JSPS London Materials

Home > JSPS London Materials > UK HE Information > 2025年8月英国高等教育及び学術情報


UK HE Information

2025年8月英国高等教育及び学術情報

2025年9月17日

(1) 英大学の言論の自由を保護する新たな法律の施行

(2) 公務員インターンは労働者階級から

(3) 大学の危機は国家の危機 ― 再生の鍵は高等教育にあり

(4) Springer Nature社、オープンアクセスへの移行を加速

(5) スコットランド:貧困層出身の若者による進学が過去最多に

(6) Royal Society、2026年にすべての学術誌をオープンアクセス化へ

(7) 英国政府:電力需要を削減する新たな研究開発への取り組み

(8) イングランド北部の大学、5400万ポンドのグローバル・タレント基金から除外

(9) 政党リフォームUKの高等教育政策とその影響

(10) Aレベルの成績評価、コロナ禍前の水準に回帰へ

(11) 大学の財政は政策立案者にも理解されていない?学長が指摘する英国高等教育の危機的実情  11

(12) 大学生の必要生活費、現行の学生ローンでは半分しか賄えない

(13) 高齢者の研究除外は「非倫理的」であり「科学的卓越性への脅威」

(14) 大手出版社の「オープンアクセスの修正」に疑問 13

(15) 英国の18歳、大学・カレッジへの受け入れ数が記録的な高水準に

(16)労働党、大学の破綻を防ぐため授業料の値上げも選択肢から除外せず

(17) AI研究所、国防分野の強化へ:政府の要求に応じるも組織は混乱

(18) 研究開発費は2021年以降28億ポンド減少、経済成長の野心に暗雲

(19) 英国首相のAIアドバイザーが任命される

(20) 英国高等教育機関はどう対応するか? 留学生の目的地としての地位を保てるか? 海外卒業生を優遇しすぎたか? 

(21) 英国宇宙庁、官僚主義の削減を目指し政府機関へ統合

(22) 英国政府、ガザの9人の学生に留学の道を開く:奨学金で避難を支援

(23)卒業生は後悔していない!英国の大学に関する国民の認識と現実のギャップ

(24) 英国ビザ費用の高騰:海外からの研究者に避けられ、がん研究が数年停滞

(25) 科学者らが提言、AI学習のためにすべての研究データを利用可能に

(26) ダーリントンに設立される英国RNAバイオファウンドリー

(1) 英大学の言論の自由を保護する新たな法律の施行

2025年8月1日に施行された本法律は、学生、教員、および外部の講演者が、検閲を恐れることなく合法的な意見を表明できる環境を確保することを目的としている。

この法律に基づき、大学には学問の自由を積極的に推進する義務が課された。もし合法的な言論が抑圧された場合、監督機関である学生局(Office for Students: OfS)が調査を行い、大学が規則に違反していると判断されれば、高額な罰金を科すことが可能となる。実際に、University of Sussexは以前に言論の自由を守らなかったとして585,000ポンドの罰金を科されており、今後の罰金はさらに高くなる可能性があると警告されている。

さらに、大学はハラスメントや虐待の被害者に課された守秘義務契約(Non-Disclosure Agreement: NDA)の使用を禁止し、被害者を保護を強化した。

 【英文記事】教育省(Department for Education:DfE)

https://www.gov.uk/government/news/free-speech-rules-to-protect-academic-freedom-come-into-force

 

(2) 公務員インターンは労働者階級から

2025年8月1日、英国政府は中央省庁に、より多くの労働者階級出身の若者を登用するための改革の一環として、大学生向けの主要なインターンシップ制度を、経済的に恵まれない家庭の学生に限定する方針を発表した。

  • 対象となるのは、卒業まで残り2年以内の学部生(3年制なら2・3年生、4年制なら3・4年生)で、親が14歳の時に就いていた職業に基づいて「低所得家庭出身かどうか」が判断される。
  • この夏季インターンシップは6~8週間で、週給430ポンドの有給プログラム。2026年夏から開始予定で、約200人の学生が参加見込み。
  • インターンで高評価を得た学生は、国家公務員の幹部候補採用プログラムの選考終盤に直接進める優遇措置を受けられる。

なお、政府は2030年までにFast Streamの配置の半数をロンドン以外に移す方針も掲げている。

【英文記事】BBC News: https://www.bbc.co.uk/news/articles/c3ez3v9v8jqo

 

(3) 大学の危機は国家の危機 ― 再生の鍵は高等教育にあり

2025年8月4日、国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)が英国下院教育委員会の「留学生と大学資金」に関する証拠提出に基づいてまとめた内容が以下の通り。

英国の大学は、次世代の人材育成、国際的に評価の高い研究の推進、そして地域経済の中核として、社会に多大な貢献をしてきた。だが今、その根幹を支える財政が揺らいでいる。経済的・社会的な転換期にある英国にとって、大学の安定性はかつてなく重要だが、近年の政策と資金構造が大学の持続可能性を脅かしている。

英国の大学は、10年以上にわたって「少ない資金で多くを担う」状況に置かれてきた。特に学部課程における国内学生の授業料は2012年以降凍結されており、実質的な価値は当時の6割程度にまで下がっている。研究分野でも、公的資金だけでは研究実施に必要なコストをまかないきれず、2022/23年度には大学が使った研究費用のうち、国から得られた資金は約69%に過ぎなかった。

