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UK HE Information

2023年4月英国高等教育及び学術情報

2023年6月08日

(1) 大学組合は賃金・年金関係のストライキに対する再投票で勝利

(2) 科学大臣、EU研究・イノベーションの担当理事と対談

(3) 英国政府:ホライズン・ヨーロッパの機会を超える戦略書を発表

(4) ホライズン・ヨーロッパ保証基金による研究者等への10億ポンド以上の支援

(5) ケンブリッジ大学出版局: 100か国以上の国にオープンアクセス掲載料の免除

(6) 英国学士院は人文・社会科学を推進するため、2023から2027年度の新しい戦略計画の開始を発表

(7) 英国大学職員による試験採点のボイコットで今夏の卒業式に影響か

(8) 科学省の新しい出向制度:英国の科学、工学、技術分野における優秀な人材の交流

(9) 「ホライズン・ヨーロッパへの加盟を完結させるべき」と英国の学識者が国会公聴会で発言

(10) 高等教育独立調停局2022年度報告書発表

(11) Michelle Donelan 科学大臣の産休中の代役

(12) 次世代の安全なAIの構築と導入のため、専門特別委員会に1億ポンドを投資

(13) 新しい事例研究で大学やカレッジ閉鎖の危機に対するOfSの回答を説明

(14) 英国の学生ローンに過去最高額となる48億ポンド以上の利息を付与

(15) 高等教育機関データ:財政 2021/22学事年度

(16) 英国:2021/22学事年度における非EU圏出身学生からの学費徴収額は約90億ポンドに達する


(1) 大学組合は賃金・年金関係のストライキに対する再投票で勝利
2023年4月3日、Research Professional Newsは最近の闘争状況にもかかわらず、大学組合( University and College Union: UCU)が2つの全国的な投票で更なるストライキの実行を指示したと伝えた。
UCUの組合員は2つの全国的な投票でストライキの実行を再度支持し、大学における更なる6か月間の混乱の危機を迎えることとなった。
大学退職金制と賃金・労働条件における進展があったにも関わらず、UCUの組合員たちは2月22日から3月31日まで実施された2つの全国投票でさらに6か月間のストライキの実施を支持した。
同日、組合は年金に関する投票で、組合員の投票率は58.4%、そのうち89%がストライキを支持したことを報告した。賃金と労働条件に関する投票では、組合員の投票率は56.4%、そのうち85.6%がストライキの実施を支持した。
つまり、UCUは再度、投票率50%以上という法定基準に達し、英国の150の大学でストライキの実施の可能性が出てきたことを示唆している。同様の内容を争点とする一連のストライキが、今年の2月と3月に大学で発生している。
UCUの書記長であるJo Grady氏は「この結果は、各大学の学長に対し、我々が呼び掛けるストライキ実行に関する投票は、必ず勝利することを示した」と述べた。
また、「ストライキ実行の賛成に投票する人数は増える一方であり、高等教育機関を救済しようとする大学職員の決意に対して反感を持つ者もいるだろうが、そうではない。重要な事は、大学に対して主導権を握っているのは職員であることを示したということだ。」と述べた。
UCUは投票でストライキ以外の活動に関しても支持し、採点・評価ボイコットの通達を出す準備をすると発表した。
最近では、長引く闘争が近く解決するという希望も出てきた。再投票は、雇用者による年金給付額を2022年4月前のレベルに戻し、仕事量、非正規雇用化、賃金格差問題に対処する双方からの提案が提示される前に開始された。
5%から8%の賃上げの提案は組合から拒否されたにもかかわらず、雇用者によって実行されるようである。USSの評価方法では、和解の前に年金制度加入者の法的協議が必要となっている。
しかし、組合と雇用者の間で労働条件に関する協議で対立しており、University and College Employers Association(Ucea) は話し合いが始まる前に、これ以上のストライキの実行をしないこととして確約を求めている。Uceaの最高責任者であるRaji Jethwa氏は、その結果を「残念である」と述べている。
また、Uceaは、Acasの仲介で使用者と労働組合が合意した労働条件に関する協議条件の実施について、「労働組合と協力することに全力を尽くす」と付け加えた。
「既に高等教育機関に存在している広範なグッドプラクティスをもとに、いくつかの重要な問題に対処する機会である。しかしストライキ、特に学生をターゲットとする採点や評価のボイコットの脅威は、協議を危険な状態にする。」
USSに対する交渉で340の雇用者を代表とするUUKの広報担当者は、「USSに関する多くの良い進展があり、重要な決定事項のスケジュールが設定された。UCUの交渉担当者は現在の状況ではこれ以上のストライキ活動から得るものは何もないと考えており、UCUの組合員も同様な認識を願っている。」と述べた。
Research Professional News:
https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-universities-2023-4-ucu-wins-re-ballot-for-more-strikes-in-pay-and-pension-rows/


(2) 科学大臣、EU研究・イノベーションの担当理事と対談
2023年4月4日科学・イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)の大臣であるMichelle Donelan氏はホライズン・ヨーロッパとの提携に関する英国の期待など、研究提携について協議するためにブリュッセルに向かうことを発表した。

• Michelle Donelan科学大臣はブラッセルで欧州委員であるMariya Gabriel 氏と会談予定。
• ホライズン・ヨーロッパやその他のEUプログラムに関連する研究・イノベーションに関する初の顔合わせの会合となる。
• この会合は先月ロンドンで行われたEUの大使との会談に続くものである。
科学大臣は同日ブラッセルに向かい、その後EUの委員であるMariya Gabriel 氏と英国の期待するホライズン・ヨーロッパの参加などの研究協力について会談を予定している。
今回のブラッセル訪問は広範囲な英国の研究開発との関わりと、3月14日にDonelan氏と科学担当大臣であるGeorge Freeman氏とEU大使であるPedro Serrano氏との会談に続くものである。
英国は、EUが最近示したEUプログラムへの英国の参加の意思を歓迎している。議論は英国の参加が2年遅れたことによる影響について話す必要がある。
これと平行して、英国政府はホライズン・ヨーロッパとの提携条件が英国に利益が出ない場合を考えて、大胆な代替案の計画も進めている。この計画は近々に発表される予定であるが、研究者や企業からさらに意見を求めて、それらの提案の開発を進めていく予定である。もしEUとの話し合いで適切な条件に達することができない場合、この計画によって長期的な確実性を担保するものとなる。いかなる状況でも、政府は英国の研究者がヨーロッパやそのほかの国との世界でもトップとなる共同研究による利益を得られるようにする。
政府は英国の科学・研究部門に対して支援することについて努力をしており、そのため2024年から2025年までの公的研究開発費に200億ポンドの増額を行うこと約束した。これは支出見直しにおいて30%の増加という記録的な事態である。
Michelle Donelan科学大臣のコメント:
「世界トップクラスの科学者たちが、ここ英国だけでなく、世界中の人々の生活や仕事のあり方を変えるような研究を行うために、最高のプラットフォームを確保することを決意している。」
「EUとの初の会合とホライズン・ヨーロッパへの将来的な参加の可能性を話し合うことを楽しみにしている。ブラッセルで建設的な話し合いを進め、お互いの理解を得ることができることを確認したい。」
この間に研究者支援として、政府は英国のホライズン・ヨーロッパ申請者に対する支援を6月まで延長することを発表し、これまでに8億8,200万ポンド以上が提供されている。また、ホライズン・ヨーロッパの資金獲得者は、助成金の支給期間中に満額が支給され、引き続きホライズン・ヨーロッパへ応募するよう奨励されている。
Department for Science, Innovation and Technology: DSIT
https://www.gov.uk/government/news/science-and-technology-secretary-travels-to-brussels-to-meet-eu-research-innovation-commissioner


