2024年6月18日
(1) ガザの抗議のため学生たちが英国のキャンパスを占拠
(2) 競争が激化する中、英国企業研究開発投資は停滞
(3) 英国国立物理学研究所とCERNが覚書に署名
(4) 英国の大学で人種と植民地主義の講座閉鎖に直面
(5) 英AI企業Wayve、自動運転車向けAI開発で10億ドル強を確保、英国経済に信任投票
(6) 研究インテグリティ(研究の健全性・公正性)をREFの中心とする
(7) 数学に特化した新しい国立アカデミー設立を支援する団体に600万ポンドを提供
(8) 卒業ルートビザ制度の利点が新しい調査で明らかになる
(9) パレスチナの研究者にも支援をという圧力を受ける政府
(10) 首相は大学の上層部にユダヤ人学生の保護を呼び掛ける
(11) ロンドン郊外に滞在する学生が許容できる生活水準維持には18,600ポンドが必要
(12) 英国イノベーションの低迷:活発な事業が9%減少、懸念が高まる
(13) 低所得世帯の学生の大学受験を奨励する新たな取り組みを発表
(14) Academy for the Mathematical Sciences、初代の理事長が就任
(15) 妨害されない量子技術が英国の敵対勢力に対する強靭性を強化するために始動
(16) 英国が欧州のスーパーコンピューティング計画に参加、世界クラスの英国研究者が資金のアクセスが可能
(17) 移民諮問委員会、卒業ルートビザ制度の継続と結論
(18) 人材、文化、環境のパイロット版の評価パネル募集
(19) 高等教育機関データ:2022/23年度財政
(20) リスク管理と責任あるトランスナショナル教育(TNE)パートナーシップの構築
(21) 元大臣らは、授業料や資金の値上げがなければ英国の大学は破綻すると警告
(22) 英国の半導体イノベーションを主導し、半導体戦略を支援する新しい独立機関
(23) 英国学士院と英国王立協会は、英国の将来の繁栄のために教育研究への資金提供を増加するべきと主張
(24) 科学大臣、AIの安全性試験に新たな境地に850万ポンドの研究資金を発表
(25) 移民対策が功を奏して移民数が減少
(26) 首相の総選挙実施発表後、研究開発のリーダーたちは要望政策を提示
(27) 卒業ビザは持続、しかし「引き続き検討」
(28) ラッセル・グループ、公的助成金に関する学生局の提言に回答
(29) 総選挙前における学生局のコミュニケーション
(30) 不透明なAI研究ツールは、科学的知見の信頼性と正確性を損なう恐れがある
(31) 英国学士院: 英国最大の課題に取り組むため人文・社会科学の強化を次期政府に要請
(32) Sutton Trust の「社会的流動性と機会」報告書
(33) 7月4日の総選挙に向けて英国議会解散
(34) REF2029諮問委員会の委員の募集開始
(35) 英国で35歳~44歳の女性のエンジニア離れがわずかながら急増している新データ
記事の詳細は「次を読む」からお読みいただけます。
(1) ガザの抗議のため学生たちが英国のキャンパスを占拠
2024年5月1日BBC Newsは英国の大学キャンパスで、パレスチナ支持の学生たちがガザ戦争に抗議するために占拠活動を行っていることを伝えた。Leeds、Newcastle 、Bristolで学生たちがキャンパスの外にテントを張り、食品や衛生用品の寄付を求めている。他の場所でも学生活動家がデモや一時的な抗議を行っている。University of Warwick では、学生たちが大学のイスラエルとの財政関係を断つことを求めている。これらの抗議活動は米国のUniversity of Columbia占拠の影響を受けているが、警察の対応が適切だったため、大きな騒動は避けられた。
【記事全文(英語)】 BBC News: https://www.bbc.co.uk/news/uk-68938763
(2) 競争が激化する中、英国企業研究開発投資は停滞
2024年5月1日、Research Professional Newsは、企業は競争の激しい世界での生き残りのために、R&Dやイノベーションに投資する必要があるということを伝えた。米国、日本、韓国はビジネスR&Dへの投資でリーダーであるが、対照的に英国はビジネスR&D投資が減少している。英国は成長の機会を失っている可能性がある。政府は公的研究資金の増加に取り組んでいるが、他国に比べて遅れている。大学や研究機関の資金不足も課題である。政策の不安定さや地理的な格差がビジネス投資を阻害しているため、政府は外資直接投資や中小企業の支援に取り組む必要がある。ビジネス主導のR&Dやイノベーションに研究の強みを転換することが、英国の課題であり機会でもある。
【記事全文(英語)】 Research Professional New:
(3) 英国国立物理学研究所とCERNが覚書に署名
2024年5月1日、英国の国立物理学研究所(National Physical Laboratory: NPL)は、スイスに拠点とする欧州素粒子物理学研究所(Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire: CERN)と覚書を交わし、CERNの中性子飛行時間測定施設(n_TOF)で先進的な原子炉や核燃料サイクル、核融合に関連する研究を行うことが決まった。n_TOFは、高強度の中性子ビームを使用して中性子関連のプロセスを正確に測定するものである。NPLは、トリチウム繁殖ブランケットやプラズマ対向装甲コンポーネント、放射線損傷に対する炉の部品寿命の開発に必要なデータを収集。これらは次世代の核融合技術の商業化に不可欠なものである。NPLは英国の大学(Manchester, York, Surrey, Birmingham, Lancaster)や英国原子機構(UK Atomic Energy Authority)と連携して次世代の原子炉研究を推進している。CERNは宇宙の解明に取り組んでおり、研究のための粒子加速器施設を提供している。有名な成果には2009年に稼働開始した大型ハドロン衝突型加速器や、2012年に発見されたヒッグス粒子、さらにはWorld Wide Webの誕生などがある。CERNには23の加盟国、10の準加盟国、17,000人以上の研究者が参加している。
【記事全文(英語)】 World Nuclear News:
https://world-nuclear-news.org/Articles/UK-s-National-Physical-Laboratory-and-CERN-sign-Mo