このような資金不足を補う手段として、多くの大学が頼ってきたのが留学生からの授業料収入である。留学生は年間で300億ポンド以上を英国経済にもたらし、大学の収益の柱となってきた。

しかし近年、政府の移民政策の影響で、英国は留学先としての魅力を失いつつある。特に修士・学部生の帯同家族に対する制限や、卒業ビザ(卒業後の就労ビザ)の短縮といった措置は、学生数の減少に直結している。すでに、授業料を支払う留学生は15%減少しており、今後さらに12,000人規模の減少が見込まれている。

さらに、政府が提案している「留学生授業料収入への6%課税」は、大学の財政に直接的な打撃を与えると考えられる。これは、大学が最も必要としているときに、重要な財源を削ることになる。

 留学生数の減少は、大学の財政悪化を招き、その結果として授業料の値上げや学科の閉鎖といった対応が取られる。実際、すでに多くの大学が高コストなSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の学科を閉鎖しており、これは国家の産業戦略やスキル育成にも悪影響を及ぼしている。

この流れが続けば、「英国の教育の質」と「研究開発力」という二本柱が共に揺らぐ事態になりかねない。

こうした危機に対し、NCUBは政府に以下のような対応を求めている:

留学生授業料への6%課税提案の撤回

  • 留学生を移民統計から除外し、その経済・社会的貢献を再評価すること
  • 大学を地域経済戦略に組み込み、地域ニーズに応じた教育提供を促進
  • 大学と企業の連携支援策(HEIFなどの維持、EU資金の代替支援、民間主導研究の促進など)
  • 高コストで国家的に重要な分野(例:先端製造、デジタル、医療)に対する重点的な公的支援の再導入
  • 教育省(DfE)、科学技術省(DSIT)、ビジネス・貿易省(DBT)、財務省(HMT)が連携した全国的高等教育戦略の策定

今後の英国の成長を支えるためには、大学を「経済と社会の中核インフラ」として再評価し、戦略的に支える必要がある。人材育成・研究・産業連携の中枢として、大学は英国の国際競争力を維持する鍵を握っている。

NCUBは今後も、大学と企業の連携状況や財政圧力の影響についての調査・報告を続けていく。大学、企業、政策担当者が一体となって行動することで、英国の大学を再び強く、革新的で、国家成長の原動力とすることが可能だ。

【英文記事】国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)

https://www.ncub.co.uk/insight/securing-the-future-of-uk-universities-why-stability-matters-for-growth-innovation-and-local-economies/

 

(4) Springer Nature社、オープンアクセスへの移行を加速

2025年8月4日、Springer Nature社は、同社のジャーナルにおけるオープンアクセス(Open Access: OA)への移行がトランスフォーマティブ契約によって加速していると発表した。

最新のオープンアクセス報告書(7月31日公開)によれば、トランスフォーマティブ契約とは、出版社が研究機関と複数年にわたる価格を設定し、機関所属の研究者が購読制限のあるジャーナル記事を閲覧しつつ、研究論文をオープンアクセスで発表できるようにする契約形態を指す。これは購読期間中に限っては、閲覧・掲載にかかる費用負担から解放されるという仕組みである。

2024年には、この契約により「ゴールドオープンアクセス」論文の発表数が、そうでない論文発表オプションと比べて10倍に増加した。トランスフォーマティブ契約のないゴールドOAは論文が正式版と同じプラットフォーム上で即時に無料公開されるモデルで、論文処理費用(Article Processing Charge: APC)が伴うことが多い。

Springer Natureは2024年に22件の新たなトランスフォーマティブ契約を締結し、現在では世界3,700以上の機関と80件を超える契約を結んでいる。2015年以降、これらの契約は年平均42%の成長率で増加している。

同社の主要研究論文の半数がオープンアクセスで発表されており、2024年には24万本に達し、前年から31%の増加となった。最高出版責任者は、「2021年に掲げた目標を達成できたことを誇りに思う」と述べ、すべてのSpringer Nature所有ジャーナルで論文受理時に即時オープンアクセスを選択できることを目指しているとしている。

【英文記事】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-world-2025-8-transformative-deals-accelerating-open-access-says-publisher/

 

(5) スコットランド:貧困層出身の若者による進学が過去最多に

2025年8月5日、大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)とスコットランド資格機構(Scottish Qualifications Authority:SQA)が発表した統計では、スコットランドでは今年、17歳と18歳の若者17,350人が大学またはカレッジへの進学先を確保しており、昨年の16,650人から4.2%増加した。

特に、最も貧困度の高い地域(SIMD Q1)*に住む若者の進学者数は2,060人と、昨年の1,950人から5.5%増加し、過去最多となった。

格差は依然として大きいが、わずかに改善の兆しが出てきた。

  • 最も貧困な層(SIMD Q1)の18歳のうち、16.0%が進学先を確保。
  • 最も裕福な層(SIMD Q5)では43.6%が進学。

この差は依然大きいものの、前年より格差がわずかに縮小した。

なお、UCASの統計にはスコットランドの高等教育のすべてが含まれているわけではない。スコットランドでは、高等教育の約3分の1がカレッジで提供されるフルタイム課程であり、これらの多くはUCASを通さずに出願されるため、今回の数字には反映されていない。

