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UK HE Information

2023年9月英国高等教育及び学術情報

2023年12月12日

(1)志願者数の減少により、アイルランドの大学は北アイルランドからの学生誘致に期待

(2)大学生はパンデミック後のオンライン学習に満足している

(3)高等教育機関の英国経済に対する影響

(4)新型コロナウイルス治療薬の開発を促進した英国科学施設が5億ポンドの改修資金を獲得

(5) 革新的な助成金の初回トライアルでは、「有望な」結果は、助成金を受けた受賞者と機関の多様性がより高いことを示す

(6) 英国の海外からの人材誘致策は「機能していない」-報告書

(7) 英国は新たな特別契約によりホライズン・ヨーロッパに参加

(8) 我々の政策優先順位-英国大学協会

(9) 核廃棄物処理の新技術の開発のため日英のパートナーシップ

(10)ラッセル・グループの存在意義はまだあるのか?

(11)DSIT中央政府部門として初めて、公務員の科学技術スキルのアップのため、英国政府省庁のSTEM  Futures制度に参加

(12) 治療が最も困難なガン治療に取り組む高リスクで高報酬の研究に200万ポンドの資金提供

(13) ホライズン・ヨーロッパの合意にもかかわらず、英国との提携に未だに不確実性が残る

(14) 迫りくる高等教育の危機の中、学生局の業績が低迷

(15) ブリストル、AIイノベーションを加速させる英国最強のスーパーコンピューターを導入へ

(16) 多様な研究者のキャリアパスが英国のイノベーションと成長を促進すると、企業や大学のトップが語る

(17) 英国王立協会、過小評価されているグループの独立研究者を支援するCareer Development Fellowshipを試験導入

(18) クリアリングによる大学進学数が過去最高に

(19) 生涯学習資格:影響評価

(20) UKRI、新しい政策を通して研究生の支援の改善を行う

(21) 世界大学ランキング2024:発表

(22) 教育評価制度 (TEF)発表:46大学が「金」評価を獲得

(23) 大学中退者率が過去最高を更新

記事の詳細は「続きを読む」からお読みいただけます。

(1)志願者数の減少により、アイルランドの大学は北アイルランドからの学生誘致に期待

2023年9月1日 、Irish Newsは、北アイルランドからの志願者が減少していることを受け、アイルランド国内の大学は北アイルランドからの学生数を増やす方法を模索していると伝えた。

Aレベルの成績がCAO※ポイントに換算される方法や、中等教育修了資格試験(リービング・サート:Leaving Cert)の結果発表が遅いことが、北アイルランドからアイルランド共和国の大学への入学を志願する学生が減少している原因のひとつと考えられる。

Irish Times紙によると、志願数の減少により、一部の大学では、延期する北アイルランドの学生のために定員枠を設けることを検討していると報じた。

また、Aレベルの成績をリービング・サートの成績に合わせてAレベルの成績を引き上げることも検討されていることが分かっている。

この動向は、近く発表される北アイルランドの学生の流動性に関するESRI報告書で、過去10年間に国境を越えて南下する学生数が減少していることが予想される報道の最中で明らかにされた。

Trinity College Dublinは、北部からの学生数を増やす方法を模索している高等教育機関の一つである。

副学長であるOrla Sheils氏はIrish Times紙に「我々はリービング・サート結果発表のタイミングと、その後のCAOのオファーのタイミング、Aレベルの成績がパンデミック前の成績に戻っていることから、成績の格差により、北アイルランドの学生が大変不利な状況にあることは十分に承知している。」

「我々はこのような学生を収容するため、北アイルランドの学生のみが対象となる大学入学延期枠を拡大することを計画している。」と述べた。

CAOのプロセス中にAレベルの成績結果を変換することについても、最近シン・フェイン党からも提起されている。

多数の北アイルランド議会議員(Members of the Legislative Assembly: MLAs)が、アイルランド共和国の高等教育・研究・イノベーション・科学省大臣のSimon Harris 氏に書簡を送り、「現在の制度では北アイルランドからの学生による大学コースへの進学が全く困難な状況となっている」と懸念を表明した。

同党の高等教育・研究・イノベーション・科学省に関する広報担当であるPádraig Delargy氏は、「現在のアイルランド共和国の大学の入学制度では、Aレベルの資格はリービング・サートと同様な資格とみなされていない。」

「その結果、Aレベルの科目を4つ未満しか学んでいない学生が、アイルランド共和国の大学に進学することは、不可能ではないにせよ困難なものとなっている。」

「これは変更されるべきで、北部と南部の資格は、北アイルランドの学生がアイルランド共和国の大学のコースを利用できるようにCAOによってもっと平等なものでなければならない。」

Harris 氏の広報担当者は、「全島ベースで教育をさらに発展させ、支援する方法を見つけることに専念している。」と述べた。

※The Central Applications Office:CAO 中央申請局:アイルランド共和国の高等教育の申請を一手に引き受けている機関

Irish News: https://www.irishnews.com/news/northernirelandnews/2023/09/01/news/universities_in_republic_to_explore_ways_of_increasing_student_numbers_from_ni_after_decline_in_applicants-3576597/

 

(2)大学生はパンデミック後のオンライン学習に満足している

2023年9月4日 、Jiscが行った調査によると2020年以降、オンライン学習がより魅力的で、モチベーションを高めるのに役立っていることがわかった。

学生体験における英国最大のデータのひとつであることから、デジタル配信に対する肯定的な認識が高まっていることが明らかになった。

 ●80%の学生が、オンライン学習の質を平均以上と評価している。

 ●83%の学生が、デジタル技術の利用によって学習がより便利になると考えている。

 ●ほぼ4分の3(71%)が、テクノロジーの利用により自分たちの学習が順調に進むと同意している。

 

高等教育の学生を対象とした2022/23学事年度のデジタル経験に関する洞察的調査では、学生がどのようにテクノロジーを学習に利用しているか、テクノロジーに対する態度、その利点や課題などを質問し27,131件の回答が得られた。

この調査では2020年以降の改善も示されている。

 ●71%が、大学から受けた効果的なオンライン学習支援は平均以上で、10%ポイント以上増加した。

 ●約半分(49%)の学生はオンライン学習が魅力的で、モチベーションが高まったということに同意し、14%ポイントの上昇となった。しかし、これは半数以上がまだこれに賛同していないことも意味する。

ただし、学生のデジタルスキルの向上につながるためのより多くのサポートを提供する機会が必要であることもわかった。

 ●8%の学生は全く支援を求めなかった、と回答している。

 ●オンライン学習のためトレーニングを受けたのは約半数以下(43%)。

 ●将来の雇用のためデジタルスキルを磨くための機会を与えられたのは39%のみ。

 ●約半分(46%)は、自分のコースに必要なデジタルスキルに関するガイダンスを受けていないと回答。

  

デジタル格差に関してはまた別の問題である。回答者の33%が、キャンパス内のWiFi接続が悪いため、学習においてデジタル技術を利用することは困難と回答している。12%はキャンパス内、26%はキャンパス外のモバイルデータの費用に問題を抱えている。

Jiscのビジネス・インテリジェント・データ分析部長であるKathryn Heywood氏のコメント:

「今年の調査は、学生のためにデジタルを学習により利用し、柔軟性を持って取り組んできた高等教育機関の素晴らしい対応が結果に現れているものである。毎年、データから明確なポジティブな効果が証明されているが、常に改善の余地があり、学生からのフードバックに基づいて最高の学習経験を提供する。」

Jiscの高等教育、学習・教育変革部長であるSarah Knight 氏のコメント:

「デジタル環境の経験に関して学生と関わることは、デジタルの成熟度における基準を設定し、ベンチマークするために不可欠な部分である。非常に多くの学生が、オンラン学習や混合学習が提供され、学習成果を支えていることに満足していることは励みになる。」

「しかし、オンライン学習が魅力的でモチベーションが上がることに同意した学生はわずか49%で、(2020年と比べて増加しているとはいえ)まだまだ改善するところがある。」

「Jiscでは、高等教育のリーダーや組織がデジタル変革のための戦略的ビジョンを作成し、実行可能な計画を立てる支援を提供するため、当社のフレームワークに基づいてデジタル変革の成熟度モデルを開拓している。」

「このモデルは、プロセスやテクノロジーだけでなく、何よりもまず人々と実践に焦点を当てている。文化、能力、投資、インフラストラクチャ―、デジタルスキルに関するアドバイスが取り上げられる。」

Jisc は、高等教育機関や各団体のメンバーと緊密に連携してこれらのモデルを情報提供し、セクター全体のデジタル戦略の開発と変革をサポートする上でモデルが非常に貴重であることが証明されるようにした。

※Jisc:学生、教員、専門サービススタッフを対象に毎年デジタル体験洞察調査サービスを実施している、非営利の高等教育、研究、イノベーションに重点を置いたデジタル、データ技術機関。

Jisc:

https://beta.jisc.ac.uk/news/all/university-students-are-happier-with-online-learning-post-pandemic

 

(3)高等教育機関の英国経済に対する影響

2023年9月5日 、英国大学協会(University UK: UUK)は新しい高等教育関係の報告書を発表し(以下<参考>参照)、高等教育機関では25万人以上を雇用し、英国経済に対して1,300億ポンド以上貢献し、英国全土に巨大な経済的な効果をもたらしていることを発表した。

概要:

UUKは、経済コンサルタントであるLondon Economics に依頼し、2021/22学事年度の英国高等教育機関の経済的な影響の評価を依頼した。

このレポートでは、英国の高等教育機関が支援する雇用、経済的生産率、地域や国家に与える総付加価値に焦点を当て、英国の高等教育機関が英国経済に与える経済的影響を明らかにしている。

主なデータ結果:

 ●大学は4分3以上の雇用(76万8,000人)を支えており、そのうち半分(38万2,500人)は、大学が生み出す経済的な刺激によって利益を受けるレストランや小売業者など地域企業の間接的に雇用されている。

 ●高等教育機関は英国に1,300億ポンドの経済効果を生み出している。

 ●政府、医療、教育など英国全土に様々な分野において多大な経済的恩恵があり、その経済成果は528億ポンド、44万4,244件の雇用を支えている。

  

英国大学協会(University UK: UUK):

https://www.universitiesuk.ac.uk/what-we-do/policy-and-research/publications/impact-higher-education-sector-uk

<参考>The impact of the higher education sector on the UK economy:

https://www.universitiesuk.ac.uk/sites/default/files/uploads/Reports/LE-UUK-Economic-Impact-of-UK-HEIs.pdf

 

(4)新型コロナウイルス治療薬の開発を促進した英国科学施設が5億ポンドの改修資金を獲得

2023年9月6日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)の大臣は、オックスフォードシャー州にあるDiamond Light Source の科学施設に5億ポンドの投資を通じてアップグレードすることを発表した。

 ●世界でも有名なDiamond Light Source の施設は、健康、工学、環境研究に関して重要な役割を果たしている。

 ●最先端のDiamond-IIのアップグレードに、政府とWellcome Trust から5億ポンド以上の資金提供を行う。

 ●この資金によって、既に従来の顕微鏡の1万倍の強度、太陽よりも100億倍も明るい光を生成する施設がアップグレードされる。

 

世界をリードする英国の新型コロナ薬品の開発を開始し、HIVからマラリアやがんに至る世界的な健康的課題の先進的な治療法を提供する画期的な科学施設が、5億ポンド以上の投資を通じてアップグレード及び拡張されるとDSITの大臣であるMichelle Donelan氏が同日発表した。

オクスフォードシャー州のハーウェルにあるDiamond Light Sourceは、英国の国立シンクロトロンである。本質的には巨大な顕微鏡で、太陽よりも100億倍の明るい光を生成し、ビームラインと呼ばれる研究室を通じて、健康からエネルギーまで科学の多岐にわたる研究が行われている。

従来の顕微鏡よりも1万倍強力であることから、画期的なヘルスリサーチの発見や、古代の絵画の断片や化石を含む様々な題材を研究する一方で、発見エンジンやタービンブレードなどの機械寿命を延ばす解決策を見つけるのにも極めて重要な役割を担っている。

DSIT大臣は9月5日に科学技術施設会議(Science and Technology Facilities Council: STFC)のRutherford Appleton Laboratory を拠点とするDiamond Light Sourceを訪問し、政府がUKRI(STFC)を通じてWellcome Trust とともにDiamond-IIのアップグレードのために5億1900万ポンドの資金提供を行うことを発表した。

新しい第4世代のシンクロトロンは、最先端科学の世界のリーダーとしての英国の名声を維持しながらも、Diamondでの増え続ける研究者のユーザーベースを支援していく。