(4) 英国の大学で人種と植民地主義の講座閉鎖に直面
2024年5月5日Guardian紙によると芸術や人文学分野の学部閉鎖は人種と植民地主義の理解に悪影響が出ると学者たちが警告しているという。University of Kentでは人類学の学部閉鎖の危険にありUniversity of Oxford Brookesでは音楽プログラムが閉鎖され、Goldsmiths, University of London では英国黒人文学 の修士課程が閉鎖された。政府はぼったくり大学コース(高額で効果の低いコース)に対して厳しい措置を試みているが、これが芸術や人文科学の学部の閉鎖の一環ではないかとと批判される。教育大臣はSTEMやもっと就職に有利な高等教育を重視しているが、芸術や人文科学への資金提供に関して語らない。学者などは芸術と人文科学は社会的な批判的思考を育てる重要な役割を果たしていることを述べている。批判的思考や歴史的視点が欠如することで社会に対する理解の欠如が懸念される。各大学は学部閉鎖にの理由について様々なことをあげているが、経済的な制約や学生の需要の低さが挙げられる。
【記事全文(英語)】Guardian紙:
(5) 英AI企業Wayve、自動運転車向けAI開発で10億ドル強を確保、英国経済に信任投票
2024年5月7日、科学・イノベーション・テクノロジー省発表によると、英国のAI企業Wayve は次世代のAI搭載自動運転車の開発に10億5000万ドルの投資を獲得した。これは英国のAI企業に対する史上最大の投資である。Soft Bank Group、 NVIDIA、Microsoftなどからの支援を受け、WayveはAI技術搭載の自動運転車の開発を行う。開発される実体的AIは自動運転車の現実社会の環境を学習し、予測不可能な状況に適応する能力を持つ技術である。この投資がAIと自動運転技術の分野で世界のリーダー的存在であることを示している。Wayveの共同創立者は英国のAIエコシステムと進歩的な規制枠組みが同社の成功を支えていると述べている。英国首相のRishi Sunak氏は、英国がAIと自動車の分野で重要な地位を維持していることに誇りに思うことを述べた。この投資はこれから数週間で議会を通過する自動運転法案の時期と重なる。この法案は英国の自動運転車の安全性の導入を可能とし、英国がこの急成長産業でのリーダーシップを発揮する基盤を築くものである。
【記事全文(英語)】科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(6) 研究インテグリティ(研究の健全性・公正性)をREFの中心とする
2024年5月7日、英国研究公正委員会(UK Committee on Research Integrity: UKCORI)による寄稿によるとREF2029の研究倫理の重要性を論じており、大学の研究倫理慣行を明示するべきと主張している。英国研究への信頼の強化だけでなく進化するグローバル研究環境と英国を一致することである。REF2029の検討において4つの重大な領域をあげている。①既存情報の再利用。➁サポートメカニズムの評価。➂責任ある指標と作業量。④研究基準との整合性である。これらの予想を組み合わせることでREFが研究とその成果を厳格に評価し、優れた研究を特定できるとしている。研究の公的資金の利用における公正さと費用対効果の重要性強調している。
【記事全文(英語)】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):
https://www.hepi.ac.uk/2024/05/07/placing-research-integrity-at-the-heart-of-ref/
(7) 数学に特化した新しい国立アカデミー設立を支援する団体に600万ポンドを提供
2024年5月7日、科学・イノベーション・テクノロジー省によると、英国の数理学系の国立アカデミー設立に協力するための組織の募集を開始した。これは今後3年間で600万ポンドの助成金を受けるもので6月4日が締め切りである。政府や産業界のへの助言や、一般向けの啓発活動、数学分野の戦略策定などが求められる。この新しいアカデミーは数学を主要とするスキルの開発を優先事項として、既存の英国国立アカデミーの成功を参考とし、科学技術における発見を促進することになる。
【記事全文(英語)】科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(8) 卒業ルートビザ制度の利点が新しい調査で明らかになる
2024年5月7日、高等教育政策研究所, Kaplan International Pathways、英国学生連合(NUS)が、共同で発表した調査によると卒業ルートビザ制度は政府に利益をもたらしていることが分かった。このビザは海外からの留学生が英国の大学を卒業後にそのまま2年から3年滞在できる制度である。2022/23年度で英国には66,410人のビザ取得者がおり、そのうち英国大学で教育を受けた留学生は56,460人で扶養家族は9,950人であった。卒業ルートビザ取得者が英国に収めて税収の利益は同年度5億8,800万ポンド(1人当たり1万410ポンド)であった。卒業ルートビザ保有者数が2023/24年度に17万3,000人、前年よりわずかに増加し、2025年4月までに35万以上のビザ取得者となり、この増加により利益は5倍以上増加する見込みである。卒業ルートビザは留学生を英国に誘致する要因となり、英国の大学や経済、文化的なソフトパワーに大きく貢献することを意図しており、政策立案者に対して卒業ルートビザの魅力を損なわないように呼び掛けている。
【記事全文(英語)】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):
https://www.hepi.ac.uk/2024/05/07/new-research-reveals-the-benefits-of-the-graduate-route-visa/
関係記事:
2024年5月7日 Research Professional Newsより