その他の注目点

  • 全体のスコットランド出身合格者数は31,850人で、昨年(31,970人)から120人減少(-0.4%)。これは主に19歳以上の出願者減少によるもの。
  • 第一志望で進学先を確保した人は29,840人(全体の93.7%)。
  • 留学生の合格者数は3,660人で、昨年より5.4%増加。うちEU以外からは2,990人、EUからは670人。

 スコットランド多次元貧困指標(Scottish Index of Multiple Deprivation: SIMS)*: この指標では、貧困を所得だけでなく、健康、教育、生活環境など多面的に評価し、Q1(第1クインタイル)が最も貧困度の高い地域、Q5(第5クインタイル)が最も裕福な地域を示している。

【英文記事】大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/record-number-of-scottish-young-people-placed-at-university-or-college-via-ucas

 

(6) Royal Society、2026年にすべての学術誌をオープンアクセス化へ

2025年8月6日、Royal Society(英国王立協会)は、2026年から同協会のすべての学術誌を完全オープンアクセス化する計画を発表した。これは、Subscribe to Open(S2O)」モデルを用いるもので、世界初の査読付き科学誌である「Philosophical Transactions A/B」など、8誌すべてが対象である。

 “Subscribe to Open”モデルとは?

  • S2Oは、図書館が現行の定期購読を継続すれば、その年のジャーナルをオープンアクセス化する仕組み。
  • 読者・著者ともに無料で利用可能になり、従来の著者による論文処理費用(Article Processing Charge: APC)も不要となる。
  • 十分な数の図書館が購読を維持すれば、1年ごとにオープンアクセスが成立する。

今後の展開

  • このモデルは2026年から開始し、以降も毎年継続の意思確認を行いながら進められる。
  • 同時に、各国の機関・図書館とのRead and Publish契約(購読と出版の包括契約)も推進。
  • 例えば2025年初頭には、ブラジルの高等教育機関支援機構(Coordenação de Aperfeiçoamento de Pessoal de Nível Superior: CAPES )との契約により、CAPES所属研究者はAPC不要でRoyal SocietyのOA誌に投稿可能になった。

【英文記事】英国王立協会(Royal Society):

https://royalsociety.org/news/2025/08/subscribe-to-open/

 

(7) 英国政府:電力需要を削減する新たな研究開発への取り組み

2025年8月7日, 英国政府は、人工知能(AI)とデジタル技術を活用して、電力需要のピークシフトを実現する新たな研究開発を開始した。科学閣外担当大臣のPatrick Vallance氏は、英国の研究者や企業に対し2030年までにピーク電力需要を2GW(150万世帯分)削減する革新的技術の開発を呼びかけている。

この取り組みは、政府の「R&Dミッション加速プログラム(Missions Accelerator Programme)」の第1弾として位置づけられており、初年度に400万ポンドが投じられる。目的は、家庭の電力使用を効率化することで、長期的には電気代の低減、エネルギー安全保障の強化、化石燃料依存の削減につなげることにある。

 英国では、夕方などのピーク時間帯にガス火力発電所が稼働することで、コストや環境負荷が増大している。今回の取り組みでは、AIとデジタル技術を用いて需要を予測・管理し、柔軟なエネルギー利用を促す。

想定される技術には以下のようなものが含まれる:

  • AIによる需要予測:スマートメーターや天候、テレビ視聴状況などのデータを用い、数日前から消費電力を予測。
  • エネルギーの自動制御:再生可能エネルギーが豊富で安価な時間帯に、建物の冷暖房を自動制御。
  • EVを蓄電池として活用:電気自動車を「移動式バッテリー」として使い、安い時間に充電し、必要なときに電力を供給。

UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)とエネルギー安全保障・ネットゼロ省(Department for Energy Security & Net Zero: DESNZ)が共同で主導。Digital CatapultやEnergy Systems Catapultなど、英国各地の研究機関や企業が連携する。エネルギー規制機関Ofgem、国家系統運用者NESO、National Gridも支援を表明した。

 【英文記事】科学・イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)

https://www.gov.uk/government/news/lord-vallance-calls-on-tech-experts-to-design-ways-to-help-reduce-electricity-bills

 

(8) イングランド北部の大学、5400万ポンドのグローバル・タレント基金から除外

2025年8月6日、政府は、世界中から優秀な研究者を呼び込む目的で、総額5400万ポンドの「グローバル・タレント基金(Global Talent Fund)」を12の大学・研究機関に配分したが、その中にはバーミンガムとグラスゴーの間に位置する北部イングランドの大学が一つも含まれていなかった。

この資金は、Oxford, Cambridge, Imperial College Londonといった「ゴールデントライアングル」大学のほか、イングランド南部の大学などに配分された。これに対して、University of Manchester やDurham University など、研究実績のある北部の大学が対象外となったことに批判が集中している。

下院科学・技術委員長である労働党のChi Onwurah氏は、選定基準の不透明さと地域間格差に疑問を呈し、科学閣外担当大臣であるPatrick Vallance氏に説明を求めている。また、シンクタンク「Northern Powerhouse Partnership」は、情報公開法に基づき入手した選定基準が「恣意的かつ一貫性に欠ける」と批判した。

