2024年11月19日
(1) UKRIの新たな研究助成プログラムが、学際的な研究を支援
(2) 英国王立協会が数学教育の抜本的改革を要求
(3) 科学技術の独立擁護団体による研究開発の市民関与の拡大を求める報告書
(4) 政府は留学生の生活費の条件額の引上げ
(5) 科学最大の謎の解明へ、新装置の開発開始
(6) 英国学士院:「人文科学と社会科学からの洞察は、安全で健康的で経済的に豊かな国家にとって極めて重要である」
(7) 英国下院の科学・イノベーション・技術委員会の委員長が選出
(8) 学生ビザ申請数が6分の1に減少、大学によっては困難な状況に
(9) サイバー・スキルの向上と増大する脅威に対処するため世界的な連合を招集
(10) UKRIのオープンアクセスに関する最新情報
(11) 英国の大学、授業料値上げなら留学生抑制を提案
(12) 大学院留学生の英国に対する多様な貢献
(13) 英国・欧州の学術シンクタンク:ESRCからの資金提供を失う
(14) 英国、CERNの科学的な躍進70周年を祝う
(15) 2024年知識交換制度の結果:ラッセルグループの大学は地域成長で行き詰まり
(16) 成績インフレ:最優等学位がパンデミック以前の水準に低下、半数近くは説明不可能
(17) イノベーションを創出する研究資金制度の多様化を提言
(18) 18歳入学者数が過去最高を記録、留学生の入学者数の伸びは横ばい
(19) 大学卒業後5年以内の半数が上級職に従事:NCUBの新調査結果
(20) AIアクション・サミットに先立ち、英国が米国にてサミットを主催
(21) ARIAが5,000万ポンドの予算を主導する新しいプログラムディレクターを募集
(22) EUからの提案:労働党とEUの関係改善の一環として若者向け移動プログラム
(23) UKRI:生成AI活用と評価に関する政策発表
(24) 経済学者の提案:全大学卒者に週10ポンドの徴収を
(25) 科学担当大臣は新しいミッション主導型の研究開発基金を示唆
(26) UKRIのCEOの発言:平等、多様性、包容性が変革をもたらす
(27) 英国、次期EU 研究イノベーション計画に対する姿勢を表明
(28) 半導体企業の成長を新たに支援、100億ポンド規模の英国産業の成長を後押し
(29) 成功か衰退か、英国は明確な選択を迫られている
続きを読む
(1) UKRIの新たな研究助成プログラムが、学際的な研究を支援
2024年9月2日 UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、学際的な研究を支援する「クロスリサーチカウンシル応答型モード(cross research council responsive mode:CRCRM)」の第2ラウンドを開始し、3,250万ポンドを提供することを発表した。第1ラウンドでは36のプロジェクトが支援され、合計3,240万ポンドが分配された。 対象となったプロジェクトは、胆管がんの治療法、有害有機汚染物質の分解、海洋生態系管理に役立つ歴史的記録、子供のデジタルデータを保護する技術など、革新的な分野の研究であるこのパイロット制度は、従来の学問分野を超えた新しい研究や手法を促進することを目的としており、学問の境界を越えた協力を推進する。
【記事全文(英語)】UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/first-projects-from-ukris-new-interdisciplinary-scheme-announced/
(2) 英国王立協会が数学教育の抜本的改革を要求
2024年9月3日 英国王立協会(Royal Society:RS)は、データスキルの重要性を考慮し、数学教育の抜本的改革を提案する報告書を発表した。この報告書は、数学、統計、データ科学を融合させた「数学・データ教育」を提唱し、実際の問題解決に役立つスキルを育てることを目指している。特にデジタル技術やデータスキルの教育を強化し、数学の授業だけでなく他の教科でも取り入れるべきだとしている。報告書は、気候変動などの社会課題の解決や経済再生に数学・データスキルが不可欠であると主張し、政府に対して独立した委員会の設立を要請した。また、教師の研修やカリキュラムの見直しも提案されている。RSのAdrian Smith会長は、数学教育改革が若者により良い未来を提供するために重要だと強調し、改革の必要性を訴えている。
【記事全文(英語)】英国王立協会(Royal Society:RS):
https://royalsociety.org/news/2024/09/royal-society-calls-for-radical-reform-of-maths-education/
(3) 科学技術の独立擁護団体による研究開発の市民関与の拡大を求める報告書
2024年9月9日 科学技術キャンペーン(Campaign for Science and Engineering : Case)*は、研究に対する公共の「感情的なつながり」を深め、最終的に「社会に貢献する」ための提言を発表した。2024年9月9日に公開された報告書では、33人の参加者による公的対話の結果が共有され、研究開発(R&D)分野で市民参加を増やすための「人々の原則」が示されている。Caseは、市民の関与を増やすことで、新しい研究課題の発見や異なる視点の導入、研究者のモチベーション向上、さらなる資金調達の機会が増えると主張している。提言では、R&D分野が直面する「文化」「能力」「資源」の3つの課題に基づいている。文化に関しては、市民参加プロジェクトを支援するための賞やフェローシップの導入が推奨され、能力向上には研究者向けのトレーニングプログラムの開発が求められている。また、通常の協力者以外とも強いパートナーシップを形成することが提案されている。政府への提言としては、R&Dにおける市民の声を重視し、政策決定に反映させる必要があると指摘され、既に公共を効果的に関与させている事例から学ぶべきだと述べられている。
科学技術キャンペーン(Campaign for Science and Engineering : Case)*:英国を代表する科学技術の独立擁護団体
People’s Vision for R&D: A public dialogue: https://www.sciencecampaign.org.uk/analysis-and-publications/detail/peoples-vision-for-rd-natcen-and-nccpe-reports/
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(4)政府は留学生の生活費の条件額の引上げ