政府は卒業生ルートビザ制度の見直しを計画している。この制度は、国際学生が卒業後2年間(博士課程は3年間)英国に滞在を可能とするものである。この制度は留学生に対して英国の魅力を高めるものであり、大学にとって重要な収入源である。Higher Education Policy Institute(HEPI)の報告書によると、2022-23年にこの制度によって得られる税収は5億8800万億ポンドで、純利益は7,000万ポンドであった。このビザ制度ができた最初の年度の結果なので、今後もっと制度が確立していくことでその恩恵が増えることが予想される。しかし今年初頭から特定の扶養家族の同行を締め出しているため、この制度で得られる利益が減少する可能性がある。HEPIはこの制度の維持を呼び掛けているが見直しによって英国に留学に来る数が減り、経済や文化的な損失が生じる可能性がある。また政府は2026年に制度を見直す予定であったが、予定より早く見直しを行うとしているがその理由は不明である。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(9) パレスチナの研究者にも支援をという圧力を受ける政府
2024年5月8日、Research Professional Newsによると、政府は2022年のウクライナ戦争の対処として設立したBritish AcademyのFellowship Programmeの延長を求められていることを伝えた。政府に対してガザの研究者にもウクライナの研究者に行った支援をする声が高まっている。ウクライナの研究者のため政府は1,300万ポンドを提供、約180人のウクライナ研究者を2年間のFellowship として英国に迎え入れた。British Academy の危機に瀕した研究者を支援するCouncil for At-Risk-Academics がこの制度を運営した。British Academy は政府に対して新たな資金提供を求めているが、現在の資金はウクライナの研究者のみが対象である。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(10) 首相は大学の上層部にユダヤ人学生の保護を呼び掛ける
2024年5月9日教育省の発表によると、英国の名門大学の学長が政府関係者とともにキャンパスでの反ユダヤ主義虐待の増加と学生の学習への影響に対処するため対策を話し合うことが伝えらえた。首相および政府官僚は反ユダヤ主義に対してゼロトラレンスの態度で挑み、問題に対処するための措置について議論する。大学のユダヤ人学生支援のため、the University Jewish Chaplaincyのサービスに50万ポンドの資金提供が行われる。学生局(OfS)は新たな登録条件を導入し、嫌がらせや反ユダヤ主義に適切でない対処をしない大学に制裁を科すことができるようにする予定である。
【記事全文(英語)】教育省(Department for Education: DfE):
(11) ロンドン郊外に滞在する学生が許容できる生活水準維持には18,600ポンドが必要
2024年5月9日、高等教育政策研究所とTechnologyOne の新しい報告書は、学生が最低限の生活水準を維持するために必要な費用について初めて調査した報告書となった。調査はLoughborough University のCRSPとの共同で行われ、大学2年生と3年生の学生を対象として生活費を計算した。
結果は:①家賃を除き、学生の最低限の生活水準を維持するためには週244ポンドが必要。家賃込みであれば366ポンド必要。➁ロンドン以外の学生は年間18,632ポンド、ロンドンの学生は年間21,774ポンド必要。➂政府の生活費支援は学生の必要な額を大幅に下回っており、学生は不足分を自力で補充する必要がある。④学生は10時間のバイトをしながら政府支援との組み合わせをしなくてはならないが勉強に支障が出ないようにすることが必要。⑤親の収入が水準以下の場合でも子供の生活費を負担する必要となっている。報告書は政府の支援の増加をしつつ、学生が合理的な範囲のバイトをすることを推奨している。親が負担することが難しい場合は親の収入の水準値を上げるべきだと提言している。
【記事全文(英語)】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)
(12) 英国イノベーションの低迷:活発な事業が9%減少、懸念が高まる
2024年5月9日、国立大学産業センターは英国の革新レベルが10年間で最低水準に落ち込み、2018-20年から2020-22年位かけて革新的な活動に積極的な企業の割合が45%から36%に減少したことを伝えた。民間の研究開発(R&D)投資も減少しており、英国のグローバルな革新競争力に懸念が出て来ている。NCUBのRosalind Gill氏は英国が経済成長と回復力に不可欠な革新的な企業の誘致・構築をする機会を逃していることを指摘している。政府、企業、大学の協力でR&Dのエコシステムを強化し、具体的な革新的な成果につなげるための新しいビジョンが必要であると語っている。
【記事全文(英語)】 国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB):
https://www.ncub.co.uk/insight/uk-innovation-fallen-to-decade-low/
(13) 低所得世帯の学生の大学受験を奨励する新たな取り組みを発表
2024年5月10日、大学入試機関は大学進学を躊躇している学生を支援するための新しい措置を発表した。これは経済的困難や大学入学条件への懸念をかかえている学生を対象としている。新しい支援策は①無料学校給食を受けている学生は2024年9月からの大学申請料(28.50ポンド)が免除される。➁進学希望者は各コースごとの過去の入学資格条件データとオファーされる基準を確認できるようになる。これにより学生は自身が予想成績または実際の成績を過去に大学入学を果たした学生と比較ができる。これらの措置は進学を希望する学生にとって入学プロセスをより透明化し、情報に基づいた選択ができることを目的としている。現在18歳人口は増加しているが、大学進学希望率がその増加率に追い付いていない。
【記事全文(英語)】 大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)
(14) Academy for the Mathematical Sciences、初代の理事長が就任