GOV.UK:https://www.gov.uk/government/news/uk-science-facility-that-kickstarted-covid-drug-development-granted-500-million-upgrade-fund

 

関連記事

UK Innovation research: Visit Diamond Light Source Launches £500m upgrade programme (Diamond Light Sourceの訪問により、5億ポンドのアップグレードプログラムが開始)

DSITの大臣であるMichelle Donelan氏はDiamond-IIを正式に開始するため世界有数の施設を視察した。

Diamond-IIは、政府による5億1,900万ポンドの投資で、主としてUKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)のインフラストラクチャ―基金とWellcome Trust からの出資によるもの。

この投資はSTFCのRutherford Appleton Laboratory に拠点を置くDiamond Light Source のシンクロトロン施設のアップグレードと拡大のために使われる。

この新しい施設は2030年の完成を目指す。

 

UK リサーチ・イノベーション(UK Research Innovation: UKRI): https://www.ukri.org/news/visit-to-diamond-light-source-launches-500m-upgrade-programme/

 

(5革新的な助成金の初回トライアルでは、「有望な」結果は、助成金を受けた受賞者と機関の多様性がより高いことを示す

2023年9月6日、英国学士院(British Academy: BA)がSmall Research Grantsの授与方法に関する革新的な試みを行った結果、選考プロセスで部分的に無作為化を導入することで、受賞者が民族的および制度的により多様になる可能性を示唆した。

BAは、研究助成金の授与する新しい2段階の方法を試行する世界で初の数少ない組織の一つで、英国で2番目の研究資金提供団体であり、人文科学系の最初の研究資金提供団体でもある。申請者がSmall Research Grantの助成を受ける資格を得るには、長年確立されてきた専門家による査読のプロセスを経て評価されるため、質の高い基準を満たす必要がある。その後、査読を通過したものは助成金がランダムに割り当てられる。

2022年9月に発表されたこの3年間のトライアルでは、人文科学、社会科学の革新的な研究プロジェクトに最大1万ポンドを授与するBAのなかでも人気があるSmall Research Grants制度において実施されている。

2ラウンドからなるトライアルの初年度の初期結果から得られた重要な発見は次のとおり:

 ●助成金獲得者は、多様な93の機関から選ばれた。獲得者はUniversity of Abertay, University of Dundee, Alan Turing Institute, Union Theological College, Belfast などの機関を拠点としており、これらの機関の研究者がSmall Research Grants制度に採択されたのは初となる。

 ●「黒人、アジア系、その他の民族的な背景」を有する候補者からの申請が顕著に増加し、この分類に関して自身の民族的な背景を申告した候補者は、前回18%、今回は27%以上を占めた。

 ●スコットランドと北アイルランドの候補者の採択率が増加し、英国の人口に占めるそれぞれの割合を上回っている。

 ●トライアルの最初の2ラウンドで、1,702件の申請が評価された。従来の申請プロセスに沿って行われた前年のSmall Research Grantsの前年と比べても32%増加しているところは注目すべきである。

 

このトライアルは今後2年間継続され、3年間で6ラウンド行われる。初期の結果は有望だが、将来のトライアルでは異なる結果が出る可能性もある。

BAは世界的に有名な専門家であるPhillip Clarke 氏、Adrian Barnet 氏と協力し、この結果を認識しており、トライアルの終了後、BAはこの方法の長期的な価値と有効性、助成金の成果などのより詳しい分析内容を共有する。

British Academy/Leverhulme Small Research Grantsの最新段階(部分的に不作為化されて割り当てをするトライアル) は現在受付中(2023/9/6時点)である。

英国学士院(British Academy: BA):

https://www.thebritishacademy.ac.uk/news/promising-results-from-first-year-of-innovative-grant-awarding-trial/

 

(6英国の海外からの人材誘致策は「機能していない」-報告書

2023年9月6日、Pie Newsは、新しく発表された報告書で学生ビザは永住権につながるものとみなされるべきであり、もし政府が人材を誘致したいのであれば、柔軟な「フォローアップ」ビザ制度を導入するべきであると報じた。

英国の起業家コミュニティを代表するシンクタンクとグローバル教育非営利団体であるABE Globalによって発表された報告書「Passport to Progress」は、政府に対して移民政策の再検討を呼び掛けている。

主な提言は、留学生の卒業生に対して大学卒業後に英国でスポンサーなしでも労働できる権利を与えるべきとしている。

「デュアル・インテント(二重意思)※」や、卒業時にビザの切り替えを容易にする柔軟なビザ制度とともに、報告書では、留学生は移民数の上限から免除し、また卒業時点で起業する権利を与えるべきであるとしている。

また、政府に対し、大学の学費や生活費を出資できない優秀な人材に対する融資や、奨学金の拡大を行うための「積極的な介入」を求めている。

この調査は、人材誘致の良い例として、一部の大学で選抜された学生の費用を負担する中国政府の一帯一路奨学金制度に注目している。他の国はスポンサープログラムを最大限に活用していないと主張している。

「政府は、特に優秀な学生に対して、年間の上限を設け、非常に優秀な留学生に特化した学生ローンプログラムや奨学金制度を設定することができる。大学は優秀な人材を探し当てることに責任をもち、政府は必要な資金提供をすることとなる。」と報告書は述べている。

英国貴族院議員で、Cobra Beer社の創設者兼会長であるBilimoria卿は、もし英国政府が生産性、革新性、経済成長を高めることを希望するのであれば、英国を選んでもらうためにも「柔軟性のある、積極的で競争力を有する移民制度」が必要であると述べた。

報告書は、現在のスポンサーシップ制度は大企業のみが有利となる偏ったものであり、卒業生が国内で起業する動機になっていないと主張している。

Bilimoria氏自身も、University of Cambridgeを卒業後Cobra Beer社を設立したが、移民とは経済成長を求めている政府にとって 「協力者として適任」であるという。

「成功への願望、新しいものを築きたいという熱望、起業家精神は多くの移民の性格の一部でもあり、欠かせないものでもある。」と彼は言う。

労働へのアクセス、永住権へ安定した道、教育費は留学先全体で共通な問題とみなされており、より良い移民政策を打ち出している国もある。

カナダは過去20年の間に、優秀な留学生を誘致することに「見事に成功」しており、その数は6倍に増加した。

歴史的には、米国もその分野では成功していると報告書は述べており、Operation Paperclipという第2次世界大戦後にドイツから技師や科学者を1,600人以上誘致したプロジェクトを指摘している。

報告書では、政府は起業家や優秀なSTEMの専門家を積極的に誘致する特別委員会を設置すべきとしている。

アイルランドの重要スキル就労許可(Critical Skills Employment Permit)は、少なくともヨーロッパ国籍の労働力を50%維持する限り、企業が人材を海外から誘致することができるとしている。また、イスラエルのInnovation Labs プログラムでは、移民起業家に重要な技術インフラを提供するもので、ニュージーランドのGlobal Impact Visaでは、訓練、投資、ネットワーキングの機会を提供するなど、政策介入が功を奏した事例がある。

カナダは「留学生を将来の労働力として位置づけることの恩恵を理解している。」と同紙は述べ、競争相手国は優秀な人材の不足、生産性の停滞に直面しているため、適応した移民政策を検討するべきであると主張している。

英国のHigh Potential Individual ビザを「ユニークで、創造的な政策例」として強調しているが、2年間の就労ビザルートは現在上位200大学に絞るのではなく、Indian Institute of Technologyなどの研究機関にも範囲を広げるべきである、と述べている。

ABE Global 社の最高責任者であるRob May氏は「近年移民とイノベーションの重要な関係性が危機にさらされている」と警告した。

同氏は、移民のプラス面の影響が、「いかなる移民も国家の進歩に反するというポピュリストのレトリックの中にその成就を見出す敵対的な物語の中で再び曇らされている」と述べた。

この報告書の著者であり、Entrepreneurs Networkの研究者であるDerin Kocer氏は有意義な経済成長の道として生産性増加の必要性を強調した。 

「多くの国、特に英国のような先進国では、過去10年間、生産性の向上にあまり成功しておらず、そのため一人当たりのGDPの成長が著しく鈍化するか停滞している。そのサイクルを断ち切るために、英国はイノベーションにさらに投資する必要がある。そのためにはイノベーターと起業家が必要である。」と述べた。

また、ビジネスリーダーたちは「人材(才能)へのアクセス」を主な懸案事項として挙げていると同氏はThe PIEに語った。

「新しい技術が、生産性の増加に必要なスキルを変化させるなかで、人材の必要性はさらに高まる。」

Kocer氏は中国とカナダ(最近米国のH-1Bビザの取得者がカナダに来ることを容易にした)が有利な政策を導入したことが米国の半導体工場での人材不足、工場操業の遅れにつながった例を挙げた。

「競争はライバル同士だけでなく、友人間でもある。もし英国がこれを認識できないのであれば、『科学超大国』や『環境超大国』になるという政治的野望は単なる野望でしかない。」と述べた。

英国政府は「人材の発掘でもっと大胆で野心的になることができる。」と同氏は結論付けた。一つの選択肢としてHigh Potential Individual ビザを優秀大学からの卒業生だけでなく専門家にも広く適用するべきであるという。

「例えば、英国が人工知能へ投資もしくは持続可能なエネルギーの革新を望むのであれば、これらの分野で才能のある人々に対してビザの取得を簡素化するべきである。」と述べた。

 

※「デュアル・インテント(二重意思)」:一時的な滞在目的(非移民ビザ)と永住権申請など移民目的を同時に持つことを許可しているもの。例えば留学生として入国し、同時に将来の永住権申請を同時に進めることが可能となる制度

The PIE NEWS:

https://thepienews.com/news/uk-migration-policy-to-attract-talent-not-working/

 

(7英国は新たな特別契約によりホライズン・ヨーロッパに参加

2023年9月7日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)はEUと新しい特別協定によってHorizon Europe およびCopernicusのプログラムに参加する予定であることを発表した。

 

 ●英国は、EUと新しい特別な協定によってHorizon Europe およびCopernicusのプログラムに参加。

 ●英国首相は、英国と納税者を保護する財政的な参加条件に関する改善を取り決めた。

 ●英国の研究者は確信をもって助成金プロジェクトに今すぐにでも申請することを奨励された。

 ●Euratomプログラムに参加する代わりに独自の核融合エネルギー戦略を推し進めることを確認した。

 

英国首相が、英国の参加に向けて財政条件を改善した特別な協定を確保したことで、英国の研究者は世界最大の研究提携プログラムであるホライズン・ヨーロッパに参加できるようになった。

同日(9月7日木曜日)から、英国の研究者はホライズンのプログラムにおけるプロジェクト参加のための入札にも加わられるようになり、2027年までの残り期間中は完全な参加加盟国となった。

一度受け入れられれば、英国は過去3年間除外されていた EUプログラムの管理にも参加できることになり、来年実現する協力関係を確実に形成できるようになる。また、英国の研究者は、Horizon Europe プロジェクトの次期プログラムでコンソーシアムを主導できる。

ホライズン・ヨーロッパは英国企業や研究機関に対して、健康からAIの分野まで新しい技術や研究プロジェクトの開発する世界的な研究を主導するこの上ない機会が与えられる。これはすでにこのプログラムに参加しているノルウェー、ニュージーランド、イスラエルや、参加を希望している韓国、カナダなどの国との提携に門戸を開くことになる。

これは、9月6日の英国首相Rishi Sunak氏と欧州委員会の委員長であるUrsula von der Leyen氏との電話会談によるものである。彼らは英国の研究者に今日から自信をもってプログラムに応募することを奨励し、参加を促進するため英国とEUが協力することで合意した。

過去6か月にわたり交渉された新しい協定の中で、英国首相は英国にとって適切であるホライズン・ヨーロッパの財政面における参加条件の改善を確実にし、英国の研究者への利益を増し、納税者にとってその価値を見出し、英国のEUプログラム参加の遅延による研究者の参加率の影響を軽減した。

また英国は、ヨーロッパ地球観測プログラムであるCopernicusへの参加も可能となった。これにより、英国の地球観測部門は、洪水や火災の早期警告などに役立つ独自のデータを入手でき、過去3年間情報が得られなかった契約への入札も可能となる。

英国の核融合部門の意向に沿って、英国はEUのEuratom プログラムに参加する代わりに、国内の核融合エネルギー戦略の推進を決めた。これには親密なヨーロッパのパートナーとの国際的提携と、2027年までに6億5000万ポンドの支援による新しい最先端の代替プログラムが含まれる。これにより、英国の納税者の資金が英国の最大の利益のために費やされることとなる。

この提携により、次世代の研究人材の一部として何千もの新たな雇用を創出し、支援することになる。これは2030年までに経済を成長させ、英国を科学技術大国としての地位を確固たるものにするという首相の野望の実現に役立つだろう。