2024年9月11日英国への留学のための新規定によると、2025年1月2日以降に英国へ留学する学生は、コース期間(最大9か月)に応じた生活費の証明を求められるが、ロンドンでの留学生は月当たり£1,483、ロンドン以外では月当たり£1,136の証明が必要となり、9か月以上のロンドンでの留学生は合計£13,348の残高証明を提示が必要となる。現在は、ロンドンで月当たり£1,447、ロンドン以外で月£1,109の証明が求められている。この変更は国内の生活費ローンの増額に基づき、インフレに応じて定期的に更新される。また、既に宿泊費の一部を支払っている場合、必要な資金証明額を減らすことができ、英国で12か月以上他のビザで滞在している場合は、生活費証明が不要となる。さらに、NHSのサーチャージは2024年2月6日に66%増加し、年間£776となっている。留学生はこれに加え、学費、税金、ビザ・バイオメトリック費用(ビザおよびビザ申請にかかる指紋や写真の提供など費用)に対する負担がある。
【記事全文(英語)】Pie News:
https://thepienews.com/maintencance-requirements-increase-uk/
(5) 科学最大の謎の解明へ、新装置の開発開始
2024年9月11日 英国では、最先端のダークマター検出装置の開発計画が進行中で、これがノースイーストイングランドにあるボウルビー鉱山の地下科学施設に設置される可能性がある。ダークマターは宇宙の85%以上を占めていると考えられており、その検出は非常に難しいため、英国の研究者たちは新しい装置の設計に着手した。UKRIインフラ基金からの800万ポンドの支援を受け、Imperial College London が率いるコンソーシアムが、3年半かけて検出器の初期設計を主導する。XLZDコンソーシアムは、ダークマターを検出し、その性質や起源を探ることを目指しており、この実験は液体キセノンを使用してダークマターとの微弱な相互作用を検出する。このプロジェクトは、CERNの大型ハドロン衝突型加速器がヒッグス粒子を発見したように、物理学に大きな影響を与える可能性がある。現在のところ実験場所は決まっていないが、英国の大学や研究機関が主導するこの基礎的な作業は、プロジェクトの成功に不可欠である。もしボウルビー鉱山で実施されれば、50年以上ぶりの大規模な科学プロジェクトとなり、国際的な科学者を英国に引き寄せることが期待されている。
【記事全文(英語)】UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/work-starts-on-machine-to-solve-one-of-sciences-biggest-mysteries/
(6) 英国学士院:「人文科学と社会科学からの洞察は、安全で健康的で経済的に豊かな国家にとって極めて重要である」
2024年9月11日英国の人文・社会科学系を管轄する英国学士院(British Academy: BA)は、予算および支出見直しに対して、人文・社会科学が英国の研究の卓越性や国際的な評価を維持し、健康、安全、繁栄に貢献することの重要性を強調した。これは来月政府から発表されるAutumn Statement(秋の予算編成方針)に対するものである。BAは政府に対し、SHAPE(社会科学、人文科学、芸術)の潜在能力を活用するために、高等教育資金の見直し、研究開発(R&D)においてG7諸国の中でリーダーシップを取ること、国際的な研究協力の障壁を減らすことを提案している。
BAが優先すべきとする3つの分野は以下の通り:
BAは、これらの分野が英国の再建計画や国際的な研究評価の維持に寄与するとしている。
【記事全文(英語) )】 British Academy:
(7) 英国下院の科学・イノベーション・技術委員会の委員長が選出
2024年9月12日 労働党のChi Onwurah氏が、下院(House of Commons)の科学・イノベーション・技術委員会の委員長に選出された。Onwurah氏は、長年影の科学大臣を務めてきたが、Starmer政権では大臣職に選出されなかった。同氏は今回の選出活動中、「働く人々のために科学技術の進歩を推進したい」と強調していた。科学大臣のPeter Kyle氏をはじめとする政府関係者からも祝福の声が寄せられ、同氏のリーダーシップに期待が寄せられている。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(8) 学生ビザ申請数が6分の1に減少、大学によっては困難な状況に
2024年9月12日 英国留学ビザの申請数は、8月には前年同月と比べて17.1%(25,200件)減少した。この減少傾向は、今年に入ってから継続しており、今年度の合計申請数は、前年同期と比べて16.6%(55,500件)減少している。これは、2024年1月から発効した規則変更により、多くの学生が扶養家族を同伴できなくなったことが原因であり、英国を留学先として魅力的に感じなくなった学生がいる可能性がある。学生ビザの申請数は通常、学年の開始前に当たる7月から9月にピークを迎えるが、9月の数字と最近の傾向に従うと、今年度の大学入学者の数は減少すると予想される。これは、英国の大学の財政にとって重要な影響を与えるであろう。近年、英国の大学の財政は、国内の学部生の資金が減少する中、留学生の学費収入にますます依存している。2022-23年には、英国の大学の全収入の5分の1(109億ポンド)が、EU圏外の留学生から徴収された学費によるものであり、これは、国内の学部生に課される上限とは異なる。全体としては、英国の高等教育機関は、財政的に健全な状態にあるようだ。最近の報告書によると、イングランドの大学の5分の1が2022-23年に赤字を計上したが(一時的な年金費用を調整した後)、これらの赤字は、大学の純資産と比較すると比較的少ないものであった。しかし、最近のUCASデータによると、選考基準が低い大学は、今学年の締め切りまでに国内学生からの申請が19,200件(2.5%)減少したのに対し、選考基準が高い大学は申請数が大幅に減少しなかった。これらの大学も、扶養家族向けビザの制限により留学生の募集が影響を受ける場合、より大きな財政的な打撃を受けることになるであろう。
【記事全文(英語) )】英財政研究所(Institution for Fiscal Studies: IFS):
https://ifs.org.uk/articles/student-visas-down-sixth-will-cause-challenges-some-universities
(9) サイバー・スキルの向上と増大する脅威に対処するため世界的な連合を招集
