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UK HE Information

2024年7月英国高等教育及び学術情報

2024年9月25日

(1) 世界の研究集約型大学が共通の課題で協力を呼びかけ

(2) 継続・高等教育について(CEPの選挙分析)

(3) 180万人以上が5万ポンド以上の学生ローン負債

(4) 高等教育において米国から何が学べるか?

(5) 高等教育関係者は英国新政府との「より協力的な」関係を期待

(6) 新型コロナウイルス対策責任者が科学担当大臣に任命

(7) 新政府による研究開発の将来について語る:Russell Group

(8) Francs Crick Institute: Edith Hard教授が次期新所長及びCEOに任命

(9) 留学生数が移民数を激増:スコットランド

(10) 英国の全国学生満足度調査 2024年度発表

(11) 科学担当大臣はG7閣僚会議でいくつかの新たな合意とともに国際科学への積極的な取り組みを述べる

(12) 英国大学が直面する留学生誘致困難

(13) REF2029の人々・文化・環境の試行の参加機関発表

(14) QAAが国際進路プログラムの評価を発表

(15) 学術ジャーナルは利益主義の詐欺

(16) 新労働党政権:大学学費や公的資金の増額を考えていない

(17) 国王演説の中で述べられた高等教育関連事項

(18) HEPIとGW4アライアンスによる新報告書は、大学院生の育児支援における格差是正を政府に要求

(19) 恵まれない環境からの学生に対する進学競争を校へにするための新しい志願理由書

(20) 機会と成長を促進する機関Skills England の設立

(21) 救済要請を受けた各大学に予算管理を指示

(22) 労働党は英国に来る留学生を歓迎することを誓う

(23) 世界をリードするUKBiobankに約5,000万ポンド資金が投入

(24) Cancer Research UK:海外からの研究者のビザ費用値下げを求める

(25) 新政府:イングランドの大学での言論の自由の法律を停止

(26) 英国が将来の量子から利益を得るための5つのハブを設立 

(27) 大学存亡の危機:大学破綻を防ぐため25億ポンドの政府基金を要求

(28) 新科学大臣:英国はサイバー脅威と将来の感染症流行対策に対して「絶望的」

(29) UKRI:研究の財政的持続可能性リスクは“非常に高い”

(30) 大卒者は大学に対して圧倒的に好意的であるが、世間は職業訓練的な選択を好む

(1) 世界の研究集約型大学が共通の課題で協力を呼びかけ

2024年7月1日 Russell Groupが伝えるところによると、世界中の主要な研究集約型大学がベルリンで会合を開き、自由で開かれた探究を通じて知識の向上と普及を目指すというネットワークの原則を再確認した。また、各国政府に対し、大学が持つ独自の研究、イノベーション、パートナーシップの可能性を最大限に発揮できるよう、国際的な大学セクターと連携するよう求めている。この声明では、研究型大学が直面する課題と果たすべき役割が説明されている。つまり、知識社会への貢献、研究を通じたイノベーションの創出、未知の課題に立ち向かうための体制の強化と持続性の構築、グローバル人材の流動性を通じた卓越性の追求、国際的な連携を通じたグローバルネットワークの構築、そして自由な表現と批判的討論を通じたオープンな議論の重要性である。

【記事全文(英語)】Russell Group:

https://russellgroup.ac.uk/news/global-research-intensive-universities-issue-joint-call-for-collaboration-on-shared-challenges/

 

(2) 継続・高等教育について(CEPの選挙分析)

2024年7月1日 London School of Economics and Political Science を拠点としているCentre for Economic Performance (CEP)によって報告書が発表され、総選挙に寄せて今後の継続および高等教育に関する分析を行った。それによるとより高い教育水準とスキルを持った人材が必要であると論じられている。重要ポイントは以下の通り。:

  • 英国が経済成長するには、国民全体の教育レベルとスキルアップが必要。
  • 英国は、多くの国民が十分な教育を受けていないという問題がある。大学卒業者数は他の先進国とあまり変わりがないが、高校卒業程度の学歴を持たない人が多すぎる。特に深刻なのが、若者向けの「技能実習制度(Apprenticeship)」の衰退である。本来、この制度は大学進学しない若者の社会進出を支える役割を果たすべきであるが、近年は開始数が減少し、年配層が占めている。この状況改善には、若者向けの「技能実習制度の保証」と制度の改善が必要である。
  • 英国は大学卒業生が不足している。 給与は 全国的に大学卒業資格のプレミアが高く (水準や傾向は地域差がある)、経済成長のためには特に他業種と比べて遥かに多くの大学卒業生を雇用している金融・ビジネスサービス、クリエイティブ産業、ライフサイエンスなどを強化することが重要である。
  • 大学以下 (カレッジなども含む) の資格取得者も、他国と比べて英国は少ない。しかし、問題は「大学卒業生が多すぎる」のではなく、低学歴の労働者が多すぎる点である。
  • 英国の教育制度は財政難に直面しており、成人教育予算の削減や、インフレに追いつかない高等教育の資金分配により、学生と教育機関のどちらも苦境に立たされている。
  • 英国が経済的繁栄を達成するためには、教育とスキル訓練への公的投資が不可欠。これは、最近の政策とは完全に逆の方向転換が必要である。

Further and higher education: https://cep.lse.ac.uk/pubs/download/ea065.pdf

【記事全文(英語)】Centre for Economic Performance:

https://cep.lse.ac.uk/_NEW/publications/abstract.asp?index=10986

 

(3) 180万人以上が5万ポンド以上の学生ローン負債

2024年7月2日BBC Newsの報道によると英国の学生ローン問題は深刻で、180万人以上が5万ポンド を超える借金を背負っている。また6万1千人以上は10万ポンドを超過している。中には25万ポンド を超える巨額な借金を抱えている人もおり、返済は困難を極めている。 政府からは平均負債は約4万8千ポンド と発表しているが、実際は利子で膨らみやすい実態であり、政府の見解とは異なっている。

Student Loans in England Financial year 2023-24: https://assets.publishing.service.gov.uk/media/6672d55831a88528d2da7e2c/slcsp012024.pdf

【記事全文(英語)】BBC News:

https://www.bbc.co.uk/news/articles/c2xxp2gv4d1o

 

(4) 高等教育において米国から何が学べるか?

