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UK HE Information

2023年5月英国高等教育及び学術情報

2023年8月10日

(1) 英国での雇用は非EU学生よりもEU学生が多い

(2) UKRIは奨学金と大学院研究に関する協議を発表

(3) 労働党は学費無料の公約から移行を決定

(4) 大学院生の育児制度の利用援助を政府に要請

(5) 英国大学がSpringer Natureとのオープンアクセス出版契約で合意

(6) スコットランド政府による2,000万ポンドの投資撤回により更なる危機に直面する大学

(7) 欧州研究会議の概念実証基金の最新の応募で英国がトップとなる

(8) 英国の健康研究の未来に危機:緊急の対応が必要

(9) 高等教育(言論の自由)法案が国会を通過

(10) 英国とEUは未だにホライズン・ヨーロッパ参加について交渉中

(11) 英国政府、移民数増加で留学生の扶養家族ビザの制限

(12) 英国のトップ研究所がより新しい備品や設備の質向上のため1億300万ポンドの政府基金を受け取る

(13) 発覚:裕福層の学生は貧困層の学生より学位取得の費用が少ない

(14) 英国と日本が科学技術で関係の強化

(15) 大学の財政状況は良好、ただし留学生への過度な依存などの危険

(16) 英国の半導体部門のために新しい10億ポンド戦略

(17) 英国の産業界と学術界が先端技術研究で提携

(18) イングランドの大学生の6人に1人は海外に居住している

(19) 大学卒業後の進路調査のデータ統計発表:2020/21学事年度

 

(1) 英国での雇用は非EU学生よりもEU学生が多い

2023年5月1日、Pie Newsは英国国家統計局(Office for National Statistics: ONS)が最近発表したデータにより、EU圏出身の留学生のイングランドとウェールズにおける雇用が非EU圏出身者よりも多いことが判明したと報じた。ONSは2021年の国勢調査データを利用して、イングランドとウェールズの留学生数を調査した。このデータによれば、EU出身者が雇用されている割合は47.1%であり、非EU圏出身者は24.6%だった。ONSはこの理由として、EU市民が歴史的に英国で労働権利を持っていることを挙げている。EU出身の留学生の雇用は、ウェールズ(36.7%)よりもイングランド(47.5%)でより多かった。留学生の3人に1人が就業しており、東欧の国々からの留学生は勉学と並行して高い就職率を示している(ルーマニア:73.9%、ブルガリア:62.3%、ポーランド:56.7%、リトアニア:56.0%)。

「これはEUの権利に対する負の遺産の問題があると思う。しかしそのうち、現在の学生経験の結果からそれを検証できるはずである。」と、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)の所長であるNick Hillman氏はPie Newsに対して答えた。

英国大学協会国際部(Universities UK International: UUKi)は、EU圏の学生と非EU圏の学生の雇用率に大きな違いがある一方で、ONSのデータによれば失業率はあまり大差がないことを示している(EU圏は8.3%、非EUは11.5%)。これらのデータは、積極的に求職する非EU圏の学生の割合がEUの学生と比べてそれほど多くないことを示唆している。非EU圏の学生は経済的に活動していない(雇用されていない、もしくは積極的に職探ししていない)割合がEU学生よりも高いという事実で、いくつかの要因が説明できるのではないかと思われる。例えば、非EU圏の学生はEU圏の学生よりも1年間の修士課程に進む割合が高い。そのようなプログラムはより集中的であり、アルバイトの時間を取ることが少なくなる。EUの学生は学部生である可能性がより高い。

「国勢調査は貴重なデータ元であり、英国の留学生の人口数や内務省のビザのデータ、高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)の学生記録など他の補足的なデータ元とともに、理解に貢献している。」と、UUKiの広報担当者はPie Newsに語った。

ONSの報告書によると、2021年の国勢調査時点で、イングランドとウェールズにはUK出身でなく、英国のパスポートを持たない留学生が373,600人いた。HESAの高等教育学生統計によれば、2020/21学事年度には英国出身でないフルタイムの高等教育機関に在籍している学生は推定で562,995人であり、国勢調査データを使用した人口規模の推定数(373,600人)を大きく上回っている。これは2021/22学事年度において学期中に滞在先にいない1年生の増加が原因の一つと考えられる。

Pie News:

https://thepienews.com/news/eu-born-employed-in-uk/

 

 

(2) UKRIは奨学金と大学院研究に関する協議を発表

2023年5月2日、UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、2023年から2024年の最低額の奨学金の引き上げについて発表した。

2023年から2024年の奨学金の最低額:

・UKRIの資金提供を獲得した博士課程の学生は、生活費として非課税で受け取れる  

 最低奨学金額が2023学事年度から2024学事年度にかけて18,622ポンドに引き上 

 げられる

・大学がUKRIの研修基金から受けられる最低額も増加し4,712ポンドとなった

UKRIの人材・文化促進部長であるMelanie Welham氏のコメント:

「大学院研究研修は、英国の野望である研究・イノベーションを先導する国を支える専門性の進展に大きく貢献するものである。本日の発表はUKRIが博士課程の学生を支援する継続的な取り組みについて示している。この対応は英国があらゆる出身背景を持つ大学院生にとって研究や研修を受ける最高の場所であり続けるための長期的な計画の一環である。」

新しい合意の進行状況 

奨学金の増加とともにUKRIは2つの関連報告を発表した:

・大学研究の新たな対応に関する意見募集の分析

・UKRIの研修助成金の条件における平等、多様性、包括性の観点からの分析とレビュー

これらの報告書は、2022年に情報の募集が開始されて以来、UKRIが行ってきた他の活動を基に構築されている。

・2年間で最低奨学金を現金ベースで20%増加させる

・博士課程の支援のため、イングランドの大学に対するリサーチ・イングランド  

 (Research England: RE) の助成金を増加させる

・UKRIの博士課程研修投資全体において、優れた監視事例を支援するためにUK

 Council for Graduate Educationに委託し、2022年に発表した

・共同人材基金の活動の一環として、UKRIの博士課程の学生に対して一貫したオファ

 ーを提示するための作業を開始した

・2022年の助成金獲得者の調査を受けて、学生募集における平等、多様性、包括性に

 関する改善の助言を集め、2023年の年末までに自然環境研究会議(Natural

 Environment Research Council: NERC)の学生募集の優れた事例をUKRI全体で採用する

 予定

次の段階として、UKRIはさまざまな意見を活用し、研究界と協力して、熟考された回答を夏前までに提案するために積極的に取り組んでいる。

UK Research and Innovation (UKRI):

https://www.ukri.org/news/ukri-publishes-stipend-and-postgraduate-research-consultation/

関連記事 2023年5月23日掲載

Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-universities-2023-5-phd-students-call-for-more-robust-support-amid-cost-of-living-crisis/

 

 

(3) 労働党は学費無料の公約から移行を決定

2023年5月2日、Research Professional Newsは労働党の党首であるKeir Starmer氏とその他の党員がイングランドの学費に関する公約を再考する動きを伝えた。

「大学の財政が不安定であるために、労働党が学費無料政策を提供するために学生と納税者の間でバランスを取る方法を慎重に検討しなければならない」と、同党の議員の一人が述べた。

これは、労働党が次回の選挙に向けてイングランドの大学の学部の学費を無料とする方針を捨てると言われている中で発表されたが、長年掲げてきたこの公約に代わるものの詳細は不明である。ケンブリッジ選出の労働党議員であるDaniel Zeichner氏は、Research Professional Newsに対して、「党の方針はNational Policy Forumを通して労働党員と関係組合で決定されるだろう」と述べた。

「大学が直面している財政の不安定性を考慮すると、学生の日常生活費を確保しつつ、学生や雇用者も含む納税者との良いバランスを慎重に検討することは正しいことだ。」と大学の超党派グループの共同議長であるZeichner氏は述べた。

労働党は、当時の党首であったJeremy Corbyn氏が2019年の総選挙の選挙公約としてこの公約を含めて以来、学費廃止を労働党の中で公に支持している。Corbyn氏の前任者であるEd Miliband氏も、大学の年間学費の上限を6,000ポンドまで引き下げることを希望していた。

5月2日にBBC Radio 4に出演した現労働党党首であるKeir Starmer氏は、この公約に関して「撤回を検討している」ことや、「大学の助成金に関して様々な選択肢を検討をしている」ことを述べ、現行の制度が不公平であると評した。

「2019年の財政状況と現在は異なることに気づき、我々は学費の廃止という公約から移行する可能性がある。」とStarmer氏は述べた。

大学組合(University and College Union: UCU)の書記長であるJo Grady氏は、Starmer氏が学費無料の公約を破ったことに対して「心底がっかりした。」と述べた。

「この国は公的資金による高等教育制度がどうしても必要である。」とGrady氏は語った。

投票日

このコメントは、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)が4月4日から19日にかけて実施した、英国全体の1,008人を対象とした調査の結果に基づいている。野党の学費政策としてどうするべきかを質問したところ、28%の学生は学費廃止とし、23%は労働党に学費を6,000ポンドまで引き下げるように公約に掲げてほしいと回答した。イングランド出身の学生の20%は、現行の学費である9,250ポンドを支持すべきであり、15%は3,000ポンドに引き下げるべきであると回答している。また、4%は卒業税の導入を支持している。一方で、85%の回答者は、次回の総選挙では投票すると答えている。また、46%は総選挙が近く実施されれば労働党に、11%は緑の党、7%は保守党に投票すると答えている。

「以前、学生は国民全体よりも労働党を支持する傾向があった。しかし、現在はほぼ全国民と同じような傾向になっている。しかし、学生は国民全体よりも保守党に投票することが少ない傾向にあり、14人に1人(7%)が保守党に投票する予定である。」とHEPIは分析した。

HEPIの所長であるNick Hillman氏は、この世論調査は「学生が政党政治に関して関心がないと考えることは間違っているということを示している」と述べた。

「この結果は、学部生からの投票が少ないとされる保守党にとってはあまり喜ばしいものではない。労働党にとっては良い結果ではあるが、学生から圧倒的に人気のある学生助成金モデルは存在しないことは明確である。」と述べた。

Hillman氏は、この結果により、「野党が次回の総選挙に向けて彼らの政策方針を固めることが、より困難になった」と語った。

Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-politics-2023-5-labour-set-to-move-on-from-free-tuition-fee-pledge/

 

 

(4) 大学院生の育児制度の利用援助を政府に要請

2023年5月3日、N8 Research Partnershipは、研究コミュニティ全体として、大学院生による保育補助金の利用を可能にするよう政府に要請した。N8に属する8人の学長は、閣僚に宛てた書簡で、政府が支援する保育補助金を大学院生が利用できないため、研究にさまざまな悪影響が生じていると説明している。

書簡を送付した閣僚は以下のとおり:

Mel Stride 議員(労働・年金大臣)

Gillian Keegan 議員(教育大臣)

Chole Smith 議員(科学・イノベーション・テクノロジー大臣)

また、ビジネス・エネルギー・産業戦略省の影の大臣であるChi Onwurah議員にも書簡を送付した。

N8の介入は、Bath、Bristol、Cardiff、Exeterの4つの大学から成るGW4アライアンスが、先月、Michelle Donelan議員(科学・イノベーション・テクノロジー大臣:産休中)とGillian Keegan議員に対して、幼い子供を持つ親が大学院で資格を取得する重要性についての書簡を送付したことによるものである。N8 Research Partnershipは、イングランドの北部に位置するDurham、Lancaster、Leeds、Liverpool、Manchester、Newcastle、Sheffield、Yorkの大学で構成されており、研究とイノベーションの促進、及びイングランド北部や他の地域の経済とコミュニティに利益をもたらすことを目的としている。GW4 Allianceは、Bath、Bristol、Cardiff、Exeterの4つの研究集約型の大学で構成され、研究者同士の交流や共同研究の促進を強化することを目的として、2013年1月に設立された。

N8 Research Partnership:

https://www.n8research.org.uk/n8-research-partnership-joins-calls-for-government-to-help-post-graduate-researchers-access-childcare-schemes/

 

 

(5) 英国大学がSpringer Natureとのオープンアクセス出版契約で合意

2023年5月3日、JISCが主導した1年間にわたる交渉の結果、英国の大学はSpringer Natureと新たに3年間の購読および出版に関するオープンアクセス(OA)の合意に達した。この契約により、Nature誌、Natureの研究ジャーナル、Palgraveのポートフォリオを含む2,500件以上のSpringer Natureの出版物が、すべて即座にオープンアクセスとして利用できるようになり、高等教育機関のコスト削減の要望にも応えることとなった。また、研究者や所属機関が研究資金提供者のオープンアクセスの要件を満たすことに役立つことが期待される。Springer Natureからの最新の提案に対する協議の結果、回答者110人全員がこの提案を「多くの条件付き」で受け入れていることが明らかになった。回答者は、契約外のOA出版に伴う高額な費用や、Springer Natureの論文処理料(Article processing charges: APCs)の計算方法の透明性について懸念を抱いていた。また、回答者のコメントの中には、Springer Natureの著作権保持方法に対する意見もあった。これは、Springer NatureがゴールドOAに取り組んでいることから、世界の公平なOA出版に対して障壁となっているという意見もあった。

今回の合意の重要なポイントは以下のとおり(一部抜粋):

・この合意により、すべての高等教育機関が実質的なコスト削減を実現できることに

 なった

・SpringerとPalgraveの購読とOAのハイブリッドが無制限のオープンアクセスに含ま

 れた

・Nature誌とNatureの研究ジャーナル誌のオープンアクセス出版には上限があり、モ

 デリングでは上限については問題ないと示されている(ただし、上限を超えた場

 合、著者は最終手段としてグリーンOAを利用することができる)

・この契約にはSpringer NatureのオープンアクセスポートフォリオのAPCで15%割引

 が適用され、古い文献(5年以上前)のAPCは年間の上限が設定されるとともに、

 オプトインの完全なオープンアクセスフレームワークも含まれている。

・前払い、後払い、利用払いの選択肢が提供される

UUK/Jiscコンテンツ交渉戦略グループは、Springer Natureとの話し合いにおいて中心的な役割を果たした。その議長であるGlasgow Caledonian Universityの学長であるStephen Decent教授は以下のようにコメントしている:

「この合意により、Springer Natureのジャーナルなど2,500誌のオープンアクセスが提供されることで、英国の研究界の影響とその範囲がさらに拡大するだろう。つまり、英国の研究者によって毎年出版される6,000件以上の論文を誰でも無料で読むことができ、再利用され、新たな発見やイノベーションが加速されることになる。また、この契約はコスト削減をもたらし、英国の研究全体に高水準のオープンアクセスを提供することにより、公的資金をより有効に活用することにもなる。一方で、この契約はまだ完全にアクセス可能なオープンな研究という目標には到達していない。しかし、より包括的でオープンな研究文化が必要であり、研究成果や発表場所に関わらず、研究へのすべての貢献が評価されるべきである。英国の研究界は国際的な同僚と協力し、出版機会や知識の普遍的な公正さを確保するために取り組む必要がある。」

 

Springer Natureの商業担当者であるCarolyn Honour氏のコメント:

「英国の高等教育機関との8年にわたるOAパートナーシップは、英国におけるオープンアクセスの推進に重要な役割を果たしている。30,000を超える研究論文がOA化され、研究の利用量が10倍に増加したことは、英国の研究がこれまで以上に読まれ、利用されていることを意味し、英国が研究の出版において世界的なリーダーシップを果たしていることを意味している。今回の合意により、Springer Natureのすべてのジャーナルを網羅し、英国の研究のアクセスを拡大し、さまざまな機関や分野での出版を促進することに誇りを感じている。オープンアクセスやオープンサイエンスが著者や研究者だけでなく、社会全体にもたらす利益を強く信じている。データやリソースの公開を通じて透明性を確保し、目標に向けて世界のパートナーと広範な協力を続けていきたいと考えている。」

 

備考

Jisc:

英国の高等教育機関にデジタルサービスを提供する非営利団体

ゴールドオープンアクセス:

研究成果を公開するために著者が出版社に料金を支払い、出版社がその論文をオープンアクセスとして公開することを指す。誰もが無料でアクセスできるため、研究成果を広く公開し、研究者や機関にとって有益な手段であるが、高額な掲載料が問題となっている。また、一部の分野ではオープンアクセスの需要が低いという課題もあり、その利用は慎重に行う必要がある。

グリーンオープンアクセス:

研究者が自身の研究成果を出版前に自らオンラインで無料公開することを指す。これにより研究がオープンアクセスとなり、世界中から無料でアクセスできるようになる。

the UK digital, data and technology agency focused on tertiary education, research and innovation (Jisc):

https://www.jisc.ac.uk/news/uk-universities-agree-open-access-publishing-deal-with-springer-nature-03-may-2023

 

 

(6) スコットランド政府による2,000万ポンドの投資撤回により更なる危機に直面する大学

2023年5月5日、英国大学協会(Universities UK: UUK)の中で、スコットランドの大学を代表するスコットランド大学協会(Universities Scotland: US)は、スコットランド政府が12月の予算で発表した大学への2,000万ポンドの追加投資を撤回することを発表した。これにより、スコットランドの大学は実質的な予算削減となり、深刻な資金不足となっている。スコットランド大学連合(Universities Scotland)の議長であり、University of St Andrewsの学長でもあるDame Sarah Mapstone教授は、スコットランドの新聞 "The Scotsman" に寄稿し、その内容が同紙の見出し一面記事として報道された。Mapstone教授は次のように述べている:

「予算が厳しい時には、政府が難しい選択をしなければならないことは理解しているが、この選択は、新しい政権の優先順位を大いに示している。この決定は目先の問題に過度に焦点を当てており、対立的であり、スコットランド政府が高等教育の真の価値を理解しているか疑問視されるものである。高等教育への投資の断念という選択は、学生、職員、そしてより良いスコットランド、ひいてはより良い世界を築くという貢献にとって大きな打撃となりうる。」

Mapstone教授は、スコットランド政府に対し、スコットランド資金調達評議会(Scotland Funding Council)の配分で大学が直面する経営衰退について、既に警告していると述べた。現在、大学はこの撤回によってさらなる困難に直面している。スコットランド議会議員の中にはこの撤回に驚いている人もいる。Stephen Kerr議員はスコットランド議会で緊急質問を行い、なぜこの撤回が行われたのかを尋ねた。

「スコットランド政府は、スコットランドのカレッジや大学に対する4,600万ポンドの削減についてさらなる説明をする予定があるのか?」と質問した。

Universities Scotland (US):

https://www.universities-scotland.ac.uk/20mcut/#

 

 

(7) 欧州研究会議の概念実証基金の最新の応募で英国がトップとなる

2023年5月9日、Research Professional Newsは、欧州研究会議(European Research Council: ERC)の概念実証(Proof-of-Concept: PoC)助成金の最新の応募において、現在、研究者を受け入れることができないにもかかわらず、英国が最も人気があるホスト国であることが証明されたことを伝えた。ERCは5月5日にPoC助成金の今回の応募で受賞した66人のうち、12人が英国での研究を希望しており、これは2位のドイツの9人やスペインの8人よりも多い数となった。PoC助成金は、過去にERCの助成金を受けた基礎研究者のみが対象となる。採択された研究者は、以前の研究における商業的もしくは社会的な可能性を探るために、それぞれ15万ユーロが支給される。この助成金は宇宙廃棄物から生物の影響まで、様々な分野に資金提供されている。最新の受賞者は、2023年の3つのPoC助成金のうちの一つに選ばれ、122件の提案の中から選出された。ERCの助成金はEUの2021年から2027年までの研究・イノベーション・プログラムである「ホライズン・ヨーロッパ」の一部であり、その助成金はEUの加盟国またはプログラムに参加している国にのみ運用されることができます。英国のホライズン・ヨーロッパへの参加はまだ交渉中の段階である。英国で研究することを希望する12人の研究者が助成金の受け取り手続きを行う前に問題が解決しない場合、研究者たちは代わりの国に移動するか、英国政府からの代替の助成金を受け取るかを決定しなければならない。

Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-europe-horizon-2020-2023-5-uk-tops-latest-round-of-erc-proof-of-concept-funding/

 

 

(8) 英国の健康研究の未来に危機:緊急の対応が必要

2023年5月10日、英国医科学アカデミー(The Academy of Medical Sciences: AMS)は最新の報告書を発表し、英国の健康研究における非常に優れた強みと、それが社会にもたらす価値を失わせることを防ぐための即座の行動を呼びかけている。同日に発表された報告書 ”Future-proofing UK Health Research: a people-centered, coordinated approach(将来に向けた英国の健康研究:人々を中心に据えた協調的なアプローチ)”では、英国の健康研究の主要な脅威とその保護方法の詳細が述べられている。例えば、ヒトゲノムの解読や救命ワクチンの開発など、世界的に有名な飛躍的な先駆的研究が行われ、人命が救われている。また、医療研究への公的投資1ポンドに対して、毎年約25ペンスのリターンがあり、経済的にも貢献している。この報告書では、持続可能な将来の研究と、すべての人々に健康の恩恵を最大限にもたらすために、協調的な取り組みを呼びかけている。これには、英国全体の政府機関、公的機関および慈善団体の資金提供者、高等教育機関、産業界、NHSのリーダー、患者、介護者、一般の人々が関与する必要がある。報告書の結論として、英国の健康研究が当然のものとして扱われる危険性があるとし、改善策と将来への取り組みが述べられている。この報告書は、英国全体から30人の専門家によって作成された。その中には新興研究のリーダー、患者、介護者、一般の人々、公的および民間の慈善団体の代表などが含まれている。FMedSciのDame Julia Goodfellow教授やFRSE FMedSciのPeter Mathieson教授が議長を務めるグループは、健康研究システムの強みを分析し、英国が長期的に健康と経済的な利益をもたらす能力を脅かす要因を特定している。

報告書の主な結果は以下のとおり:

・英国の健康研究システムは人々を中心に据える必要がある。研究文化とキャリアの

 構造は狭く、柔軟性に欠け、不安定で閉鎖的なため、患者を含む多様な専門性を持

 つ個人の可能性を妨げている

・NHSの研究の可能性を最大限に引き出す必要がある

・大学の研究にかかる費用は資金提供者によって十分にカバーされておらず、留学生

 からの相互補完資金に依存している。優れた健康研究の真のコストを適切に資金

 化する必要がある

・研究者の公的および民間の研究機関間での流動性の不足に対処する必要があり、優れた

 人材が異なる部門を超えてキャリアを築けるようにする必要がある

NHSの重要な役割

負担の大きい医療システムにおいて、潜在能力を活かすため、英国全体のNHSは研究を事業計画の中心に据え、臨床ケアとの密接な関係を築く必要がある。最近の報告書では、業界主導の臨床試験への患者参加率が2017/18年から2021/22年にかけて44%減少していることが示されている。NHS、規制機関、資金提供者、大学は臨床研究者(医師、看護師、他の医療関係者)をサポートするために協力すべきである。これには、臨床研究者のサポートの改善や、医療専門家が研究に費やす時間を確保するための実験的な計画も含まれている。この報告書に協力したRashh Ai-Lamee博士は、自身の労働時間の70%を心臓疾患の症状の緩和のための臨床実験に費やし、30%は患者の診断に費やしている。

研究文化とキャリア

資金提供者と雇用主は、研究者の給与、契約、助成金申請において共同の努力をする必要があり、研究キャリアの不確実性や柔軟性の欠如に取り組むべきである。政府、資本提供者、規制機関はビザ申請や移民の費用に取り組み、国際的な資格の認知を向上させることで、世界の優れた人材を引き寄せることを妨げる障壁を取り除く必要がある。公的および慈善団体の資金提供者は、公平性、多様性、包括性に基づく根拠に基づいた戦略を通じて、健康研究のキャリアの包括性を高める必要がある。全ての資金提供者は、健康研究全般において患者や一般の人々の関与を組み込み、全ての研究の段階で有意義な参加を促すための資金配分と、一貫した公平な報酬を提供する必要がある。

The Academy of Medical Sciences (AMS):

https://acmedsci.ac.uk/more/news/future-proofing-research

 

 

(9) 高等教育(言論の自由)法案が国会を通過

2023年5月11日 ラッセルグループの最高責任者であるTim Bradshaw博士は、国会で高等教育(言論の自由)法案が通過した後にコメントを発表した。

「大学は常に、またこれからも学問の自由や、表現の自由が擁護される場所である。教職員一同、若者に様々な広い考えや見解に触れられる環境を提供できるよう、大変な努力を行っている。我々はこの法律のいくつかの部分に対して懸念があるが、そのことは自由で率直な知的交流を引き続き提供するという意志を妨げるものではない。ラッセルグループとその構成大学は学生局(Office for Students: OfS)と協力し、この法律の実施に対するガイダンスやそのほかの問題に関して討議していく。」

ラッセルグループの言論の自由に関する見解:https://russellgroup.ac.uk/media/5918/russell-group-statement-of-principles-on-freedom-of-speech.pdf

Russellgroup:

https://russellgroup.ac.uk/news/higher-education-freedom-of-speech-bill-clears-parliamentary-scrutiny/

 

 

(10) 英国とEUは未だにホライズン・ヨーロッパ参加について交渉中

2023年5月11日、Science Businessは欧州委員会(EU Commission)と英国政府の間で、英国が研究プログラムに参加するためにどの程度の支払いをするかについて議論が続いていることを伝えた。現在、英国のホライズン・ヨーロッパへの参加に関する交渉が進行中であり、英国政府はプログラムへの参加資金と英国拠点の研究者が受け取る金額の差をできる限り少なくする方法を模索している。英国政府はホライズン・ヨーロッパへの参加を支援しており、英国の研究者に資金を提供している。しかし、参加が不透明なため、EUの研究コミュニティとの十分な関与が難しくなり、研究コンソーシアムの設立や参加能力が低下している。そのため、もし参加に関する混乱が解消されたとしても、英国の研究者がすぐに全力で研究プログラムに取り組むことは困難であると予想される。ホライズン・ヨーロッパへの参加における最後の障害は、英国とEUで合意されたWindsor Frameworkに基づく、北アイルランドの立場に関する論争の解決によって明確になる予定だった。しかし、現在、両側はホライズン・ヨーロッパへの英国の財政的貢献の規模について交渉を行っている。英国政府によれば、2021年に開始された研究プログラムにおいて英国は含まれていないため、公平かつ均等な貢献が求められると主張している。欧州委員会は、2021年と2022年の支払いについては英国に要求しないとしているが、英国政府は、「研究者が研究に追いつくまでに時間がかかり、プログラムが数年間実施される間に研究者が不利な立場に置かれる」と主張している。2020年12月に英国とEUの間で合意された研究協定によれば、英国は自国のGDPに比例した額をホライズン・ヨーロッパに支払うことになっている。ただし、英国が2年連続で拠出額を8%以上超えた金額をホライズン・ヨーロッパから得た場合、EUにその差額を返還する必要がある。一方で、英国はもし財政的貢献が15%増加するか、英国の研究者がプログラムの10%以上を除外される場合、ホライズン・ヨーロッパへの参加を終了することができる。英国とEUの交渉に詳しい情報筋によると、もし英国の財政的貢献よりも、ホライズン・ヨーロッパから得られる金額が少ないことが予想される場合、ホライズン・ヨーロッパへの参加について財務省に対して説得することは困難になるだろう。英国政府はホライズン・ヨーロッパへの参加のために150億ユーロを確保しているが、既にその一部を財務省に返還しており、EUとの交渉が決裂した場合の代替研究・イノベーションプログラムであるPioneerの計画を発表している。政府は、2020年に合意した財政の条件が、ホライズン・ヨーロッパの採択率が高い英国の研究部門ともはや合致していないことを認めることを条件に、できるだけ早く協定を結ぶことを望んでいる。

欧州委員会は交渉の進行状況についてコメントを控えている。広報担当者は、「英国が参加していなかった期間に関する出資を期待していない」と述べており、EUの政策立案者は「研究とイノベーションの分野において英国との関係を深める努力を重ねている」と述べている。

欧州研究大学連合(League of European Research Universities: LERU)の事務局長であるKurt Dekerelaere氏は、「双方が合理的になり、お互いに利益をもたらす協定を目指すべきだ」と述べている。彼はまた、「最も重要なことは、英国も加入した、最終的に勝ち負けのない協定を達成することである」と述べている。

Science Business:

https://sciencebusiness.net/news/london-and-brussels-still-haggling-over-horizon-europe-association

 

(11) 英国政府、移民数増加で留学生の扶養家族ビザの制限

2023年5月11日、Pie Newsは留学生の扶養家族ビザが制限される可能性があることを報じた。ファイナンシャルタイムズの記事は、教育省(Department for Education: DfE)、内務省(Home Office)、財務省(HM Treasury)は、1年間の修士課程を修了する大学院留学生が家族を帯同して渡英することを制限する計画があると伝えている。英国の純移民数は5月下旬に記録的な数になると予想されており、政府は移民対策を講じる必要がある。2022年には家族と共に英国に入国する留学生の数が30%増加し、そのうち約10万人がインド人とナイジェリア人の学生の家族であった。英国大学協会国際部(Universities UK International: UUKI)の部長であるJamie Arrowsmith氏は、扶養家族の数が予想を上回って増加したため、政府にとって問題になっていると認識している。特に一部の地域では家族向けの宿泊施設が問題となっている。

Arrowsmith氏は「問題を理解し、政府と協力して英国を訪れる留学生を歓迎するための解決策を見つけるために努力していく」と述べている。

Oxford International Education Groupの最高責任者であるLil Bremernann-Richard氏は、「扶養家族ビザの制限が、多くの学生にとって英国での学びを不可能にする」と指摘している。彼はさらに「多様性のある人材を引きつけるためには、育児の代替手段や母国と英国を行き来する際の費用なども考慮する必要がある」と述べた。

内務省の広報担当者は、「国民は、我々が国境管理を行いつつも、経済や公共サービスが必要とするスキルを持つ人材を確保することは当然可能であると期待している。純移民数の削減に引き続き努力しながらも、我々はこの期待に応えられるよう努力していく」と述べた。

提案されている政策は、帯同家族を全面的に禁止するわけではなく、扶養家族ビザは一流大学で学ぶ学生にのみ付与される可能性がある。Times紙は、科学、数学、工学等、高い付加価値を持つコースで学ぶ学生のみに家族同行が許可されるようになると報じている。また、大学ランキングを利用して扶養家族の入国を制限する可能性も指摘されている。教育大臣であるGillian Keegan氏は、報道によればこの計画に合意したとされている。彼女は以前、留学生数の削減に反対する姿勢を示していたが、「英国が60万人以上の留学生を抱えていることを誇りに思う」と述べた。また、Keegan氏は、学生が卒業後に英国に滞在して就労する場合でも、家族帯同を可能とすることを望んでいると報道されている。

Arrowsmith氏はビザの制定において「明確さと確実性」を求め、政府は国際教育戦略で設定された目標と卒業ルートの維持に努めるべきだと述べた。これらは「英国で学びたいという人々にとって、英国が魅力的と考える理由と、英国が国際的な高等教育のリーダーであるという名声の核心である」と述べた。

過去10年間、様々な政治家が純移民数から留学生を除外するよう求めてきている。

Pie News:

https://thepienews.com/news/ukinternational-student-dependant-visas/

 

 

(12) 英国のトップ研究所がより新しい備品や設備の質向上のため1億300万ポンドの政府基金を受け取る

2023年5月13日、科学・イノベーション・テクノロジー省(DSIT)は、英国の科学研究施設における更なる研究品質向上のために、1億300万ポンドの投資を行うことを発表した。

・1億300万ポンドの投資は、英国のトップ研究者が最新鋭の機器や施設を利用でき

 るようにする

・科学大臣の産休の代行を務めるChole Smith科学大臣は、ケンブリッジのMRC分子

 生物学研究所(LMB)を訪問した

・この研究所は、UKRIの資金提供を受けている英国内でいくつかある世界的に有名な研

 究所の一つである

科学大臣より、「英国の科学研究施設は、既に世界トップクラスである研究インフラをさらにアップグレードし、新たな科学的飛躍をもたらすことを目指して、1億300万ポンドの政府資金を受け取ることになる」と発表がなされた。この投資は、英国の研究者が世界トップクラスの研究を続けるために、最高水準の施設と備品が利用可能となるよう支援することが目的である。全ての人々に利益をもたらし、世界を変えるような科学的飛躍を推進することが、英国全体の経済と雇用の創出の優先事項である。資金は、世界をリードする科学者が新たな最新鋭の機器を導入したり、既存の施設をアップグレードするために活用される。この資金提供は、政府が英国の科学界を継続して支援する意思を示し、今年初めに発表された英国の科学技術戦略の展望を推進し、人材や投資を誘致し、世界のトップレベルの科学とイノベーションを支援するために必要なインフラを確保することを示している。追加資金の1億300万ポンドは、EUプログラムであるホライズン・ヨーロッパの英国の参加の遅れの影響を補うために用意された保証金、1億5,000万ポンドのうちの一部(7,930万ポンド)と、科学技術への投資を通じてより良い英国を築くために発表された3億7,000万ポンドの予算の一部(2,370万ポンド)から賄われる。

この発表は、産休に入ったMichelle Donelan科学大臣から職務を引き継いだChole Smith科学大臣による初めての公式訪問とともに行われ、同氏は今後数か月にわたって科学省の活動を本格的に継続する。Smith氏はケンブリッジのLMBを訪れ、そこではノーベル賞受賞者達が電子低温顕微鏡法(クライオ電子顕微鏡法)を用い、タンパク質やウイルスなどの生体分子の構造を極めて高い解像度で研究しているところを視察した。この手法では、分子を極低温で凍結し、特殊な顕微鏡を使用して分子の画像を作成することができる。研究所への資金は最新鋭の機器への投資に充てられ、科学者がより詳細にタンパク質を観察し、認知症やアルツハイマーなどの人間の病気についてより深い理解を得られる可能性がある。これにより、予防可能な病気に対する革命的な手法を見つけ出し、科学者の協力によって人々を守るための薬品の開発の基盤となり、何千人もの命を救う可能性がある。

資金獲得活用の例:

・LMBに対して人間の病気のより深い理解と病気に対する強力な薬品の開発のための

 新たな機器の購入

・国立海洋学センター(National Oceanography Centre)に最新鋭の深海研究施設への堆

 積物コアスキャナーの導入

・University of Liverpoolの英国デジタルヘリテージセンターに、AI、ブロックチェー

 ン、メタバースなどの技術を活用した文化遺産の保存、促進、進歩の新たな方法を

 探求する最新鋭の施設への資金提供

Department for Science, Innovation and Technology (DSIT) :

https://www.gov.uk/government/news/top-uk-labs-to-receive-new-equipment-and-upgraded-facilities-from-103-million-government-fund

 

 

(13) 発覚:裕福層の学生は貧困層の学生より学位取得の費用が少ない

2023年5月13日、ガーディアン紙は、今年8月に導入される学生ローンの措置が「大変退行的」で、看護師や教師が最も悪影響を受ける可能性があるという調査結果を伝えた。政府の学生ローンの改定は、看護師や教師などの低・中所得者を犠牲にし、英国内の高所得者の卒業生に利益をもたらすことになると、新しい調査結果が示している。イングランドの学生ローンは10年以上にわたる大改革を経ており、多くの低所得者は生涯返済額が3万ポンド以上増加することになる。一方、高所得者は以前の条件と比較し、平均で生涯返済額が2万5,000ポンド減少すると、経済コンサルタント会社であるロンドン・エコノミクスの分析で明らかになった。この調査では、2030年までに年収が37,000ポンドの卒業生は、就業している間に63,100ポンドを返済し、年収が70,000ポンドの卒業生は返済額が55,000ポンドになると予測されている。

ロンドン・エコノミクスのGavan Conlon氏は「これは圧倒的に白人で男性の卒業生に有利となる巨額の補助金となり、非常に退行的である」と述べた。

イングランドのロイヤル・カレッジ・オブ・ナーシングの理事であるPatricia Marquis氏は「このような改定は、看護師の職員の間で明白な不平等を引き起こす、非常に不名誉なものになる」と述べた。彼女はさらに、「看護師は学生ローンの期間がより早くなり、より多くの返済をしなければならなくなる。NHSが職員の雇用と維持に直面している危機の中で、これは状況を悪化させるだけである」と述べた。

学生の資金と学費は、すべての主要政党にとって大きな政治問題になっている。野党党首のKeir Starmer氏は、学費の廃止という公約を取り下げることを認めたが、労働党は数週間以内に「より公平な解決策を提案する」と述べている。多くの若い有権者は経済的な困難に直面しており、保守党に対する支持を失っている。政府のインパクト評価によると、学生ローンの改革は女性や低所得者、恵まれない環境の出身者などのグループに「マイナスの影響」を及ぼす可能性が高いとされている。英国貴族院の監視委員会もこの改革が政府のレベリングアップ政策と矛盾していると警告している。ウェールズ政府は今月、これまでイングランドの学生支援制度に合わせてきたが、この改革には参加しないことを発表した。彼らは、「この措置は女性の卒業生に偏った影響を与え、高所得者に利益をもたらす」と述べている。

Intergenerational Foundationの最高責任者であるLiz Emerson氏は、「これらの改革は不平等を固定化するものである。利益を得るのは高所得者の卒業生だけだ」と述べた。

政府は2022年2月に、今年8月1日以降の学生に対して新しい学生ローンの内容を発表したが、最近のモデリングにより、この改革の全体像が明らかになった。この改革では、返済期間が30年から40年に延長され、返済開始年収額も25,000ポンドに引き下げられ、ローン返済の金利が小売物価指数(RPI)のインフレ率に引き下げられることになった。卒業生は基準額を超えた収入の9%を返済することになる。政府は、この措置により、ローンの全額返済をする卒業生の数が増え、学生ローンに対する納税者の負担が1ポンドにつき44ペンスから23ペンスに削減されると述べている。ロンドン・エコノミクスの推計によると、第1学位を取得した卒業生の平均的な負債は50,800ポンドとなっている。また、この改革は既に卒業した人々にも影響を与える。2012年9月1日から2023年7月31日までの期間にローンを組んだ人々は、2024/25学年度まで、返済開始年収額が27,295ポンドで凍結される。つまり、インフレ率と合わせて返済金額が上昇した場合よりも、最終的にはより多くの収入がローンに充てられることになる。返済開始の基準が低くなり、新しい借金の返済期間が40年に延長されることから、低・中所得者の返済額が大幅に増加することになる。つまり、多くの場合、低所得者は長期にわたって返済し、累計利息分も返済する必要があり、高所得者の卒業生よりも返済総額が多くなることになる。この措置は、2019年5月に発表されたPhilip Augarによる18歳以降の教育の見直しと、資金調達の報告書に基づく政府の対応の一環である。報告書では、恵まれない出自の学生に対して生活費の補助金を再導入することを提案していたが、これは採用されなかった。ほぼ全ての看護コースの卒業生は、生涯にわたるローン返済の大幅な増加に直面することになる。ロンドン・エコノミクスによると、男性看護師の場合、生涯返済額の平均は24,400ポンドから42,000ポンドと17,600ポンド増加し、女性の場合は10,700ポンドから26,000ポンドと15,300ポンド増加すると予測されている。政府の発表によれば、低所得者は最大174%、返済額が増加することになると明らかになっている。英国財政研究所(Institute for Fiscal Studies: IFS)は、この改革により、高所得者ではない人々にとって大学進学の魅力が半減する可能性があることを指摘している。

「この改革は低所得者により多くの負担を強い、高所得者にはより少ない負担を求めている」と、IFSの上級研究経済学者であるBen Waltmann氏は述べている。

英国学生連合(National Union of Students: NUS)の高等教育副会長であるChole Field氏は、「これは現行制度が学生や社会の役に立っていない証拠である。インフレに追いつけず、負担の増加や生活費の危機に苦しむ学生に対して何の恩恵ももたらせていない。大規模な改革が必要である。」と述べた。

政府は、「学生と納税者の両方にとって公平で持続可能な財政システムを採用することが重要である。我々は金利を小売物価指数(RPI)だけに引き下げ、新しい借入者は最初に借りた金額以上を返済する必要はない仕組みを作る。この改革により、これまで全体の借入者の20%しか全額返済できていなかったが、半分以上が全額返済できるようになる」と述べている。

さらに、「追加の支援が必要な学生に対して、追加で1,500万ポンドを提供し、今年の学生プレミア基金を2億7,600万ポンドに増額した」と付け加えた。

The Guardian :

https://www.theguardian.com/education/2023/may/13/nurses-teachers-student-loan-reforms-biggest-squeeze

関連記事

2023年5月13日 掲載

Guardian: Martin Lewis: “We must stop calling it a student loan”

https://www.theguardian.com/money/2023/may/13/martin-lewis-graduates-student-loans-finance-graduate-tax

 

(14) 英国と日本が科学技術で関係の強化

2023年5月15日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、英国と日本が科学技術に関する協定に署名したことを発表した。英国と日本は、長年にわたる緊密な関係の上で、科学技術の協定に署名したことを発表した。この協定は、昨年12月に国際科学パートナーシップ基金(International Science Partnership: ISPF)の一環として発表された英国と日本の共同プロジェクトに続くもので、科学技術に関わる関係がさらに深まるものである。この協定は、英国の科学担当大臣であるGeorge Freeman氏によって、仙台で開催されたG7科学技術大臣の会合において、世界の先進経済国間での科学技術の協力強化の一環として締結されたものである。英国と日本は、長い歴史にわたって科学技術の協力関係を築いてきた。今回の協定更新では、イノベーションと考え方を根本から変える新たな技術に焦点を当て、両国間の協力を通じて科学技術とイノベーションにおける新たな高みに到達することを目指す。同日、Freeman氏と日本の経済産業省の副大臣である中谷真一氏が東京で新しい協定に署名し、この協定は英国の最新の科学イノベーションの取り組みの一部となった。この協定の更新により、最先端の新しい技術を市場に導入するための緊密な提携の機会が拡大される。半導体やクリーンテクノロジーなどの優先分野に焦点を当て、経済成長を含む、首相が挙げる5つの主要な優先事項の一部として重要な役割を果たすこととなる。

科学担当大臣であるGeorge Freeman氏は次のようにコメントしている:

「日本は世界第3位の経済大国であり、科学技術の超大国である。日本はアジア太平洋圏のどの国よりもノーベル賞受賞者を輩出している。日本独自の強みと英国の世界的な科学研究の専門性との関連性を強めることは、両国にとって大きな機会である。世界が直面する最大の問題に対処するためのスキルと専門知識を蓄え、経済成長と雇用創出を推進することができる。この協定は英国の野心の一つであり、同様な志を持つ日本や他のG7諸国との協力を深めることで、全体としての未来を保証し、経済成長と生活改善を進めることができる。」

Freeman氏は、地球が直面する課題に取り組む中で科学の進歩が安全と繁栄をもたらす可能性を高めるため、世界のトップを行く民主主義国との緊密な協力を主張してきた。また、仙台で行われたG7諸国の科学技術大臣会合では、英国の科学とイノベーションのリーダーシップ、そして他の自由社会の原則と共有することが明確に示され、権威主義的な考えや経済的な成長に挑戦することを訴えた。イノベーションによる経済的利益は、NHSなどの公共サービスへの投資、国家債務の削減、インフレの抑制など、2023年の首相の主要な優先事項の一部である。また、先週、Freeman氏は次世代の放射光施設であるナノテラスや東北大学の災害科学国際研究所を訪問し、英国と深い関係がある日本の科学技術企業のトップと会い、英国と日本の関係を強化する機会を設けた。英国と日本は科学技術の分野で共通の優先順位を持っている。日本のムーンショット型研究開発制度では、英国の科学技術構想で特定された5つの重要な技術、特に量子に注力している。昨年、英国政府は日本のハイパーカミオカンデ(Hyper-K)プロジェクト、次世代の世界的なニュートリノ実験に1,550万ポンドの追加投資を約束した。この15階建ての物理実験施設は、宇宙を構成する基本粒子に関するより多くの発見に役立っている。英国は生物科学や宇宙の分野など、科学技術振興機構や日本学術振興会とのパートナーシップを通じて長年にわたり緊密な関係を築いてきた。英国と日本の科学技術協定の新しい協定では、共同研究開発プログラムや学術・産業交流計画などが盛り込まれている。2つの政府は新たなネットワークや投資の機会を創出し、UKRIや日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構などの公共機関との緊密な協力を通じて、英国と日本の企業間の提携を促進する。また、科学の管理や基準の統一のためにも、英国と日本は親密に協力していく予定である。英国の科学技術構想は、2030年までに技術の超大国として国際的な認知を目指す野望を掲げている。国際的なパートナーシップこそが英国の科学技術の世界的なリーダーシップの推進力となる。つまり、地球が直面する世界的な緊急課題に取り組むためには、他の先進国との緊密な関わりが英国にとって重要である。国際技術戦略は、このようなパートナーシップの構築を促進し、安全性を向上させる方法を積極的に推進するために設定された。

Department for Science, Innovation and Technology (DSIT):

https://www.gov.uk/government/news/uk-and-japan-strengthen-science-and-tech-ties-in-tokyo

 

 

(15) 大学の財政状況は良好、ただし留学生への過度な依存などの危険

2023年5月18日、学生局(Office for Students: OfS)の財務の持続可能性に関する報告書によると、大学の財政状況は良好であるが、高等教育機関によってそのパフォーマンスに差があり、留学生への過度の依存やインフレ圧力による危機が存在することが伝えられた。OfSは中国からの留学生数が多い23の高等教育機関に対し、留学生の渡航傾向の変化や、突然起こりうる留学生からの収入減少に備えた緊急対応計画を持つように書簡を送付した。この報告書によると、多くの大学やカレッジは、今後のコストの圧迫が指摘されながらも、手元の資金を強化することで投資を支え、財政状況を維持し続けていることが分かった。高等教育機関の財政状況は回復しており、2021/22学事年度の収支は前年の予測を上回る黒字となっている。多くの大学やカレッジは中長期的に財政状況の改善が期待されている。しかしながら、報告書は高等教育機関全体の財政状況には大きなばらつきがあり、特に複数の危機が同時に発生した場合、長期的な財政の持続性に現実的かつ拡大するリスクが存在する大学もあると述べている。OfSの分析によると、個々の大学にはさまざまなリスクが及ぼす影響があるが、多くの大学が短期的な財政破綻による閉鎖の可能性は低いと結論づけている。

報告書で挙げられた主なリスクは以下のとおり:

・インフレによる費用増加とそれに見合う収入増加の課題

・一部の高等教育機関が他国からの留学生の学費に依存する傾向の高まり

・施設や環境対策へ必要な投資を十分に行うための課題

この分析は2021/22学事年度の年次財政報告書からOfSに送られたデータに基づいている。報告書には2023年から2027年の5年間の高等教育機関の予測が含まれており、高等教育機関全体の財政状況の傾向が示されている。報告書によると、高等教育機関全体の統計から分かったことは以下のとおり:

・今後3年間の収入は、2021/22学事年度の408億ポンドから2025/26学事年度には

 501億ポンドに上昇すると予測されている

・2021/22学事年度のキャッシュフローと超過分は、2020/21学事年度と比較して改善

 しているが、2022/23学事年度では収入の情報よりも早いコストの急激な上昇や収支

 の減少が予想されており、財政状況は悪化すると推測されている

2021/22学事年度の高等教育機関の学費と教育計画の総収入は225億ポンドで、前年度(206億ポンド)と比べて8.8%増加した。学費収入は2021/22学事年度から2025/26学事年度までの学生数の増加により293億ポンド(17.5%増加)まで上昇すると予想されているが、大学やカレッジによって異なる。非EU圏からの留学生の学費収入は2021/22学事年度には78億ポンドと報告され、前年度(63億ポンド)と比べて25%増加した。これは最近の留学生からの学費収入の増加傾向と一致している。非EU圏からの留学生の総収入は2021/22学事年度の19.3%から2025/26学事年度には24.0%に上昇すると予想され、非EU圏からの留学生の学費収入への依存傾向の増加が強調されている。2021/22学事年度の全体的なキャッシュフローと短期的投資は166億ポンドで、前年度と比べて10%改善された。高等教育機関の間では、財政状況に大きな差がある状況が続いている。OfSは最近、高等教育機関の財務担当者とのさまざまな会議を開催し、財政リスクを議論し、各機関の影響と理解を確認してきた。また、OfSは最近、財政的な問題に直面している高等教育機関を支援する取り組みについての事例を公表した。

Office for Students (OfS):

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/university-finances-generally-in-good-shape-but-risks-include-over-reliance-on-international-recruitment/

 

 

(16) 英国の半導体部門のために新しい10億ポンド戦略

2023年5月19日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は英国の半導体産業が世界のトップの座を維持し続けているという事実を不動のものとするために、新しく20年間計画を発表した。

内容の要点:

・ 国家半導体戦略は、設計、研究、高度な半導体の指導者を倍増させる計画であり、英国の世界的な科学技術超大国の地位を確保することを目指している

・ 半導体の計画では、英国が産業の強みを構築し、混乱や国家安全保障上の危険からサプライチェーンを保護するための技術の保護策を設定し、政府が掲げる英国の経済成長の優先順位を実現するための支援を行う

・ 政府は今後10年間に最大10億ポンドをインフラの改善、研究開発の強化、国際協力の強化に投資し、2023年から2025年にかけて2億ポンドの投資を行う

・ 研究開発協力、スキル交流、半導体のサプライチェーンの回復力の改善等を含め、英国と日本の半導体分野における高い志を持った協力関係の構築に努める

国家半導体戦略は最大10億ポンドの政府投資を通じ、設計、研究開発、及び化合物半導体における強みとスキルの強化を行い、英国全体の国内半導体産業の成長に貢献することが定められた。産業界と提携し、政府からの投資により、その分野の研究、イノベーション、商業化を促進し、研究室から市場への商品化を支援する。この戦略は、日本で開催されているG7首脳会議で首相が述べたように、志が同じである先進国との技術提携の強化や、半導体等の重要な技術のためのサプライチェーンの強化について討議された。半導体は、現代社会において欠かせない重要な要素であり、我々が使用しているほとんどの電子機器の機能に不可欠な部品である。電話やコンピュータ、空調機や発電所まで、世界中のほとんどの技術は半導体に依存している。年間1兆以上の半導体が生産されており、2030年までに世界の半導体市場の市場総額は1兆ドルに達すると予想されている。また、半導体は人工知能や量子、6Gなどの未来の技術も支えている。この戦略は、半導体分野で特に戦略的に優位である半導体設計、最先端の化合物半導体、世界をリードする研究開発のエコシステムに焦点を当て、Cambridge、Cardiff、Manchester、Edinburgh等の大学がこの分野での世界のリーダーシップを取るための支援を行う。化合物半導体は、シリコンチップでは不可能だった進化した技術において、全自動運転や将来の通信などに利用される。これらを実現するには、英国がその分野の世界のリーダーである先端材料に関する専門知識が必要となる。英国のこの分野の成長を支援するため、政府は2023年から2025年にかけて最大2億ポンドの投資を行い、産業のインフラの改善、研究開発の強化、より大きな国際協力の改善を行いう。今後10年間は戦略的な投資と位置づけられ、政府は世界的に重要な分野において英国の強みを確立するため、さまざまな措置に最大10億ポンドを投資し、以下の3つの重要な目標を達成することを目指す。

・ 国内の産業分野の成長

・ サプライチェーンの混乱のリスクの緩和

・ 国家安全保障の保護

この戦略は、政府の半導体産業に対する一貫した支援に基づいており、過去10年間に渡り、5億3,600万ポンドの研究助成金として提供され、半導体を扱う中小企業に直接2億1400万ポンドを提供、また、2017年以来450人の博士課程の学生を支援してきた。

Department for Science, Innovation and Technology (DSIT):

https://www.gov.uk/government/news/new-1-billion-strategy-for-uks-semiconductor-sector

 

 

(17) 英国の産業界と学術界が先端技術研究で提携

2023年5月22日、UKリサーチ・イノベーション(UK Research & Innovation: UKRI)は量子、医療技術、エネルギーやほかの分野に焦点を当てた19のプロジェクトを発表した。

このプロジェクトは1億4,900万ポンド相当で、UKRIの工学・物理科学研究会議(Engineering and Physical Sciences Research Council: EPSRC)が共同資金提供を行う。

EPSRCの5,700万ポンドにUKRIのバイオテクノロジー・生物科学研究会議(Biotechnology and Biological Sciences Research Council: BBSRC)と医学研究会議(Medical Research Council: MRC)から400万ポンドが追加される。この公的資金には英国の産業界と学術界からさらに8,800万ポンドが上乗せされる。

19のプロジェクトの一部として:

  • データ伝送の速度を50%上昇させる新しいタイプの光ファイバーケーブル(University of SouthamptonとMicrosoft)
  • 肺疾患の診断向上につながる新しい磁気共鳴映像法(MRI)スキャナー(The University of SheffieldとGE Healthcare)
  • 耐久性に優れた新しいタイプの膝移植をより良心的な価格で提供する(University of LeedsとInvibio Ltd)
  • 航空機の脱炭素に役立つ次世代の航空技術(University of BathとGKN)
  • 海上エネルギーシステムの修理を行うロボット(Heriot-Watt UniversityとFugro GB Marine)

本当の違いを生み出す

これらの19のプロジェクトは、英国の未来に大きな影響を与える投資であり、人々の生活に大きな違いをもたらすことが期待されている。例えば、新しい光ファイバーケーブルは次世代のデータセンターの設置時に利用され、光ネットワークは超高速インターネットやクラウドサービスを可能にする。新しいMRIスキャナーは、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断の向上に役立つ可能性がある。新しい膝の移植技術は、イギリスで何百人もの変形性関節症患者に恩恵をもたらす可能性がある。新しい世代の航空技術は、航空業界の脱炭素化に役立ち、水素燃料航空機の開発に道を開き、航空輸送の環境への影響を減らすことができる可能性がある。

産業界との関係

産業界のパートナーは以下のとおり:

  • AstraZeneca
  • BAE Systems
  • BASF
  • GKN
  • Leonardo
  • QinetiQ
  • Rolls-Royce
  • Scottishpower Energy

 

経済的、社会的な影響

EPSRCのパートナーシップ担当部長であるAndrew Bourne博士は次のようにコメントしている:

「Prosperity Partnershipは、産業界主導の課題に取り組むために産業界と学術界が協力し、経済的および社会的な影響をもたらす共同創造、共同研究、およびイノベーションを実現する手段を示している。これらの新しいプロジェクトは、イギリスの研究とイノベーションの幅広さを紹介し、様々な分野をカバーし、イノベーション国家であるイギリスの科学の超大国への野望を支援している。」

UK Research & Innovation (UKRI):

https://www.ukri.org/news/uk-businesses-and-academia-team-up-in-cutting-edge-research/

 

 

(18) イングランドの大学生の6人に1人は海外に居住している

2023年5月25日、学生局( Office for Students: OfS)の調査で、イングランドの大学やカレッジに登録されている学生全体の16%は海外に住んでおり、中国、マレーシア、スリランカの学生数を合わせるとトランスナショナルの学生数は約3分の1を占めていることが分かった。

OfSが発表している“Insight Brief”ではイングランドの高等教育のトランスナショナル教育(Transnational Education :TNE)の規模を検証し、どのように、またどこで行われているのか、学生がどこにいても高質な教育を受けることができるのかに関して研究を行っている。2021/22学事年度ではイングランドの146の大学とカレッジが、英国外で45万5000人に対して教育を提供している。同学事年度ではTNEの学生の3分の2(69%)以上が学部生で、残り(31%)は大学院生であった。

外国にいる学生は下記の方法で授業を受けている:

  • 27%は海外のパートナー機関によって受講
  • 25%は遠隔学習、フレキシブル学習、ブレンド学習という方法
  • 6%はイングランドの海外分校で受講
  • 42%は学術提携などその他の関与によって受講

2021/22学事年度の数字では、TNE学生の半分以上(52%)はアジアに住んでいた。その中で61,505人は中国を拠点としているもので、TNEの学生の14%を占めており、OfSで登録してる大学やカレッジの学生の2%にあたる。マレーシア、スリランカは学生数の割合が2番目に多く、イングランドの大学の総TNE人数に対して、それぞれ9%と8%であった。OfSは7つの大学と会談を設け、TNEの実施方法、また高質な教育を提供することを確実にするための方法に関して説明を行った。大学は海外のパートナー機関による業務委託で全ての教育を監視する難しさや、海外に住んでいる学生の消費者の権利に関する問題等、直面している課題に関して述べた。

Office for Students (OfS):

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/one-in-six-students-at-english-universities-taught-overseas/

 

 

(19) 大学卒業後の進路調査のデータ統計発表:2020/21学事年度

2023年5月31日、高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)は、2020/21学事年度の卒業生進路調査のデータと統計の結果を発表した。2020/21学事年度の卒業後進路調査に回答した者のうち90%は、何らかの職に就いていたり、更に進学をしていることが分かった。77%の回答者は、現在の活動が将来の計画に繋がると答えている。今回の対象者は、Covid-19流行の最中に卒業した者であり、調査の大半はCovid-19に関する規制が解除された後に行われている。2020/21学事年度の卒業生の82%は、卒業の15か月後には勉強か何かしらの仕事をしているという状態にあった。61%はフルタイムの雇用で、2019/20学事年度の57%から上昇した。英国出身者の4%、英国以外の学生の8%は失業状態であった。英国出身の第1学位を取得した卒業生では、18%が卒業後15か月後までに大学院等へ進学していた。この数字は高等教育前に私立学校に在籍していた者だけを見ると24%に上昇する。英国出身の黒人、アジア系の卒業生の57%はフルタイムの雇用にあり、白人の卒業生は63%であった。黒人の6%、アジア系の卒業生の8%は失業しており、白人の場合は4%であった。英国出身で第一学位取得者の卒業生の84%は、調査の時点において自身の活動を有意義であるとしており、75%が自身の将来の計画に適っているとし、66%は大学で学んだことが活かされていると答えている。卒業生でフルタイムの大学院等に進学した者はその内容に最も同意し、失業中の卒業生の間で最も同意していない可能性が高い。フルタイムの第一学位コースを卒業した英国出身者において、フルタイムでの年収の中央値は26,000ポンドで昨年は25,000ポンドであった。医学、歯学系の卒業生の年収は最も高く35,000ポンドであった。このGraduate Outcomes(卒業生成果)は英国の中でも最も規模の大きな社会調査で、2020/21学事年度の調査では826,610人が対象となった。383,575人から有効な回答が得られ、回答率は46%であった。2022年にHESAが合併したJISCの最高責任者であるHeidi Kraus氏のコメント:

「最新の卒業後進路調査の結果は、依然としてCovid19の影響があった時期に大学やカレッジを卒業し、実社会に飛び込んだ卒業生の記録という貴重な視点を提供している。雇用、年収の統計では卒業生達は順調であることを示しているが、自身の優先順位や身体の健全性に関して特に明確であった。この調査は、毎年実施すること自体が大変なものであるが、今回協力してくれた卒業生に感謝する。彼らの貢献が将来の学生にとって本当に良い参考となる。」

本日発表したものは“全国的な高い水準な数値”と“オープンデータの詳細”も含まれている。これらは高等教育機関別、専門課程別、個人の特性別、雇用もしくは進学の種類別も含まれている。Covid-19が影響する調査結果に関して、発表に伴う視点の調査も行われている。これらのデータには、高等教育機関別、専攻分野別、個人特性別、就職または進学の種類別の内訳が含まれている。

Graduate Outcomes 2020/21: Summery Statistics – Summery: https://www.hesa.ac.uk/news/31-05-2023/sb266-higher-education-graduate-outcomes-statistics

Higher Education Statistics Agency (HESA):

https://www.hesa.ac.uk/news/31-05-2023/graduate-outcomes-data-and-statistics-202021