2024年9月16日英国政府は、イングランドと北アイルランドでのサイバー技能向上と革新を支援する新たな資金提供を発表し、サイバー脅威に対抗し、サイバースキルを強化するための国際的な連合を招集し会議を開催した。3日間にわたるこの会議は、英国がサイバー攻撃の脅威に対処し、サイバースキルを強化するための新たな取り組みを呼びかけるものである。
目的: サイバー攻撃への対策強化とサイバー技能の向上を目指し、米国やEUなどと協議を行う。新たな法律で国をサイバー攻撃から保護する方針である。
新たな取り組み: イングランドと北アイルランドで地域ごとのサイバー技能訓練を支援するスキームが導入される。
資金提供: 総額130万ポンドが提供され、大学や地域ごとのサイバー技能訓練や革新的なサイバー防御の開発を支援する。最大15万ポンドの助成金が2025年3月までに交付される。
若手人材育成: 国際大会に向けた若手サイバー人材の発掘コンペも開始された。
データセンターの重要性: データセンターが重要インフラとして指定され、政府による保護が強化される。
また、サイバーセキュリティスキルギャップに対処するため、国際基準に基づいたサイバースキル育成プログラムも開始される。
【記事全文(英語)】科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science and Innovation and Technology: DSIT):
(10) UKRIのオープンアクセスに関する最新情報
2024年9月16日UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、オープンアクセス政策実施を支援するために、利害関係者と協力して活動している。この方針は、2022年4月から研究論文に、2024年1月からは専門分野に特化した研究書、編著書の中の各章(書籍の章)、編著に適用される。
主な内容:
モニタリングと評価: UKRIは、オープンアクセス研究論文のベースライン値を設定するためのレポートを公開した。それによると、UKRIの資金提供を受けた研究記事のうち、2022年には63%が完全に方針に準拠しており、出版時にすぐにオープンアクセス可能で再利用が許可された。しかし、英国全体ではこの割合は39%にとどまり、主にオープンアクセスライセンスの採用が低いことが原因であった。
専門分野に特化した研究書、編著書の中の各章(書籍の章)、編著: UKRIはOAPEN Foundationと提携し、これらの出版物の発見性や保存性を向上させ、モニタリングと評価をサポートする。また、ツールやリソースを開発するためのプロジェクトも開始している。
研究者向け:UKRIは、Insights Mediaに依頼し、オープンアクセスで専門分野に特化した研究書や編著を出版する機会を示すケーススタディを作成している。
研究機関向け:UKRIは、研究機関向けに、Research Libraries UKなどの団体と協力して、実施戦略やベストプラクティスの交換フォーラムを設立している。
出版社向け:UKRIは、Information Powerに依頼し、学会や専門出版社がオープンアクセスビジネスモデルに移行するためのツールキットを開発している。
研究情報環境:UKRIは、MoreBrains Cooperativeと協力し、研究論文に対するオープンアクセス方針の技術要件に関する追加の説明を提供した。このプロジェクトは、レポジトリや出版社が要件を満たすための準備状況を確認し、今後の指針を策定するための取り組みの一環である。
【記事全文(英語)】UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/update-on-ukris-journey-to-open-access/
(11) 英国の大学、授業料値上げなら留学生抑制を提案
2024年9月17日英国の大学は、政府による財政支援の拡大と授業料の引き上げを求める代わりに、留学生の増加を抑制する提案を提出する予定である。英国大学協会(Universities UK: UUK)は、授業料をインフレに連動して値上げをし、政府からの財政支援を拡大するよう求める提案をまとめた。UUKの提案には、特に住宅不足や地元サービスへの圧迫に直面している地域において、大学が自発的に留学生数を「管理」する提案が含まれている。Starmer 首相は、イギリス全土の純移民数を削減することを公約としてる。
英国の国内学部生に対する授業料は、2017年以来9,250ポンドに抑えられているが、高いインフレによりその価値が低下しているため、大学は学費を無制限に請求可能な留学生からの授業料に頼らざるを得なくなっている。
UUKの最高経営責任者、Vivienne Stern氏は、高等教育機関は留学生の影響について考え、賃貸住宅の空き状況や学生の入学数を増やす際、どのような大学のサポートを提供するか等、問題となる点を考慮する必要があると述べた。UUKは、政府がビザ制度の安定性を維持するよう求めている。英国学生連合(National Union of Students:NUS)は、学生も財政的に困窮しているため、授業料の引き上げは学生の負担を増やすだけだと主張している。UUKの提案には、規制、地域成長、機会に関する詳細な章が含まれている。英国の大学は、政府からより多くの財政支援と、留学生の増加を管理するための自主的な取り組みを条件に、授業料の引き上げを提案している。
【記事全文(英語)】Guardian紙:
(12) 大学院留学生の英国に対する多様な貢献
2024年9月17日英国大学協会(Universities UK: UUK)はCounterculture Partnership LLP とPublic Firstに委託し、英国の研究開発(R&D)における海外からの大学院研究(PGR)人材の貢献と影響を明らかにした報告書を発表した。それに基づき、政府や大学への提言をしている。
主な発見:
政府や大学への提言:
【記事全文(英語)】英国大学協会(Universities UK: UUK):
https://www.universitiesuk.ac.uk/topics/international/powering-engine-non-financial
(13) 英国・欧州の学術シンクタンク:ESRCからの資金提供を失う
