2023年5月19日
(1)EUの研究プログラムの参加に関する研究開発機関の共同声明
(2)英国とスイスのホライズン・ヨーロッパ参加を求める共同声明発表
(3)研究開発の将来の英国の援助支出の決定が”保留“
(4)次回のREFは“創造性の解放”、リサーチ・イングランドの会長が示唆
(5)ホライズン・ヨーロッパへの参加不可の恐怖が再燃
(6) ホライズン・ヨーロッパ資金獲得者への保証の延長
(7)科学技術でより良い英国として前進する計画を発表
(8) 研究、開発、イノベーション(RDI)の組織的な状況:独立したレビュー
(9) 英国はSTEMの大国としての地位を固めようとしているが、投資が不足する可能性
(10) 新しい英国の科学超大国計画にホライズン・ヨーロッパ参加が指摘されていない
(11) 2025年から学生の財政制度が大きく変わる
(12) 英国のイノベーションに海外から投資を誘致するため、大学のレベリングアップの可能性を解放
(13) ATAS審査制度の遅れは優秀人材や研究プロジェクトを危険な状態にする
(14) 新世論調査で明らかになった世間が考える留学生の認識
(15) ロンドンの学生はイングランドのどの地域より学生生活に満足している
(16) 科学担当大臣:英国の官僚たちは中国と接点のある研究開発の見直しを行っている
(17) 大学と投資の専門家が英国のスピンアウトの状況を見直す
(18) 生活費危機が学業を直撃し、学生は貧困に直面
(19)新しい国際パートナーシップ基金の最初のプログラムに関する発表
(20)2023年度予算案発表を受けて
(21)政府は将来の科学技術に対して35億ポンドを投資
(22)UKRI、新しい人材とチームの活動計画開始
(23)英国を国際的なテクノロジー超大国にするための計画始動
(24)大学でのREF規則違反が“組織的”であることが判明
(25)英国学士院:増加するデジタル格差に対処するためデジタル一体性ユニットの成立を求める
(26)せわしない数か月の後、英国の研究開発は持続性が必要
(27)UCASは高等教育進学の競争激化の中、全国的な討論会を開始
(28)英国は成長加速のための初のAI白書でイノベーションで世界トップとなる方法を発表
(1)EUの研究プログラムの参加に関する研究開発機関の共同声明
2023年3月1日、英国大学協会国際部(Universities UK International: UUKi)はWindsor Frameworkに関する英国とEUによる原則合意に達したことを受けて、英国、アイルランド、その他欧州の研究、イノベーションや企業など幅広い各界の代表者たちがホライズン・ヨーロッパ、コペルニクス、ユーラトムを含むEUの研究プログラムの早急な参加を求める共同声明に署名をしたことを伝えた。
英国、アイルランド、その他欧州の研究、イノベーションや企業など幅広い各界の代表者たちはEU委員会委員長が強調した英国のホライズン・ヨーロッパ参加の支持をしたことを聞き、大変勇気づけられた。そして今こそ双方は迅速に英国の参加を目指して、再び前向きな協議において努力をし、2年以上続いている風前の灯火である状態の打開をしなければならない。
EUの研究プログラムの中で英国の場所の確保は、将来、世界をリードする研究、持続可能な成長と高レベルのスキルの強化には大変重要である。今それをしないのであれば、英国とEUにとってその成果は最高なものにならず、現在、存在する大きな問題となる課題に取り組む我々の総合的な努力が台無しとなってしまう。
ホライズン・ヨーロッパ、コペルニクス、ユーラトムを含むEUの研究プログラムの英国の完全参加は、研究やイノベーションにとって最良の成果であると我々は確信している。長い間、英国の明確にしてきた立場、そして政府は今そこに手が届くところにある目標を見失わないことが大切である。今、その重要な節目に到達し、EUは詳細な部分の協議に全面的に協力し、なるべく早く英国の参加を実現しなければならない。
UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI) のホライズン・ヨーロッパ保証制度により、短期的に参加の遅れを緩和し、英国を拠点とする研究者が引き続きEUの資金を獲得している。この保証制度やそのほかの措置があることで、話し合いが続けられ、参加への道を開けていた。
我々は将来に向けて、英国、EU、そして世界中の研究界が一丸となって気候変動から癌、メンタルヘルスに至るまで同じ重要課題に立ち向かっていく。ホライズン・ヨーロッパを通して現在進行中の研究協力を保証することは、英国政府と欧州委員会にとってこれらの課題の解決に資するものとなる。我々は政治的な意思と責任が持続することを強く求め、英国の参加が現実することを期待している。
署名機関:
UUKi news:
関連記事
Science Business 2023年3月2日 European research community calls for UK's swift association to Horizon Europe (欧州研究界が英国の早急なホライズン・ヨーロッパの参加を要求
18の署名団体が共同声明を発表して、できるだけ早くEUと英国が共同研究に取り組むように呼びかけた。
署名団体にはBritish Heart Foundation, Cancer Research UK, およびEUからも大学研究団体が名を連ねている。
欧州委員会委員長のvon der Leyen氏が、英国のホライズン・ヨーロッパ参加手続きを早急に取り掛かりたい旨を述べたことは、ホライズン・ヨーロッパの参加の前提条件で、大きな第一歩である。「過去2年間、EUの誰もが、EUの上層部から難癖が出ていると思っていた。」とLERUの事務局長であるKurt Deketelaere氏が述べた。
Deketelaere氏の希望の通り、英国のホライズン・ヨーロッパ参加を待っている人たちがいる。Cancer Research の政策担当部長であるOwen Jackson氏は、ホライズン・ヨーロッパの参加は「世界中のがんの研究者及び患者にとって非常に興味深いものである。」と述べた
しかし、Jackson氏は参加までには時間がかかることを警告し、研究者たちをこのまま中途半端な状態にしておかないためにも、EUとUKの協力を求めた。
しかし英国議会からRishi Sunak氏が合意に必要なだけの支持を得られるか、まだ不明である。英国下院で投票を実施することを約束し、野党である労働党からの支持があるため可決されるであろうが、Sunak氏の施策は党内のEU離脱派によって頓挫する可能性がある。一方で北アイルランドの民主統一党はこの合意内容の精査をすることを表明している。
EU側は規制を確認する必要があるため、更なる遅延が考えられる。その上、7年間のプログラムの初期の半分に参加できなかったので、ホライズン・ヨーロッパの参加費用の再交渉という報道もある。もし費用の再交渉を実施するのであれば、さらに参加が遅れる可能性もある。
欧州研究委員会のMariya Gabriel氏はScience Businessの取材で英国-EUの協定及び英国の参加に関してのコメントを控えた。
大学ネットワークのThe Guildの事務局長であるJan Palmowski氏は、英国の研究者に対してホライズン・ヨーロッパの資金獲得に応募するように述べた。
「もし英国の研究者たちが資金獲得をあきらめていたのなら、今こそ、再申請するときである。英国-EUの科学提携の付加価値が再度失われないためにも、英国の参加を実現するために即刻の行動が必要である。」と述べた。
英国の参加実現が目の前に迫っている中で、特にDeketelaere氏からスイスの参加に関して再協議を求める声があがっているという。
スイスも英国のようにEUとの関係の政治的な行き詰まりのため、参加を阻止されている。スイスの参加がないため、スイスはヨーロッパ大陸の科学インフラの調整をする研究インフラの欧州戦略フォーラムから除名された。
「英国の展開がスイスとその政府に重要な引き金となることを願う」とDeketelaere氏はいう。
「英国が声をあげて参加を推進したとき、スイスの研究者や産業界も同様であったが、スイス政府は沈黙したままである。」
Deketelaere氏は「スイスの参加に関しては今年10月に実施されるスイスの連邦選挙まで待つ可能性がある。」と語った。
「政治家たちは選挙が終了するまでEUに対する関心を示さないであろう。恐らくその時になってやっと議論が始まることになるであろう。」
Science Business:
European research community calls for UK's swift association to Horizon Europe
(2)英国とスイスのホライズン・ヨーロッパ参加を求める共同声明発表
2023年3月2日英国大学協会国際部(Universities UK International: UUKi)は英国とスイスのホライズン・ヨーロッパ参加を求める共同声明を発表した。
声明文内容:
我々は、以下の欧州大学の傘下にある機関としてこの共同声明において、ホライズン・ヨーロッパ研究プログラムの英国とスイスの参加に関する進展と、明確さの欠如に対する懸念を表明する。プログラムが開始して2年が経過し、進展を見せず、その遅れが、EUと英国、スイスとの研究機関の間の行われている研究の障害の原因となっている。
このような不透明性が続く中、いくつかのEUの研究コンソーシアムが、自身の研究が管理しきれないことや、そもそも資金獲得に至らないという恐れのため、英国やスイスを拠点とするチームを見放しているケースが増えている。我々はこのような状況を大変懸念し、ヨーロッパにおける世界的な課題に取り組むための準備や回復力の妨げとなることを予想している。
過去数年間、我々は世界的な感染の大流行に取り組んできており、ようやく世界は回復に向かっている。ヨーロッパは世界のどの地域よりもこの流行感染に対してうまく対処してきている。これはEU、英国、スイスの研究機関の協力によるものであり、Covid-19のより良い理解と効果的な接種の開発ができたおかげである。同様に気候変動の進行を止め、その最も破壊的な影響を緩和することは、安定した状況下での、我々の努力と連携の取れた研究パートナ―シップの組み合わせが必要である。このような問題に取り組むためにはEU、英国、スイス間でのネットワークや研究インフラが必要である。ホライズン・ヨーロッパに両国の参加がないのであれば、研究インフラに取り返しのつかない損害や、世界的に解決が必要な課題に対応するヨーロッパ全体の研究力やイノベーションの可能性が損なわれてしまう。
我々は広範な政治問題、特に北アイルランド議定書や単一な法的枠組みにより進展の欠如があったと理解している。全く研究とは関係していないが、それらの問題に取り組むことは大事である。我々は北アイルランド問題の解決を行い、共通点を見出し、英国とEU間で新たに努力することを歓迎する。2022年2月の連邦議会の新たな提案に対して実施された、将来のスイス-EUにおける関係の予備的協議を歓迎する。我々はそのような進展はホライズン・ヨーロッパとの二国間合意に向けた次の段階に続く機会であることを強調する。
優れた研究実績があり、学問の自由、研究倫理、民主主義に関して同様な信念を共有し、また、研究やイノベーションにおいて同様な信頼できる構造を持つことで、研究やヨーロッパの繁栄、安全保障、基本的な価値の維持と前進に最も役に立つことができる。現在の地政学的な状況や知識に関する安全保障が高まってきている中、我々を分断するものより、共通なものに焦点を当てることがこれまで以上に大切なことである。
以上のことより欧州委員会と英国政府、そしてスイス政府はホライズン・ヨーロッパ研究プログラムの参加に向けて、欧州内の研究・イノベーション界に明確さを提供することを懇願する。
署名団体:
Joint statement:
(3)研究開発の将来の英国の援助支出の決定が”保留“
2023年3月2日Research Professional NewsはGlobal Challenges Research Fund とNewton Fundの代替が近日中に決定されるという公式発表を伝えた。
政府の高官によると英国の国際援助予算によって資金提供されている主要な研究開発プログラムをどのように代替していくか、という政府の決定が保留になっていることが分かった。
Research Professional Newsは、政府が、政府開発援助による2つの主要なプログラムを停止し、国際科学提携を支援する新しいモデルに移行すると報道してから1年以上が経っている。
プログラム期間中に開発途上国での共同研究を支援し、20億ポンドの資金を持つGlobal Challenges Research Fund(GCRF)とNewton Fundは2021年末にどちらも終了した。しかしその代替の基金に関してはまだ明確ではない。
「資金提供される可能性のある各種のプログラムに、決定が近々されることを望んでいる。」と科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)の国際研究・イノベーション担当官であるAdam Jackson氏が述べた。
2月28日に開催された英国大学協会(Universities UK: UUK)のイベントでJackson氏は同省は「できるだけ早く決めたい。」そして、「政府開発援助(Official Development Aid: ODA)に関しては決定が保留されている。」と述べた。
支出は未だに”厳しい“
Jackson氏は近年のODAの支出の課題として、経済状態、政府財政の分配先、ウクライナへの支援の仕方などの問題を指摘した。
2020年、政府は総援助予算について、国民総所得の割合の0.7%から0.5%に引き下げた。この決定はGCRFやNewton などの実施していた研究プロジェクトの年間資金に対し、最大で70%の削減となった。
昨年11月に財務大臣であるJeremy Hunt氏は、ODA支出についてしばらくの間0.5%に据え置くことを発表した。
Jackson氏は「立場的には厳しい状況のままである。」ということを意味しているという。
英国国際科学パートナーシップ基金
科学担当大臣であるGeorge Freeman氏は、昨年12月の来日の際、英国国際科学パートナーシップ基金(UK International Science Partnerships Fund)を設立し、第一弾として1億1900万ポンドの投資で世界的な研究開発提携の機会を提供した。