2024年7月4日 高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute:HEPI)は米国独立記念日に米国の高等教育に関する新報告書「An overview of US higher education」を発表した。

その主要内容:

  • 州からの資金と学費収入の関係:2022年、アメリカ合衆国の50州は公立大学に対して人件費や運営費として1200億ドル以上を拠出した。大学はさらに学費収入として750億ドルがあった。州の負担と学生の負担の割合は常に変化しているが、近年は州が公立大学への資金拠出を増やす一方、学費収入は減少している。
  • 連邦政府の役割:連邦政府は毎年1000億ドル以上の財政援助プログラムと税額控除を提供しているが、学生数の減少に伴い、この総額は過去10年間で減少している。
  • 4年制大学の人気上昇と2年制短大の急減:非営利・公立の4年制大学は着実に学生数を伸ばしているが、公立2年制コミュニティカレッジは急激に減少しており、現在では1980年代よりも低い水準になっている。営利目的の大学は、2000年代に急増したものの、2010年代には減少するという景気変動サイクルをたどっている。
  • 学生の負担:2022/23年度、すべての高等教育機関における平均年間学費と諸経費は14,688ドル (約11,600ポンド) 。学生は学費に加え、平均12,985ドル (約10,275ポンド) の生活費を負担する必要があり、年間総費用 (cost of attendance: COA) は27,673ドル (約21,898ポンド) となる。この金額はイギリスの学部生の年間最大授業料と維持費の合計 (9,250ポンド + 9,978ポンド = 19,228ポンド) をわずかに上回っている。また、米国の多くの学生は、学費の全額を支払うことはほとんどない。これは、奨学金や助成金などの制度が充実している、州内学生の授業料が低く設定されており、また、2年制のコミュニティカレッジは4年制大学よりもさらに低コストであるなどからの理由である。

【記事全文(英語)】Higher Education Policy Institute:

https://www.hepi.ac.uk/2024/07/04/what-can-the-uk-learn-from-the-us-when-it-comes-to-higher-education/

(5) 高等教育関係者は英国新政府との「より協力的な」関係を期待

2024年7月5日 The PIE Newsの記事で、英国大学協会の国際部(Universities UK International: UUKi)の部長であるJamie Arrowsmith 氏は、労働党が選挙活動中に大学に対する認識を変えると表明したことを歓迎した。Arrowsmith 氏は、新政府が大学との協力関係を築く必要があると述べ、特に留学生の受け入れを促進する新しい方法が必要だと強調した。また、Oxford Brookes Universityの留学生誘致部の部長であるFran Glover 氏も、留学生に関する認識の更新の重要性を述べ、留学生たちが経済的・社会的に大きな利益をもたらすと指摘した。

Arrowsmith 氏は、労働党の外交政策が野心的であり、大学がその目標達成に重要な役割を果たすべきだと述べた。また政策の安定性と大学への財政的圧力の緩和が必要であるとも指摘した。留学生に対する肯定的な声明を出し、彼らを歓迎する姿勢を示すことが即時の対策として提案された。

英国留学生問題評議会(UK Council for International Student Affairs: UKCISA)のエンゲージメント&パートナーシップ部の部長であるYinbo Yu氏は、新政府と協力して留学生の福利と地位向上を図る戦略を立てていると述べた。労働党のKier Starmer 新首相も、国の再生に向けた使命を果たすために協力を呼びかけた。Glover 氏は、英国の高等教育の前向きなな歩みを作るチャンスだが、慎重に行わなければならないと警告した。

【記事全文(英語)】Pie News

https://thepienews.com/uk-government-opportunity/

 

(6) 新型コロナウイルス対策責任者が科学担当大臣に任命

2024年7月8日 Nature によると、新英国首相Keir Starmer 氏は、複数の非政治家を政府の役職に任命したことを伝えた。COVID-19パンデミック中にテレビで頻繁に登場した英政府主席科学顧問のPatrick Vallance卿が科学担当大臣(Minister of State for Science, Research and Innovation)に任命された。Vallance卿は元グラクソ・スミスクラインの研究開発部門の責任者で、保守党政権下で2018年から2023年まで政府の主任科学顧問(Government Chief Scientific Adviser)を務めていた。この任命は科学界にとって安心できることであり、研究の実態を理解している人物が任命されたことを示している。Vallance卿は、科学、イノベーション、テクノロジー省の大臣に任命されたPeter Kyle 氏の下で働くことになる。Kyle 氏は以前人道支援活動を行い、コミュニティ経済開発の博士号を持ち、産業研究コミュニティから歓迎されると予想される。Vallance卿の他にも、Starmer氏は刑務所担当大臣にビジネスリーダーのJames Timpson 氏、政府の首席法律顧問として国際法と人権の専門家Richard Hermer 氏を任命した。彼らは選出国会議員ではないが、全員が上院の議席を与えられる。非政治家の専門家を任命することの利点は、彼らが上位の政治的役職に就く可能性が低いことである。この動きは、2007年から2010年までのGordon Brown 元首相の政府の動きを彷彿とさせる。

【記事全文(英語)】Nature :

https://www.nature.com/articles/d41586-024-02261-4

 

(7) 新政府による研究開発の将来について語る:Russell Group

2024年7月9日 Russell Groupの議長でNewcastle University の学長であるのChris Day教授は、発足したばかりの労働党政権が研究開発分野へ前向きな姿勢であることに対して期待を表明した。7月7日のResearch Professional Newsへの寄稿で、Day教授は、労働党が大学の成長促進における役割を肯定している点と、適切な産業戦略の復活を歓迎している点を指摘した。特に産業戦略については、研究力に強みを持つ大学が政府のパートナーとして貢献できると述べている。しかしDay教授は、政府のこの前向きな姿勢に加え、安定したブロック助成金の復活も必要だと強調している。それは、政府が称賛している医療、カーボンニュートラル、製造業などでの大学の貢献は、人材や施設、産業界との共同研究を支援する助成金があってこそ可能だったからである。Day教授は寄稿の中で、このような助成金は長期的な研究計画と新たな課題への柔軟な対応を可能にし、国際競争力にも貢献していると述べている。政府の研究開発・イノベーションへの積極的なアプローチは歓迎すべきですが、長期的な資金源を圧迫しないものでなければならない、としている。政府と大学がパートナーシップを組むことで、イギリスの明るい未来実現に大学の力を最大限に活用できることもあげている。

【記事全文(英語)】Russell Group:

https://russellgroup.ac.uk/news/russell-group-chair-writes-on-the-future-of-rd-under-a-new-government/

 

(8) Francs Crick Institute: Edith Hard教授が次期新所長及びCEOに任命

2024年7月9日、Francis Crick Instituteは、Edith Heard 教授を新しい所長兼最高経営責任者に任命すると発表した。Heard 教授は、2019年から欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory: EMBL)の局長で、2025年夏に着任予定。Heard 教授は、Francis Crick Instituteの創設所長兼最高経営責任者であるPaul Nurse卿の後任となるがNurse 卿自身は引き続き研究所で研究を続ける。Francis Crick Instituteの会長であるBrown of Madingley卿は、世界的な候補者の中からHeard 教授を選出できたことを喜び、彼女の国際的な研究実績と強力なリーダーシップが研究所の成長を促進すると述べた。また、Nurse卿の役割に感謝し、彼の貢献が研究所を世界的な科学の中心地にしたと評価した。Heard教授は、自身の任命に感激し、同研究所の評判をさらに高める挑戦を楽しみにしていること、また、EMBLを離れることに悲しみを感じながらも、新しい役割に挑むことに興奮していると述べた。Nurse卿は、自身の退任がHeard教授の卓越した科学者としての能力とリーダーシップにより容易になったと述べ、同研究所が彼女の指導の下でさらに発展することに完全な自信を持っていると語った。 