2024年9月18日 経済社会研究会議(Economic and Social Research Council: ESRC)は学術シンクタンクでKing’s College London に拠点を置くUK in a Changing Europe(UKICE)に対して資金提供を打ち切ることを決定した。来年の4月に資金が終了し、UKICEにとって不確実な未来に直面している。UKICEのダイレクターである、Anand Menon氏が、この発表をXに投稿し明らかになった。Menon氏は、UKICEは過去10年間、EU離脱のプロセスに関するタイムリーで洞察力に富んだ分析を提供してきたと述べ、UKICEの未来は現在不確実であると警告し、これまで公共の資金提供モデルがうまく機能し研究に集中ができたことを述べた。またMenon氏はUKICEは今後、英国とEUの関係やその他の問題に関する高品質な研究を継続することを誓った。
UKICEは、英国が直面している重要な問題に対して、研究に基づいた分析を提供している。ESRCは、2年前の評価で、UKICEは目標を達成していると評価していた。UKICEは、今回の資金の終了に伴い、Menon氏は高品質な研究を継続することを誓っており、様々な選択肢を検討しているという。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(14) 英国、CERNの科学的な躍進70周年を祝う
2024年9月18日英国の科学界は、CERN(欧州原子核研究機構)での70年にわたる画期的な研究成果と国際協力を称えるために結集した。CERNは、世界有数の素粒子物理学研究センターであり、大型ハドロン衝突型加速器の本拠地である。CERN加盟国によって、今秋、新所長を選出する予定で、University of Cambridge のMark Thomson教授が有力候補となっている。英国は、CERNの創設メンバーであり、第二位の財政支援国である。そしてCERNで行われた画期的な研究成果は、世界を変えていった。CERNの将来は、新しい所長選出によって大きく影響される。著名な素粒子物理学研究者であるThomson教授は、CERNの今後の発展と投資決定のための戦略計画を策定し、すべての加盟国との連携を強化し、CERNのスタッフにとってインクルーシブな文化を構築することを目指して立候補している。
英国は、CERNの70周年を記念し、新たな所長の選出に向けてThomson教授の支持を表明している。Thomson教授は、CERNの将来を形作る重要な役割を担うことが期待されている。
【記事全文(英語)】科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science and Innovation and Technology: DSIT):
https://www.gov.uk/government/news/uk-celebrates-70-years-of-science-breakthroughs-at-cern
(15) 2024年知識交換制度の結果:ラッセルグループの大学は地域成長で行き詰まり
2024年9月18日 第4回知識交換制度(Knowledge Exchange Framework: KEF )の結果によると、英国のRussell Groupに属する大学の中で、地域経済の成長や再生に対して「非常に高い」関与を示したのは、わずか2大学(University of BirminghamとUniversity of Exeter )だけであることが明らかになった。さらに3大学が「高い」と評価されたが、7校は「低い」とされ、King’s College London とLondon School of Economics (LSE)は「非常に低い」と評価された。KEFの「地域成長と再生」指標は、地域開発や再生に関連する収入、特に欧州地域開発基金(European Regional Development Fund: ERDF)からの資金をもとに活動が評価される。EU離脱後、英国はこの基金へのアクセスを失ったため、一部の大学が低評価となった背景にはデータ収集や報告の課題もあると考られている。LSEも、この指標が地域資金に偏っているため、実際の地域貢献が反映されていないと弁明している。新政権となった労働党は、大学が地域経済の成長を促進する役割を重視しており、この指標への政治的な関心が強まる可能性がある。University of ManchesterのAndy Westwood教授によれば、KEFは地域成長を促す活動を測定・促進しようとしているが、現状では優先順位が低いと指摘されています。また、Russell Groupの一部の大学は、地域課題よりも国際的な研究や科学への貢献を優先する傾向があるとも述べられている。KEFの評価を大学の資金配分に結びつける計画はあるものの、その実施は2025-26年以降になる見込みである。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(16) 成績インフレ:最優等学位がパンデミック以前の水準に低下、半数近くは説明不可能
2024年9月19日学生に授与される最優等学位(First )の割合が、パンデミック前の水準に戻ったと、学生局(Office for Students: OfS)のデータが示した。2022-23年には、Firstの学位を取得した卒業生の割合が29.6%に減少し、前年から3.7ポイントの減少となった。これにより、2年連続でFirst の割合が減少したことが確認された。特に、Aレベルの上位の成績で大学に入学した学生が、最も高い割合でFirst を取得しており、AAA以上の成績を持つ学生の47.9%がFirst の学位を取得している。また、Aレベルの成績がDDDの学生でも、First の取得率が2010-11年の6.7%から2022-23年には24.4%と増加している。全体では、2010-11年には15.8%だったFirst の取得率が、2022-23年には29.6%にほぼ倍増したが、そのうち13.4%はOfSの統計モデルでは説明できないものであった。また、First およびUpper Second(上位二等学位)を取得した学生の割合も、2年連続で減少し、2022-23年には77.6%となった。OfSの最高責任者であるSusan Lapworth氏は、大学が成績インフレに対処するために取った措置が功を奏し、成績がパンデミック前の水準に戻りつつあることをは評価するが、依然として2010-11年に比べて倍近い割合でFirstが授与されていること、またその多くが説明できない点を懸念している。
【記事全文(英語)】学生局(Office for Students:OfS):
(17) イノベーションを創出する研究資金制度の多様化を提言