政府は以前、新しい国際研究開発のモデルとしてODAや非ODAの資金を合わせることを発表している。
Jackson氏は「英国国際科学パートナーシップ基金の一部としてODAの資金を追求できる可能性はあり、他の機会の可能性もある。」と述べた。
また、「我々はODAの全体的な配分を待っており、それほど長引かないことを望んでいる。」と付け加えた。
Research Professional News: Decisions ‘pending’ on future UK aid spending on R&D
(4)次回のREFは“創造性の解放”、リサーチ・イングランドの会長が示唆
2023年3月2日Research Professional Newsはリサーチ・イングランド(Research England: RE)の会長が、次回の研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)の 関係機関の負担を減らすかもしれないとが示唆したことを伝えた。
REの会長は、REFの評価の改定計画の一環として、アウトプットの要素を削減し、ほかの要素を増加させることを示唆した。
REの会長であるJessica Corner 氏はREと英国の各独立政府のそれぞれの関係者はFuture Research Assessment Programme (FRAP)の一環としてREFの再編成に大変努力して取り組んでおり、6月中旬には更新される予定であると語った。
3月1日に開催された高等教育政策研究所(Higher Education Policy Agency: HEPI)とElsevier の研究会議で、Corner 氏は「これは将来のREFの初期の枠組みとなり、これからもっと詳細を詰めていくことになる。」と述べた。
特にCorner 氏は、プログラムは評価実施の研究文化の側面をいかに改革していくかに焦点を絞っていくつもりであることも述べた。
「REFにおいて、研究文化の側面や活動的なものの一部について提供することは健全でないことはわかっている。」と述べた
例えば「多分REFが期待する、個人の正確な業績を定義することに焦点を当てすぎて、役に立たない、創造性の評価の助けにならない、創造力を解放されない内容であったかもしれない。」
「また、研究に対するあらゆる貢献、つまり、私たちが始めようとしている世界的な課題の研究に非常に大きな貢献をしているすべてのチーム、すべての異なる人々を十分に認めていないかもしれない。」“
バランスを取り戻す
Frapチームによって現在検討されている評価はアウトプット、インパクト、環境のバランスの再調整が含まれている、とCorner 氏は答えた。
「アウトプットの要素を減らし、そのほかの要素を増やすということを考えている。」とCorner 氏は提案した。
またそのほかの評価として学術的な学術出版に固執するのではなく、「アウトプットの概念を、知識や理解の幅広い貢献をもっと重視するように広げることや、研究における様々な生産物・成果を検討する必要性がある。」と述べた。
Corner 氏はまたREFを準備する学術機関の負担を減らすための計画もあることを示唆した。
例えば、「提出物の作成、職員の確保など機関が行う必要がないようにできないかを検討している。」
「それらの機関に代わって現場の活動から負担を減らすことができないのか?」
Corner 氏のコメントはREFが改訂を必要とする分野として頻繁に指摘されている、研究文化の改革を求める研究界全体からの動きがある中で発表されたものである。
Research Professional News: Next REF could ‘liberate creativity’, hints Jessica Corner
(5)ホライズン・ヨーロッパへの参加不可の恐怖が再燃
2023年3月3日、Research Professional Newsはいくつかの報道で、英国首相はEUの研究開発プログラムへの英国の参加に懐疑的になっていることを伝えた。
英国の研究開発関係者は北アイルランドの貿易に関してEUと合意したのちにRishi Sunak首相がホライズン・ヨーロッパ研究開発プログラムへの再加入を取り消す可能性がある、という警戒が示された。
Financial Timesの報道によると、首相に近い関係者の話では、首相は研究プログラム参加に懐疑的になっており、”プランB”として知られている代替プログラムの実行も併せて検討される可能性があると示唆されている。
この報道は、欧州委員会委員長であるUrusula von der Leyen氏が「Windsor Frameworkが実施されれば、EUの研究開発プログラムへの英国の参加を確実にする話し合いをすぐにでも開始できる」と発言したことを受けたものである。
英国のホライズン・ヨーロッパと同様に原子力研究戦略のユートラムや地球観測プログラムコペルニクスが北アイルランドの議定書をめぐる論争のため2年間保留にされていた。
首相が躊躇しているという報道は、同週初めに合意が発表されて以降、プログラムへの早急な参加を呼び掛けてきた研究界にとって警告となった。
Scientists for EUというキャンペーングループの事務局長であるMike Galsworthy氏がResearch Professional Newsに語ったところ、「Rishi Sunak氏は慎重な態度を見せた方が賢明と思ったかもしれないが、実は真逆である。」と述べた。
「不思議なことに、文化の破壊と先見の明のなさにより、エラスムスプラスプログラムからの撤退を決定したのは、当時、財務大臣であったRishi Sunak氏自身であったことを我々は覚えている。」と英国政府がEUの学生交換プログラムからの撤退を決定したことに関して述べた。
「そのため、彼のホライズンに対する躊躇は英国科学界にとって大変警戒するべき影響を与えることになる。」
University of Manchester の材料物理学とイノベーション政策の教授であるRichard Jones氏はSNにの投稿し、「Sunak氏のホライズンへの再参加の躊躇は、貿易協定(Trade and cooperation agreement: TCA)より2年が経過し、財政面での見直しが必要という単なる認識であればよいのであるが、
もしそれが財務省により研究開発予算を事細かく管理したいことによるものであり、安定した複数年の予算合意を嫌がっているのであれば、それは問題である。」
EUとの交流の再開は“不可欠“
影の外務・英国連邦・開発省(Foreign, Commonwealth and Development Affairs )大臣であるDavid Lammy氏はTwitter でSunak氏の躊躇に対して「保守党はまた国民の利益よりも孤立したイデオロギーを優先している証拠である。」とコメントした。
「ホライズンのブログラムの参加を進めることは、英国の研究者たちが技術イノベーションにおける世界競争において重要なものである。」と付け加えている。
また一方で研究集約型の大学から構成するラッセルグループの会長であるTim Bradshaw氏によると、研究界は「英国とEUの双方で、英国のEUのプログラムの完全な参加が未だに優先であることを示唆する必要があるので、Windsor Frameworkの実施と平行し、話し合いを開始することができる。」と述べた。
「これからも課題は付きまとうであろうが、北アイルランドの議定書の進展は善意と政治的な解決の両方を行うことで早急に解決可能であることを示した。」と付け加えた。
科学担当大臣であるGeorge Freeman氏は同週、ホライズンの参加の決定はSunak氏に委ねられおり、他の政府関係者はホライズン・ヨーロッパの参加に関する詳細にとり掛かる前に、公正貿易法(Fair trading act: FTA)の現状を調べてから取り掛かるであろうことを述べた。Freeman氏はプランBも検討事項にあると述べている。
政府の広報担当者がResearch Professional Newsに対して答えたところでは、「Windsor Framework は北アイルランドの人々と企業に対して実行されるものである。英国内で商品の自由な流れを保証し、我々の一部である北アイルランドを保護し主権を守ることである。」
「将来の研究はイノベーションの提携に関することも含めて、様々な分野に関してEUとどのように建設的な協力の可能性あるか、引き続き話し合いを行う。」と述べた
Research Professional News: Fears renewed as Horizon Europe association thrown into doubt
(6) ホライズン・ヨーロッパ資金獲得者への保証の延長
2023 年3月6日 科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は英国を拠点とするホライズン・ヨーロッパの資金獲得者の保証期間を2023年6月までに延長することを発表した。
この保証制度は2023年6月末までに終了するすべてのホライズン・ヨーロッパで資金獲得をしたものに対して、資金受取期間中は英国のホスト機関において期間中の資金を全額受け取ることができるものである。
科学大臣であるMichelle Donelan氏のコメント:
「英国の世界クラスの研究者が優れた研究の継続するために必要な明確さと確実さを提供するために、8億8200万ポンド相当のホライズン・ヨーロッパ保証を、延長して6月末までの3か月の追加を行った。
資金提供を受けたものは英国を離れることなく資金提供を受けることができ、将来の共同研究の提供を保証し、ホライズン・ヨーロッパの参加もしくはほかの方法になった場合でも英国の研究者は支援されていることになる。
2月27日、英国とEUは北アイルランドの人々や企業のために実現可能なWindsor Frameworkに合意した。この協定は英国内での物流の自由な流れを保証し、北アイルランドの立場を守り、北アイランドの国としての主権を保護するものであった。政府はEUとともに今後も建設的に様々な問題に対して取り組みを継続し、今後、英国-EU貿易協力協定の下での進捗状況を見守りを続けていく予定である。
政府としては、共同研究に対する開放的な討議を引き続き行い、2年間の遅れからのEUの最近の開放的な話し合いの復活を歓迎している。しかし英国の参加に対する財政的条件に対してはまだ提案がない。
政府としては、研究プログラム参加を含む、様々な問題に対して迅速で建設的に協力する用意はできており、閣僚たちは引き続き、画期的な研究や海外のパートナーと共にイノベーションの促進ができるよう、英国全国の企業、研究者の利益を一番として検討を行っていく。
昨年、政府は経過措置の詳細を発表し、この措置を追求する必要が生じた場合に実施されることになった。この発表では、経過措置は現行の保証が終了した後に行われることが確認されており、資金ギャップはなく、対象となる成功済みの申請がサポートされなくなることはない。
プレスリリース:科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
https://www.gov.uk/government/news/horizon-europe-guarantee-scheme-extension-to-support-uk-rd
(7)科学技術でより良い英国として前進する計画を発表
2023 年3月6日 科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology:DSIT)は、英国首相と科学大臣は2030年までに英国が科学・技術大国としての地位を確立するための政府の案を発表した。
新しい科学技術構想(Science and Technology Framework)は新たに設立した科学・イノベーション技術省の最初の重要な任務であり、10の主要な活動を通じて今後10年間に英国を世界の科学技術の最前線として位置づけをし、政府全体で協力を行い挑戦していくものである。
これらを実施することで、高収入な仕事の創出、最先端産業の経済成長、より良い医療から安全保障まで人々の生活の向上のため、政府は産業革新と世界のトップを行く科学研究のための正しい環境を作ることになる。
科学技術構想の中心の10の事項で下記のとおりである。
この新しい構想の実現は、新規および既存の5億ポンド相当の助成金プロジェクトの多くからまず取り掛かり、既存の流れを変えるような技術によって世界のトップを行くスキルとインフラの確保に貢献する。
英国首相Rishi Sunak氏のコメント:
時代の先端を行く科学とイノベーションは何十年も我々のDNAに存在していた。しかし競争が激しくなっていく世界では、集中力、ダイナミック、リーダーシップのみでしか率先することができなかった。
そのため我々は、2030年までに世界の科学技術超大国としての地位を固めるため、大胆な新しい計画を基に、人工知能からスーパーコンピュータといった変化し続ける技術の追求から優秀な人材や成功に欠かせないツールの確保まで、10の主要行動を定めたのである。
我々がどんどん革新していけばいくほど、我々の経済はどんどん成長していく。高収入の職を創出、我々の安全保障を保護し、国全体の生活を向上することができる。
科学、イノベーション、技術大臣のMichelle Donelan氏のコメント:
イノベーションとテクノロジーは我々の未来である。生産性や賃金の上昇や医療の変革、光熱費の削減、そして最終的には英国の雇用の創出と経済成長をもたらし、公共サービスにもっと資金が投資できるようになるための資金力を提供するまで、すべてにおいて重要なカギである。
だから、我々は英国政府と民間企業のパートナーとで全力を振り絞り、科学技術超大国を目指す。人工知能や量子などの未来産業は、世界のリーダーになることでしか、英国一人一人の生活の向上をすることができないからである。
科学技術戦略構想を主導する最初のプロジェクトは下記のとおり:
この戦略構想は産業界の専門家や学術者たちとの協議によって、より強い成長、より良い雇用、今日や明日の課題に取り組むための大胆な発見の実現のため計画された。
この計画はDSITが主導し政府全体の取り組みで未来の5つの技術(量子、AI, 工学生物学、半導体、未来の通信)と生命科学、グリーンテクノロジーについて英国の世界トップクラスの研究とイノベーションシステムの能力を始めて1つの部門に集約したものである。