【記事全文(英語)】Francis Crick Institute

https://www.crick.ac.uk/news/2024-07-09_professor-edith-heard-appointed-new-director-and-chief-executive-of-the-francis-crick-institute

 

(9) 留学生数が移民数を激増:スコットランド

2024年7月9日BBC の報道によると、新たに公表された統計によると、スコットランドへの純移住者数は2021年から2022年の間に2倍以上となり、過去10年で最高レベルに達した。2022年6月までの1年間でのスコットランドへの純移住者数は4万8,800人で、前年は2万2,200人であった。統計を発表したスコットランド国家記録局は、この増加は、グラスゴーやエディンバラなどの都市への海外からの移住が増加したためだと述べている。スコットランド国家記録局の人口・移住統計責任者であるEsther Roughsedge氏は、「この増加は、スコットランドの大学で学ぶ留学生数の大幅な増加が要因である可能性が高い」と語った。留学生の出身国は近年大きく変化しており、EU離脱以降、EU加盟国からの留学生は減少している一方で、EU以外の国からの留学生は急増している。特に中国からの留学生は最も増加しており、2017/18年の1,000人あたりの9.5人から、2021/22年には20.8人へと上昇している。

【記事全文(英語)】BBC News:

https://www.bbc.co.uk/news/articles/c3g655p7zyno

 

(10) 英国の全国学生満足度調査 2024年度発表

2024年7月10日学生局(Office for Students: OfS)が実施した英国の全国学生満足度調査(National Student Survey: NSS)の結果によると、今年の最終学年学生の回答率は72.3%で、高等教育経験に関する質問に対して回答する学生の割合は横ばいであった。この調査は世界でも大規模な学生調査の一つで、英国全土の学生に対して、学業経験、授業と評価、大学やカレッジの健全な心身のための支援サービスなど、幅広い分野について質問している。

今年回答したのは約34万6千人の最終学年学生で、彼らの回答は、志望学生が適切なコースを選ぶための情報源となり、また大学やカレッジが全ての学生にとっての教育体験を向上させるための貴重なデータとなる。

英国の学生の回答結果は以下の通り:

  • 「コースの授業」に関する質問に対して肯定的に回答した学生は33%で、2023年の84.7%と比べて増加。
  • 「学生の声」に関する質問に対して肯定的に回答した学生は74%で、2023年の9%から増加。
  • 「大学やカレッジのメンタルウェルビーイング支援サービスに関する情報の伝達方法」に対して肯定的に回答した学生は79%で、2023年の9%から増加。

OfSの公平なアクセス・参加ディレクターであるJohn Blake氏のコメント:

「今年の最終学年学生は、新型コロナウイルスの影響など、様々な要因により入学前と在学中に大きな混乱を経験した。これは間違いなく学生生活全体に影響を与えたであろう。このような状況下で学業を続けてきた学生が多いことを考えると、今年の調査結果は、全体的な数値がほとんど昨年と同水準か、それを上回っているのは喜ばしいことである。大学やカレッジは、多くの学生からの貴重な意見をコース改善に役立てる必要があり、OfSでは、今回の調査データをもとに、規制のあり方を見直し、学生の声が今後も我々の活動に影響を与え続けていくことを保証する。」

National Student Survey data: https://www.officeforstudents.org.uk/data-and-analysis/national-student-survey-data/

【記事全文(英語)】Office for Students:

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/students-across-the-uk-share-their-views-in-the-national-student-survey-2024/

 

(11) 科学担当大臣はG7閣僚会議でいくつかの新たな合意とともに国際科学への積極的な取り組みを述べる

2024年7月11日 科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)はボローニャで開催されたG7科学技術大臣会合で、主要な同盟国との関係を再構築する第一歩を踏み出したことを伝えた。大臣たちは、最先端の科学と革新を支える研究インフラの強化を示し、ウクライナへの科学コミュニティの支持と、研究セキュリティ対策の強化、アフリカ諸国とのR&D協力を通じた経済発展支援を再確認した。新たに就任した英国科学担当大臣のVallance 卿は、英国の科学技術分野が「ビジネスに開かれている」ことを宣言し、ボローニャでのG7会合で国際パートナーと共に研究セキュリティの強化やAIを支えるスーパーコンピューティングなどでの協力を約束した。これは、科学と技術の力を世界的に活用するための政府の計画の一環である。Vallance 卿はCERNや1平方キロメートル電波望遠鏡天文台(Square Kilometre Array Observatory: SKAO)のような国際研究インフラの重要性を認識し、英国が新たな国際研究施設をホストする可能性を引き続き検討すると述べた。また、データの「FAIR」原則(発見可能、アクセス可能、相互運用可能、再利用可能)を支援するためのFAIRデータアクセラレーターパイロットプロジェクトへの英国の支援を表明した。G7会合ではバイオテクノロジーとAIの責任ある革新の推進にも焦点が当てられ、英国はEuroHPC共同事業を通じた欧州のスーパーコンピューティングリソースへのアクセスを含む計算能力での協力も行っている。Vallance 卿は、研究コミュニティへの脅威が増大する中で、研究セキュリティの重要性を強調した。英国とイタリアの科学技術分野の深い連携が強調され、科学技術施設会議(Science and Technology Facilities Council: STFC)とイタリアの国立研究評議会(Consiglio Nazionale delle Ricerche: CNR)の40年にわたるパートナーシップを祝った。

【記事全文(英語)】Department for Science, Innovation and Technology:

https://www.gov.uk/government/news/science-minister-outlines-open-arms-approach-to-international-science-at-g7-ministerial-with-several-new-agreements

 

(12) 英国大学が直面する留学生誘致困難

2024年7月12日、Guardian紙によると英国の大学は、次年度のコースに応募する留学生数が激減していることから、財政危機に直面していることを伝えた。内務省のデータによると、スポンサー付きの学生ビザの申請数は昨年6月の38,900件から28,200件に減少で40%の減少である。この減少は、特に大学院座学コースで顕著で、前年と比べて55%減少し、学部課程でも23%減少している。Enrolyのデータによると、7月末までの31の英国大学での留学生の入学手続き手数料および入学許可数は41%減少している。2021/22年度には24万人以上の留学生が大学院座学コースを開始し、10万4千人が学部課程に進学したが、今年の秋には約15万人の留学生が減少すると予測されている。多くの大学は留学生の授業料収入に依存しており、英国の学生の授業料が凍結されている中で、この状況は深刻である。DataHEのCEOであるMark Corver 氏は、国内の授業料が8年間にわたり9,250ポンドで据え置かれていることが原因で、大学が他の収入源を模索するようになっていることを述べた。8月のAレベル試験の結果が、大学の財政健全性にとって重要であるとも指摘している。

【記事全文(英語)】Guardian :

https://www.theguardian.com/education/article/2024/jul/12/uk-universities-face-growing-struggle-to-recruit-international-students