2024年9月19日 専門性がある高等教育機関の団体であるGuildHE*の研究政策部長であるRachel Persad 氏は、小規模な機関が構造的な不利にもかかわらず、世界クラスの研究を行っていると主張した。GuildHEは、2021年の研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)で多くのメンバーが世界的な研究を達成したにもかかわらず、これらの機関はわずかな資金しか受け取っておらず、認知や支援に対する障壁に直面していることを指摘した。Persad 氏は、英国政府に対し、この不平等を是正し、研究資金の多様化と偏りのない助成金配分を求めている。具体的な提案として、まず高等教育イノベーション基金の再構築を求め、すべての機関が安定的な資金を得られるようにすることで、提携やイノベーションを促進するとしている。また、大規模な機関への質関連(quality-related: QR)資金を制限し、余剰分を小規模機関に再分配することで、これらの機関が成長し、インフラを整備できるように提案している。さらに、現在の助成金の基準(機関の評判や研究学位授与権など)は小規模機関に不利であり、より包括的な基準が必要だと述べている。政府は機関間の協力を促進し、資金が地域的に行き渡るようにすべきであり、また新興機関が助成金を申請しやすくすることが重要だとしている。また、Persad 氏は規制改革も訴え、特に芸術などの分野では現在の研究学位授与権(research degree awarding powers: RDAP)の基準が適切ではないと批判し、より柔軟な基準を求めている。Persad 氏は、政府が全ての大学院生に対しても公平な支援を提供する必要があるとし、UKRIのポリシーをすべての学生に適用することを提案している。Persad 氏は、研究とイノベーションの恩恵を英国全体に広げるためには、政府の意図的な取り組みが必要であり、今こそ多様性を活かした研究投資の再構築の機会だと結論付けた。
GuildHE* : 英国の高等教育を代表する公式な団体で、多様性と特色を推進している。67の加盟校には大学、専門機関、公立・私立の教育機関が含まれ、小規模から大規模、地方から都市部まで幅広い構成を持っている。職業・専門教育に特化し、教育、医療、農業、ビジネス、クリエイティブ分野で主要な役割を果たしている。多様な視点を活かし、高等教育全体の課題や機会に対応している
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(18) 18歳入学者数が過去最高を記録、留学生の入学者数の伸びは横ばい
2024年9月19日 大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)によって発表されたデータによると、2023年には英国の18歳の大学入学者数が277,790人となり、前年の270,350人から2.8%増加した。UCASの分析によれば、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの結果発表日から28日後(9月12日)のフルタイム学部コースへの合格者数は498,340人で、昨年の493,940人から0.9%増加しているが、2020年のピークである515,650人よりは3.4%減少している。この増加は英国の18歳によるもので、21歳以上の成人や留学生の合格者数は減少している。成人(21歳以上)の合格者は64,180人で、昨年の66,360人から3.3%減少し、留学生は61,110人で、昨年の61,470人から0.6%の微減である。
その他の主要な結果には以下が含まれている:
【記事全文(英語)】大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):
(19) 大学卒業後5年以内の半数が上級職に従事:NCUBの新調査結果
2024年9月19日 国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)が行った調査によると、大学卒業生の大学生活や就職市場に関する主な結果は以下の通り:
NCUBの最高責任者であるJoe Marshall博士は、英国は重大なスキル不足に直面しており、大学と企業の連携がこの問題の解決に不可欠であると指摘している。また、政府に対し、大学と企業が将来のスキル育成に向けて協力するための政策を求めている。尚、この調査は、Ipsosが2024年8月30日から9月3日にかけて、代表的な1,593名の大学卒業生を対象にオンラインで実施した結果である。
【記事全文(英語)】国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB):
(20) AIアクション・サミットに先立ち、英国が米国にてサミットを主催
2024年9月19日 英国がサンフランシスコで開催するAI安全サミットを主催し、AI開発者がソウルAIサミットで合意した内容を実践する方法について議論する。11月21日から22日に開催されるこのサミットは、2025年2月にフランスで開催されるAIアクションサミットに先立ち、AI安全に関するワークショップやディスカッションを行う。今年初め、米国、EU、韓国、中国、UAEなどからの16企業が、次回サミットまでに最新のAI安全フレームワークを発表することに合意した。これらのフレームワークは、悪意のある者による誤用など、最も深刻な潜在的なAIリスクに対処するための計画を定める。企業はまた、潜在的なリスクが十分に軽減できない場合は、モデルの展開や開発を停止することに合意した。このサミットでは、AI企業がAI安全フレームワークの開発を支援するためのアイデアや洞察を共有する場となる。参加者は、開発者向けの安全計画、AIモデルの安全評価、透明性、リスク閾値の設定方法など、会議での議論の潜在的な分野について意見を共有するよう呼びかけられている。AIガバナンスセンターと共同で開催される英国のAI安全研究所(AI Safety Institute : AISI)主導の議論は、フロンティアAI安全コミットメントがどのように実践されているかをより深く理解するのに役立つ。英国のAISIは、AI安全に特化した世界初の国家支援機関であり、英国はAISIの国際ネットワークの拡大においてグローバルなリーダーシップを続けている。この会議は、参加者がコミットメントの実践における具体的な成功事例についてアイデアを交換し、AIアクションサミットに先立って開発者がAI安全フレームワークを洗練させるための透明で協調的なアプローチを確保するためのフォーラムとして設計されている。これは、米国政府が昨日、国際AI安全研究所ネットワークの最初の会議を発表したことを受けたものである。英国は昨年11月にブレッチリーパークで世界初のAI安全研究所を設立し、それ以来、世界各国が独自のAI安全テスト機関を設立するために競争している。米国が主催する会議は、AI安全研究所または同等の政府支援科学機関の各国のAIに関する技術専門家を結集し、ネットワークの優先作業分野を調整し、AI安全に関するグローバルな協力を推進する。