(3) 英国政府:ホライズン・ヨーロッパの機会を超える戦略書を発表
2023年4月6日科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、ホライズン・ヨーロッパに参加できない場合に対する、英国の研究・イノベーションの分野の保護と支援のための戦略書を発表した。
• 計画は英国の研究者、大学、企業への信頼と確実性をもたらし、彼らに意見を述べる機会を与える。
• まず第一に、英国がホライズン・ヨーロッパの参加の交渉が成功することを希望しているが、そのためには公平で適切な条件の受けて成り立つべきである。
• もし公平で適切な条件での参加が保証されないのであれば、我々はこの大胆かつ野心的な代替案を実施する。
• パイオニアが英国の強みを生かし、新たな能力を開発できるよう、研究者や企業との対話を継続する。
ホライズン・ヨーロッパの参加が不可のとなった場合、英国の研究とイノベーションを支援するための長期的で大胆な戦略プログラムである、パイオニアの構想が同日に発表された。
パイオニア戦略書は英国全土の研究者や企業からの意見を取り入れて開発されているこのスキームに反映させるための提案を示している。
我々はEUとホライズン・ヨーロッパの参加に関して協議を行っており、その協議が成功することを望んでいる。それが我々の希望である。しかし参加する以上、英国の研究者、企業、納税者にとって良い取り決めに基づくものでなければならない。もし公平で適切な条件で参加ができない場合は、この大胆で野心的な代替案であるパイオニアを実施することになる。
今週初めに科学大臣であるMichelle Donelan氏はMariya Gabriel EU委員と初顔合わせとなる会談を行い、ホライズン・ヨーロッパの加盟に関する英国の期待等、研究協力について話し合った。このような会談が継続する中で、研究者、企業がそれぞれの意見を述べる機会を作り、もしEUとの話し合いでよい条件に達することができなかった場合に長期的な確実性を持たせるため、パイオニアの初期段階の詳細が発表された。
科学大臣のMichelle Donelan氏のコメント:
「我々はホライズン・ヨーロッパに関してEUと接触しており、今週ブリュッセルでMariya Gabriel EU委員と会合を持ち、交渉に取り掛かった。この交渉が成功することを望んでいるが、そのためには適切な条件であるべきである。
我々は、必要なときにすぐに使える野心的な代替案を用意し、英国の企業や研究者がそれに参加できるようにしなければならない。我々の最優先課題とは、どのようなことがあっても研究者や企業が画期的な研究を継続できるようにすることである。どのような状況になっても我々が彼らを支援し、我々のセクターが確実であると同時に発言できるようにするために、この話し合いを始めた。」
もし代替案であるパイオニア・プログラムを実行することになった場合、既存の研究開発投資を補填するため、4つの主なテーマに焦点を当てる。
• 才能ある人材
• エンド・ツー・エンド・イノベーション(研究成果というエンドから技術開発、顧客開拓、流通など経た販売というエンドに至る完結したプロセスを捉えて技術開発を考えるもの)
• 世界的な協力
• 研究開発の体制への投資
政府は、英国全土の研究やイノベーション分野の関係者がこの計画の構築に積極的な役割を果たせるよう、この計画の詳細を発表した。
長期的なプログラムは必要に応じてできるだけ早く確立され、政府は研究者と企業との集中的な関与を促進し、英国の強みや新しい能力の進展のために役に立つプログラムとして優先順位を決定する一方で、レベルアップの課題に沿ってこの分野のリソースと支援を英国中に行きわたらせる。
ホライズン・ヨーロッパ保証制度が大きな節目に来ており、英国を拠点とする研究者、イノベーター達に10億ポンド以上が提供され、EUの有名な助成金プログラムへの英国の参加が遅れている間も、ホライズン・ヨーロッパにより実施される研究プロジェクトに参加ができるようになったことを意味している。
この保証制度は、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)が実施し、ホライズン・ヨーロッパからの資金提供を受ける資格があるが、英国の加盟の遅れによって資金が届かない研究者やイノベーターを支援するものである。保証制度を引き続き受けることで研究やイノベーションの重要な研究が続けられる。
Department for Science, Innovation and Technology: DSIT
https://www.gov.uk/government/news/uk-publishes-prospectus-for-opportunities-beyond-horizon-europe

関連記事
2023年4月7日掲載 Science Business
Plan P: to replace Horizon Europe with £14.6B Pioneer programme if association talks fail
https://sciencebusiness.net/news/plan-p-uk-replace-horizon-europe-ps146b-pioneer-programme-if-association-talks-fail

(4) ホライズン・ヨーロッパ保証基金による研究者等への10億ポンド以上の支援
2023年4月6日UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)はホライズン・ヨーロッパ保証基金が重要な節目を迎え、英国を拠点とする研究者やイノベーターに10億ポンド以上の資金が提供されるようになったと伝えた。
この基金は、EUの重要な資金調達プログラムの参加が遅れている間に、ホライズン・ヨーロッパのプロジェクトへの参加を可能にするものである。
また同日、政府は万が一の場合に備え、英国の研究・イノベーション分野の保護や支援を行うためのプログラムの戦略書を発表した。
保証基金はUKRIによって支給される。この基金はホライズン・ヨーロッパの研究費獲得に成功したが、英国の加盟が遅れているために基金を受け取れない研究者やイノベーターを支援することになる。この制度により重要な研究を継続することができる。
保証制度の受給者
基金の対象者は下記の通り:
• 英国の風力推進会社であるAnemoiはホライズン・ヨーロッパのプロジェクトOptiwiseの一部で、商船のエネルギーの消費量の削減を目指すプロジェクトを行っている。9つのコンソーシアムはフランス、スウェーデン、オランダなどを拠点としているパートナ―と提携している。
• University of Warwick の研究者であるDavid Armstrong 氏は、英国の加盟の遅れのためにERC Starting Grantからの基金が受け取れなかったが、代わりに同保証金を受け取った。Armstrong 氏は現在 ジュネーブ、ベルン、ポルトの各大学と太陽系の外側の惑星の理解を深める共同研究を行っている。
• University of Manchester はスペイン、オーストリア、ベルギーなどの国からのパートナーとホライズン・ヨーロッパのプロジェクトに参加している。NimbleAIと呼ばれるこのプロジェクトは、有機的な脳のように動作し、物理的に周囲を見ることができるコンピューターチップの開発に取り組んでいる。
• Rolls-Royceはホライズン・ヨーロッパのClean Aviation Joint Undertaking の一環として多くの国際パートナーと共に6つのプロジェクトに参加している。
• 英国を拠点とする電気自動車製造メーカーであるTevva社は輸送の脱炭素に役立つプロジェクトとしてホライズン・ヨーロッパに参加している。NextETruckプロジェクトは、オーストリア、スペイン、ベルギー等の大学、研究技術研究所、製造業等を結集している。
UKRIは科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)に代わり保証制度を運営している。
UK Research and Innovation (UKRI) :
https://www.ukri.org/news/horizon-europe-guarantee-fund-awards-1bn-in-grants/


(5) ケンブリッジ大学出版局: 100か国以上の国のオープン・アクセス掲載料を免除
2023年4月17日、Research Professional Newsはケンブリッジ大学出版局が107の低・中所得国に対してオープン・アクセス掲載料を免除することを発表したことを伝えた。
学術界がオープン・アクセスに移行する中、一部の研究者は論文が自由に利用可能になることを非難しており、特にゴールド・オープン・アクセスのモデルにおいては研究者が論文掲載費(Article processing Charge: APC)を支払わなければならず、不公平であるといっている。
批判者達が言うには、ゴールド・オープン・アクセスは、出版費の支払いが読者から著者もしくはその所属機関に移行したと指摘している。
ケンブリッジ大学出版局によると、高所得国に居住している著者の論文に対しては所属機関が支払い責任を負うため、オープン・アクセス料は本人が支払わない傾向がある。研究基金が乏しい国の研究者は、しばしば通常2,000ドル、3,000ドルのAPCを支払えないことがある。
しかし、ケンブリッジ大学出版局は、7月1日から107か国の5,000の機関が、ケンブリッジ大学出版局のジャーナルへの出版資金申請をする必要がなくなることを4月11日に発表した。
”意図しない結果“の回避
「我々はどこから来ようと最高の研究論文を出版したい。オープン・アクセスの料金の請求は読者から著者に移行しているが、我々は特に世界の高等教育システムの不平等に関して意図しない結果を防ぐようにしなければならない。」とCambridge University Press and Assessmentの学術担当部長であるMandy Hill氏が述べた。
Cambridge Open Equity Initiative といわれるこの費用免除制度の対象国の一部は:
アフガニスタン、アルバニア、バングラデシュ、キューバ、エチオピア、イラク、ジャマイカ、モロッコ、ネパール、ナイジェリア、パキスタン、スリランカ、ウクライナである。
ケンブリッジ大学出版局は、主要大学図書館などのパートナー機関にこの制度に対する自主的な財政的貢献を募っている。
Research Professional News:
https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-open-access-2023-4-cup-waives-open-access-fees-for-over-100-countries/


(6) 英国学士院は人文・社会科学を推進するため、2023から2027年度の新しい戦略計画の開始を発表
2023年4月18日、英国学士院(British Academy: BA)は新しく2023年から2027年にかけて戦略的な計画を発表し、人文・社会科学を世界的諸問題を理解するための中心として役立て、明るい未来を形成するという構想を示した。
BAは、気候変動から社会的一体性まで世界が直面する複雑な課題はSHAPE分野(Social Science, Humanities, and Arts for People and the Economy)の動員によって対処できると信じている。優秀な学者の奨学金と一流の研究への資金提供を通して、我々はそれらの分野を強化するリーダー的な役割を担っている。
BAは今後4年間に3つの戦略的優先を提唱している。
• 人文・社会科学の強化と推進
• 全ての人々の利益のために学問分野を活用する
• BAの開放
主要な学問をどのように達成するかということも含めて、今後4年間、BAの活動方針となる戦略的優先事項は:
• 全ての優秀な研究者や研究に対して投資する。
• 人文・社会科学の重要性を世に知らしめ、促進する。
• 社会の非常に重要な問題に関係する情報提供と議論の強化を行う。
• 持続的な国際関与と提携の確保。
• 将来に渡るBAの維持のため、人材、パートナーシップ、資金を最大限活用する。
British Academy (BA):
https://www.thebritishacademy.ac.uk/news/the-british-academy-launches-new-strategic-plan-for-2023-2027-to-champion-humanities-and-social-sciences/


(7) 英国大学職員による試験採点のボイコットで今夏の卒業式に影響か
2023年4月18日、Guardianは大学組合(University and College Union: UCU)が組合員の賃金と労働条件に対するオファーを拒否したため、ストライキを実施することを伝えた。
UCUがストライキの実施を発表したことで、試験、論文等が採点されない可能性あり、学生達はこの夏の学位取得や卒業式に遅れが出る可能性に直面している。
一方で、UCUの組合員は長期に渡る年金に関する闘争を終了し、85%の組合員が組合員が退職制度の改善の協定を受けることを決定したが、賃金と労働条件に関するオファーは拒否することを決定し、その後の試験の採点のボイコットへの引き金となった。
UCUの書記長であるJo Grady氏は、英国の145の大学で働く組合員による採点のボイコットによる遅延を避けるため、雇用者側は交渉に戻る必要があることを述べた。
「大学職員がより良い条件を望んでいることははっきりしており、卒業に関して、深刻な混乱を避けるためにも雇用者はより良い条件を提示してほしい。」と述べた。
却下された提案は、ゼロ時間契約の廃止に関する協議や、その他の形態の非正規契約、平等賃金格差の解消、仕事量の削減について更なる交渉を行うことを使用者に約束するものだった。この協定には、今年初めに行われた5%から8%の賃上げが含まれていた。このボイコットによって試験結果、学習課題の採点に遅延が発生する可能性があり、大学側が以前の成績を利用し学位を授与しない限り、学年度末までに卒業ができない学生が出てくる可能性もある。
UCUは今週、高等教育機関の支部で臨時会議を行い、ストライキを含む賃金に関する更なる措置に関して話し合う予定である。先月UCUの組合員は6日間のストライキを実施し、更に6か月間のストライキの延長を投票によって決定した。
大学・カレッジ雇用者協会(University and College Employers Association)の最高責任者であるRaj Jethwa氏は、UCUが組合員に対して反対の投票を行うよう促した後、賃金の提示の拒否を行ったことは「残念ではなるが、驚くことではない。」と述べた。
Jethwa氏は、雇用者がAcasの調停サービスを通してUCUとの労働条件に関する話し合いに参加したにも関わらず、協議の投票で組合員の3分の1のみが拒否し、組合員の中でも意見が分かれていることを示唆した。
「学術関係者の3分の2はUCUやほかの組合の組合員ではないが、採点や評価のボイコットにより学生の成果を評価せず、学生に被害を出しているという状況は極めて深刻な事態である。高等教育機関からの矛盾のないフィードバックではストライキの影響は低く、単発のものであるとされているが、大学機関は再度、学生を支援するための緩和策を優先するであろう。」とJethwa氏は述べた。
Grady氏は、「年金に関する闘争の終了は、組合にとって状況を一変させるような勝利であった」と称賛した。また、「年金に関する闘争を開始したとき、大学の学長達は我々を疑い、政府の大臣たちは我々非難した。」と述べた。
また、「盗まれた年金を再び勝ち取ることは不可能であると言われていたが、UCUの組合員はそれが可能であることを証明し、状況を一変する歴史的な勝利として大きな第一歩となった。」と付け加えた。
University and College Union (UCU):
https://www.theguardian.com/education/2023/apr/18/exam-marking-boycott-hit-graduations-university-college-union


(8) 科学省の新しい出向制度:英国の科学、工学、技術分野における優秀な人材の交流
2023年4月19日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)の成立から2か月経ち、初めて科学、工学、技術分野の専門家が、同省の新しい出向制度を受け入れた。
• DSITの出向を受け入れ、まもなく最初の科学、工学、技術分野の専門家の出向が開始される。
• DSITの専門家交流出向制度(Expert Exchange secondment scheme)はAIや量子等の主要分野の深い分野の専門知識を政府に取り入れる制度である。
• これは科学大臣の計画の一部で、英国の雇用と成長の促進のため、英国による世界をリードするテクノロジーや科学分野の才能の活用を行うものである。
専門家交流制度(Expert Exchange)は、英国の学術界と産業界から最先端の専門家を招き、量子、データ科学から半導体や生物化学に至るまで、将来の最も重要な研究や技術の促進を図るために、政府への出向者選抜の徹底的な見直しのために成立した。また出向者は9か月間の中、政府機関で実務経験を受け、科学、技術、研究分野と政府との繋がりの強化を図ることが可能とされている。
この出向制度は、将来の産業の育成をするため、また全国民の生活改善を行い、科学、イノベーションやテクノロジーを英国政府が全力を挙げて支援することで、DSITの主要な使命を担うことになる。
DSITの大臣であるMichelle Donelan氏のコメント:
「この省を率いることを任命されたので、科学技術超大国としての英国の立場を固めるために、英国による世界をリードする科学、技術分野の知識の活用が必要であり、またそれらの分野の優秀な人材が我々の使命を確実なものとしてくれることも認識している。
最初の節目として、専門家交流制度を通して英国の頭脳明晰な研究者が我々に加わり、科学、技術における刺激的なイノベーションの進化と拡大のため、その専門知識を用いることの先駆けとなる。この新しい方法が政府、産業、専門家の間での連携強化となることを望む。」
Expert Exchange は2030年までに英国を科学技術超大国とするための計画である“科学技術構想(Science and Technology Framework) ”を目標として成立した。特にこれらの出向は、英国で既に存在する優秀な人材とスキルを基盤として構築され、公共部門全体でイノベーションを推進する文化を創造する構想の目的を支援する。
始めのうちは王立協会(Royal Society)と王立工学アカデミー(Royal Academy of Engineering )の協力で高い功績を残している中堅の研究者及び技術者を対象としていたが、Expert Exchange は科学、技術分野の専門家をDSITの政策チームに9か月間、出向させるものである。Expert Exchangeは、政策決定プロセスにスキルと知識を提供するだけでなく、DSITを、その支持を求めるセクターを反映した、近代的で機敏な組織とする野心の一環として、同局に貴重な文化的貢献をするだろう。
英国王立工学アカデミーの最高責任者であるHayaatun Sillen CBE博士のコメント:
「我々はExpert Exchangeを支援することを嬉しく思う。技術や工学は政府の政策や取り組みすべての部分で影響する可能性があり、政府が必要とする専門知識を活用して技術者が政策立案者に関与し、理解を深めていくことは大変重要なことである。
技術者を科学、イノベーション、テクノロジー省の中心に据えるということは、政府は英国の繁栄と世界的な課題に取り組むために不可欠なイノベーション推進政策に取り組んでいる姿勢を示している。」
今年中に更なる出向者が同省に参加する予定であり、産学官の専門家の参加も現在進められている。役人たちは出向が双方向の取り組みとして、DSITの公務員が学術界や産業界に出向し、政策決定の部門において深い理解ができるかどうかも検討中である。
DSITはネットワーク、指導、出向を通して、科学と工学分野における交流機会を創出するため、産業界、学術界、公共部門全体での提携をするというSTEM Future Programを行っているGovernment Science & Engineering Profession と協力している。
Department for Science, Innovation and Technology (DSIT):
https://www.gov.uk/government/news/best-and-brightest-from-uk-science-engineering-and-tech-to-join-dsit-under-new-expert-exchange


(9) 「ホライズン・ヨーロッパへの加盟を完結させるべき」と英国の学識者が国会公聴会で発言
2023年4月20日、Science Business は再び英国の科学界のリーダー達が英国の995億ユーロの研究プログラムへの参加を主張し、ホライズン・ヨーロッパとの提携が英国の科学の成功ひいては、国家にとっても不可欠であると国会議員に述べたことを伝えた。
英国の研究者達はホライズン・ヨーロッパへの加盟が2年間も遅れている状況(未だにその期間を伸ばしている状態)が引き起こす、ヨーロッパの研究者との共同研究への損害を制限するためにも、ホライズン・ヨーロッパへ加盟をするように政府に求めた。
Francis Crick Instituteの所長であるPaul Nurse 氏が、”ブレクジットを完結しよう(Get Brexit done)”という2019年12月の保守党の選挙スローガンを皮肉り、「政府は参加を完結しよう(Get association done)」と述べた。
Nurse氏は、英国政府がEUと英国のホライズン・ヨーロッパの協議が失敗に終わった場合に備えた”プランB”と言われる146億ポンドのパイオニア研究プログラムについて、英国下院の科学技術特別委員会に提出した。
しかし、Nurse氏は国会議員に対して、パイオニア・プログラムはEUと英国の研究者に対して不明瞭なメッセージを伝えており、英国政府がEUとの協定を結ぶことに疑いを持たせていると述べた。「率直に言えば優柔不断であると思う。」とNurse氏は語った。
Nurse氏はノーベル賞受賞者で、今年3月に政府によって発表された研究開発に関するレビューの著者でもあり、その中で、EUとの共同研究者との関係は保護され、維持し、拡大する必要があると強調して述べている。
英国の首相であるRishi Sunak氏と欧州委員会のUrsula von der Leyen氏がWindsor Frameworkに署名し、EUの単一市場における北アイルランドの立場をめぐる高いレベルの政治闘争を行った結果、3月には提携に至るはずであったため不満が大きくなっている。
今月初め、Michelle Donelan英国科学・イノベーション・技術担当大臣が交渉を有利に進めるためにブリュッセルを訪れた際、「英国は依然としてホライズン・ヨーロッパ加盟にコミットしているが、交渉が決裂した場合に備えてパイオニアプログラムにも取り組んでいる」と述べた。
政府は当初、EUとの意見の相違の理由として、EUの研究プログラムに対する英国の資金拠出に関する不一致を指摘していたが、欧州委員会は、英国が同プログラムから締め出されている2年間は、英国に資金拠出が求められないと確認した。
「私の理解では、EUの財政協定は寛大であり、2年間の中断を認めている。だから、参加しない手はないと思っている。」とNurse氏は述べた。
もう一つの難点は、EUの資金援助プログラムに英国が参加する範囲である。もし英国がホライズン・ヨーロッパの一部を選んで参加しようとすれば、ホライズン・ヨーロッパの提携条件を定めたブレグジット後の貿易協定を、双方が破棄する危険性がある。英国王立協会(Royal Society)の会長であるAdrian Smith 氏は、EUとの貿易協定を再開することは「事態を複雑にするだけだ」と国会議員に語った。
英国の研究機関ではホライズン・ヨーロッパの参加を押しているが、躊躇している大臣達が事の遅れの原因だと指摘している。Nurse氏はSunak首相がホライズン・ヨーロッパの参加希望を公にしておらず、研究者の声をあまり聞いていないと主張した。「率直に言わせもらえば、首相が足を引っ張っているのかと思う。」とSmith 氏は述べた。
Smith 氏は今年2月のSunak首相宛の書簡で、Nurse氏を含む15人のノーベル賞受賞者の署名入りの声明を取り纏め、ホライズン・ヨーロッパへの参加の重要性について説明した。それに対するSunak首相の返事が今週初めにあったことから想像すると、首相の熱意のなさの現れかもしれない。しかし返信の書簡では、首相は「個人的にホライズン・ヨーロッパの参加を支持している」ことを述べていた、と明かした。
いつが手遅れとなるのか?
時間は刻々と過ぎており、欧州委員会は既に2021年から2027年の中間レビューの準備に取り掛かっている。Carol Monaghan国会議員は英国にとって参加が手遅れとなる時期はいつなのかという質問をした。
University of Birminghamの学長であるAdam Tickell氏は協定締結は近いというが、欧州委員会は失われた時間を取り戻すことは困難であると話している。「英国の科学者はプログラムの当初は大変な成功を収めるが、その後はその勢いがなくなっていく傾向があるので、最初の2年間を逃したことは残念である。」と述べた。
できるなら、ヨーロッパの研究会議で成功を収めた研究者を支援するための英国の制度が終了する前にと、Smith氏は今後数か月の間に締結することを望んでいる。支援制度は最近延長され、6月まで再度延長された。「雰囲気は楽観的であり、Donelan氏が個人的に達成しようと取り組んでいることには元気づけられた。」とSmith氏は述べた。
University of Oxfordの学長であるIrene Tracy氏は、次期学事年度が始まる前にホライズン・ヨーロッパへの加盟を希望することを述べている。「9月から10月にかけては新入生を迎える時期でもあり、歓迎という意味でも、才能の到着という意味でも、あと数か月内に結果が出れば素晴らしいことである。」と述べた。
政府の科学資金提供機関であるUKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)の最高責任者であるOttoline Leyser氏は、「2年間の遅れは不確実性や不安を生み出している。加盟となれば、研究界の指揮も高まることであろう。もし英国にとって良い財政的な協定の交渉ができるのであれば、すべてを通り抜けて全力で邁進することは素晴らしいことである。」と述べた。

英国王立協会(Royal Society)Adrian Smith 氏の書簡に対するRishi Sunak首相からの返信:https://committees.parliament.uk/publications/39120/documents/192293/default/
Science Business:
https://sciencebusiness.net/news/get-horizon-europe-association-done-uk-academics-say-parliament-hearing


(10) 高等教育独立調停局2022年度報告書発表
2023年4月20日、高等教育独立調停局(Office of the Independent Adjudicator for Higher Education OIA)は2022年度報告書を発表した。
4年間連続でかつてないほど多くの苦情を受け、解決した。
• 2022年には2,850件の苦情を受け、2021年より3%増(2,763件、再度過去最高)の苦情件数となった。
• 多くの苦情があったにもかかわらず、我々は目標とする適時性を達成し、2,821件を解決したが、解決数も増加し、2021年(2,654件)より6%多く解決したこととなった。
• 合計では25%のケースが正当化され(3%)、部分的に正当化(7%)、また学生に有利な和解(15%)であった。2021年に比べると多少低いものの、ほぼ例年通りであった。
• 我々が勧告した多くの対処措置と同じように、財政的な総額としては、救済措置で382,298ポンドの勧告を行った。また学生が受け取った和解金は合計667,816ポンドとなった。2022年の財政的な補償の総額は1,050,114ポンドであった。賠償金の最高額は48,000ポンドで5,000ポンド以上受け取った学生は49人いた。
• 400人以上のグループからの苦情は、一部を正当なものとして決定し、総額賠償金として640,000ポンドとなった。(傾向情報を歪める効果を避けるため、苦情のデータは含まれていない)
苦情の性質
学業に対する不服申し立て(評価、進級、成績等、学業に関する問題を含む)の割合が38%に増加した(2021年では29%)。サービス関係(教育、コースの実施の仕方、監督、コースに関係する施設)に関する苦情は38%(2021年では45%)と減少した。この苦情件数のバランスが戻ったことはCovid-19の流行中に実施されていたセーフネット対策が終了し、その結果、苦情が少なくなったことを意味している。
その他、苦情件数は比較的少ないままであったが、これらの苦情を合計すると取扱った件数の24%を占めた。2021年(27%)からわずかに低くなった。
その他の苦情カテゴリの苦情件数は比較的少ないままだったが、これらのカテゴリを合計すると、総事案の24%を占めた。これは、2021年(27%)よりわずかに低い。
• 財政問題 ― 6%(2021年には6%)
• 専門分野問題 - 5%(5%)
• 平等法/人権問題 - 4%(5%)
• 福祉/コース以外のサービス問題 - 4%(5%)
• 懲戒問題 - 3% (4%)
• 専門的な基準を満たす能力 ― 2%(2%)

苦情から学んだことの共有
“優秀事例戦略(Good Practice Framework): 苦情と学術的な苦情の対応” の改訂版を発表した。
我々は引き続き苦情から学んだことを共有し、情報やガイダンスを発表し、成功した支援プログラムを継続している。ウエブナーやオンラインのワークショップのプログラムはイングランドやウェールズの学生団体、高等教育機関、その他様々な人々が参加した。我々は、高等教育機関や学生団体への直接訪問も再開した。また学生から直接体験談を聞く討論会も行い、学生アドバイザーも導入した。
苦情内容の概要
1年間の苦情の事例としては下記のような内容がある。
• 医療関連コースの学生は精神的疾患があったため、2回目の実習を予定通り開始することができず、必須科目である導入授業を欠席した。大学側は他の実習を手配する一方で、学生を一時的に休学させた。我々の判断に対する苦情を一部認めた。その理由として、実習先が代替の導入授業を提供できなかったことは実習先及び大学の落ち度であり、大学はこの問題解決のためにもっと努力するべきであった。この学生はこのコースを退学した。我々は授業料の一部、および慰謝料の支払いを勧告した。
• 通信教育コースの学生グループはマーケティングの資料に関して、期待していたものではないと苦情の申し立てをした。我々は申し立てを支持した。その理由として大学機関は学生達によるいくつかの苦情に対処していなかったが、大学側の記録によると、その内容は学生の苦情を支持するものであったからである。我々は大学側にそのプログラムの質の見直しと学生らに補償金の支払いの勧告をした。
• ある学生は、他の数人の学生より不適切な行動を非難されていた。調査の結果、大学側は学生の行動はセクハラにあたり、大学の行動規範に反すると判断した。学生は書面で最終通告を受け、特定の建物の出入制限を課された。また大学側は学生に対して、大学負担でカウンセリングを受けるように指示した。我々はこの申し立てを支持しなかった。我々は、大学による学生の問題行動に対する調査のやり方は適切なものであり、また、適切な過程を踏んでいると判断した。大学側は学生の行為は不適切なものであるとの結論を出した。書面での警告は、重大な違法行為に対する最も軽い刑罰であり、我々は建物への出入制限とカウンセリングは刑罰として適切であるとの結論に至った。
Office of the Independent Adjudicator for Higher Education (OIA):
https://www.oiahe.org.uk/resources-and-publications/latest-news-and-updates/oia-publishes-annual-report-for-2022/


(11) Michelle Donelan 科学大臣の産休中の代役
2023年4月21日、Eastern Daily PressはNorwich North選出議員であるChole Smith氏が次期選挙に不出馬を発表しているにもかかわらず、科学、イノベーション、テクノロジー大臣に就任することを報道した。
Smith氏の任命は、Dominic Raab氏がいじめ疑惑の調査結果を受けて副首相を辞任したことによる人事異動の一環として発表された。
Smith氏は、Michelle Donelan 科学大臣が産休を取る間の代役を務めることになる。
Smith氏は2022年10月の内閣改造で、首相であるRishi Sunak氏に解任されてから政府から遠ざかっていた。
現在、科学、研究、イノベーション担当大臣である同じノーフォーク選出のGeorge Freeman氏と共に同省に参加することになる。
Freeman氏はSmith氏の協力を示し、「Michelle Donelan氏の産休中に私の旧友であるChole Smith氏が大役を務めることを歓迎する。新しく立ち上がった科学、イノベーション、テクノロジー省のために一緒に働くことを楽しみにしている。」と述べた。
Smith氏はこれまで様々な政府の要職を務め、最近では昨年9月6日から10月25日まで労働・年金大臣を務めた。
これまで、David Cameron 氏、Theresa May氏、Boris Johnson氏、Liz Truss氏など歴代の首相の下で内閣入りを果たしてきた。
Eastern Daily Press:
https://www.edp24.co.uk/news/23472193.norwich-north-mp-chloe-smith-back-cabinet-second-time/

関連記事
2023年4月28日掲載 Wiltshire Times  
Cabinet minister Michelle Donelan goes on maternity leave :
https://www.wiltshiretimes.co.uk/news/23487203.cabinet-minister-michelle-donelan-goes-maternity-leave/


(12) 次世代の安全なAIの構築と導入のため、専門特別委員会に1億ポンドを投資
2023年4月24日、 科学、イノベーション、テクノロジー(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)大臣と英国首相は基礎モデル特別委員会(Foundation Model Taskforce )に対して1億ポンドを投資することを発表した。
• 英国首相と科学大臣は、急速に発展する人工知能における英国の能力の加速を図る特別委員会に対して、初期立ち上げ資金として、1億ポンドを投資することを発表した。
• ChatGPTやGoogle Bardのような大規模な語学モデルを含む基盤モデルは膨大なデータで学習したAIシステムであり、経済全体に渡る幅広い仕事を行うことができる。
• 2030年までに英国の科学省大国としての地位を確固なものにするために投資を行い、主権能力の確保と安全で信頼性のある基礎モデルの普及を行う新しい政府-産業特別委員会を構築する予定である。
政府の大きな野望である、安全で信頼のある基盤モデルを実行するため、最初の投資額が1億ポンドであると首相と科学大臣から発表された。
この特別委員会はCovid-19のワクチン特別委員会の成功例をモデルとしており、人工知能の安全性及び信頼性を経済全体で利用し、英国がその戦略的技術において世界的な競争力があることを保証することを目的としている。
ChatGPTやGoogle Bardのような大規模な言語モデルを含む基盤モデルは、テキスト、画像、動画、音声などの膨大なデータで学習し、多くのタスクで幅広く高度な能力を獲得する人工知能システムのカテゴリである。
AIは英国のGDPに何十億ポンドも貢献すると言われており、タスクフォースの活動は、経済を成長させるという首相の優先事項を実現すると同時に、より良い公共サービスを通じて、国中の人々により良い結果をもたらすことに繋がるだろう。調査によると、このようなシステムを広く採用することで、国の生産性成長率が3倍になる可能性がある。医療分野では、AIは診断時間の短縮、新薬の発見と開発に大きな可能性を秘めている。教育分野では、教師の日常の業務に変革をもたらし、優れた教育の提供を可能とする。
また、このテクノロジーは、10年間で世界のGDPを7%引き上げると予測されており、その導入は英国経済を成長させる重要な機会となっている。このようなシステムに対する企業や国民の信頼を支え、導入を促進するために、タスクフォースは、科学的、及び商業的なレベルで基礎モデルの安全性と信頼性を開発するために、この分野と協力する予定である。この投資は英国の”主権的“な国家能力を構築し、公共サービスがAIの変革の影響から恩恵を受けることができるようになる。特別委員会は、英国を基礎モデルと経済分野への応用における世界的リーダーとして確立し、AIの安全性に関する世界的旗手として活動する機会に焦点を当てる。
資金は国内のイノベーションの機会を創出するために、基礎モデルのインフラと公共サービス調達に投資する。公共サービスを対象とした最初のパイロット版は、今後6ヶ月で開始される予定である。先月Integrated Review Refresh の一環として発表された特別委員会は、政府と産業の専門家を結集し、その活動は首相と科学大臣に直接報告される。
これは先週の閣議で、AIの変革の可能性、AIの使用に対する国民の信頼性を維持することの重要性、及びイノベーションを妨げることなく、また人々の安全性を保つ必要等に閣僚が合意したことを受けている。
Department for Science, Innovation and Technology (DSIT):
https://www.gov.uk/government/news/initial-100-million-for-expert-taskforce-to-help-uk-build-and-adopt-next-generation-of-safe-ai


(13) 新しい事例研究で大学やカレッジ閉鎖の危機に対するOfSの回答を説明
2023年4月25日、学生局( Office for Students:OfS)は閉鎖の危機にある大学やその他の高等教育機関に対する説明のため、一連の事例研究を発表した。
事例研究はOfSがいくつかの大学やカレッジの学生の保護をするために行った様々な介入をあげている。また、OfSはそれぞれの大学やカレッジの財政的な持続可能性やリスクに対してどのように監視し、介入するか、いくつかの概要を記載している。
ケーススタディでは、OfS が行った正式な規制措置の一部(学生保護指示の発動など)を紹介するとともに、 大学やカレッジが閉鎖された場合に学生の利益を守るその他の活動も紹介している。OfSは一般的に、大学やカレッジの学生にとって不利益となる可能性が高まるため、これらの問題について即時にコメントすることはない。
事例の中には、昨年のAcademy of Live & Recorded Arts(ALRA)の財政的な懸念に対する対応も含まれている。ロンドンとウィガンにキャンパスがある演劇学校は2022年に閉鎖された。OfSや他の機関による集中的な作業により、ALRAのすべての学生は、Rose Bruford Collegeで勉学の継続が可能であった。その他の事例として、財政的な問題で対応が成功したものがあるが、大学名は匿名となっている。
事例では、OfSがとった正式な規制措置の一部(学生の保護の実施など)や、その他の大学やカレッジが閉鎖した時の学生の利益を保護する活動等がある。
ALRAの場合、OfSはALRAの重要人物、また、その認証パートナーである教育省、OIA学生ローン社を結集させた。それらの機関が数か月に渡り密に協力し、学生が学業の継続や単位の取得のため様々な選択肢を検討することができるよう、Rose Bruford College の支援と同意に至った。
OfSに登録しているすべての大学やカレッジは、良好な財政状態を示さなくてはならない。OfSは適切な規制措置を取るだけでなく、それぞれの機関の財政的な状況を監視し、高等教育機関の傾向やリスクに関する分析を収集し、発表している。
合計250の大学やその他の高等教育機関は、2021年度のOfSの年次財政報告書を作成する必要があった。それらは以下のとおりである:
• 最初の選別過程後、117大学が更に評価の対象となった。
• 51の機関に非公開の関与と監視が行われた。
• 31の機関に対して公式な監視を行った。
2021年4月に導入されて以来、3件の学生保護が実施されている。ALRAはOfSの成立以来、財政破綻した唯一の登録機関である。
Office for Student (OfS):
https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/new-case-studies-explain-how-ofs-responds-to-risk-of-closure-at-universities-and-colleges/


(14) 英国の学生ローンに過去最高額となる48億ポンド以上の利息を付与
2023年4月25日 、Guardian紙はイングランドとウエールズの金利利息が政府の上限である6.3%に達し、1年で2倍以上となったことを伝えた。
公式の数字によると、Rishi Sunak政権は学生ローンの利息徴収額が2倍となったことを明らかにし、大学卒業者はイングランド銀行が設定した金利の約2倍の借入金に直面することとなった。
英国国家統計局(Office for National Statistics: ONS)によると、学生ローンの利息は3月までの12か月間の間に48億ポンドに膨れ上がった。前年度の23億ポンドから増加し、これまでの年間総額としては過去最高のものとなった。
40年ぶりにインフレ率が高水準に達したため、昨年、政府はイングランドとウエールズの学生ローンの金利の上限を設定し、借入金の更なる上昇を防ごうとしたにもかかわらず、高騰した。
教育省(Department for Education: DfE)は昨年、学生ローンの金利を最大で6.3%に設定したが、その後さらに上昇し、現在のところ6.9%の水準である。政府は主要銀行の個人向け無担保ローン(unsecured personal loans)の市場金利の上昇を反映するために、6月初旬から7.3%に再び金利引き上げを行う予定である。2021/22学事年度に入学した学生は、コースを修了した時点での平均負債額は45,800ポンドとなると予想されている。2021/22学事年度のフルタイムの新入生達の20%が全額返済を行うと政府は予想している。
イングランドでは毎年150万人の学生に200億ポンドを貸し付けているが、ローンの残金は1,800億ポンド以上となっている。
Boris Johnson氏の政権末期に開始されたこの金利上限は、12%の景気増加の妨げとなった。以前はロシアのウクライナ侵攻で上昇した小売り物価指数(retails prices index: RPI)のインフレ率に3%を載せて算出していた。
政府は生活費危機の中でさらなる打撃を与えないように、”学生のための公平な条件“として上限を導入し、学生ローンの金利率の引き下げとしては過去最高規模のものであるとされている。
しかし、政府の制限は学生ローンの金利が4.5%近くになった1年前から大幅に上昇しており、イングランド銀行の現在の基準標準金利4.25%のおよそ2倍ぐらいになっている。
2012年以前に大学に進学した学生に対する金利も上昇しており、この1年間で1.5%から5%に上昇している。このような学生の場合、請求される金利は、RPIのインフレ率、もしくは銀行金利プラス1%のどちらか低い方の利率が適用される。
学生が卒業と同時に多額の負債をかかえることになり、世代間や低所得家庭出身者と富裕家庭出身者との間の格差が拡大すると指摘されている。
英財政研究所(Institution for Fiscal Studies:IFS)の経済学者であるBen Waltman氏は、現政府の2012年以降の制限は”高すぎる“とし、政府は政府自身の借入のコストを反映した、低く安定した金利に設定するように求めた。
「政府の借入のコストより高い金利は、たとえ学生や社会にとって最良の選択であっても、大学進学希望者の一部が進学を断念する可能性がある。また、自身でローン返済をする者と、恐らく住宅ローンを使ってもっと安い金利で借入することで両親からの援助を受けた学生との間で不公平さが起こる。」と述べた。
Guardian:
https://www.theguardian.com/money/2023/apr/25/record-48bn-interest-added-to-student-debt-in-britain-last-year


(15) 高等教育機関データ:財政 2021/22学事年度
2023年4月25日、 高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)は高等教育機関の2021/22学事年度財政データを発表した。
2021/22学事年度の英国高等教育機関の総収入は469億ポンドであった。(期限までに提出ができなかった21の高等教育機関のデータは除く。)総支出額は509億ポンドで、その年の多額な年金支給調整費の影響を受けた。
このデータは、267の高等校幾機関での2021/22学事年度の収入は246億ポンド(53%)であり、それは学費と教育契約によるものであることを示している。これは英国出身でない学生の学費も含まれており、総収入の21%に当たる100億ポンドを占めていた。高等教育機関の収入の12%は資金提供機関、15%は研究助成金や契約からの収入であった。
職員の人件費は高等教育機関の支出の60%であった。人件費の分析によると、年金規定の変更と年金調整で、年間69億ポンドが加えられ、90の機関では1,000万ポンド以上が年金調整費として記録されている。これは通常の年間費用ではないため、2021/22学事年度の基本的な財務成績を反映しているものではない。同日に発表された主要な財政指標は年金調整費を含んでいるものと含んでいないものがあり、それぞれの大学の指標によるものである。
本日発表されたその他の情報として、総準備金で588億ポンド、資本支出データとして年間総支出41億ポンドも計上されていることがわかった。
2021/22学事年度の新しい表は、学生局(Office for Students: OfS)の進学・参加計画に提出しているイギリスの139の高等教育機関の投資に関して報告している。高等教育機関は、2021/22年度には進学・参加計画に6億7,400万ポンドを投資していた。そのほかの表では、高等教育機関の収入源、支出の種類、キャッシュ・フロー、上級職員の給与も示されている。
英国高等教育機関のデータ・財政:https://www.hesa.ac.uk/data-and-analysis/finances
Higher Education Statistics Agency (HESA):
https://www.hesa.ac.uk/news/25-04-2023/higher-education-provider-data-finance-202122

(16) 英国:2021/22学事年度における非EU圏出身学生からの学費徴収額は約90億ポンドに達する
2023年4月28日、Pie Newsは2021/22学事年では非EU圏から学生は学費として約90億ポンドを支払い、2016/17学事年度から90%の増加したことを伝えた。
2016/17学事年度の英国高等教育機関の非EU圏の学生数は312,795人で、学費は総額46億ポンドであった。高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)によると、2021/22学事年度では非EU圏の学生数は559,825人で学費は89億ポンドであった。
EUからの学生の学費総額として、2016/17学事年では138,040人が入学して10.2億ポンドであり、2021/22学事年度では120,140人の入学で10.6億ポンドと増加した。
最新のデータによると、2020/21学事年度では、EU学生は学費として13.9億ポンド支払ったが、例年より減少している。
多くの高等教育機関では、非EU圏の学生からの収入が英国国内の学生よりも高いことが新しい統計で分かった。
University College London では学費総額が7億1,200万ポンドと増加したが、5億100万ポンドが非EU圏の学生からの収入であった。
The University of Manchester の非EU圏の学生は学費として3億7,400ポンドも貢献しているが、英国内とEUの学生からによる学費は2億4,200万ポンドであった。
King’s College London、The University of Leeds, The University of Edinburgh, The University of Warwick, Imperial College, University of Glasgowは非EU圏の学生の学費の総額が英国とEU学生の学費の支払い総額よりも上回った。
学費収入総額の上位10位内の大学で The Open University, University of Nottingham、The University of Birminghamだけが英国出身とEU学生の学費が非EU圏の学生の学費を上回っている。
ラッセルグループの24の大学でUniversity of Oxford, University of Cambridge, London School of Economic and Political Science, University College London を含む14の大学が英国とEU学生よりも非EU圏の学生からの学費が多かった。
Durham University は非EU圏の学生から1億2,690万ポンド、英国出身学生から1億2,650万ポンド、EU学生からは700万ポンドの学費を徴収した。2016/17学事年度から2021/22学事年度の5年間で、非EU圏の学生が払う平均学費は14,895ポンドから15,946ポンドに上昇したとデータは示している。
英国は留学生数の目標数である60万人を10年前倒しで達成したことは有名であるが、最新のデータでは、2021/22学事年度の留学生数は679,970人となっている。
もし、非EU圏の平均学費が同様なペースで今後10年間上昇した場合、平均学費が18,256ポンドとなる。2030年までに英国は60万人の留学生の受け入れを目標としていたが、教育輸出を350億ポンド相当に増加することも目標にしており、学費収入もその一環であろう。
2017年のHESAとKaplanの分析では、EU学生の学費が高くなるとその需要が減る一方で、英国にいるEU学生の学費を上昇することで学費収入が増えることを示唆している。
以前の目標であった、2020年までに300億ポンドという目標は達成できなかった。トランスナショナル教育の輸出とEdtechの選択肢で、英国が新たな目標達成が望まれている。
HESAのデータ:https://www.hesa.ac.uk/data-and-analysis/finances/income#sources
Pie News:
https://thepienews.com/news/non-eu-students-in-uk-contributed-9bn-in-tuition-in-202122/