 

(13) REF2029の人々・文化・環境の試行の参加機関発表

2024年7月15日REF2029は「People, Culture and Environment (PCE)」試行的な取り組みに関する発表をした。英国全土の幅広い研究機関が参加し、提出規模、提供内容の多様性、過去のREFの取り組みへの参加経験が異なる40の機関が選出された。当初30機関を予定していたが、参加機会を広げるために40機関に増加した。

REF 2029のPCE政策開発に関して、さらに関与する機会があり、最近開始されたPCE指標プロジェクトの調査は、REFにおけるPCEの評価に関心のあるすべての人に開放されている。来年の試行評価の実施中に、PCE指標プロジェクトチームは、広範な研究機関、大学などの関係者からの意見を収集するための活動を行う。

【記事全文(英語)】REF2029:

https://www.ref.ac.uk/news/announcement-of-participating-institutions-in-the-people-culture-and-environment-pilot-exercise/

 

(14) QAAが国際進路プログラムの評価を発表

2024年7月16日英国高等教育質保証機構(Quality Assurance Agency: QAA)は、英国大学協会(Universities UK: UUK)の依頼で留学準備プログラム(International Foundation Programmes: IFPs)および留学準備1年コースプログラム(International Year One Programmes: IYOs))の評価を実施し、その報告書を発表した。評価は2024年2月28日から7月3日まで行われ、34の提供機関が自主的に参加した。

主な結果

入学要件:

IFPの32機関中18機関、IYOの20機関中10機関が同等の国内プログラム(主に進学準備コースや学部1年次)を有し、入学要件はほとんど同等。

IFPの基準

学術基準と学生の成果は期待通りであり、IFPの学生はAレベルやスコティッシュハイヤーの学生より多様な条件で進級機会が多い。

IYOの基準:

学術基準と学生の成果は期待通りだが、提携機関を通じて提供される場合に規則の違いが見られる。

進級率:

IFPとIYOの進級率には国内プログラムと比べて顕著な違いがあり、一貫したパターンは見られないため、さらなる調査が必要。

報告書には、高等教育機関へのいくつかの推奨事項が含まれている。

“Evaluation of International Pathway Programme”:

https://www.qaa.ac.uk/docs/qaa/news/evaluation-of-international-pathway-programmes.pdf?sfvrsn=678dbb81_7

【記事全文(英語)】Quality Assurance Agency:

https://www.qaa.ac.uk/news-events/news/qaa-publishes-evaluation-of-international-pathway-programmes#

 

(15) 学術ジャーナルは利益主義の詐欺

2024年7月16日 カナダのMcGill University のArash Abizadeh教授が学術出版業界の問題点のGuardian紙にの記載した。

商業出版社の収益と利益率:Elsevier、Wiley、Taylor & Francis、Springer Nature、SAGEといった主要な商業出版社は、年間収益が数十億ドルに達し、利益率は40%近くにもなる。これらの出版社は研究者の無償労働を利用し、研究成果を再販売して大学や研究機関に大きな費用を課しているのが実態である。

学術誌の高額な購読料:大学や研究機関がこれらの商業出版社の学術誌にアクセスするための購読料が非常に高く、多くの大学が負担に苦しんでいる。つまり多くの研究者や一般市民は重要な情報にアクセスができない。

オープンアクセスとその問題:商業出版社はオープンアクセスの記事も提供しているが、その費用は著者が支払う。これにより、大学が再び多額の費用を支払うことになる。

代替案としての「ダイヤモンドオープンアクセス」:商業出版社を介さずに大学や図書館が直接学術誌を資金提供することで、編集プロセスの商業的圧力を排除し、研究を無料で公開することが提案されている。

集団行動の問題:学者たちは現在の商業出版モデルの変更を願っているが、キャリアの進展には名の知れた商業出版社の学術誌に掲載することが重要なため、新しいジャーナルに移行することに躊躇している。

英国の状況:英国の大学は、2010年から2019年の間に学術誌の購読料として10億ポンド以上を支払い、その90%以上が主要な商業出版社に支払われた。かた2022年にはオープンアクセスのために1億1200万ポンドを支払った。

大手出版社は高額な購読料を請求し、利益を追求している。一方、研究者は無料で働かされており、一般の人々も論文にアクセスできない状況にある。Abizadeh教授は非営利のオープンアクセス出版を推奨しており、研究成果を誰もが無料で閲覧できるようにすべきだと主張している。

【記事全文(英語)】Guardian:

https://www.theguardian.com/commentisfree/article/2024/jul/16/academic-journal-publishers-universities-price-subscriptions

 

(16) 新労働党政権:大学学費や公的資金の増額を考えていない

2024年7月17日 Research Professional Newsによると新教育大臣であるBridget Phillipson氏は、大学の財政問題を解決するために学費の値上がりや公的資金の増加を計画していないが、留学生の受け入れを支援する意向を示したことを伝えた。これは、大学を「より持続可能な基盤」に置くための手段としてである。

Phillipson氏は、BBCのインタビューで、大学の資金に関する問題について言及した。その内容は留学生の受け入れが経済的貢献だけでなく、英国の国際的な影響力にも重要であると述べた。また、学生ビザの発行数の増加についても寛容な姿勢を示した。

またPhillipson氏は、労働党が大学への追加資金提供や学費の値上げを計画していない理由として、留学生の受け入れが大学の持続可能な運営に貢献すると説明した。また、大学や職業訓練の機会を増やすことに重点を置き、すべての若者にはっきりとした進路を提供することを目指しとしている。Phillipson氏はは、労働党政府が大学の規制や監督の改善にも取り組んでおり、学生局(Office for Students: OfS)の改革を進めていることも話した。

【記事全文(英語)】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-politics-2024-7-labour-has-no-plans-to-raise-university-fees-or-funding/

 

(17) 国王演説の中で述べられた高等教育関連事項

2024年7月17日英国高等教育関連専門ウエブサイトWonkHEは行われた国王演説(King’s Speech :議会制・立憲君主制政治の発展した近現代のヨーロッパの君主国において、君主(皇帝、国王〈女王〉)が議会の開会式で全議員を集め、今後の政府の方針を演説する儀式)では大学関連の言及はなかったものの、今後注目すべき法案がいくつかあることを伝えた。

高等教育

  • 技能イングランド法案:新しい機関が、学徒制・職業技術教育協会 (IfATE) の機能を引き継ぎ、データ収集・分析、規制などを担う。
  • 地方分権法案:地方自治体にスキルと雇用支援を含むより大きな権限を与える。

労働

  • 雇用権利法案:ゼロ時間契約を禁止し、労働条件を改善する。
  • 平等 (人種と障害) 法案:障害者や少数民族の労働者の同一賃金権利を強化し、賃金平等報告を義務付ける。

その他

  • デジタル情報スマートデータ法案:高等教育と民間セクターにおけるデータ再利用の同意プロセスを簡素化する可能性がある。
  • テロリズム (施設保護) 法案:大学の安全要件に影響を与える。
  • 児童心身健全法案:再び教員資格 (または取得に向けて取り組んでいること) を義務付ける。
  • 入居者権利法案:学生の賃貸住宅における問題に対処する。