また同日の政府が2023年6月30日まで英国のホライズン・ヨーロッパの申請者に対して資金の保証の延長の約束を発表した。この日以前に募集し資金獲得に成功したものは引き続き資金が保証され、研究・イノベーションにおける重要な研究やイノベーションを継続することできる。
科学、イノベーション、技術は経済成長と生産性の原動力となる。英国の将来の労働生産性の向上の半分以上は、利用可能な最も優れている技術を使うことで生み出され、残りは技術をもっと押し上げるものであるとされている。1ポンドの公的研究投資額は長期的に2ポンドの民間研究投資に活用される。
同日の発表は、科学技術を支援する既存の政府の努力の上に作り上げられる。これにはハイリスク、ハイリターンの研究開発に資金提供する先端研究インベンション局(Advanced Research Invention Agency: ARIA)、グラスゴー、マンチェスター、ウエストミッドランドの国や知育のパートナーを招集し、研究やイノベーションの主要な世界の競争力の中心の成長を加速するパイロットに1億ポンドの投資、世界クラスのインフラの本格展開、成長を促すためのデータの価値を解放し、英国全体でのイノベーションと社会的な利益をあげ、デジタル変革を活用し、もっと包括的で競争力があり、革新的なデジタル経済を築き上げる英国デジタル戦略(UK Digital Strategy)も発表した。
政府はワイアレスインフラ戦略などを含む戦略の発表を近々にする予定である。
備考:
政府は同日の発表された研究開発とイノベーションの組織的な状況の独立したレビューの提言に関しても順次対応していく予定である。
プレスリリース:科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
関連記事 2023年3月6日掲載
UK Research and Innovation: £250m to secure the UK’s world-leading position in technologies of tomorrow
https://www.ukri.org/news/250m-to-secure-the-uks-world-leading-position-in-technologies-of-tomorrow/
(8) 研究、開発、イノベーション(RDI)の組織的な状況:独立したレビュー
2023 年3月6日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、英国の組織で研究開発やイノベーションに取り組む組織を検証し、英国の研究組織の状況を最大限に活用して、効果的で持続可能、世界的な課題に確実に対応するための提言を行った報告書を発表した。
概要:
"研究、開発、イノベーションの組織的な状況のレビュー(Research, development and innovation organisation landscape: an independent review)"は2021年7月の英国イノベーション戦略の中で触れられた。
この独立したレビューはFrancis Crick Institute の所長で、ノーベル賞受賞者のPaul Nurse 卿の主導で行われた。
このレビューの結果と提言は英国の科学がますます強力になり、長期的な持続可能な成長、生産力、繁栄をもたらし、今後長期にわたり国際的な競争で勝ち残ることを明確にすることが目的である。
付託事項にはレビューの最初の目標、目的やその範囲が定義されている。
Research, development and innovation (RDI) organisational landscape: an independent review:
関連記事 2023年3月7日掲載
WonkHE: Culture change in the Nurse review
https://wonkhe.com/blogs/culture-change-in-the-nurse-review/
(9) 英国はSTEMの大国としての地位を固めようとしているが、投資が不足する可能性
2023年3月7日Pie newsは政府の発表したScience and Technology Frameworkに関して報道した。
英国の大学は国際的なビジネス投資の誘致で”特別な役割”を持っており、地域社会への利益、雇用の創出、英国研究の世界的な広がりの増幅のため協力が必要であると、新しい報告書は述べている。
この報告書は“2030年までに英国を科学技術の超大国へとする英国の戦略で、投資の誘致に関する提言があげられている。
10項目の計画には、変革的な技術の追求や、優秀な人材を結集し、成功に必要なツールを手にするなどの方法が含まれていると、英国首相であるRishi Sunak氏が述べた。
今週のTimes紙に寄稿したSunak氏はScience and Technology Frameworkを開始する一方で、「創造、発展、業績、新技術の競争は世界規模である。」と何度も繰り返している。
「2030年までに英国が科学技術の超大国としての地位を確実なものとしたい。」とSunak氏は述べている。
「つまり、我々は世界のラボとなり、優秀な科学者や先見の明のある起業家の本拠地となるということである。また中国のように権威主義的な管理下で行われる科学技術とは反対に、開放性、連帯、機会における科学技術のビジョンを追求する。」
研究開発の投資はこの内閣終了までに年間で200億ポンドに達すると首相は述べており、政府は新しい省庁である科学、イノベーション、テクノロジー省や先端研究インベンション局(Advanced Research Invention Agency: ARIA)などによって、「政府の仕事の仕方が変わる。」と述べた。
「我々は研究において世界クラスの実力があり、世界でも第3番目の大きな技術エコシステムを持っている。」と付け加え、“新しい国家目的“として長期的な科学技術計画を開始する、と述べた。
この戦略は「EU圏の外側にいるという強みを活かし、特に規制に関しては、これまでとは異なるより良いやり方を行う。」と述べた。
この対策は「イノベーションへの投資の促進、世界からの優秀な人材の誘致、AIのような画期的な新しい技術の可能性の獲得を目指す」ために3億7000万ポンド以上の資金が充てられている。
高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)とMidlands Innovation によって発表された報告書“The role of universities in driving overseas investment into UK Research and Development”では「英国の世界的に有名な高等教育機関におけるレベリングアップの可能性を解放する」ことを可能とすると述べている。
報告書では、外国直接投資(Foreign Direct Investment: FDI)の誘致で大学はすでに重要な役割を果たしているにもかかわらず、地域のパートナーや政府とより良い提携をすることでその役割を「拡大し、強化」できるとしている。
また報告書の提言として、政府は研究開発投資家で世界の上位200位をターゲットにするべきであると述べている。
新しい政府の省庁は、科学技術への外国直接投資を確保するため、まったく新しく、より野心的な方法を始めることができると提言されている。
また報告書は外国投資を誘致するための計画を既存の研究や大学全体の戦略に意識的に埋め込むこと で、外国直接投資の獲得を大学の優先事項に組み込むことができることを指摘している。
大学はどのようにスピンアウトの実績を統合するかを検討し、研究の商業化のための方法を開発し、より多くの投資を誘致するため“群れを成して獲物を追う”ことを引き続き行うべきである。
HEPIの所長であるNick Hillman氏は「レベリングアップをしながらも、もし英国に更なる経済的に大きな成長がもたらされるなら、海外からの新しい投資をもっと受け入れる必要がある。」と述べた。
しかし新しい政府の戦略は英国の研究界が、EUの研究助成金プログラムであるホライズン・ヨーロッパの英国の参加の確認を待っている最中に発表された。研究者たちはWindsor Frameworkが発表された後、英国がすぐにでも参加を求めるだろうと期待していた。
Sunak氏は955億ユーロの科学プログラムへ再参加するための次の段階に関してはまだ何も答えていない。代わりに政府は英国からのホライズン・ヨーロッパへの応募者に対しての支援を2023年6月まで延長することを発表した。
科学大臣であるMichelle Donelan氏は3月6日にEUはまだ「英国の参加に関する財政的な提案を申し出ていない。」と述べ、もし参加が可能であった場合の経過措置を指摘した。
Francis Crick Instituteの所長でノーベル賞受賞者であるPaul Nurse 卿はプランBという選択肢に対して、「途中で挫折する」と警告している。
Nurse氏が主導し最近発表された”研究・開発・イノベーションの組織的な状況のレビュー“で、”国際提携を行う上での障害”としている。
EU離脱は英国を2度とホライズンに参加できなくなる“予期せぬ結果”で、ヨーロッパの研究コンソーシアムにいる英国を拠点とする研究者を巻き込み、かなりの損害がすでに出ている、と報告書にある。
また海外から来ている英国を拠点としている研究者は、英国はもはや研究をすることを歓迎している国ではないと指摘しており、移民制度の官僚主義的な問題は英国以外の国で仕事を探す者を生み出しているという。
英国は2014年から2020年のホライズン2020では、全助成金の12.1%に当たる70億ユーロを獲得したと報告書で述べている。
レビューではホライズン・ヨーロッパからの資金と同等となる代替の国内資金プログラムでは「同様な共同研究の再現やホライズン・ヨーロッパやその他の研究プログラムの名声を得ることは不可能である。」と何度も指摘されている。ホライズン・ヨーロッパに参加できないことで英国の立場に損害を与え、世界からの優秀な人材獲得の障壁が高くなる危険性がある、と述べている。
RDIのレビューでは大学における公的研究助成金の財政的な持続可能性に関しても至急取り組む必要性を指摘している。
一方で留学生の学費は英国の大学研究を支えているが、「いつでも信頼できて、いつもあるというわけでもないので、十分な注意が必要である。」と指摘している。
「一方で英国の高等教育機関の強みは多くの留学生を誘致することであるが、特に特定の国に集中しているのであるなら、英国の研究を支えるために、この大きな規模であるが潜在的に不安定な財源に過度に依存することは懸念の原因となる。」と述べている。
Pie news: UK seeks to cement STEM superpower status but investment may be lacking
https://thepienews.com/news/uk-cement-stem-superpower-status-but-investment-may-be-lacking/
(10) 新しい英国の科学超大国計画にホライズン・ヨーロッパ参加が指摘されていない
2023年3月7日 Science Businessは政府の新しい科学技術構想に関しての分析を行った。政府が将来の科学戦略における10項目を発表したが、EUの研究プログラム参加に関して述べていないため、英国の研究者にとってEU離脱の悪夢はまだ続くことになる。
科学、テクノロジー、イノベーションへの投資を通して経済成長や生活の向上、また科学の超大国としての英国の地位を確固たるものにすることを目標にあげられた政府の10項目の計画はそのビジョンとしてホライズン・ヨーロッパ参加の明記がないことが目に付く。
EU離脱後の貿易協定の北アイルランドの立場をめぐる対立が解決できれば、ホライズンヨーロッパの参加に対する門戸が開けるはずであったが、英国政府はすでにEU研究プロジェクトに興味がなくなったのではないか、という心配が研究界で巻き起こっている。
科学技術戦略構想(Science and technology framework)とともに政府はFrancis Crick Instituteの所長でノーベル賞受賞者であるPaul Nurse 卿による英国の研究開発の状況に対する独立したレビューも発表したが、それによるとホライズン・ヨーロッパの参加は必須であると指摘している。
研究集約型で、最も近い隣国との研究者同士の自由なアイデア、データの交換は英国の研究開発やイノベーションにとって重要なため、EUとの提携関係は保護、維持、拡大が必要である、とレビューは指摘している。
「そのほかの国際提携の協定はホライズンと比べれば不十分であろう。国際提携は拡大するべきだが、特にホライズン・ヨーロッパの参加が一番の優先順位である。」とNurse氏は述べている。
科学技術が経済成長に果たす役割を政府が認識したことは歓迎するが、Nurse氏の同僚たちはホライズン・ヨーロッパに完全に参加することが優先であることに同意してる。
「政府が研究界に長期的な安定を提供する努力をするのであれば、次に取り組むことは英国のEU研究プログラムへの完全参加の確保が重要となる。」とAcademy of Medical Sciences の会長であるAnne Johnson氏が述べた。
「新しい戦略において政府の各省が部門を超えた協力を行うことを強調していることは、非常に素晴らしいことではあるが、英国が欧州全体で研究者同士で協力することの方が重要である。」とUK Dementia Research Institute の所長であるBart De Stooper 氏が述べた。「神経変性疾患を専門とする英国のトップを行く生物医学研究機関として、我々はホライズン・ヨーロッパの完全参加が進展することを最も強く願っている。」と述べた。
ロビー団体のCampaign for Science and Engineering の理事長であるSarah Main氏は”ホライズン・ヨーロッパ参加によって10項目の計画の「達成が加速する」と述べ、王立協会(Royal Society)の会長でのAdrian Smith氏は「EUによって障害がなくなった今こそ早急な参加を」と呼びかけた。「完全な参加に取り組むという首相からの確約が必要である。」と述べた。
ホライズン・ヨーロッパに関する言及は脚注のみで、政府はホライズン・ヨーロッパ応募者で資金獲得したものに対しての英国からの保証を6月末まで延長するというものだけであった。