政府は「選定はすべての英国諸地域からの応募に基づき、明確な指標で行った」と説明しているが、北部地域の研究機関や関係者からは「成長を掲げる政策に逆行する」との声が高まっている。

【英文記事】Guardian:

https://www.theguardian.com/uk-news/2025/aug/06/north-of-england-universities-miss-out-talent-fund

(参考:https://www.gov.uk/government/news/leading-lights-of-uk-research-spearhead-search-for-worlds-best-talent 2025年7月18日)

 

(9) 政党リフォームUKの高等教育政策とその影響

2025年8月8日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)がブログ記事「With Reform UK on the rise, what impact would their higher education policy have?(リフォームUKの台頭する中、どのように高等教育政策に影響を与えるのか)」を発表した。最近、選挙や世論調査で勢力を拡大し、政権を取る可能性がある政党、リフォームUKは、高等教育分野への影響を具体的に見極めようとしている。2024年のマニフェストには詳細は少ないが、以下の提案が含まれている。

  1. 留学生の扶養家族を制限する
  2. 全ての大学で学部課程を2年に短縮
  3. 学問の自由を損なう大学への資金削減
  4. 学生ローンの利子廃止

加えて、ITVのインタビューを通じて、STEM(理工系)専攻の授業料を無料化する意向も示された(マニフェストには明記されていないが、過去のイギリス独立党(United Kingdom Independence Party:UKIP、リフォームUKの党首Nigel Farage氏が以前党首と務めていた政党) マニフェストにも存在。

【英文記事】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)

https://www.hepi.ac.uk/2025/08/08/the-true-cost-of-the-governments-proposed-levy-on-international-students/

 

(10) Aレベルの成績評価、コロナ禍前の水準に回帰へ

2025年8月11日、イングランドのAレベル成績は、コロナ禍で学校閉鎖や試験中止が起きて以来、初めてパンデミック前の2019年とほぼ同等の水準に戻ると予想されている。今年のAレベル受験者は、試験期間中に大きな混乱を経験しなかった最初の学年となる。

Buckingham UniversityのAlan Smithers教授は、今年の成績は昨年の水準に近いものになるだろうと予測している。昨年は、A*〜Aの割合がパンデミック前をわずかに上回っており、今年もその傾向が続く可能性がある。

全体としてAレベルの受験者数は減少しているものの、ビジネス学や経済学といった実用的な科目が歴史のような伝統的な科目を上回る人気を集めている。数学は依然として最も人気のある科目で、志願者数は前年比4%以上増加した。

一方で、英語文学、フランス語、ドイツ語は志願者数が減少している。

大学側は、海外からの出願者数が減少したため、定員を埋めるために積極的な姿勢を見せている。University of Cambridgeの担当関係者は、わずかに必要な成績に届かなかった学生(例えば、AAAが必要なところでAABだった学生)でも、合格する可能性が非常に高いと述べている。

【英文記事】Guardian:

https://www.theguardian.com/education/2025/aug/11/a-level-results-in-england-expected-to-return-to-near-pre-pandemic-levels

 

(11) 大学の財政は政策立案者にも理解されていない?学長が指摘する英国高等教育の危機的実情

2025年8月11日、英国の大学が財政難に直面する中、City St George’s, University of LondonのAnthony Finkelstein学長は、大学の財政運営の複雑さが、政策立案者を含む多くの人々に理解されていないと警鐘を鳴らしている。

同氏によると、大学は「大規模で複雑な組織」であり、年間売上高は大きいものの、利益率は非常に薄く、常に収支均衡に近い状態で運営されている。さらに、大学は法的には「公的機関」と分類される一方で、実態は「独立した慈善団体」として機能しており、その運営形態は多くの誤解を招いている。

英国の大学は、政府からの資金が年々減少し、今や政府は「少数の資金提供者」に過ぎない。その結果、大学は運営資金を自ら生み出す必要に迫られている。

大学の主な収入源は、学部教育ではなく、留学生や大学院生から得られる「規制のない」授業料である。Finkelstein氏は、研究活動や学部教育が常に赤字であり、地域貢献や企業との連携といった活動も、ほとんど資金提供を受けていない現状を指摘している。

一方、最大の経費項目は教職員の給与であり、財政難を受けて多くの大学でコスト削減策が実施されている。これにより、高等教育セクター全体で最大1万人の雇用が失われる可能性があると予測している。

【英文記事】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-universities-2025-7-policymakers-don-t-get-he-finances-says-university-leader/

 

(12) 大学生の必要生活費、現行の学生ローンでは半分しか賄えない

2025年8月12日、高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)、TechnologyOne*およびLoughborough Universityの研究機関CRSP(Centre for Research in Social Policy)が共同で発表した報告書によると、英国の大学生が社会的に容認される最低限の生活水準を維持するには、多くの費用が必要であることが明らかになった。特に、初年度の学生は、ノートパソコンの購入や新入生歓迎会など、一度きりの「初期費用」がかかるため、他の学年の学生よりも高い生活費を要する。

報告書は、地域によって生活費が大きく異なることを強調している。

  • 初年度の年間生活費:
    • イングランド: 約2万1,126ポンド
    • ロンドン: 約2万4,900ポンド(家賃が費用のほぼ半分を占める)
  • 3年間の総生活費(学費を除く):
    • イングランド(ロンドン以外): 約6万1,000ポンド
    • ロンドン: 約7万7,000ポンド

しかし所得の低い世帯向けの最大支援額でも、この費用を十分に賄うことは不可能。

  • イングランド: 最大学生ローン(年間1万544ポンド)は、初年度の生活費のわずか50%しかカバーしない。
  • スコットランド: 最大支援額で生活費の59%をカバー。
  • ウェールズ: 最大支援額で生活費の63%をカバー。

特に、ロンドンで学ぶスコットランド出身の学生は、ロンドン手当がないため、生活費のわずか46%しかカバーされず、年間約1万3,500ポンドの不足に直面する。

TechnologyOne*:大学向けのエンタープライズ(企業向け)ソフトウェアを提供する、グローバルなSaaS(Software as a Service)企業

【英文記事】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):

https://www.hepi.ac.uk/2025/08/12/maintenance-loan-in-england-now-covers-just-half-of-students-costs/

 

(13) 高齢者の研究除外は「非倫理的」であり「科学的卓越性への脅威」

2025年8月12日、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)、英国国立医療研究機構(National Institute for Health Research: NIHR)、Wellcomeなど、英国の大手健康研究資金提供団体43団体が共同声明に署名し、研究に高齢者を積極的に含めることを約束した。彼らは、高齢者を研究から除外することは非倫理的であり、科学的にも問題があると指摘している。

声明では、高齢者が研究から除外されると、最も支援を必要とする人々にとって治療の効果が低下する可能性があると警告している。特に、複数の慢性疾患を抱える多病(multimorbidity)の患者は75歳以上の半数以上を占めるが、しばしば臨床試験から除外されがちである。過去5年間のNIHRのデータによると、研究参加者のうち75歳以上はわずか15.2%にとどまっている。

【英文記事】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-research-councils-2025-8-studies-excluding-older-people-unethical-and-bad-for-science/

 

(14) 大手出版社の「オープンアクセスの修正」に疑問

2025年8月13日、オープンアクセス書籍出版を支援する国際的な団体Copimは、ケンブリッジ大学出版局による「コミュニティ主導」の出版システム見直し発表に対し、懐疑的な見解を表明した。Copimは、現在の出版業界が課題を抱えていることには同意しつつも、歴史的に利益を追求してきた営利出版社が根本的な解決策を提供することには疑問を呈している。

現在のオープンアクセス出版の主流である「ゴールドオープンアクセス」では、著者が高額な掲載料(APCやBPC)を支払う必要がある。

Copimは、こうした「支払って出版」するモデルが図書館の予算に持続不可能な負担をかけていると指摘。また、予算を持たない多くの著者を事実上排除することにもつながると警告している。カナダの図書館による調査では、2019年から2023年の間に、多くのジャーナルが掲載料をインフレ率以上に引き上げていたことが明らかになっている。

Copimは、伝統的な営利出版社を介さない「ダイヤモンド・オープンアクセス」を解決策の一つとして提示している。これは、学者や機関自身が運営し、専用の資金で支えられる出版プラットフォームの総称である。

財政的に厳しい状況にある大学図書館に対し、Copimはダイヤモンド・オープンアクセスへの投資を促している。これにより、図書館は自機関の研究者だけでなく、世界中の研究者が出版や閲覧を安価に行えるようにする能力を構築できると述べている。

Copimは、大手出版社に対し、財務状況やガバナンスについて透明性を高めることを求めている。また、公平なオープンアクセス出版を実現するためには、出版社、著者、司書など、学術出版に関わる全ての関係者が議論に参加するコミュニティ主導の解決策が必要だと結論付けている。

【英文記事】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-world-2025-8-pushback-over-moves-by-major-publishers-to-fix-open-access/

(15) 英国の18歳、大学・カレッジへの受け入れ数が記録的な高水準に

2025年8月14日、同日発表されたAレベルの結果によると、大学進学を目指す学生の数が過去最高を記録した。大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)のデータは、全体的な傾向として学生の進学意欲が高まっていることを示している。

全体的な傾向:

  • 18歳学生の合格者数が増加: 英国国内の18歳で合格した学生は255,130人に達し、昨年から4.7%増加した。
  • 全年齢層・全居住地の合格者数も増加: 全ての年齢層・居住地を合わせた合格者数は439,180人で、昨年比3.1%増となり、過去最高を更新した。
  • 第一希望への合格率は安定: オファーを持っていた学生のうち、第一希望の大学に合格した学生の割合は昨年と同様の82%。

詳細なデータ

  • 恵まれない地域からの合格者が増加: イングランド、ウェールズ、北アイルランドの最も恵まれない地域出身の18歳学生の合格者数が増加した。これは、高等教育へのアクセスが広がりつつあることを示している。
  • 成人学生(21歳以上)の合格者は減少: 一方、21歳以上の学生の合格者数は昨年から2.4%減少し、50,880人となった。
  • 海外から学生の合格者も増加: 留学生である学部生の合格者数は2.9%増加した。特に中国からの合格者が13.0%増と大きく伸びた。
  • 人気が高まった分野: 合格者数が最も大きく伸びたのは、工学・技術(+12.5%)、数学(+10.5%)、法律(+10.4%)。

【英文記事】大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):

https://www.ucas.com/corporate/news-and-key-documents/news/number-of-uk-18-year-olds-accepted-into-university-or-college-hits-record-high