英国首相Rishi Sunak氏のコメント:

「医療を改善する飛躍的な開発から我々の経済成長を進歩させる技術まで、英国の繁栄は長い間イノベーションが基盤となっていた。

世界の舞台にもたらす専門性や経験の豊富さで、我々は英国の研究者が自信をもって世界最大の研究協力プログラムであるホライズン・ヨーロッパに参加できる契約を実現した。

我々はEUのパートナーと協力し、これが英国にとって正しい契約であったかを認識し、多数の研究機会を解放し、英国の納税者たちに恩恵を与えることを確証する。」

英国の納税者に対する財政保護は、特に英国の研究者の参加が可能になる最初の数年間、下記のことを保証する。

 ●英国の納税者は、2021年以降英国の研究者が除外されている期間に関して支払いは発生せず、費用は2024年1月より開始され、2023年よりも良い条件で実施される。これによって、英国の研究者はプログラムへの支払いが開始する前に、応募の参加を促進するための余裕が持てることになる。

 ●英国は、過去2年半の影響から回復する際に、英国を保護する新しい自動的な回復措置を持つことになる。つまり、英国はこのプログラムに払った資金よりも大幅に少ない資金を英国の研究者が受け取った場合、英国が保障を受けるということを意味する。これは最初の契約にはなかった措置である。

 

DSITの大臣であるMichelle Donelan氏のコメント:

「本日は英国の科学と経済全体にとって素晴らしい日である。我々は研究界に耳を傾け、努力し、研究者、納税者、企業にとって素晴らしい契約を取り付けた。

ホライズン・ヨーロッパのプログラムはその規模では無類であり、英国にとって現実世界の利益を届け、科学における協力の機会を世界に向けて開き、雇用の創出、経済の向上、気候変動やがん研究の促進など親密なパートナーとの協力の機会を開くことになる。

この協定は2030年までに科学技術の超大国になるという我々の使命を前進するための大切な1歩となる。」

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/uk-joins-horizon-europe-under-a-new-bespoke-deal

 

関連記事①Science Business: It’s official: UK to associate to Horizon Europe (公式発表:英国、Horizon Europe に参加)

 

幾度かの険しい日々を過ごしたあと、英国とEUはついに英国の再加盟を承認する協定に合意した。さらにCopernicusの宇宙プログラムにも参加予定だが、Euratom(欧州原子力共同体)とITER核融合プロジェクトには不参加。

英国政府と欧州委員会は2年半以上の延期を経てホライズン・ヨーロッパへの参加のための協定に合意した。

同日朝に発表された声明によって、2021年以降行き詰まっていた英国とEUの研究者は安堵のため息をついている。

「EUと英国は重要な戦略的なパートナーであり同盟であり、本日の合意はその点を証明している。我々はこれからも世界の科学と研究の最前線にあり続けていく。」と欧州委員会の委員長であるUrsula von der Leyen氏は声明で述べた。

この協定は、英国の研究者にとって欧州研究評議会の助成金を受け取ることを可能にし、Framework programmeにおける学術―産業間のコンソーシアムをコーディネートできるようになることを意味する。

これまで、ホライズン・ヨーロッパにシームレスに統合されるのではなく、英国と同等の補助金や助成金に頼らざるを得なかった。

英国の研究者は、産業を中心としたプログラムのPillar 2(金額ベースで最も大きな部分)に基づいたコンソーシアム(金額ベースで最も大きな部分)に参加することは可能だったが、将来的な不確実性から、英国のプログラムへの参加は半減し、英国の科学者が何十年もかけて築いた欧州との学術ネットワークから締め出されるのではないかという懸念が高まった。

英国に拠点を置くERC助成金獲得者はその助成金を維持するためにEUへ移住するか、英国に留まり同等の助成金が支給される制度を取るか、苦渋の選択を迫られている。

交渉成立

昨夜、交渉が成立したという報道を受けて、英国とEUは朝7時に合意を正式に発表した。

これにより、英国は、2024年の募集が開始されるものも含め、2024年のプログラム(ホライズン・ヨーロッパがその年に資金提供するプロジェクトのリスト)に2024年1月1日から完全に参加できることが確認された。

しかし、2023年のプログラムに関して、英国の研究者はホライズン・ヨーロッパのプロジェクトに参加する資金として英国のバックアップ保証制度を利用する必要がある。この合意は、ホライズン・ヨーロッパが終了する2027年までである。

長く曲がりくねった道

ここに至るまでは紆余曲折した過程があり、科学者たちの希望が高まったり、急降下したりしたことは何度もあった。

Horizon Europeへの参加は、2020年の年末に英国とEUがBrexit後の通商・協力関係協定に署名した際に、少なくとも理論上は合意されていた。この協定を正式に締結するために必要だったのは、双方による最終的な合意確約への署名だけだった。

しかし、2021年、北アイルランド問題により関係が悪化した。英国政府は平和を維持するため、アイルランド島の税関検査を回避する協定である北アイルランド議定書の一部を停止すると脅した。

2021年秋には、欧州委員会は参加承認への署名を拒否していることが明らかになった。最終的に、当時の研究担当理事であったMaria Gabriel氏は、これが未解決の北アイルランドの混乱が原因であることを認めた。

Horizon Europeへの参加は、今年2月のWindsor Frameworkによって北アイルランドの問題を解決するまで、この広範な分裂の政治的人質となった。

しかし、英国は遅く参加しても経済的な損失を被らないという保証を求めていたため、参加の交渉はさらに長引いた。英国は、このプログラムに参加した場合に支払った金額が、得る金額を大幅に上回った場合の修正機能がないことを懸念し、値切り交渉が継続された。

詳細が明らかに

同日の発表では、交渉者がそのジレンマをどのように解決したかその詳細は明らかにされていない。しかし、英国とEUは、英国の研究者が獲得した金額よりも16%多く投資している場合、「英国による重大な業績不振のリスクを対処するための一時的かつ自動的なメカニズム」に合意したと述べている。

英国は参加費として年間「約26億ユーロ」を支払うことが発表された。

また、英国は、この制度下において大きな公募を逃しているという懸念にもかかわらず、EUのCopernicus 衛星システムの一部に留まることも確認された。

英国政府の発表によると、「英国のCopernicusへの参加はCopernicus宇宙インフラとその情報サービスがさらに進化し、環境や気候変動関連の課題の理解と行動への貢献がこれまで以上に重要な時に来ている」という。

ITERには不参加

しかし、問題は、英国はEuratom(欧州原子力共同体)への再参加はしないため、フランス南部で試作型核融合炉を建設する数十億ユーロ規模の国際共同プロジェクト、ITERからは外れることだ。

この協定に関する欧州委員会の質疑応答ファクトシートによると、「英国はEuratom(欧州原子力共同体)とFussion4Energy/ITERとの提携を追求しないことを決定した。」「この決定は、英国の産業界がEuratom(欧州原子力共同体)とFussion4Energy/ITERのプログラムに長期間関わっていないことを覆すことはできないという英国の評価に基づいている。」とある。

英国自身の声明では、ITERの将来に関して何も述べられていないが、Euratom(欧州原子力共同体)への再参加はないと確認されている。

「英国の核融合セクターの希望に沿って、英国はEUのEuratomプログラムの代わりに国内の核融合エネルギー戦略を追求することを決定した。」と声明には書かれている。「これには、欧州のパートナーなどの親密な国際提携が必要とされ、2027年までに最大6億5000万ポンドで支援する新しい最先端の代替プログラムも含まれている。これは英国の納税者の資金が英国のもっと最善の利益のために費やされることを保証するものである。」

参加協定そのものは、EU理事会において加盟国から承認される必要がある。

SIENCE BUSINESS:

https://sciencebusiness.net/news/horizon-europe/its-official-uk-associate-horizon-europe

 

 

関連記事②Guardian: UK’s years out of EU Horizon programme did “untold damage”, say scientists (英国の長期にわたるホライズンプログラムからの離脱は「甚大な損害」と研究者らが語る)

ブレグジット以降、優秀な研究者の損失に対する怒りは、重要な研究計画に再参加することにより和らぐ。

英国の科学の将来は、EUのホライズン研究計画に再参加するという英国政府の土壇場での決断によって救われたかもしれない。しかし、この動きを歓喜の理由とすべきではないと研究者らは警告している。

多くの英国の研究者は、合意が達成された遅れはあまりにも深刻であり、ブレグジット以来ほぼ3年間、820億ポンドのホライズン計画から締め出されたことで、この国の科学は大きな打撃を受けたと述べている。それを正すのには時間がかかりすぎる、と彼らは主張する。

2020年以来、英国は北アイルランドの貿易規則に関する長引く紛争のため、ホライズンへの参加が阻止され、その再参加に対して交渉を続けてきた。

先週、政府がホライズンへの再参加を発表したという最終発表は、多くの上級研究者から歓喜と安堵をもって迎えられた。

その一方、一部の研究者は、長期間ホライズンから締め出されたことにより、英国の科学は取り返しのつかないほどの損害を受けたと警告している。気候変動やAI、新薬に関する主要なプログラムにおいて、英国が重要な主導的役割を果たすことができた時期である。

University College London の英国認知症研究所のグループリーダーのBart De Strooper 教授は次のように述べた:「何年も前に起こるべきであったことに対して祝う理由は全くない。過去数年間、我々は主要な研究分野で何が起こっているのか全く不確実な状態に直面していた。英国はかつてのホライズン・プログラムで優位を占めていたが、そのような状態に戻るまで、長い時間がかかるであろう。」

この点は、同機関に所属する神経遺伝学者のSir John Hardy教授も繰り返し述べている。同教授は「過去3年間のホライズンへの不在によって、英国は科学を行う場所としての魅力を失い、多くの弊害をもたらした。」と同紙に語った。

「我々は、ホライズンが資金提供する偉大な科学研究に参加しておらず、欧州の同僚からの信頼を失っている。将来、我々はホライズンからまた離れるのかと言う質問をされるかもしれない。ブレグジット後、多くの研究者が英国を離れ、英国とEUにある研究室の移動には時間と費用が掛かり、官僚的で悪夢のようになっている。他のすべての条件が同じであるのに、こんな無駄なこといったい誰がしたいと思うのか?」

しかし、他の研究者らはさらに慎重だった。University of OxfordのDunn School of Pathologyの院長であるMatthew Freeman教授は次のように述べた:「なぜこんなにも時間がかかったのかわからないが、このニュースは、世界中から優秀な研究者を英国に誘致しようと時間を費やしている我々にとっての救いとなるだろう。」

University of Cambridge の宇宙学と天文物理学のMartin Rees 名誉教授は、ホライズンへの再参加の決定は、英国と欧州本土の科学界におけるまれなコンセンサスであると付け加えた。「しかし、我々全員がこの同意に達するまでの不合理な遅れに不満を感じている。」と述べた。

 

The Guardian:

https://www.theguardian.com/science/2023/sep/09/britain-eu-horizon-programme-scientists-research-scheme-flagship

 

(8我々の政策優先順位-英国大学協会

2023年9月8日、英国大学協会(University UK: UUK)は、次回の総選挙を前にして、政策ネットワーク、理事会、その他の関係者との協議を経て、大学機関の繁栄のための政策優先事項を定めると発表した。今後数週間から数か月かけて、各分野の優先事項をさらに詳細に策定する予定である。

大学機関の繁栄は、雇用、スキル、アイデア、イノベーションの提供を通して、英国の経済成長と繁栄を牽引するために不可欠である。大学は、学生と地域などその周辺の生活を改善し、世界各地とのつながりやネットワークを通して英国の世界的影響力を強化する。

社会の最大な価値を提供するためには、研究、イノベーション、高等教育に対する単一の戦略的アプローチを提供するため、政府内連携が必要である。同時に、相応な学生や大学の両方からの信頼される規制システムも必要である。

学生の成功を支援

我々は、すべての人々に公平で、次世代を育成する大学の長期的な野心を支援する制度を望んでいる。それはつまり:

 ●我々は、補助金を最も必要とする人々のためにその復活を希望する。

 ●人口増加による需要の増加に見合うだけの定員の確保。

 

大学に進学する意欲と能力を持つすべての学生が質の高い教育と総合的な経験を確実に得られるようにするため、学生一人当たりの教育投資を2015/16学事年度レベルに戻す。

大学を成長の中心に据える

我々は、経済成長、イノベーション、創造性、生産性を牽引する大学の能力を活用したいと考えている。我々は知識集約型経済を必要とし、以下のような方法で英国全体における高技能職の雇用の開発する:

