家は、Covid-19の流行前の成績を復活させることが、学校の閉鎖などにより教育に支障をきたした学生の履歴で不利になる可能性があることを警告している。今月初めに、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)と英国資格試験監査機関(Office of Qualification and Examinations Regulation: Ofqual)の共同書簡では、特に名門大学のコースが結果が発表された日に瞬く間に定員に達する可能性があるため、学生にはよく考え、他の選択肢も検討するように警告している。そして、この手紙では「18歳の人口の増加により、今年も高等教育機関への入学競争が激化するだろう」と認めている。
第一志望の大学や第二志望の大学への必要な成績を達成できなかった学生は、クリアリングと呼ばれるプロセスを経て、異なる大学に入学することができる。昨年のUCASのデータによれば、結果が出た時点で入学先が確定していなかった21,000人のうち、58%が別の大学に入学していることが示されている。さらに、3,500人以上の卒業生を対象に行われた調査では、家族で初めて大学に進学した学生は、両親が進学しなかった学生と比較して平均初任給が高いことが明らかになった。この調査はUUKが実施し、家族で高等教育に進学しなかった卒業生は、最初の職で年平均30,111ポンドの収入を得ており、これは家族で学位を持つ同級生と比較して約3,000ポンド高いことが示された。
Universities UK (UUK):
https://www.theguardian.com/education/2023/jul/31/competition-for-leading-uk-universities-could-be-tougher-this-year