【記事全文(英語)】WonkHE:

https://wonkhe.com/wonk-corner/whats-in-the-kings-speech-for-higher-education/

 

(18) HEPIとGW4アライアンスによる新報告書は、大学院生の育児支援における格差是正を政府に要求

2024年7月18日 高等教育政策研究所 (Higher Education Policy Institute: HEPI) と GW4 大学連携機関 (Bath、Bristol、Cardiff、Exeterの大学の連合) は共同で、「Who cares? How postgraduate parents fall through the gap for government childcare grants, and how to fix it.(取り残される人たち: 大学院生の親が政府の育児支援助成金を受けられず不利な状況にある現状と解決策」という報告書を発表した。この報告書は、大学院生 (座学コースの学生や研究者) である親に対する育児支援の欠落に焦点を当てている。学士課程の学生や一般の労働者向けの支援制度とは対照的に、大学院生には何の支援もないのが現状である。

報告書の概要:

これまでの政府は、大学院生 (特に親) の育児支援を軽視してきている。現在、大学院生は学士課程の学生向けの育児支援助成金や、一般の労働者向けの無料保育時間制度を利用することが不可能である。GW4 大学連携機関は、政府に対し、現行の学士課程向け育児支援助成金を大学院生にも適用するよう求めている。この変更により、世帯収入が 19,795ポンド 未満の場合、育児にかかる費用の一部が助成される。また、子供を持つ経済的に恵まれない環境の出身の人々が、より高い資格を取得することを諦めることなく、学習意欲を維持できるようになる。この不平等な支援制度は、特に女性や低所得層の人々に不利な影響を与え、高等教育分野や高度人材の多様化を妨げている。大学院での研究は、将来の高度人材育成に不可欠であり、キャリアアップのためのスキル向上やスキル更新の機会を提供し、英国を「科学超大国」にするという国の目標達成にも貢献する。修士課程や博士課程の学生は、15歳未満の子供の育児費用を助成する (フルタイムの) 学士課程向けの育児支援助成金を利用できない。また、学業に加えて実質的な有償雇用をしている場合を除き、一般の労働者向けの育児給付金も受給できない。ほとんどの親にとって、大学院での研究、実質的な外部就労、育児責任の 3 つを同時にこなすことは不可能である。博士課程プログラムの多くは、学生にフルタイムでの専念を求めており、定期的な外部就労を認めていないところもある。その代わりに、博士課程の学生には通常、住居費やその他の生活費を賄うための奨学金が支給さる。しかし、博士課程の学生の典型的な奨学金は年間 15,000ポンド から 19,000 ポンドであるのに対し、2 歳未満の子供のフルタイムの保育施設の平均費用は年間 14,000ポンド を超えている。奨学金だけでは生活費と育児費を賄うことが不可能である。GW4 大学連携機関は、このような育児支援の欠如が、子を持つ親がが大学院資格取得を目指す意欲を低下させているのではないかと懸念している。また、この支援の欠如は、高等教育分野や高度人材の多様性と平等を阻害している。研究開発分野を中心に、より多様性のある職場の方が革新性が高いという証拠が近年増えているにもかかわらず、このような状況が起きている。報告書の一部として、GW4 大学連携機関は提携大学の博士課程学生にインタビューを行い、育児資金の不足がいかにして彼らの職業生活や個人生活に影響を与えているかを調査している。インタビューを受けた学生たちは、自分自身だけでなく社会にとっても大学院での研究が重要であることを強調しており、その中には、がん研究のキャリアを追求している学生もいる。しかし、全員が学業中の保育料の支払いに苦労しており、支給されている奨学金では保育費を賄うことができない状況である。

“Who care? How postgraduate parents fall through the gap for government childcare grants, and how to fix it?”: https://www.hepi.ac.uk/wp-content/uploads/2024/07/Who-cares_-How-postgraduate-parents-fall-through-the-gap-for-government-childcare-grants-and-how-to-fix-it.pdf

【記事全文(英語)】Higher Education Policy Institute:

https://www.hepi.ac.uk/2024/07/18/new-report-by-hepi-and-the-gw4-alliance-bath-bristol-cardiff-and-exeter-universities-calls-on-government-to-fix-the-gap-in-childcare-support-for-postgraduate-students/

 

(19) 恵まれない環境からの学生に対する進学競争を校へにするための新しい志願理由書

2024年7月18日 大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)は公平な審査を目指して、従来の自由形式の志願理由書(Personal Statement)を廃止し、3 つの質問形式の新しい志願書を導入することを発表した。これは恵まない環境からの学生の大学進学を推進する取り組みの一環である。

新しい 3 つの質問は以下の通り:

  • なぜこのコースまたは科目を学びたいのか? (志望理由とアピール)
  • これまでの資格や学習は、このコースまたは学科への準備にどのように役立っているのか? (関連スキルや学習への理解)
  • 学業外活動で何をしましたか? なぜそれが役に立つのか? (課外活動などによる適性アピール)

この新しい形式は、2026 年入学を目指す学生のために 2025 年 9月に導入される。

また、UCAS は最新のデータも公開し、恵まない環境の出身学生と恵まれた環境にある学生との間の大学出願率の格差が依然として存在することが示されている。

【記事全文(英語)】Universities and Colleges Admissions Service:

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/new-personal-statement-help-level-playing-field-disadvantaged-students

 

(19) 機会と成長を促進する機関Skills England の設立

2024年7月22日 首相と教育大臣は、壊滅的なスキル取得状況を立て直し、国のスキルを向上させるための共通の国家的目標を設定する「Skills England」の設立を発表した。教育大臣は、暫定議長として元コープグループCEOで教育省の非常勤取締役のトップであるRichard Pennycook CBE氏を任命した。スキルは経済成長に不可欠であり、過去20年間の生産性向上の3分の1はスキルレベルの向上によるものである。しかし、2017年から2022年にかけて、この国のスキル不足は倍増し、人材不足は50万人以上となり、現在の求人において36%を占めていることになる。Skills Englandは、中央および地方政府、企業、トレーニング提供者、労働組合を統合し、今後10年間のスキルニーズに対応し、政府の産業戦略に沿った16歳以上のスキルシステムの戦略的監視を行う。特に建設業とヘルスケア分野における地域のスキル開発を支援することが、持続可能な成長を目指す政府の使命の一環となる。また、移民諮問委員会(Migration Advisory Committee: MAC)と協力して、海外労働者への依存を減らすことも目指す。

首相のKeir Starmer 氏は「スキルシステムは混乱しており、これを改革して将来のスキルニーズに対応する」と述べ、教育大臣のBridget Phillipson氏は「経済を成長させるためには、すべての人々の才能を活かす必要がある」と語った。Skills Englandは、企業が必要とするスキルのトレーニングを特定し、成長とスキル賦課金を柔軟に利用できるようにする。この組織は、今後9〜12ヶ月で段階的に設立され、応答性と協力的なスキルシステムを構築する。Skills England法案により、技能教育機関( Institute for Apprenticeships and Technical Education:  IfATE)の機能がSkills Englandに移管される。これにより、成人教育予算の簡素化と地方への権限移譲が進み、地域のスキルニーズに直接対応し、成長を支援することが可能にする。今後の展開としては、まずSkills Englandの影の組織としてDfE内に設置し、将来のスキルニーズの評価を開始し、雇用主との強固な関係を構築する。正式な理事会、会長、CEOは追って任命される。IfATEの機能はSkills Englandに移管される予定で、移行期間中もIfATEの重要な業務は継続される。政府は、16歳以上の教育に関する包括的な戦略を発表し、機会の障壁を取り除き、熟練労働力の発展を支援し、産業戦略を通じて経済成長を促進する。 

【記事全文(英語)】Department for Education:

https://www.gov.uk/government/news/skills-england-to-transform-opportunities-and-drive-growth

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2024年7月22日 国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)はスキルズイングランド(Skills England)の発足に関して、英国経済のスキルニーズ改善に焦点を当てた専門組織を歓迎した。

NCUBの最高経営責任者であるJoe Marshall博士によると、英国は深刻な人材不足に直面している。企業は従業員のスキルアップや新たな人材の獲得に障壁を感じている。

新政府は迅速に行動を起こし、企業と訓練提供者を結びつけるスキルイングランドを発足させた。Marshall博士は雇用者のニーズに合った強力な教育システムが生産的な経済の基盤であり、機会を生み出すと述べている。スキルズイングランドの協力的な性質、特に雇用者とのパートナーシップを中心とした やり方を評価している。企業は人材の顧客であり、進化するスキルニーズの推進者として、この変革の中心にあるべきだと強調している。

【記事全文(英語)】National Centre for Universities and Business:

https://www.ncub.co.uk/insight/skills-england-will-help-to-combat-growing-skills-shortages-and-drive-economic-growth-says-ncub/

 

(21) 救済要請を受けた各大学に予算管理を指示

2024年7月22日教育大臣であるBridget Phillipson氏はBBCに対して、大学が独立した機関として「予算を管理」することを期待していると述べた。これは、財政的に苦境に立つ大学への救済を求める大学組合(University, College Union: UCU)の要請に対する回答である。

Phillipson氏は、労働党が大学を「公共の利益」と認識し、長期的に大学部門の財政基盤を強化することを目指すと述べた。UCUのJo Grady氏は、政府からの緊急救済パッケージがなければ大学は「壊滅的な状況」に直面すると警告した。

大学規制機関である学生局(Office for Students: OfS)の最近の評価によると、40%の大学が赤字を予測しており、留学生の募集に対して楽観的な予測をしていると示唆している。今年1月からパートナーや子供の同伴を制限する措置が導入されて以来、留学生の募集が急減し。さらに、ナイジェリアの通貨の下落も影響を及ぼしている。教育大臣は、卒業生ビザルートを維持し「留学生を歓迎したい」と述べた。

どの大学が削減を行っているのかについて、Universities UKのCEOであるVivienne Stern氏は、「高等教育機関の大多数が困難に直面」と述べ、70の大学がコスト削減を実施しており、年末までにはほぼ全ての大学が同様の措置を取るだろうと予想している。Stern氏は、学生対スタッフ比率や提供するコースにも影響が出ると警告している。イングランド全土で、大学は財務を引き締めており、最大10%のスタッフ削減やコースの閉鎖・統合を検討しおり、例えば、Huddersfield, Lincoln、Central Lancashireで、職員が解雇の危機に直面している。University of Coventry は今後2年間で約1億ポンドの削減を計画し、University of Kentは財務上の課題に対処するために6つのコースを削減することを明らかになった。ロンドンのGold smithsの職員は、同大学の計画に反対して採点ボイコットを行っている。新政府は、納税者の救済措置を直ちに提供することはないが、高等教育機関の財政問題に対する長期的な解決策を模索する必要があることははっきりしている。先週、新政府はOfSの議長であるWharton卿の辞任を受け入れた。Wharton卿は、公平性に欠けると批判されていた。教育大臣は、今週議会でOfSの業務内容について詳細を説明する予定で。文化戦争の議論に巻き込まれるのではなく、高等教育機関の財政安定性を確保するという最大の任務に焦点を当てるよう求めると予想されている。

【記事全文(英語)】BBC News:

https://www.bbc.co.uk/news/articles/cpd9mgk028lo

 

(22) 労働党は英国に来る留学生を歓迎することを誓う

2024年7月22日Pie Newsによると、同日BBCのラジオ番組で、教育大臣のBridget Phillipson氏は、留学生が地域経済やソフトパワーに与える影響を認識していると述べたことを伝えた。労働党政権下では、今年初めに見直しが行われていた卒業生ビザ(Graduate Route visa)が維持されると発表し、高等教育機関で安堵をもたらしました。Phillipson氏は、保守党政権下では大学が「安っぽいネタに利用された無意味な争いに執着していた」と批判し、その時代は終了したが規制を正す必要あり、と述べた。財政困難に直面する多くの英国大学について、授業料のインフレに伴う引き上げを否定せず、政府が「最後の貸し手」として行動することを否定した。大学は自律的であり、納税者に頼ることなく予算を管理することが期待されると述べ、規制の厳格化を求めた。今年初め、修士課程の学生が家族を同伴することを禁止する規制が導入された後、英国の学生ビザ申請数が過去最低となった。これにより、英国の魅力が低下し、大学の資金危機が深刻化した。

Universities UKのCEO、Vivienne Stern氏は、学生数の急減が大学に大きな困難をもたらしたと述べ、政府が大学を歓迎し、卒業生ビザが維持されることを明確にする声明が必要だと強調した。Sunday Times紙は、この状況を「破滅的」とし、66の大学(高等教育機関の3分の1以上)が職やコースを削減していると報じた。

【記事全文(英語)】The Pie News

https://thepienews.com/labour-vows-to-welcome-international-students-to-our-country/

 

(23) 世界をリードするUKBiobankに約5,000万ポンド資金が投入

2024年7月25日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)はAmazon Web Services (AWS) が英国バイオバンク (UK Biobank) に約800万ポンド相当のクラウドコンピューティングストレージアクセスを提供し、さらに政府からの同額のマッチングファンドを獲得することを発表した。この総額1600万ポンドの投資は、パーキンソン病、認知症、がんなどの病気の診断、新しい治療法、予防法の開発に役立つ研究を支援することになる。科学大臣のPeter Kyle氏が発表したこの支援により、UK Biobank は成長する健康データを安全に保管および処理するためのクラウドインフラストラクチャを確保が可能となる。UK Biobankは、50万人の英国ボランティアから得られた遺伝情報、健康情報、生活習慣情報のデータベースであり、世界中の研究者がアクセスできるようになっている。AWSの支援により、UK Biobankはデータを安全に保管し、AIや機械学習などの先進的なデジタル能力を活用して研究の進展を加速させることが期待される。この取り組みは、UK Biobank のデータをより多くの研究者に提供し、医療の進歩に貢献するものである。