 ●政府は、2030年までに研究開発へのGDP投資目標を現在の2.4%から、イスラエル、韓国、米国、ドイツなどの国際的なイノベーション超大国に近づけることを確約する。

 ●研究開発を長期的な資本投資ととらえ、10年サイクルで資金を供給することで、確実性を高め、民間投資を確保する能力を最大化する。

英国経済が国際競争力を維持するためには、以下を優先事項とする必要がある:

 ●国際的に競争力のあるビザ制度を通して、学生と教職員ともに優秀な人材を誘致する。

 ●卒業ビザを維持するという公約によって裏付けられた、留学生数の安定的かつ管理された増加への取り組み。

 ●一時的な移民と、永続的な移民を区別した移民数。

  

機会、場所、社会的流動性の支援

我々は、大学の支援を通じて英国全体にわたり利益と繁栄をもたらすことを望んでおり、そのために下記のことを実行したいと考えている:

 ●高等教育、継続教育、技能実習を問わず、高等教育へのアクセスを促進し、アクセスや地域で必要なスキルを効率的に提供する、より強い地域のネットワークを推奨する。

 ●地域に根ざしたイノベーションへの資金援助を通じて、地域の機会を創出するスタートアップ企業やスピンアウト企業を支援し、大学が企業と連携して地域の経済成長を実現するための支援を強化する。

 ●大学が次世代の学校のリーダーのための教師養成を提供することへの障壁を取り除き、医学部や医療関係の専門職の数を増やすことで、誰もがどこに住んでいても最高の教育と医療サービスにアクセスできるようにする。

 

英国大学協会(University UK: UUK):

https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/insights-and-analysis/our-policy-priorities

 

 

(9核廃棄物処理の新技術の開発のため日英のパートナーシップ

2023年9月8日、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は放射性廃棄物を検出し処理する技術を開発する新しい研究が、日本政府と共同で英国から資金提供をを受けたと発表した。

この研究は、英国のSellafield 原子力発電所の廃炉プロジェクトの支援と、日本の福島原発事故の放射性の残骸の撤去作業を支援するものである。

新しい技術の開発

UKRIの一部である工学物理科学研究会議(Engineering and Physical Sciences Research Council: EPSRC)によって、以下の課題に取り組む2つのプロジェクトが100万ポンドの資金を提供された:

 ●放射性廃棄物の処理、梱包、保管

 ●廃炉作業における遠隔操作、ロボット利用、自律システム

 ●放射性核種放出の環境挙動とリスクと劣化したインフラの管理

 

日英原子力共同研究プログラムは、UKRIと文部科学省とのパートナーシップである。

国際科学パートナーシップ基金

これは昨年12月に科学担当大臣であるGeorge Freeman氏が設立した国際科学パートナーシップ基金(International Science Partnership Fund: ISPF)を通じて初めてUKRIが授与したものである。

ISPFは英国の研究者やイノベーターと世界中の研究者との共同研究を支援するものである。

地球、健康、技術、人材という現代の主要テーマについて、世界の課題に取り組み、知識を構築し、未来の技術を開発することを目的としている。

研究の専門知識を結集

科学、イノベーション、テクノロジー省の科学担当大臣であるGeorge Freeman氏は次のように述べている:

「昨年、日本でISPFを立上げた後、この基金の最初のUKRIからの基金支援が日本とのパートナーシップであることは、まさにふさわしい結果である。核廃棄物の処理は人類にとって非常に大きな課題である。英国と日本の最も優秀な人材を結集し、センシング、データ、化学などにおける共通の専門知識に焦点を当てることは、この基金と我々の科学超大国としての使命の核ともいえる、より深い国際協力を通じて英国の科学的リーダーシップを活用し、世界の利益のために貢献し、人類が直面する最も差し迫った課題に取り組むということである。」

資金提供対象プロジェクト

研究プロジェクトはUniversity of StrathclydeとUniversity of Sheffieldの研究者が主導する。

検出、安全、回収、廃棄

University of StrathclydeのPaul Murry 博士は、放射性破片の検出、保全、回収、廃棄の改善に関する研究を主導する。

このプロジェクトには、英国と日本からの研究者と産業界関係者のチームが集結する。それには次の機関が含まれる:

 ●Lancaster University

 ●National Nuclear Laboratory

 ●大阪大学

 ●日本原子力研究開発機構

 ●日本核燃料開発株式会社

このプロジェクトでは、ハイパースペクトルイメージングをはじめセンサー技術、信号処理、データ融合を利用した新しい検査技術を開発する。

ジオポリマー・バインダー

University of SheffieldのBrant Walkley博士は、「ジオポリマー・バインダー」を設計するため、天然の資源として焼成粘土を使う研究を主導する。

このバインダーは、金属合金、酸化物、ケイ酸塩、スラリー、堆積物からなる溶融炉心コンクリートから、固体放射性燃料の残骸を安全にセメント化する。

研究協力の支援

UKRIの国際推進を担当するChristopher Smith 教授のコメント:

国際パートナーシップとは、私たちがお互いから学び、研究とイノベーションの並外れた可能性を活用することで問題解決を行い、英国および世界中で我々の安全と幸福を将来にわたって保証するために不可欠なものである。

これらの新たな投資はその一例である。

日英両国の専門家の協力で、現在および次世代のために地元の環境を保護するため、核破片を安全に検出し処理するための解決策を探していく。

このプログラムは、EPSRCと日本の研究コミュニティと政府との長期間にわたる関係に基づいて構築されている。

 

UK リサーチ・イノベーション (UK Research and Innovation: UKRI): https://www.ukri.org/news/uk-japan-partnership-to-develop-new-tech-for-nuclear-waste-disposal/

 

(10) ラッセル・グループの存在意義はまだあるのか?

2023年9月10日、Guardian 紙は、一流大学の権威ある派閥グループは、自分たちが常にトップにいると思わせたがっているが、現実には状況が変わってきているかもしれないと報じた。

小学校の校長が、4歳児の両親に対して、次のように言うことで知られている。「あなたの子供がここに来れば、ラッセル・グループの大学に進学できるでしょう。」これは学校にとって良い宣伝文句かもしれないが、ラッセル・グループの大学はそれに値するのだろうか?

1990年代初頭に、ロンドン中心部のラッセル・スクエアのホテルで大学長たちが会合を開いたことからそう呼ばれる、著名な大学による非公式なクラブとして発足したラッセル・グループは、現在では国内外から大学の学部入学志願者を集める24の大学から成るカテゴリーへと発展した。

志願者が多いため、ラッセル・グループの大学は、入学時に高い成績を要求し、学力的に厳選することができる。ある学長はGuardian紙に次のように語っている:「ラッセル・グループは最高の大学で構成されているように見えるよう、うまく演出してきた。当てはまるものもあればそうでないものもあり、概してこれはナンセンスだ。しかし、親たちは、ますます自分の子供をそのうちの一つに進学させたいと言っている。」

Guardian紙の大学ガイドでは、ラッセル・グループの大学が上位10位を独占しているが、同グループのほかの大学がもっと下位にいることが分かる。今年の第1位は再びUniversity of St Andrew でラッセル・グループではない。同じくグループのメンバーでないUniversity of Bath は、Durham やUniversity College Londonなどのラッセル・グループの有力校より上位にいる。

その理由は、Guardian紙の大学ガイドが学部生志願者を対象としているのに対し、ラッセル・グループはしばしば「研究集約型」大学と定義され、その活動の大半が研究に中心に展開しており、Guardian紙のランキングはそれに重きを置いていないためである。

ラッセル・グループの広報担当者は、ラッセル・グループの人気について説明を求められた際、次のように述べた:「我々のグループに所属する大学は、研究に基づいた教育に特化しており、授業は世界をリードする研究者によって学習内容を共同設計されて実施されている。これにより、学生は自分の分野での最新の考え方や、世界水準の施設を利用できるという恩恵がある。学生は学習体験において積極的な参加者となり、新しい知識を追求し、批判的思考力を養うことが奨励される。」

「ラッセル・グループの加盟大学は、最高品質の教育や学習経験を学生に提供することに誇りを持っており、それは、あらゆる背景を持つ学生の高い継続率、技術職への就業率、将来の収入などに反映されている。」

しかし、専門的・技術的な教育機関を代表するUniversity Allianceグループがまとめた数字によると、2023年の全国学生調査で記録された満足度では、ラッセル・グループ以外の大学グループの方が高く、大学機関の平均を下回っていた。

University Allianceの最高責任者、Vanessa Wilson氏は次のように述べた:「若者やその両親、保護者が『正しい』大学を選ぶことに大変不安になっていることは、我々も知っている。何が『正しい』を意味するかは重要な区別であり、我々のような教育関係者はそれをよりよく説明する必要がある。」

Wilson氏は、大学の種類による卒業後の成績の差は驚くほど大きな差を与えないと指摘する。「希望しているキャリアに就くためには、厳選された大学で学ばなければならないというのは全くの誤りである。大学卒業生の85%が、卒業後わずか15か月後には有意義な仕事に就いているか、もしくは勉強を続けている。この数字は最も競争が激しい大学から、専門・技術系の大学、音楽学校のような専門教育機関に至るまで、あらゆる大学グループでほぼ同様である。」

現在大学で構成されるMillionPlusグループの最高責任者、Rachel Hewitt氏は、「一部の大学がほかの大学の縮小版ということではなく、異なるものを提供する大学が存在するということだ。つまり、システム全体で、学生にとって素晴らしい選択肢があるということを意味する。」

Hewitt氏によると、彼女が代表を務める大学グループの強みは、Covidパンデミックの際に明らかになったという。このグループの加盟大学は、「あらゆるバックグラウンドを持つ学生を支援することに慣れているため、パンデミックを通じて困難にある学生をサポートすることができた。」と語った。

彼女はさらに、「学生に対する強力なサポートが組み込まれているため、すべての学生が確実に成功を収めることができる。」と付け加えた。

The Guardian:

https://www.theguardian.com/education/2023/sep/10/is-the-russell-group-still-relevant

 

 (11) DSIT中央政府部門として初めて、公務員の科学技術スキルのアップのため、英国政府省庁のSTEM  Futures制度に参加

2023年9月11日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は政府全体で取り組むSTEM Futures 制度に参加する最初の中央政府省庁になると発表した。

 ●DSITはSTEM Futures制度に参加する最初の省庁となる:これは公務員に科学技術の専門知識促進する、英国政府省庁全体のスキームである。

 ●STEM Futures制度は、産官学にわたる組織とのパートナーシップで、シャドーイング、実地訓練、メンタリングを提供する。

 ●この制度は、最先端の専門知識を政府の中枢に導入するための省庁の継続的な取り組みを補完するものである。

 

同日、DSITは中央省庁として始めてSTEM Futures制度に参加することにより、多くの公務員が、直接最先端技術や科学の最前線の業務経験から恩恵を受けることとなる。この制度は、データサイエンスからシステム思考(問題解決やプロジェクトの管理に対する科学的アプローチ)まで、共通の関心を持つ多様な専門家と公務員が連携するものである。

STEM Futures制度は、公務員がこれらの分野のSTEM知識を深めることを目的に、政府内外でシャドーイング、実地訓練、メンタリングなどの機会を提供し、公務員が様々なバックグラウンドを持つ専門家から直接学べるようにすることで機能している。これは、公務員のSTEM(科学、技術、工学、数学)の知識の充実や長期にわたる能力の向上を目指す政府省庁横断的な計画であり、公務員に一流のテクノロジー企業や研究機関および大学などでの経験を提供するものである。

このプログラムは政府科学工学(Government Science and Engineering : GSE)専門職によって運営され、産学官の組織が連携している。

DSITの大臣であるMichelle Donelan氏は次のように述べた:

「STEM Future 制度への参加は、科学技術における英国独自の主導的役割を基盤として、ここ英国で世界でも最も革新的な経済を構築するというDSITの使命における節目となる。

英国の大学は、英国最大の輸出品のひとつであり、その名声は世界から熱望されている一方で、1兆ドルをこえる価値を誇るテクノロジー部門では、世界第3位でしかない。

STEM Futures 制度は、我々の独自のExpert Exchange programmeと並行して、中央政府が科学技術の最前線から直接経験や専門知識を得ることで、科学技術のリーダーたちが直面する問題を真に理解し、公務員に産業界、学術界、および広く一般市民のために役立つ政策を打ち出すために必要なスキルを身に着けさせるることを目的としている。」

STEM Futures 制度は、長期的なスキル開発とキャリアアップに重点を置き、DISTのExpert Exchange schemeを通し、政府の中枢に最先端な専門知識をもたらすための継続的な活動を補完する理想的なものである。