資金受取の延長は歓迎するものではあるが、「単なる応急処置でしかない」、とSmith氏は述べた。
英国のホライズン・ヨーロッパの参加は2年間実現しておらず、これは英国とEUが単一市場の北アイルランドの立場について揉めていたためである。この問題は2月末にSunak氏と欧州委員会のVon de Leyen氏によって署名されたWindsor Frameworkの合意によって解決された。
不安を煽る
英国首相であるRishi Sunak氏が英国の研究資金がEUに流出することに賛成していないというメディアの報道で、英国の科学界の不安が煽られている。Sunak氏自身がTimes紙への新しい科学技術戦略構想に関して寄稿したが、その中でホライズン・ヨーロッパに関しては述べられておらず、BBCは首相は単独で行くプランBに賛成しているという報道がなされた。
新しく科学大臣に任命されたMichelle Donelan氏はBBCのインタビューに対して、「政府はホライズン・ヨーロッパ参加に関して“逸脱”をしていないが、しかし受け入れ可能な有利な条件でないと合意はできない」と述べ、また「研究者たちがまた2年間悪夢の中にいないようにするため、早急な合意が必要である。」とも述べている。
早急な合意を阻んでいるのは、英国政府の望む、北アイルランドの議定書をめぐり政治的に一致しなかった2年間分の財務貢献の免除の要求である。
今年2月、英国財務省に過去2年間にホライズン・ヨーロッパへの支払いとして充てていた16億ポンドが返金された。
Donelan氏は「過去2年間参加のために頑張ってきた。そのために資金を確保していた。」と答えた。「Windsor Frameworkで前進し、EUからの反応もとてもいい。EUとの話し合いには応じるが、我々にはあらゆるシナリオに応じたプランBを開発してきており、その責任もある。」と述べた。
長引く悪夢
海峡を隔てた2つの研究界は今回の合意により早急なホライズン・ヨーロッパへの参加の道が開けると願ったが、その交渉にこぎつけるまでまだ時間がかかり、英国とEUの研究者にとってこの悪夢がまだまだ続きそうである。
LERUの事務局長であるKurt Deketelaere氏は、欧州研究会議とMarie Curie の学生や研究者交流プログラムを含むホライズン・ヨーロッパのPillar I への参加を英国政府が要求する可能性は、カナダやそのほかの国がホライズン・ヨーロッパのPillar IIを通じて資金提供する研究提携プロジェクトに焦点を当てるものとは対照的であることを指摘した。しかしPillar Iは「英国が常に大きな成功をしてきた」プログラムの一部であると述べた。
英国政府の週初めの声明で、「迅速に、建設的に」参加に向けた姿勢があることを述べていたが、まだそれに対する具体的な提案はない。「閣僚たちは英国のビジネスや研究者を一番と考えて、彼らが画期的な研究を進め、国際パートナーとともにイノベーションを推進できるようにし続ける。」と述べている。
英国とEUの研究界は英国とEUの政策立案者に対して英国の早急なホライズン・ヨーロッパ参加を呼び掛ける声明を発表した。
Sunak氏はスコットランドの高等教育大臣のJamie Hepburn氏によるDonelan氏に宛てた書簡で「スコットランドにおいてこの分野の更なる損失を避けるためにも」英国のホライズン・ヨーロッパ参加を求められた。
Nurse氏は政府がホライズン・ヨーロッパの参加に関して新しい戦略構想で述べなかっったが、ホライズン・ヨーロッパの参加に関しては前向きに見ていることを述べている。「Sunak氏が注意深く考える時間がなかったかもしれない。特に北アイルランドの議定書のことに取り掛かっていたから。」と言う。
Nurse氏はSunak氏は現在上級の研究者からこのことについて直接連絡を取っており、「首相は分別のある人であり、ちゃんとメッセージが届いたなら、参加したいと思うであろう。そのため参加すること自信がある。」と述べている。
Science Business: UK’s new science superpower plan makes no mention of joining Horizon Europe
関連記事 2023年3月15日掲載
Research Professional News : On international ties, UK research needs plans A and B
(11) 2025年から学生の財政制度が大きく変わる
2023年3月7日教育省(Department for Education: DfE)は社会人が生涯を通してスキルアップや教育を続けるための柔軟な新しい制度を発表した。
学生財政制度の改革が行われ、仕事をするうえで必要な訓練や再教育、スキルアップに対する柔軟なローンなど、多くの英国国民がその恩恵を受けられることになる。
生涯ローン資格(Lifelong Loan Entitlement: LLE)はより多くの人に自分に合った方法で勉強ができる機会を与え、これまで高等教育に進むことなど考えたことがない人々に対して機会を広げるものである。これにより、育児や仕事と勉強の両立を支援し、社会流動性に改革をもたらし、スキル格差を埋めることを可能とする。
同日、政府は世界最先端の計画の下、2025年から、人々は仕事を退職するまでの期間、自身の状況に合わせて18歳以降の教育の4年分相当(現在の学費で37,000ポンド)のローンの利用ができるようになり、これはまさに学生財政制度の変革であることを発表した。
ローンはフルタイム、パートタイムに関わらず様々なコースに適用され、学位や高等技術資格の取得からモジュール受講に至るまで学費として利用できる。これはフレキシブルなトラベルカードのようで、片道切符ではなく、自分の都合で勉強を始めたり停止したりすることができるものである。
学生は自身の学習状況を把握でき、個人アカウントにどれだけ資金の残金があるかを確認し、その資金を利用しコースやモジュールの情報を入手することができる。それは銀行口座のように運用され、オンラインで利用ができる。
生活費ローンは、初めて、モジュールのコースを含む多くの技術系のフルタイムおよびパートタイム学生も利用ができるようになった。これにより従来のフルタイムの学生同様の制度となり、あらゆるバックグラウンドの人々に対して新しい学問や訓練の機会を開放することになる。
既に学生ローンを用いて高等教育を受けている人でもこの学生ローンの利用は可能である。新しい制度の下、再び学生身分となる場合は、現行の制度では認められていなかった、以前学んだレベルと同等かそれ以下のレベルの勉強も開始できるようになった。例えば2025年から、歴史学の学位取得で学生ローンを利用した者が、ソフトウエア開発の高等技術資格取得の資金を得ることができるようになる。
この制度の改定によって人々は生涯を通じて学ぶ機会が得られ、学習機会の増加により、近い将来、労働者も仕事の必要性に合わせてスキルアップが可能となった。
教育大臣であるGillian Keegan 氏のコメント:
「私自身、技能実習制度(Apprentice)から教育大臣となるまでの道のりで、再教育やスキルアップを何度も行ったため、生涯学習の恩恵を身に染みて感じている。
生涯学習はキャリアアップを図る上で不可欠であり、スキルギャップを埋め、経済を活発化させるためにも必要不可欠なので、この学生財政制度の改革は重要であった。
生涯学習ローンは人々に対し、生涯を通して柔軟な学習やスキルアップの機会を提供し、キャリアとは決して既に決められたレールの上にあるものではないことを認識させることが可能である。これを利用することで、継続的な学習や、高等教育に関する見解、それらの教育の対象者に対する文化的な変革も促進することになるであろう。」
生涯ローン資格(LLE)は2025/26学事年度から新たに開始される。
同日の発表された協議回答書で政府が確認した点は:
Department for Education:
https://www.gov.uk/government/news/student-finance-to-be-radically-transformed-from-2025
関連記事① 2023年3月7日掲載
BBC News: Students finance: Remote learners left out of lifelong loan plans
https://www.bbc.co.uk/news/education-64841402
関連記事② 2023年3月7日掲載
Russell Group: potential of LLE could be “transformational”
https://russellgroup.ac.uk/news/russell-group-potential-of-lle-could-be-transformational/
(12) 英国のイノベーションに海外から投資を誘致するため、大学のレベリングアップの可能性を解放
2023年3月7日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)とMidlands Innovationは、国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)と英国大学協会国際部(Universities UK International: UUKi)の支援の下、ロンドンで新しい報告書の発表を行った。
Alexis Brown博士の報告書である“The role of universities in driving overseas investment into UK Research and Development (英国の研究開発の海外からの投資を促進する大学の役割)”は、英国の世界的に名声を誇る高等教育機関のレベリングアップの可能性を高め、国内全土への国際投資の誘致に役立ち、大学と政府間の協力の枠組みを示している。
著者の詳しい分析、及び調査と、ミッドランド地方で行われている試験的な試みを利用し、この報告書は英国全土の大学にめぐるイノベーションの集合体へ、もっと外国直接投資(Foreign Direct Investment: FDI)を誘致することで、地域経済の長期的な発展を提供する機会を多く与えている。報告書は、大学の持つ世界的なコネクションをよりよく活用し、経済発展や雇用創出の促進のための投資を誘致することで、直接それらの地域に実際的な利益を多く与えている。
研究開発の中にFDIを確実に取り込むため、大学、地域社会、政府の間でもっと野心的で連携的な考えを目指す国家的なプログラムや政策構想を提案し、全世界からの国際的なベストプラクティスを学ぶことも含めている。
また報告書は、大学は既に英国にFDIを誘致する上で重要な役割を果たしているという証拠を発見したが、この役割を拡大し、また、改善すべき明確な側面を特定し、政府、大学、地方経済成長機関に対して多くの提言をしている。それは以下のとおりである:
大学には、投資を呼び込む研究エコシステムの基盤を提供するだけでなく、産業界との連携やスピンアウトのための熟練した卒業生のパイプラインを提供するという、ユニークな役割があることを報告書は示している。この提言は、大学を中心としたイノベーション集合体の拡大を支援することで、ロンドンや南東部以外の地域経済のレベルアップに役立つと考えられる。この報告書は、Midlands Engine Partnershipを含む17の大学とパートナーの提携によるMidlands Pilotに50万ポンド近く投資を政府が発表したとき同時に発表された。これはMidlands Innovation が主導し、Midlands Enterprise Universities の支援によって行われ、ホスト大学はUniversity of Nottinghamであった。この試みは地域全体の大学が関わる研究開発投資提案の特定と開発に役立つものである。
Higher Education Policy Institute:
(13) ATAS審査制度の遅れは優秀人材や研究プロジェクトを危険な状態にする
2023年3月8日、Russell Groupはビザ取得前のチェック体制に深刻な遅れが生じ、医学、工学、コンピューターサイエンスなどの重要な分野の研究が危険にさらされ、英国の科学大国としての野望が損なわれていると警告した。アカデミック・テクノロジー承認スキーム(ATAS)に申請する学生や研究者のビザ承認までの待ち時間は、2021年と比べて極端に増加しており、個人が申請の回答を待つ間、何か月も研究活動が滞ってしまうため、大変優秀な研究者達が重要な研究プロジェクトから撤退したり、研究費の提供が中止される原因となっている。
ATASは大学院レベルの幅広いSTEM分野で就業を希望する学生や、職員の身元を確認する制度である。しかしこの制度は2021年と2022年において身元確認に要する期間が増え、また、政府の資金不足が続いていることもあり、今年もさらにビザ承認までに時間を要することが心配されている。
様々な大学、高等教育機関で構成されるラッセルグループに所属する機関のうち21の高等教育機関において、1,450人の学生と職員を対象とした調査では、ビザ取得に要する時間は2021年と2022年で大幅に増加しており、承認まで10週間以上かかることが明らかになった。
調査で分かった内容:
また、回答者からはアドバイザーからの連絡不足、英語を母国語としない人々に対する申請書の質問項目の不明確さ、不適当なガイダンス等により、かなり多くの重複申請や書き間違え等が発生し、ビザ申請に更に時間がかかる原因となっているという意見も寄せられた。
ラッセルグループは、2023年の学生申請期間の前にこの問題に早急に取り組むよう、政府に呼び掛けている。具体的には、政府に対し、大学と協力してガイダンスの強化、申請書の改定、プログラムを管理する部署に対して適切な資金を与えることを求めている。大学は国家安全保障の必要性を認識しているが、迅速に審査を行い、英国に世界から優秀な人材を誘致する努力を無駄にしないようにすることが重要であるとしている。
2023年3月1日にラッセルグループ、英国大学協会国際部、UKCISAやUCEAのトップが、外務省の大臣であるLeo Docherty氏に対して書簡でATASの遅延による悪影響を強調し、2023年の申請応募期間を前にして問題の対処を求めた。
備考:
この調査は1,196人の職員と学生(2022/23学事年度:663人、2021/22学事年度:553人)と263人の申請者のサポートをする職員(誘致や学生支援サービスの携わるもの)の合計1,465人の回答である。
