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UK HE Information

2023年10月英国高等教育及び学術情報

2023年12月22日

(1)3人の大学長たちが次期総選挙への期待を明らかに

(2)英国科学大臣がデアズベリーにある 研究所を訪問し、国内外の英国科学のリーダーシップを示す

(3)大学の学費に関する世論調査

(4)英国大学は反ユダヤ主義に対して迅速に行動するべき、と大臣らが発言

(5)学生局(Office for Students: OfS)の質評価訪問に関する第3回報告書を発表

(6)英国は世界の研究開発市場でより大きなシェアを獲得する必要がある、との新たな分析

(7)中東の紛争に関するUUKの声明と資料

(8)英国AI安全サミットを控えてファッション、畜産業、消防関係の中小企業を支援するAIプロジェクトに資金増強

(9)英国の核融合実験施設、40年の歴史に幕

(10)秋の予算編成方針に対する要望の提出

(11)2023年版 イングランドの社会流動性指数

(12)専門家による地域イノベーションハブが、英国全土の地域研究、ビジネス、経済に7500万ポンドで支援

(13)学生向けの宿泊施設市場が「危機的状況」に達し、家賃が平均的な生活費ローンのほぼ全額を占める

(14)恵まれない環境にある学生のうち、記録的な数が高みを目指し、最も厳しい学位が取得できる大学に応募

(15)教育関係のリーダーたちが医療の未来に警鐘を鳴らす

(16)健全で競争力のある新卒労働市場

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(1)3人の大学長たちが次期総選挙への期待を明らかに

2023年10月2日、 高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)の新しい報告書が保守党大会の付随イベントで発表され、3つの英国大学の学長が、次期総選挙で何をマニフェストに掲げるべきかについて見解を表明した。

「Elections2024: Three Vice-Chancellors‘ Manifestos (総選挙2024年:3人の学長の公約)」(HEPI Report 164)は、下記3名の大学長によるもの。

●Sheffield Hallam University: Sir Chris Husbands 教授

●University of Sussex: Sasha Roseneil教授

●University of Birmingham: Adam Tickell 教授

 

いずれの論考も、英国の将来の成功にとって高等教育が重要であることを強調しており、研究、地域とのパートナーシップ、長期的なスキル戦略などを含めた、幅広いテーマを網羅している。

学生の生活費危機や学生寮の不足の深刻化に取り組む必要性や、現在2つの省庁が高等教育を管理している代わりに1つの省庁にする必要性など、著者間での意見が一致している部分もある。しかし、公的資金の増額を求める優先順位は、3人の間で異なっている。

HEPIのパートナーシップ部長であるLucy Haire氏は次のように述べた:

政治家にとって、高等教育に関するマニフェストを書くことは容易なことではない。特に、検討すべき優先事項が数多く競合しており、貴重な公的資金を費やすべき優先事項が非常に多い場合はなおさらである。さらに、近年は多くの法律が制定され、英国内の学生や留学生の増加など、大幅な構造の変化がある複雑な政策分野でもある。

このアイディア集の背後にある考えは、政策立案者に様々な異なる機関を率いる経験豊富な学長グループからの証拠を提供することである。これは、総選挙に向けてさらなる議論や討論につながることを期待している「橋の上からの眺め」である。

University of Birmingham: Adam Tickell 教授は次のように述べた:

我々の大学は、英国の最も重要な国家資産の一つであり、変化する世界に対応するために必要な人材を訓練し、好奇心と創造性を育み、人類が直面する世界の課題に取り組む世界最先端の研究を提供している。

政府は大学の繁栄を支援するためにあらゆる手を尽くさなければならない。我々は英国の慢性的かつ固有の課題に対する解決策の一部であり、英国が直面している無数の問題の克服に貢献できる。大学が特に国際的に活躍できる環境と、連携した教育と研究への持続的な資金提供は、我々が英国を救うことに役立つ。

University of Sussex: Sasha Roseneil教授のコメント:

近年、若者たちの生活はパンデミックや、生活費の高騰によって深刻な打撃を受けており、大学進学希望者もまた、高等教育制度の資金がますます不足するという見通しに直面している。

大学への資金提供に関して政治が麻痺状態であることは、ほぼ専ら、大学は学生からの学費のみで資金を賄うことができるという検証されていない信念のためである。しかし、質の高い大学セクターは、若者や国全体に恩恵をもたらす公共財であり、より多くの公共投資を行うべきである。私のマニフェストでは、この公共投資の拡大と支出が必要なもののいくつかに関して説明している。

Sheffield Hallam University: Sir Chris Husbands 教授のコメント:

英国は、世界で最も注目されている高等教育機関の1つが存在しているにもかかわらず、我々が必要とする高技能社会を推進するために大学は適切に活用されていない。次期政権の最重要課題となるべき根本的な課題がいくつかある。

我々の欠陥のある資金提供システムは、従来のフルタイム学位以外のコースを支援する必要がある。地域政策を倍加する必要がある。また、ばらばらな規制により、教育、研究、イノベーションに対して連携したアプローチを提供できていないという事実にも取り組む必要がある。

本報告書に記載された提言は、これらの問題に対処することを目的としている。これらが実行されれば、21世紀の高技能経済に適したシステムの構築に何らかの形で貢献できる可能性がある。

要点:

●大学は英国の最も重要な国家資産の一つであり、社会全体に利益をもたらす公共財としての役割を担っており、将来の経済の知識集約的で高度な技能を要するニーズに対応するための重要な鍵である。大学は、この国、かつ世界の問題の多くを解決する上で重要な役割を果たす可能性がある。かつてはこのことについてのコンセンサスがあったが、それは「急速にかつ壊滅的に」崩壊してしまった。

●研究は、英国の大学の特別な強みであり、世界を変えるようなイノベーション、生産性の向上、成長に繋がる。

●高等教育は、資金不足によって妨げられており、研究費も、英国出身の学部学生の教育資金も十分に賄われておらず、財政赤字がますます一般的になっている。

●計画されている生涯学習資格(Lifelong learning Entitlement: LLE)は、英国の多様な人口のスキルアップや技能再訓練の必要性にある程度対処できるが、さらなる支援が必要である。

●多くの都市や街は、大学やカレッジの存在によって大きく発展しているが、イングランド北部やミッドランド地方は、ロンドンや南東部にスキルを輸出している。教育のコールドスポットは英国全土に残っている。

●2017年以来、高等教育は2つの異なる政府部門に分割され、教育と研究・イノベーションが個別に監督されている。これが政策立案の成功を妨げている。

●学生の生活費は特に懸念される分野であり、多くの場所でベッドが不足していることや、生活費のサポートがインフレに追いついていないという事実から、住居費が学生の支出の多くを占めている。学生の間には生活費の危機が生じている。

各マニフェストには以下のような様々な提言がある:

●高等教育資金に関して国が直面している選択について、正直に尋問する党派を超えた独立した委員会を設立する。ある学長は、そのような見直しの一環として、市民会議の手法を用いることを推奨している。

●世界的な競争レベルを考慮すると、仮に研究資金の削減したくなる場合でも、研究資金の保護と強化は将来の英国の成功のために不可欠である。

●少数の「価値の低い」学位コースの過剰な拡大や、留学生が国内の学生から入学枠を奪っているという考えが広まるのを避け、英国の高等教育を前向きに世界の舞台で紹介する。

●政府、大学、継続教育機関、関係機関、企業から構成される新たな国家技能評議会(National Skills Council)を通して長期的な技能戦略を策定する。

●柔軟なパートタイム学習を促進するために、学生ローン社(Student Loan Company: SLC)の抜本的な見直しを行い、裕福ではない社会人学生に対する生活費サポートを改善する。新規学習者10万人に対して、2,000ポンドの「高スキルボーナス」を支給する。学生の生活費の返済率の報告を、学費の報告から分離する。

●学生局(Office for Students: OfS)と高等教育独立調整局(Office of the Independent Adjudicator for Higher Education : OIA)を統合し、戦略的な高等教育資金会議(Tertiary Funding Council)を設置することにより、イングランドの高等教育の規制を改革する。

●新型コロナウイルス世代学生特別金(COVID-Generation Student Premium)、メンタルヘルスサポートの助成金(Mental Health and Wellbeing Support Grant)、心体の健康支援資金、強化高圧蒸気減菌気泡コンクリート(reinforced autoclaved aerated concrete: RAAC)の改修を含むインフラや設備の更新のための助成金など、一連の助成金や保険料を提供する。

●公的事業貸付委員会を利用し、学生寮や関連施設が明らかに地元に利益をもたらすよう計画できる地域自治体と提携し、公共学生寮を開発する。

 

高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):

https://www.hepi.ac.uk/2023/10/02/three-university-leaders-reveal-their-hopes-for-the-next-election/

 

(2英国科学大臣がデアズベリーにある 研究所を訪問し、国内外の英国科学のリーダーシップを示す

2023年10月4日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、科学大臣がイングランド北西部にある次世代量子コンピュータセンターの開設イベントを訪問し、英国のCERN加盟からより大きな利益を得るための新しい戦略を開始したことを発表した。

 

●ジュネーブを拠点とする国際的な粒子加速器研究所、欧州原子核研究機構(European Council for Nuclear Research: CERN)と英国の協力戦略がリバプール市内のSTFCのDaresbury Laboratoryで開始される。

●この戦略は英国のCERNへの投資の可能性を最大に活用するという政府のビジョンを示している。

●科学大臣はイングランド北西部にあるPsQuantum社の新しい次世代量子コンピューティングセンターの公開のため訪問している。このセンターは、政府からの資金900万ポンドにより支援された同社としては初めての米国外の施設である。

 

World Wide Webが誕生した国際物理研究所であるCERNへの英国の会員資格からより大きな利益を得るための新しい戦略が、同日に科学大臣の訪問に合わせて次世代の量子コンピューティングセンターを開設するために北西部を訪れる際に発表される。

欧州原子核研究機構(European Laboratory for Particle Physics:英語名)であるCERNは、世界的な科学技術の卓越性において比類のない中心地であり、これまでに建設された研究所の中で最も大規模かつ、最も複雑な実験を行う本拠地となっている。この戦略は、英国はCERNの多くの部分で重要な役割を担っているが、この世界をリードする施設への英国の投資に対する利益を高める可能性があることを認識している。

大臣がPsiQuatum社の先端研究開発(R&D)施設を開設するためSci-Tech Daresburyを訪問することは、まさに英国の企業が主導する世界トップクラスの科学があるからである。900万ポンドの政府資金によって支援されているこの施設は、シリコンバレーの新興企業にとって米国以外で初の量子研究開発施設となる。