  

(16)労働党、大学の破綻を防ぐため授業料の値上げも選択肢から除外せず

2025年8月14日、英国の大学の授業料は2017年から9,250ポンドで据え置かれているが、昨年11月に2025年9月から小売物価指数(RPI)のインフレ率に合わせて引き上げられることが発表された。教育大臣は、毎年インフレに連動して授業料を引き上げる可能性を否定しなかった。この背景には、多くの大学が財政危機に直面しているという現状がある。ある報告によると、イングランドの大学の40%が今年度中に赤字に陥ると予測されている。

【英文記事】Independent:

https://www.independent.co.uk/news/uk/politics/university-tuition-fees-bridget-phillipson-a-levels-b2807622.html

 

(17) AI研究所、国防分野の強化へ:政府の要求に応じるも組織は混乱

2025年8月15日, 英国の国立データ科学・AI研究所であるアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute)が、政府からの資金継続の条件として、国防・国家安全保障分野への取り組みを強化することで合意した。しかし、この決定は研究所内部の混乱と対立を浮き彫りにしている。

研究所は、5年間で1億ポンドの資金提供を受けるための大規模な組織改革を進めている。この改革の一環として、約200の職が削減の対象となっており、職員からは不満の声が上がっている。

さらに、研究所の経営陣に対する不信任表明や、公的資金の不正使用に関する公益通報が慈善委員会に対して行われるなど、内部の緊張が高まっている。職員たちは、大臣の書簡が研究所の存続を危うくする「統治の危機」を引き起こしたと主張しており、今後の動向が注目されている。

【英文記事】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-research-councils-2025-8-turing-institute-to-step-up-defence-work-and-cut-jobs/

 

(18) 研究開発費は2021年以降28億ポンド減少、経済成長の野心に暗雲

2025年8月15日、国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)の分析によると、英国全体の研究開発への総支出額(GERD)が、2023年に実質ベースで前年比2%減少したことが明らかになった。

この減少は2年連続となり、2021年以降の実質減少額は28億ポンド(4%超)に上る。主な要因は、R&D支出全体の約92%を占める企業と高等教育機関による支出の減少である。

経済開発協力機構OECDの暫定データによると、2021年から2023年の間に、英国はG7の中でR&D支出の伸びが最も悪く、国際的な競争相手から遅れをとっていることが示されている。

統計の主な結果:

  • 英国のGERDは、2022年の2.1%減に続き、2023年も実質2%減少した。
  • 2021年以降、R&Dへの総投資額は実質28億ポンド(4%超)減少した。
  • R&D支出全体の約92%を、企業と高等教育セクターが占めている。
  • 英国のR&D集約度(GDPに占めるR&D支出の割合)は、2022年の2.69%から2.64%に低下すると予測されている。

【英文記事】 国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business:NCUB)

https://www.ncub.co.uk/insight/uk-rd-spending-falls-by-2-8-billion-in-real-terms-since-2021-raising-concerns-over-growth-ambitions/

 

(19) 英国首相のAIアドバイザーが任命される

2025年8月15日、AI安全研究所(AI Security Institute: AISI)の最高技術責任者であるJade Leung氏が、首相の新たなAIアドバイザーに任命された。

彼女は、変革的なAIの利点を引き出し、その影響に備えるための主要国として英国を位置づける役割を担う。首相と密接に協力し、AI技術を政府の「変革のための計画」の中心である強固な基盤と経済成長の実現に活用することを目指す。

この役職で、彼女は首相と科学・イノベーション・技術大臣に直接報告し、ダウニング街10番地(首相官邸)とAI安全研究所の両方で時間を分けて職務にあたる。

【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)

https://www.gov.uk/government/news/appointment-of-jade-leung-as-the-prime-ministers-ai-adviser

 

(20) 英国高等教育機関はどう対応するか? 留学生の目的地としての地位を保てるか? 海外卒業生を優遇しすぎたか? 

2025年8月19日、英国政府は、高度な技能を持つ人材を誘致するため、10年間の「産業戦略」と「移民に関する白書」を発表した。High Potential Individual(HPI)ビザやGlobal Talentビザなどの拡大を計画している一方、Skilled Workerビザの給与基準の引上げ卒業ビザ(Graduate visa)の期間の短縮、さらには留学生に対する6%の課徴金の導入検討など、留学生にとっての障壁も増えている。これらの動きは、英国の大学の財政と評判に圧力をかけ、海外からの学部生が英国を留学先に選ぶことをためらわせる可能性がある。

ビザ制度の変更

  • High Potential Individual(HPI)ビザ: 世界のトップ大学40校(日本からは東京大学と京都大学)の卒業生を対象としたビザで、現在、リストに載っている大学の47%が米国に集中している。政府はこの対象大学を倍増させる計画であるが、その選定基準(ランキングか地理的か)はまだ不明。
  • Innovator Founderビザ: 革新的で成長性のある事業を英国で立ち上げる起業家向けのビザ。政府は、英国の大学で学ぶ起業家が利用しやすくなるよう、このビザのレビューを進めている。ただし、このビザの成功率は、最初の関門である「認定」段階で36%にまで下がる。
  • Skilled WorkerビザとGraduateビザ: 英国で教育を受けた留学生向けのこれらのビザには変更が加えられている。Graduateビザの期間は2年から18か月に短縮される提案が出ており、卒業後の就職を難しくする可能性がある。Skilled Workerビザの最低給与基準は、2025年7月22日から41,700ポンドに引き上げられた。これにより、多くの卒業生が対象から外れると予想される。