RUSSELL GROUP:
関連記事 2023年3月15日掲載
Guardian: 1,100 scientists and students barred from UK amid China crackdown
(14) 新世論調査で明らかになった世間が考える留学生の認識
2023年3月9日英国大学協会(Universities UK: UUK)がPublic First に委託した、新しい世論調査によると、英国国民は合法的移民の削減を他の緊急課題と比較して優先的に考えておらず、留学生の数を削減することにも賛成していないことが明らかにな った。
質問に対して、多くの回答者(64%)は現状維持かもっと留学生を受け入れるべきと考えており、回答者全体のたった9%が学生と研究者の渡英を奨励しないと考えている。
また、一般人は英国に対する留学生の貢献を強く支持している。多くの割合(62%)で留学生は英国で得た以上のものを英国経済にもたらしていると考え、43%は、英国での就学後に良い印象を持って母国に帰る留学生を受け入れることで、英国の外交に恩恵をもたらしていると考えている。この意見に反対だったのはたった11%あった。
移民法の改定の可能性があることとは反対に、世間では合法的な移民に関しては政府にとって最優先課題であるとは考えておらず、生活費の危機、NHSの圧力や救急車到着の待ち時間等、もっと優先に考えるべきであることが明らかになった。
UUKの最高責任者であるVivienne Stern氏のコメント:
「この新しい世論調査は世間での移民法、特に留学生に対する意識は、政府が考えているようなものではないことを明らかにした。
英国国民は留学生が英国の経済、教育機関、研究成果に多大な貢献をしていること、また、英国の国際的な評判に多大な利益をもたらしていることを理解している。私たちの国際教育機関は国民に愛されており、政府の政策もそれに倣うことを望む。」。
Universities UK:
https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/new-polling-reveals-public-perception
(15) ロンドンの学生はイングランドのどの地域より学生生活に満足している
2023年3月9日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)とLondon Higher が発表した報告書“Living and learning in London: What the HEPI/ Advance HE Student Academic Experience Survey tells us about life in the capital (ロンドンでの生活と学習:HEPI/Advance HE による学生学術経験調査による英国首都での生活実態)によると、ロンドンの学生は他のイングランドの地域よりも自分の経験が期待以上であったと回答していることが分かった。
また、ロンドンの学生は最も幸福度が高く、10点満点で9点または10点と評価する学生が、英国の他の地域よりも多いことがわかった。本報告書では、ロンドンにある多くの高等教育機関で学ぶことがどのようなものか、また、学生生活のさまざまな側面が、英国の首都のさまざまな人口集団にどのような影響を与えているかをまとめている。本レポートは、ロンドン留学に関する一般的な誤解を解き、ロンドンで学ぶ学生が実際に経験することを紹介している。ロンドンの学生は、他のイングランドの地域の学生よりも、自分の経験が期待以上であったと答える傾向が強いだけでなく、同じコースや教育機関をもう一度選びたいと答える傾向が北西部の学生と並んで高く、自分の生活に非常に満足していると答える傾向が英国の他の地域の学生よりも高いことがわかっている。その他、全国的なデータから、ロンドンの学生に関してわかったことは、以下のとおりである。
ロンドンの少数民族の学生において、学術経験は期待以下であったとし、その原因の多くは教育の質、及び対面による同級生との交流不足であった。また、ストライキは全体の満足度を下げる予想外の問題として回答されている。
しかし、全体的に見ると、ロンドンの学生は、英国の他の地域の学生よりも、大学卒業後の生活について準備ができていると回答する割合が高い。これは、教育機関が提供する機会と、首都の幅広い雇用機会の両方によるものと考えられる。
Higher Education Policy Institute:
(16) 科学担当大臣:英国の官僚たちは中国と接点のある研究開発の見直しを行っている
2023年3月9日Research Professional Newsは科学担当大臣が知的財産の取得に関して“強引であることが分かっている”組織に対する調査を約束したことを伝えた。
科学担当大臣であるGeorge Freeman氏によると、英国政府は現在、中国との研究・技術革新の関係をすべて見直していることを述べた。
Freeman氏は、3月8日の英国下院での演説で国内の資金調達機関であるUKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)からこの件に関する詳細な評価を「たった今受け取ったばかり」であることを話した。
Freeman氏は、安全保障担当大臣であるTom Tugendhat氏とともに、「強引に知的財産を国際的に取得していることが分かっている」組織について、この評価を用いて検討すると述べた。
このニュースは知的財産の盗難や研究成果の軍事利用等、研究の安全性に対する世界的な懸念が高まっていることを背景としている。
昨年行われたロシアとの研究開発関係の見直しは、イギリスとロシアの国家的な協力関係に対する科学的制裁に先立ち行われたものである。Freeman氏は、英国は研究の安全性に対して「体制を強化している」と述べ、2022年に国際共同研究を行う研究者を支援するための研究協力アドバイスチームを内閣府に設置したことを強調した。
「研究者全員が警察官になることを期待しているわけではないが、有利な研究契約を結ぶ前に十分な注意を払うことを期待しており、現在ではそれが求められている」とFreeman氏は述べ、内閣府の機関が発足以来350件の問い合わせに対応してきたと付け加えた。
Research Professional News:
(17) 大学と投資の専門家が英国のスピンアウトの状況を見直す
2023年3月9日英国財務省(HM Treasury )は、大学の研究を商業的成功に導くためのベストプラクティスを明らかにするため、専門家が任命されたこと発表した。
英国が科学技術大国になるという野望を達成するために、大学や投資家をリードする2人の専門家が、大学研究を商業的成功に導くためのベストプラクティスを特定するために任命された。
University of Oxfordの学長であり、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)の医学研究会議のメンバーでもあるIrena Tracey CBE教授と、British Private Equity & Venture Capital Association (BVCA)のVenture Capital Committeeの議長を務めているAndrew Williamson博士は、大学のスピンアウト(大学研究によって生まれた企業)のベストプラクティスを特定するために、大学、投資家、創業者と協議する予定である。
このような革新的な科学技術企業への融資は、この10年間で経済成長を牽引する高品質の科学技術ビジネスや、スピンアウトのパイプラインを強化するという観点から、英国科学技術戦略構想(UK Science and Technology Framework)において重要な信念となっている。
このレビューは大学全体の成果の評価を行い、スピンアウトや大学の知的財産のライセンス契約におけるベストプラクティスを特定することで、未来の革新的なビジネスを生み出し成長させるという最前線における英国の役割を維持し、この分野において継続的な成長を促進することを目指している。
英国の大学機関は世界をリードする存在であり、経済成長を支え、国全体のイノベーションを促進する上で不可欠な役割を担っている。また、研究の商業化も過去10年間で増加傾向にあり、英国大学のスピンアウトへの投資は5倍以上も増えて、2021年では50億ポンドとなっている。
同日に発表された見直しは、それらの強みの上に築き上げられ、米国などの他の主要なスピンアウト制度との国際競争力を高めることを目指すものである。
財務大臣のJeremy Hunt氏のコメント:
「英国の大学は世界最高水準であり、イノベーションや経済成長の重要な原動力となっている。
英国が世界の次のシリコンバレーになることを望み、そのためには、政府がスピンアウト企業の成功を支援する必要がある。Tracey教授とWilliamson博士の専門知識は、適切な支援を確実に行う上で、非常に貴重なものとなるだろう。
科学・イノベーション・技術省の大臣であるMichelle Donelan氏のコメント:
「英国の大学は、研究分野において長年にわたり世界をリードしており、世界のトップ10大学のうち4校が英国を本拠地としているのは偶然ではない。とはいえ、我々の世界をリードする研究体制が、期待されるようなゲームチェンジをもたらす巨大企業の誕生に必ずしも結びついていないのが現状である。我々は大学のスピンアウト企業が英国に高技能の雇用と急速な経済成長をもたらす世界的な企業へと成長するよう、もっと支援することができ、また、そうしていきたいと考えている。このレビューは、世界クラスの革新的なビジネスのための究極のインキュベーターであることを証明するために、私たちが取ることができるアクションを明確に設定するだろう。
英国財務省(HM Treasury ):
関連記事 2023年3月9日掲載
National Centre for Universities and Business: University research “spinouts” to be reviewed by UK Government:
https://www.ncub.co.uk/insight/university-research-spinouts-to-be-reviewed-by-uk-government/
(18) 生活費危機が学業を直撃し、学生は貧困に直面
2023年3月13日、ラッセルグループによると、学生の4人に1人が、食費や生活必需品を購入する余裕がないため、定期的に食事をとらずに過ごしており、最も社会経済的に不利な環境(世帯収入と親の教育水準で測定)にある学生では、10人に3人以上に上ることが、新しい調査で明らかになった。ラッセルグループの学生組合が8,800人の大学生を対象に実施したこの調査は、現在学生が直面している経済的圧力に関する最大規模の調査である。この調査では、英国では、学生は平均で週に2ポンドだけで生活しており、これは英国の生活困窮ラインを超えるものであることが分かった。学生は、基本的な費用を賄うためにアルバイトの時間を増やさなければならず、有給雇用者の17%が学業と並行して週30時間以上働いているという負担の増加や、栄養不足による集中力の低下、経済的ストレスなどを報告している。また、交通費が払えないため、キャンパスでの講義をさぼる学生もいた。
調査結果によると、経済的な圧力が学生の学業に影響を与えており、半数以上(54%)の学生が危機のために学業成績が悪化したと回答し、18%の学生が経済的理由による退学を検討している(従来、ラッセルグループの大学では学業の継続率は非常に高かったが、これとは対照的になっている)。生活費危機の負担は、疎外された不利な立場にある学生が最も強く感じており、家族と疎遠な学生や養護施設出身の学生、介護の責任を負う学生、障害のある学生、パートタイムの学生が、大学を辞めることを検討したと報告する傾向が最も高い。生活費の高騰に対応するため、ラッセルグループの大学は学生への支援を強化しており、数千万ポンドの追加ハードシップ資金やその他の財政支援、また食事補助の提供やキャンパス施設の利用拡大など、さまざまな施策を実施している。しかし、学生の経済的負担の増大に対処するためには、政府のさらなる早急な支援が必要である。この調査を踏まえて、ラッセルグループとラッセルグループ学生組合は、政府に対して2020/21学事年度以降インフレ率にあった生活費ローンの引き上げ、最も恵まれない学生を支援するための生活費補助金の再導入の検討、平均収入が大幅に上昇したにも関わらず、2008年以降凍結している奨学金の最大額支援における親の収入基準額の見直しを求めている。
備考:
この調査はラッセルグループの学生組合が実施し、ラッセルグループの中の14大学の8,800人を対象として、2023年1月から2月にかけて行われたものである。この結果は調査対象者に含まれるロンドンの学生の割合を調整するため加重平均されている。
ラッセルグループの学生組合はラッセルグループの大学の70万人の学生を代表し、大学の世界的な評判を反映した学生体験を確保するために協力している。
ラッセルグループの分析によると、教育省が決定した2023/24学事年度のイングランドにおける生活費ローンの利率はわずか2.8%で、ロンドン郊外に住むフルタイムの学生は9,978ポンドを受け取ることになり、2020/21学事年度からの実際のインフレ率によってローンの金額が上がった場合の11,501ポンドに1,523ポンド足りないということになる。学生が最大レベルで生活費支援を受けることができる保護者収入基準額では、平均所得が大幅に上昇しているにも関わらず、2008年以降25,000ポンドで凍結されている。2022年12月,英財政研究所(Institution for Fiscal Studies:IFS)は保護者の収入基準額が収入に応じて上昇していれば、35,000ポンドに近いに額になっていただろうと報告している。
イングランドのラッセルグループの大学のフルタイムの学位号の平均継続率は96%である。
Russell Group:
関連記事 2023年年3月12日掲載
Guardian: One in five students at top universities consider dropping out over cost of living
(19)新しい国際パートナーシップ基金の最初のプログラムに関する発表