2024年5月10日Academy for the Mathematical Sciences は2024年6月17日からAlison Etheridge 教授OBE FRSが初代理事長に就任することを発表した。新しいアカデミーは教育、研究、ビジネス、政府など、数理科学の様々な分野に取り組むことを目的としている。英国全土を対象に環境などの関係で十分な機会がなかった人たちにに対しても機会を作ることなどに焦点を当てる包括的な方法を採用する。アカデミーの理事はEtheridge 教授がコミュニティをまとめる経験とリーダーシップを持つ理想的な人物であると、全会一致で選出された。Etheridge 教授は確率過程と集団遺伝子学の世界的な専門家であり、コミュニティをまとめる能力が高いとして評価されている。Etheridge 教授は過去18か月のアカデミー設立準備期間中で得た成功を持続することに意欲を示した。同アカデミーの会長であるNigel Campbell氏は彼女の資格とリーダーシップを称賛した。Etheridge 教授はInternational Institute of Mathematical Statistics の理事長やUniversity of Oxfordの統計学部の学部長などの数々の重要な役職にあった。またCouncil for the Mathematical Science (CMS)の会長も務め、同アカデミーの設立にも貢献している。英国政府は2023年11月の秋の声明で数理科学に特化して国立アカデミーの設立を支援するために3年間で最大600万ポンドの提供を発表している。
【記事全文(英語) Academy for the Mathematical Sciences:
(15) 妨害されない量子技術が英国の敵対勢力に対する強靭性を強化するために始動
2024年5月13日、科学・イノベーション・テクノロジー省は英国で初めて、量子ベースのナビゲーションシステムの商業飛行試験が成功したことを伝えた。このシステムは敵対者による妨害や偽装が不可能で、高精度で強靭なナビゲーションを提供し、現在のGPSシステムを補うものである。Infleqtion 社は、BAEシステムズやQinetiQと協力してウィルトシャーのMoDボズコムダウンで試験を実施。また同社は政府から約800万ポンドの支援を受けている。この資金提供は25億ポンドの国家量子戦略と国家量子技術プログラムから出資されており、英国が量子対応経済のリーダーとしてこの地位を確実にすることを目的としている。科学担当大臣Andrew Griffith氏も最終試験飛行に参加した。
【記事全文(英語)】 科学・イノベーション・テクノロジー省:
(16) 英国が欧州のスーパーコンピューティング計画に参加、世界クラスの英国研究者が資金のアクセスが可能
2024年5月13日より英国はEuropean High Performance Computing Joint Undertaking(EuroHPC)に加盟し、将来のスーパーコンピュータ研究資金へのアクセスの強化を行った。これにより、英国の研究者、企業、学者は、2021年から2027年までに770億ポンド相当のHorizon Europe資金の恩恵を受けることができる。EuroHPCは35カ国からスーパーコンピュータ資源を集結し、ポルトガルからフィンランドまで8つのスーパーコンピュータを持つ欧州の一流エコシステムを形成している。これにより、英国の科学者は新薬の発見、標的医療、クリーンエネルギーの進展にスーパーコンピュータの活用が可能。この加盟で、英国の研究者はヨーロッパの研究者と協力し、EuroHPCが提供するHorizon Europe資金プロジェクトにアクセス可能となる。また、政府のマッチングファンドにより、英国の研究者、企業、科学者はさらにEuroHPCの助成金に自信を持って応募できる。研究者はEuroHPCシステムの利用時間やHorizonの研究助成金に応募することが可能。
【記事全文(英語)】 科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(17) 移民諮問委員会、卒業ルートビザ制度の継続と結論
2024年5月14日 Research Professional Newsによると英国のMigration Advisory Committee (MAC)は政府からの依頼によるレビューを発表し、留学生が卒業後、英国に2-3年間滞在できる卒業ルートビザ制度は廃止するべきではないと結論付けた。このビザの悪用の危険は低く、英国高等教育のシステムの質や信用を失うことはないと述べている。発表された報告書では、現在の高等教育の資金制度においてで卒業ルートビザ制度は、国内の学生や研究による財政的損失に対する補填の役割を果たして、大学に提供するコースの幅を広げており、政府の国際教育戦略を支えているいう。留学生からの収入がなければ、多くの大学で職員の失業者の増加、コースの閉鎖、研究の減少が起こる可能性があり、極端には大学の閉鎖もあり得ると警告する。同ビザの悪用の証拠はなく、その危険性は極めて低いとしている。MACの委員長であるBrian Bell氏は同ビザは継続するべきであり、留学生が収める学費が英国の大学にとって重要であり、これなくしては大学や研究の縮小となると述べた。またレビューでは新しい移民ルートの開設するときや重要な政策変更の場合、その効果を評価するデータ収集と監視計画が明確にするべきであることを推奨している。政府はこの結果を慎重に検討し対応することを述べている。(このレビューは内務省の大臣であるJames Cleverly 氏が今年3月に委託したものである)
Graduate route: https://www.gov.uk/government/publications/graduate-route-rapid-review
【記事全文(英語) Research Professional News:
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2024年5月15日 Pie News