DSIT大臣のMichelle Donelan氏のコメント:

PsiQuantum社が、ここ英国で彼らの技術開発の次の重要なステップを踏むことを選択したことは、我々の国家量子戦略によって強化された英国の量子の能力に対する大きな信頼を表している。我々は今後10年間で25億ポンドを投資することで、医療、グリーンテクノロジー、そしてそれ以上の分野での計り知れない進歩を解き放つために、経済全体に量子技術の採用を推進することを決意した。

同日に開設された最先端の施設は、CERNのような国際的なパートナーとの共同研究や、デアズベリーのような技術の集合体で数十年以上にわたり蓄積された深い専門知識とインフラの証である。CERNとの協力関係を次のレベルに引き上げることで、今回のような機会がさらに増え、英国のイノベーターが国際的な共同研究のパートナーとして選ばれるようになるだろう。

リバプール市地区にあるSci-Tech DaresburyにおけるPsiQuantum社の事業は 「耐障害性(fault tolerant)」量子コンピューターの開発に不可欠な最先端の超低温システムの開発をリードするものである。耐障害性(fault tolerant)マシンは、商業的に有用であり、気候変動から健康問題まで、大きな問題に取り組むことを可能にする最初の量子コンピューティング・システムとなる。

PsiQuantum社の共同創設者で技術責任者であるMark Thompson教授のコメント:

「Daresbury Laboratoryの既存の超低温インフラと科学的な人材を利用できることが、最初の世界拡大の計画として英国を選んだ主な理由である。

また、実用規模の量子コンピューティングの到来を見据えて、ハ―トリー・センターと協力して耐障害性(fault tolerant)アプリケーションを開発できることを嬉しく思う。」

科学技術施設会議(Science and Technology Facilities Council: STFC)の議長とUKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)のインフラ推進役も務めるMark Thomson教授のコメント:

「CERNは、大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider)などこれまで考えられた最も野心的な科学プロジェクトのいくつかを通じて、宇宙の本質に関する基本的な疑問に取り組んでいる。

基礎知識の追求は、絶えず技術の限界を押し広げ、しばしば現実世界の問題に対する革新的な解決策にとして驚くような応用を見出すことがある。CERNにおける英国の強力な役割は、最先端技術に取り組み、世界の舞台で科学大国になるという政府の野望を達成するためには不可欠な要素である。

英国はCERNの開設以来、重要な役目を果たし続けている。この戦略構想の発表で、我々は、国際的なパートナーと親密に協力しながら、CERNにおける将来の科学技術の進歩を促進するという野望を再確認した。そうすることで、英国産業の参加の強化をすることでCERNの最先端プロジェクトや英国の技術者や科学者たちが最前線の科学や技術のスキルを開発する機会をこれまで以上に増やすことで、英国にとってのCERN加盟のメリットを高めていく。」

英国のCERNとの関係戦略はDSITとSTFCによるメンバーシップの更新時に新たな見直しでその重要性に着目した結果である。これは今後10年間以上にわたるCERNへの投資の利益を経済的およびより広範的に最大化するための英国の野心を示している。その戦略は、卓越した研究、世界水準のスキル、国際的なリーダーシップ、商業的インパクトとイノベーション、そして国民の関与という5つの柱から成り立っている。これは英国だけでなく、CERNという組織、そのコミュニティ、その他の加盟国にとっても有益である。

本戦略の策定は、CERNの英国のコミュニティ全体の利害関係者の視点を反映させた協議プロセスであった。この戦略は、CERNへの投資の潜在能力を最大限に活用し、パートナーと協力して科学的発見をリードし、次世代を鼓舞することで、CERNの継続的成功の中心であり続けるという政府のビジョンを示している。

量子技術は英国の将来の経済成長の重要な役割を果たす5つの重要な技術の1つであり、首相の5つの優先事項の1つでもある。10年間で25億ポンドという政府のコミットメントに裏打ちされた国家量子戦略は、これらの技術によってもたらされる利益を実現する準備が整った経済を創出するために、政府がどのような支援を行うかを定めている。量子コンピュータは現在や将来において、どのようなスーパーコンピュータでも解決できないような問題を、以下のような業界全体で解決することが期待されている。

●金融サービス

●健康管理

●大規模な脱炭素化を推進する気候変動技術

英国の国家量子技術プログラムと、より広範な科学プログラムは、英国における活発なエコシステムの構築に貢献しており、PsiQuantum社はそのエコシステムをさらに強化し、耐障害性(fault tolerant)マシンへの移行を加速する一助になる。これには、国家量子コンピューティングセンター(National Quantum Computing Centre: NQCC)との提携や、デアズベリーの施設で保有される深い専門知識も含まれる。

量子のような技術における革新的な飛躍は、英国が世界をリードする基礎研究と、CERNのような国際研究組織との提携によってのみ可能となる。

STFCの一部であるDaresbury Laboratoryは、原子核物理学からスーパーコンピューティングに至るまで、多様な分野で世界をリードする科学的卓越性で世界的にも認められている。1962年の開設以来、3つのノーベル賞受賞に貢献するなど、画期的な科学の最先端を歩んできた。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/uk-science-leadership-at-home-and-abroad-on-show-as-science-and-tech-secretary-visits-daresbury-laboratory

 

(3大学の学費に関する世論調査

2023年10月8日、Public First (政策、調査、戦略のコンサルタント会社)は、大学の学費に対する国民の見解についての画期的な報告書を発表した。

この報告書は、シンクタンクのProgressive Britainと、University of York、University of Manchester、University of Warwick、University of Greenwich の協力のもと、イングランドの成人8000人を対象に世論調査を実施し、その後、全国で8つのフォーカス・グループが追跡調査を行ったものである。その目的は、労働党が学費廃止に関する立場を変えたことが正しい判断であったか、そして次に何が起こるかを解明することである。

報告書の概要(全文は以下<参考>から確認可能):

1.労働党は大学の学費に関して政治的に正しい決定を下した:我々の調査では、労働党が学費を廃止するという公約から離れるという選挙上の正しい決断をしたことが分かった。次の総選挙に向かう労働党にとって、この決定はコストよりもメリットのほうが大きい。学費廃止の公約を撤回したStarmer氏の判断は正しかったと考える回答者は、43%対30%であった。浮動有権者は、Starmer氏が正しかったと思う傾向がさらに高く、48%が公約の取り下げは正しかったとし、28%は間違っていたと答えた。

2.学費は人気のある政策ではなく、学費廃止への指示は高い:人々は、高等教育が重要であると信じている。親は子供を大学に進学させたいと考えているが、その費用は高額すぎると考えている。彼らは理想的には、学費が削減されるか、廃止されることを望んでいる。これはどの層にも広く当てはまる。

3.しかし人々は、特に現在の財政危機の時代には、政府支出にはもっと差し迫った優先事項があるとも考えている。学費の廃止を支持するかどうかという、限定的で直接的な質問をしたときには幅広い支持があったが、質問の形式を変えたり、政府が追及すべき選択肢のリストを与えたり、学費の削減が納税者にどれだけの負担を強いることになるかを知らされたりすると、支持が減少した。

4.学費廃止を求めるニーズはある一方で、実際には一般的な税金でその変更分を助成することに人々は強く反対している。全体的なコストを知らされたとき、学費廃止は高額すぎると見なされ、有権者の間でそれに対する実質的な意欲はほとんどない。学費廃止のために法人税を引き上げるという選択肢を除けば、他のすべての選択肢は実質マイナスの支持(反対する人のほうが支持する人より多い)となっている。特に有権者が授業料引き下げを敬遠したのは、学費廃止の財源を賄うために、個人税と付加価値税が値上がりするという見通しだった。有権者にとって、必要な資金の規模、そしてその支払い方法を聞くことは重要な懸念事項であった。

5.人々は、短期的には大学が学生にとってより手頃な価格で提供されることを望んでいる。生活費補助金の復活は、学費廃止の代替案として人気が高い。生活費の危機を背景に、多くの人が大学での経験にかかる費用は(少なくとも原則的には)法外なものだと考えている。有権者はまた、低所得世帯の人々や、社会的・経済的に必要とされるコース(教育や看護など)を学ぶ人々など、特定の状況における学費の引き下げにも賛成している。

6.学費の削減は支持されている(ただし、それを払うことは支持されていない):全般的に人々は、学費は高すぎ、大学を卒業する際に多額の負債を背負うことになると考えている。彼らは学費の引き下げを望んでおり、6,500ポンドから7,000ポンドにすることが最も人気が高い。特に人々は、(ほとんどの人が嫌がる)多額の借金を抱えて大学を去る若者の窮状には同情的だが、その代替案が何かはわからない。回答者は、インフレに伴って学費が上がるべきだという考えには否定的だが、学生の負担増を抑えるという枠組みで、政府が追加支援を提供するという抽象的な考えは支持している。

7.雇用主が高等教育資金制度に拠出するということについては、比較的高い支持を得ている。企業が労働者を養成する大学に支払う納付金として説明された場合、59%が支持し、政府からの追加的な資金提供よりも人気の高い選択肢となった。しかし、卒業生を雇用するために雇用主が支払う税金を増やすとした場合、支持率は39%に低下した。これは、いかなる形態であっても、増税に対する支持が広く欠けているという我々の調査結果と一致している。

8.学費廃止の公約から離れることは、労働党にとってリスクより見返りの方が大きい。学費を廃止の是非は、既存の労働党の有権者にはほとんど影響を与えないが、未決定の有権者や、浮動票の有権者にとっては重要な政策選択である。Keir Starmers氏が学費廃止を見送ったことで、労働党の議席を獲得する可能性が大幅に高まる議席は、Buckingham & Bletchley、Isle of Wightの両方の議席、そしてMansfieldを含む合計83議席あると我々は推定している。

9.学費に関する公約の撤回は選挙ではよい影響となるかもしれないが、それを声高に叫ぶべきではない。今回の結果から、労働党支持者の間では、公約を取り下げたことの影響は比較的小さく、むしろ保守党から乗り換えた人々の間での支持率を上げていることを示唆している。労働党が学費廃止を撤回することは、選挙上でプラスに働く可能性が高いが、そのほかの政策において政策的立場を転換するという行為を軽視すべきではない。国民は、経済的環境が意思決定に与える影響や、資金がその代わりに何に費やされるのかなど、政策的立場の変更をめぐる背景についてより多くの情報を必要としている。

10.生活費補助金の復活は、労働党の得票と議席の両方を獲得する可能性が最も高い選択肢である。また、回答者が、納税者がその公約に資金を提供することに満足していると思われる選択肢でもあった。有権者に直接、追加費用は増税によって賄うとして生活費補助金の再導入を支持するかどうか質問したところ、55%が支持するとし、反対としたのはたったの14%だった。生活費補助金の再導入を公約に掲げた政党に投票する可能性が高くなると答えた人は50%、低くなると回答したのはわずか8%であった。

11.卒業生税(a graduate tax)の導入は、特に若い有権者の中で学費の完全廃止よりも人気があった。学生の学費返済の改革は高学歴の進歩主義者の支持を高めるには役立つだろう。このことについて有権者の43%は支持、22%は反対であった。特に若い有権者がこれを最も熱心に支持しており、18-24歳では53%対18%、25歳-34歳は50%対22%であった。回答者全体の36%が、卒業生税(a graduate tax)の導入を計画している党に投票する可能性が高くなると答えたのに対し、低くなるとしたのは19%だった。

12.継続教育への投資拡大には、潜在的な大規模な支持が存在する。高等教育の原則や実践に対する広い支持が存在する一方、継続教育と技能実習制度(Apprenticeship)に対する国民の支持ははるかに多く、これは政治家たちが評価しているよりもはるかに大きい。すべての政党の政治家は、継続教育や技能実習制度、訓練に関してもっと語るべきである。特にこれは浮動票の有権者や、地元に高等教育機関がない「赤い壁※」議席の有権者に当てはまる。

※赤い壁とは:英国政治において、歴史的に労働党を支持してきたミッドランド地方とイングランド北部の英国議会選挙区を表すために使用される用語。

 

Public First:

https://www.publicfirst.co.uk/public-attitudes-to-tuition-fees.html

<参考:報告書「Public Attitudes to Tuition Fees (大学の学費に関する世論調査)」>

https://public-first.shorthandstories.com/public-attitudes-to-tuition-fees/index.html

 

関連記事

Russell Group :Public Attitudes to Tuition Fees (大学の学費に関する世論調査)

ラッセルグループの最高責任者(CEO)であるTim Bradshaw氏は、Public First (政策、調査、戦略のコンサルタント会社)が実施した授業料と学生生活維持支援に関する世論調査について、次のように述べた:

「我々は、生活費の危機が学生に大きなプレッシャーをかけていることを承知しているため、最も恵まれない環境の学生たちを支援するための生活費補助金の再導入が国民に強く支持されていることを嬉しく思う。また、将来の政府には、急激なインフレ上昇から学生を守るために、生活融資制度の欠陥に取り組むことを期待している。

この世論調査はまた、我々の世界をリードする大学が英国の経済と社会に多大な貢献をしていることに対する国民の理解と支持を受け入れていることを浮き彫りにしている。しかし、質の高い教育やインパクトのある研究を提供するためのコストは、学費や助成金だけでは賄えないため、こうした利益をもたらすことはますます困難になっている。大学は可能な限り効率的に運営するように努力しているが、この状況が変わらなければ、学生に対する質や選択肢への影響を緩和する能力は限られている。

だからこそ、我々は、インフレの影響を相殺し、学生や納税者にとって公平で手ごろな価格でイノベーションと経済成長を支えるスキルのパイプラインを守ることができるような、より持続可能な高等教育財政のアプローチを求めているのだ。」

 

Russell Group:

https://russellgroup.ac.uk/news/public-attitudes-to-tuition-fees/

 

(4英国大学は反ユダヤ主義に対して迅速に行動するべき、と大臣らが発言

2023年10月12日、BBC Newsは、教育大臣らがユダヤ人学生の安全と福祉に関して、イングランドの大学長宛てに書簡を送付したことを報じた。

Gillian Keegan 氏とRobert Halfon 氏は、大学に対し、学生の安全と福祉に対する「いかなる脅威に対しても、迅速かつ断固とした行動を取る。」よう求めた。

これは、一部の学生団体が、イスラエルへの攻撃を受けて、ハマスへの支持を扇動するようなメッセージを送ったという報告を受けてのものである。

10月7日以降、イスラエルとガザで2,700人以上が殺害された。

この書簡によると、閣僚たちは「非合法なテロリスト組織」であるハマスへの支持を「暗に、或いは明示的に示す」メッセージの証拠を確認したと述べた。

「このような声明の影響は、すでにユダヤ人学生にも影響が及んでおり、彼らの多くは自分がユダヤ人であることを隠す必要があると感じるようになっている。」と書簡にはある。

ユダヤ学生組合(The Union of Jewish Students: UJS)はこの措置を歓迎しており、キャンパス内で自身がユダヤ教徒であることを公に表現することに抵抗を感じる学生からの助けを求められていると述べた。

「我々はユダヤ人学生が嫌がらせ、脅迫、虐待を受けているという報告を受けている。」とUJSは述べ、テロを支持する人々に対して「ゼロ・トレランス・ポリシー(zero-tolerance policy)※」を取るよう大学に求めていると述べた。

SOAS University of London のディレクターであるAdam Habib氏はBBCに対し、同キャンパスにはユダヤ人とパレスチナ人の職員や学生がおり、このような紛争は「実質的な議論の対象」になっている、と述べた。

同氏は、ユダヤ人学生に対する懸念は「まったく正当なもの」であるとしながらも、大学が懸念を抱いた場合にはすでに行動を起こしていることから、この書簡は単なる「象徴的」で「役に立たない」ものに過ぎないと考えていると述べた。パレスチナの旗を振ったり、特定のスローガンを叫んだりした学生を取り締まるよう要請されることは、「合理的な要請ではない」と彼は言い、大学はすでに学生の安全を確保し、人々が脅威を感じたり、法律を破ったりした場合には行動を起こしていると付け加えた。

大学は 「安全な空間 」であり、批判的な討論は許されるべきだ、と彼は付け加えた。

※「ゼロ・トレランス・ポリシー(zero-tolerance policy)」:不寛容を是とし細部まで罰則を定めそれに違反した場合は厳密に処分を行う方式。

 

BBC News:

https://www.bbc.co.uk/news/education-67089209

 

(5)学生局(Office for Students: OfS)の質評価訪問に関する第3回報告書を発表

2023年10月12日、学生局(Office for Students: OfS)は、大学のビジネス・マネージメントコースの質に焦点を当てた第3回目の評価訪問の結果を発表した。

この報告書は、2022/23学事年度中にOfSのために評価を行った独立した学術専門家の助言が記載されている。評価には大学の現地視察も含まれ、各チームは職員や学生から得たものを含む様々な証拠を検討した。OfSは今後、報告書の内容を検討する予定。

University of East Londonでは、評価チームは懸念事項は見つからなかったとした。

同日に発表された報告書には、同大学の調査結果が記載されている。

この報告書は、先月発表されたUniversity of Bolton とLondon South Bank University の2つの評価報告書に続くものである。OfSは、今後数週間以内にさらなる訪問調査の結果を発表する予定である。

 

学生局(Office for Students: OfS):

https://www.officeforstudents.org.uk/news-blog-and-events/press-and-media/third-report-published-of-the-ofs-s-quality-assessment-visits/

 

関連記事:2023年10月12日Research Professional Newsより

UEL leader slams OfS quality-assessment processes(UELのリーダーがOfSの品質評価プロセスを非難)

2023年10月12日にResearch Professional Newsが報じたところによると、Amanda Broderick氏は、評価において懸念事項が見つからず、イングランドの規制局は「再考」する必要があると発言した。

University of East London(UEL)の学長であるAmanda Broderick氏は、同大学のビジネスコースの提供に関する評価で、懸念事項が発見されなかったことを受け、OfSの検査プロセスを批判した。

Amanda Broderick氏によると、同大学はOfSはどのような懸念が調査を促したのか、また評価に用いられた正確な基準やデータにつして、いかなる時点でも知らされていなかったと述べた。

Broderick氏は、シンクタンクの高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)のウェブサイトに、「質評価に対する規制局のアプローチを再考すること、そしてこの重要なプロセスのどこに改善の余地があるのか、また国内外の高等教育の評価においてこのプロセスが果たす役割を熟考することを求める声に、私の声を加えたい。」と書いている。

懸念はない

Broderick氏のコメントは、10月12日のビジネス・マネジメントコースに対するOfSからの評価(スタッフや学生からのさまざまな証拠を考慮した現場訪問を含む)が、「懸念すべき事項なし」という結果を受けてのものである。

「評価チームは条項B1: 学術経験、B2:リソース・サポートと学生のエンゲージメント、B4:評価と賞に関する情報のレビューから、いかなる懸念も特定しなかった。」と報告書は結論づけた。

ニューハムに拠点を置くUELは、OfSの質評価の結果が公表された3つ目の機関である。9月、University of Boltonではビジネス・マネージメントコースの学生に対するサポートについて4つの懸念事項を発見したが、London South Bank Universityでは懸念事項は発見されなかった。

 

意図しないバイアス

Broderick氏は、これまでのOfSの質評価は 「幅広い参加背景を持つ学生の割合が高く、社会的流動性や包括性が組織の明確な使命となっている」機関で行われてきたと指摘した。

「これは明確な差別の結果であるとは言い難いが、現在の質の定義、解釈、測定が、特定の学生、地域、教育機関に対しする意図せざる暗黙のバイアスを持っている可能性があるかどうかを検討する価値があると考えている。」とBroderick氏は述べた。

「いずれにせよ、社会的な多様性を尊重する高等教育機関は質が低いというあらゆる示唆に異議を唱え、我々の教育機関に通う学生、彼らが直面する可能性のある課題、そして成功した成果の完全な価値について、誤った思い込みを積極的に正すことが重要である。」

Research Professional NewsはOfSに対してコメントを求めた。

この夏、OfSは約30件の調査報告を予定していた。現在進行中の調査のひとつは、University of Sussexの言論の自由と学問の自由に関するもので、調査は2年前から行われている。

規制局は更なる品質評価報告書が「今後数週間のうちに」に発表される、と語った。

 

Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-universities-2023-10-uel-leader-slams-ofs-quality-assessment-processes/

 

(6英国は世界の研究開発市場でより大きなシェアを獲得する必要がある、との新たな分析

2023年10月12日 、国立大学産業センター (National Centre for Universities and Business: NCUB)は、英国がどのように研究開発(R&D)への国際投資を引き付けているかについての新しい分析を発表した。

この分析では、研究開発への海外投資誘致に関する英国各地域の実績を調べ、より多くの海外投資を獲得するための行動を提案している。

新しい分析では、次のことが明らかになった:

●英国は、その規模に不釣り合いなほど、研究集約型の海外投資を非常に多くの割合で誘致しているが、この種の投資をさらに誘致する可能性は十分に活用されていない。

●2021年、英国の研究開発支出の大部分は企業によるものだった(469億ポンド)。このうち、164億ポンドは海外資本の企業によるもので、英国の総支出の3分の1以上に相当する。

●米国、日本、中国が、英国の研究開発に対する海外投資の主な供給源市場である。

NCUBの最高責任者であるJoe Marshall博士は、次のように述べている:

「世界中の国々が研究開発に投資しており、世界の企業に投資を促す前向きなシグナルを出している。英国では、海外所有企業による研究開発への支出が多額である。国内企業による投資の増加と並行してこの投資を保護し成長させるために、英国はその提案が調整されて、一貫性があり、効果的に伝達されるようにする必要がある。我々は、研究開発投資の世界市場において、競争相手として行動しなければならない。その恩恵が英国全土にいきわたるよう努力する。」

Marshall博士は 次のように締めくくった:

「英国は多額の国際投資を引き寄せているが、今はそれに満足しているときではない。もし政府が研究とイノベーションの拡大を通じて英国経済を成長させることに真剣に取り組むのであれば、海外からの英国への民間研究開発投資のレベルを抜本的に変化させる必要がある。しかし様々な戦略、見直し、インセンティブ、政策にもかかわらず、民間研究開発の投資はおおよそ横ばいである。海外研究開発の投資の活力となるものを理解し、それにあった政策やコミュニケーションを打ちだすことは将来の繁栄と進歩に不可欠である。

 

国立大学産業センター (National Centre for Universities and Business: NCUB):

https://www.ncub.co.uk/insight/uk-must-attract-larger-share-of-the-global-rd-market-according-to-new-analysis-published-today/

<参考:分析結果>Attracting international investment in Research & Development (R&D): 

https://www.ncub.co.uk/wp-content/uploads/2021/07/Attracting-international-investment-in-Research-Development.pdf

 

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2023年10月12日Research Professional News: To win back foreign investors, the UK must be honest with itself (海外投資家を取り戻すために、英国は自らに正直になるべきである)

 

Research Professional Newsによると、University College London の科学・研究政策の教授で、NCUBの戦略アドバイザーであるGraeme Reid氏とJoseph Taylor氏は、新たなデータは多国籍企業の研究開発に関する指針を示していると語った。

英国の研究開発投資の4分の1は他国に本社を置く企業からくるものである。この海外直接投資(Foreign direct Investor: FDI)は、毎年160億ポンド以上の価値があり、これは英国の研究・イノベーション分野と政府部門の研究開発予算を合わせた額とほぼ同じである。

歴史的に、英国はFDI誘致において良い実績を収めてきた。しかし、コンサルタント会社EYによる最近の分析によると、2021年から2022年にかけて、英国におけるFDIプロジェクトの数が6.4%減少する一方、ヨーロッパ大陸におけるFDIプロジェクトの合計は1.4%増加していることが示されている。英国政府の独自の分析では、2021年から2022年にかけてライフサイエンス分野への対内投資が減少していることが示されている。

2020年、NCUBが招集したタスクフォースは、世界的に移動する研究開発投資を誘致し維持するために、より戦略的なアプローチを行うよう政府に求めた。そのような戦略は、政府、大学、企業がグローバル企業の目から見た英国の様々な地域の長所と短所を理解することに役立つ質の高いエビデンスに基づいている必要がある。

今週NCUBは、OCO Global コンサルタントから委託された分析でそのエビデンスを強化し、研究開発への国際投資を誘致することに役立つものが英国の国や地域によってどのように異なるかを調査している。10月12日に発表されたこの報告書では、FDI誘致における地域の実績と、これが国際的にどのように比較されているか、また、2番目の分析では、グローバル企業が研究開発予算をどの様に決定しているかを調査する。

改善の余地

データは、現在の実績と研究開発へのFDI誘致の可能性の両方が英国全体で大きく異なることを示している。おおよそ、これらは地域の経済実績を反映しているが、ロンドンやイングランド南東部などの業績が高い地域だけでなく、遅れている国や地域にも改善の余地がある。

我々の分析と議論は、研究開発投資家にとって英国の魅力は、主に研究とイノベーションシステムの健全性に依存していることを示唆している。最高品質の研究への公的投資、支援する規制、人材とスキルの入手可能性はすべてが英国の魅力を決定する。

インフラもまた重要である。分析では、輸送費、ギガバイト/秒のブロードバンドの安定供給、土地の平均価格、国立研究開発施設の存在などの指標を検討すると、国全体で競争力を高める余地があることが判明した。例えば、ロンドン、イングランド南東部、東部は研究開発へのFDIの誘致において全体的に好成績を収めているにもかかわらず、土地の高さが投資を阻んでいる。

官民の研究開発支出は、好循環にも悪循環にもなり得る循環を形成する。世界的に高い評価を得ている大規模で実績の高い大学は、数十億ポンド規模の世界規模の研究開発投資をめぐる競争において英国の最大の強みの一つであり、多くの研究集約型企業は英国で長年にわたる研究活動を行い、英国および英国の大学に深く根付いた共同研究を行っている。

同時に、国内外の企業による投資の誘致は、研究とイノベーションの中心地としての英国の実績と評判にとって極めて重要である。

接点

グローバルな企業の意思決定者は、地域政府およびや中央政府内に、アクセス可能で十分な情報に基づいた連絡窓口を必要としている。現在、国や地域レベルでいくつかの政府機関がFDIの誘致の働きかけを行っているが、それらの間の調整は必ずしも明確でなく、彼らにとっては誰に電話すればよいかわからず、改善する必要がある。

投資局(Office for Investment )は、英国への大規模投資を誘致するために2020年に設立された。保守党議員と元大臣であるRichard Harrington 氏による政府委託により、政府がFDIを誘致するためにどのように最善の努力ができるかについての検討が間もなく行われることが予定されている。最近発表されたR&Iクラスターへの4,900万ポンドの資金提供と6,000万ポンドの地域イノベーション基金は、英国全体の能力開発の支援となるはずである。

英国は、この投資がもたらす質の高い雇用やその他の経済的利益のため、同様にこの投資のシェアを増やしたいと考えている他の国々と競争している。そして、グローバル企業の英国部門の研究開発リーダーは、有限な資源の取り分をめぐって、しばしば世界中の競合他社と競争している。

彼らは、英国への投資環境に関する入手可能な証拠を最大限に活用しながら、厳しい期限に追われながら仕事をしているのかもしれない。確固とした、容易に入手可能なデータは、彼らの案件を前進されることに役立ち、グローバル企業の意思決定者にとって、一般的な宣伝材料よりも大きな影響力をもつ。

政府のあらゆるレベル、あらゆる地域の政策立案者は、自分たちが競争の中にいることを理解し、競争相手のように振る舞う必要がある。

 

Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-views-of-the-uk-2023-10-to-win-back-foreign-investors-the-uk-must-be-honest-with-itself/

 

(7中東の紛争に関するUUKの声明と資料

2023年10月10日及び18日、 英国大学協会(Universities UK:UUK)は、中東で激化する闘争に関して次のとおり声明を発表した。

2023年10月18日発表の声明

英国全土のキャンパス・コミュニティは、ハマスによるテロ攻撃とイスラエルの軍事的対応、そして民間人の命の悲劇的な損失から深い影響を受けるだろう。

英国大学協会、また加盟大学としての最優先事項は、すべての学生・職員にとってキャンパスが安全であり続けることだと考えている。私たちは、ヘイトクライム、反ユダヤ主義、イスラムフォビア、不寛容の防止に全力を尽くし、また、これらに関連する事件が発生した場合、大学が適切に対応できるよう支援する。言論の自由に対する大学の明確なコミットメントに沿い、大学は、学生や職員が、法の範囲内で、尊重と寛容をもって、この危機やそれが提起する最も困難な問題について討論し、議論することを可能にし、支援することが重要である。

英国大学協会は、キャンパスにおける言論の自由、反ユダヤ主義、イスラムフォビア、その他の形態のハラスメントへの取り組みに関する指針を作成し、先週この指針を再周知した。われわれは、ハマスが英国で禁止されているテロ組織であり、テロ法(2000年)に定められているように、道徳的支持や支持する意見・信念の表明を含む支持の意思表示は犯罪行為であることを明確にしてきた。

我々は、この極めて困難な時期にキャンパスとの関係を管理するためのアプローチを共有するために、引き続き大学をまとめていく。

2023年10月10日発表の声明

ハマスがテロ組織であることを示すことは、テロリズム法(2000年)で規定されている通り、道徳的な支持や支持する意見や信念を表明することを含め、犯罪行為である。ハマスへの支援が発覚した学生や職員は、英国の法律に違反することになり、大学はこれを最も深刻に取り扱う。

 

イスラエルでの攻撃に起因する学生や職員に対する差別や脅迫は絶対に容認できず、反ユダヤ主義、イスラムフォビア、またはあらゆる種類のハラスメントや差別に直面している学生には、大学に報告し、支援を求めるよう強く求める。

 

英国大学協会(Universities UK:UUK):https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/uuk-response-conflict-middle-east

 

(8英国AI安全サミットを控えてファッション、畜産業、消防関係の中小企業を支援するAIプロジェクトに資金増強

2023年10月14日 科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、英国開催のAI安全サミットを控え、ファッション、農業、消防などの多様な分野でのAIプロジェクトへのさらなる3700万ポンドの支援を発表した。

●あらゆる規模の研究チームや企業が、生産性を向上させるAIツールを実用化するための3200万ポンドへの入札を奨励された

●さらに500万ポンドを、中小企業100社の先駆的なAIアイディアの実現可能性に関する調査に投入

●英国開催のAI安全サミットの3週間弱前に最新の資金増強の発表

 

科学大臣であるMichelle Donelan氏は、来月開催のAI安全サミットに向けてAIがいかに良い力となりうるかを強調し、ファッション、農業、消防などの多様な分野における人工知能プロジェクトへのさらなる3700万ポンドの支援を発表した。

運輸から農業、建設、クリエイティブ産業など、高成長産業のあらゆる規模の研究チームや企業は、現在公募中の3200万ポンドの入札に応募することを奨励された。この資金提供は、安全で責任のある方法でAIの取り組みを成長させ、より広範なセクターを活性化し、労働力をサポートし、経済成長という首相の優先事項に向けて英国を支援する。

さらに500万ポンドが、英国全土の中小企業が関与する100のプロジェクトの実現可能性調査に対して授与された。これは、生産性と成長を高めるためにAIの良い影響を把握しようとする政府の後押しの一環であり、画期的な技術に発展する可能性のあるアイディアの種まきを支援している。この資金提供は、EVの充電ポイントへの電力供給の管理や、鉄道の遅延の軽減から、AIを活用した建設業での廃棄物の削減や乳牛の健康管理に至るまで、経済全体で利用されるAIツールを支援する。

科学大臣は、織物や繊維のリサイクルにAIを活用するAI4Fibresプロジェクトの支援を受けているキングストン・アポン・テムズの持続可能なファッションブランドであるKapdaa社を訪問し、安全で責任あるAIソリューションを推進するための最新の支援を発表した。

Kapdaa社は、同日に発表された500万ポンドの資金提供を獲得したうちの1社で、ファッション業界の環境フットプリントを削減し、英国で家庭廃棄物として廃棄される推定92万1,000トンの使用済み繊維を削減するために、Alを利用した布地のリサイクルを開発している。これはロンドンバスの70,000台以上に相当する。

この技術は、繊維廃棄物を素材ごとに効果的に分類、処理し、ジッパーやボタンを取り除いてリサイクルを促進し、埋立地を削減することができる。現在の手作業による方法では、正確なラベリングや手持ち式の機器で衣類を一つ一つスキャンすることに頼っているため、処理に多大な労力と費用が掛かる可能性がある。

資金提供を受けた他のプロジェクトには、より効率的な作業スケジュール、資源調達、予算編成を可能にし、結果的により早く安価な住宅建設を推進するTradeWork社のAI支援プロジェクト管理システムや、廃棄を防ぐため、衛星画像を通じてワイン用のブドウの植物の病気の検出と予測に取り組んでいるDeepPlanet社なども含まれている。

またエクセターを拠点とするDigLab社は、農家による二酸化炭素回収の特定と検証を支援し、Better Environment  and Transport社 は英国の消防・救助サービスが車両をネットゼロ化することを推進し、燃料費の節約と汚染を削減するためのAIソリューションを模索している。

 

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/ai-projects-supporting-small-businesses-in-fashion-farming-and-fire-fighting-to-get-funding-boost-ahead-of-uk-ai-safety-summit

(9英国の核融合実験施設、40年の歴史に幕

2023年10月14日BBC Newsは、世界で最も成功した核融合実験の終了を伝えた。

「素晴らしいと感じた。ひとつは設計に取り組むこと、もうひとつはそれを運用することだった。」Barry Green氏は、1983年6月にオックスフォードのJET核融合研究所が最初の実験を行ったときのことをそう語った。

その後40年間、欧州のプロジェクトは、核融合と限りなくクリーンなエネルギーの実現を追求してきた。

しかし、世界で最も成功した核融合実験は土曜日に終了する。

核融合は、1920年代に 「発見」され、その後数年間の研究は核兵器のための核融合開発に焦点が当てられていた。

1958年、米国の核融合に関する戦争研究が機密指定から解除されたことで、ロシア、英国、欧州、日本、米国はエネルギー供給のための核融合反応の開発競争に突入した。

核融合は、温室ガスを一切排出することなく大量のエネルギーを放出するため、エネルギー生産の聖杯と考えられている。

これは太陽やほかの恒星に電力を供給するプロセスであり、軽い原子のペアを取り出し、それらを強制的に結合させることで機能する。これは、重い原子が分裂する核分裂とは逆である。

英国と欧州は協力することを決定し、欧州トーラス共同研究施設(Joint European Torus: JET)が誕生した。科学者たちは、大陸中からオックスフォードシャーのカルハムに集まった。Green 氏もその一人だった。

ドイツでプラズマ物理学を研究していたオーストラリア人の彼は、機械の設計と操作に携わるエンジニアとなった。選ばれたモデルはトカマク型で、磁場を利用して、プラズマ(高熱の電離ガス)を容器内に閉じ込めるもの。このプラズマによって軽元素が融合し、エネルギーが得られる。

また、これは水素の一種だけでなく、重水素と三重水素の混合物で動作するように設計されており、これは重要な決定であることが証明された。これは、核融合炉において最も効率的な反応であることが確認されている。

この混合燃料を用いた世界初の実験は、1991年にJETで行われた。その後の実験では、より高いエネルギー収率を達成し、核融合実験から生み出された最大のエネルギー(5秒間のパルスで59メガジュール(MJ))の世界記録を保持している。JETの開発上級マネージャーであるFernanda Rimini氏によると、この記録にもかかわらず、JETの施設は多くの困難と遅延に直面し、2000年代には内部構造の交換のために、何年も実験が中断されたという。

そして、家庭用の電力を供給するのに十分なエネルギーを生産するという希望はまだ遠い。59MJはやかん約60個分の水を沸かすのに十分な量に過ぎない。

Joelle Mailloux氏は、この土曜日が最後となる第3ラウンドの重水素・三重水素実験を監督するJET科学プログラムのリーダーである。

彼女によると、彼らが焦点を当てている主な課題は、プラズマをより安定させること、電力負荷を分散すること、そしてその条件に耐えられるように原子炉内の材料の改良することであるという。

実験が終了しても、科学者たちはJETから学ぶことがまだ多くあるだろう。

「廃炉措置では、(原子炉の)材料に何が起こったか、どのように変化したかを分析されるだろう。これは、他の核融合施設の維持管理を改善するのに役立つだろう。」とRimini氏は語った。

JET研究から恩恵を受けている施設の一つは、南フランスにある新しいITERの原子炉だろう。これは世界最大の核融合プロジェクトで、EU、ロシア、米国、中国などを含む多くの国がに参加するコンソーシアムだが、数週間前、英国政府は今後の参加を取りやめることを認めた。

「英国の核融合セクターの意思に沿って、英国はEUのユーラトム計画に参加する代わりに、国内の核融合エネルギー戦略を追求することを決定した。」と政府は述べた。

英国政府は、現在から2027年にかけて英国の代替核融合プログラムに6億5000万ポンドを支出することを約束している。これはノッティンガムシャーにあるSTEPと呼ばれる新しいプロトタイプ核融合エネルギープラントが含まれる。

英国原子力庁(UK Atomic Energy Authority: UKAEA)のSTEPプログラムディレクター、Paul Methven氏はBBCに対し、「このような取り組みでは、非常に野心的であると同時に現実的である必要がある。我々は2040年代初頭の初稼働に向けて、かなり懸命に取り組んでいる。」と述べた。

  

BBC News:

https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-67101176

  

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2023年10月17日Department for Energy Security and Net Zero

Thousands of new training places created as part of £650 million fusion package

(6億5000万ポンドの核融合支援策の一環として数千の新しいトレーニングの場を提供)

国際原子力機関(International Atomic Energy Agency: IAEA)の核融合エネルギー会議で、原子力エネルギー担当大臣であるAndrew Bowie氏がその措置を発表した。

●英国の核融合を変革する計画には、2,000人以上の研修、新しい燃料サイクル試験施設、核融合企業を支援するための専門資金提供が含まれる。

●6億5000万ポンドの核融合支援策は、英国を革新的技術開発の世界的リーダーとしての地位を確固たるものにする手助けになる。

●原子力エネルギー大臣Andrew Bowie氏は、重要な国際会議でFusion Futures Programme の詳細を説明した。

  

同日(10月16日月曜日)に発表された政府の計画で、英国全土の何千人もの人々が革新的な核融合技術のキャリアに向けて訓練を受ける機会を得ることになる。

核融合エネルギー会議で原子力エネルギー政務次官であるAndrew Bowie氏が、英国の核融合戦略の一環である、新しい6億5000万ポンドのFusion Futures Programmeの詳細を発表した。

その対策には、全国に2,200以上の訓練場の設置、技術の商業化に重点を置く新しい燃料サイクルの試験施設、民間核融合企業に対するインフラの開発に資金提供などが含まれる。

また、エネルギー・安全保障・ネットゼロ省(Department for Energy Security & Net Zero: DESNZ)の大臣Clair Coutinho氏が最近訪問した、オックスフォードシャーのカルハムにあるUKAEAの専門施設の拡張と改善も含まれており、これはさらなる投資の促進に役立つだろう。

核融合は、長期的にクリーンな電力無限に供給できる可能性があり、英国で開発することで、雇用の創出、経済成長、国のエネルギー安全保障の強化に役立ち、将来の世代に利益をもたらすクリーンなエネルギーシステムを提供する。

英国はすでに核融合技術の世界的リーダーであり、その知識と専門性を世界に共有するのに有利な立場にある。この政府はこの立場をさらに強固なものとし、本日概説された6億5,000万ポンドの支出によって、2021年以降の核融合の政府投資の総額は14億ポンドを超えることになる。

Fusion Future Programme の6億5,000万ポンドの資金の投資先には以下が含まれる:

●核融合発電所の燃料の品種を改良する技術開発のため核燃料サイクル試験施設の最大で2億ポンドを投資し、英国がトリチウム(三重水素)の知的財産で世界のリーダーおよび輸出国になる機会を提供する

● 産業界が将来の核融合型発電所の部品を開発・設計ができるようにするための重要な研究開発に最大で2億ポンド

●オックスフォードシャーのカルハムキャンパスを拡張、改善し、新しい施設を建設して活気ある核融合企業の集積地を作り、英国への対内投資の促進に促すために最大で5000万ポンド

●Fusion Skills Programmeの拡大のため、企業や大学と協力し、今後5年間に2,200人以上の訓練を行うFusion Skills Programmeに最大で5,500万ポンドを拠出

●英国企業の新技術開発を支援するチャレンジ基金、Fusion Industry Programme (FIP)に追加資金として最大3,500万ポンド

●核融合研究開発に関する国際協力の強化、英国の専門知識の輸出、核融合エネルギーを加速させるための世界的知識の活用のため、最大2,500万ポンド

●Technology Transfer Hubのために最高1,800万ポンドを拠出し、核融合研究の商業化に焦点を当て、英国の主要研究機関と世界中の他のプログラムとのつながりを強化

●STEPプログラムや英国産業でスキルアップを促すためにさらに最大で1,100万ポンド

 

同日の発表は、9月に政府が英国の核融合セクターを支援し、国際共同研究を強化するために、一連の野心的な新しい研究開発プログラムを導入するという計画を確認したことに続くものである。

このプログラムは、同じく同日に発表された英国の核融合戦略(Fusion Strategy)更新版における国際共同研究の基本原則と一致している。英国はこれまで通りEUやその他の国際的パートナーとの共同研究に引き続き前向きであり、これはこの新しい研究プログラムの重要な部分を形成することになる。

核融合のプロセスでは、2 つの形態の水素の混合物を太陽の核の 10 倍以上の高温まで加熱し、それらを融合させてヘリウムを生成し、膨大なエネルギーを放出する。

作られたエネルギーは既存の発電所と同じように発電に利用できる。核融合は石炭、石油、ガスよりもキログラム当たり何百万倍も効率的である。

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/thousands-of-new-training-places-created-as-part-of-650-million-fusion-package

  

(10)秋の予算編成方針に対する要望の提出

2023年10月17日ラッセルグループは11月22日に発表予定である秋の予算再編成方針(Autumn Statement )に関する要望を発表した。

「研究集約型の一流大学として、私たちは4か国のすべてのビジネス、公共サービス、経済を支援する世界クラスの研究を提供できることを誇りに思う。このような研究主導のアプローチに加え、卓越した教育や能力開発により、英国を科学大国とし、長期的な持続可能な成長を遂げるという政府の野望を支援する上で、私たちの大学は最適な立場にある。

ホライズン・ヨーロッパの参加という極めて歓迎すべき決定を受け、政府は研究開発の可能性を次のレベルに引き上げる機会を逃してはならない。もし迅速に実行されれば、いくつかの簡単な行動によって、今年度の潜在的な研究開発資金不足を回避できるだけでなく、英国経済に数百万ポンドを確保することもできるだろう。

これらのアクションには以下を含めることを我々は提案する:

●ホライズン・ヨーロッパの高い参加率を確保するための投資

●大学の能力を活用してAUKUS※の第の2柱を推進するための投資

●英国とドイツの研究を強化するための投資

  

残念なことに、英国の研究の強さは、敵対的な国家主体による活動の標的にもなっている。秋の予算編成方針は、大学がこの重要な国家資産を保護する能力を強化することにより、安全保障リスクの評価と管理のために近年講じてきた措置をさらに強化する機会となる。UK Research Security Fundの創設は、英国の世界をリードする大学の研究に干渉しようとする敵対的な試みを阻止し、Integrated Review Refresh and Defending Democracy Taskforce の中心的な目的を実現する。

Russell Groupによる秋の予算編成方針に対する提出文書は以下<参考>からお読みください。

※AUKUS:2021年9月にオーストラリア、英国、米国の間で合意された「インド太平洋地域の平和と安定の維持を支援する」のための3か国の防衛・安全保障パートナーシップ。第2の柱には、人工知能、極超音速ミサイル、量子技術などの分野を網羅する8つのワークストリームがある。(出典:https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-9842/

 

Russell Group:

https://russellgroup.ac.uk/news/russell-group-submission-to-the-autumn-statement-2023/

<参考>

Russell Group submission to the Autumn Statement(秋の予算再編成方針(Autumn Statement )に対する提出文書) : https://russellgroup.ac.uk/media/6162/russell-group-autumn-statement-submission-october-2023.pdf

 

(11)2023年版 イングランドの社会流動性指数

2023年10月19日、高等教育政策研究所 (Higher Education Policy Institute: HEPI)は、毎年発行している「LSBU English Social Mobility Index」を発表し、2023年には方法論を改善したと発表した。LSBU English Social Mobility Indexは、London South Bank University (LSBU)が作成し、HEPIが発表しているもので、英国の各高等教育機関のパフォーマンスを比較するもの。

この指数は、各機関の卒業生が移動した社会的距離と、そのような移動を行った卒業生の割合を測定する。この指標は、すべての就学形態(技能実習制度は除く)の学部生を対象に、アクセス、継続、成果の指標を組み合わせたもの。

2023年版の結果は次のとおり:

University of Bradford(1位)、Aston University(2位)、City, University of London (3位)が最もよいパフォーマンスを示した。これらはすべて以前は先端技術学校であり、1963 年 10 月のロビンズ報告書を受けて約60 年前に大学となったものである。

続いてKing’s College London(4位)LSE(5位)、Queen Mary University of London(6位)はラッセルグループのメンバー。Birmingham City University(7位)、University of Wolverhampton(8位)University of Huddersfield(9位)と、1992年以降に設立され、かつてはポリテクニックであった3大学が後ろに続き、ラッセル・グループのもうひとつの大学であるUCL(10位)が最後となった。

※全体のランキングは原文から参照可能。

 

この指標は2021年に確立され、それ以降毎年改善されている。2023年の変更点は次のとおり: 

1.上位20校だけでなく、対象となったすべての大学のランキングを公表した。2022年版を発表した際、ランキングされていない大学からすべてのランキングの発表を希望する多数の要望が寄せられ、学生局(Office for Students: OfS)に登録されているイングランドの大学すべてを公開することが適切と思われた。(専門機関を除く)

2.ほかの大学ランキングの時期と合わせて発表日を春から秋に変更した。これにより、より最新の情報を盛り込むことが可能となった。昨年の指標では、2019/20学事年度のデータが使用されたが、今年はOfSが7月に発表した最新の学生の成果と経験の指標を含む2021/22年度のデータが使用されている。

3.技能実習制度(Apprentices)を指標から除外した。技能実習制度の学生成果・経験指標はOfSから個別に報告されることになった。(以前はフルタイムの学生とグループ化されていた)少数の集団のデータが抑制されているため、数値を組み込むことができない。

これらの改善のため、前年比を直接の比較する際には注意が必要である。公開されている表には昨年のランキング含まれているが、今年と昨年の結果の比較をする場合、あまり多くの結論を導き出さないことをお勧めする。

今回の変更にもかかわらず、University of BradfordとAston University はそれぞれ1位と2位を維持している。

方法論の詳細は次のとおり。

https://www.hepi.ac.uk/wp-content/uploads/2021/03/Designing-an-English-Social-Mobility-Index-1.pdf

 

高等教育政策研究所 (Higher Education Policy Institute: HEPI):

https://www.hepi.ac.uk/2023/10/19/2023-english-social-mobility-index/

 

(12専門家による地域イノベーションハブが、英国全土の地域研究、ビジネス、経済に7500万ポンドで支援

2023年10月23日、科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、英国全土のイノベーション地域クラスターに7,500万ポンドを支援し、地域経済を活性化し、ヘルスケアからネットゼロにわたり革新的なソリューションの開拓を図ることを発表した。

●中小企業への的を絞った支援を通じてアイディアと地域経済を活性化させるため、全国各地にある8つのダイナミックなイノベーションLaunchpadsに7,500万ポンドの資金が提供される。

●再生可能エネルギー、アグリテック、デジタルヘルスケアソリューションなどの主要セクターにまたがり、研究、中小企業や合併事業向けの革新的なリソースを提供する。

●リバプールとティーズサイドでのパイロットを基盤として、気候変動の影響から海岸を守り、埋め立てを削減する。

   

英国の科学担当大臣George Freeman氏は、英国全土の世界クラスのイノベーション地域クラスターを7,500万ポンドのシェアによって支援し、地域経済を活性化させ、ヘルスケアからネットゼロまで革新的なソリューションを開拓することを発表した。

今年初めに開始されたリバプールとティーズサイドでのパイロット事業に続き、Innovate UKの支援によって、さらに8つのLaunchpadsが英国全土で展開される予定。これらの取り組みは、ウェールズの南西部の再生可能エネルギー、イースト・アングリアのアグリテック、ヨークシャーのデジタルヘルスなど、各地域のハイテクイノベーションの既存のクラスターを基盤に構築される。

Launchpadsは、中小企業(SME)の新興クラスターを支援するプログラムで、地元企業が主導するイノベーション・プロジェクトに資金提供するため、Innovate UKから各Launchpadsに最大750万ポンドが提供される。

各Launchpadsに750万ポンドの特別資金が提供されることで、各地域の中小企業は、各ビジネスクラスター独自のニーズに合わせた支援に入札できるようになり、イノベーションの推進、事業の拡大、地域経済の活性化を支援する。

Launchpadは、強力なイノベーション能力を備え、英国の特定地域へのサポートに集中している。このアプローチは、地域のリーダーとの緊密な協力関係を促進し、研究開発のための資金援助、専門的なイノベーション・リソースへのアクセス、中小企業がつながりを持ち、アイディアを共有し、合併事業に参加する機会など、ニーズに合わせた支援を提供している。

Teesside University はこれまで、埋め立て廃棄物を減らし、環境保護のため廃棄物転換技術などの取り組みに投資し、ネットゼロ研究プロジェクトを主導してきた。またリバプール市地域への資金提供は、気候変動に関連したの洪水から沿岸地域を守るための環境に優しいコンクリートブロックを含む23件のグリーンプロジェクトを支援しており、またこれにより数十の雇用が支えられている。

地域の研究開発とイノベーション・クラスターに対する政府支援を重要な優先事項としてきたDSITの担当大臣であるGeorge Freeman氏は次のように述べた:

「英国の科学、研究、イノベーション経済はケンブリッジ、オックスフォード、ロンドンの「黄金の三角地帯」のみではなく、英国全土に広がっている。

グラスゴーの衛星製造から、マンチェスターの材料、ティーズサイドの水素、リバプールのライフサイエンスに至るまで、英国全土にある世界的に認められた25もの拠点と並んで、我々には世界クラスの研究開発があり、これらの世界クラスのイノベーションの地域クラスターを支援することは、英国を『イノベーション国家』とする計画の中心となる。

だからこそ、我々は計画の主力となるLaunchpadsプログラムを立ち上げた。この7,500万ポンドの投資は、再生可能エネルギーからデジタルヘルスにわたる分野まで、高成長企業が将来の産業を構築するのを支援する。これらのLaunchpadsは、地域経済を成長させ、雇用を創出し、英国の水準向上に極めて重要な役割を果たすだろう。」

今回の資金提供は、地域のリーダーによって提案された英国全土からの40件以上の提案を含む競争入札プロセスを経て、Innovate UKのディレクター、セクターの専門家、学者からなる委員会によって慎重に評価された。

このプロジェクトは、世界をリードし、グローバルに相互接続されたイノベーション・クラスターを確立し、これらの地域での雇用、経済成長、生産性の向上を促進することを目的としている。

リバプール都市圏とティーズサイドへの投資に続き、資金提供された8件は次の通りである。:

●Net Zero Industry launchpad: ウェールズの南西部に位置し、産業排出量ネットゼロにおける持続可能なソリューションの追求に特化している。

●Digital Technologies Launchpad: イングランド北東部に位置し、急成長市場と新興市場に適用されるデジタルテクノロジーの最前線になる。

●Health Technologies Launchpad: 西ヨークシャーを拠点とし、医療成果を向上させるテクノロジーの飛躍的進歩に貢献する。

●Agri-tech and Food Tech Launchpad: イングランド東部に位置し、アグリテックと食品テクノロジーに革命をもたらし、食料生産と持続可能性におけるイノベーションを推進する。

●Marine and Maritime Launchpad: グレート・サウス・ウエストに位置し、海洋および海事産業の取り組みをサポートし、この分野の成長と持続可能を促進する。

●Bio-based Manufacturing Launchpad: スコットランドに位置し、バイオベース製造業のイノベーションを推進し、持続可能な製造方法を促進する。

●Immersive and Creative Industries Launchpad: ウェストミッドランズのコベントリーとウォリックシャーを中心とし、クリエイティブ産業とイマーシブ・エクスペリエンスのための技術を支援し、画期的なイノベーションの道を切り開く。Innovate UKは、芸術・人文科学研究会議(Arts and Humanities Research Council: AHRC)と協力して支援を行う。

●Life and Health Sciences launchpad: 北アイルランドに位置し、ヘルスケアソリューションの進歩と医療の飛躍的進歩に特化している。

   

GOV.UK:

https://www.gov.uk/government/news/expert-regional-innovation-hubs-given-75-million-boost-to-local-research-businesses-and-economies-across-uk

 

(13学生向けの宿泊施設市場が「危機的状況」に達し、家賃が平均的な生活費ローンのほぼ全額を占める

2023年10月26日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)は、学生向け住宅慈善団体UnipoIとの新しい報告書において、学生の家賃が過去2年間の間に14.6%も上昇しており、平均的な生活費ローンのほぼ全額を飲み込んでいるとした。

●ブリストルの年間平均家賃は9,200ポンドで、ロンドン以外では英国一高い

●デベロッパーのコスト高騰と、部屋数の供給不足が家賃上昇の最大の要因

●UnipolとHEPIの新しい報告書では、生活維持費支援の見直しや、手頃な価格の新しい部屋のオプションなどの政策提言が盛り込まれている

 

UnipolとHEPIの新しい報告書によると、学生寮の家賃は過去2年間で平均14.6%上昇しており、現在では平均的な生活維持ローンのほぼ全額を飲み込んでいることを意味する。

「Student accommodation costs across 10 cities in the UK: Cost pressures and their consequences in Purpose-Built Student Accommodation (英国の10都市における学生の家賃:学生寮のコストの圧力とその影響)」は、過去2学次年度の間に見られた前例のない家賃の高騰と供給問題を受けて実施されたもので、学生の生活に関する公平な見解を報告している。レポートは、大学および主要な地方大学10都市で学生寮を運営する大手プロバイダー10社(合計125,000床以上)から任意で提出されたデータを収録している。

対象となった都市は以下のとおり:

1.ブリストル

2.エクセター

3.グラスゴー

4.リーズ

5.リバプール

6.ノッティンガム

7.ボーンマス

8.カーディフ

9.ポーツマス

10.シェフィールド

 

物価が高い首都であるロンドンとエディンバラは、これらの市場以外の家賃についてよりバランスのとれた見方を提供するために、分析から意図的に除外されている。

2021/22学次年度の平均年間賃料は6,520ポンドで、2023/24学次年度には主要10地方大学都市全体で7,475ポンドに上昇する。イングランド全体では、今年度(2023/24年)の平均年間賃料は7,566ポンドとなっている。

今年度イングランドの学生に支給される生活維持ローンの平均額は7,590ポンドと公式に予想されているのに対し、イングランドの平均家賃は7,566ポンドである。つまり家賃がほぼ100%を占めてしまい、その他の生活必需品のために残るのはわずか24ポンド、つまり週に50ペンスにしかならない。

平均賃料は、生活維持ローン上限の4分の3(76%)以上に相当する。

 

地域の家賃の状況

最も家賃と上昇率が高いのは、最も供給が不足している都市である。調査によると、英国で最も平均年間家賃が高いのはブリストルで9,200ポンド、次いでエクセターが8,559ポンド、グラスゴーが7,548ポンドとなっている。

過去 2 年間ではグラスゴーの賃料上昇率が 20.4% と最も高く、次いでエクセターの 16.1%、ノッティンガムの 15.5% が続いた。その他、リーズ(14.7%上昇で7,627ポンド)、ボーンマス(11.2%上昇で7,396ポンド)で顕著な上昇が見られた。一方、リバプール、カーディフ、シェフィールドは、年間賃料が6,400~6,600ポンドと低く、年間上昇率も小さいため、最も手頃な価格と判断されている。より緩やかな上昇の理由は、これらの市場の供給レベルがより健全であるためである。

(家賃上昇率の一覧表は出典リンクから参照可能)

 

何が家賃を押し上げているのか?

この報告書は、大学や民間事業者を含む34の主要な学生寮提供者に一連の質問を行い、主要な市場促進要因と彼らが直面している問題を調べている。エネルギー費、建設費、人件費、借入費用の高騰が、民間業者と大学業者の両方に影響を与えている最大の要因である。

高額な開発コストに加え、計画許可を得るための障壁が、追加の宿泊施設を建設し教供給の圧迫を改善することを妨げており、過去2年間でこの市場に新しく投入されたベッド数は3万件にとどまっている。

新規に建設される部屋は、プロバイダーが開発コストを回収できるよう、より高い価格設定になっている。新規宿泊施設の建設は歴史的な金利上昇によって遅れており、資金調達コストが上昇している。また、ランニングコストの上昇により、既存の物件の賃料も上昇傾向にある。

新しい報告書では、今後の賃貸人(改革)法案により、もっと多くの家主がシェアハウス(多人数居住施設(house in multiple occupation)HMOとしても知られる)が学生市場から撤退する可能性があると警告しており、シェアハウス市場はますます縮小し、最終的には大学所有や専用の宿泊施設にさらに負担がかかり、供給問題はさらに悪化する。

 

政策への提言事項

この報告書では、政府、大学、プロバイダーが考慮すべき政策提言をいくつか提示している。

1.学生生活維持ローンの大幅な改革

裕福な学生も貧しい学生の両方に対して高等教育へのアクセスを均等に維持するためには、学生生活維持ローン制度の見直しが必要である。生活維持ローンは「生活費への拠出」として再指定されるべきであり、保護者負担金の重要性は、単に言及されるだけでなく強調されるべきである。将来的には、生活費支援は学生が自立して家を離れて生活するために実際にいくらかかるかに基づき、データを活用して情報に基づいたアプローチを行う必要がある。

2.経済的支援と手頃な価格の住居選択肢の導入

民間プロバイダーは、増大する建設コストをカバーするため、より高価な部屋を提供している。Cushaman & Wakefield社からの最近の報告書では、単にコストを賄うだけでも、集合住宅の一室の家賃レベルは週170ポンド程度必要であると推定されている。古い宿泊施設の改修や、2人入居の導入など、より手頃な価格の選択肢が必要なのは明らかだが、大学や幅広いセクターからの支援や提携がなければ、民間プロバイダーがリスクを負う可能性は低い。

手頃な価格の選択肢が不足している市場では、住宅補助金や生活困窮基金も利用できる可能性がある。

3.より多くの供給の促進

大学や民間プロバイダーは、地方自治体のプランナーと積極的に対話し、彼らのニーズや、より多くの学生向け宿泊施設を建設することの価値を理解する必要がある。多くのプランナーは、手頃な価格の学生向け宿泊施設の必要性を認識しながらも、スペース基準の改善、より高仕様の設計、より低い密度が求められ、これらすべてがコストを増加させる。

 

高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):

https://www.hepi.ac.uk/2023/10/26/student-rents-now-swallow-up-virtually-all-of-the-of-the-average-maintenance-loan-as-market-reaches-crisis-point-in-affordability/

 

関連記事 「University students in England ‘have 50p a week to live on after rent’(家賃以外の生活費は週50ぺンス)」

2023年10月26日

Guardian: (リンク先英語)

https://www.theguardian.com/money/2023/oct/26/university-students-england-50p-a-week-after-rent

 

(14)恵まれない環境にある学生のうち、記録的な数が高みを目指し、最も厳しい学位が取得できる大学に応募

2023年10月26日 、大学入試機関 (Universities and Colleges Admissions Service: UCAS) は、2024年度の大学志願統計数を発表し、最も恵まれない背景を持つ英国の18歳が、難関大学やコースに出願する数が過去最高になったと報じた。

医学、歯学、獣医学の学位、またUniversity of OxfordやUniversity of Cambridgeのすべてのコース募集が10月初旬に締め切られ、その志願数の詳細が発表された。

最も恵まれない地域(POLAR 4 quintile 1)出身の英国の18歳の学生数は過去最高で、2023年度(2,950人)から7%増の3,160人が出願した。最も恵まれた環境(POLAR 4 quintile 5)からは17,080人が出願し、昨年の16,720人と比べると2%増加した。

2024年10月出願締切の学士課程コースに合計72,740人が出願し、昨年(74,090人)より2%減少したが、2020年(2019年10月出願締切、2020年秋入学)、つまりパンデミック前の最後のサイクル(68,690人)よりは6%増加した。

合計すると、期限までに出願した英国の18歳は39,310人で、過去2番目に多い。2023年(38,660人)より2%増、2020年(35,290人)より11%の増加である。

その他の主な調査結果:

●医学部に出願した英国の18歳は11,750人で、昨年(12,700人)と比べて7%減少したが、2020年の10月締切(10,930人)と比べて8%増加した。

●初めて医学部に出願する35歳以上の英国人学生数(230人)は、2023年の170人(31%増)から増加し、過去最高だった2021年の260人から減少した。これは2021年(39%増)以来、前年比の増加率としては最大である。

●英国の19歳の志願者総数は18%減少しており、今年は5,580人だが、2023年の6,770人から減少している。

●留学生(全年齢)の総申請者数は20,850人で、2023年(20,970人)よりは減少しているが、2019年(20,280人)よりは増加している。

●中国は依然として外国人志願者の最大の出願元市場であるが、中国からの志願者数は2023年から1%減少している(ただし2020年入学の10月締切に対しては31%増加)。昨年から志願者数が最も増加しているのは米国とシンガポールで、米国からの志願者数は9%増、シンガポールからの志願者数は6%増となっている。