【記事全文(英語) )】科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science and Innovation and Technology: DSIT):
(21) ARIAが5,000万ポンドの予算を主導する新しいプログラムディレクターを募集
2024年9月20日ハイリスク、ハイリターンの研究を支援する英国の高等研究発明局(Advanced Research and Invention Agency: ARIA)が、プログラムディレクターを募集している。今回の募集は第2回目でプログラムディレクターは、各5000万ポンドの予算で「未開拓領域」の研究をリードする。ディレクターは、来年4月から開始される独自の「科学的ビジョン」に基づいてプログラムを設計し、ARIAに3年間参加する。各プログラムディレクターは、5000万ポンドの予算でプロジェクトのポートフォリオを選択・資金提供し、「飛躍的な進歩を引き出し、プログラムの目標を前進させる」ことを目指す。ARIAは、研究者にとっての「形成期」において資金提供プログラムを作り上げるというめったにない機会であることを強調した。ARIAは、2021年に保守党政権の下で設立された。ARIAの最初のプログラムディレクターは、ARIAが飛躍的が期待される分野であると考える気候、ロボット工学、神経インターフェースなどの「機会空間」を創出した。応募は10月7日までだが、ARIAは研究者に早期応募を促し、9月23日の「早期締め切り」を設定している。ARIAは、世界に影響を与え、「重大な、意味のある」問題を解決することに「積極的で自発性に富む」技術専門家の応募を奨励している。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(22) EUからの提案:労働党とEUの関係改善の一環として若者向け移動プログラム
2024年9月20日若者のEUと英国間の移動を許可する新たな提案が、数週間以内に英国政府に提示される予定である。これは、労働党がEUとの関係の「リセット」を目指す中で、重要な最初の試金石と見なされている。情報筋によれば、EU委員会委員長であるUrsula von der Leyen氏の4月の提案を基にした新しいバージョンの草案がすでにEU加盟国間で議論されており、来週ブリュッセルでの作業グループに提出される予定である。この提案には、学生が通う大学の学費を政府が負担する4年間の学生交換プログラムを撤廃する可能性も含まれている。これは英国の大学は財政的に厳しいため、それを受け入れるのは難しいと述べている。仮に来週までに提案が最終化されれば、加盟国は欧州委員会に英国への新たな提案を指示する予定である。前保守党政府は今年初めに同様の提案を拒否したが、EU当局は新しい労働党政権が再検討することを期待している。再び拒否された場合、この英国政府が望む防衛や農業に関する新しい合意が危険にさらされる可能性があると、EU側は警告している。一部の欧州の外交官は、Starmer首相がまだ英国政府の若者移動制度に関する立場を逆転させていないことに「失望」しており、防衛や貿易についての複雑な交渉を始める前に、この問題を解決するべきだという意見である。特に、英国が安全保障や農業に関する合意で何を求めているか、まだブリュッセルに提案していない点を批判し、関税同盟への再加入などの大きな変化を排除している首相の姿勢にも不満を抱いている。また、英国がEUとの大規模な合意を結ぶには影響力が不足しているとも指摘され、「EUと英国の関係を理解する鍵とは、我々が英国に対してあまり関心を持っていないことに対して、英国はEUに対して非常に関心を持っていることである。特に2023年の北アイルランド貿易協定の取引の関するウィンザー協定後はそうだ」と、ある外交官は語った。労働党のStarmer 首相は、EUとの貿易関係を大幅に強化すると約束しており、防衛と安全保障に関する協定を優先し、農業製品に関する合意は長期的な目標としている。欧州委員会が4月に提案したビザ制度では、EUおよび英国の18歳から30歳の市民が最大4年間お互いの国に滞在できるようになるが、学生が通う大学の国内授業料を支払うことも提案されている。EUの一部の国々は、ビザの有効期間を4年から2年に短縮することで、交渉の行き詰まりを打破できると考えている。
【記事全文(英語)】Guardian紙:
https://www.theguardian.com/world/2024/sep/20/eu-youth-mobility-proposal-uk
(23) UKRI:生成AI活用と評価に関する政策発表
2024年9月23日UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、研究資金申請および評価の過程における生成AIの使用に関する政策を公表した。生成AIは、テキスト、画像、ビデオ、オーディオ、コードなどの新しいコンテンツを作成するために使用できるAIの総称である。これは現在急速に発展している技術であり、研究とイノベーションにおけるそれぞれの分野や背景などから、創造性やアイデアの発展を促進し、神経発達障害を持つ人々にとって便利なツールを提供し、言語障壁を減らすなどの機会と利益をもたらす可能性がある。しかし、生成AIは研究とイノベーションにおいても潜在的なリスクを伴っており、申請や評価の過程における誠実性を損なう可能性がある。誠実性の維持は、研究とイノベーションシステムにおける正直さ、厳格さ、透明性、オープンなコミュニケーションの価値観を維持するために不可欠であり、研究とイノベーションコミュニティはこれらの価値観に動機づけられている。しかし、結果を求めすぎたり、限られた資金の競争において不正行為を誘発する可能性がある”。誠実性を維持することは、生成AIツールの使用に関しても、誰もが果たすべき役割がある共同の取り組みでもある。この政策は、資金申請および評価プロセスにおける生成AIの使用に関するUKRIの立場を定めている。これは、UKRIが2023年9月に署名した、資金提供の申請と評価における生成AIツールの使用に関する共同出資者声明に基づいている。
この政策は、UKRIとステートメントに署名している他の英国の研究助成機関が共有する価値観に沿っており、申請および評価プロセスに関わるすべての人、つまり申請者、評価者、UKRIとしての資金提供者の責任を規定している。
研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)のディレクターであるRebecca Fairbairn氏は、この政策は、今後数か月以内にパネルとともに開発するREF 2029の生成AIに関する政策の検討に役立つだろうと語っている。