大学の対応と課題

英国の大学は、留学生からの年間220億ポンドという重要な収入源を、これらの政策変更によって失うリスクに直面している。特に、留学生に6%の課徴金を課すという提案は、競争力を損なう可能性があり、多くの大学はすでに財政難に陥っているため、さらなる部門閉鎖などの「壊滅的な措置」につながる可能性がある。

こうした課題に対抗するため、多くの英国の大学は、海外にキャンパスを設立する動きを加速させている。University of LiverpoolやUniversity of Southamptonがインドにキャンパスを設けるなど、英国の大学は現在18か国で38のキャンパスを運営している。これにより、英国の高等教育の影響力を海外に広げ、英国の学位を取得した現地の学生が卒業後に英国のビザルートを利用できる可能性も生まれる。

英国の高等教育機関が国際的なリーダーであり続けるためには、政府と協力し、入学から就職までの一貫した戦略を構築することが不可欠である。これにより、新しい産業戦略が求める高度な技能を持つ労働力を継続的に供給が可能となる。

【英文記事】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute:HEPI)

https://www.hepi.ac.uk/2025/08/19/is-the-uk-still-a-destination-for-global-students-or-just-global-graduates-how-will-higher-education-respond/

 

(21) 英国宇宙庁、官僚主義の削減を目指し政府機関へ統合

2025年8月20日、英国宇宙庁(UK Space Agency)は、政府の「変革のための計画(Plan for Change)」に基づき、無駄な官僚的な作業と重複を削減するため、2026年4月までに科学・イノベーション・技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)に統合される。

この動きは、意思決定の迅速化と効率性向上を目的としており、政府が不必要な官僚機構を徹底的に見直していることの明確な表れである。この取り組みの一環として、世界最大の準公的機関であるイングランド国民保健サービス(NHS)も既に廃止されることが発表されている。

今回の統合により、宇宙庁はDSITと一体となって、政策立案から実行までを一貫して進めることができるようになる。これにより、宇宙産業を支援するためのより機動的で効率的な体制が築かれる。

また、同時に発表された60以上の勧告は、宇宙ごみ除去や衛星修理といった分野の規制を改善し、英国がこの急速に成長する市場でリーダーシップを確立するためのものである。

 【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)

https://www.gov.uk/government/news/uk-space-sector-bolstered-with-government-reforms-to-boost-growth-and-cut-red-tape

 

(22) 英国政府、ガザの9人の学生に留学の道を開く:奨学金で避難を支援

2025年8月20日、2023年10月にガザ地区の生体認証登録センターが閉鎖されて以降、ガザ在住の学生は英国への留学ビザに必要な手続きができず、渡航が困難な状況が続いていた。しかしこの度、英国政府がガザから英国の大学への留学が決まっている学生のうち、外務省が資金援助する「チーヴニング奨学金」を得た9名について、出国手続きを進める意向を明らかにした。

この決定は、100名以上の国会議員や大学関係者、市民団体などが数か月にわたって働きかけた結果、実現した。この動きは、ガザの学生とその支援者たちにとって大きな希望となっている。

一方で、奨学金を得ている40名を含む、英国の大学への入学許可を持つ80名以上のパレスチナ人学生がガザにはまだおり、この9名以外の学生への支援はまだ未定。

【英文記事】Guardian紙:

https://www.theguardian.com/education/2025/aug/20/nine-students-trapped-in-gaza-will-get-help-to-take-up-places-at-uk-universities

 

(23)卒業生は後悔していない!英国の大学に関する国民の認識と現実のギャップ

2025年8月20日、 高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)とKing’s College London による最新の調査で、英国国民の高等教育に対する認識が実態と大きく乖離していることが明らかになった。多くの人々が、大学に関する重要な事実を誤解している現状が浮き彫りになっている。

学生の後悔とローンの負担:国民は、大学卒業者の40%が「やり直せるなら大学に行かない」と考えていると推測しているが、実際の割合はわずか8%。また、学生ローンが人生に悪影響を与えていると感じている卒業生も、国民が考える49%に対して、実際には16%に過ぎない。卒業生は世間が思うよりもはるかに大学生活に満足し、ローンの負担も感じていない。

英国経済への貢献:大学の経済的な貢献度も過小評価されている。国民は、大学を主要な輸出品目や雇用主として認識していない。例えば、University of Manchester の収益は、マンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティという二つの有名サッカークラブの収益合計とほぼ同額ですが、この事実を知る人はほとんどいない。さらに、高等教育部門は輸出額で他の主要産業を上回るにもかかわらず、多くの国民が最も貢献度の低い部門だと誤解している。

学生ローンの仕組み:学費と学生ローンに関する誤解も根強く残っている。2012年以降、学費はインフレに追いついていないにもかかわらず、国民の58%は「同じペースか、それ以上に上がった」と誤認している。さらに、若い卒業生の間でさえ、ローンの返済が「就職したらすぐに始まる」と誤って信じている人が多く、システムへの理解不足が浮き彫りになった。

この調査結果は、高等教育の価値やその経済的役割について、国民の間で正確な情報が共有されていない現状を示唆している。

【英文記事】King’s College London:

https://www.kcl.ac.uk/news/public-hugely-overestimate-graduate-regret-while-underestimating-economic-value-of-universities-and-being-wrong-on-tuition-fees-new-study

 

(24) 英国ビザ費用の高騰:海外からの研究者に避けられ、がん研究が数年停滞

2025年8月24日、英国の主要ながん研究基金団体である「Cancer Research UK」は、国際的な研究者が高額なビザ費用を理由に英国での就職を断っているため、複数の研究プロジェクトが遅れていると述べている。

2019年以降、移民関連費用は126%も上昇し、フランスやアメリカ、韓国といった他国と比べて最大で17倍も高くなっている。

財政的影響: Cancer Research UKが政府に支払うビザ関連費用は、2022年から2023年にかけてほぼ倍増し、872,044ポンドに達した。この金額は、博士課程の学生40人分の訓練費用に相当する。

研究の遅れにより、がん治療法の開発に深刻な影響が出ている。その例のとして:

  • スコットランドでの研究: 結腸がん細胞を攻撃する免疫療法の研究が中止された。この研究は、英国で毎年診断される約44,100人の患者を助ける可能性があった。
  • マンチェスターでの研究: 肺がんの早期発見を可能にする研究が、優秀な研究者が家族のビザ費用を賄えずに就職を断ったため、6カ月以上遅延している。この研究所では、2024年だけで海外からの12件の採用候補者に辞退された。

政府は、英国が世界トップレベルの科学・研究拠点のままであることを目指していると回答している。

5年間の就労ビザを取得するには、研究者一人あたり約6,700ポンドが必要で、4人家族の場合は合計で2万ポンドを超える費用を前払いで負担しなければならない。

政府の広報担当者は、ビザ費用は「移民・国境システム」の資金源として厳密に使われていると説明した。また、トップレベルの研究者を誘致するための基金として、5,400万ポンドの「グローバル・タレント基金」を立ち上げている。

英国の高いビザ費用が、がん研究の発展に必要な国際的な才能の流入を妨げ、最終的には患者の命を救う可能性のある治療法の開発を遅らせているという問題が提起されている。

【英文記事】The Observer:

https://observer.co.uk/news/national/article/cancer-research-set-back-years-as-visa-fees-drive-scientists-away-from-uk

 

(25) 科学者らが提言、AI学習のためにすべての研究データを利用可能に

2025年8月26日、専門家らは、AIの機械学習における「盲点」を防ぐため、失敗した実験や結論の出なかった実験のネガティブな結果を含む、すべての研究データをAI学習に利用できるようにすべきだと提言している。

ロザリンド・フランクリン研究所(Rosalind Franklin Institute)の専門家、Michele Darrow氏とMark Basham氏は、多くの研究データが「他の研究者およびAIや機械学習モデルにとって利用できない、不完全、または単に使い物にならない」と指摘している。

二人は、公的資金による研究から生み出されるすべてのデータ、特に「ダークデータ(Dark Data)」(研究者が公開せずに保管している、未発表の実験データ)を公開し、AIモデルがそれらを学習できるようにすべきだと主張している。研究者にとっては、長年の成果を公開することに葛藤があることは理解できるとしつつも、研究助成金やキャリアは最初にデータの意味を発見することにかかっていると述べている。

現状では、学術誌が仮説を証明または反証する研究を好むため、ダークデータはほとんど発表されない。データ準備に必要な労力が大きいこともその一因である。

【英文記事】Research Professional News:

https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-uk-innovation-2025-8-make-all-research-data-available-for-ai-learning-researchers-say/

 

(26) ダーリントンに設立される英国RNAバイオファウンドリー

2025年8月28日、英国政府は、癌や心臓病、感染症など様々な病気の治療に役立つRNA療法の開発を加速するため、ダーリントンに「英国RNAバイオファウンドリー」を設立すると発表した。政府が2,960万ポンドを支援する。

この新しい施設は、mRNAワクチンがCOVID-19パンデミックで重要な役割を果たしたように、迅速かつ高精度なRNA療法の研究を支援する。現在、初期段階の臨床試験に必要なRNAの製造は高コストで複雑だが、このバイオファウンドリー*は、研究者や企業がより安価で迅速にRNA材料を製造できるようにする、ハイテクな製造拠点としての役割を担う。

これにより、英国の科学者やイノベーターは、画期的なアイデアを早期に市場に投入し、投資を呼び込むことが可能となる。また、必要に応じてワクチン生産に切り替えることもできるため、将来のパンデミックへの備えも強化される。

この取り組みは、英国全土、特に北東部の成長を促進し、政府の「変革のための計画(Plan for Change)」と「近代産業戦略(Modern Industrial Strategy)」の推進に貢献すると期待されている。

バイオファウンドリー(Biofoundry)*: 生物学やバイオテクノロジーの研究開発を自動化・標準化して行う施設や仕組み。新しい医薬品、材料、燃料、農業技術などを早く安く開発を可能にし、生命科学の実験を工場のように自動化して、新しいバイオ製品を生み出すための拠点

【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)

https://www.gov.uk/government/news/next-gen-therapies-for-cancer-dementia-and-more-fast-tracked-with-new-facility