【記事全文(英語)】科学、イノベーション、テクノロジー省:

https://www.gov.uk/government/news/nearly-50-million-unlocked-for-world-leading-uk-biobank-following-new-industry-backing

 

(24) Cancer Research UK:海外からの研究者のビザ費用値下げを求める

2024年7月25日Research Professional Newsはがん研究と治療法の開発を専門とする英国の慈善団体/研究機関であるCancer Research UKは、新政府に対し、研究者向けビザ料金の引き下げを求めたことを伝えた。昨年の財政年度でのビザ費用が44%増加したため、2023/24年度には約687,674ポンドを費やす見込みである。昨年10月、保守党政府は労働ビザを15%、家族ビザを20%、学生ビザを25%引き上げた。費用の増加が世界トップの科学者を英国から遠ざける原因となっているといわれており、ビザ費用の引き下げと移民システムの全面的な見直しを求めている。

各研究所のビザ費用は以下の通り:

  • Francis Crick Institute: 2023-24年度は501,000ポンド、2022-23年度は350,000ポンド(43%増加)
  • Cancer Research UK Manchester Institute: 39,675ポンド(27,150ポンドから46%増加)
  • Cancer Research UK Cambridge Institute: 65,793ポンド(43,687ポンドから51%増加)
  • Cancer Research UK Scotland Institute: 81,206ポンド(56,407ポンドから44%増加)

海外から渡航した研者の一人は、ビザ申請が複雑で高額だと述べ、英国が優秀な科学者を他国に奪われるリスクがあると警告している。英国王立学会(Royal Society)の分析によると、英国のビザ費用は他の主要研究国の平均の17倍に達しており、2022年に行われた調査では、英国人で回答した73%の人々が医学研究者や科学者に対する英国での労働を容易にする政府の対応を支持していた。

【記事全文(英語)】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-charities-and-societies-2024-7-uk-visa-costs-for-cancer-scientists-rise-44-in-a-year/

 

(25) 新政府:イングランドの大学での言論の自由の法律を停止

2024年7月26日 Guardian紙は大学での言論の自由を保護するために前政権の保守党が導入した法律を新政府は停止、廃止の可能性を検討していることを伝えた。教育大臣のBridget Phillipson氏は、この法律が大学に過度な負担をかけ、学生に有害なヘイトスピーチを招く恐れがあるとして中止を決定した。また、財政危機に直面する大学の財政安定を優先するため、大学規制機関の役割も見直すことを発表した。この決定は、多くの大学関係者から歓迎されているが、保守党からは批判を受けている。

【記事全文(英語)】Guardian 紙:

https://www.theguardian.com/education/article/2024/jul/26/labour-halts-tory-law-freedom-of-speech-universities-education

 

(26) 英国が将来の量子から利益を得るための5つのハブを設立 

2024年7月26日 UKリサーチ・イノベーション(UK Research Innovation: UKRI)は、量子技術の潜在能力を活かすために新しい量子技術ハブに1億6000万ポンドを投資することを発表した。これらのハブは、早期病気診断、見えないガス漏れや隠れた物体の検出、量子インターネットの創設、量子コンピュータの実現、外部からの干渉に強い信頼性の高い位置情報、ナビゲーション、優れた同期化を実現する高精度なタイミングシステムなど、幅広い応用分野での技術革新を目指。主要な投資はEPSRC、BBSRC、MRC、NIHRからの1億600万ポンドで、産業界からの現金および現物の寄付も含まれている。各ハブは産業界と連携し、研究を実用化に結びつけ、ヘルスケアや安全保障などの分野を変革し、経済成長を促進する。

5つの量子技術ハブ:

  • UK Quantum Biomedical Sensing Research Hub (Q-BIOMED)
  • 指導者: Rachel McKendry教授(UCL)とMete Atatür,教授(Cambridge)
  • ホスト大学およびパートナーからの支援(現金および現物): 1,080万ポンド
  • 目的: 量子センサーを使って、病気の早期診断を変革する。例として、量子強化血液検査や脳内の微細な磁場変化を測定してアルツハイマー病の初期兆候を検出する技術を開発。
  • UK Quantum Technology Hub in Sensing, Imaging and Timing (QuSIT)
  • 指導者: Michael Holynski 教授(Birmingham)
  • ホスト大学およびパートナーからの支援(現金および現物): 2,750万ポンド
  • 目的: 量子センシング、イメージング、タイミングの研究の障壁を克服し、目に見えないものを検出する技術を開発。例として、量子脳スキャナー、量子顕微鏡、量子時計、量子カメラなど。
  • Integrated Quantum Networks (IQN) Quantum Technology Research Hub
  • 指導者:Gerald Buller教授(Heriot-Watt)
  • ホスト大学およびパートナーからの支援(現金および現物): 3,170万ポンド
  • 目的: グローバルな量子インターネットを構築し、量子コンピュータを接続するネットワークの研究を行う。量子の特性(量子もつれや量子メモリ)を活用し、将来の量子コンピュータサービスや通信のセキュリティを確保。

 

  • QCI3: Hub for Quantum Computing via Integrated and Interconnected Implementations
  • 指導者: Dominic O’Brien教授(Oxford)
  • ホスト大学およびパートナーからの支援(現金および現物): 2,240万ポンド
  • 目的: 量子コンピュータの技術開発を行い、2020年までに3兆ドル市場の重要な役割を果たす。量子機械学習や新材料の設計など、実用的なアプリケーションの開発を目指す。
  • The UK Hub for Quantum Enabled Position, Navigation and Timing (QEPNT)
  • 指導者: Douglas Paul教授(Glasgow )
  • ホスト大学およびパートナーからの支援(現金および現物): 2,190万ポンド
  • 目的: 国家安全保障や重要インフラのための量子技術を開発。量子時計やLiDARセンサーを使い、位置情報、ナビゲーション、タイミングの信頼性を向上させる。新たなGPS技術の代替として、より高精度な位置情報提供を実現。

 

【記事全文(英語)】UKリサーチ・イノベーション:

https://www.ukri.org/news/five-hubs-launched-to-ensure-the-uk-benefits-from-quantum-future/

 

(27) 大学存亡の危機:大学破綻を防ぐため25億ポンドの政府基金を要求

2024年7月26日、政治戦略コンサルティング会社のPublic FirstとUniversity Warwickが発表した新しい報告書では、大学の「不安定な状況」に対処するために、25億ポンドの変革基金(Transformation Fund)と新しい高等教育コミッショナーの設立ををしている。報告書では、現在の規制では学生を十分に保護できておらず、大学の破綻時には特に留学生への影響が大きい「ドミノ的な危機(contagion risk)」が懸念されている。

具体的な提案は下記の通り:

学生局(Office for Students:OfS)の役割の再均衡:OfSに対して、財務リスクの予測と管理を優先するよう新たな指示を与え、学生保護計画を強化する。

高等教育向上・転換計画の設立:経済的困難に直面している大学に対し、構造改革を行うための25億ポンドの変革基金を提供し、無秩序な閉鎖を防ぐ。

高等教育コミッショナーの設置:教育省(Department for Education: DfE)内に新たな役職を設け、変革基金の管理と大学と政府の間の連携を強化する。

特別管理制度の導入:大学が再建できない場合でも秩序ある形で閉鎖できるよう、特別管理制度を導入する。

報告書では、混乱した閉鎖は学生や教職員、地域社会、留学生に深刻な影響を与えると指摘されている。特に、大学の突然の閉鎖は留学生の流入に悪影響を及ぼし、英国全体の高等教育の評判を損なう可能性があるとしている。また報告書は現行の政策が大規模な大学の失敗に対応するための計画を欠いていると述べ、リスク管理のため、より積極的なアプローチが必要であると結論づけている。

Institution Overboard: New Public First report calls for £2.5Bn government fund to stop universities going under: https://www.publicfirst.co.uk/wp-content/uploads/2024/07/Institution-Overboard.pdf

【記事全文(英語)】Public First:

https://www.publicfirst.co.uk/institution-overboard-new-public-first-report-calls-for-2-5bn-government-fund-to-stop-universities-going-under.html

 

(28) 新科学大臣:英国はサイバー脅威と将来の感染症流行対策に対して「絶望的」

2024年7月29日、Guardian紙で、英国の新政府の科学大臣であるPeter Kyle氏は、英国がサイバー脅威や将来の感染病流行の対策に対して「非常に脆弱」であると警告したことを伝えた。Kyle氏は、前政府下で国家の危機管理能力が「壊滅的に」損なわれたと語った。緊縮財政の影響でNHSや他のサービスが削減され、国の今後の感染病流行対する準備も妨げられたと同紙に語った。また、サイバーセキュリティリスクの上昇に対処するための対策も不十分としている。Kyle氏は、3週間前に労働党が政権を握ってから科学担当大臣に任命され、「前政府の内紛」が進展を阻み、将来の脅威に対する準備を妨げたと非難した。特にサイバーセキュリティとパンデミック対策に対する脅威が増しており、これに対応するために「国家安全保障優先事項」として新しいサイバーセキュリティとレジリエンス法案(CS&R法案)の提出を求めた。

国家サイバーセキュリティセンター(National Cyber Security Centre: NCSC)は、水道、電力、医療などの重要インフラ((critical national infrastructure: CNI)への脅威が増加していると警告し、新法案はCNIの供給チェーンの弱点を悪用する悪意のある行為者を防ぐことを目的としている。さらに、Kyle氏は将来の感染病流行に対する準備が不足していると述べ、Covid調査報告書も「致命的な戦略的欠陥」を指摘している。また、財政的な困難から、海外の科学者に対する高額なビザ料金が課題となっており、研究者の移動が制約されているとされている。財務大臣のRachel Reeves氏は、来週初めに公務員へのインフレ以上の賃上げを発表する予定であるが、公共財政の不足により道路や病院のプロジェクトが遅れる可能性がある。Kyle氏はこれらの具体的な課題を認識しているが、すべての課題と機会を総合的に見なければならない、と述べ必要に応じて関連部門に調整を要請する述べた。

【記事全文(英語)】Guardian 紙:

https://www.theguardian.com/uk-news/article/2024/jul/29/uk-desperately-exposed-to-cyber-threats-and-pandemics-says-minister

 

(29) UKRI:研究の財政的持続可能性リスクは“非常に高い”

2024年7月30日 Research Professional Newsによると、UK Research and Innovation(UKRI)の2023-24年の年次報告書は、研究システムの「財政的持続可能性」の危険が「非常に高い」と評価し、今年もこのリスクが「容認範囲外」にとどまる見通しであると警告している。英国全土での大学資金危機が研究とイノベーションに及ぼす影響が報告書で強調されている。UKRIの議長(Chair)であるAndrew Mackenzie氏は、R&Iシステム全体が大きな財政的挑戦と不確実性に直面しており、今後数年間で困難な決断が必要になると述べている。UKRIの最高経営責任者(CEO)Ottoline Leyser氏の給与パッケージは、前年の£215,001-£220,000から£240,001-£245,000に12.6%増加しました。この増加は、組織全体の給与中位数の5.68倍であり、前年の5.47倍からわずかに増加している。Leyser氏は2025年6月にCEOを退任する予定で、その後任はまだ決まっていない。

報告書はまた、UKRIの職員の能力に関しても「非常に高い」リスク評価をしている。主要なデジタルプラットフォームの更新や新しい運営モデルの導入など、組織の大きな変革プログラムが進行中であり、これがスタッフの業務負担を増大させている。Leyser氏はUKRIの「並外れた優秀な職員」の献身を称賛しつつ、業務負担の増加が職員に与える影響を認識している。UKRIの広報担当者は、研究とイノベーションシステムの長期的な財政的持続可能性が重要であると強調し、公的資金の安定した支援を提供し続けることが必要であると述べた。また、シニア職員の給与に関しては、UKRIの指名報酬委員会(Nominations and Remunerations Committee)と科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DIST)が慎重に検討していると述べている。職員の維持については、公的部門の給与制約が特定の分野での人材の維持にリスクをもたらしていると認識しており、その解決に取り組んでいる言われている。

【記事全文(英語)】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-research-councils-2024-7-ukri-financial-sustainability-risk-for-research-very-high/

 

(30) 大卒者は大学に対して圧倒的に好意的であるが、世間は職業訓練的な選択を好む

2024年7月31日 King’s College London のThe Policy Institute が行った新しい調査によれば、大学卒業生の大多数が大学の経験、得た知識やスキル、全体的な利益を評価し、10人中9人が再び大学に行きたいと回答したこと分かった。しかし、大学教育の価値についての懸念も増えており、31%の人々が大学教育は時間とお金に見合わないと考えている。(2018年の18%から増加)。親の47%は子供が大学に行くことを重要視し、70%は大学教育が単に就職のためだけでなく、それ自体が価値あるものであると考えている。また、一般国民の76%が見習い制度の機会拡大を求めており、これは大学教育の機会拡大(36%)よりも高い支持されている。調査では、英国内の学生の平均的な卒業時の借金額が£45,000であると推測され、80%の卒業生が学費で発生する借金が生活に悪影響を及ぼしていないと回答している。これらの結果は、大学教育が重要視される一方で、より多くの職業教育の機会が求められる現状を反映している。

Attitudes to university education among graduates, parents and the public: https://www.kcl.ac.uk/policy-institute/assets/still-worth-it.pdf

【記事全文(英語)】The Policy Institute:

https://www.kcl.ac.uk/news/graduates-overwhelmingly-positive-about-universities-but-public-favour-more-vocational-options-study-finds