産業界と学術界から専門家を出向させることからはじまり、Expert Exchange はDSITと科学技術分野の連携方法を徹底的に見直し、すべての関係者に恩恵をもたらす形で、政府、産業界、学術界の間で知識を共有する一連の方法を開発する。その方法として関係者への訪問、シャドーイングの機会、フェローシップなどの活動が含まれる。

STEM Futuresへの参加により、専門家や関係者と協力することをDSITの政策立案の際の基本姿勢とすることを視野に入れ、その使命をさらに強固にするものである。

このように省庁の中心に世界水準のSTEMの知識基盤を構築することは、科学技術戦略(Science and Technology Framework)の中で定められているように、英国を最も革新的経済国にするという政府の野望を支援する。

戦略的ビジョンでは、2030年までにこの目標を達成するための10つの重要な行動を定めている。それには、英国のすでに誰もがうらやむ人材と技能の基盤を構築し、公共部門全体を通してイノベーションを推進する文化を創造することが含まれている。

Expert Exchange Programme は、将来の産業を育成し、最終的には国民の生活を向上させるため、科学、イノベーション、テクノロジーに英国政府の全力を注ぐというDSITの中核である使命を支援するものである。しかし、これは新しい技術やイノベーションに関する実践的な比例した政策を立案する際に、深い知識や専門性が必要とされたときのみ可能となる。

Expert Exchange Programmeは、こうした新しいスキルや視点をDSITの業務に組み込むことを目的としている。科学、イノベーション、テクノロジー省は、国内外における我々の価値を守りつつ、社会の健康と繁栄を促進する新たな発見を通じて、経済を成長させ、英国のすべての人々の生活を向上させるという首相の取り組みを支える原動力となっている。

DSITは、2023年3月に3億7000万ポンドを超える資金を投入して科学技術戦略(Science and Technology Framework)を立ち上げ、イノベーションへの投資を促進し、英国に世界からの優秀な人材を誘致し、AIなどのような画期的な新しい技術の可能性を掴もうとしている。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/dsit-joins-stem-futures-scheme-in-whitehall-first-to-build-civil-servants-sci-tech-skills

 

(12治療が最も困難なガン治療に取り組む高リスクで高報酬の研究に200万ポンドの資金提供

2023年9月12日科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DIST)は、AIなどの利用を通してもっとも治療が困難なガン研究に携わっている革新的な研究者が200万ポンドの資金提供を受けたと発表した。             

 ●生存率の低いがんに対処するため、人工知能なども含む、先駆的な技術を探る4つのプロジェクト

 ●より多くの命を救う野心的な計画を進めるため、各チームは50万ポンドずつを支給された。

 ●この発表は科学技術がトップのAIとテクノロジーのイベントで発表された。

DSITの大臣、Michelle Donelan氏は、9月12日、人工知能(AI )の活用を含め、治療が困難ながん治療に取り組む革新的な研究者に200万ポンドの資金援助を行うことを発表した。

リスクは高いが見返りの大きい脳、肺、食道など生存率の低いがんを治療するカギとなるプロジェクトを推進するため、英国内の4チームが50万ポンドずつ受け取る。

政府支援の医学研究会議(Medical Research Council: MRC)の資金援助を受けるチームの一つであるKing’s College Londonは、人工知能が肺のスキャンをどのように読み取り、そのがんが治療に対して耐性があるかどうかをより正確に予想できるかを研究する。そのデータは、治療抵抗性のがん細胞を選択的に破壊する標的薬の開発に利用される。

 

この投資は、先月医療分野におけるAIイノベーションのための研究費としての1300万ポンドに続くもので、同日にロンドンで開催されるCogXカンファレンスで英国の経済、社会や公共サービスをAIで変革する幅広い可能性について概説する科学技術庁官の講演に先立って行われる。

今日資金提供を受けた他のプロジェクトの中には、レーザーを使って脳腫瘍細胞を精密に除去する技術を開発するImperial College Londonの研究も含まれる。この技術は、正常細胞への治療の影響を減らすだけでなく、癌の性質に関するリアルタイムのデータを提供し、術後の治療に使用できる可能性がある。

 

他にも、Cardiff UniversityとBrain Tumour Research社は、脳腫瘍の部位にクライオゲルを配置することで、その部位に直接薬剤を送達し、血液脳関門を乗り越え、非標的部位への薬剤の影響を軽減する可能性を探っている。

 

一方、University of ManchesterとChristie NHS Foundation Trustは、食道癌に対する人工ナノ粒子治療法を最適化する方法を探求する。研究者たちは、がんに対する免疫系を高める薬の効果を妨げる細胞をターゲットにしたいと考えている。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/high-risk-but-high-reward-research-tackling-hardest-to-treat-cancers-receives-2m-funding-boost

 

(13ホライズン・ヨーロッパの合意にもかかわらず、英国との提携に未だに不確実性が残る

2023年9月12日、Science Businessは、英国とドイツの大学長たちがハンブルグでの会合で今後の協力関係の回復について話し合いをしたと報じた。しかし、回復には最大5年はかかるだろうとひとりが警告した。

University of Hamburg の学長は、ドイツの研究者たちはまだホライズン・ヨーロッパでの英国との協力が滞りなく進むか確信を持てないと警告した。各機関は、研究者らに対し、英国のパートナーがプログラムに完全復帰したことを研究者たちに保証しようとしている。

 

先週のEUと英国政府間の合意により、2024年からの募集では英国もホライズン・ヨーロッパに参加できることになった。しかし、今週ハンブルグで開かれた英国とドイツの大学学長の会合によると、英国が半離脱パートナーであった2年半の不確実な時からの克服にはかなり時間がかかるという。

University of Hamburg の学長であるHauke Heekeren氏は、「現実的には元に戻るまで4から5年はかかるだろう。そうなると、これはほとんど新しい資金調達制度のようなものだ。」と述べた。正常な状態に戻ったと研究者に納得させるには、数回の資金援助が必要だろう。

先週、広く歓迎されたパートナーシップの発表にもかかわらず、ハンブルグの研究者の間ではホライズン・ヨーロッパを通じて英国と提携することには「絶対的に」依然として不安が残っている。

「それはシステムの中の不確実性だ」と、神経科の研究者であり、信頼と確実性がどのように人々の意思決定を左右するかについての研究を行っているHeekeren氏が述べた。

「政府は、一度損傷したものは通常、修復するにはその傷をつけるよりも修復するほうがより時間がかかることを理解しなければならない。」とも述べた。

研究者らは現在、かつてと同じように助成金手続きが機能するかどうかを疑問視している。「そのプロセスが以前と同じように機能しているという信頼を再構築しなければならない。」と彼は言う。

 

信頼の回復

Heekeren氏は、今週ハンブルグで、英国のラッセル・グループ(Russell Group)の主要研究大学のカウンターパートと会合を行う、ドイツのU15グループという大規模研究のグループの大学長の一人である。

英国がホライズン・ヨーロッパに復活したことで、雰囲気は明るいが、次の課題は英国の参加率を高めることである。プログラムの第2の柱である協力部分では、この制度における英国の立場が不確実なため、参加率は半減している。

英国の研究者たちは、関連機関ではないにもかかわらず、プログラムのこの部分に参加することができた。しかし、英国政府から提供される独自の資金を自身で資金を見つけなければならず、潜在的なEUのパートナーからの混乱と不確実性を克服する必要があった。

統計的はこれが大きな影響を与えたことを示しており、現在の課題は参加がどれだけ早く回復するかである。

ラッセル・グループ側として会合に参加したUniversity of Leeds大学の大学長であるSimone Buitendijk氏によると、ホライズン・ヨーロッパ助成金への申請が39%減少し、英国の大学全体では50%減少を記録したと補足した。

「これは、人々が努力さえしなかったことを示している。人々が成功してからやめるよりもそのほうが難しいためである。それは両者のためらいであり、信頼の欠如である。」と彼女は述べた。

しかし、両大学は別の方法で共同研究を維持しようとした。英国が除外された一方で、Hamburg とLeedsは研究パートナーシップのための「シード基金」を設立し、18か月間プロジェクトを支援するため、最大1万ユーロを研究者に提供した。「大金ではないが、共同研究を本当に継続したいという意思表示であった。」と Buitendijk氏は語った。

Buitendijk氏は、ハンブルグのHeekeren氏よりもホライズン・ヨーロッパで通常レベルに戻るまでの期間に関しては楽観的である。

「Leedsの同僚と話したところでは、2年間ぐらいだろうか。しかし、これは誰にも分らない。4年より短くても私は驚かないし、2年未満かもしれない。なぜなら、北海を挟んだ我々側としては、ニーズが多いためにすぐにでも取り掛かる必要があり、今は躊躇している暇はない。」と述べた。

 

「暗い気持ちになることはない」

Heekeren氏とBuitendijk氏は、失った時間を後悔するよりも、ホライズン・ヨーロッパへの参加に関して明るくなることに積極的になりたいと考えている。「正直に言うと暗い気持ちなど全くない。なにが起こったかをただ受け止め、真の確信をもって前進したいと考えている。」とBuitendijk氏は述べた。

しかし、共同研究において欠けている点は、英国が2021年に脱退した260億ユーロの学生交流プログラム、エラスムスプラスである。英国がすぐに再加盟するような期待はなかったが、英国の不在はいまだに痛感されている。

「共同研究とは単に研究のことを述べているのではなく、若者がお互いに会うことで、他国に住むことがどういうものなのかを理解してもらう意味もあった。」とBuitendijk氏は述べた。

Heekeren氏は、ホライズン・ヨーロッパとエラスムスプラスの2つのプログラムを指して、「この2つのプログラムは連携している。」と述べた。

ドイツの研究大学のほとんどは、ヨーロッパの大学が主導する大陸規模のパートナーシップのメンバーである。しかし、英国の研究機関は、エラスムスプラスを通じて資金を調達しているため、準会員としてしか参加できない、と彼は指摘した。

SCIENCE BUSINESS:

https://sciencebusiness.net/news/brexit/uncertainty-over-working-uk-remains-despite-horizon-europe-deal

 

(14迫りくる高等教育の危機の中、学生局の業績が低迷

2023年9月13日、UK Parliament のウェブサイトによると、学生局(Office for Students: OfS)に関する委員会の報告書から、同局は高等教育機関や学生との関係が悪く、規制に対するアプローチが支配的で恣意的であり、政府からの独立性が欠けていることが明らかになった。

委員会の報告書

同日に発表された産業・規制委員会(Industry and Regulators Committee: IRC)の新しい報告書は、学生局と政府は、高等教育機関に差し迫った財政危機に直面していることに対処できていないことを警告した。

学生、大学のリーダー、現・元大臣、学生局、質保証機構(the Quality Assurance Agency)、代表団体から意見を聴取した結果、IRCは、コスト増、国内の学部生に対する学費の凍結、EUの研究費の削減に対処するために留学生や大学院生の学費に危険なほど依存しているとの懸念を表明した。

委員会の報告書「Must do better: the Office for Students and looming crisis facing higher education (より良くしなければならない:学生局と高等教育が直面する差し迫った危機)」は、学生局の業績を批判し、学生局は学生のニーズを満たしておらず、管轄する多くの機関から信頼されていないと結論付けている。また、学生局の政府からの独立性の欠如や、その行動は短期的な政治的優先事項やメディアの見出しに左右されているように見えることが多いなどの懸念を示している。

委員会は、学生局が学生にとって費用に値する価値ある教育に注目していることは歓迎する一方で、学生局の規制に対するアプローチや、特に高騰した登録料が規制当局自身の権限の拡大を部分的に反映している場合、大学にとって金額に見合った価値を学生局が提供しているかどうかについては疑問を呈している。

 

主な提言内容:

報告書は、学生局に対して以下のことを提案している:

 ●大学機関の財務状況についてより定期的に会合を持ち、大学機関全体が直面しているシステム上の課題を確実に認識すること。

 ●長期的な費用やおおよその授業時間など、進学希望者に対して明確でわかりやすい情報を提供しない大学には、その責任を負わせること。

 ●独立した指定質保証機関の復活も含めて、質保証の枠組みを国際基準に早急に調整すること。

 ●規制を行う際に、教育機関の自主性をどのように考慮しているかを明確にすること。

 ●高等教育機関と信頼関係を築き、より戦略的で、闘争的でないアプローチを採用すること。

 ●学生局の理事会に少なくとも2名の学生代表を選出し、学生局の業務に学生がより関与できるようにすること。

 ●「学生の利益」をどのように定義し、それがどのように学生局の業務に反映されるかを、学生とともに詳細な検討作業を実施すること。

  

また、政府に対して以下のことを求めている:

 ●高等教育の資金調達方法を見直し、長期的かつ持続可能な資金調達・提供モデルを構築すること。

 ●現職の政治家は、独立規制局の議長に就任する前に、党内の政治的な運営や指導する立場から辞任することを要件とすることを検討すること。

 ●過度に規定的なガイダンスではなく、より高度で戦略的なインプットを学生局に提供すること。

 ●高等教育データ削減タスクフォース(Higher Education Data Reduction Taskforce)を再結成し、大学機関の不必要な負担を軽減すること。

  

UK Parliament:

https://committees.parliament.uk/committee/517/industry-and-regulators-committee/news/197379/office-for-students-underperforming-amid-looming-crisis-in-higher-education/

 

関連記事①

学生局(Office for Students : OfS)は貴族院の産業・規制当局委員会(IRC)の調査に関して回答 (OfS responds to House of Lord Industry and Regulators Committee Inquiry

2023年9月13日、本日、貴族院の産業・規制当局委員会は、学生局の業務に関する調査結果を発表した。これに対し、学生局の議長であるWharton 卿は次のように述べた:

「学生局の価値観には、オープンであること、学習の機会を求めることが含まれており、貴族院の産業・規制当局委員会(IRC)の調査は、高等教育機関の代表者、学生、政策立案者から意見を聞き、我々の規制アプローチに対するこれらの利害関係者の考えを理解する有益な機会を提供してくれた。」

「委員会の報告書は、大学のコースの質とコストパフォーマンス、および教育機関の財政的な持続的可能性の重要性を強調している。委員会は、学生は質の高いコースに公平にアクセスでき、就学中や、キャリアの準備期間中に適切な支援を受けられるべきであることを強調している。納税者にとっても学生にとっても、高等教育への多大な投資を保護するために、厳格な規制が重要である。これらの懸念は、学生局の規制戦略の根幹をなすものであり、これらの問題の影響をどのように改善できるかに委員会が焦点を当ててくれたことを歓迎する。」

「高等教育における財政的持続可能性の特別な重要性については、委員会や他の機関が指摘している通りである。我々は各大学機関を監視し、組織全体のリスクを特定するために情報の収集を行い、高等教育機関全体の財政の持続可能性に関する分析を公表している。大学から提出されたデータを詳細に分析した結果、多くの大学は財政的に良好な状態であることを示している。また、学部の授業料が固定化されることの影響や、コストの圧迫、留学生への過度な依存など、重大なリスクも認識している。この分野での我々の重要な作業は、しばしば公にされていない。しかし、我々は引き続きリスクを特定し、もし大学機関が財政危機に陥った場合、学生の利益を保護するために我々のもつ手段を活用していく。」

「委員会の報告書はまた、我々が管轄する機関や、我々が管轄する人々とのかかわり方を刷新するという我々の取り組みに、さらなる推進力を与えることになるだろう。この夏に我々は、大学機関への訪問プログラムを実施し、学生や職員と直接会い、高等教育での経験や現在直面している問題について話を聞いた。これらの訪問で重要な洞察を得るとともに、我々のアプローチについて多くの好意的なフィードバックを受けた。秋にかけて予定している次回の大学訪問を楽しみにしている。」

「委員会の努力に感謝する。学生局は委員会が提議した問題の多くに対処するため、すでに積極的な措置を講じている。今後数週間にわたり、報告書を慎重に検討し、より詳細に回答する予定である。」

 

学生局(Office for Students: OfS):

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/ofs-responds-to-house-of-lords-industry-and-regulators-committee-inquiry/

 

(15ブリストル、AIイノベーションを加速させる英国最強のスーパーコンピューターを導入へ

2023年9月13日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、英国のAI研究やイノベーションを推進するため、新しいスーパーコンピューターセットをブリストルに建設することを発表した。

 ●Isambard-AIと名付けられた英国のAI研究リソースは、ヨーロッパでも最も強力なスーパーコンピューターのひとつとなる。

 ●新しい施設は、AIイノベーションと科学的発見の先導的な存在として研究者や業界の専門家のための国家的リソースとして機能する。

 ●スーパーコンピューターの計画は今年3月に発表された英国のコンピューティング能力を変革するための9億ポンドの投資に支えられる。

 

英国の先駆的なAI研究やイノベーションの推進のためヨーロッパでも最も強力なスーパーコンピューターがブリストルに建設される。

英国政府は、University of Bristolが新しいAI Research Resource (AIRR)を迎えることを決定した。これはAIの可能性を最大に引き出し、この技術の可能性や安全な利用に関する重要な研究を支援する国家施設となる。

世界トップクラスのAI Research Resource(AIRR)クラスターは、英国のコンピューター能力を大幅に向上させる。これは、英国のAIへの野望を達成し、急速に発展する技術を活用する上で世界のリーダーとしての地位の確保するために不可欠なものである。このクラスターは何千もの最新鋭のグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPUs)から構成されており、今日のAI研究開発の最前線にある大規模な言語モデルを訓練することができる。

コンピュート(Compute)とは、複雑なタスクを処理していくために大規模に構成されるシステムのことで、科学技術のエコシステムだけでなく、現代経済の運営にも不可欠なものである。この新しい国家施設は、独立機関「Future of Compute Review」の提言に従って、英国の次世代のコンピュート・インフラを支える一助となる。

新しいAIRRは、ブリストルの有名なつり橋などの画期的な作品で英国を変革し、交通と建設に革命をもたらしたエンジニアのIsambard Kingdom Brunel氏にちなんでIsambard-AIと名付けられる。

ブリストルはすでに最先端のコンピューティング技術の本拠地となっており、AIと機械学習の研究を支援するために今年後半にIsambard 3スーパーコンピューターを導入する予定である。同時にUniversity of Bristolには、UKRI Centre for Doctoral Training in Interactive Artificial Intelligence (UKRIインタラクティブ人工知能博士課程研修センター)の本拠地がある。Isambard 3 とIsambard -AIはどちらもUniversity of Bath、University of Bristol、Cardiff University 、University of Exeter で構成される GW4大学グループと協力し、National Composites Centreに拠点を置く。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/bristol-set-to-host-uks-most-powerful-supercomputer-to-turbocharge-ai-innovation

 

(16多様な研究者のキャリアパスが英国のイノベーションと成長を促進すると、企業や大学のトップが語る

2023年9月19日、国立大学産業センター (National Centre for Universities and Business: NCUB)の研究者キャリアモビリティタスクフォース(Researcher Career Mobility Taskforce)は、新しい報告書「Pathways to Success」(成功への道)」を発表し、大学の研究者のうちわずか5人に1人が産業界で勤務した経験があるという分析を強調した。

タスクフォースは、研究者が分野を横断して刺激的で影響力のあるキャリアを築くことができるより相互接続された研究システムの大胆なビジョンを描いた提言をまとめた。これには、政府、研究資金提供者、大学、企業、そして研究者自身の協力が必要となる。

タスクフォースの提言事項には下記の内容が含まれている:

 ●政府は、研究者の多様なキャリアを研究とイノベーションシステムの主要な成立原則とするべきである。

 ●公的資金提供者は、すべての研究者が支援を受ける機会を得ることができるよう、より包括的なモビリティスキームを共同で設計するために団結するべきである。

 ●大学と企業は、さまざまな分野での研究で得られたスキルや知識を明確に認識し、評価するべきである。

 ●個々の研究者は、学術界や産業界で経験を積む機会を求め、模索するべきである。

 

タスクフォースの共同議長でNCUBの議長であるSam Laidlaw氏は次のように述べた:「これまで、我々は研究者のモビリティを支援することには進歩があったが、さらに迅速に進めなければならない。タスクフォースは、大学と企業が提携し、影響力のあるイノベーションの開発に必要な経験を積むことを奨励することで、研究者のモビリティからの実質的な利益を得ることを示した。21世紀の課題と機会に対応するためには、学術界、産業界、政府、及びほかのセクターの境界を越えて研究が行われるよう、ダイナミックで多様性のあるキャリアパスを開発する必要がある。」

タスクフォースの共同議長であり、Cranfield University の学長であるKaren Holford教授は次のように述べた:「政府はダイナミックで様々なキャリアパスを作り出すことを、健全で回復力があり、影響力のある研究システムを作るための重要な鍵と位置づけた。我々の提言は、より連携の取れたシステムの設計図を作成し、セクターに対してより大胆な行動を促し、政府に対して研究者のキャリアにおける革命の第一歩となるインセンティブと資本金提供を確実に確保するよう呼びかけている。」

リサーチ・イングランド(Research England)の執行議長であるDame Jessica Comer 教授は、次のように述べた:「NCUBの研究キャリアモビリティタスクフォース(Researcher Career Mobility Taskforce)の報告書は、産業界と学術界の境界面における研究者の流動性と浸透の形に関する重要な役割を示している。この報告書は英国政府の科学技術の枠組みに定められた重要な問題に取り組んでおり、英国の優れた研究とイノベーションシステムを支える部門間の流動性の形と規模について調査したことを喜ばしく思う。提案されている実践的な行動は、大学、企業などおよび浸透がカギとなる公共団体や、地域社会組織との相互関係を強化することに役立つだろう。私自身のキャリアは学術界、NHS、 国の慈善団体、組織、および公共団体をまたがっている。いずれも大学システムのサポートと柔軟性がなければ不可能だった。この取り組みはまた、部門間の流動性を可能にするためのResearch Excellence Frameworkの次の段階の重要性も認識している。」

 

国立大学産業センター (National Centre for Universities and Business: NCUB):

https://www.ncub.co.uk/insight/diverse-researcher-career-pathways-will-power-uk-innovation-and-growth-say-business-and-university-leaders/

<参考>「Pathways to Success」(成功への道)」:

https://www.ncub.co.uk/insight/diverse-researcher-career-pathways-will-power-uk-innovation-and-growth-say-business-and-university-leaders/

 

(17英国王立協会、過小評価されているグループの独立研究者を支援するCareer Development Fellowshipを試験導入

2023年9月19日、英国王立協会(Royal Society: RS)は、英国のSTEM分野で、過小評価されているグループの研究者の独立した研究キャリアを立ち上げるための新しい制度の応募受付を、この秋から開始すると発表した。

RSのCareer Development Fellowship (CDF)は、まず黒人文化をバックグラウンドに持つ研究者を対象として試験的に実施される。もし成功した場合、その試験は他の過小評価されたグループの研究者にも対象が広がる可能性がある。

申請受付は11月に開始され、初年度は博士号を取得中、または最近取得した優秀な候補から約名にフェローシップが授与される予定である。

フェローシップは、英国の大学または非営利研究機関で好奇心に基づく研究を行うために、4年間、最高69万ポンドが授与される。さらに、CDFの研究者はRoyal Society FellowsやResearch Fellows 、専門家ネットワークとのつながりを通してトレーニングや指導を受ける機会が与えられる。

この制度は、分野を超えた円卓会議と、高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)の11年間のデータから傾向を研究し、的確な応募者プールに対してRSの早期キャリアフェローシップ(PDF)を基準として作られた制度である。その過程において、英国在住の黒人や、ミックスルーツで黒人文化の背景を持つ研究者、特に大学院からポスドク初期段階に移行する研究者をサポートするためのアカデミックパイプライン全体にわたる介入の必要性が明らかになった。

2021/22年度のHESAのデータによれば、博士レベルのSTEM学生のうち黒人のバックグラウンドをを持つものはわずか4%で、STEM教員ではわずか2.5%であり、この割合は最も上位の役職ではさらに低くなる。

この最新のプログラムは、RSによる長年の取り組みを基盤として築き上げられており、この助成金制度が学術的なキャリアの成功を築くために必要な柔軟性、支援、安全性を確実に提供する。

 

英国王立協会(Royal Society: RS):https://royalsociety.org/news/2023/09/career-development-fellowship/

 

(18クリアリングによる大学進学数が過去最高に

2023年9月21日 、大学入試機関 (University and College Admission Services: UCAS)のデータによると、過去最多の英国の18歳がクリアリング※を通じて大学やカレッジに進学したことが分かった。

UCASは同日、2023年8月17日の結果発表から28日後の2023年の志願者に関するデータを発表した。今回のデータによれば、クリアリングを利用して進学を決めた英国18歳学生数は過去最高の38,140人で、試験が再開された2022年は33,280人(+14.6%)、今回と評価方法が同じであった2019年は33,000人(+15.6%)であった。

今回の数字は、すでに第一志望大学に受け入れられた学生でも、新しい選択肢や大学やカレッジ進学を確保するためにクリアリングを利用している学生数が増加していることを示している。合計で16,040人の英国18歳の進学希望者は、すでに進学が確定している大学の内定を辞退し、新しいコースに進学している。このような例は2022年では14,780人、2019年では12,170人であった。