【記事全文(英語)】UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/use-of-generative-ai-in-application-preparation-and-assessment/
(24) 経済学者の提案:全大学卒者に週10ポンドの徴収を
2024年9月24日2024年の労働党年次会議にて、London School of Economics and Political Science (LSE)の経済史学科の経済学者であり、過去2人の財務大臣の経済顧問を務めたTim Leunig氏は、すべての卒業生が収入に関係なく毎週10ポンドを支払うべきだと提案し、大学の資金制度を安定させるための抜本的な改革が必要だと述べた。Leunig氏はまた、卒業生を雇う企業に1%の「サーチャージ」を課し、企業も高等教育の恩恵を享受しているため、費用を一部負担すべきだと主張した。この収入により、最大11,000ポンドの生活費補助が復活を可能にし、学生の負担が軽減されるとしている。また、政府による大学への年間2,000ポンドの追加資金も提案した。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
関連記事①:高等教育政策研究所
2024年9月26日HEPIはTim Leunig氏著書による“Undergraduates fees revisited“という学生ローン制度の改革に関する報告書を発表した。その中でTim Leunig氏は、10の提案を発表した。主な内容は:(上記の内容以外で)
などを含んでいる。
これにより、大学の資金が増加し、貧しい家庭出身の学生の借金が減少することが期待される。Leunig氏は、この提案が財政的に中立であり、学生、卒業生、大学すべてに利益をもたらすと主張している。複数の教育者や専門家も、この提案が現行の不公平な学生ローン制度を改善し、特に低所得層の学生を支援する重要な改革だと評価している。
【記事全文(英語)】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):
https://www.hepi.ac.uk/2024/09/26/undergraduate-fees-revisited/
関連記事②:国立大学産業センター
2024年9月26日NCUBはHEPIの報告書で提案されている、卒業生を雇用する企業に対して国民保険の割増金を課すという案は、英国の経済成長と企業投資を阻害する可能性があると警告している。企業はすでに教育に貢献しており、さらに税金を増やせば、企業が教育に投資することをためらう可能性がある。
【記事全文(英語)】国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB):
(25) 科学担当大臣は新しいミッション主導型の研究開発基金を示唆
2024年9月24日Patrick Vallance科学担当大臣は、2024年の労働党年次党大会で、労働党の五つの「ミッション」に基づく新しい研究資金の配分方法を検討していると述べた。これらのミッションには、英国をグリーンエネルギーのリーダーにすること、安全な都市を作ること、経済成長を促進することが含まれている。Vallance氏は、これらのミッションに対して研究開発(R&D)の重点分野を特定し、それに基づいて資金を割り当てることが重要だと強調した。Vallance氏は、専門特別委員会(ミッションボード)が解決すべき具体的な問題を定義し、それに対して企業や学界、慈善団体が資金を活用して研究を進めることを提案した。また、資金の出資先については、特定の予算からの資金配分を明言しなかったが、資金メカニズムの設計が必要であると認識している。一方、科学大臣のKyle氏は労働党が政権を取った直後の社会不安が長期目標に影響を与える可能性について懸念を示し、国家データライブラリやライフサイエンスアクションプランの重要性を強調した。これらのプロジェクトには、集中して取り組む必要があると語っている。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(26) UKRIのCEOの発言:平等、多様性、包容性が変革をもたらす
2024年9月25日 UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)のCEOであるOttoline Leyser氏は、研究とイノベーションのシステムを強化するためには、評価される内容と人々において多様性を持つ必要があると述べている。Leyser氏は、平等(または公平)、多様性、包摂(Equality, Diversity and Inclusion:EDI)が重要であり、これが創造性やイノベーションを促進すると強調している。現在の研究文化では、多様性が十分に活用されていないことがデータで示されており、白人の主任研究者は黒人主任研究者よりも助成金の獲得率が高いなどの不平等が存在している。従来の一律なキャリアパスに依存するのではなく、多様なキャリアパスを提供する必要があり、そのためにUKRIは「研究とイノベーションの履歴書」という新しい形式のCVを導入する。さらに、審査プロセスを改革し、多様性を支える評価基準を構築するため、匿名化審査などの試みを行っている。
【記事全文(英語)】Research Professional News:
(27) 英国、次期EU 研究イノベーション計画に対する姿勢を表明
2024年9月26日政府は、2024年に「ホライズン・ヨーロッパ」への参加を開始したことを背景に、次期研究・イノベーション枠組みプログラムである「FP10」の方向性に関する意見をまとめた政策方針文書を発表した。FP10は、「ホライズン・ヨーロッパ」の後継プログラムであり、ヨーロッパの安全保障、持続可能な繁栄、競争力を支えるための卓越した研究とイノベーションを活用することを目的としている。英国は長年にわたる提携と共有する専門知識、共通の価値観に基づき、EUとの協力を継続している。気候変動やクリーンエネルギー移行、経済安全保障の支援など、英国とEUの科学者やイノベーターは重要な社会的課題に取り組んでおり、これらの協力を強化したいとしている。英国はFP10への参加に強い関心を持ち、特にこのプログラムが英国の研究コミュニティに対して開かれ、関連性があることを期待している。
UK Position Paper on the 10th EU Research and Innovation Framework Programme : https://assets.publishing.service.gov.uk/media/66f1800c554440e6da17e2a5/uk_position_eu_research_and_innovation_framework_programme.pdf
【記事全文(英語)】科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science and Innovation and Technology: DSIT):
関連記事:Science Business*:
2024年9月26日 英国政府は、2028年に開始されるEUの次の研究・イノベーションプログラム(FP10)への参加に興味を示しており、英国政府の新しい政策方針文書では、EUの枠組みプログラムに残ることに対する意欲が表明されている。この文書は、科学者たちにとっての安心材料として受け取られ、特に2021年から2024年までのEU離脱による不在からの復帰を目指す姿勢が強調されている。文書では、英国がFP10に参加する可能性について「開放的で関連性があり、研究コミュニティや納税者にとって良い価値を提供する場合に関心を持つ」と述べられている。研究団体はこの政府の姿勢を歓迎し、科学と協力の力に対する熱意が感じられるとして述べている。英国政府はFP10について「進化を支持し、革命は望まない」とし、既存の枠組みの継続性が理解と関与を助けると述べている。また、FP10の予算拡大に対して慎重な姿勢を示し、第三国の参加のコストを考慮する必要があると警告している。さらに、セキュリティ研究開発においてEUとの協力を強調し、共同の利益として安全保障が重要であることを指摘している。最後に、FP10では研究の卓越性に基づいた資金配分を支持し、性別を超えた多様性の要件も考慮されるべきとしている。
【記事全文(英語) 】Science Business:
https://sciencebusiness.net/news/fp10/uk-signals-interest-joining-fp10
(28) 半導体企業の成長を新たに支援、100億ポンド規模の英国産業の成長を後押し
2024年9月26日 英国の科学担当大臣Patrick Vallance卿は、半導体関連の16のプロジェクトに対して、UKRIの一部であるInnovate UKが提供する1150万ポンドの資金を発表した。この支援は、スマートフォンや医療技術など、日常生活に欠かせない技術の革新を推進し、経済成長を促進することを目的としている。また、英国の半導体産業は、現在100億ポンド規模であり、2030年までに170億ポンドに成長する可能性があるといわれている。これにより、英国は半導体製造の拡大とサプライチェーンの強化を目指す。プロジェクトの例としては、Vector Photonics社のガリウム窒化を利用してブルーレーザー技術を向上の開発や、Quantum Advanced Solutions社の量子ドット材料を活用して高性能な赤外線センサーを開発するなどが挙げられる。
【記事全文(英語) 】科学、イノベーション、テクノロジー省(Department for Science and Innovation and Technology: DSIT):
(29) 成功か衰退か、英国は明確な選択を迫られている
2024年9月30日英国大学協会(Universities UK: UUK)は新しい報告書「Opportunity, growth, and partnership: a blueprint for change from the UK’s universities: 機会、成長、パートナーシップ:英国の大学からの変革の青写真」が発表され、大学が経済成長に貢献し、機会を広げるための改革案が示された。この報告書は、大学の専門家や外部の専門家によって作成されており、大学が障壁を取り除き、未来の医療従事者を育成し、ネットゼロの目標を支援するための具体的な提言が含まれている。報告書は、政府に対し大学の財政を安定させ、直接的な公的資金を増やすよう求めている。現在、英国の大学教育に対する政府の負担はわずか16%で、先進国の中で最も低い水準です。大学は、学生と納税者の間で教育費がより均等に分担されるよう、直接的な公的資金の増加を求めている。この提案では、大学が地域のビジネスや商工会議所と連携し、地域経済の成長に寄与する重要性も強調されている。また、大学の効率化を進め、高等教育への進学率が低い地域の学生への機会を増やすことが提案されている。大学は、持続可能な財政基盤を確保するために政府との新たなパートナーシップを構築したい意向を示している。この改革が成功すれば、大学はイギリスの経済成長に対して重要な役割を果たすとしている。
Opportunity, growth and partnership: https://www.universitiesuk.ac.uk/sites/default/files/field/downloads/2024-09/opportunity-growth-and-partnership-a-blueprint-for-change_0.pdf
【記事全文(英語) 】英国大学協会(Universities UK: UUK):https://www.universitiesuk.ac.uk/latest/news/uk-faces-clear-choice-between-success-or
関連記事 Guardian 紙*
2024年9月30日 英国大学協会(Universities UK: UUK)が政府に対し、EU離脱後のEU学生の受入れ再開を求めている。特に、エラスムス学生交流プログラムの復活が検討されているが、大学側は移民問題に関する「有毒な」議論を避ける姿勢を示しています。大学関係者は、EUからの優秀な学生の流入が失われたことを残念としているが、国内の移民問題が政府に悪影響を及ぼすことを懸念している。英国首相であるKeir Starmer氏は、EUとの初の二国間会談に向けて、若者向けの移動プログラムについて柔軟な姿勢を見せている。会談では、防衛や安全保障に関する協力や、より広範な関係の再構築が議題となる予定である。大学側は、エラスムスプログラムの代替として、イギリスのチューリングスキーム(Turing Scheme: EU離脱後に英国でエラスムスの代替となったプログラム) の要素を利用する可能性についても言及している。大学は、政府に対して具体的な要望を出さず、状況を見守るスタンスを取っている。学生の交流を促進することは重要ではあるが、大きな政治の事情に巻き込まれることに対しては懸念を抱いていることを述べた。
【記事全文(英語) 】Guardian 紙: