2025年11月21日
(1) UCL、ビザ枠超過で留学生数百人が影響
(2) 地方リーダーのための新基金:全国の雇用創出とイノベーションを加速
(3) 英国民:”壊れた英国“とほこりを立て直すのは高度技術移民- 研究者移民の理解の深め方
(4) 英国・欧州の大学協会、英国のエラスムス・プラス再加盟の早期合意を要請
(5) 2025年ノーベル化学賞:王立協会フェローを含む3氏がMOF開発で受賞
(6) THE 世界大学ランキング2026年発表
(7) 世界をリードする英国大学、インド進出拡大で国内経済を強化
(8) 英国政府、移民制度の大幅改革を発表
(9) 研究支援職の変革を目指す取り組みに450万ポンドの支援
(10) AIと高等教育の未来
(11) BBSRCとMRCが研究悪用リスクへの対応を改訂
(12) ラッセル・グループ:秋の予算案に提言
(13) 英国大学:授業料の上限維持には成果の向上が条件
(14) オックスフォード〜ケンブリッジ経済成長地区の雇用創出、住宅、より良い交通
(15) 世界の現職指導者を輩出する大学、英国が圧倒的な存在感
(16) アラン・チューリング研究所、防衛重視の新科学プログラムを発表
(17) HEIF資金、経済成長への貢献に重点
(18) 大学10月締め切り出願者が過去最多に
(19) 英国政府、研究開発推進に記録的規模の550億ポンドを投入
(20) 大胆な改革:持続可能な社会に向けた高等教育の再設計
(1) UCL、ビザ枠超過で留学生数百人が影響
University College London(UCL)は、予定以上の留学生を受け入れたため、学生ビザ申請に必要な「CAS(Confirmation of Acceptance for Studies)」を発行できず、開始直前になって約200人の中国人学生を含む数百人の学生が学業開始の延期や多額の費用負担に直面している。
UCLは「予想を超える応募増」が原因と説明し、内務省と追加CASの交渉中であるとし、影響を受けた学生には来年度への延期や遠隔学習の提案などで対応する意向を示した。一方、学生たちは渡航費や申請費、宿泊費など数千ポンドを既に支払っており、「自分たちは手続きを正確に行ったのに、大学の計画不足の影響を受けている」と不満を訴えている。
UCLの学生約52,000人のうち半数以上が海外からで、中国本土からは約14,000人が在籍している。内務省はコメントを控えているが、中国人学生の中には大使館に支援を求めているものもいる。
(2025年10月1日)
【英文記事】Gurdian :https://www.theguardian.com/education/2025/oct/01/international-students-ucl-university-college-london-visa-allocations
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先週末にUniversity College London (UCL)と内務省との間で交渉が行われた結果、内務省はUCLが要求した追加のCAS枠を認め、特別にビザを発給することになった。
UCLは「最近の不確実性により影響を受けた全ての方々に心からお詫びする」と述べるとともに、内務省の迅速な対応に感謝を表明した。影響を受けた学生はこれで予定通りにUCLでの学業開始できるようになる。UCLは影響を受けた学生に対し、UKビザ・移民局の「スーパー・プライオリティ・サービス」を利用した場合、1,000ポンドの費用を負担することを発表している。
(2025年10月6日)
【英文記事】Guardian:
(2) 地方リーダーのための新基金:全国の雇用創出とイノベーションを加速
英国政府は、総額860億ポンドの研究開発(R&D)予算の一部として、地域イノベーション連携基金(Local Innovation Partnerships Fund: LIPF)を通じた新たな支援策を発表した。この基金は、地域ごとの科学技術の専門知識を活かし、雇用創出と経済成長を目指すものである。
この基金の支援は、以下の二つの枠組みで構成されており、これが3,000万ポンドと2,000万ポンドの違いとなっている。
この基金は、地域のリーダーシップを重視し、大学や企業と協力して、地域の研究成果を実用的な解決策(例:迅速な病気診断技術、クリーンな交通ソリューションなど)に変えることを目的としている。これは、政府の「変革のための計画(Plan for Change)」と「現代産業戦略(Modern Industrial Strategy)」の重要な柱であり、すでに成功を収めている「イノベーション・アクセラレーター(Innovation Accelerators )」プログラム(グラスゴーでの大腸がん早期発見など)を基盤としている。政府は、この支援を通じて、英国全土で新しい産業を創出し、地域経済の成長を促進することを目指している。
(2025年10月6日)
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
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マンチェスター、ウェスト・ミッドランズ、グラスゴーの3地域は、すでに地域イノベーション連携基金(LIPF)を通じて既に3,000万ポンドの支援が決まっていたが、さらに19日に追加で2,000万ポンドずつ投入され、合計5,000万ポンドとなった。この資金により、AIやロボティクスを活用した医療技術、ライフサイエンス、クリーンエネルギーなど地域の革新的プロジェクトが拡大し、新規事業やスピンアウト企業の成長、雇用創出が促進される。
加えて、ライフサイエンス分野のライフサイエンス・イノベーション製造基金(Life Sciences Innovative Manufacturing Fund: LSIMF)による支援で、バーミンガムのSterling PharmaceuticalsやキールのBiocompositesに新たな最先端製造・研究拠点が設置され、貴重な医薬品を国内生産することで英国の健康危機への備えも強化される。これらの取り組みは、10月21日に開催される地域投資サミットで、政府・企業・投資家・地方自治体のリーダーらが一堂に会し、地域経済の成長と雇用創出の機会を議論・促進する予定。
(2025年10月19日)
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(3) 英国民:”壊れた英国“とほこりを立て直すのは高度技術移民- 研究者移民の理解の深め方
科学工学キャンペーン(CaSE) は、研究者の英国移民に対する国民の意識調査とメッセージ発信の指針をまとめた報告書を公表した。調査では、「国の誇りを取り戻し、“壊れた英国”を立て直す手段」として研究者を受け入れるというメッセージが特に効果的であることが明らかになった。
また、国民は優秀な海外からの研究者の受け入れに肯定的になりえるが、「英国が移民に依存している」と受け取られないよう配慮が必要で、国内人材の育成にも言及することが重要とされた。ガイドでは、感情に訴える言葉遣い、具体的なイノベーション事例の提示、英国人労働者への利益の強調、そしてセクター全体で一貫したメッセージを発信することなど、7つの原則を提示している。
CaSEのRebecca Hill博士は、これまでR&D分野の発信が移民議論の中で十分に響かなかったと指摘し、今回の成果は「国民の声を踏まえ、研究者移民の社会的意義をより感情的に伝える新しい方法を示すものだ」と述べた。
(2025年10月7日)
【英文記事】 科学工学キャンペーン(Campaign for Science and Engineering: CaSE):
(4)英国・欧州の大学協会、英国のエラスムス・プラス再加盟の早期合意を要請
欧州大学協会(European University Association: EUA*)と英国大学協会(Universities UK: UUK)は、英国のエラスムス・プラス(Erasmus+)への再加盟を強く支持する共同声明を発表した。両団体は、「財政面で相互に合意できる条件のもとでの英国の再参加」を求めるとともに、長期的な参加枠組みの早期合意と迅速な交渉妥結を呼びかけている。
声明では、学生交流が欧州全体に長期的なつながりを築き、スキルや能力を高めること、教職員の交流が知識の共有を広げ、教育や研究の質の向上、イノベーション促進につながることを強調。英国の再加盟はこれらの恩恵を再び両者にもたらし、英EU関係の強化にも資すると述べている。
UUK国際部(UUKinternational:UUKi)のJamie Arrowsmith氏は、「エラスムス・プラスは学生生活を豊かにし、大学間の絆を強める重要なプログラム。費用面での合意を早急に進め、大学・学生・教職員が安心して将来の交流を計画できるようにすべきだ」とコメント。
EUAの政策調整・未来戦略ディレクター、Thomas Jørgensen氏も「エラスムス・プラスは国境を越えて人と大学を結ぶ独自の仕組みであり、英国の完全参加は欧州全体の大学間協力を拡大し、学びと文化的交流の新たな機会を開く」と述べた。
(2025年10月8日)
*欧州大学協会(European University Association:EUA):48か国・900以上の大学を代表する欧州の大学組織。
【英文記事】英国大学協会(Universities UK: UUK):
https://www.universitiesuk.ac.uk/topics/international/universities-urge-negotiators-swiftly
(5) 2025年ノーベル化学賞:王立協会フェローを含む3氏がMOF開発で受賞
英国王立協会は王立協会フェローである北川進教授FRS) とRichard Robson教授(FRS)が、2025年ノーベル化学賞を受賞したことに祝意を表した。
今年のノーベル化学賞は、北川進教授、Richard Robson教授、そしてOmar M Yaghi氏の3名に、「金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Frameworks)の開発」という功績に対して授与された。
英国王立協会の物理担当幹事兼副会長であるSheila Rowan教授は、“彼らのMOFに関する研究は、クリーンな水の採取、二酸化炭素の回収、低エネルギー化学反応の触媒作用など、世界の最も困難な課題に科学者が取り組むことを可能にした。この功績により、MOFは現代化学において最も急速に成長している基礎研究分野の一つとして、その基礎と方向性が確立された。”と述べ、受賞を歓迎した。
王立協会フェローの資格は、「数学・工学・医学を含む自然知識の向上への多大な貢献」をした個人に与えられる最高峰の名誉である。
(2025年10月8日)
【英文記事】英国王立協会(Royal Society):
https://royalsociety.org/news/2025/10/nobel-prize-chemistry-2025/
(6) THE 世界大学ランキング2026年発表
2026年版タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education: THE)世界大学ランキングが公表され、アジアのトップ大学の成長が14年ぶりに停滞した。Tsinghua University(12位)、Peking University(13位)、National University of Singapore(17位)は順位を維持し、中国のトップ200入り大学数(13校)も横ばい。一方で中堅以下の大学は依然として上昇傾向にある。
米国は依然としてトップ10の7校を占め、Princeton Universityが過去最高の3位に上昇したが、全体的には低迷が続き、トップ500校数は過去最少。特にトランプ政権による高等教育への圧力(研究資金削減や留学生制限など)の影響は今後さらに悪化する可能性が指摘されている。
英国ではUniversity of Oxfordが10年連続で1位を維持したが、他大学は低迷。LSEやUniversity of Warwickなどが過去最低順位となり、初めて英国のトップ500入り大学が50校を下回まった。財政難や国際人材の減少が懸念されている。
アジア諸国では香港が過去最多の6校をトップ200に入れ、韓国も研究指標で躍進。東京大学は26位と過去最高を記録したが、日本全体では上位ランキングにおける位置づけがわずかに減少。
一方、オーストラリアやイタリア、トルコ、ポーランド、インドネシアなどが改善を見せており、世界的には「学術の勢力図」が変化しつつあると指摘されている。
(2025年10月9日)
英国大学上位10大学 (THE World University Rankings 2026)
日本の大学上位10大学(THE World University Rankings 2026)
【英文記事】Times Higher Education:
https://www.timeshighereducation.com/news/world-university-rankings-2026-results-announced
(7) 世界をリードする英国大学、インド進出拡大で国内経済を強化
Keir Starmer英国首相はインド・ムンバイで行われた貿易使節団の一環として、英国の複数の大学がインドで新キャンパスを開設する計画を発表した。今回の展開は、英国高等教育の国際展開を通じて経済成長と雇用創出を後押しする「Plan for Change(変革のための計画)」の一部と位置づけられている。
Lancaster University とUniversity of Surreyはすでにインド政府から正式な承認を受け、新キャンパスを開設する予定。これにより英国の大学は、急速に拡大するインドの高等教育市場に対応する形で存在感を高める。インドでは現在4,000万人の大学生がいるが、2035年までに7,000万人分の教育機会が必要とされており、英国の大学はその需要に応える形で「英国の学位をインド国内で取得できる」機会を提供する。
国際教育は2022年に英国経済へ320億ポンドの輸出収入をもたらしており、そのうち約10億ポンドは海外キャンパスによるものだった。今回の拡大により、英国はインドで最も多くの高等教育拠点を持つ国となる見込みである。すでにUniversity of Southamptonがデリーにキャンパスを開設しており、来年以降University of York, University of Aberdeen, University of Bristol, University of Liverpool, Queen’s University Belfast, University of Coventryなども続く予定である。
Starmer首相はインドのNarendra Modi首相と会談し、両国の大学関係者とともにこの節目を祝った。Starmer首相は「英国の大学は教育・研究・イノベーションの面で世界的に高く評価されている。インドの学生が英国の教育を自国で受けられるようになることで、両国の絆が強まり、英国経済にも大きな利益をもたらす」と述べた。
Bridget Phillipson教育大臣も、「インドでの新キャンパス設立は英国高等教育の国際的魅力を示すもの。新たな国際教育戦略の一環として、双方の成長とイノベーションを促進する長期的なパートナーシップを築く」と強調した。
さらに、Imperial College London はバンガロールのScience Gallery Bengaluruと提携し、研究交流や共同施設の開発を進める。AIやバイオテクノロジー、量子技術などの先端分野で、英国とインドの大学が共同研究・人材育成・技術商業化を行うことが期待されている。
今回の一連の動きは、英国の高等教育が「ソフトパワー」としての国際的影響力を高めると同時に、国内の移民受け入れ圧力を増やすことなく新たな資金源を確保し、大学の財政的持続性を強化する狙いがある。British Councilの調査によれば、英国での教育経験を持つ学生は長期的に英国への好意的な印象を持ち続ける傾向があり、今回の拡大はその効果をさらに高めるものとされている。
(2025年10月9日)
【英文記事】教育省(Department for Education: DfE): https://www.gov.uk/government/news/world-leading-uk-higher-education-sector-expands-in-india-and-bolsters-growth-at-home
【関連記事①】
今週の英国首相Keir Starmer氏のインド訪問には、14人の大学学長らが同行し、インドにおける高等教育需要の急増(2035年までに7,000万人)が英国大学にとって大きなチャンスとなっていることが示された。
規制面では、OfSは越境教育(Transnational education:TNE)への過剰な介入を控える姿勢を示しており、自由な運営が可能な環境が整いつつある。過去1〜2年で、エジプト、インドネシア、ギリシャ、インドなどに新キャンパスが開設・計画され、全体のTNE学生数は増加傾向にある。現在では、英国本国に留学する学生よりもTNE学生の方が多くなる可能性がある。一方で、ネット環境や教材アクセス、評価基準の不明確さ、地政学的リスクなど課題も存在し、全大学が一様に恩恵を受けるわけではなく、個別大学の成功が将来の鍵となる。
(2025年10月9日)
【英文記事】WonkHE:
https://wonkhe.com/blogs/a-tne-policy-primer-for-anyone-seeking-new-funding-streams/
【関連記事②】
英国大学協会国際部は2023–24年度および過去10年間の英国高等教育の越境教育(TNE)の動向をまとめた概要を発表した。詳細版は2025年12月に公開予定。
主なポイント:
The Scale of UK higher education transnational education 2023/25(報告書概要):https://www.universitiesuk.ac.uk/sites/default/files/field/downloads/2025-10/UUKi%20Scale%20of%20TNE%202023-24%20summary%20report.pdf
(2025年10月9日)
【英文記事】英国大学協会国際部(Universities UK International:UUKi)
https://www.universitiesuk.ac.uk/topics/international/scale-uk-higher-education-transnational-0
(8)英国政府、移民制度の大幅改革を発表
英国政府は、移民制度を「統制された、公平なもの」へと再構築するための法案を議会に提出した。特定のビザにて入国を希望する移民申請者にはAレベル相当の英語力を求め、認定機関による試験結果をビザ申請時に提出することが義務づけられる。大学卒業後の就労ビザ期間は2年から18か月に短縮され、学生ビザの資金要件も引き上げられる。また、企業が外国人労働者を雇う際に支払う移民スキル課徴金は32%増額され、国内人材の育成に充てられる。一方、優秀な人材の受け入れを促すため、世界トップ大学出身者向けの「ハイ・ポテンシャル・インディビジュアル」ルートの年間枠は8,000件に拡大される。これらの措置は2025年5月に発表された白書に基づく改革の一環で、政府は高技能人材の確保と制度の厳格化を両立させる考えだ。
(2025年10月14日)
【英文記事】内務省(Home Office):
https://www.gov.uk/government/news/migrants-will-be-required-to-pass-a-level-standard-of-english
(9)研究支援職の変革を目指す取り組みに450万ポンドの支援
英国では、研究活動を支える専門職の地位向上とキャリア構築を目指す全国的プロジェクト「Research Professional Futures」が、Research England Development Fundから450万ポンドの支援を受けて始動する。Teesside University 、Durham University、Imperial College London、University of Warwickの4大学が主導し、4年間にわたり750人・75機関を対象に調査や意見交換を実施する。
この取り組みは、これまで裏方的な役割で職業的な認知が低かった研究支援職(Research Professionals )に対し、安定した雇用、専門的能力開発、明確なキャリアパスを整備するための戦略を策定するもの。成果として、各大学が活用できるオンラインプラットフォームや人材育成枠組みを提供し、将来の研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)の人材・文化・環境評価にも反映させることを目指す。
プロジェクトは、制度を押し付けるのではなく、自発的な関与を促す「青写真」として設計されており、大学が研究支援人材を重視する文化の醸成を目指している。
(2025年10月14日)
【英文記事】Research Professional News:
(10) AIと高等教育の未来
Higher Education Policy Institute(HEPI)は大学、産業界、政治の第一線で活躍する専門家によるエッセイ集を発表した。これはAIが社会・経済に与える変革と、高等教育における影響を多角的に論じるものである。
寄稿者にはGoogle の副社長であるVinton G Cerf氏、University of Southamptonのウエブサイエンス研究所の所長であるWendy Hall教授らが含まれる。エッセイの中にはOpenAIのChatGPTが作成した「研究におけるAIの未来」の章も収録。読者は、人間が執筆したエッセイと比較し、自らAIの強みと課題を考察できる。また序文を担当したWendy Hall教授は、AIを脅威ではなく、高等教育の目的や実践を再考する機会と捉え、大学に対する行動喚起として位置付けている。
主な提言・知見:
AI and the Future of Universities:
https://www.hepi.ac.uk/wp-content/uploads/2025/10/AI-and-the-Future-of-Universities.pdf
(2025年10月16日)
【英文記事】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)
(11) BBSRCとMRCが研究悪用リスクへの対応を改訂
バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)と医療研究会議(MRC)は、生物学・生物医学研究における悪用リスクへの対応原則を示した共同政策声明を改訂した。AIや機械学習などの進展により、研究のリスクと社会的懸念が変化していることを受けたものである。
声明では、悪用リスクのある研究を「有益な目的で行われるが、誤用や事故、悪意による害を及ぼす可能性のある研究」と定義し、責任ある研究とイノベーションを促す姿勢を明確にしている。
UK Research and Innovation(UKRI)はこれに伴い、2026年初めから研究助成申請書にリスク関連の新しい設問を導入し、申請者や審査者が研究手法・想定されるアウトプット・成果が想定外の応用をされた場合のシナリオを含めてリスクを検討することを求める。必要に応じて追加的な説明も義務づける。
声明は研究者・関係者との協議を経て策定されたもので、国際的なベストプラクティスを踏まえ、英国が責任ある研究とイノベーションのリーダーであり続けることを目指している。申請者向けの支援・ガイダンスも提供される予定。
(2025年10月16日)
【英文記事】 UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/how-bbsrc-and-mrc-manage-risks-of-research-misuse/
(12)ラッセル・グループ:秋の予算案に提言
ラッセル・グループは2025年秋の予算発表案(11月26日発表予定)を前に財務大臣に宛てた書簡を公開した。書簡中では、財政的圧力や提案されている「留学生授業料への課徴金」が、大学による経済成長への貢献を妨げる恐れがあると警告した。
また、研究集約型大学を成長の原動力とする政府の認識や、今年の歳出見直しでの研究開発投資を歓迎する一方で、教育・研究の双方で資金面の逼迫が深刻化していると指摘している。
特に、低所得層の学生支援を目的とした「生活補助金」の復活自体は評価しつつも、その財源を留学生授業料への課徴金で賄うことは逆効果だと強調。年間3億ポンド超がラッセル・グループ大学から失われ、教育・研究・学生支援への投資が損なわれると警告している。
(2025年10月17日)
【英文記事】ラッセル・グループ(Russell Group):
https://www.russellgroup.ac.uk/news/submission-autumn-budget-2025
(13)英国大学:授業料の上限維持には成果の向上が条件
政府は、機会格差の是正、大学の説明責任強化、そして16歳以降教育(高等教育・職業教育/義務教育終了後教育)の財政基盤を強化するための包括的な改革方針を示す「16歳以降教育・スキル白書」を発表した。
主な内容は以下の通り:
全体として、政府は教育の質と公平性を高め、すべての若者に進学・技能向上の機会を保障することで「国家再生」を目指している。
(2025年10月20日)
Post-16 education and skills white paper: https://www.gov.uk/government/publications/post-16-education-and-skills-white-paper
【英文記事】教育省(Department for Education):https://www.gov.uk/government/news/universities-to-deliver-better-outcomes-in-return-for-full-fees
【関連記事】
政府は、10月20日に発表された「16歳以降教育・スキル白書」で、大学の研究資金制度を改革し、「専門化」を奨励する方針を示した。具体的には、研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)の見直しや資金配分の変更を通じて、大学が政府の優先課題に沿った研究を行い、強みのある分野で深い専門性を築くことを促す。これにより、幅広い一般教育型の大学は減少し、専門性の高い大学が増えることが見込まれる。
白書では、好奇心主導の研究(curiosity-driven research)は保護される一方、政府の優先課題や商業化に沿った研究への資金配分が増えることが示されている。また、 必要研究費用に対する助成率(FEC recovery)が低下していることから、政府はこの問題に取り組むことの方針を示している。これにより、結果として資金の対象となるプロジェクト数は減る可能性がある。一方で、この再調整によって大学全体としての財務的な持続可能性は高まるとされており、その実現のために各機関には会計管理やコスト管理の改善が求められている。
(2025年10月21日)
【英文記事】Research Professional News:
「16歳以降教育・スキル白書」大学向け解説詳細は下記のサイトをご確認ください。
(14) オックスフォード〜ケンブリッジ経済成長地区の雇用創出、住宅、より良い交通網整備
英国政府は、オックスフォードからケンブリッジにかけての経済成長地域(Oxford to Cambridge corridor )を「ヨーロッパのシリコンバレー」に発展させることを目指し、総額5億ポンドの投資パッケージを発表した。Rachel Reeves財務大臣によるこの計画は、雇用創出、住宅供給、地域経済成長を同時に促進することを目的としている。
この一環として、オックスフォードではカウリー鉄道路線が再開され、リトルモアとカウリーに新駅が設置される予定である。これにより、地域の交通アクセスが改善し、約1万件の新たな雇用と住宅の創出が期待されている。鉄道再開は、政府が推進する東西鉄道計画(East West Rail)とも連動し、オックスフォード、ケンブリッジ、ミルトンキーンズ、ベッドフォードなどの都市間連携を強化する。
また、最大4億ポンドの初期政府資金がケンブリッジの開発に投入され、手頃な住宅、インフラ整備、ビジネス拡大が進められる。これに加え、1,500万ポンドがケンブリッジ・グローバル・イノベーション・ハブに充てられ、科学系スタートアップの研究施設整備を支援する。
この政府投資は、同時期に発表されたエリソン技術研究所(Ellison Institute of Technology: EIT)の100億ポンド規模の拡張計画とも歩調を合わせるものである。EITはオックスフォード・サイエンス・パークに新たな研究施設を建設し、今後10年間で7,000人の雇用を創出する計画を進めている。
科学閣外担当大臣であるPatrick Vallance氏は、「この地域には英国版シリコンバレーを実現するためのすべての要素がある」と述べ、今回の投資を「全国的な経済成長への転機」と位置づけた。政府は、官民が連携してイノベーションを促進することで、英国全体の競争力を高める狙いを強調している。
(2025年10月23日)
【英文記事】財務省(HM Treasury):
(15) 世界の現職指導者を輩出する大学、英国が圧倒的な存在感
2025年10月23日に公表された最新のHEPI(Higher Education Policy Institute)とKaplanのデータによると、世界の現職指導者を輩出する大学ランキングの上位6校のうち、英国から5校がランクインした。
当該国で教育を受けた国外の指導者の輩出数は英国が59人で、米国66人に次ぐ2位。英国は依然として国際的なソフトパワーを有しているされる。しかし近年の厳しい留学生制度や高額なビザ費用により、外国人学生の数は2024年以降減少傾向している。
HEPIの所長であるNick Hillman氏は、「世界の国々の4分の1以上で、英国で教育を受けた上級リーダーがいることは、大きな影響力を持つソフトパワーに相当する」と述べた。しかし、大学関係者が参加するソフトパワー庁が設立されたにもかかわらず、やネガティブな発言、高額なビザ費用によって、その効果は相殺されてしまうと指摘している。
(2025年10月23日)
【英文記事】Research Professional News:
(16)アラン・チューリング研究所、防衛重視の新科学プログラムを発表
英国のデータ・AI分野の国立機関であるアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute)は防衛・国家安全保障、環境、健康の3分野を重点とする新たな科学・イノベーション計画を発表した。これは、科学大臣(当時Peter Kyle氏)から「安全保障分野への注力」を求められたことを受けた対応である。
同研究所は2024年から約1億ポンドの新たな5年間資金を受ける改革を進めており、今回の発表で「大規模な組織変革の完了」を宣言した。改革では戦略の重点を絞り、78件の研究プロジェクトを終了・分離・統合するなど大幅な再編を行った。
同研究所は、防衛・安全保障分野の新計画として、エネルギー・交通・インフラなど重要施設をサイバー攻撃から守るAIツールの開発を進めるとともに、防衛・安全保障機関との連携を強化する。
政府の要請に応じ、同研究所は元英空軍准将Blythe Crawford氏を顧問に招き、防衛・国家安全保障・情報分野におけるAI活用のあり方を検討するよう委嘱した。Crawford氏は英空軍・宇宙戦センターの前司令官で、11月に提言をまとめる予定。
Doug Gurr理事長は「アラン・チューリング研究所は、防衛・安全保障、環境、健康といった英国の喫緊課題に焦点を絞り、国家に独自の価値を提供する研究所へと大きく変革した」と述べた。一方、改革の過程で職員の約半数が配置転換や削減の対象となったと報じられており、人員面への影響も注目されている。
(2025年10月28日)
【英文記事】Research Professional News:
(17) HEIF資金、経済成長への貢献に重点
高等教育イノベーション資金(Higher Education Innovation Funding: HEIF)の戦略的な方向性が刷新され、経済成長の推進に焦点を当てることになった。
主な内容は以下の通り:
Research England は、高等教育イノベーション資金(HEIF)の戦略を刷新し、これまでの「知識交換(knowledge exchange)」による成果促進から、より直接的に 英国の経済成長を促進する活動に対する投資を支援する方向に転換する。
HEIF は年間約2億8,000万ポンドを大学に配分し、研究成果や専門知識を産業界・地域社会で実用化する取り組みを支援している。今後は、地域経済の発展・産業イノベーション・人材育成など、経済的波及効果を生む知識交換 が重視される。
制度は2段階で改定される:
新たな枠組みでは、地域成長・企業支援・技術商業化・人材貢献といった複数の次元から大学の貢献を測定する。
また、平等・多様性・包摂(EDI)の観点も説明責任の一部として明示される。
過去の分析では、HEIFへの1ポンド投資が平均14.8ポンドの経済価値を生み出したとされ、政策当局はその効果を強調している。
2026年以降、HEIFの助成を受けた活動は各大学の独自の強みや能力を最大限活かし、経済成長に貢献する測定可能な成果を上げることが求められる。
(2025年10月29日)
【英文記事】リサーチ・イングランド(Research England):
https://www.ukri.org/news/higher-education-innovation-funding-to-focus-on-economic-growth/
(18)大学10月締め切り出願者が過去最多に
英国の大学・学科への出願を扱う大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)は、2026年度入学に向けた10月15日締切(オックスフォード、ケンブリッジ、医学、歯学、獣医学など)への出願状況を公表した。それによると、英国の18歳出願者は41,010人で、前年の38,940人から5.3%増となり過去最多を更新した。これは18歳人口の4.5%増を上回る伸びとなっている。
全体の出願者数は79,160人(+7.4%)で、これも過去最高を記録。特に医学コースへの出願者は25,770人(+10.4%)と大きく増加し、全年齢層からの応募が見られた。21歳以上の英国人出願者(成人学生)は6,600人(+11.2%)に達し、そのうち医学志望者は4,920人(+11.5%)と増加している。
また、社会的に恵まれない地域からの出願も全体として増加しており、特にイングランドで1,360人増の16,020人となった(北アイルランドのみ前年と同数)。
海外からの出願も過去最高の24,350人(+11.5%)に達した。最大の出願国は引き続き中国(5,750人、+15.7%)で、米国(+280人)、シンガポール(+230人)、インド(+140人)なども増加傾向にある。
UCASの最高責任者であるJo Saxon氏は、「大学進学への関心が高まり続けていることを嬉しく思う。特に若年層から社会人まで幅広い層が医学を志していることは、将来の医療体制にとって心強い兆候だ」とコメントしている。
(2025年10月29日)
【英文記事】大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):
(19) 英国政府、研究開発推進に記録的規模の550億ポンドを投入
政府は、科学技術による生活改善や経済成長を支えるため、研究開発に 550億ポンド の長期資金を確定した。これは科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)として過去最大規模の投資であり、実質的な増額となる。
政府分析によれば、公的R&D支出1ポンドあたり8ポンドの経済効果があり、さらに平均2ポンドの民間投資を呼び込むという。科学技術大臣のLiz Kendall 氏はIBMロンドン拠点を訪問し、量子技術やロボティクス分野などで公的・民間の協働を強調した。
資金配分の主な内容は以下の通り:
また、政府支援を受けた企業の雇用は6年で平均21%増加、売上も23%伸びるとされる。成功例として、空港の液体検査装置を開発したCobalt Light Systemsや、パンデミック早期警報システムを開発中のOxford Nanoporeが挙げられた。
最近の公的研究支援には、以下のような案件が含まれる:
政府は、これらの投資を「英国の未来への前払金」と位置づけ、長期的な経済成長と生活の質向上を目指している。
(2025年10月30日)
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
(20) 大胆な改革:持続可能な社会に向けた高等教育の再設計
高等教育政策研究所(HEPI)は、Open University の前学長であるTim Blackman氏による報告書「A Call for Radical Reform: Higher Education for a Sustainable Economy」を発表した。教授は、学位号とは“小規模な環境で、エリートに特化し、知識が一生使える”という前提のもとで設計されたにもかかわらず、その設計をほとんど変えることなく、今の「大規模で、誰でも進学する、変化の速い」現代のシステムに引き継がれたと述べ、その見直しとして、より短期・分散型の学習を通じて生涯にわたりスキルを更新できる制度への転換を提案している。
報告書は、気候変動を引き起こす過剰消費と、誤情報による知識の劣化という「存立的課題」に大学が対応すべきだと主張。大学は持続可能な経済への移行を支え、事実を共有する社会的基準を再構築できる存在だとする。
教授は16歳以降教育改革を部分的に評価しつつも、「複雑さを増すだけで根本的ではない」と批判。政府による直接介入、教育課程の標準化、そして高コストな規制機関の簡素化を求めた。大学教育は若者の大多数が受けるべき普遍的教育であり、AI時代に不可欠な批判的思考力を社会全体で共有すべきだと強調している。
報告書「A Call for Radical Reform: Higher Education for a Sustainable Economy」:
(2025年10月30日)
【英文記事】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):
https://www.hepi.ac.uk/reports/a-call-for-radical-reform-higher-education-for-a-sustainable-economy/