MACが卒業ルートビザのレビューの結果を発表した同日、内務省が卒業ルートビザに関するデータを公開した。それによれば、2021年7月に導入されたこのルートを利用する人々の詳細な情報を明らかにった。具体的には、出身国、ビザの有効期限後の行動、初収入など。しかし、Home Officeは「このスキームの初期利用者の行動が後のグループの行動を示すものかどうかはまだ言えない」と述べている。2019年から2023年までの間に、学生が卒業後にUKに滞在する割合は3倍以上に増加し、18%から56%となった。2023年に学業を修了した学生のうち、56%がUKに滞在する許可を得て、そのうち32%が卒業ルートビザ制度を利用し、18%が他の就労ビザを選択した。主となる申請者213,250人とその家族45,836人が、2021年7月のルート開始から2023年末までに卒業ルートビザを取得した。主要申請者の出身国を分析すると、インド国籍が2023年の卒業ビザの42%を占め、トップ5の国籍が74%を占めている。年齢層に関しては、卒業ルートビザ保持者は20代後半から30代前半が多く、58%が24歳から29歳の間である。卒業ルートビザが終了した個人のうち、63%が別のルートに移行、そのうち46%が就労のルートに移行し、7%が学業に戻った。ビザ保持者の初収入と雇用に関するデータによると、最初の月に62%のビザ保持者が収入を得ており、卒業ルートビザ制度の導入以降、月間平均収入は1,227ポンドから1,937ポンドに上昇した。年間の収入の中央値は17,815ポンドであり、一年中働いた者の中央値は26,460ポンド。英国で卒業ルートビザ制度を利用する人々のプロファイルや行動、収入などのデータが公開され、ビザ保持者の就業先や収入についても詳細が示されている。
【記事全文(英語)】 PIE News:
(18) 人材、文化、環境のパイロット版の評価パネル募集
2024年5月16日REF2029のREF の人材、文化、環境(People, Culture and Environment: PCE)のパイロット評価パネルのメンバーに応募でき、2024年7月12日の正午まで応募をしている。締め切り前に届いた応募のみを対象となる。私たちは、PCEの評価に関する最良の洞察を得るために、パイロットパネルとして幅広い人々、経験、知識、経歴の人々を募集中である。
【記事全文(英語)】REF2029:https://www.ref.ac.uk/news/pce-pilot-assessment-panels/
(19) 高等教育機関データ:2022/23年度財政
2024年5月16日2022/23年度の英国高等教育機関の総収入は516億ポンドだった。この収入の52%は、292の高等教育機関からの授業料収入で、合計270億ポンドだった。また、非UK出身の学生の授業料収入は118億ポンドで、総収入の23%を占めた。12%は資金提供機関の助成金から、14%は研究助成金と契約からの収入だった。セクターの総支出は486億ポンドで、そのうち職員の経費が51%を占めている。学術部門を通じた支出は178億ポンドで、そのうち学術職員経費が62%、その他の職員経費が15%を占めている。
今日の発表に含まれるその他の情報には、合計準備金額が651億ポンド、年間の総支出が46億ポンドであるバランスシートデータや資本支出データもある。
【記事全文(英語)】高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency):
https://www.hesa.ac.uk/data-and-analysis/finances
(関連記事①)学生局(Office for Students:OfS)
2024年5月16日、学生局(OfS)独立した分析によると、高等教育機関の財政に増大する圧力があり、大学は将来の学生数の成長について楽観的になりすぎないように警告されている。2022/23年度の財務持続性の年次レビューでは、財務パフォーマンスの低下が見られ、黒字の減少やキャッシュフロー、純流動性の低下が報告されている。将来、さらに多くの機関が赤字に陥ると予測されている。将来の成長が達成されない場合、高等教育機関が予測している以上に短期、中期、長期にわたる実際の財政的課題のリスクが高いと警告されている。OfSは、これらの分析に対応して、すべての大学と他の高等教育機関に、将来の成長が達成されない場合の対策を明確にするよう指示している。彼らは、自分たちの予測の信憑性を慎重に検討し、行動を決定する必要性がある。高等教育機関は将来の不確実性に対処し、財政的に持続可能な未来を確保するために行動を起こす必要があるというOfSが呼び掛けている。
【記事全文(英語)】学生局(Office for Students: OfS)
(関連記事②)
2024年5月17日Research Professional Newsによると5月16日に高等教育統計局(HESA)と学生局(OfS)が最新の財務報告書を発表した。大学が卒業ビザを廃止すれば財政崩壊の危険性があるとの警告は根拠がある。高等教育統計局(HESA)のデータによれば、South Bank、Wolverhampton、Middlesex、Huddersfield、Surrey、Durhamなどの大学が赤字経営である。OfSの年次レビューも、今後多くの大学が赤字に陥る可能性があることを示唆してる。特に、国内および留学生の募集数が予想よりも少ないことが主な要因である。さらに、セクターには次の4つの主要なリスクがある。それには、①大学生からの収入の減少、②運営コストのインフレ、➂留学生からの収入への過度な依存、④不動産の維持費や炭素排出削減への投資、生活費の圧力が含まれる。2022-23年度の財務パフォーマンスは前年よりも弱く、約40%の機関が2023-24年度に赤字になると予測されているが、2026年以降には改善すると予測されている。しかし、OfSは、学生数の成長が予想に反する場合、2026-27年までに機関の3分の2が赤字になる可能性があると警告している。これらの問題に対処するために、政府と監視機関の両方が責任を負う必要がある。政府は状況を改善するために行動する必要があるが、監視機関も大学の財政状況に関する情報をより正確に把握する必要がある。
【記事全文(英語) Research Professional News:
(20) リスク管理と責任あるトランスナショナル教育(TNE)パートナーシップの構築
2024年5月17日、英国大学協会(UUK)はUniversities UK InternationalとBritish Councilによって共同執筆された新しい報告書は英国の大学がトランスナショナル教育 (Transnational Education: TNE)のリスクの軽減のためのガイダンスを提供している。成長するTNEの提供から得られる利益を最大化するため、安全で持続可能なパートナーシップの構築における重要な要素として位置づけている。報告書では、リスク管理において統合的なアプローチが必要とされる6つの主要分野を特定している。:①財務リスク②風評被害の危険③学問の自由と言論の自由④安全性の考慮⑤関係および人材管理⑥サイバー、知的財産(IP)およびデータ管理。持続可能なパートナーシップの構築におけるBritish Councilの専門知識とセクターアドバイスを活用し、TNEパートナーシップのライフサイクル全体でリスクを包括的に管理することに焦点を当てている。
「Managing risk and developing responsible transnational education (TNE) partnership」: https://www.universitiesuk.ac.uk/sites/default/files/uploads/UUKi/TNE/Managing%20risk%20and%20developing%20responsible%20transnational%20education%20partnerships%20-%20FINAL.pdf
【記事全文(英語)】英国大学協会(UUK):
(21) 元大臣らは、授業料や資金の値上げがなければ英国の大学は破綻すると警告
2024年5月19日、Guardian紙の報道では大学関係者や元大学担当大臣らは大学が直面している財政危機はかなり深刻であり、学費の値上がりや資金提供を増やす必要があることを警告していることを伝えた。大学の財政を安定させるためには学生一人当たりの年間の学費を2,000から3,500ポンドの値上がりが必要と言われている。元大学担当大臣である保守党のDavis Willetts 卿、Alan Johnson 氏、又労働党のPeter Mandelson卿たちは大学への資金増加が急務であると述べている。又労働党の高等教育担当大臣であったMargaret Hodge氏は「学費の値上げは政策的に不可能であり、資金システムをより進歩的なものにする必要がある」という。授業料は実施的にインフレでその価値は低下しており、多くの大学が留学生の依存している。一方で首相のRishi Sunak氏は留学生の数を減らす対策を発表する可能性がある。Mandelson卿はローン制度の改革が必要であり、短期的な学費の引き上げた必要であるという。Willetts 卿は大学の破綻の危機を警告している。University of Boltonの学長であるJames Holmes 氏は学費の値上げは有権者に不人気で、学生にとって高額すぎる。政府が学生一人当たり約2,000ポンドを提供し国内学生数の制限をするべきだと答えた。野党労働党は卒業後の返済を減らす計画を示し、給与レベルに応じた返済率を検討している。
【記事全文(英語)】Guardian紙:
(22) 英国の半導体イノベーションを主導し、半導体戦略を支援する新しい独立機関
2024年5月20日、科学・イノベーション・テクノロジー省は新しい独立した半導体研究所を設立し、政府の10億ポンド戦略を基に半導体部門の成長を促進する。この研究所は政府から独立して、業界の声を反映し、投資家や国際的なパートナーとの連携を図る単一の窓口となる。この研究所は政府、大学、民間部門との結びつきをつけ、研究者の必要なツールやインフラを提供し、イノベーションを市場向け製品に変える支援をする。また技術企業や国際的なパートナーが英国の半導体部門との協力の調整窓口としても機能する。半導体諮問委員会の焦点を基に、業界を結びつけて専門技術の育成を推進し、すでに発表されている11のスキルプログラムに対して480万ポンドの投資拡大を行う。また国の半導体戦略の一環として、政府はスタートアップ支援のためChipStart やブリストルとサウスハンプトンでの2,200万ポンドの投資を行い、新しい英国のチップ技術を世界市場に送り出す取り組みを進めている。英国は、ホライズン・ヨーロッパの13億ユーロのチップス共同事業へのアクセスを確保し、英国インフラ投資銀行(UK Infrastructure Bank)が220億ポンドの財務能力を半導体メーカーに投資できるようにした。これで、同銀行はPragmaticの最新の資金調達ラウンドに6000万ポンドを拠出が可能となった。これは、2023年に発表された全国半導体戦略の一環であり、DSITが製造研究所に委託した報告書の主要な勧告であり、半導体諮問委員会の支持を得ている。
【記事全文(英語)】科学・イノベーション・テクノロジー省Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(23) 英国学士院と英国王立協会は、英国の将来の繁栄のために教育研究への資金提供を増加するべきと主張
2024年5月21日、英王立協会(Royal Society )と英国学士院(British Academy)は、教育研究への投資が他の大規模公共部門に比べて著しく遅れていると警告する報告書を発表した。2021-2022年の英国大学での教育研究への公的支出はわずか0.05%で、健康研究への支出の約1.7%と比べて大幅に低い数値であった。両アカデミーは、教育研究への投資を他の重要な公共サービス研究の資金調達と同等に引き上げ、より調整された未来志向のシステムを構築し、未開発および新興分野の研究を支援するよう政府に呼びかけている。
主な提言は以下の通り:
英国学士院の研究・高等教育政策担当副会長、Simon Swain教授は、「教育分野の健全な研究基盤は、活気のある教育エコシステムにとって不可欠である。共同研究は、異なる分野が連携して知識を繋ぐことの重要性を示している、プロジェクトは、人文社会科学系の研究開発における戦略的重要性と、英国を科学大国にするための安定した長期資金の必要性を示している」と述べ、王立協会教育委員会のUlrike Tillmann教授は、「教育は市民としての資質向上や豊かな人生に寄与し、十分な教育を受けた熟練した労働力は生産性を向上させる。英国が科学大国になるには、長期的な教育効果の理解が必要であり、短期的な評価ではなく、生涯にわたる成長への教育の長期的な影響を調べる前向きな研究が必要と強調した。
【記事全文(英語)】 英国学士院(British Academy):
(24) 科学大臣、AIの安全性試験に新たな境地に850万ポンドの研究資金を発表