2023年3月13日UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、気候変動、疫病対策、粒子科学などの分野を対象とした国際共同研究の許可を出し、政府の新しい国際科学パートナーシップ基金(International Science Partnerships Fund: ISPF)の第一段階における最初の11プログラムの詳細を本日発表した。
それには神経科学、神経変性疾患、認知症のプログラムや、日英共同研究として、新しいクリーンエネルギーと気候変動に関するプログラムも含まれている。
プログラムに含まれているものは:
未来のモビリティ¹:英国政府が考える未来のモビリティは2018年に発表された”Future of Mobility : Urban Strategy"に詳細があり、自動車産業の変革、デジタル技術の活用、環境に配慮した移動手段の促進などが挙げられている。
スマートシティ²:IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市
UK Research and Innovation:
https://www.ukri.org/news/first-programmes-announced-for-new-international-partnerships-fund/
(20)2023年度予算案発表を受けて
2023年3月15日に英国の財務省(HM Treasury )の財務大臣であるJeremy Hunt氏が発表した2023年度の政府予算案に対し、国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)が以下のとおりまとめた。
学術、研究における内容として:
NCUBのセンター長であるJoe Marshall 博士のコメント:
「本日発表された予算は、経済成長のために必要な分野への投資を活性化させるのに役立つ様々な兆候が見られる。
研究開発と資本投資の促進のための税制優遇措置と共に、大学を中心としたInvestment Zonesの投資の発表は、励みになる。人工知能、量子、炭素捕捉、ライフサイエンス等、優先的な技術や分野に対して、大きなコミットメントがなされている。しかし、米国、EU、中国が巨額の投資を行っているという状況の中で、英国は世界の舞台でリーダーシップを確立するために、信頼できる得意分野での成長計画をもっと強く、迅速に進める必要がある。
Chancellor unveils a Budget for growth:
https://www.gov.uk/government/news/chancellor-unveils-a-budget-for-growth (15MAR23 HM Treasury)
Investment Zones¹:https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1142995/Investment_Zone_Policy_Prospectus.pdf
National Centre for Universities and Business:
https://www.ncub.co.uk/insight/ncub-responds-to-budget-announcement/
関連記事 2023年3月15日掲載
Universities UK: Our statement on the government’s plans to increase funding for investment Zone.
https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/our-statement-governments-plans-increase
(21)政府は将来の科学技術に対して35億ポンドを投資
2023年3月16日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、前日15日に財務大臣によって発表された公約の実現のための重要な役割を果たすことになる。
3月15日に財務大臣は下院で春季予算案を発表し、来年度の財政計画を発表した。
その声明の中で、財務大臣は英国を科学技術の超大国にするための野望をサポートするために35億ポンドの投資を行うことを発表した。この資金の発表は、DSITが英国首相の優先課題としている英国の経済成長や、国内産業界においてより良い報酬の仕事や機会の創出等を支援するものである。
また、財務大臣はPatrick Vallance卿による新興デジタル技術に関する見直し案の勧告をすべて承諾することを発表した。これは明日のテクノロジーにおける規制の金字塔を打ち立てるという政府の計画の一環であり、世界中で採用できるテンプレートを提供するものでもある。
この予算の発表は先週発表された政府の科学技術戦略構想(Science and Technology Framework)に続くものであり、3億7,000万ポンドの新規資金としてプロジェクトに提供され、既存の枠組みを一新させるような技術で世界をリードするためのスキルとインフラを確保することができる。財務大臣の宣言した資金は、英国内の革新的な科学技術のスタートアップ企業に資金を提供し、研究開発への投資を促進し、英国の公共部門全体に対してイノベーションを推進する文化を確立し、公共サービスを向上させるという戦略構想の目標達成には欠かせないものとなる。
DSITの大臣であるMichelle Donelan氏のコメント:
今週、我々は英国を科学技術大国にするための取り組みにおいて、言葉よりも行動がものを言うことを示した。週末には、急成長するハイテク部門の財政を守るために介入し、明日の産業を規制するためのロードマップを示し、春の予算案では巨額の投資を約束した。
この新しい省庁を立ち上げた際、科学とイノベーションを通じて成長を促進する計画を、政府のあらゆる手段で支援することを約束した。昨日の予算の発表において、政府として雇用の創出、公共サービスの改善、また最終的に生活の向上を約束するのであれば、政府は実際に資金投資をしなければいけない。
革新促進剤
国内戦域での地域促進の拡大計画の一環として、財務大臣はグラスゴー、グレイターマンチェスター、ウエストミッドランドの26の変革的な研究開発プロジェクトに1億ポンドを投資する計画を発表した。Innovation Accelerators programme は地方都市が研究やイノベーションにおける主要で世界的に競争力のある都市になることを支援し、レベリングアップも支援するものである。
このプログラムを通して、地域のリーダー達は新しい研究開発の意思決定モデルを開拓することで、地域の経済成長を支えるイノベーションを活用する力を得ることができる。地方自治体、企業、研究開発機関として26のプロジェクトが選ばれた。その一部として:
量子戦略
英国は10年以上に渡り量子技術で世界をリードしてきたが、この度、この成果をさらに発展させるための新戦略を打ち出した。この戦略により、英国は新たな投資、急成長するビジネス、質の高い雇用をもたらし、量子を商業化するための最高の場所としての評判を確固たるものにすることができる。欧州で最も多くの量子スタートアップ企業が存在し、欧州のどの国よりも多くの資本投資を集めている英国には、量子に関する膨大な機会がある。
この戦略では、国家プログラムとして次の10年間(2024年から2034年)に25億ポンドの公共資金提供を行う。これはつまり1年間で1億5,000万ポンドの資金増加を意味する。これにより、英国は野心的で国際競争力のあるプログラムを提供することになり、この分野では歓迎されるであろう。この投資は、英国を科学技術大国にするという我々の目標を支援するものであり、我々の科学的卓越性を基盤として成長を促進し、強く弾力性のある経済社会の構築に貢献するものである。
研究開発の税制優遇措置
政府は、研究開発支援に引き続き取り組んでおり、研究開発とイノベーションが経済と社会に果たす重要な役割を認識している。2023年4月1日から政府は赤字の研究開発集約の中小企業(SMEs)に対して減税率の引き上げを導入する。対象となる企業は研究開発投資額100ポンド毎にHMRCから27ポンドを受け取る。
AI白書とサンドボックス(コンピューターに設けられている仮想環境)
新しいAI規制は、AIを搭載した商品に厳しい規則を設定するのではなく、AIの応用に焦点を当てており、近々発表されるAI白書で示される予定である。この新しい方法は、ビジネスの信頼性を高め、投資を促進し、社会的信用を高め、最終的には経済全体の生産性を高めるものである。
また新たなAIサンドボックスも立ち上げられ、規制がどのように将来のAIに適用することができるかをテストし、総合的にすべてを賄う役割を果たすとともに、イノベーターが通常のルールによって阻まれることなく、最先端の商品を市場に出すことを支援する。また政府はAIに関する知的財産法の適応を明確にするための過程も開始する予定である。
大容量のスーバーコンピュータ
財務大臣はまた新しい大容量のスーパーコンピュータと特化したAI Research Resource に対して9億ポンドの投資も発表した。大容量のスバコンは次期コンピュータの最先端領域であり、今回の投資されるシステムは英国で既存のトップのスーパーコンピュータよりも数倍強力なものである。
この資金提供は、英国のコンピューティング能力を大幅に向上させ、研究者は気候変動の解明や新しい薬の発見、AIの潜在的な可能性を最大限に活かし、社会や経済のおける人々全員の恩恵の急発展に導くことができる。英国は世界でも数少ないスーパーコンピュータを保有している国の一つとなり、優秀な人材を誘致し、研究者は世界最高のインフラを利用できるようになる。
ウェブ3
予算案では、英国がウェブ技術の未来を見据えて、ウェブ3の可能性を最大限に活用することも約束している。ウェブ3は分散化、オープンソースアプリ、ブロックチェーンコンピューティングアーキテクチャを活用した、インターネットプログラミングの反復計画である。
AIチャレンジ賞
政府は今後10年間、AIに関する優れた研究に対し、毎年100万ポンドの賞金を授与することを決定した。この賞は、1948年にUniversity of Manchesterで作られた世界初のプログラム保存型コンピュータにちなんで「マンチェスター賞」と呼ばれ、幅広い参加者が応募でき、従来の研究・助成構造の外にあるグループや個人が資金やネットワークへのアクセスを得られるようにしている。DSITがこの賞を運営し、詳細は近々に発表される予定である。
Department for Science, Innovation and Technology:
https://www.gov.uk/government/news/government-commits-up-to-35-billion-to-future-of-tech-and-science
(22)UKRI、新しい人材とチームの活動計画開始
2023年3月21日UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は新しい活動計画を発表した。これは世界クラスの研究やイノベーションのチームを支援し、多様で包括的な研究イノベーション(R&I)の制度の成立を手助けするものである。
知識の上に構築
UKRIは新しい人事とチーム活動計画の発表を歓迎している。これは既存のResearch Development Concordat と Technician Commitment の活動計画とその進捗状況の見直しから得られた知見を基に作られたものである。
UKRIは2020年7月にResearch Development Concordatに基づき、研究資金提供機関としての義務遂行のため、この活動計画を発表した。Technician Commitment planは2021年2月に発表され、資金提供者であり技術者の雇用者であるという両方の役割を検討している。
新しい人材チーム計画は、両方のイニシアティブの下で、我々の義務を考慮して、両方の計画に取って代わるものである。それはUKRI全体の様々な関連プログラムと連携している。その中に含まれるものは:
この計画は、研究における官僚的な手続きに関する独立したレビューへのUKRIの対応と、世界クラスの組織になるというUKRIの戦略目標の一部を成すものである。
将来のR&Iの労働力の開発
人材は英国のR&Iシステムの基盤であり、研究とイノベーションがもたらす社会的利益を実現するための鍵であり、研究とイノベーションの世界的リーダーとなることを目指す私たちにとって不可欠な存在である。すべての点において、スキルを持った人材、我々のプロジェクトから得た知識や経験、そして彼らが作るネットワークは、UKRIの研究やイノベーションに対する投資の中核となる成果である。
研究文化の転換
我々の新しい計画は、研究文化を転換し、優秀な人材やチームがアイディアを追求し、学問や分野の境界を超えて繋がりを築くをこと支援するという我々の優先事項を支援することを目的としている。
行動計画では下記のことが述べられている:
UKRIの各カウンシルや研究所では、新しい行動計画に沿って、支援的、包括的、発展的な文化や環境を構築するための独自の計画を進めていく。
UK Research and Innovation:
https://www.ukri.org/news/ukri-launches-new-people-and-teams-action-plan/
(23)英国を国際的なテクノロジー超大国にするための計画始動
2023年3月22日科学、イノベーション、テクノロジー省 (Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、2030年までに英国を技術超大国に導くための指針として、国際的なテクノロジー戦略を発表した。
同日に、新しい国際技術戦略(International Technology Strategy)に基づいて、2030年までに技術大国としての地位を確立するための計画を発表した。
外務大臣と科学大臣の両大臣は、ロンドンで行われた記者会見で、英国が、既に欧州最大で、米国、中国に次いで世界で3番目に高い評価を得ている技術部門の強みをどのように構築していくかを明らかにした。
先週発表された“Integrated Review Refresh(統合的見直しの更新)”では、独裁的な政権はテクノロジーを弾圧の道具として用いているが、英国国民の安全保障や繁栄に対して広範囲に影響を及ぼしうることを特定した。