合計で67,990人の学生がクリアリングを利用して進学先を決めている。その内訳は次のとおり:

 ●32%は第一志望の内定を辞退して新しい進学先に変更した。(グループとしては最大数の割合)

 ●30%は大学からのオファーの条件を満たせず、結果発表日にクリアリングとなった後に進学先が決定した。

 ●後の残りの割合は直接クリアリングに出願した、もしくは第一志望大学を決めていなかった。

 

その他の主要な結果には以下が含まれる:

 ●全体として、英国の18歳の学生の27万350人が大学に進学した。これは2022年の27万5,390人(-1.8%)から減少し、2019年の23万9,460人(+12.9%)からは増加した。

 ●今年は英国で最も恵まれない環境(POLAR4 Quintile1)の出身者である18歳の進学数は31,090人で。2022年(31,900人)からわずかに減少し、2019年(26,010人-+19.5%)からは増加した。

 ●合計で非EU圏(全年齢、全出身地)からの留学生は50,860人であった。昨年は51,290人(-0.9%)で2019年は40,720人(+25%)であった。留学生出身国の上位2か国は中国(2023年では15,180人、2022年では16,720人とわずかに減少)とインド(2023年4,960人で2022年4,400人から増加)であった。2023年のEU圏からの留学生数は10,610人で2022年の10,910人、2019年の30,040人からは減少した。

 ●今年は1,350人のTレベルの学生もUCASを通じて申請し、そのうち1,100人(志願者中82%)が進学を果たした。これは、Tレベルが導入された昨年と同様である。

 

UCASの暫定最高責任者であるSander Kristel 氏のコメント:

「以前は、クリアリングとはオファーを満たさなかった学生が、受入残数があるコースに進学するための救済方法として考えられていた。これは決して現実からかけ離れているものではない。今年は、30,000のコースのうちの1つに、記録的な数の学生が枠を確保した。また、サイクルの後半で、個人的な理由により自身の選択肢を再検討した学生数が記録的になったことも分かった。さらに我々の調査では、10人に9人は自身の選択は正しかったと確信していることも明らかになった。

今日発表された数字から、世界中で英国の高等教育が引き続き魅力的であること、またパンデミックの間に見られた需要の急増に続く通常の成長を示している。私自身にとって、今日発表された数字は、最も恵まれない背景を持つ人々の高等教育の参加における格差を埋めるために、我々が団結して努力し続ける必要があることを示している。

クリアリングは10月17日まで開かれており、学生にとってまだ23,000を超えるコースと8,000を超える技術実習のコースを利用する十分な時間と選択肢が残っている。UCASチームは電話、SNSやucas.comなどを通じて選択肢を模索している学生のため、アドバイスや指導を行っている。」

大学入試機関 (University and College Admission Services: UCAS):

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/highest-number-ever-students-accepted-through-clearing

 

※クリアリングとは:イギリス大学が9月のコース開始時期に向けて、定員に空きのある学部課程コースの人数を満たすための受け入れを許可するシステム

<参考>:WHAT IS CLEARING? (UCASウェブサイト)

https://www.ucas.com/undergraduate/clearing-and-results-day/what-clearing

 

関連記事

BBC News: Fall in Students accepted into university in UK : 英国の大学の受け入れ学生数が減少

英国18歳の大学進学者が5年ぶりに減少した。

パンデミックで需要が増加した後、大学申請者数も減少し、両年とも出願者の約85%が合格した。今年は第一志望大学に合格した学生数は少なかったが、第二志望大学やクリアリングで合格した学生は多かった。

イングランドの成績がCovid以前の水準に戻ったため、Aレベルの成績上位者は今年も低下した。

Ucasが発表した新しいデータによると、今年入学を許可された英国の18歳は27万350人で、2022年の27万5,390人から減少した。

2018年以来の減少だが、Covid以前よりはまだ多い。

この合格者数の減少は、英国の18歳からの出願全体が今年減少したことに続くもので、2022年の32万3,290人から2023年には31万8,390人へと減少した。

Ucasによると、「パンデミック時に見られた需要の急増の後、通常の成長に戻った」という。

需要の落ち込みはすべての大学に等しく影響を与えたわけではなく、個々の大学のデータはまだ入手できない。

  

「クリアリングは素晴らしい選択肢だった」

Jessie Owersさん(18)はCardiff Metropolitan University のサークル活動を探している。

彼女はUcasのクリアリングを利用して出願し、この大学に入学が決まったのはわずか1か月前のことだった。「成績を受け取ったが、期待よりもずっと成績が低かった。他の多くの人にも同じことが起こったようだった。」と彼女は語った。

彼女は第一志望大学の条件の成績を満たせず、保険志望大学の無条件オファーを受けるかどうかを決断しなくてはならなかった。

彼女は心変わりし、もともと興味があったほかの大学にも目を向けることにした。

「大学に関して言えば、強いラグビーチームがあることが重要な点であり、Cardiff Metには非常に優れたチームがあることを知っている。第二志望を選択した人をたくさん知っていたので、クリアリングは素晴らしい選択肢だった。」と述べた。

パンデミックが始まってからの数年間は、より多くの十代の若者が大学に出願している。

Sixth Form Colleges Association の組合長であるBill Watkin氏は、このような増加は若者の選択肢が減ったためではないかと述べた。

「Covidの影響で、その期間中は特に雇用や実習の機会が少なかったため、一部の若者は高等教育に逃げ込もうとした可能性がある。コースへの入学者数の減少は、パンデミックからの脱却に伴う学生の行動の変化を部分的に反映している可能性もある。」と述べた。

また、2020年から2021年には旅行する機会も減り、ギャップイヤーの可能性も低くなった。

今年は、英国の全18歳の35.6%が大学に合格したが、これは2019年以降で最低の割合となった。

BBC NEWS:

https://www.bbc.co.uk/news/education-66867075

 

(19生涯学習資格:影響評価

2023年9月21日、教育省(Department for Education: DfE)は生涯学習資格(Lifelong Learning Entitlement: LLE)の導入の影響に関する経済評価を発表した。

詳細:

これは2025年から実施予定の生涯学習資格(LLE)の導入による潜在的な経済効果を示したものである。生涯学習資格(LLE)は、18歳以降の4年間の教育に相当する学費を、社会人になってからも利用できるように個人に貸与するものである。

生涯学習資格(LLE)は、高等技術レベルおよび学位レベルのモジュール式とフルタイムの学習に利用できる。人々は、学習の間隔を開け、自分の都合に合わせて学習することができる。これには継続教育や高等教育で時間をかけて資格を取得することも含まれる。

生涯学習資格(LLE)の範囲に関する詳細は、コンサルテーション回答書を参照。

生涯学習資格(LLE) は2023年9月18日をもって生涯学習資格として知られるようになった。これは以前には生涯ローン資格(Lifelong Loan Entitlement: LLE)として知られていたものである。

 

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/publications/lifelong-loan-entitlement-impact-assessment

 

<参考:評価書>

「Lifelong Loan Entitlement: Consultation response Updated Impact Assessment」

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1140631/Lifelong_loan_entitlement_-_impact_assessment.pdf

「Modelling the costs and benefits of the lifelong learning entitlement(LLE): information request:」 https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1186615/Modelling_the_costs_and_benefits_of_LLE_-_information_request.pdf

 

(20) UKRI、新しい政策を通して研究生の支援の改善を行う

2023年9月26日、 UK リサーチ・イノベーション (UK Research and Innovation: UKRI) は、博士号課程やその他の研究学位取得を目指す学生への支援を改善するため、大学院研究のための新たな制度を導入する計画を発表した。

この計画には、英国最大の大学院研究資金提供者がすでに講じている措置と、今後改革を導入するための一連の新たな取り組みが示されている。

また、主要な資金提供者と大学機関が協力し、大学院研究(postgraduate research: PRG)学生の生活費を支援するために支給される奨学金の最低水準および、彼らに提供される広範なサポートの両方について、共通の基準を設けるべきどうか、検討することを約束している。

研究生を支援するための分野横断的な取り組み

同日の報告書には、UKRIは英国のPRG学生の約5分の1の資金提供者として、また招集者として同セクターの他者をまとめるという両方の立場から、新たな制度に関する意見募集で提起された問題の回答も記載されている。

UKRIの計画では、2022年から2024年にかけて、UKRIが資金提供する学生に支払われる最低支給額を現金ベースで20%近く引き上げるなど、前向きな変化を支援するためにUKRIがすでに実施した活動の概要を示している。

UKRIは、他の資金提供者やあらゆる規模の研究機関の代表者をPRG Funders and Providers Forumに集結させ、意見募集で提起された共通の関心分野に取り組んでいる。

 

これまでの進捗状況

同日に発表された報告書では、UKRIがPRGの研修の前向きな変化を支援するためにすでに行った、以下を含む多くの活動について説明している:

 ●2021/22学事年度から2023/24学事年度にかけて、UKRIの最低奨学金を現金ベースで約20%増額し、学生の生活費をより支援する。

 ●採用面でも、資金提供を受けるすべての学生に対する環境面でも、平等、多様性、包括性を博士課程の研修への投資の中核要件として定着させる。

 ●指導の実践、参加の拡大、学生のメンタルヘルスや健康の支援など、優れた実践を開発し、共有するための計画への支援と投資を行う。

 ●他の資金提供者やあらゆる規模の研究機関の代表者を集め、セクターを超えたPRG Funders and Providers Forumを設立する。フォーラムでは意見募集で提起された共通の関心分野に取り組む。

 

UKRIの次のステップ

本報告書では、現在開発中もしくは今後実施する活動について、行動計画を示している:

 ●我々はUKRIの奨学金の設定方法と、研修助成金の利用条件を通して、特に障害や子供、や介護の責任のある学生に提供する広範な支援を見直す。

 ●革新的な博士課程のモデルなどを探求し、より多様な博士課程への参加を支援する。

 ●博士課程支援の中核として、より広範な専門開発の促進と強化を行うことで、多様なキャリアを支援し、分野間、部門間での研究者の移動を促進する。

 ●PRG Funders and Providers Forumは学生の奨学金と中心となる支援の基準となる基準の開発を検討することに共同で合意した。

 ●UKRIは、年内には博士課程の教育への投資に関するUKRIのアプローチをまとめたCollective Talent Funding に関する最新報告を発表する。

 

UK リサーチ・イノベーション (UK Research and Innovation: UKRI):

https://www.ukri.org/news/ukri-to-improve-support-for-research-students-through-new-deal/

 

 

(21世界大学ランキング2024:発表

2023 年9月27日、Times Higher Education紙(THE)は、世界大学ランキング2024を発表し、研究資金が減少している状況で、英国と米国の大学はアジアのトップ大学と足並みをそろえることに苦戦していると報じた。

THEの世界大学ランキングの最新データから、研究費に充てられる大学予算の割合が低下し、英米の大学のパフォーマンスが低下していることが明らかになった。

THE世界大学ランキング2024では、University of Oxford が8年連続の1位となり、上位10位以内は英国/米国の大学が独占している。しかし、長期的な分析では、英国、米国の全体的な地位は、他の高等教育制度と比較して低下している。

中国は上位10位に近づきつつあり、今回初めて上位15位以内に2つの機関がランクインした。20回目となる今回のランキングでは、Tsinghua University とPeking University 両大学とも、University of Pennsylvania とUniversity of Johns HopkinsとColumbia University を追い抜き、12位と14位にランクインした。一方、日本の東京大学は、University of Edinburgh, King’s College LondonおよびLondon School of Economics Political Scienceを上回り、10位ランキングを上がって29位となった。

6年間のデータを基にしたTHEの調査によると、米国の大学の平均順位は2019年の296位から348位に低下し、英国の平均順位も451位から477位に低下した。

対照的に、中国(635位から502位)、オーストラリア(322位から282位)、カナダ(349位から337位)の大学の平均順位は上昇した。

この分析は2019年以降毎年ランキング入りしている大学で、少なくとも10大学以上ある国のみが対象となっている。

 

米国と英国の業績が低迷した理由の一つは、他国と比較して、研究資金のレベルが低下したことである。

今年、米国はドイツを追い抜き、研究者一人当たりの機関収入が最も高い国となった。この数字は平均的な米国機関では134万ドル(108万ポンド)(2019年から42%の上昇)で、ドイツの機関では133万ドル(23%の上昇)となった。英国の数字はかなり低く43万9,000ドルで、フランス、イタリア、タイ、トルコ、カナダなどの金額よりも低い。

しかし、研究者一人当たりの研究収入(機関収入の一部)ではドイツは依然としてトップ(45万7,000ドル)で、米国はかなり低い(20万8,000ドル)数字であり、減少傾向である。

この長期的な研究によれば、米国の機関収入に占める平均割合は、米国では18.5%から15.6%、英国では14.7%から13.4%と減少した。

対照的に、中国、韓国、カナダ、オーストラリアを含む他のいくつかの主要な高等教育システムでは、研究収入に占める大学の平均割合が2019年以降増加している。ドイツの数字は比較的安定しており、34.9%から34.4%にわずかに減少した。

分析対象となった28か国のうち、米国と英国は研究収入の割合で20位、25位にランキングされている。2024年版ではスウェーデンが1位となり、65.5%(2019年と同じ)2位はオランダ(47.2%)、3位はトルコ(37.6%)であった。

減少幅は小さいものの、英国は2019年以降に研究者1人当たりの研究収入の絶対額が減少した唯一の国で、0.3%減少して5万8,800ドルとなった。

機関収入は、一般的な大学資金、助成金収入、契約収入、教育収入、寄付金、投資、商業化を含む大学の総収入と定義されている。研究収入は「特に研究目的で」受け取られる収入として定義され、短期契約や長期の研究単位の結果である場合がある。これらの数値は、有意義な国際比較のため、購買力平価で調整されている。

データでは資金の相互補助を考慮していない。例えば、英国では留学生の学費収入のかなりの部分が研究費に使われているが、この金額は教育機関の収入の数字にのみカウントされている。THEの主任データサイエンティストであるBilly Wong氏は 「米国と英国の大学の多額な資金が研究以外で受け取られている」ことは依然として衝撃的だと語った。

このデータは、「管理職層の成長はあまりにもコストがかかりすぎている」のではないかという疑問を投げかけている、と彼は付け加えた。

英国と米国の高等教育における管理の肥大化に対する苦情が増加傾向にあり、学生経験に費やされる資金が増加しているという報告もある。

Wall Street Journal 紙の最近の調査によると、米国の「最も有名な公立大学は、過去20年間にわたり、新しい大学校舎や学生寮の建設、スポーツプログラムに投資し、管理者を多数雇用するなど、際限のない支出を行ってきた」という。

University of Johns Hopkinsの公共経営学の上級講師、Paul Weinstein氏は、連邦および州レベルでの研究に対する米国政府からの支援が減少しており、「過剰な管理部門への支出により、研究や教育に費やすべき資金が締め出されている。」と述べた。

「そしてもちろん、管理業務の肥大化はその結果として生じるプロセス、規則、事務処理により、職員が研究に費やす時間は減少した。」と述べた。

University of Oxfordの高等教育学のSimon Marginson教授は「市場を重視する英国と米国が教育に多くの資源を投入していることを示唆するのはもっともらしい。その一方で、研究業績は機関の名声に直接影響するもので、それが市場の地位を確立し、学生の誘致に貢献する。」と述べた。

同氏は、ドイツが研究者一人当たりの研究収入でトップの業績を収めていることは、米国などの他の国の制度とは違って、国内のほとんどの機関が研究集約型であることを反映していると付け加えた。一方、英国における研究収入の割合の減少は、構造基金を含む「ヨーロッパからの資金の減少を反映している可能性がある」。

しかし、Marginson教授は、異なる資金調達制度や定義が異なることを考慮すると、各国間での比較について結論を出すことは難しく、相互補助金がデータの「複雑な要因」であると述べた。

King’s College London の公共部門経営学の教授、Baroness Wolf of Dulwich 卿は、米国と英国の研究収入の割合の低下は「研究資金の流れの大きな変化というより、学費収入の変化である」のではないかとの疑念を述べた。

「比較的留学生の割合が低い米国では、学費は、実質的に上昇している。英国では英国出身の学部生の学費の実質な価値の割合は下がっているにも関わらず、高額な学費を払う留学生が増えている。」と述べた。

2024年
ランキング

2023年
ランキング

大学名

国/地域

1

1

University of Oxford

英国

2

=3

Stanford University

米国

3

5

Massachusetts Institute of Technology

米国

4

2

Harvard University

米国

5

=3

University of Cambridge

英国

6

7

Princeton University

米国

7

6

California Institute of Technology

米国

8

10

Imperial College London

英国

9

8

University of California, Berkeley

米国

10

9

Yale University

米国

(グラフ出典:Times Higher Education(THE)以下ウェブサイトから作成)

 

Times Higher Education(THE)

https://www.timeshighereducation.com/news/world-university-rankings-2024-results-announced

 

 (22教育評価制度 (TEF)発表:46大学が「金」評価を獲得

2023年9月27日、学生局 (Office for Students: OfS) は最新の教育評価制度 (Teaching Excellence Framework: TEF)の結果を発表し、今回46の大学が「金」評価を獲得した。

この評価は、外部の学術専門家と学生代表からなるTEFの評価委員会によって与えられ、優れた学部教育と学生の成果を特定し、進学希望者が学部を選択する際に役立つように設計されている。

今回初めて、各高等教育機関にTEFの各「側面」、つまり、学生経験、学生の成果に対する評価が与えられた。これにより、学生は、評価委員会が各大学のどの部分が優れているとみなしたかについて、より多くの情報が得ることができる。合計73の大学が少なくとも1つの側面に対して「金」評価を受けている。

ゴールド評価を受けたもののうち:

 ●10件は入学時のTariff ※が低基準の機関で、さらに入学時のTariff が低基準の7機関が「金アスペクト」評価を獲得した。

 ●7件は入学時のTariffの基準が中程度の機関で、さらに入学時のTariffの基準が中程度の5機関が「金アスペクト」評価を獲得した。

 ●10件が入学時のTariffの高基準の機関で、さらに入学時のTariffの基準が高い5機関が「金アスペクト」評価を獲得した。

 ●クリエイティブ・アーツ分野の専門機関は9機関あった。

 ●3件はその他の専門分野であった。さらに3機関が「金アスペクト」評価を獲得した。

 ●7件は主にレベル4もしくは5の資格を教育する機関である。(これらは主に継続教育の機関)さらに4機関が「金アスペクト」評価を獲得した。

 

OfSの最高責任者、Susan Lapworth 氏のコメント:

「今こそ、イングランドの最高の高等教育を祝う瞬間である。我々が本日発表したTEF評価は、大学の優秀さを明確に示している。業界全体、また全国の教育機関が、学生に優れた経験と成果を提供していることを実証している。」

「今回のTEF評価は、将来の学生がどこで何を勉強するかを選択する際の指針となるだろう。今回の結果では、様々な機関にその優秀さがあり、様々な背景を持つ学生が卒業後の成功に向けた優れた教育を受けていることを示している。

「我々は、TEFの成果をもたらす上で学生たちが果たした重要な役割に感謝している。彼らは教育機関の長所と短所について、信頼でき説得力のある内容を提出した。学生たちもTEFの委員会に参加して、審議と判断に洞察力と多様な視点をもたらした。本日発表されたTEFの評価は、このような貢献なしには意味が薄れたものになっていただろう。」

「我々はTEF委員会の判断について、教育機関とともに議論し、大学やカレッジがそれぞれの学部コースの開発や改善を継続する際に、その豊富な発見を活用できるよう、支援することを期待している。」

TEF委員会の委員長で、Sheffield Hallam University の学長であるSir Chris Husbands教授のコメント:

「今年のTEF評価は、イングランドの高等教育機関が世界をリードする評判に価することを証明した。それぞれのTEFの評価を受けた大学やカレッジは(たとえそれが「金」評価であろうが、「銀」評価であろうが、「銅」評価であろうが)そのコースに優れた部分があることを外部のTEF委員会のメンバーに実証した。これらの結果は、イングランドの高等教育としての地位を確固たるものにし、将来の改善の重要な原動力となるだろう。このプロセスを通じて熱心に働き、判断を下すまでに複雑な情報とデータを評価してくれたTEF委員会の学生と学術的メンバーに感謝する。彼らの専門知識と貢献は、TEFの成功に不可欠である。」

備考:

1.OfSは、イングランドの高等教育の独立した規制局である。我々の目標は、その背景に関係なく、すべての学生が人生とキャリアを豊かにする充実した高等教育の経験を確実に得られるようにすることである。

2.合計228の大学、カレッジ、その他の高等教育機関がTEF2023に参加した。500人以上の学部生がいる参加必須の機関が186件と、任意参加の42件が含まれる。その結果はOfSのウエブサイト外部リンクで公開されている。(下記<参考>:TEF評価 参照)

3.OfSに登録されている全大学とカレッジは、コースの質として高い基準を満たしていなければならない。基準を超える改善は、TEFを通して推進される。TEFは周期的なプロセスであり、外部の学術専門家と、学生からなる委員会の判断に基づいて基にして4年ごとに実施される。

4.46機関の「金」評価の獲得に加えて、これまで100の大学およびカレッジが「銀」評価を獲得、29大学が「銅」評価を獲得している。

5.さらに53機関がTEF委員会で検討されており、近いうちにその結果が発表される予定である。

6.同日の評価に加え、OfSはTEF委員会からの各機関への声明の概要を含むさらなる情報を11月に発表する予定である。

 

※Tariffとは

16歳以降の資格にポイントを割り当てる方法で、資格の種類と評定尺度を用いて、合計ポイントを算出するシンプルな数学的モデルに基づいて評価される。

< 参考:UCAS TARIFF>

https://www.ucas.com/advisers/guides-and-resources/information-new-ucas-tariff-advisers

 

学生局 (Office for Students: OfS):

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/gold-ratings-for-forty-six-universities-and-colleges-as-tef-results-announced/

<参考>TEF評価:https://tef2023.officeforstudents.org.uk/

 

(23大学中退者率が過去最高を更新

2023年9月28日、BBC Newsは、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで、大学の過程を修了しない学生数が過去最高記録になっていることが統計で示されたことを伝えた。

学生ローン社(Student Loans Company: SLC)からのデータによると、コースを中途退学する前にローン契約をした学生がこの5年間で28%増加した。

その数は、2018/19学事年度で32,491人、2022/23学事年度で41,630人で、この期間で9,139人の増加となる。

比較して、英国で学位取得のコースに入学した学生数は2018/19学事年度と2022/023学事年度の間でほぼ11%増加した。

これらの数字は、高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)からもので、英国のすべての大学が含まれている。

それによると、第一学位に入学する学生総数は2019/20学事年度では5%増加し、2020/21学事年度には8%の増加、2021/22学事年度で2%減少したが、総変化率は10.9%であった。

統計によれば、ローンに適格なほとんどの学生は、授業料や生活費のために学生ローンを利用していることがわかる。

スコットランドの学生は、スコットランドのStudent Awards Agencyが管理しているためこの統計には含まれていない。

 

経済的困窮

この統計は、学生が早期に大学退学を選択した主な理由はメンタルヘルスであることを示す研究が発表された日と同日に公開された。

King’s College LondonのPolicy Institute とCentre for Transforming Access and Student Outcomes in Higher Educationによる分析では、学生がこの理由を挙げる可能性は依然として25%高いことが分かった。

経済的困窮も別の理由として挙がっており、2023年に大学を中途退学する学生の8%がこれを主な理由として挙げており、これは2022年の3.5%から増加している。

教育省の統計によると、2020/21学事年度では、ローン対象者のうち95%がローンを利用した。

融資は通常、大学に直接支払われる授業料のためのローンと、学生の銀行口座に分割で振り込まれる生活費のためのローンの2つで構成される。

ほとんどの学生は、年間で、年間授業料部分(年間9,250ポンドを上限とするコースの年間費用相当)の融資を受けることができる。スコットランドの学生は、スコットランドの大学に行く場合、授業料は発生しない。

学生は、入学する大学が確定していなくても申請でき、予定が変更になった場合は、コースが開始する前に申請をキャンセルまたは変更することができる。

SLCの数字は、2018/19学事年度から2022/23学事年度の間の5学事年度で大学を中途退学した学生数の比較である。

 ●2019/20学事年度:29,630人

 ●2020/21学事年度:31,279人

 ●2021/22学事年度:39,405人

 

教育省の広報担当者は、毎年少数の大学の中退者が予想されるものの、「高等教育全体で中退率が不釣り合いに高い退学率がある場合には、断固とした行動」をとっていると述べた。

「我々は学生局 (Office for Students: OfS)に対して、低品質がコースの増加を防ぐために、低収入や就職の見通しの悪さなど、学生に対する成果の低いコースに対して募集制限を課すように要請している。」と彼女は述べた。

「これにより、学生がどのコースを選択したとしても、自身のコースで必要なスキルを身に着くことを確信させることで、早期中退を抑制することができる。」

「学生に対して、自身のコースや状況に関して不安がある場合は、大学に相談することを強く勧める。」

BBC News:

https://www.bbc.co.uk/news/education-66940041