2024年5月22日、科学・イノベーション・テクノロジー省は韓国、ソウルのAIサミットで、英国政府はAIのリスクから社会を守る研究に助成金を提供すると発表した。科学大臣であるMichelle Donelan氏は、ディープフェイクやサイバー攻撃などのリスクを防ぎ、生産性向上などの利点を活かす研究を支援することを明らかにした。最も有望な提案は長期プロジェクトとしてさらに資金提供を受ける可能性がある。このプログラムは英国政府のAI安全研究所(AI Safety Institute)が主導し、UKRIやAlan Turing Instituteと協力する。研究は「システムAIの安全性」に焦点を当て、社会全体でのAIの影響を緩和し、制度やインフラがAI技術に適応する方法を探求する。例えば、フェイク画像や誤情報の拡散を防ぐためのプラットフォームへの介入策などが含まれる。この助成金プログラムは、公共および民間部門の研究者を対象に提案を募集し、最大の効果を生み出すことを目指す。
【記事全文(英語)】 科学・イノベーション・テクノロジー省Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(25) 移民対策が功を奏して移民数が減少
2024年5月22日内務省(Home Office)は2024年初めの4か月間で、主要なビザ申請数が25%減少したとことを発表した。これは、内務大臣が推進している移民抑制策が功を奏している。1月に施行された学生ビザの引き締めにより、多くの留学生が家族を同伴できなくなり、扶養家族の申請は79%減少した。また、留学生はコース修了前にビザを切り替えることも禁止され、不正利用の防止が図られている。この結果、学生ビザ申請は前年同期比で3万件以上減少した。さらに、熟練労働者ビザの給与基準が48%引き上げられ、最低年収が38,700ポンドに設定された。ケアワーカーが家族を同伴することも制限され、扶養家族ビザ申請は大幅に減少した。政府はこれらの措置により、法的移民を大幅に削減する計画を進めている。
【記事全文(英語)】内務省(Home Office):
https://www.gov.uk/government/news/migration-numbers-fall-further-as-measures-have-major-impact
(関連記事)英国国家統計局より
2024年5月23日英国国家統計局(Office for National Statistics: ONS)は2023年12月までの長期的な移民に関する統計を発表した。以下がが要点。
純移民: 2023年12月末の純移民は68.5万人で、前年の76.4万人から減少。2023年には出国者が増加し、ビザ申請は最近減少している。
長期的な移民: 2023年の長期移民は121.8万人で、2022年とほぼ同数。非EUからの移民が85%を占め、特にインドやナイジェリアからの労働目的の移民が増加。
労働目的の移民: 2023年の非EUからの労働移民は42.3万人で、前年の27.7万人から増加。特にインドやナイジェリアからの移民が多く、健康・社会福祉分野での就労が主な理由である。
家族目的の移民: 労働ビザの主申請者よりも、その扶養家族の数が増加し、2023年には21.9万人に達した。
学生ビザ: 学生ビザでの移民は37.9万人で、前年の41.9万人から減少。
国別の移民: 2023年の非EUからの移民で最も多かったのはインド、ナイジェリア、中国、パキスタン、ジンバブエからの移民である。
EUおよび英国国民の移民: 2023年のEUからの移民は12.6万人で、全体の10%を占めている。英国国民の移民は6.1万人で、全体の5%。
政策の影響: 2021年の移民システムの変更や、ウクライナ戦争などの外部要因が影響している。
【記事全文(英語)】 英国国家統計局(Office for National Statistics: ONS):
(26) 首相の総選挙実施発表後、研究開発のリーダーたちは要望政策を提示
2024年5月22日Research Professional Newsによると首相Rishi Sunak氏が7月4日の総選挙を発表した後、R&Dのリーダーたちは選挙前に議論を希望する政策を提示した。主な要求は以下の通り。
長期的かつ持続可能なR&D投資:
優秀な人材を引き付ける移民制度:
地域のR&D強化:
ビジネス投資の推進:
R&Dリーダーたちは、新政府がこれらの分野に対して包括的な戦略を策定し、英国をR&D投資の魅力的な目的地にするための政策枠組みと国際的なプロモーション戦略を求めている。また、大学への資金提供と政策支援の強化も強調されており、大学が知識経済の原動力として繁栄するための条件を整えることが求められている。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(27) 卒業ビザは持続、しかし「引き続き検討」
2024年5月23日Research Professional Newsの報道によるとMAC(Migration Advisory Committee)からの勧告に対する政府の回答が発表され、卒業ルートビザに関しては移民の削減計画の一環として「引き続き検討」されるが、当面は維持されることになった。又留学生エージェントに対する厳しい規制を導入し、基準に従わない大学はビザスポンサーのライセンスをはく奪する可能性をしめした。留学生は財政的に自立を証明する必要があり、また英語能力の審査の見直しを行い、強化し、コース内容が理解できる基準であれば入学許可とする。又留学生に対して対面授業の義務化を進める。これらは留学生の質の確保を目的とする。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(28) ラッセル・グループ、公的助成金に関する学生局の提言に回答
2024年5月24日ラッセルグループは、学生局(OfS)の公的助成金に関する意見募集に応じ、次のような提案をした。:
政策部長のLily Bull氏は、予測可能な長期的資金が大学の計画と効率化に重要であると強調している。
【記事全文(英語)】ラッセルグループ(Russell Group):
https://russellgroup.ac.uk/news/russell-group-responds-to-ofs-consultation-on-public-grant-funding/
(29) 総選挙前における学生局のコミュニケーション
2024年5月25日学生局(OfS)は、非省庁型の公共機関として、選挙前期間中は内閣府のガイドラインに従う。このため、2024年7月4日の総選挙まで、通常より少ない内容を公開し、この期間中も規制業務は継続するがが、広報活動は制限される。具体的には、以下の活動を行わない:①コンサルテーションの開始②分析レポートの発行③公的イベントの開催④資金に関する情報の公開⑤新しい政策に関する高等教育機関へのガイダンスの提供。また、プレスリリースの発行や、高等教育問題に関するメディアへのコメント控える。ただし、公共および学生からの問い合わせには対応し、記者からの具体的な質問には事実に基づいた回答を提供する。ウェブサイトは、正確性の更新や重要な事実情報の追加のために引き続き更新される。
【記事全文(英語)】
General Election Guidance 2024 (内閣省からのガイダンス)
学生局(Office for Students):
(30) 不透明なAI研究ツールは、科学的知見の信頼性と正確性を損なう恐れがある
2024年5月28日英国王立学会(Royal Society)の報告書で、研究での「不透明な」AIシステムに過度に依存すると、科学的な発見の信頼性が低下し、実際の問題解決に役立たなくなる可能性があること指摘してる。報告書「Science in the Age of AI」は、21世紀の研究における機械学習と大規模言語モデルの機会と課題を探求している。AIツールは、薬物発見や気候モデリングなどの分野をすでに変革が行われているが、複雑で「ブラックボックス」的な性質のため、出力結果を研究者が説明できないことがあり、これを警告してる。これにより、再現性の低いAI研究が増え、その結論の信頼性に疑問が生じる。報告書は、これらの課題を克服し、AIの利点を最大限に引き出すために以下の提案をしている:
報告書は、学術界と産業界の専門家によるワーキンググループが主導し、エビデンスレビューやインタビュー、ワークショップを通じて作成された。報告書の共著者の一人でRSの副理事長であるAlison Noble教授は、AIシステムが科学研究を変革している一方で、その信頼性を確認する必要があると強調している。また、報告書の作成グループの一人であるPeter Dayan博士は、機械学習が研究を変革するためには、高品質のデータ、処理能力、研究者のスキルの融合が必要であると述べている。
【記事全文(英語)】英国王立学会:
(31) 英国学士院: 英国最大の課題に取り組むため人文・社会科学の強化を次期政府に要請
2024年5月29日英国学士院は、次回の総選挙に向けた英国学士院の要請として次期政府は高等教育と研究における人文社会科学を強化し、英国の大きな課題に対処する必要があることを提言した。現在、SHAPE科目(社会科学、人文科学、芸術などsocial sciences, humanities and the arts for people and the economy)の重要性が低下している中、次の3つの方法でこれらの科目を活用するように提言している:
具体的な対策として:
英国学士院の会長であるJulia Black氏は、SHAPE科目の重要性と高等教育と研究の現状について政府に緊急の行動を求めた。
【記事全文(英語)】: 英国学士院 (British Academy):
(32) Sutton Trust の「社会的流動性と機会」報告書
2024年5月29日英国の総選挙を前に、Sutton Trust*は社会的流動性と機会の平等に関する国民意識調査を実施し主な結果は以下の通り:
Sutton Trust* (社会の流動性の向上、教育面で不利な状況に対処することを目的とした慈善団体)
【記事全文(英語)】Sutton Trust :
https://www.suttontrust.com/our-research/social-mobility-and-opportunity/
(33) 7月4日の総選挙に向けて英国議会解散
2024年5月30日Research Professional Newsによると英国議会は来る7月4日の総選挙を前に同日、解散し、選挙まで全議席が空席となった。研究開発(R&D)に関わる主要な議員たちは再選を目指すことを発表している。労働党の影の科学大臣であるPeter Kyle 氏と、影の科学担当大臣であるChi Onwurah氏は、それぞれHove and Portslade選挙区およびNewcastle Central & West区から立候補すると発表した。また、現職の科学大臣Michelle Donelan氏と科学担当大臣Andrew Griffith氏も再選を目指すことを発表した。世論調査で労働党が優勢であることから、Kyle氏とOnwurah氏が選挙後にそれぞれの役職を引き継ぐ可能性が高いとされている。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(34) REF2029諮問委員会の委員の募集開始
2024年5月30日REF 2029の諮問委員会ののメンバー募集が開始した。応募締切は2024年6月24日正午までで、それ以降の応募は受け付けません。様々な経歴や経験を持つ人々を求めており、特に多様なグループからの応募を奨励している。学術系、専門職、技術職の人々も対象。
【記事全文(英語)】REF2029:
https://www.ref.ac.uk/news/advisory-panel-recruitment/
(35) 英国で35歳~44歳の女性のエンジニア離れがわずかながら急増している新データ
2024年5月30日Engineering UKの新しい年間分析では、エンジニアリングとテクノロジー分野で働く女性の割合が16.5%から15.7%に減少し、特に35歳から44歳の女性間で顕著にみられる。一方、英国の他の職種では56.1%が女性を占めており、同様の減少は見らない。Engineering UKのCEOであるHilary Leevers 氏は、業界において女性が仕事を離れる理由を理解し、再研修の機会を提供するなどを実施し、女性の定着率を改善する必要があると述べている。また政府のスキルタスクフォースもこの問題に取り組むべきだと指摘してる。2023年のデータでは、16歳から34歳の若い女性がエンジニアリングとテクノロジーの職に就く傾向が見られるが、職業内での定着が課題となっている。このデータが、業界の採用と定着の改善を促す警鐘となることが期待されている。
Women in engineering and technology:
【記事全文(英語)】Engineering UK