国際技術戦略は英国の代替案を提示している。英国は開放、責任、安全、回復力という4つの原則によって導かれ、テクノロジーの利用を積極的に促進し、また、イノベーションや英国の技術リーダーシップを促進すると同時に、新しく発生する脅威からのセキュリティを強化する方法で、テクノロジーの未来を形成していくことになる。
英国政府は各省庁や学術界、産業界と緊密に連携し、既存の科学技術大国や新興の科学技術大国との国際パートナーシップを通じて、英国の技術分野における世界をリードする強みを活用していく。
英国首相は、経済成長を実現し、国内全域でより良い報酬の仕事と機会を創出することを、5つの優先事項の1つに掲げている。英国の繁栄している技術部門に投資することは、このことに直接貢献することになる。この部門は、2022年には1兆ドルの価値があり、我が国では85,000件以上のスタートアップやスケールアップ(事業拡大)が存在している。昨年は、英国技術部門に対してフランスとドイツを両方合わせたよりも多くの投資が行われ、国内各地で質の高い雇用が創出、また維持されている。
国際技術戦略はこの部門の成長を押し上げ、世界での地位を上げ、未来の技術における投資と提携の場所として英国を促進する長期的なつながりを作り上げる。
外務大臣のJames Cleverly氏のコメント:
今、英国は、これまで以上に、英国の優れた技術を世界に広げるために前進し、ハイテク技術を悪用しようとする影響力に対して対抗する態度をとることが重要である。
2030年までに技術の超大国になるという野望の現実に向けて、英国の企業を後押しし、革新的な考えと国際協力を通して明日の課題を解決するために本日発表をした。
技術大臣であるMichelle Donelan氏のコメント:
しかし、技術大国となるためには、国際的なパートナーと協力して、これらの新興技術を世界的な産業へと発展させることが必要である。
我々の国際技術戦略とは、明日の技術について同盟国との協力を深め、国内の安全保障を強化する一方で、英国の成長と繁栄の推進を確実にするものである。
初代の技術特使であるJoe White氏はシリコンバレーのハイテク企業との関係の強化を行った。この成功に基づき、英国は技術特使の専門知識とネットワークを広げ、広範な外交ネットワークを拡張する。これを基盤として我々の原則を実施し、権威主義的な物語に挑戦し、産業界と国際的な協力を行っていく。特使たちは技術部門の専門知識を持ち、この業界における実体験を、英国のグローバルリーダーシップの強化に生かすことができるようにする。
これらの目的は、新しいTechnology Centre of Expertiseを通してさらに支援される。最初の試みとして今年下半期から実施され、これらのセンターは政府、民間企業、学術界から技術やデジタルの専門家を集め、イノベーションを通じて持続可能な経済や包括的な方法により英国の変革をサポートする。
英国の科学技術構想(UK Science and Technology Framework)は、英国が2030年までに技術超大国として世界的に認められる存在になるという野望を掲げている。技術超大国になるためには、他の先進国とより深く協力し、科学技術を通じて、地球が直面する緊急のグローバル課題に取り組むことが必要である。国際技術戦略は、このようなパートナーシップを築くために実施されている活動を示している。
戦略の一環として、英国は経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development: OECD)のGlobal Forum on Technologyと提携し、テクノロジーをよりよく活用する方法について、国際社会と協力していくことになる。またCouncil of the International Telecommunications Union(ITU)における理事会への議席を確保した英国の成功に基づき、パートナーと協力して世界的な接続性を高め、電気通信分野で明確なリーダーシップを発揮していく予定である。
Department for Science, Innovation and Technology:
https://www.gov.uk/government/news/plans-to-make-uk-an-international-technology-superpower-launched
(24)大学でのREF規則違反が“組織的”であることが判明
2023年3月22日 Research Professional News はUniversity of Liverpool John Moores が行った研究評価制度 (Research Excellence Framework: REF) 2021の調査で、評価過程に参加する選抜職員の選考過程において、“組織的“な違反があったことが明らかになった。
同大学に対する苦情より実施された調査は、英国最大であるリサーチ・イングランド(Research England: RE)の研究資金調達機関の審査員によって実施され、同大学はこの調査結果を受け入れている。
研究機関は数年にわたるREFの結果を基に質関連の資金を分配され、その行使は非常に重要視される。
University of Liverpool John Mooresは、REF2021の結果、質関連の資金提供では、前回の評価である2014年と比べて52%と大幅に増加し、年間570万ポンドから870万ポンドになっている。
資金提供機関はこの結果を受け、質関連資金に対する調整を行うことは見合わせ、この問題は誤った解釈の結果であったとしている。
苦情が報告された
2021年のREFは2014年のREFとは異なり、研究機関は研究に関して多くの責任を持つ全職員を報告しなくてはならなかった。その結果として多くの小規模な研究機関が実際に業績を伸ばし、質関連資金獲得額も増加した。2021年、同大学は604人の職員を報告したが、それは2014年の256人をはるかに上回る数であった。
3月22日のREFのウエブサイトで公表された調査結果で、同大学は職員採用を含む領域でREF規則に違反していたことが判明し、その詳細が明らかになった。報告書では、資金提供機関に2件の苦情が寄せられ、調査された1件に関しては部分的に正当と認められた。
“正当と認められた苦情の一つは、研究機関の中心的なプロセスの運用に関するもので、承認された実践規範のプロセスを適用する際に、REFのガイダンスを誤って解釈したことが浮き彫りになっており、”組織化”とみなされた“と報告書にある。
同大学はResearch Professional Newsに対して、調査委員会が 「職員選考の過程はアウトプットの質と量に直接的に影響が出てしまい、REF2021のガイダンスから逸脱してしまった。」と結論付けている、と述べた。
職員選考の過程はUniversity of Liverpool John Mooresの独自の基準に従っていると結論付けられたので、苦情に関しては部分的にしか認められなかった、と大学側が述べた。
REF2021の一環として、研究機関は研究に参加する職員を特定するための実施基準を開発し、実施をすることを要求された。それらの実施基準は評価に先立ち、資金調達機関に提出された。
研究者選考過程の違反に加えて、調査の結果、データの信ぴょう性に関する苦情や、研究に参加できなかったことに対して苦情を申し立てた職員のための異議申し立てに関するスケジュールについても苦情が出ていた。
結果を受け入れる
「我々は結果を受け入れているが、がっかりもしている。」と同大学の研究・知識交流担当の副学長であるKeith George 氏が述べた。
「我々は同大学でREFに貢献した、研究者や専門サービスの職員も含めて誇りに思っている。」
「これは特にREFにおける活動や提出の最終段階で、世界で流行したCovid-19、ロックダウンや勤務状況の変更などで大きな課題となった。」
「我々は今回の調査で明らかになったプロセスや、コミュニケ―ション関連の問題、また次回のREFを控えて、(実施基準)の準備の可能性も想定しREと協力していく。」と述べた
またGeorge 氏は「REは独立した研究に大きな責任を担う職員を特定することに関連する様々な問題を理解しており、我々の実施基準を有効として、そのプロセスから学ぶであろう。」と付け足した。
REFを管理しているREはResearch Professional Newsに対して「REやそのほかの高等教育資金提供機関は、今後のガイダンスがより明確で、間違った解釈や理解がされないように努力していきたい。」と語った。
“前向きな”救済策
資金提供機関からの報告書では“苦情の申し立てのあった部分に関連して救済策が適用された。しかしそれらの救済策は、将来的に同様な問題が起こる危険を回避する前向きなものであった。”と述べられている。
報告書では、“特定された違反の結果、苦情の量や質に何らかの影響があったのかどうかを判断することは不可能である。”としている。
また、報告書ではREF2021に関して、資金提供機関ではUniversity of Liverpool John Moores の苦情も含め、4件のみ、苦情を受けている。“と記されている。
Research Professional News:
(25) 英国学士院:増加するデジタル格差に対処するためデジタル一体性ユニットの成立を求める
2023年3月22日英国学士院(British Academy: BA)はDigital Inclusion Unit(デジタル一体性ユニット)を設立し、デジタル格差に取り組むように政府に要請した。
デジタル格差とは、インターネット接続(ブローバンド、携帯の契約内容)、接続の質、速度、また不適切な機器(スマートフォン、ノートバソコン、タブレット、ウェアラブル等)、サポート形態へのアクセスの不平等、デジタルの読解力、スキル、サービス提供における不平等が含まれる。このような不平等は生産性の低下、健康状態、教育的な達成度、住環境の不平等を招くことになる。
幅広い技術的な進歩にも関わらず、デジタル格差は依然として問題となっている。Ofcomの調査によると、英国のインターネット使用者の21%はスマートフォンのみでのアクセス利用をしており、UK Consumer Digital Index 2022によると1,400万人(27%)はデジタル利用が低く、2020年のONSの調査では英国の成人の6.3%は一度もインターネットを利用したことがないことが分かった。
この問題の対処するためにはBAは新しい科学、イノベーション、テクノロジー省に対して、地域自治体、政府省庁、各局、規制局などのデータや専門知識を集結し、デジタル格差に対する政策やベストプラクティスに対処する“デジタル一体性ユニット”の成立を提言した。
このユニットは各省庁や国家監査院と共に、障がい者、その他法的に保護されている特性を持つ人々や、インターネットにアクセスができない人、スキルや自信がない人々も含む“誰もが利用できる”サービスの提供を目指す政府サービス基準5に該当するやり方を開発する。
BAの提言:
この概要では、近く退任する英国の政府科学最高顧問のPatrick Valance卿とGovernment Office for Science の委託により、BAのプロジェクトである“テクノロジーと不平等”に関する活動とその結果を踏まえて、不平等が定着しない方法で、広い公共の目標を達成するために必要なテクノロジーへのアクセス、利用、投資を支援する重要な役割をどのように政府が行えるかについて理解を深めることを目的としている。
University of Oxfordの社会とインターネットの教授でBAの“テクノロジーと不平等“プロジェクトのワーキンググループを主導しているHelen Margetts FBA 教授のコメント:
BAの2022年の報告書“Understanding Digital Poverty and inequality (デジタル貧困や格差の理解)“で述べられているように、デジタル格差と社会的不平等は密に関係しており、一方に取り組むことで、片方の解決にも繋がる。しかしデジタルで権利を剥奪された人々は全国でも不均等で断片的であるため、戦略的な介入が急務となっている。政策立案者がこの提言を検討し、我々が示した証拠が国内全体の人々の生活に良い影響をもたらす機会になることを望む。
British Academy:
(26) せわしない数か月の後、英国の研究開発は持続性が必要
2023年3月22日、Research Professional News は英国学士院(British Academy: BA)の最高責任者であるHetan Shah氏の寄稿を載せ、新しい仕組みや人事は歓迎だが、持続的な政府からの支援が必要とであると述べている。
最近の予算における研究開発に関する発表の多さは、首相のRishi Sunak氏と財務大臣のJeremy Hunt氏の両氏が研究、イノベーション、技術に対して、英国の長期的な繁栄の中心であると考えているという見方を強めている。研究開発の状況はここ数か月間で急速に変化しており、今こそ、研究開発の現状を把握する好機である。
政府機構
科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)の設立は歓迎すべきことである。前省庁であるビジネス・エネルギー・産業戦略省(Department for Business, Energy and Industrial Strategy: BEIS)の大臣のように、エネルギー危機と他の課題に同時に関わっていることと、研究開発だけに没頭できる閣僚がいることは、大きな違いである。
国家科学技術会議(National Science and Technology Council: NSTC)と並んで、研究は今や政府全体に明確に組み込まれている。DSITは、高等教育政策と連携するため教育省(Department for Education : DfE)、また文化部門との連携のために文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport: DCMS)の両省と密接でなけらばならない。
しかし政府の関心が高まることにより、研究の優先順位やその提携先の決め方で、政治が口を出しすぎる危険を誘発することになる。5年前、はたして政治家達はCovid-19、エネルギーの安全保障、ロシア研究に注目していただろうか?
英国政府は目先のことばかり考えてしまい、肝心な研究界からの情報を見落とす危険がある。したがって、政府による戦略的な優先順位だけでなく、研究者によるボトムアップの優先順位を受け入れる余地も必要である。
良いアドバイス
退任した最高科学顧問のPatrick Vallance氏は、政府機構を再構築した功績が十分に評価されていない。しばしば、Vallance氏はGus O’Donell氏との会話を用いて、Vallance氏は元内閣大臣に、経済がどのように政府全体に組み込まれているのか、そして同じことが科学でもできるのかを尋ねている。
Vallance氏の功績はCovid-19の対応だけではない。例えば、彼は2020年に英国学士院(British Academy)に対して、Covid-19の社会的な影響に関して考察するように求めている等、研究全体を見渡すことができた。
Vallance氏の退任はある時代の幕を下ろすことになり、彼の後任者であるAngela Mclean氏は数理生物学に関する経歴を持ち、また国防省の最高科学顧問も経験しているため、、新しい視点をもたらしてくれる人物であり、実に的を得た人事である。2月に発表された国防省の報告書では、Mclean氏が、SFを利用して先見の明を刺激するような紹介がなされており、彼女の思慮深さを示している。
国際的な提携
DISTと政府は、研究界が、英国のEU研究イノベーションプログラムであるホライズン・ヨーロッパへの参加を確実にすることを願っていることを認識している。また、もし参加が実現しなかった場合、政府は研究界からの信用を無くすことも認識している。
一方、交渉が続く中、政府が意図することすべてを詳しく調べる価値はないであろう。実際、英国の交渉人はあまりに熱心さを見せすぎることをよく思っておらず、財務省から費用対効果が得られないのではと疑いを持たれるため、そうならないようにしている。
迅速に取りまとめることが、すべての人の利益に繋がる。英国の研究界は財務省がまたホライズン・ヨーロッパのための資金を今年も回収することを望んでいない。同様に、欧州研究議会(European Research Council: ERC)は、予算の帳尻を合わせるためにも英国の資金を必要としている。我々の参加が早ければ早いほど、既に始動しているホライズン・ヨーロッパの後継プログラムの計画に影響を与えることができる。
イノベーションとテクノロジー
DSITは80%のサービス業で成り立っている経済が、どのようなイノベーションやテクノロジー戦略を必要とするのか検討しなくてはならない。金融・法律のサービス、クリエイティブ経済(広告、建築、ファッション、出版、ゲーム、ビジュアルアーツなど幅広い範囲の創造分野の経済)やヘリテージ経済(敵視的な建物、風景、美術品など文化遺産から得られる経済的価値。観光、教育コミュニティーの文化遺産促進・保存も含む)、デザイン、データサイエンス、ソフトウエアなどの英国の強みをどのように生かすかである。
社会科学、人文科学、芸術がここでは重要である。話題となる画期的な成果を求めることに終始して、既存の技術の普及と利用を軽視することがあってはならない。また、社会的な課題の解決には、市民社会や公共部門による社会革新への投資が要求される。
最後に、この先18か月後あたりで総選挙が行われる。研究開発の重要性に関しては、党派を超えた強いコンセンサスがあるように思える。変革と不確実性の時代を経て、研究部門はある程度の確実性を歓迎するかもしれない。残念なことに、次回の支出見直し(Spending Review)の準備を始める時期でもあるようだ。
Research Professional News:
(27) UCASは高等教育進学の競争激化の中、全国的な討論会を開始
2023年3月27日 、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)は、今後10年間の間に高等教育進学希望者が30%増加するいう新しい数字を発表し、今後の進学競争の激化と恵まれない環境からの学生に対する危機が生じる可能性を示唆した。
UCASは2030年には高等教育進学者が100万人に達する可能性を示唆した。これは2022年の進学希望者の75万人を超える。
この予想について、UCASは全国的な討論会を開始し、100万人という需要の増加による5つの課題と機会を強調している。
100万人への軌道は、高等教育の選択肢を検討する時点から、高等教育への接続方法、学習中の経験、労働市場への参入に至るまで、人々が高等教育の場を得る方法のあらゆる側面に影響を与えるだろう。
UCASはKnight Frankと Unite Studentsと協力し、英国全土から50人の主要な専門家を招いて、課題の取り組み方と機会の捉え方に関して意見を聞いた。UCASは、この広範囲で多様性のある様々な内容を近い将来に発表し、この夏には共同最終報告を行う予定である。
最初の発表では、将来の需要はどこから来るか、増え続ける18歳人口に対する将来の競争に対してどのように対処していくのか、またこれが国にとってどのような意味があり、教育大臣や上級官僚からの貢献、また、恵まれない環境からの学生に対する保護の必要等、UCASのデータ分析能力による新しい予想も含めて発表された。
50人の専門家はこの討論会に参加して、今後3か月間、下記の重要な課題をテーマとして取り組んでいく。
UCASの最高責任者であるClare Marchant 氏のコメント:
「本日、我々は、2030年には単年度で最大100万人の高等教育志願者が現れるという、この10年間の需要増がもたらす課題と機会を強調した。最終的には、これは教育の課題と同様に経済の課題でもあり、現在および将来の英国の形成に深い影響を与えることになるであろう。」
「需要の増加は、主に18歳人口の増加によってもたらされており、このグループが学校と大学を卒業するにつれて、課題が見えてくる。今、私たちが一斉に行動を起こさなければ、大きな経済的機会を逃し、同時に世代を置き去りにしてしまう危険性がある。」。
「それらの学生に学位課程や技術実習制度を含む、質の高い教育の機会を提供し、競争が激化する期間において、恵まれない環境の学生の利益が忘れられないようにすることは必須である。」
「これはUCASが提供するサービスの中心にいる学生に与える影響を視野に入れており、50人の主要な専門家を招いて、この増加する需要をどのように対処するかの概説をしてもらうことになった。この需要が無駄な人材増加に繋がらないようにした上で、すべての進路で学生に機会を提供するためにも、協力していくことが大切である。」
「我々は、議論を盛り上げることで、”100万人への軌跡”の成功を収めるための役割を果たしている。」
Universities and Colleges Admissions Service:
(28) 英国は成長加速のための初のAI白書でイノベーションで世界トップとなる方法を発表
2023年3月29日 科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は責任のあるイノベーションを勧め、この革新的な技術への国民の信用を維持するため、英国における人口知能(AI)の利用を導くAI白書を発表した。
安全性、透明性、公平性を含む5つの原則は、英国における人工知能の使用を導くもので、世界クラスの規制当局が責任あるイノベーションを推進し、この革命的技術に対する国民の信頼を維持するための新しい国家青写真の一部となる。
英国のAI産業は既に繁栄しており、昨年は5万人以上を雇用し、37億ポンドを経済に貢献している。英国には、AI製品やサービスを提供する企業がヨーロッパの他の国の2倍あり、毎年何百もの企業が誕生している。
AIは、医師が迅速に病気を特定することから、英国の農家が自身の土地をより効率的にまた持続的に利用する方法まで、既に社会的、経済的に人々に利点を届けている。人工知能をより多く分野に取り込むことで生産性を高め、成長を遂げる可能性がある。そのため政府は社会全体でAIの可能性を引き出すことに取り組んでる。
AIが急速に発展し続ける中、人々のプライバシーや人権、安全に対して将来的にもたらす可能性のあるリスクについて、疑問が投げかけられている。例えば、ローンや住宅ローンの申請の価値を評価するなど、AIのツールを利用し、人々の生活に影響する決定を出すことの公平性についても懸念がある。
政府の予算案で発表された数億ポンドの投資と共に、AI規制白書の提案はAIが正しく安全に繁栄するための適切な環境づくりに役立つことになる。
現在、組織はAIの最大限の活用を妨げられている可能性があるが、つぎはぎ的な法的規制によって混乱が生じており、規則に従おうとする企業に財政的、管理的に負担がかかっている。
政府は、イノベーションを抑え込む可能性があるような高圧的な法律を避け、AIの規制に適応可能な方法を検討する。
AIの管理に責任を持った新しい規制局を設ける代わりに、政府はHealth and Safety Executive, Equality and Human Right Commission and Competition and Market Authorityという既存の規制局に権限を与え、それぞれの分野でAIが実際に使用されている方法に適した、状況に応じたアプローチを考え出すようにした。
この白書はそれらの規制局が監視する産業において、AIの安全性や革新的な利用を最大限に考慮するべき5つの明確な原則の概要を示している。その原則は:
このアプローチにより、英国の規則は急速なテクノロジーの発展に適応し、人々の生活を徹底的に改善するより強い経済成長や、より良い雇用、人々の生活を根本的に改善する大胆な新発見をもたらすAIテクノロジーの活用から企業を遠ざけることなく、一般の人々を保護することができる。
今後12か月間、規制局は実践的なガイダンスを組織に適用し、リスク評価のテンプレート等、その他のツールやリソースも発表し、これらの原則をその分野で実施するやり方を設定する。議会の時間が許すのであれば、規制局が原則の一貫性を保証する法律の導入がなされる可能性がある。
Department for Science, Innovation and Technology: