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UK HE Information

2023年8月英国高等教育及び学術情報

2023年11月03日

(1) 高等教育担当大臣がイングランドの学費の値上げを可能にすることはないと明言

(2) 英国の生命科学産業におけるスキル向上、雇用支援、グリーン製造業の強化に3300万ポンドの共同出資

(3) スコットランドの若者の4分の3近くが第一志望の大学へ

(4) 英国企業が1,100万人の新卒者を必要とする中、創造力と批判的思考が求められている

(5) DSIT、新本部で英国の革新的なビジネスを紹介

(6)全国学生満足度調査に33万9000人以上の学生が回答

(7) 医療の近代化にむけた新たな資金援助を発表、また、 AIの首脳会議に向け、準備を主導する専門家たち

(8) 英国は留学生を受け入れるべきであり、そうでなければ他の競争国に奪われるとUCAS長官が警告

(9) 雇用者側が交渉を拒否する場合、大学でさらにストライキが決行される

(10) NCUBの報告書によると、ERDFが大学と企業の提携を促進した

(11) チューリング奨学金のため、直前まで待機せざる負えない英国の学生たち

(12) 英国の18歳志願者の79%が第一志望の大学に合格

(13) 文系科目と理系科目を組み合わせて選択することで、将来への備えをするよう学生たちに奨励するよう、教師や保護者が強く求められる

(14) 英国主催のAI安全首脳会議は11月初旬に象徴的なブレッチリ―・パークで開催

(15) 2023年6月までの1年間の英国の留学ビザ発行数が23%増加

(16) EUスキーム未参加の英国、がん研究者の「頭脳流出」に直面

(17) 大学長報酬のスケープゴート化について論じ、その公平な設定方法を探る新報告書

 

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★記事詳細★

(1高等教育担当大臣がイングランドの学費の値上げを可能にすることはないと明言

 2023年8月2日、Guardian紙によると、Robert Halfon高等教育担当大臣は、大学の財政状況の悪化が大学に与える影響について、大学の学長らからのますますの切迫した警告にもかかわらず、イングランドの大学における学生授業料の設定上限を撤廃することはないと明確に否定した。

 Times Higher Education (THE)とのインタビューで同大臣は、一部の大学が困難に直面していることは認識しているとしながらも、生活費高騰の課題の中で学生の授業料をの引き上げることは「絶対に起きることはない」と述べた。

 Halfon氏の発言は、2012年に9000ポンドで導入され、5年後に9250ポンドとなった授業料は、急騰するインフレにより目減りしており、大学にとって実質的には6000ポンドほどの価値に減少してしまったとする大学の学長らにとって打撃となるであろう。現行の授業料額の凍結は少なくとも2024-25年度まで継続する。

 また、この発言は、国内の学生の授業料が目減りした資金不足を補うため、より高額な授業料を支払う留学生の誘致を活発化させ、結果として国内の学生の一部が大学進学の機会を失う可能性があることについての議論も再燃させるだろう。

  Guardian紙の最近の調査によると、昨年、英国の大学が受け入れた資金の5分1は留学生からの授業料だったことが明らかになり、大学が財政的に生き残るために、海外からの授業料に依存する規模が拡大していることへの懸念が生じている。

Halfon氏はTHEに対し、「全体的に見れば、多くの大学は健全な財政状態にある。かといって、そう(良好な状態)ではない大学が存在しないというわけではなく、また学生局(Office for Students: OfS)が一部を調査していることも理解している…そして課題に直面していることもよく理解している。」

「しかし、研究助成金、貸付金、その他政府が与えている資金(15億ポンドの戦略的優先課題助成金、7億5000万ポンドの教育設備(昨年政府により発表された追加資金)に注目すると、年間400億ポンドを大学は得ている。」

「これを長期的にFE(Further Education)セクターと比較すると、スキル財源として38億ポンド出資を増加しているにもかかわらず、厳しい財政的な制約があることを考慮すると、私の選出地区であるハーロウの有権者に対し、『 さて、生活費の上昇の課題や、ほかのあらゆることに加えて、授業料も引き上げます』とは言えない。」

「そのようなことは絶対にありえない。我々は、現実的である必要があり、生活費の課題によって信じがたい困難の中で生活する必要があることを受け止めなければならと考えている。」

  同セクターによれば、高等教育の財政は実質ベースで1990年代以降最低水準に低下すると予測されており、同時に、イングランドの大学で年間の赤字を報告する割合は、2015-16年度の5%から2019-20年度には32%に増加したという。

 140の英国の教育機関を代表する英国大学協会(Universities UK: UUK)は、大学の資金に関して持続的な解決を模索する「国民的対話」を呼び掛けており、同時に保守党の元大臣のJo Johnson氏は、インフレに伴って授業料の上限を上げない場合、現在の資金不足により大学が「1つずつ倒れていく」ことにつながる可能性があると警告している。

 また、Halfon氏は、最近発表された、いわゆる「価値の低い」学位(専門職に就いたり、大学院に進学したり、起業する卒業生の割合が高くない学位)の学生数を規制する政府の計画に関しても言及した。同氏は、この動向は「職、スキル、社会的正義」における自身の優先事項と一致し、質の向上につながると述べた。

 UUKの広報担当者は、過去15年間、高等教育への参加が生産性向上を促進する唯一の一貫とした要因であったと述べた。また、「経済を成長させ、優れた教育を提供する革新的で公平なシステムを継続的に支援したいのであれば、適切に資金提供される必要がある。」と述べた。

 彼らはまた、「現在の学生層が、以前の学生と同じ水準の支援を受ける機会を確実にするには、長期的な解決策について議論が必要である。高等教育機関と政府が協力し、世界をリードする高等教育機関、学生、国民のニーズに対応する長期的なアプローチを実現することが不可欠である。」と述べた。

 

The Guardian:

https://www.theguardian.com/education/2023/aug/02/minister-rules-out-lifting-cap-on-student-tuition-fees-in-england

 

(2英国の生命科学産業におけるスキル向上、雇用支援、グリーン製造業の強化に3300万ポンドの共同出資

 2023年8月3日、科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、政府と産業界の共同出資により、環境に優しい吸入器を生産するための250以上の高度技術職の雇用を創出することを発表した。

 

 ●Kindeva社との政府・産業界の共同出資3300万ポンドは環境に優しい吸入器の生産のため、250以上の高度技術職の雇用を創出する

 ●この出資パッケージは、英国の経済成長、高度技術職の雇用、革新的な医療品の推進を、ライフサイエンス分野を原動力として目指す政府の継続的な取り組みを表している。

 ●5月に発表された財務大臣による6億5000万ポンド事業である「Life Sci for Growthパッケージ」に続く資金出資となる。

 

 政府と、世界的大手企業である英国医薬品製造会社のKindeva Drug Delivery 社による産業界からの共同出資3300万ポンドは、次世代の環境保全、低炭素な吸引器を英国内で生産することを保証し、経済成長への取り組みを支援する。

この投資により、Kindeva社のクリザローとラフバラーの拠点で40人のフルタイムの雇用を創出し、既存の218人のフルタイムでの雇用が保護される。

 今回の出資は、Life Science Innovative Manufacturing Fund (LSIMF)およびその前身であるMedicines and Diagnostics Manufacturing Transformation Fundを通して行われるライフサイエンス分野への6回目の出資となる。政府と産業界による共同出資は、昨年度に3億4000万ポンド、2021年以降は4億1600万ポンドとなり、英国のライフサイエンス分野産業を支援してきた。このような継続的な取り組みを通じ、政府は英国の盛んなライフサイエンス分野産業が経済成長を促すと同時に、英国首相が掲げる5つの優先事項のうちの1つである、英国内において高収入の雇用の創出することを支援している。

 この出資は、今年5月に財務大臣により発表された、6億5000万ポンドの”Life Sci for Growth"パッケージに続く資金提供で、英国のライフサイエンス分野を活性化し、規制の改革、投資の促進、人材とスキルの向上を通してScience and Technology framework(科学技術戦略)の実現を図るものである。

GOV.UK :

https://www.gov.uk/government/news/33-million-joint-investment-to-boost-skills-support-jobs-and-bolster-green-manufacturing-in-uk-life-sciences-industry

 

(3スコットランドの若者の4分の3近くが第一志望の大学へ

 大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)の最新の統計によると、スコットランドにおける若年層の学生のほぼ4分の3が第一志望大学に受け入れられたことが分かった。

 スコットランド資格機関(Scottish Qualification Authority: SQA)の結果発表日(8月8日)に発表された統計によると、19歳以下のスコットランド人の出願者のうち72%は(18,780人)は第一希望に合格し、昨年の69%(18,680人)、2019年の65%(15,670人)を上回った。

 合計で30,050人のスコットランド人の学生が受け入れられ、2022年の30,490人からは1%減、2019年の28,750人からは5%増となった。

これは、スコットランド人の出願者の総数(全年齢)が44,490人と、昨年と比べて減少していることを背景としており、前年の48,000人からは7%減、2019年の47,220人からは6%減となっている。

スコットランドの成熟した出願者(21歳以上)数の減少は、全体の出願者数の減少の大きな要因となっており、2022年の17,850人より、今年の15,370人は13%減、2019年の19,590人からは21%減となっている。

 その他、統計からの主要なポイントは次のとおり:

 

 ●最も恵まれない環境(SIMD40)にいるスコットランド人学生の受入数は9,140人(2023年)であり、2022年の9,270人とほぼ同じであった。19歳以下の若い層では2022年の4,660人からわずかに上昇し、4,780人(2023年)となった。

 ●スコットランドの高等教育機関における留学生の受入数は、前年比で安定しており、非英国籍の受け入れは3,370人であり、昨年は3,380人であった。

 ●スコットランドの高等教育機関(全年齢、全居住地)受入数は、医療系で2022年の5,200人から今年は4,860人と7%減で、教育系では2,950人から2,510人の15%減、社会科学系は3,050人から2,920人の4%減となった。

 

 UCASの最高責任者、Clare Marchant 氏は次のように述べた:「スコットランドの若者が記録的な数で第一志望大学への合格を祝っていることを大変喜ばしく思う。全体的な志願者数は減少しているが、就業率が高い時期には、成熟した年代の学生の志願者数は減る傾向がある。」

 「今回の統計は、大学またはカレッジへの進学の需要は依然として健全で、パンデミック以前の水準よりもかなり高いことを示している。出願した学生のより多くが入学許可を得ていることは、高等教育の旅路において次の記念すべき一歩を踏み出す学生のために、入試制度がいかに貢献し続けているかを示している。」

 「期待した成績を収めることができなかった学生に対してもまだたくさんの選択肢が残されており、クリアリング※1やクリアリングプラスのツールにより、何万ものコースから個人に合ったコースを選択することができる。」

 ※1

クリアリングとは:イギリス大学が9月のコース開始時期に向けて、定員に空きのある学部課程コースの人数を満たすための受け入れを許可するシステム

参考:WHAT IS CLEARING? (UCASウェブサイト【英語】)

https://www.ucas.com/undergraduate/clearing-and-results-day/what-clearing

 

大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/nearly-three-quarters-young-scottish-students-gain-first-choice-university-place

 

 (4英国企業が1,100万人の新卒者を必要とする中、創造力と批判的思考が求められている

 2023年8月8日、英国大学協会(Universities UK: UUK)は新しい報告書を発表し、英国のFTSE350に記載される上場企業の経営幹部や人材獲得スペシャリストの10人に6人(61%)が、新しいAIツールを最大限に活用するにはより創造的な思考力を持つ人材が必要であると答えたとしている。一方で、新しい分析によると、AIや機械学習の専門家は世界的に最も急速に成長している職種の一つとされる。

 UUKの新しい報告書、「Jobs of the Future」によると、英国の雇用を満たすには、2023年までに、現在の英国の労働人口である1,530万人の卒業生に加え、1,100万人以上の卒業生が必要になることが明らかとなった。

 また、2035年までに新規雇用の88%が大卒レベル(Graduate level)になると予測されており、大卒レベル(Graduate level)のスキルの需要が何年にもわたり継続して伸びるとしている。なかでも、STEM(科学、技術、工学、数学)医療、教育、ビジネスサービスが大卒者の需要がもっとも増加している職種であり、それぞれが2035年までに100万人の新規労働者を必要としているとされている。

 UUKがFTSE350の経営幹部や人材獲得スペシャリストを対象に行った調査では、近年、AIが特定の職業に脅威を与えるという懸念が提起されているが、回答者の51%が、AIがより多くのホワイトカラーの仕事を自動化するようになれば、批判的思考力を持つ卒業生が労働力としてこれまで以上に重要になると回答している。

 さらに、50%の回答者が、芸術や人文科学系の卒業生がAIツールを最大限に活用するために重要な存在になると考え、また、63%が、企業が必要とするスキルを持った人材のパイプラインを開発するため、英国の大学とより緊密に連携する必要があると考えている。

 UUKの最高責任者、Vivienne Sterm氏は次のように述べている:

 

「現在の労働力の4分に1以上が、現職に対して十分な資格を持っていない状態である。大卒者に対する需要が長年途切れることなく伸び続けていることは、雇用側が成功するために必要なツールを提供するために、我々がキャッチアップしていることを意味する。

最近のAIツールの普及は、自動化についての新たな懸念を引き起こしているが、我々が目にする傾向として、激動する雇用市場の中で、学位取得が成功するための最善の方法であることを示唆している。応用的な創造性と批判的思考力は、AIツールを活用し、導入するために必要とされる2つの重要分野であり、雇用側はすでにこれらのスキルを持つ人材の採用に目を向けている。」

 

 同日に発表された「Job for the future」によると、英国の労働人口の4分の1以上(26%)が現職に対しての資格を持たないものが従事しており、特に教師、医療従事者、STEM系専門家の人材が不足している。

 世界的には、再生可能なエネルギーへの移行などの原因で、技術系の職業は今後5年間で需要が急増すると予想されている。電子商取引、デジタルトランスフォーメーション、デジタルマーケティングおよび戦略の専門家など、デジタル技術を活用した職種も、2027年までに世界で400万のポストが増加すると予想されている。

 また、UUKの調査に参加したFTSE350の企業の経営幹部や人材獲得スペシャリスト100人のうち半数以上(52%)が、英国の企業は将来のスキル格差や労働力の課題に対処するために、大卒者にますます依存する必要があると回答している。

 Institute for Directorsサステナビリティ・スキル・雇用担当主席政策アドバイザー、Alex Hall-Chen氏は次のように述べている:

「持続的でかつ深刻なスキル不足は、英国企業にとって最も差し迫った懸念事項の一つである。批判的思考力やコミュニケーション力といった移行可能なスキルに対する需要は、あらゆるセクターで依然として強く、英国の高等教育機関は、ビジネスの成功に必要なスキルを備えた人材のパイプラインを構築する上で、極めて重要な役割を果たすことになる。」

 また、同報告書では、平均して大卒者の方がキャリアの選択肢が多く、非大卒者に比べて就職できる可能性が高いこと(86.7%に対し70.2%)、そしてイングランドにおいては大卒者の給与中央値が非大卒者より1万ポンド高く、収入が多いことも明らかになった。

 Vivienne Sterm氏は追加で次のように述べた:

  「医療や技術、デジタルスキルや教育まで、大卒者は経済の成功にとって不可欠な要素である。しかし、我々にはこの需要に引き続き対応し続けるためのツールを提供されることが肝要。そのためには、現在の高等教育機関が提供している高い教育水準を保ちつつ、高等教育が手ごろな価格での利用が可能であり、アクセスしやすいものであることを保証する必要がある。」

 

 UUKの報告書からの重要なポイント:

 

 ●英国では、2035年までにコンピュータ系、工学系などの分野を含むSTEMの専門家が190万人以上必要となる。英国において、2023年までに最も需要が伸びるとみられている職種はコンピュータープログラミングである。

 ●英国では、2035年までに検眼士、医療技師、不動産関連職、青少年およびコミュニティワーカーを含む120万人以上の医療分野及びソーシャルケア関連の準専門家が必要となる。

 ●英国では、2035年までに大学や高等教育における教員など、教育関連の専門家が100万人必要になる。

 ●英国では、今後20年間で、AIに関連する仕事で、学位が必要な職種が10%増加するとみられる。

 ●世界的には、電子商取引の専門家、デジタルトランスファーメ―ションの専門家、デジタルマーケティングおよび戦略の専門家など、デジタル系の職種が約400万人増加すると予想されており、これは特に英国にとって比較的に強みのある分野である。

 

 この調査は、英国で事業を行っているFTSE350の企業から100人の幹部(上級管理職、経営役員、社長/CEOなど)や人材獲得スペシャリストを対象として、UUKの委託により、Censuswideが実施した。データ収集期間は2023年7月10日~7月14日。

 

英国大学協会(Universities UK: UUK):

https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/creativity-and-critical-thinking-craved

 

<参考資料>

Jobs of the future: https://www.universitiesuk.ac.uk/what-we-do/policy-and-research/publications/jobs-future

 

(5) DSIT、新本部で英国の革新的なビジネスを紹介

 2023年8月9日、科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、英国の産業界と学術界の活動を支援する同省の計画の一環として、各団体に革新的な技術を紹介する機会を提供するため、展示に招待したと発表した。

 

 ●英国の最高峰のイノベーション、デザイン、技術、科学をホワイトホール(英国の官庁街)の中心で展示。

 ●DSITは創立6か月を記念し、2024年初旬から新しい本部となる建物に英国全土から企業、団体を公募する。

 ●この展示は、経済成長という優先課題を達成するための鍵として、政府全体でイノベーションを推進する文化を築くというDSITの使命の一部を担っている。

 

 DSITは、英国の産業界と学術界のイノベーションと先駆的な取り組みを支援する同省の計画の一環として、同日、主要なイノベーション企業、テクノロジー企業、研究機関にDSITの新本部のエントランスでそれぞれのイノベーションを紹介するよう招待した。

DSITは設立6か月を記念し、英国全国の企業と団体を新しい本部内での展示を呼びかけ、この地を訪れる大臣、企業、政府関係者および影響力のある人々に対し、その仕事内容を目に見える形で紹介する。

 これは、DSITにとって英国の最高峰のイノベーション、デザイン、技術、科学を紹介する機会となる。この展示に選ばれたものは、DSITのSNSチャンネルや内部イベントで紹介され、英国が科学大国としての地位を確立するための推進者や意思決定者たちに、それぞれの仕事を示す機会となる。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/dsit-to-showcase-innovative-uk-businesses-at-new-headquarters

 

(6)全国学生満足度調査に33万9000人以上の学生が回答

 2023年8月10日、学生局(Office for Students: OfS)は、今年の全国学生満足度調査(National Student Survey: NSS)の結果を発表し、高等教育での経験に関する学生の回答率が全体の71.5%と、2022年の68.6%から上昇したことを発表した。

 この種の調査としては世界最大級のもので、今年は英国全土で339,000を超える回答があった。今回の調査では、より広範な見直しの一環として、メンタルヘルスケアのサービスについて、またイングランドでは言論の自由について今回始めて質問された。

 改定された本調査では、英国の学生を対象に、コースの教育、評価やフィードバック、コースが計画的に構成されているかなどを含む、学業経験に関するさまざまな要素が質問された。学生の理解や、結果の精度を高めるため、項目別に尺度で回答する新しい直接的な質問も導入された。

 

イングランドで学ぶ学生については、次のような結果が出た:

 

 ●「教員の説明の方法がどの程度よいか」という質問には90.6%が肯定的な回答。

 ●「図書館の資料が学生の学習にどの程度役立ったか」というものには89.4%が肯定的な回答。

 ●「必要なときに、科目別のリソースにどの程度簡単にアクセスできるか」では85.4%が肯定的な回答。

 ●「受講しているコースが知的に刺激的だと感じることがどの程度頻繁にあるか」という質問では84.1%が肯定的に回答。

 ●「大学やカレッジのメンタルヘルスのケアサービスに関する情報がどの程度周知されているか」では75.9%が肯定的であると回答

 

 今年度の学生は、Covid-19の流行によるロックダウン措置や、授業や評価に影響を及ぼすストライキなどによって、コースの全体を通して大きな混乱に見舞われた。 OfSのFair Access and Participation部門のディレクター、John Blake氏は次のように述べた:

「この夏の卒業生は、パンデミックによる規制やストライキによって、大きな影響を受けた学生である。NSSは、学生と大学教職員両方にとって非常に困難なこの期間における学生の意見を捉える重要な役割を果たした。今年は学生からの回答率も高く、33万9,000人以上の学生が調査に回答し、高等教育の経験に対する学生の認識を共有した。」

「今年の調査は、学生が質問を理解しやすいよう質問内容が改められた結果、より豊富で正確なデータが得られた。また、調査に関する協議の結果、調査データの表示も、より多くの文脈を提供するように修正され、規制局、大学、カレッジや学生にとって学生経験の全体像がより明確になる。」

「OfSは、すべての大学やカレッジがこの結果を慎重に検討することを期待している。このデータは、学生のコースの経験に関する重要な洞察を提供するものであり、我々は高等教育機関に対して、すべての学生が、最高の品質の高等教育経験を受けられる機会を確保するための行程の一環として、このフィードバックを参考にすることを勧める。」

学生局(Office for Students: OfS):

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/over-339-000-students-cast-their-views-in-national-student-survey/

 <参考資料>

National Student Survey data: https://www.officeforstudents.org.uk/data-and-analysis/national-student-survey-data/

 

(7医療の近代化にむけた新たな資金援助を発表、また、 AIの首脳会議に向け、準備を主導する専門家たち

 2023年8月10日、科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、医療研究に革新をもたらすため、1300万ポンドの資金提供を発表し、また、AI Safety Summit の英国開催の準備を主導するため、2人の専門家が任命したと発表した。

 

 ●今年後半に英国で開催される、人工知能の安全な使用に関する重要なサミットの担当者として、

     技術および外交の専門家が任命された。

 ●この分野では初となる国際サミットは英国で開催され、各国首脳、テクノロジー系企業、

     研究者が参加する予定。

 ●英国のAI医療研究に改革をもたらすため、1,300万ポンドを出資することが発表された。

 

 DSITの大臣、Michelle Donelan氏が、医療研究の変革のために1300万ポンドを出資すると発表したことを受け、英国が人工知能の安全な使用というこの分野では初めてとなる初の大規模国際サミットを開催する準備を主導する2人の専門家が任命された。

 Entrepreneur First のCEOであり、先端研究インベンション局(Advanced Research and Invention Agency: ARIA)の会長であるMatt Clifford氏と、University of OxfordのBlavatnik School of Governmentのヘイウッド特別研究員であり、かつては英国のG7やG20の準備担当かつ国家安全保障の副顧問を務めたJonathan Black氏が、この秋に英国で開催されるイベントに先立ち、AIの分野をリードする国、企業、専門家を集結させる役割を担うこととなった。

 豊富なスキルにより、彼らは首相の代理人として、サミットがAIのリスクを軽減するための共有のアプローチの開発につながるよう調整し、活性化する役割を果たす。Matt 氏は、このような外交的役割に任命された唯一の民間セクター代表の一人である。

 この発表は、科学大臣がUniversity College London(UCL)を訪れ、医療分野で最先端のAIイノベーションを実現する研究に対して1,300万ポンドの資金援助を行う旨を発表した際に同時に発表された。資金提供はエジンバラからサリーに至る地域の22の大学およびNHS trust projectsが対象となった。

 この資金援助は、潰瘍を切除するための半自律的な手術用ロボットのプラットフォームの開発から、現在の状態に基づいて将来の健康問題の可能性を予測する機能まで、あらゆる分野をサポートし、人工知能が現実の世界に与える影響を示すものである。

 DSITの大臣、Michelle Donelan氏は次のように述べた:

「英国は、最も重要な問題における外交的なリーダーシップをとってきた誇り高い歴史を持っており、Clifford氏とBlack氏の経験と専門知識は、安全で信頼できるAIに関する今年の協議に先立ち、その基礎を固める適任者であることを意味する。

我が国は、人工知能の分野ですでに世界をリードしており、このサミットは、我々を安全なイノベーションの拠点としての地位を確立するものとなる。」

「国際舞台でリーダーシップを発揮することは、国内の生活の向上にもつながる。AIは、医療システムなどを含む我々の生活に革命をもたらすであろう。だからこそ我々は、NHSの最前線を強化し、現代の健康上の主要な課題に取り組むことで命を救うため、英国の素晴らしいイノベーターを支援する。」

 

 外務大臣、James Cleverly氏は次のように述べた:

「人工知能は、人間生活のあらゆる側面を根本的に変えるだろう。AIが急速に進化する中、AIがもたらす機会を捉えつつ、課題を把握し、リスクを最小限に抑えるグローバルなアプローチが必要。」

「どの国もAIと無縁ではいられないため、代表する2人の専門家の支援により、英国がAIの課題と機会に取り組む世界的な取り組みにおいて指導的な役割を果たせることを誇りに思う。」

 

 この数百万ポンド規模の資金援助は、50万ポンド以上がUniversity College London のCentre for Interventional and Surgical Scienceに提供される予定であり、国務長官は、この技術の早期開発が、最も一般的なタイプの脳腫瘍の手術にどのような革命をもたらすかを視察するため、同センターを訪れる予定である。

 このプロジェクトでは、手術の合併症の回避、患者の回復期間の短縮など、手術の結果を改善するためのリアルタイムのAI「意思決定支援フレームワーク」を開発する。

その他の資金提供されるプロジェクトは次のとおり:

University of Sheffield: 463,000ポンドで、30歳以上の成人の10人に1人が罹る慢性的な神経痛に、より広く効果的な治療につながる可能性のあるアプローチの外部検証を実施する。

University of Oxford: 643,000ポンドで、個人の健康状態に基づいて、将来の健康問題の可能性を判断できる、臨床リスク予測のための基礎AIモデルの研究を加速させる。

エジンバラのHeriot-Watt University: 644,000ポンドで、腹腔鏡手術(一般に鍵穴手術として知られている)の練習をする外科医の動きをリアルタイムでフィードバックするシステムを開発する。

University of Surry: 456,000ポンドで、研究者が放射線科医と密接に協力して、マンモグラムの分析プロセスを改善するAIを開発し、放射線科医がキャリアの早い段階で臨床現場に入ることを可能にし、がん専門医数の増加を図る。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/experts-to-lead-ai-safety-summit-preparations-as-new-funding-announced-to-modernise-healthcare

 

(8英国は留学生を受け入れるべきであり、そうでなければ他の競争国に奪われるとUCAS長官が警告

 2023年8月14日、Guardian紙は、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)の高等教育入試部門の責任者が、英国は留学生を温かく迎えるべきであり、そうでなければ米国、カナダ、オーストラリアに後れを取る可能性があると述べたことを報じた。この介入は、この秋に学部課程に進学を希望する国内学生が、海外からの志願者増加によって不合格になる可能性が生じるという議論の中で行われた。クリアリング※1のコースの中には、今週のAレベルの結果発表を前に、海外の学生しか受け入れないものもある。

 英国の大学は、国内からの学生の授業料9,250ポンドの価値は、インフレのため目減りしていると述べており、その結果、多くの大学は経費を賄うため、大幅に高額な授業料を払う留学生への依存度を高めている。

 UCASの最高責任者であるClare Marchant氏は、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute)が主催したウェビナーで、その懸念を和らげるよう努めた。Marchant氏は、留学生にのみクリアリングのコースを提供する大学の傾向が今年増えたかという質問に対し、例年とほぼ同じであると回答した。

 しかし、Marchant氏は、特定の教育機関において、個々のコースの学生募集に変更がある可能性を認めた。「競争率という点では、木曜日の午後(Aレベルの結果発表日)にいくつかのコースが定員に達し、クリアリングから外されることから証明されるであろう。」と述べた。

 月曜日のTelegraph紙の報道によると、DurhamやLiverpoolを含むラッセルグループの大学のクリアリングは、国内学生よりも留学生に「数百もの学士課程の学位コース」をオファーしているという。

 この分野の専門家によれば、定員を満たしていない大学によるクリアリングの処理はまだ流動的であり、結論を出すのは時期尚早だという。DataHEの創設者であるMark Corver 氏は、「結論を出すには早すぎる。大学はまずオファーを出した学生の成績から処理を始めるであろう。」と述べた。

 University of Sheffieldの入試部長であるDan Barcroft 氏によると、同大学の多くのコースで、英国の学生、留学生ともに、クリアリングの定員は限られているという。

「今年は、英国国内の学生からの出願が増加しており、それを我々の入学選抜に反映することを目指している。」と彼は述べた。

「留学生は英国にとって重要な役割をしており、英国国内の学生に悪い影響を与えることはない。英国の授業料は長年据え置かれており、留学生の授業料は教育と研究の両方の相互補助として使われている。」と述べた。

 最近のGuardian 紙の分析によると、昨年、英国の大学の収入の5ポンドのうち1ポンドは留学生からのもので、一部の大学では全体の収入の3分の1以上を占める大学もあった。

 今年UCASを退任し、Gloucestershire Universityの学長に就任する予定のMarchant氏は、入学志願者のうち、約13%は留学生であると述べた。「この割合は、木曜日や、10月末の最終結果発表日で大きく変化することは見込んでいない。」

 英国の大半の留学生は、学士課程ではなく、大学院課程に多い。高等教育統計局によると、2021-22年度の学生総数に占める留学生の割合は22%で、学部生は15.7%、大学院は39.1%が海外からの学生だった。

 Marchant氏は、次のように述べた:「国家として、英国に来て学びたいという学部課程の留学生を歓迎する必要がある。なぜなら、留学生にとって魅力的であるオーストラリア、カナダ、米国のような国とグローバルな市場で争っていることを我々は認識しているからである。」

 木曜日に開示されるAレベルの結果を待つ学生たちは、Covidのために学業に多大な影響を受けており、政府が成績をパンデミック以前の水準に戻そうとしていることから、成績上位者数は大幅に減少すると予想されている。

 Marchant氏は、彼らに同情の気持ちを感じると述べた。「彼らは、外部試験の経験がない学生たちなので、木曜日に向けて当然不安もあるだろう。」

※1

クリアリングとは:イギリス大学が9月のコース開始時期に向けて、定員に空きのある学部課程コースの人数を満たすための受け入れを許可するシステム

参考:WHAT IS CLEARING? (UCASウェブサイト【英語】)

https://www.ucas.com/undergraduate/clearing-and-results-day/what-clearing

 The Guardian:

https://www.theguardian.com/education/2023/aug/14/uk-should-embrace-foreign-students-or-lose-them-to-rival-countries-warns-ucas-chief

 

(9雇用者側が交渉を拒否する場合、大学でさらにストライキが決行される

 2023年8月14日 、大学組合 (University and College Union: UCU)は雇用主団体であるUCEAが交渉の席に戻り、卒業式の混乱を解消することに同意しない限り、さらなるストライキに踏み切ると発表した。

 同組合の高等教育委員会は同日午後に会合を開き、9月末までに更なるストライキを実施し、給与と労働条件に関する闘争におけるUCUにおける産業委任を更新するための新たな投票の準備を開始することを決議した。このことにより、この混乱は今年のみならず、2024年まで続く可能性がある。

 また、採点のボイコットも継続される。このボイコットは、4月20日木曜日から145の大学で開始されたが、UCEAはこの申し入れの改善を拒否し、雇用側はストに参加した職員の給与を罰則として減額した。UCUは、セクターの財政の共同レビューに関するUCEAの提案に同意した。

 先週、高等教育担当大臣Robert Halfon氏は、UCEAとUCUに書簡を送付し、争議を終結させるよう求めた。

 UCUの大学分析によると、昨年、高等教育機関はかつてないほど多くの資金を生み出している一方で、職員に対する支払いは過去最低水準に低下した。UCUの組合員は、5%の給与提案を圧倒的に拒否した。9万人を超える大学職員が不安定な雇用契約を結んでおり、職員は平均して週に2日分余分に無給で働いている。

 UCUの書記長、Jo Grady氏は次のように述べた:「我々の高等教育委員会は本日、もし大学長らが交渉への復帰を拒否した場合、来年度開始時に複数日にわたるストライキを各大学で実施することに合意した。我々は、ギグエコノミ―(正規職員がほとんどいない、不安定な雇用契約の労働者で構成される経済)型の大学を受け入れるよう脅されることもないし、罰則的に給与を減額をする雇用者を受け入れることもない。」

 「我々は、セクターの財政を共同で見直すという要請には同意したが、雇用者側は主要な問題に対して妥協をしようとはしなかった。もし彼らが何かしらの善意を示していれば、ボイコットは今頃終了していたかもしれない。その代わり、何万人もの学生に影響が出ており、ストライキは来年まで続く可能性が高い。」

 「大学長らは、何年も努力して卒業する学生を見るよりも、自分たちの労働者を押しつぶすことのほうが重要であると判断した。これは国家的なスキャンダルだ。」

 「英国の高等教育機関は、自らを世界のリーダーだと自称しているが、雇用形態の非正規化、不安定さ、低賃金の問題にまみれており、我々メンバーは、自分たちのために立ち上がるしかない。したがって、採点ボイコットはこのまま継続され、9月にさらにストライキ行動を呼びかけ、かつ来年度にさらなる行動を起こせるよう、大学職員に再投票を求める計画を開始する。」

 

大学組合(University and College Union: UCU):

https://www.ucu.org.uk/article/13141/More-strike-action-to-hit-universities-as-employers-refuse-to-negotiate

 

(10) NCUBの報告書によると、ERDFが大学と企業の提携を促進した

 2023年8月15日、国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)の報告書によると、欧州地域開発基金(European Regional Development Fund: ERDF)は、地元の企業コミュニティとの連携を可能にし、大学が研究からインパクトを生み出す機会を提供しており、英国全土の大学にとって重要な資金源であった。しかし、今年でその資金は枯渇する。

 NCUBの最新の報告書、「A measurable loss: The European Regional Development Fund as a catalyst for University-business Collaboration(明かな損失:大学と企業の共同研究の触媒としてのERDF)」では、ERDFの詳細を調査し、大学がこの資金をどのように英国全土で地域の成長をけん引する研究・イノベーション活動の創出、また維持のために活用したかを記載している。

報告書の見出しは次の通り:

 1.英国の大学は、2014年から2022年までの間、124の機関にわたって、ERDFから8億1200万ポンドの収入を得た。

 2.ERDFからの収入は、主に大学が中小企業との連携、研究開発プロセスやインフラの改善、技術移転の支援、起業の実現に利用された。

 3.ERDFの収入は、大学と企業の提携をさらに促進し、大学がERDFの収入を1ポンドを追加するごとに最大に7.53ポンドの知識交換収入が生み出された。

 4.ウェールズ、ミッドランド西部、北西部、南西部の大学がERDFの収入を最も受け取っていた。

 5.ERDFは、特に中小規模の大学や、芸術、デザインを専門とする専門機関にとって特に重要な収入源であった。

 

 この調査結果は、英国の高等教育機関がERDFの資金提供の喪失によってどのような影響を受け、それにどのように対応するか、また、ERDFの資金によって、大学のプロジェクトや計画事業を通して開発した能力を英国がどのように活用するかについて、重要な問題を提起している。

 この秋にかけて、NCUBはこの調査結果に基づき、英国内の加盟大学と協力して、各大学の経験を報告書の知見に照らし合わせて検証し、今後の方針を探る予定である。

国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB):

https://www.ncub.co.uk/insight/ncub-report-finds-erdf-catalysed-university-business-collaboration/

 

(11チューリング奨学金のため、直前まで待機せざる負えない英国の学生たち

 2023年8月16日、Pie Newsは、来年、英国の4万人以上の学生が、海外留学のために政府からの資金援助を受ける予定だが、英国のチューリング計画には依然と問題が残っていると各機関が指摘していることを伝えた。

 チューリング計画(Turing Scheme)は、Brexitに伴い2021年に導入された。現在、3回目の資金援助が行われているが、学生留学担当者は、このプログラムはEUの交換留学プログラムのエラスムス+に匹敵するものにはなっておらず、担当者たちは支払い、資金提供のスケジュール、透明性の欠如などの課題を乗り越えているという。

 University of Sussexの留学部の部長で、British Universities Transnational Exchange グループの会長Rohan McCarthy-Gill氏は、「資金配分の方法は、学生の留学が現場レベルでどのように機能しているかを考慮していない。」と述べた。

 エラスムス+では、大学は資金を前倒しで受け取り、数年間にわたって適切な配分を行うことができた。現在では、各大学は次年度の資金調達のための入札を行わなければならず、どのプログラムに資金が配分されるかはチューリングが決定する。

 University Council for Modern Languages のyear abroad special interest groupの長であるJames Illingworth 氏は「今年は、昨年より多くの資金を受け取った大学もあれば、少なく受け取った大学もある。状況は大学によってかなり異なっている。」と述べた。

 チューリングは、外部の評価者により、計画の目的に照らし合わせて資金調達入札の審査を行う。評価基準は、そのプロジェクトがどれだけ新規の国際的な関係を促進するか、どれだけ不利な立場にある学習者を支援するか、どのように金額に見合う効果をもたらすか、などの質問が含まれている。

 しかし、各教育機関は、資金がどのように配分されているのか不透明であり、今後をどのように予測したらよいのか、どのように今後の申請書を改善すればよいかがわからないという。

 Illingworth 氏は、Pie NewsへのEメールで、「一般的に、無給の実習(有給の実習ではなく)や、低所得の学生の実習(チューリング計画における参加拡大の信念に沿うため)は優遇される傾向にあるようだ。」と述べた。

「我々が要求したものと、我々が得たものの間には直接的な関連性がない。」とMcCarthy-Gill氏が述べ、チューリングが、学生が参加できるプログラムを事実上決定していると付け加えた。

「我々は、その資金がどのように使われるかを決定するうえで、より多くの主体性を持ちたいと思っている。」と述べた。

 今年は150の高等教育機関がチューリングの資金援助に応募した。継続教育・職業訓練教育機関からは211件、学校からは159件の応募があった。その61%が資金を受け取ったが、各機関は入札時に提示した額よりも少ない額しか受け取らなかったと報告している。

 チューリング資金から大学へは6,200万ポンドで総額の大部分を占めており、継続教育・職業訓練教育機関へは3,600万ポンド、学校へは700万ポンドが資金援助され、総額は1億600万ポンドとなった。

 しかし、これは高等教育機関が9,800万ポンドのうち6,700万ポンドを獲得した2022-23年度よりも割合が減少している。申請件数は、すべてのセクターにおいて2023-24年度で増加している。

 英国大学協会国際部(University UK International : UUKi)の学生留学政策部長のCharley Robinson氏は、チューリング計画は「大変成功している」と述べ、「大学から募集枠を上回る申し込みがある」という。

「我々は、教育機関全体がチューリング計画にますます関与している状況を目の当たりにしており、より多くの学生がチューリング計画による実習から恩恵が得られるよう、将来配分額が増加することを切望する。」とRobinson氏は付け加えた。

 教育機関が、学生の留学のために資金を自前で提供しない場合、学生は交換留学の費用を自前で準備をするよう警告されている。さらに、多くの学生は、海外渡航の数週間前になってようやく資金援助が受けられるかどうかを知ることになる。

 Illingworth 氏は、「教育機関は先月、配分される資金金額のみ通知された。つまり、ほとんどの学生が、少なくとも我々の機関では、プロセスが終了するまで資金援助の保証はできないため、資金援助が受けられないことを前提に留学を計画するようにいわれている。」と語った。

 Robinson氏は、次のように述べた。「我々は、この制度が将来的に12か月の期間で終わるものではなく、2年から3年の期間のものに移行、学生の計画や意思決定のスケジュールに沿ったものになることを望んでいる。」

「そうすることで、学生は早い段階で資金援助があるという安心感を得ることができ、また、大学が学生に提供する様々な利用可能な機会を革新することを支援できるだろう。」

 政府は、この制度が2024-25年度まで実施されることを確認しているのみで、今後数年間のうちに大学進学を考えている学生にとって、大学生になった時点ではこの交換留学資金が利用できない可能性もある。

 昨年は、支払いの遅れが生じたため、一部の大学は、資金の入金までその費用を肩代わりせざるを得えなかった。

「資金繰りに問題のない大学であれば、少なくとも資金は支払わなければならないという契約上の合意があるので、そのようなこともできるが、規模の小さい大学にとっては…良い状況ではない。」とMcCarthy-Gill氏は述べた。チューリング計画の運用を「ひどい」と評した。

 資金援助の入札の際、教育機関はプログラムの開始日、終了日、参加人数などの詳細の提出を求められる。特に、サマースクールのような短期留学プログラムの場合、最終決定が遅くなることが多い。

「我々は、まだ持っていない情報を求められることがある。」とRohan氏は述べた。

「もし状況が変わってしまったら、詳細の更新をすることは難しいかもしれない。」

「変更のプロセスは非常に時間がかかり大変面倒で、確実性がない。多くの場合、その変更が受け入れられるかどうかはある種の賭けのようであり、ただ最善を祈るしかない。」

 大学が、チューリング計画がある程度の成功と考えている部分は、参加拡大に焦点を置いている点である。今年、資金援助を受ける学生の3分の2は「恵まれない」環境の学生に分類されており、昨年の51%から増加した。

「チューリング計画は、ヨーロッパを中心としたプログラムから、新しく世界に開いたプログラムに移行し、恵まれない環境の学生の参加を劇的に増加させた。」とRobinson氏は述べた。

 スキル、技能実習、高等教育担当大臣のRobert Halfon氏はこの制度を「社会的流動性の推進」と表現した。

 しかしMcCarthy-Gill氏が指摘したように、十分に運営するための資金がない場合は、結局は大学が、誰がより恵まれない環境にあるかを決めなければならない。

 チューリング計画が始まってから3年が経過し、教育機関や加盟団体は制度の変更を主張し続けているが、ほとんど成果は出ていない。

 「この3年間、教育機関からの要望が取り入れられたとは思っていない。」とMcCarthy-Gill氏は述べた。「我々はただ学生たちに、これは不完全な資金提供制度で、内容を変えるには限界があることを学生に説明するしかない。」

 教育省の広報担当者は、「今年、英国全土の4万人以上の生徒、学習者、学生が、世界中の160以上の留学先で学んだり、働いたりする機会を得、その機会を得る60%が恵まれない環境の出身者である。」

「参加する若者は、政府の野望であるGlobal Britainを後押しすると同時に、彼らの将来に必要な自信を育む感動的な実習から恩恵を受けるであろう。」

Pie News:

https://thepienews.com/news/students-turing-funds-third-year/

 

 (12英国の18歳志願者の79%が第一志望の大学に合格

 2023年8月17日、英国で何千人もの学生がAレベルの結果を受け取ったが、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)の新しい統計によると79%の学生が第一志望大学に進学を決めていることが分かった。

 UCASの結果発表日(8月17日)のデータによると、試験が再開された2022年では81%、最後に同様の成績評価の方式で試験を実施した2019年では74%となっている。

12%は滑り止めの大学に進学となり、この数値は2019年は14%、2022年では11%であった。

ほかの9%の学生は第一志望または滑り止めにも入れず、現在クリアリング※1の状態である。この数値は2019年では12%、2022年は7%であった。このような学生には、同日朝の時点で29,000近くのコースがクリアリングで利用可能であると同時に、8000件の技能訓練制度がucas.com上に掲載されており、幅広い選択肢がある。昨年の同時期ではクリアリングの対象は26,000コースであった。

 全体として、414,940人の進学希望者(全年齢、全出身地)が大学およびカレッジから入学許可を得ており、これは昨年の425,830人(-2.6%)からは減少したが、2019年の408,960人(+1.5%)よりは増加した。英国の18歳では、230,600人が合格し、2022年の238,090人(-3.1%)からは減少したが、2019年の199,370人(+15.7%)よりは増加した。

同日の統計は次のことも示している:

  ●英国の18歳は、202,410人が第一志望大学に合格し、2019年の176,300人(+14.8%)から増加している。試験が2019年の採点レベルに戻ったイングランドでは、18歳の学生の170,920人が第一志望大学に合格し、4年前の149,670人(+14.2%)から増加した。さらに、8,600人のウェールズの学生と7,800人の北アイルランドの学生が第一志望の大学に合格した。

  ●留学生(全年齢、全出身地)の合格者数の合計は51,210人で、昨年の52,440人(-2.3%)から減少した。合格者数上位3か国は、中国(2023年:11,630人/2022年:13,180人)インド(4,780人/4,050人)香港(3,050人/3,420人)であった。

  ●英国の最も恵まれない環境(POLAR4 Qunitile1)にある18歳の合格者数は25,760人で、最も恵まれた環境(POLAR4 Quintile5)にある18歳では76,780人となった。2022年では恵まれない環境の18歳は26,440人、恵まれた環境の18歳は79,650人であった。これは、恵まれない環境の学生1人に対して、恵まれた環境の学生は2.30人(昨年は2.29人)進学することを意味する。

  ●2023年、イングランドの18歳の公立学校の志願者で、無料給食を支給されているのは16,530人で、2022年は14,540人(+14%)、2019年は10,320人(+60%)であった。

  ●今年、予測Tレベルを所持する志願者のうち、1,830人が高等教育に出願し、97%が少なくとも1件のオファーを受け、1,220人が受け入れられた。

 UCASの最高責任者、Clare Marchant 氏は次のように述べた:

「まず、今日の日に、各々の結果と次のステップを祝っている全国各地の何十万人もの学生にお祝いを述べたい。20万以上の英国の18歳が、第一志望の大学に合格したことは、地政学、経済と雇用市場、生活費など多くの要因が複雑に絡んだ1年の中で、高等教育への進学を果たすために学生自身が努力した証であり、大変喜ばしいことである。

しかし、本日のデータは、最も不利な立場にある学生の高等教育への進学拡大という課題がまだ残っていることを示している。このことは、特に18歳人口の増加に伴い、社会で最も不利な立場に置かれている人々が、高等教育や訓練において人生を変えるような機会から恩恵を受けることができるよう、私たち全員が努力を続ける必要があることを示している。

今日、個人宛のUCASのEメールを開くか、UCASのアカウントにログインして決定を確認することで、学生は、次のステップをできるだけ簡単にするために設定された、明確でカスタマイズされた選択肢を得ることができる。

期待していた結果が得られなかった学生や、考え直したい志願者のために、クリアリングには現在約29,000のコースと8,000の実習先があり、多くの選択肢がある。また、電話、ソーシャルメディア、ucas.comで、専門的な情報、アドバイス、ガイダンスを学生に提供するため、アドバイザーのチームが懸命に活動している。」

 

 UCASは、従来のサイクル(6月30日までに願書提出)で申請し、本日その決定が明らかになった英国18歳の志願者の内訳を示すデータ表を発表した。(以下のリンクから確認可能)

大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/79-uk-18-year-old-applicants-receiving-results-gain-place-first-choice-university

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クリアリングとは:イギリス大学が9月のコース開始時期に向けて、定員に空きのある学部課程コースの人数を満たすための受け入れを許可するシステム

参考:WHAT IS CLEARING? (UCASウェブサイト【英語】)

https://www.ucas.com/undergraduate/clearing-and-results-day/what-clearing

 

◆関連記事①教育省(Department for Education)政府は成績評価システムが正常に戻ったとして学生を賞賛

DfEの大臣Gillian Keegan氏は、数十万人が本日(8月17日)A・ASレベル、Tレベル、レベル3の職業・技術試験の結果を受け取る準備をする中、若者たちの回復力と努力を賞賛した。

この結果は、若者たちと教師の長年の努力の結果であり、学生にとって大学進学、更なる訓練、もしくは就職など、次のステップへの道を開くものである。

今年は、ASレベルとAレベルがほぼ正常に戻った最初の年である。パンデミックの間は、試験が実施できなかったため、成績は高めに出た。この夏から通常の成績評価システムに戻ったため、成績は昨年より下がるが、2019年のレベルと同様となった。つまり、例えば、2019年にAレベルでC評価を得ていた学生は、今年も同じようにC評価を得る可能性があり、学校終了後の人生への同じわくわくするような扉が開かれるということだ。

パンデミック以前の成績評価方法に戻ることは学生にとって重要である。それは、大学や雇用者は、学生の成績を理解し、資格に自信を持ち、学生が現在と将来において自分の成績に見合った機会に進めるよう、その資格を活用できることを意味する。

また、政府の主要な新しい資格であるTレベルも、今年で2年目を迎え、何千人もの学生が今日のTレベルの結果を待っている。この新しい資格は、Aレベルに相当する技術系資格で、主要な雇用主との協力のもと設計され、質の高い技術教育を提供している。

大学側は毎年行われるように、入学要件とオファーが、学生の予想される成績を反映していることを確認しており、一流大学の定員数が成績上位者の数に影響されることはない。  

DfE大臣Gillian Keegan氏は次のように述べた:

「本日、成績結果を受け取ったすべての学生を大変誇りに思う。多くの学生にとって、この夏までの数年間、前例にない環境に直面し、この試験が初めて受ける最初の正式な試験であっただろう。

私は、若者たちが様々な困難に直面し、何千人もが大学、技能実習、もしくは就労など、自分の将来をつかむために必要な結果を得るだろうと承知している。学生が、望んだ成績が取れたかどうかに関わらず、これまで以上に多くの選択肢と、非常に多くのサポートが用意されている。

次のステップに進もうとしている若者たち一人一人を祝福するとともに、そこに到達する手助けをした先生方にも感謝する。」

試験を受けることで、学生は科目についての自身の知識や理解を示す公平な機会が得られ、公平な競争の場を確保することができる。

GCSEやAレベルでは、上級試験官が、全国的な成績がパンデミック以前よりわずかに低いことが判明した場合、配慮を行う。これは、近年の混乱を経て成績評価が通常に戻る際に、学生を保護するためのものである。

政府は、子どもたちや若者がパンデミックの影響から立ち直るための支援として、今年および将来の受験生を支援するための質の高い個別指導のための15億ポンドを含む、約50億ポンドを用意した。2020年以降、今年度の130万件を含め、400万件近くのコースが全国個別指導プログラムを通じて開始された。

学生がそれぞれの予想成績に達さなかった場合でも、希望する大学からオファーが出されることはよくある。2019年には、最低3つのAレベル予想成績を持つ18歳の英国の志願者のうち、予想成績を達成または上回ったのはわずか20%だったが、同じグループのほぼ90%が英国の大学への入学許可を得た。そのうちの65%近くが第一志望に合格した。

学生に対するサポートは非常に充実している:

 ●学生の学校やカレッジ、あるいは申請した大学の入試課が、最初の窓口となる。

 ●National Careers Servicesにはこの結果発表期間、専門家が待機している。

 ●UCASのクリアリング※1・ホットラインは学生が選択肢を理解する手助けをするために開設されている。

 ●オンラインのサービス「Clearing Plus」は、学生が取得した成績に見合った入学条件のコースをマッチングするのに役立つ。

また、見習い学位制度や高等技術資格など、学生が素晴らしいキャリアをスタートさせるために必要なスキルを習得できる、質の高いさまざまな技術の選択肢も用意されている。学生は、Get The Jumpのウェブサイトを通じて、各自の選択肢を検討することができる。

※1

クリアリングとは:イギリス大学が9月のコース開始時期に向けて、定員に空きのある学部課程コースの人数を満たすための受け入れを許可するシステム

参考:WHAT IS CLEARING? (UCASウェブサイト【英語】)

https://www.ucas.com/undergraduate/clearing-and-results-day/what-clearing

教育省(Department for Education):

https://www.gov.uk/government/news/government-praises-students-as-grading-system-returns-to-normal

 

関連記事②Guardian:イングランドでAレベルの優秀な成績の学生が数千人減少

 

政府がパンデミックの時期に実施した成績インフレの対応を取りやめたため、イングランドでのAレベルの成績が低下し、何千人もの学生がトップの成績を逃した。

 AやA*の成績の激減は、教育大臣のGillian Keegan氏が、10年後には誰も生徒の試験結果に興味を持たないだろうと示唆し、「侮辱に侮辱を重ねた」と非難された際に起きた。

イングランドでは、2022年に比べてA*を3つ獲得した生徒が5,000人減少し、上位のA*-Aの割合は1年間で35.9%から26.5%に縮小し、今年授与された数は67,000人減少した。

 イングランドにおけるA*の評価を習得した割合は8.6%で、昨年の14.5%からは激減したが、2019年の7.7%よりも上回っている。A*とAを合わせた成績の割合も、2019年から0.7ポイント上回った。

 学校長たちは、パンデミック前に実施された最後のAレベル試験よりも採点が厳しくなっているケースがあることに懸念を示し、今年は最低点の数が急増したことにより、A*-Cの成績の割合が2019年の成績を下回っていると述べた。

 今回、イングランドでは初めて10人に1人以上がEもしくはU(未分類)の評価を受けた。このような成績は2019年から10%増加した。この増加は、2021年に試験が中止された際に、教師の評価によって与えられたGCSEの成績に基づいてAレベルを受験する学生が増えた結果と思われる。

イングランドの成績は、規制局がパンデミックの長期的影響を考慮し、より寛大な成績評価を行っているウェールズや北アイルランドと比較して、上位の成績に大きな開きがあったことを示した。北アイルランドではA*-A評価が37.5%、ウェールズでは34%で、イングランドの26.5%とは大きな差があった。

 Keegan氏は、卒業していく者たちが、2年間努力した結果を受け取る中、期待された成績を取れなかった者も「がっかりする必要はない。」と述べ、こう付け加えた: 「10年後にAレベルの成績について聞かれることはないだろう。それ以降にやったこと、職場でやったこと、大学でやったことなどについて聞かれるだろう。そして、しばらくすると、大学で何をしていたのかさえ聞かれなくなる。」と述べた。

影の教育大臣Bridget Phillipson氏は、Keegan氏の発言は「実に無礼」であり、謝罪する必要があると述べた。

 「信じられないほど懸命に働いてきた若者たちにとって、今日は神経をすり減らすような日だ。彼らにとって最も必要ないのが、国務長官があのような発言をすることだ。」

「若い人たちが必要としていたような支援を全く導入できなかった政府による侮辱に追い打ちをかけるようなものだ。」とPhillipson氏は語った。

後にKeegan氏は、自身の発言を正当化し、次のように補足した。「これは事実である。それは次の目的地に行くための重要なステップだが、いくつか先の目的地に向かう時には、また異なる項目に注目するだろう。」

 イングランドの試験監督機関である、英国資格試験監査機関(Office of Qualification and Examinations Regulation: Ofqual)の所長であるJo Saxton氏は成績の低下を擁護し、次のように述べた:「特に驚くことでもなく、我々が目にする成績評価の変化は、昨年と傾向が非常によく似ている。これらは2019年の結果より良く、学生は直面した困難すべてが考慮され、それに見合う保護を受けている。」

 しかし、Association of School and College Leadersの事務局長、Geoff Barton氏は、試験を受けた学生に対して自分たちが成し遂げたことを誇りに思うべきであると述べた。「しかし、その根拠が何であれ、多くの学生や学校、カレッジにとって、過去3年間の成績と比較すると優秀な成績が激減したことはつらい経験だろう。」と彼は述べた。

 大学入試機関であるUCASによると、英国の卒業生の79%が秋から始まる第一志望の学士課程コースへの合格資格を得たと発表、これは昨年の81%をわずかに下回ったものの、2019年に第一志望に合格した74%よりは高かったと発表した。また、 約6万人の学生が大学進学のためにクリアリングに参加した。

 ウェールズの教育大臣、Jeremy Miles氏は、イングランドの成績評価とその他の英国地域とのアプローチの違いが、困難を引き起こしていることを示す証拠はないと述べた。

「舞台裏で何が起きているかというと、試験規制当局は大学と親密に提携し、4か国で行っているアプローチをだれもが理解できるようにしている。問題を起こしているという証拠は何もないと思う。」と語った。

 

 私立系学校とグラマースクールは、昨年と比べて昨年と比較して上位成績の落ち込みが最も大きかったが、どちらも2019年よりも多くの上位成績を獲得している。イングランドのグラマースクールの39%、私立系の入学者の47%がA*またはAグレードを獲得した。

 地域間格差も大きかった。ロンドン、イングランド南東部は2019年と比べて上位成績の取得者は増加したが、イングランド北東部のヨークシャ―、ハンバー地域では減少した。イングランド南東部とイングランド北東部では、A*-Aグレードを取得した学生の間に8%ポイントの開きがあり、これは2019年の5%ポイントよりも拡大した。

 Schools North Eastの所長であるChris Zarraga氏は次のように述べた:「様々な段階におけるこれらの課題に対処しなければ、今年のような格差や不平等が常態化する危険性がある。」と述べた。

 数学は引き続き最も人気のある科目であり、地理に代わり経済がトップ10入りし、39,000人以上がその科目を受験した。2年間連続で減少した英文学は人気を取り戻し、今年はコンピューティングが16%増と最高の伸びを記録した。

 新しい職業資格であるTレベルの第2期生も結果を受け取ったが、入学した学生の3分の1が2年間のコース終了前に退学した。結果を受け取った3,119人の生徒のうち、90%が合格以上、22%が優秀以上の成績を収めた。

The Guardian:

https://www.theguardian.com/education/2023/aug/17/a-level-results-in-england-show-biggest-drop-on-record

 

◆関連記事③i news :Aレベルの学生が大学入学を遅らせるリスクを警告、2024年にはさらなる定員割れが予想される

 米国の大学進学を選ぶ英国人学生が増える中、進学を先延ばしにするリスクについてのアドバイスが届いた。高等教育進学を1年延期することで、クリアリングの入学枠争奪戦から逃れようと考えているAレベルの学生に対して、その戦略が裏目に出る可能性があると警告されたとi newsが報じた。

 Aレベルの結果が出た木曜日に発表されたUCASの最初の統計によると、英国の学位取得コースに入学を許可された学生の総数は、昨年の同じ時点と比べて2.6%減少し、何千人もの学生が入学先を探している。

 しかし専門家の間では、18歳人口の増加により、2024年の英国大学の進学の需要がさらに高まると予想されている。

 University of BuckinghamのAlan Smithers 教授は次のように述べた:「この集団は2030年まで毎年約3%ずつ増加するとみられているので、大学への国内からの志願者はさらに増えるでしょう。」

 シンクタンクである高等教育政策研究所の所長、Nick Hillman氏は、学生に次のようにアドバイスした:「今年、満足のいく進学先が見つかるのであれば、絶対に延期するべきではない。」

 彼らの予想は、英国の入学先をめぐる競争の激化により、英国の学生たちの間で米国の大学進学への需要が高まっている証拠が明らかになった中で出た。

 Hillman氏は、英国の状況は今後も激化していくだろうと予測する。 「2つの理由から、来年はさらに悪化すると思います」と彼は言った。 「まず、来年は18歳が増える…それは出生率と関係がある。」と述べ、「来年は今年より悪くなり、再来年は(さらに)悪くなるだろう。2つ目の理由は、今年の定員獲得競争は、成績のデフレによって希望するような入学先を得られなかった人がいることを意味する可能性が高いということだ。そのため1年待って、来年再度挑戦しようとしている。」と述べた。

 Hillman氏によると、2022年の大学入学定員はすでに今年に繰り越されており、さらに繰り越される場合、2024年への需要はさらに高まるだけだという。

「今年希望する大学に入れなかったために1年待たざるを得なかったという19歳が、さらに増えることが予想される。」と Hillman氏は警告した。

 しかし、彼は同時に、すべてのメリットとデメリットを検討し、パニックに陥って自分に適さないコースに申し込まないよう、学生たちに呼びかけた。

 「もし関心のない学部に行ってしまうと、最終的には退学することになってしまう。もし1年間待つのであれば、それを無駄にしないこと。ただ家にいて、コンピューターゲームをして、ほかに何もしないということはするべきではない。履歴書の空白の1年について、将来の雇用主から質問されるだろう。」

 UCASのデータによると、今年、第一志望の大学やカレッジに進学できた学生の数が昨年の81%から減少し、英国の18歳の志願者の79%が第一志望大学に受け入れられた。しかし、これは、2019年の74%からは増加している。

 Smithers 教授は、「定員に上限がないため、大学はコースを拡大することができる」ため、将来的にはプレッシャーが緩和される可能性があると述べた。

 しかし、研究室スペースや専門設備が必要な場合には、「定員に制約がある」と述べた。

 さらにHillman氏は、英国の大学の定員が削減する可能性を示唆した。「現在、すべての公式なデータが示しているのは、平均して、大学は国内学生一人一人の教育に対して損失を出しているため、定員は今後も減り続ける可能性がある」と氏は述べた。「9,250ポンドの授業料は非常に高額に聞こえるが、大学は平均して9,250ポンド以上費やしている。」

 UCASのClare Marchant最高責任者は、次のように述べた: 「結果発表の日に自分の結果を知った英国の18歳の79%が、第一志望の大学やカレッジへの入学を祝福している。」

 「毎年、競争が激しい大学の競争が激しいコースはすぐに定員に達してしまうが、進学を希望する学生にはまだ多くのコースが用意されている。クリアリングでは、28,000ものコースや何千もの技能訓練の機会を調べることができ、UCASのアドバイザー・チームに相談し、アドバイスやガイダンスを受けることができる。」

 Universities UKは、次のように述べている: 「大学への出願は常に競争的なプロセスですが、結果発表日現在の今年のデータは、非常にポジティブなもので、成績評価の方法が比較可能な最後の年である2019年と比較して、英国の18歳は16%多く入学許可を得ている。」

 

米国留学を志願する英国人学生が増える見込み

 英国のトップ教育機関の定員割れが深刻化するなか、大西洋を渡って米国の大学に留学する英国人学生が増える見込みであることが、iの取材で明らかになった。Hillman氏は「一部の学校は現在、6年生、つまり12/13年生の学生たちに、おそらく以前はしなかったような方法で、海外の選択肢を検討するよう働きかけている。」

 「米国のアイビーリーグの大学から、留学生として入学でき、その場合授業料が一切かからないヨーロッパの大学までも対象となっている。」と述べた。

国際教育研究所(Institute of International Education )による最新の分析によると、2021-22年度に米国の大学に通う英国の学生は10,292人で、前年度より28%増加した。その半数近くが学部生だった。

専門家によると、この傾向はそれ以来強まっているという。Independent Schools Councilの議長、Barnaby Lemon氏は、同協議会が収集したデータから「米国の大学への志願者数が徐々に増加している」ことがわかったと述べた。

 「理由は2つか3つある。第一に、米国の大学は我々の学校からの募集に力を入れており、特に私立の学校では、大学の入試担当者が学校に来て学生と話をする。これは英国の大学からすると非常に珍しい方法である。第二に、米国の大学では1年目に特定の科目を選択する必要がないという点が、多くの学生に好まれている。第三に、アメリカの大学には多くの奨学金制度がある。アメリカの大学の最大の問題は明らかに費用だが、彼らは莫大な基金を持っているので、手厚い奨学金を提供することができ、ほとんどの大学で行われている。」

 しかし同氏は、米国に渡った学生は「全員十分に能力がある」のであり、英国の大学に受け入れられなかったという理由で米国に行ったのではない、と強調した。

 英国の学生で留学を支援するA Star Future の創立者、Mark Huntington氏も、米国への出願が増加していることを述べた。

 しかし同氏は、申請者は授業料や生活費を賄うために奨学金を受けることに依存せず、また英国で勉強しているのであれば受けられた資金を受けることができないため、米国の大学に行く多くの学生は裕福な層の学生に限られている。そのため、この増加も私立系の学校や、裕福な層の家庭からの学生数が増加しているといえるという。

「米国の場合は少し難しい。なぜなら、巨額な財政援助かそれに似たようなものを受けられるということを耳にし、それを受けられると思って応募する人が非常に多いからである。しかし、そのような奨学金は受けられないことがほとんどである。」

i news :

https://inews.co.uk/news/education/a-level-students-warned-risk-delaying-university-entry-2024-squeeze-new-places-2557439

 

 (13文系科目と理系科目を組み合わせて選択することで、将来への備えをするよう学生たちに奨励するよう、教師や保護者が強く求められる

 2023年8月17日、英国学士院(British Academy: BA)によると、Aレベルの学生が結果を手にする中、2つの主要な教育機関の学長は、学生が自分自身や労働力、そして社会の将来を見据えて、幅広くバランスの取れた科目を選択することを奨励するよう、教師や保護者に呼びかけている。

 BAの会長、Julia Black 教授と英国科学協会(British Science Association: BSA)の会長Anne-Marie Imafidon博士は、Times Educational Supplement に独占的に共同コメントを出し、その中で、教師、保護者、学生自身に対し、「人文科学、科学、社会科学にわたる幅広くバランスのとれた科目ポートフォリオの利点を考慮する」よう呼びかけている。

 二人は、「政治家たちはこれまで長い間、芸術や人文学の価値を軽視し、その代わりにSTEM系のスキルばかりに重きを置いてきた。この動きは、GCSE後に数学の必須科目化を推進したことでもわかる。これはSTEMのスキル低下を食い止めるには有効だったかもしれないが、現在では、数学、生物学、化学、物理学は増加しているものの、英語、現代外国語、芸術系科目がすべて減少もしくは停滞しているという不均衡な状態になっている。

 多くの課題に直面する中、現在の学生たちには、大胆で影響力のあるリーダー、起業家、イノベーター、研究者になってもらう必要がある。そのためには、彼らには真に幅広いスキル、専門知識、経験が必要となる。」

 この呼びかけは、Joint Council for Qualification(JCQ)が同日に発表したAレベルのデータがウェールズ、イングランド、北アイルランドのSHAPE( Social Sciences, Humanities and Arts for People and the Economy)分野の健全性について複雑な様相を呈していることを受けてのものだ。

  

  ●人気上位10科目のうち6科目はSHAPEの分野である。(心理学、歴史学、社会学、ビジネス研究、アートとデザイン、経済学)

  ●過去1年間、フランス語(11%減)やスペイン語(11%減)といった現代外国語のコースに参加する学生数は減少を続けている。昨年の結果では、ドイツ語が4%の微増であり長期的なマイナス傾向に歯止めがかかったが、今年のデータでは16%減と人気が再び下がっている。アラビア語や中国語などの外国語はわずかな上昇を示しているが、これらの言語コースへのエントリーは2019年を下回っている。英国の高等教育及び中等教育への意見とともに、BAは21世紀の英国の教育と技能のニーズに答えるために、国家言語戦略を呼びかけている。

  ●社会科学の状況は、様々なコースにおいて学生のエントリーが継続的に増加しており、より前向きな状態である。経営学(6%増)経済学(7%増)社会学(5%増)と増加し、長期的なトレンドを構築している。

  ●メディア、映画、テレビ研究に関しては増加(10%増)したが、そのほかの芸術系科目、例えばドラマ(8%減)音楽(7%減)演劇/表現芸術(13%減)などはエントリー数が減少した。

  ●古典科目では短期・中期的に大きな伸び(21%増)を示したが、エントリー数は10年前の水準より下回っている。 

  ●英文学のエントリー数は昨年からわずかに増加(3%増)しているが、それ以外はAレベルの英語学の減少が続いている。しかし、スコットランドでの英語学の状況はより複雑で、Higher Levelでは前年比4%増加、Advanced Higher Leverでは5%減少となった。BAは今年初め、英国全土の英語研究についての詳細な調査結果を発表した。

 最近、BAは様々な分野、科目や機関、特にSHAPEとSTEMの分野で提携することの影響を示すキャンペーンとして「Connected Knowledge」を開始した。

 BAの会長、Julia Black 教授は次のように述べている:

「急速に変化する世界では、柔軟で多言語を操り、コミュニケーションや共同作業を行い、分析や問題解決に優れ、批判的かつ創造的に考える人材が求められている。しかし、学生はSHAPE(社会科学・人文科学・芸術)かSTEM(科学・技術・工学・数学)という2つの科目のどちらかに誘導されがちで、学生自身や社会に悪影響を与えている。」

「SHAPEとSTEMは対等な知識の補完であり、その洞察力、スキル、研究は組み合わせることで最も有益になることが多く、その価値は本質的に相互にリンクしていることが多いことを示すため、私たちは最近『Connected Knowledge』キャンペーンを開始した。」

「そのために、私たちは次世代のAレベルの学生たちに、幅広くバランスの取れた科目ポートフォリオの利点を考慮し、多様なスキルセットがもたらす機会を取り入れ、自分自身と社会の将来を守るよう促している。」

「Aレベルのエントリー傾向やデータに関する詳しい情報は、SHAPE指標を通じて提供されている。我々は、SHAPEオブザーバトリー(SHAPE Observatory)機能を通じて、システム全体および分野レベルでSHAPE科目の健全性と発展を注視していく。」

 

英国学士院(British Academy: BA):

https://www.thebritishacademy.ac.uk/news/encourage-students-to-futureproof-themselves-by-choosing-a-mix-of-arts-and-science-subjects-teachers-and-parents-urged/

 

(14英国主催のAI安全首脳会議は11月初旬に象徴的なブレッチリ―・パークで開催

 2023年8月24日科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は11月1,2日に開催される世界的な大規模イベントの詳細を発表した。

  ●11月に英国主催でAIの安全性に関する世界初の首脳会議が開催される。

  ●AI技術の最前線における安全性を向上させるための迅速かつ国際的な行動を模索し、コンセンサスを形成する。

  ●開催地となるブレッチリ―・パーク(Bletchley Park)は、コンピュータ科学の発祥の地のひとつである。

 英国政府は、11月の英国サミットの開催地としてブレッチリ―・パークを発表し、世界の主要国家、大手のAI企業、研究の専門家は11月に、最前線のAI技術の安全な開発と利用に関する重要な協議のために集まることとなった。

 11月1日と2日に開催されるこの大規模な世界的イベントでは、特に開発のフロンティアにおけるAIのリスクを検討し、国際的に協調した行動を通じて、どのようにリスクを軽減できるかを議論する。AIのフロンティアモデルは、経済成長の原動力となり、科学の進歩やより広範な公共の利益をもたらす大きな可能性を秘めていると同時に、適切に開発がされなかった場合、潜在的な安全性のリスクが生じる。

 コンピュータサイエンスの発展の歴史において重要な場所であり、かつては英国のエニグマ暗号解読の本拠地でもあったバッキンガムシャーのブレッチリ―・パークで開催される予定で、世界的なAI使用における安全性を高めるための一連の迅速かつ的を絞った連携的な対策に合意するための協調的な活動が行われることになる。

 サミットの準備はすでに本格化しており、Mat Clifford氏とJonathan Black氏が最近、首相の代表として任命された。両氏は今後3か月間、このサミットで主要なAI国家や専門家を集め、AIのリスクを軽減するために必要な安全対策の合意に至るための共通のアプローチをさらに開発するために各国が協力するプラットファームを提供することを確実にするため、協議や交渉の先頭に立つ。

 首相のRishi Sunak氏は次のように述べた:

「英国は長年、未来の変革をもたらす技術の本拠地であり、今回11月に開催される最初のAI安全サミットを開催するにあたり、ブレッチリ―・パークは最適の場所である。」

「人工知能の驚異的な可能性を最大限に活用するには、我々はリスクを把握して対処し、人工知能が将来的に安全に開発されるように取り組まなければならない。」

 「我々の国際的なパートナー、盛んなAI産業、そして専門的なアカデミック・コミュニティの力を結集することで、世界中のAIの安全で責任ある発展のために必要な迅速な国際的行動を確保することができる。」

 

DSITの大臣、Michelle Donelan氏は次のように述べた:

 「国際協力はAI規制に対する我々のアプローチの基礎であり、我々はサミットの結果、主要国や専門家がAIの安全な利用に関する共通のアプローチに関して合意することを望んでいる。」

 「英国は、常にAIの分野では世界のリーダーとして認識されており、我々はこれらの議論をリードする立場にある。ブレッチリ―・パークという場所を背景として、新しい技術開発を運営することで英国の歴史的なリーダーシップを再確認することになるであろう。」

 「AIはすでに、医療における新しいイノベーションから気候変動への取り組み支援まで、我々の生活をすでに改善している。11月のサミットは、今後数十年にわたり、我々全員が技術の大きな恩恵を安全かつ確実に実感できるようにする。」

  このサミットはまた、OECD、AIに関するGlobal Partnership、欧州評議会、国連、標準化団体(standards-development organizations)を含む国際フォーラムでの進行中の取り組みや、最近合意されたG7広島サミットのAI Processの合意内容に基づいている。

英国はAIの世界的なリーダーとして確固たる地位を誇っている。この技術系産業では5万人を雇用し、37億ポンドを経済に貢献することで、首相の5つの優先事項の一つに直接的に支援しているうえ、Google DeepMindなどの大手AI企業の発祥地でもある。また、他のどの国よりも多くAIの安全性の研究に対して投資を行い、最初の1億ポンドでFoundation Model Taskforceの創立を支援している。

GOV.UK :

https://www.gov.uk/government/news/iconic-bletchley-park-to-host-uk-ai-safety-summit-in-early-november

 

(15) 2023年6月までの1年間の英国の留学ビザ発行数が23%増加

 2023年8月24日、Pie Newsは、2023年6月までの1年間で、50万件近くの英国へのスポンサー付き留学ビザが発行され、これは前年比23%増に相当し、そのうちインド人がほぼ3分の1を占めていることを伝えた。

 また、同日発表された内務省の統計によると、スポンサー付きの留学関連ビザのうち約15万4000件が学生の扶養家族に発行されたことが示された。

 2024年1月以降、英国の修士課程の座学コースの学生は、扶養家族の同伴が認められなくなる。

 学部生はこれまで、家族の同伴は許可されていなかった。大学院の研究コースの学生は、2024年以降も引き続き扶養家族の同伴が許される。

 2023年6月期におけるスポンサー付きの留学ビザの発行件数は498,626件で、Covid流行前の数となる2019年6月期と比べて108%増加した。

 業界の関係者は、11月23日に発表される2023年の第3四半期の数字が何を示すかを期待しているだろう。第3四半期は伝統的に、ほとんどの入学希望者が英国の大学に進学するために必要なビザを申請する時期である。

 留学ビザの発給数増加の背景には、非EEA加盟国の学生があり、過去1年間で24%増加した。内務省の分析によれば、EUからの留学生は「横ばい」で、1%の微減であった。インド人に対するスポンサー付きの留学ビザ発行数は142,848件で、2022年の同時期と比べると49,883件(54%増)となった。内務省は、インド人へのビザ発行は2019年6月期の約7倍になったと言及している。

 中国人のビザの発行数は2022年と比べて6%減少し、2023年6月までの1年間で107,670件のビザが付与された。中国人とインド人を合わせると、スポンサー付き留学ビザの半数を占めている。

 その他ナイジェリア、パキスタン、米国がスポンサー付き留学ビザ発行数の上位の5か国に入る。ナイジェリア人へのビザ発行は6月までの過去1年間で73%増加して58,680人であった。

 EEA(欧州経済地域)からの学生へのスポンサー付きビザ発給では、ドイツが4,373件で18%を占め、次いでフランスが4,286件(同じく18%)、スペインが3,380件(14%)であった。

 この統計によると、6月までの1年間にGraduate Route ビザは全体で98,394件が発行され、インド人がその5分の2(42%)を占めた。これまでの分析では、2022年に留学ビザが期限終了となったものでGraduate Route ビザに切り替えた割合は20%であった。

Pie News:

https://thepienews.com/news/23-rise-uk-study-visas-granted-in-year-to-june-2023/

 

(16) EUスキーム未参加の英国、がん研究者の「頭脳流出」に直面

 2023年8月25日、Guardian紙は、英国のホライズン・ヨーロッパの参加の遅れにより、優秀な研究者の誘致や維持が困難になっていると伝えた。

EUの研究プログラムに関して合意に至っていないために、若手の優秀ながん研究者が英国から去りつつあり、「頭脳流出」が起きていると科学者らが警告した。

 世界最大の共同研究プログラムで、850億ポンドの予算であるホライズン・ヨーロッパへの参加が2年半遅れているため、「英国の評判が傷付き」、優秀な研究者を英国の研究室に引き付け、維持することが難しくなった。

 英国王立がん研究基金(Cancer Research UK: CRUK)は84人のがん専門家を対象にホライズン・ヨーロッパに関する調査を行ったところ、回答者の4分の3が同プログラムへの加盟を希望したのに対し、パイオニアとして知られる政府のプランBを英国単独で実施することを希望したのはわずか11%だった。

 英国はEU離脱協定の一環としてホライズン・ヨーロッパの参加を交渉したが、EUは北アイルランドの貿易協定の対立から参加を延期している。

 CRUKの世論調査によると、欧州との新しい取り決めで、優秀な研究者が英国訪問を妨げられて、回答者の76%が職員の採用と維持に困難が出ていると回答した。ブレグジット後の関係がそのような人材確保に影響を与えないと答えたのはわずか16%だった。

 ロンドンのFrancis Crick 研究所のがん遺伝子生物研究室の室長であるJulian Downward教授は次のように述べた:「ホライズン・ヨーロッパの参加を非常に必要としている。現在の状態は英国の科学に日々ダメージを与えている。我々は、欧州研究評議会の助成金を受けるためにEU諸国に移動することを決めた優秀な若手研究者を定期的に失っている。」

「英国は、国際的な人材にとって英国をより魅力的な国にできない限り、科学的に優秀な才能の頭脳流出に直面している。ホライズン・ヨーロッパの助成金に応募できるようになることは、そのための不可欠なステップである。」と付け加えた。

 ブレグジット以前、英国はホライズン・ヨーロッパの前身であるホライズン資金調達プログラムの最大の受益国の一つであった。2007年から2013年の間、英国はEUの研究プロジェクトに約43億ポンドを支払い、助成金として70億ポンド受け取っており、それは毎年3億ポンド以上の研究資金に相当する。

 英国のEU離脱のため、その資金源はほとんど枯渇した。欧州委員会のデータによると、2019年に英国の研究者は13,643件の助成金で9億5,930万ユーロ(8億2,880万ポンド)を獲得したが、今年は192件の助成金で2,218万ユーロ(1,900万ポンド)しか獲得していない。

 ヴィリニュスで行われたNATO首脳会議で、Rishi Sunak首相と欧州委員会のUrsula von der Leyan委員長の会談後、7月に最終的な取り決めが発表されると期待が高まっていた。しかし、ホライズン・ヨーロッパへの参加費用をめぐって交渉は停滞しており、英国は、EUと英国の貿易協力協定に定められているように、2019年に授与された資金に基づいてではなく、2023年の申請の成功率に基づいて拠出されるべきだと主張している。

 CRUKのIan Walker 博士はホライズン・ヨーロッパをめぐる長期間の遅れが英国の評判を「傷つけた」と述べた。 「がん研究者は、最も優秀な人材を研究室に連れて来ることが大変困難になっていると感じている。EUの研究者と同じ条件でホライズン・ヨーロッパにアクセスできないことは、英国の研究者は将来の助成金の機会において、中心的な存在ではなく、端に追いやられた存在になってしまうことを意味する。」

「合意が近いという期待が高まっている中、英国とEUが合意に至ることが急務である。時間が最も重要である。」と付け加えた。

The Guardian:

https://www.theguardian.com/society/2023/aug/25/uk-facing-brain-drain-of-cancer-researchers-after-failure-to-join-eu-scheme

 

 (17大学長報酬のスケープゴート化について論じ、その公平な設定方法を探る新報告書

 2023年8月31日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI, www.hepi.ac.uk)は、同研究所のDirector of PartnershipsのLucy Harie 氏の新しい報告書 “Because you’re worth it: are vice-chancellors worth the pay they get?” (「あなたはその価値がある:大学長報酬はその価値に価するのか?」)を発表した。

 その報告書では以下のように論じている:

 

 ●英国の大学は年間22億ポンドにも上る高利益を上げる組織で、地元、国内外で多大な影響力を持っているため、優れたリーダーシップが不可欠である。

 ●大学長の給与は秩序的に機能していないわけではなく、「高等教育機関のシニア職員の報酬に関する規約」(The Higher Education Senior Staff Remuneration Code)や大学議長委員会(Committee of University Chairs)による「ガバナンス規定」などを基に報酬委員会が慎重に決定している。

 ●2022年、英国の大学長で最も収入の多かったトップ3は、71万4000ポンド、54万2000ポンド、53万9000ポンドを受け取っている。この額は英国首相や、NHSの管理職より高いが、同程度の収益を上げる民間企業などの組織のトップよりは少ない。 

 ●英国の大学長は、2022年に最高年収250万9,684ドル(196万6,274ポンド)の米国、2021年に最高年収151万5,000AUドル(79万2,700ポンド)のオーストラリアのいずれにおいても、同等以下となっている。

 

 報告書は、大学に対して7つの提言をしている。

  1.高等教育指導者の複雑な役割に対する認識を高める努力を一層行うことで、

    分断的な論議に対抗する。

  2.大学運営組織の給与報酬に関する能力を強化する。

  3.報酬に関する重要な文書をもっと柔軟にすることで、優秀な候補者を惹きつける。

  4.報酬率を設定する際には、幅広い助言を求める。

  5.業績と報酬が一致させるための革新的で柔軟な戦略を開発する。

  6.トップのポストへの幅広い応募者を奨励する。

  7.高等教育機関のすべての職務における報酬率および雇用条件の見直しを検討する。

 

 報告書の著者であるLucy Haire氏は次のように述べた:

 この10年以上大学と仕事をしてきた中で出会った大学長は皆、素晴らしい方ばかりだった。彼らの影響力のある仕事の幅広さと複雑さ、彼らが直面する課題、そして特に、その役割の常に公の場に直面する性質は、多くの称賛に価する。教育・研究機関を率いる者にとって、給与が唯一の焦点であってはならないが、それはまた、優秀な人材を惹きつける障壁であってはならない。大学長に多額の給与を支払うことは、他の機関の低賃金や粗悪な雇用条件の見直しを妨げるものではない。また、これはゼロサムゲームでもなければ、最低賃金を争うものでもない。この報告書が、時折大学長の報酬について嬉々として嵐を巻き起こす政治家やメディアの声に対して、大学長の報酬がどのように決定されるのかについて、少しでも文脈を提供できることを願っている。

 

高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI, www.hepi.ac.uk):

https://www.hepi.ac.uk/2023/08/31/new-report-discusses-the-scapegoating-of-vice-chancellors-pay-and-probes-the-question-of-how-to-fairly-set-the-rate-of-vice-chancellors-remuneration/