●無料学校給食を申請した英国出身の志願者は6%増加した。これは英国で無料学校給食を受ける生徒数が増加していることを背景にしている。

 

UCASの暫定最高責任者であるSander Kristel氏は次のように述べた:

「最も恵まれない地域から、来年の進学先選択で高みを目指す若い学生が過去最多を記録したことは心強いことだ。世界的なパンデミックを背景とした不利な格差の縮小は、社会の誰もが難関コースへの進学を目指すことができるよう、我々がセクターとして行ってきた努力を示している。

UCASはサイクル全体を通じて、学生を支援し、2024年1月31日の他のすべてのコースに対する平等な考慮期限に向けて、チームは学生を次のステップに導くため待機している。

また、UCAS Hubsは学生に対し、学位コースと並行して、自分にとって最も関連性が高い技能実習制度の機会を見つける機会を提供していること強調することも重要である。我々は初めて、志願者が大学受験のための選択肢をすべて1か所で探し、決定できるようサポートする準備が整っている。」

 

大学入試機関 (Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/record-number-disadvantaged-students-aim-high-and-apply-most-selective-university-degrees

 

(15教育関係のリーダーたちが医療の未来に警鐘を鳴らす

2023年10月30日、NHS※を強化するという政府の野心的な計画は、今すぐ医療教育と訓練に大幅な変更を加えなければ達成できない、と英国大学協会(Universities UK:UUK)は警告を発表した。

●医療従事者全体で11万2,000人の欠員がある中、野心を現実にするために医療教育と訓練に関する5つの項目からなる計画が提案された。

●NHSの労働力計画は、研修を強化し、医学部の定員を2倍にし、看護と助産の研修場所を80%増やすことを目指す。

●医療従事者を増やす必要性に関しては政治的なコンセンサスが得られており、NHSを守るためには今が絶好の機会である。

NHS長期労働力計画(NHS Long Term Workforce Plan: LTWP)は、NHSの人材不足に対処することを目的として英国政府が今年6月に発表したもので、研修、維持、改革の3つの柱を掲げている。野党も今後数年間で医療専門家に投資する姿勢を示しており、今はイングランドのNHSの将来を確保する上で極めて重要な時期である。最近のIpososが実施した調査によれば、NHSは国民の第2番目の大きな懸念となっており、また、医療サービスに対する人々の優先事項はNHSの労働力の拡大と支援であることも調査では示されている。

しかし、この計画の成功は、教育と医療従事者との共同の取り組みにかかっており、大学は次世代の医療専門家を教育し、健康成果を改善できるイノベーションを推進している。

UUKは、LTWPがその目標を達成し、人材パイプラインの枯渇を防ぐためには、依然として多くの課題を克服する必要があると述べている。これには、高等教育における医療教育の定員枠の拡大、学生や教育者をより重視するようにNHS内の文化の転換が行われる必要性などが含まれる。

UUKはLTWPの目標の達成のため5つの計画を打ち出している。

 

1.学生募集の促進

看護師、助産師、医療関連専門家(allied health professional: AHP)コースへの入学志願者が減少する中、UUKは政府に対して、大学、カレッジ、学校、NHSと連携した大規模な全国的募集キャンペーンの実施を求めている。

2.教育者の数の増加

臨床系のアカデミック・スタッフや教員の不足は、拡大の足かせとなっている。現在、医療教育者の50%が50歳以上である。さまざまな種類の職員をその役割に引き付けるために、教育者の役割とキャリアを早急に見直す必要がある。また、NHS内で学生と教育者のためのスペースを確保し、彼らが大切にされていると感じられるように、文化的な変化が必要である。

3.新しい技術を含む新しい施設やインフラへの投資

学習者数を増やすための受入定員数を拡大するには、新しい学校を開設するだけでなく、大学やカレッジの施設を拡張する必要がある。これは、追加の教育スペース、フレキシブルなスペース、試験施設を意味する。また、没入型環境、シミュレーション、ロボット工学などの学習技術を通じて定員を拡大する機会もあるが、これらにはすべて設備投資が必要である。

4.実習定員の増加

政府、NHS、大学、カレッジは、実習斡旋先の可能性、質、配分に今後も重点を置く必要がある。病院での実習を増やすだけでなく、ケアホームや学校などの地域社会での実習能力を多様化するためには、イングランドのNHSと大学との緊密な連携が必要である。

5.学習者の経験の改善と退学率の減少

多くの医療コースでは退学率が高く、それが初期のキャリアまで継続している。一般的な要因としては、生活費の圧迫、交通費や家賃などがあげられる。さらなる健康とメンタルヘルスのサポート、より定期的な状況把握、より質の高い指導などのサポートが必要である。経済支援はインフレに連動させるべきで、低所得家庭の学生はより多くの支援を受けるべきである。

 

今年3月時点では、医療従事者全体で少なくとも11万2000人の欠員があった。 この計画では、2031年までに研修を強化し、医学部の定員を毎年7,500人から15,000人に倍増することを目標としている。また、同時に看護師、助産師、関連医療の研修の定員を72,400人に増やすことも目指している。

イングランドでNHSに雇用される職員の数を2022年の約150万人から2036年~37年には約240万人に増やすことも重要な目標である。2036年から2037年には、公共部門の全労働者のほぼ半数(49%)がNHSで就労し、イングランドの全労働者11人に1人(9%)を占めるようになることを目標としている(2021/22学事年度では17人に1人(6%))。

 

人員が充実した効率的なNHSを発展させるため、英国政府は大学と緊密に連携し、総選挙と財政支出の見直しの両方にまたがる今後15年間の計画に資金を提供しなければならない。

編集者注:

英国における優秀な人材の採用、必要な労働力の維持、医療制度の改革に対する懸念は、Nuffield Trustの委託による新しい報告書で強調されている。

●研修中の医療関連専門家のおよそ3分の1(30%)、学生看護師の5人に2人(42%)、また驚くべきことに5人に3人(58%)の学生助産師が離職を考えている。

一方、理学療法士(21%)、作業療法士(21%)、看護師(18%)、放射線技師(17%)それぞれ約5人に1人が、入職後2年以内にNHSの病院や地域の現場を去っている。

UUKは、イングランドの医療人材パイプラインが枯渇しないようにするため、5つの体系的な変革の必要性を特定した。

医療教育の定員拡大のため高等教育の転換

NHS臨床コースの拡大や開設は、人員配置、学生体験、サポート、宿泊施設、交通機関、インフラに影響を与える可能性がある。これらは、NHS、地方自治体、地域社会、および他大学とのパートナーシップを通じて、保健医療への長期的な関与を決定するものである。

学生と教育者を大切にするNHSの文化の変化

同様に、拡大のためにはNHSと介護分野の文化的変革が必要で、労働力を財政管理とサービス提供に統合し、教育と学習者を中心に据え、患者の成果や生産性の観点からその価値を理解する。

実施は共同で行われる必要がある

この計画自体には、15年先を見据えた200件の質問が含まれている。主要な実施パートナーである大学が当初から関与することが不可欠である。UUKはNHSイングランドのロードマップの共同制作を歓迎する。

資金は継続的でなければならない。

政府は、NHSの将来の変革するために、大規模かつ長期的な投資の取り組みを強調してきた。資金がNHSイングランドの「実施ロードマップ」に沿って調整され、すべての専門コースに配分されることが不可欠である。

規制は調整され、結果に基づいて適応的でなければならない。

医療係学部は、保健と教育の規制が重複する分野である。専門教育の一環として、すべての医療系の学生は、関連する専門規制当局が定めた卒業生のアウトカムを満たす準備ができていなければならない。

 

※NHSとは:英国の国民保健サービス、National Health Serviceの通称。

英国大学協会(Universities UK):

https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/education-leaders-sound-warning-future

 

(16健全で競争力のある新卒労働市場

2023年10月31日、学生雇用者協会(Institute of Students Employers: ISE)の年次雇用調査は慎重ながらも楽観的な見通しで開始されたと発表した。

ISEの2023年年次雇用調査が発表され、経済的苦境にも関わらずがあるにもかかわらず、健全な新卒労働市場が存在するものの、就職競争が激化していることがわかった。

今年の調査は2023年7月から8月にかけて実施され、様々な分野や組織規模の学生雇用主から169件の回答を得られた。2022/23学事年度においてそれらの雇用者は大卒と中退者の42,846人を雇用した。

大学卒労働市場

雇用市場の冷え込みと経済の不確実性にもかかわらず、大学卒者の2022/23学事年度の募集は6%上昇し、予想(2%)を上回った。2023/24学事年度にも雇用は同様の伸び率(5%)が予想されている。

IT、エンジニアリング、財務のスキルを持つ卒業生は特に求められており、雇用主はこれらの分野の人材不足を挙げている。

この調査では大学卒者の競争が激化しており、平均的な組織で1つの求人に対して86件の応募(前年比で23%増)があることも報告されている。

小売業、日用品業、観光業、金融業、専門サービス業はもっとも競争が激しいのに対し、慈善団体、公共部門、建築環境などの分野は最も競争が少ない。

リモートワークへのシフトにもかかわらず、新卒者の大半はロンドンと南東部での勤務を希望している(56%)。特定の地域を拠点とせず、完全リモートで働く新卒者はわずか3%である。

資格への依存度の低下

雇用主は、新卒者の職務への適性を評価する手段としての成績への依存度を下げ続けている。今回初めて、UCASのAレベルの成績を最低条件と設定している雇用主は10社に1社未満(9%)であった。昨年は、新卒初めて雇用主の半数未満が2:1の学位※を規定としたと伝えた。今年はさらに減少し、卒業時の成績が2:1であることを条件とした雇用者は44%と新たに最低値を記録した。

10年前は、この割合はAレベルで40%、2:1は76%だった。

慎重な楽観主義

ISEの年次調査では、大学卒者雇用者が慎重でありながらも楽観的であることが示された。欠員は依然としてあるものの、雇用主が大学卒者一人当たりの採用に費やした支出が439ポンド減少した。(4,319 ポンド)大学卒者の給与中央値は32,000ポンドで、昨年より3%上昇したが、10年前より1,760ポンド価値が下がっている。

※2:1(Second Class Honours, Upper Division)英国における学位水準基標のうちの優等学位の区分の一つ。

(出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/41/041_1/attach/1291607.htm

 

学生雇用者協会(Institute of Students Employers: ISE)

https://insights.ise.org.uk/home_featured/blog-robust-yet-competitive-graduate-labour-market/