2026年2月20日
(1) University of Cambridge のカレッジ、学生募集でエリート私立学校を重点ターゲット
(2) 欧州の大学、エラスムス・プラスの野心的計画には400億ユーロでは不十分と警告:英国も2027/28年度から再加盟
(3) 大学発AIスピンアウトにおける株式保有比率の上限設定を求める声
(4) 英国政府:留学生目標数を棚上げ
(5) 英国: 主要技術分野の研究者のビザ費用を「返還」へ
(6)UKRIは創造産業の支援でテクノロジーを優先
(7) ラッセル・グループの新CEO発表
(8) 英国政府:University of Cambridgeのスーパーコンピュータに3,600万ポンドの投資
(9) 新データが明らかにする英国高等教育在籍者構成の変化
(10) 18歳人口増加で英国大学の志願者が増加
(11) 英国の物理学研究・科学施設、深刻な予算削減に直面
(12) 産学連携を通じた食生活・健康分野のイノベーションに向けた300万ポンド投資
(13) 報告書「Research and innovation key policy shifts in 2025」の概要
(1) University of Cambridge のカレッジ、学生募集でエリート私立学校を重点ターゲット
University of CambridgeのTrinity Hallカレッジが、エリート私立校の生徒を重点的に勧誘する方針を打ち出した。これにより公立校出身や、恵まれない環境から生徒の進学機会拡大を目指した数10年の取り組みを後退させる可能性があるとして批判を呼んでいる。
Trinity Hall の評議員(フェロー)は先月Eton, Winchester などの一部の私立校への誘致方針を承認した。これは進学希望者の”質“向上を目的としているが、”逆差別”への懸念も指摘されている。
この動きに社会的流動性の専門家は愕然としており、またTrinity Hall の一部の学者たちからもこの決定は公立校出身学生にとって”裏切り行為“ともいえると反対意見がでている。
Trinity Hallは、“目的を絞った誘致戦略”で言語学、音楽、古典などの科目で約50の私立校に個別に働きかける。
同カレッジの入試関連の責任者であるMarcus Tomalin氏は以下のように主張した。「これらの私立校出身の極めて優秀な学生は、各学問分野が求める高度な知的水準に適合した専門知識と関心を備えている。こうした志願者を軽視することは、潜在的に優秀な候補者を見落とすことにつながる。」と説明した。また、公正性を高める取組が意図せず逆差別とならないことが重要であると述べた。
2022年時点では、University of Cambridgeに入学した英国人学生の約73%が公立校出身だったが、その割合はその後71%に低下し、29%が私立校出身となっている。なお、英国で教育を受けている学生全体のうち、私立校に通っているのはおよそ7%である。2024年、同大学は学生局(Office for Students: OfS)の方針変更を受け、入学に占める公立校出身者の具体的比率目標を撤廃した。
Trinity Hallの私立校出身学生の割合は2022年には32%だったが、最新のデータでは26%に低下している。
なお、同カレッジはUniversity of Cambridgeでも最古のカレッジの一つで、1350年に創立された。
(2026年1月7日)
【英文記事】The Guardian :
(2) 欧州の大学、エラスムス・プラスの野心的計画には400億ユーロでは不十分と警告:英国も2027/28年度から再加盟
欧州大学協会(European University Association: EUA)は、欧州の高等教育機関および関連団体とともに、EUの次期長期予算(2028~2034年)においてエラスムス・プラスに最低600億ユーロを配分するよう求めている。
現在提案されている予算は408億ユーロであるが、関係者たちはこの額では次世代のプログラムに対して提案されている、「野心的な活動」に対する資金としては十分ではないと主張している。
EUAの事務書記長のAmanda Crowfoot氏はインフレや新たな政策優先事項を踏まえれば、現行水準の予算では実質的な拡充は困難であり、欧州委員会が掲げる「スキル連合(Union of Skills)」や「欧州教育圏(European Education Area)」を十分に支えることはできないと指摘した。また、学習者の流動性拡大や戦略的優先分野への新規奨学金創設も難しくなるとの見解を示し、EUの競争力強化には相応の教育投資が不可欠であると述べた。
ヨーロッパ国際教育協会(European Association for International Education: EAIE),
ドイツ学術交流会(German Academic Exchange Service: DAAD)、CESAERなどの多数の機関も連名で共同書簡を発表し、欧州の教育・スキル・人材目標を達成する上でエラスムス・プラスへの「野心的な資金投下」が必要であると訴えた。
声明では、エラスムス・プラスは欧州の「最も成功した政策の一つ」であり、約40年にわたり学習者の自信向上、機関間協力の強化、欧州統合の深化に貢献してきたと評価している。さらに、地政学的緊張が高まる中においても、本プログラムはスキル向上、雇用可能性、革新能力、市民参加に長期的効果をもたらすと強調している。
2025年12月、英国の2027/28年度からエラスムス・プラスに再参加することが発表された。EU離脱後、6年ぶりの復帰となる。EUAは欧州の大学の声として、英国の加盟大学と連携し、エラスムス・プラスへの復帰を促進した。この合意により2027年1月から英国の学生は追加料金なしでこの制度を利用ができ、国際教育の分野から歓迎されている。英国政府は復帰後の初年度で10万人以上がエラスムス・プラスの恩恵を受けると見込んでいる。
EUAのJosep M Garrell会長は、英国と欧州の関係修復によって「学生・職員の流動性や大学間協力(欧州大学連合を含む)、さらには共同政策が促進される」と述べた。
(2026年1月8日)
【英文記事】The Pie:
https://thepienews.com/europes-universities-say-e40bn-isnt-enough-for-erasmus-ambitions/
(3) 大学発AIスピンアウトにおける株式保有比率の上限設定を求める声
テック系のスタートアップ企業の支援団体Startup Coalitionは、政府に対して英国全土の企業基盤を刺激するためにAI関連スピンアウト企業における大学の株式保有比率に上限を設けることを検討すべきだと求めている。
1月8日、同団体は英国のAIスタートアップ上位1,000社について、未公開資本規模に基づく分析結果を公表した。その結果、トップ企業の10社に1社が大学発スピンアウトであることが明らかになった。同団体は、英国の「豊かな学術文化と強力な大学」を踏まえれば驚くことではないとしている。
しかし、さらなるスピンアウト創出には依然として障害があると指摘し、大学は保有株式をより低く抑えることで起業を促進すべきだと主張した。
大学の平均株式保有率は低下しており、25%(2014年)から16.1%(2024年)まで減少したが、Startup Coalitionは、依然として高すぎるため、創設者の意欲の希薄化と、外部投資の障害の原因になっていると指摘し、政府は英国をトップ国と同等に引き上げたいのであれば、段階的な上限設定の導入を検討するべきと提案した。歴史的に大学は過剰な株式保有、大学に有利な知的財産条項、事業拡大を支援する商業的専門知識の欠如などで批判されてきた。最近は改善がみられるものの、学術的な卓越性を商業的な成功につなげるためにはまだまだやることは多い。
英国のAIスタートアップ企業の分析の結果、上位1,000社のうち649社はロンドンに本部を置いている。首都ロンドンはStartup CoalitionのAI インデックスに掲載されたスピンアウト企業の数でも最多である。しかし不均衡さはそれほど顕著ではなく、英国の全地域で、同インデックスに登録されたスピンアウト企業が少なくとも1社は存在している。英国のトップAIスタートアップ企業の資金調達額は200億ポンド以上であり、企業価値の合計総額は450億ポンドを上回っている。
Startup Coalitionは「これは資本、人材、イノベーションの集中を意味しており、英国を世界のAI競争における強い候補に位置付けている」と述べた。
しかし、他国がAI企業、人材、投資を誘致するための“積極的”な戦略をしているためAIセクターの軌道は”保証されていない。もし英国がAIのリーダーシップをとることを真剣に目指すのであれば、過去の優位性のみに頼ることはできない。”と語った。
(2026年1月8日)
【英文記事】Research Professional News:
(4) 英国政府:留学生目標数を棚上げ
政府は新しい国際教育戦略を発表し、2030年までに教育輸出の価値を400億ポンドに拡大することを目標とした。しかし戦略には英国教育機関の留学生数の目標数は含まれていない。
教育輸出は英国経済に年間320億ポンド以上をもたらしており、その73.4%が高等教育機関からである。
教育省(Department for Education:DfE)は「この戦略は学校、大学、カレッジ、などの英国の教育機関が英国特有の立場を利用し高品質な教育を海外からの需要の増加に対応することを促す。また海外展開に伴う煩雑な手続きの簡素化も進め英国の教育機関を支援する。」と述べている。
教育大臣のBridget Phillipson氏は海外展開は大学にとって収入源の多様化、世界的なパートナーシップの強化となり、多くの学生が自国で高品質な英国の教育を受ける機会を提供できると述べた。
前回2019年の戦略では2030年までに留学生数を60万人とすることを目標としていたが、高等教育政策研究所(Higher Education Statistics Agency: HESA)統計によれば本目標は2020/21年度にすでに達成されている。今回の戦略では、こうした人数目標は設定されていない。
元大学担当大臣であるChris Skidmore氏を含む一部の関係者は、踏み込んだ目標設定が必要であると以前から求めていた。
一方、近年では移民規制の強化により留学申請が減少している。内務省(Home Office)統計によれば、学生ビザ申請は直近で約3万人減少した。
DfEは、本戦略は英国に学びに来る人々が正真正銘の学生であることを保証し、教育機関が自らの責任を真剣に果たすという政府の取り組みと併せて実施される、と述べた。大学は強化されたコンプライアンス基準の対象となり、基準を満たさない場合は募集制限や認可取消などの措置が科される可能性がある。
同時に政府は、海外展開や国際パートナーシップの拡大を通じて教育輸出を強化する方針を示した。新設されるEducation Sector Action Groupでは、元University of Exeter学長で政府の国際教育推進担当を務めるSteve Smith氏が大学と連携し、海外展開における貿易障壁の解消に取り組む。
またDfEは、海外教育の拡大は大学の事業基盤強化や英国資格への参加拡大、国内の雇用・投資促進にも寄与するとしている。また、本戦略は政府の国家再生計画の一環として、大学の国際競争力強化と規制改革を進めるものだと位置付けている。
英国大学協会(Universities UK: UUK)の会長でManchester Metropolitan University 学長のMalcom Press氏は、本戦略は英国大学の国際的影響力を強化する新たな決意を示すものであり、学習者・経済・英国の国際的地位に利益をもたらすと評価した。
(2026年1月20日)
【英文記事】Research Professional News:
【参考記事】教育省(Department for Education:DfE):
https://www.gov.uk/government/news/strategy-to-boost-uk-education-abroad-in-major-40bn-growth-drive
(5) 英国: 主要技術分野の研究者のビザ費用を「返還」へ
財務大臣であるRacheal Reeves氏はダボス会議において英国に研究人材を誘致し、維持するための一連の措置を発表する予定であることを述べた。
財務省によれば、Reeves氏はAI、量子コンピュータ、半導体などの分野の研究者や学者に対するビザ料金返金を発表する予定である。関係者の間では研究者の高額なビザ料金の引き下げを長い間求めてきていたが、これまで閣僚たちからは拒否されてきた。
スイスのダボスで開催される世界経済フォーラムの年次総会に先立ち、Reeves 氏は「不安定な世界の中で英国は傑出している。政府は企業や投資家が望む安定性、人材、資本を提供し、さらなる成長の拠点になるよう努めている。」
スイスで発表されると見込まれるその他の施策として、英国の大学で学ぶための新しい奨学金制度が含まれており、「国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad:IMO)の金メダリストが対象で世界トップの研究所チーム、スタートアップ企業、研究所でのインターシップも含まれている。」と財務省は付け加えた。
この奨学金はハイリスク、ハイリターンの機関である高等研究発明局 (Advance Research Invention Agency: ARIA)が調整する。
声明によると、神経学やオンライン偽情報対策などの分野で英国へ優秀な研究者を誘致するために構成された5,400万ポンドのグローバル・タレント基金に選ばれた新たな4人の受賞者の詳細も発表される。
政府はまた「グローバル人材タスクフォース(Global Talent Taskforce)の資金を2倍に拡大」することも計画しており、民間企業のヘッドハンティングの専門知識の導入、個人の移住や企業による英国事務所の迅速な設立を支援する新しい機能の設立、国際的なAI人材に焦点を当てた、世界のエリート人材に対するコンシェルジュサービスの強化などが含まれる。
「本日発表される一連の人材政策は英国の現代産業戦略に従って、仕事、学習、起業を志す優秀な人材が英国を第一希望とすることに役立つであろう」と財務省は述べている。
ビジネス・貿易大臣であるPeter Kyle 氏は「我々は世界的な人材獲得競争のトップであるべく、英国を優秀な人材やイノベーターにとって目的地と位置付けている。AI、量子、ライフサイエンス、クリーンエネルギーの分野のトップを誘致することで成長とイノベーションを推進するとともに、英国を世界最高の起業家にとって最良の土壌とする」と述べた。
財務大臣はイベントの最後に、世界のトップの人材を誘致し、滞在の長期化を図る最善策を模索することを約束した。
(2026年1月20日)
【英文記事】Research Professional News:
【参考記事】財務省 (HM Treasury ):
Reeves tells Davos:Britain is the best place in the world to invest (20JAN26)
(6)UKRIは創造産業の支援でテクノロジーを優先
UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、創造産業支援をテクノロジーに重点を移行する方針を発表した。
1月20日、UKRIは創造・文化経済の研究開発戦略を発表し、「創造的革新と先端技術」の融合で英国を「クリエイテック(createch)」の世界的なリーダーにすることを表明するものである。
UKRIはクリエイテックへ重点を置くことで「この分野及び波及効果が促進され、成長と新しい事業創出のために英国の知的財産の可能性を最大に引き出す。」と述べた。
この戦略はデジタル・文化・メディア・スポーツ省(Department for Digital, Culture, Media and Sport: DCMS)が政府として創造産業に対して公的・民間からの研究投資を増加し、「英国でクリエイテック事業を創出し、成長するための最適な場所とする」ことを表明したことを受けて策定された。
戦略はまた、対内直接投資を誘致することや、民間パートナーとの提携にも重点を置いている。その成功指標は主にイノベーションに重点を置き、その中には「クリエイティブ研究開発分野やクリエイテックで学んだ博士号取得者の増加」および「新しいスタートアップや大学発ベンチャー、製品、サービス、プラットフォーム、知的財産」などが含まれている。
この発表は、University of LiverpoolとLiverpool John Moores Universityが主導する音楽分野のイノベーションのためのパートナーシップMusicFuturesによるイベントで、創造産業担当大臣であるIan Murray氏によってされた。
「政府の投資がリバプール都市圏の音楽産業に変革を起こしMusicFutures のような革新的なプロジェクトの繁栄の後押しをしてきたことを我々は目のあたりにしてきた。我々の産業戦略では成長を促進し、英国全土に存在する地域の創造性クラスターを基盤として発展することを約束している。」とが述べた。
MusicFuturesは2024年に芸術・人文科学研究会議(Arts Humanity Research Council:AHRC)から資金提供を受けた2つの創造産業クラスターの1つである。UKRIは12月に今後4年間で創造産業に3億6,900万ポンドの投資を行うことを発表した。そのうち1億ポンドは新規の創造産業クラスターに配分される。
Murray氏は全国の地域に対してAHRCが1月に開始した2,700万ポンドの資金獲得を呼びかけ、「最先端の創造企業のクラスターを成長させ、リバプール都市圏の成功再現」をするようにも求めた。
AHRCの議長であるChristopher Smith氏のコメント:
UKRIは創造産業へ過去最高の投資を約束した。なぜなら創造産業は英国の繁栄と産業戦略を通じて経済成長の促進に大変重要であるからである。
Innovate UKの会長であるTom Adeyoola氏のコメント:
資金調達獲得を合理化し、最先端技術の商業化を加速することで地域やサブセクターの機会を確保し、包括的な成長を促進するとともに、英国をクリエイティビティとイノベーションの世界のトップとして位置付ける。
なお、同イベントでMurray氏は英国の自然科学コレクションのデジタル化の取り組みである「英国分散型科学コレクション・システム(Distributed System of Scientific Collections: DiSSCo UK)」プログラムへの1億5,500ポンドの投資を発表した。
(2026年1月21日)
【英文記事】Research Professional News
【参考記事】UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/uk-research-and-innovation-launches-creative-industries-strategy/
(7) ラッセル・グループの新CEO発表
Libby Hackett教授がラッセル・グループの次期最高経営責任者に任命され、2026年5月から就任する。
Hackett教授はオーストラリア政府と大学間の共同事業体で、公共政策の改善を目的とするオーストラリア公共政策研究所(Australian Public Policy Institute)から移籍する。ここでは2021年の設立時からCEOを務め、組織の設立と大幅な拡大を行い、オーストラリアの大学が政府政策に与える影響の拡大を主導してきた。またUniversity of Sydneyの経済学部の客員教授でもある。
Hackett教授は英国高等教育機関でも豊富な経験があり、政府の最高幹部や大学のリーダーとの業務に携わってきた。同氏はUniversity Alliance の初代CEO、ラッセル・グループの研究部長、教育スキル特別委員会(Education and Skills Select Committee)の特別顧問などを歴任した。また10年にわたる国際関係と民間セクターでの経験は今後の役職に活かされる。
Hackett教授は、2017年からラッセル・グループのCEOを務めた後昨年の夏に退任を発表したTim Bradsshaw博士の後任となる。
(2026年1月21日)
【英文記事】ラッセル・グループ:
https://www.russellgroup.ac.uk/news/professor-libby-hackett-appointed-chief-executive-russell-group
(8) 英国政府:University of Cambridgeのスーパーコンピュータに3,600万ポンドの投資
政府はUniversity of Cambridgeにあるスーパーコンピュータに3,600万ポンドの投資を発表した。これにより2026年春までに、計算能力が6倍に増加するという。
スーパーコンピュータ「ドーン(Dawn)」の拠点となっている同大学は、研究者たちに高性能AIコンピュータの無料アクセスを提供している国家プログラムである人工知能研究リソース(AI Research Resource: AIRR)に参加している。
科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)が1,600万ポンド、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)が2,000万ポンドを出資し、「科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)が1,600万ポンド、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)が2,000万ポンドを出資。「これによりスーパーコンピュータ・ドーンはより多くの最先端のAIチップを研究者やスタートアップ企業に無料提供ができる。」とDSITは語った。これらは、研究者、臨床医、イノベーターが公共サービスを画期的に向上させるために必要なツールとなるであろう。」と述べた。
AI担当大臣であるKanishka Narayan氏は、「研究者たちとスタートアップ企業はスーパーコンピュータへのアクセス不足で阻害されてきた。この出資はそれを変えるものである。英国のイノベーターに大企業と競争し、生活を向上させるAI開発のためのツールを提供する。」と述べた。
この追加投資で提供されるチップは世界でもっとも高度なAIプロセッサーの一つであるとDSITは語った。「これにより、より大規模なデータセット、より野心的なアイディア、そしてこれまで不可能であった全く新しいプロジェクトの実現が可能となる。」
DSITによると、ドーンはすでに350件以上のプロジェクトを支援しており、ワクチン開発、腫瘍の標的治療を加速させるAIツールを開発している。
AIRRは2023年にRishi Sunak氏の保守党政府によって発表され、2025年7月に開始している。この制度に対する初期申請をResearch Professional Newsが分析したところ、University of Cambridge, University of Oxfordおよびロンドンの3つの研究集約型大学が、制度開始時に提供されたスーパーコンピュータ利用時間の82%を占めていた。
(2026年1月26日)
【英文記事】Research Professional News:
【参考記事】科学・イノベーション・テクノロジー省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
(9) 新データが明らかにする英国高等教育在籍者構成の変化
2026年1月27日に発表された新しい英国高等教育参加状況統計では、英国の高等教育在籍者に継続的な変化があったことを示している。
2024/25年度の総在籍学生数は1%減少であったが、セグメント別には学士号課程の在籍数は2%増加に対して大学院課程は11%の大幅な増加となっており、異なった傾向を示している。同時に、大学院修士課程の入学者は5%減少しており、これは主に留学生数の大幅な減少によるもので 特に非EU圏からの入学者の減少が10%と著しかった。こうした変化は、英国の将来の人材確保や国際競争力のあり方に重要な疑問を提起している。
国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)の最高責任者であるJoe Marshall博士のコメント:
「これらの新しい数値は学生の需要と高等教育機関の優先事項を反映し、高等教育機関の変遷を強調している。学士号課程入学生の継続的な増加は英国高等教育の持続的な魅力を示している一方で、大学院研究課程の学生数の増加は、英国研究基盤の国際競争力を強調している。これらは、大学が幅広く財政的、人口動態、政策的な圧力に適応しながら、これまで以上の高度なスキル、イノベーション、知識創造への方向に向かっていることを意味する。しかし大学院課程の入学人数、特に留学生の継続的な減少はまさに懸念材料である。留学生は英国のスキル人材育成に重要であり、英国の研究やイノベーション能力に大きく貢献している。英国が生産性と世界の競争力を強化するために努力をしているなかで、この分野で不安定性を許容する余裕はない。政府と教育分野は提携し、英国の大学が魅力的で開放的で国が必要とする人材や研究を提供できる体制を維持していかなければならない。」
2024/25年度のデータでの主な項目
高等教育統計局(Higer Education Statistics Agency: HESA)の統計詳細: https://www.hesa.ac.uk/news/27-01-2026/sb273-higher-education-student-statistics/notes
(2026年1月27日)
【英文記事】国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)
(10) 18歳人口増加で英国大学の志願者が増加
2026年1月28日に発表された January Equal Consideration Date(ECD)によると、英国の18歳の大学進学希望者数は338,940人で前年の323,610人から4.8%の増加となった。この増加は18歳人口の増加を反映しており、申請数がパンデミック前の水準に戻ってきたことを示唆している。
大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)による分析では18歳の大学申請率は40.7%(前年40.6%)で昨年からわずかに増加した。2022年にピーク(42.8%)をむかえた後、需要がコロナ前の平常時の水準に戻る傾向を示している。
英国全土で恵まれない環境の出身者で18歳の進学希望者の増加も観測されている。イングランドではIMD Quintile 1階層(最も社会的・経済的に恵まれていない地域の上位20%)の階層から51,330人(2025年は48,520人で5.8%の増加)、ウエールズは1,850人(前年は1,630人で13.6%増加)であった。スコットランドも同様のSIMD Q1階層からは2,840人(前年は2,590人で9.7%増加)、北アイルランドでNIMDM Q1層は1,710人(前年は1,600人6.9%増加)であった。
UCAS経由で学部課程に応募した留学生数は124,830人(前年118,800人5.1%増加)で中国は引き続き最大の志願者送出国であり、志願者数は前年比10%増の34,380人(前年31,160人)となった。
UCASは今年高等教育機関のカテゴリーを更新した。これによると選抜性の高い大学(higher tariff)に志願した数は6.9%増加で247,130人(前年231,070人)であった。中程度の大学(medium tariff)志願数は2.8%増加で212,680人(前年206,880人)であり、選抜性の低い大学(low tariff)は最も小幅な伸長となり1.8%増で180,210人(前年176,940人)といずれも増加した。
小規模機関への志願は4.2%増の9,360人、専門機関は2.3%減の40,670人であった。
その他の主な分析結果:
UCASの最高責任者であるJo Saxton博士のコメント:
恵まれない環境出身者の増加を歓迎するとともに、学生が財政的・個人的負担を抱えていることを認識しているUCASは新たに奨学金・助成金検索ツールを開始し、2027年からはケアリーバー(養護施設退所者)への出願料免除を拡大する。進路選択に悩む学生に対しては、UCAS Hubを通じた情報提供を強化する方針である。
(2026年1月28日)
【英文記事】大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)
(11) 英国の物理学研究・科学施設、深刻な予算削減に直面
今後4年間で英国の科学施設と物理学・天文学に対する政府研究資金の大幅な削減があると報道された。1月28日に行われた科学技術施設会議(Science and Technology Facilities Council: STFC)の幹部の職員向け説明で、2029/30年度までに1億6,200万ポンドの予算削減の必要で「大幅な節約」が必要であると伝えた。STFCの執行責任者であるMichele Dougherty氏は同日付書簡で削減措置には「多くのプロジェクトへの投資停止または縮小が含まれる」と述べている。
UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)の傘下にある7つの研究会議の一つでもあるSTFCは素粒子物理学・天文学・核物理学プログラムを通じて、大学の研究者に対し外部助成金を提供している。英国の主要な粒子加速器など大規模科学施設や、国立研究所ネットワークの支援を行っている。
STFCは職員向け説明で「直面している課題はSTFC史上最大規模で、大幅な改革なしに、対応ができない。」とし「科学ポートフォリオ全体の優先順位を再確認し、確実に秀でている分野のみに集中する必要がある。そのためより少ない分野に集中し、質の向上と持続可能な資金提供を行う必要がある。」と伝えた。
今回の予算削減は、UKRIの資金配分制度をめぐる大規模な改革を背景としている。 こうした変革はUKRIの4年間で386億ポンドの予算で最大の割合を占める好奇心主導型研究に対し、同機関がどの程度の支援を行うのかという点について疑問を生じさせている 。この変革はすべての研究会議の影響がでるものの、STFCは運営支援している施設のコストの問題があり、よりその圧力にさらされている。
削減計画の概要には、物理学・天文学分野の外部資金による助成金やプロジェクトの助成金・プロジェクトの「ポートフォリオ再配分」により3,800万ポンドのコスト削減が行われることが含まれている。
Dougherty氏は2026/27年度の削減について、「昨年新助成金を15%削減したことに基づき、プログラムの長期的なバランスをとるもの」と説明。外部助成金は2024/25年度に拡大した予算の約70%となる見込みで、科学的に優れたプロジェクト間で困難な選択が求められる。
また同氏は研究会議のプロジェクトリーダーたちに対して「資金が据え置き、20%、40%、60%の削減があった場合の対応及びさらにどの段階でプロジェクトの継続が不可能になるか、を明らかにするよう求める予定である。。」と付け加えた。
UKRI広報担当者は、「Spending ReviewでUKRIは4年間の予算は過去最高を確保したが、STFCは上昇するコストにより特別な圧力に直面している。
(2026年1月28日)
【英文記事】Research Professional News:
【関連記事】
Research Professional Newsによると、4つの大規模な物理インフラプロジェクトはUKRIから「優先事項ではない」と通知を受けたことが明らかになった。これらプロジェクトにはUKRIから2億8,000万ポンド以上の資金提供が約束されていたが、打ち切りに直面しており、英国の主要国際科学施設への参加に問題が生じる可能性がある。数百人の研究職、特に若手研究者に影響が及ぶ。
影響を受けるプロジェクトには、CERNとの共同素粒子物理研究(大型ハドロン衝突型加速器(LHC)のアップグレード計画)、米国のElectron-Ion Collider(EIC)、英国国内の国家施設2件が含まれる。CERNプロジェクトは英国主導で25か国が参加する世界最大級の加速器建設計画で、すでに4,940万ポンドのうち500万ポンドが支払われたが、残額が危うくなっている。EICは米国エネルギー省主導でニューヨーク近郊ブルックヘイブン国立研究所に建設中の新型粒子加速器で、英国からは英国内の7大学と2国立研究所に総額5,880万ポンドが配分される予定だった。University of GlasgowのDaria Sokhan氏は、これらの撤退が国際的評価を大きく損なうと警告した。
その他、University of Liverpoolで建設予定の「相対論的超高速電子回折・イメージング」国家施設(1億2,440万ポンド予定)、質量分析施設C-MASS(4,935万ポンド予定)も影響を受ける。これらは基礎科学や化学的プロセスの観察など、世界的に唯一の施設である。
今回の決定は、STFCの2029/30年度までに求められている1億6,200万ポンドの予算削減計画と重なっており、物理学・天文学の研究資金や施設への圧力が増す状況である。STFCのMichele Dougherty氏は、一部の研究助成金が停止または削減されるとの発表は、「クリスマス前にインフラ基金プロジェクトについて下された厳しい決定」に続く動きである。
UKRIは、インフラ基金プロジェクトの再検討を進め、独立した助言を踏まえて新しいインフラ投資のポートフォリオを優先した一方、支援できないプロジェクトは停止・中止した。採択プロジェクトは近く正式発表され、未採択のプロジェクトは2027年に再検討される可能性がある。UKRI広報担当者は、国家優先事項に従い、知識向上、生活改善、成長に最も寄与するプロジェクトを追求すると述べた。
(2026年1月30日)
【英文記事】Research Professional News:
(12) 産学連携を通じた食生活・健康分野のイノベーションに向けた300万ポンド投資
バイオテクノロジー・生物科学研究会議(Biotechnology and Biological Sciences Research Council: BBSRC)と環境・食糧・農村地域省(Department for Environment, Food and Rural Affairs: Defra)は新たな「食生活・健康共同研究開発プログラム(Diet and Health Collaborative Research and Development programme)」に共同投資をする。
300万ポンドのプログラムは英国の食品イノベーションにおける世界的リーダーとしての地位を強化する。
このプログラムは学術界と産業界の強い提携を促進することで英国の世界トップクラスのバイオサイエンスの成果を実用的な解決策へと迅速に転換することを目的とする。
消費者にとってより健康的、より持続可能で高品質な食品を提供し、新食品の開発や食品加工におけるイノベーションを支援する。
BBSRCとDefraが共同設計し出資するこのブログラムは英国の食と健康の研究開発の次の段階を形成する。
このパートナーシップはDefraの政策優先事項と連携させて、持続可能性、回復力、経済成長を統合する総合的なアプローチを通じて「Good Food Cycle」の実現を支援する。
この投資はUKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)がこれまで取り組んだ分野をもとにしている。
この中にはすでに食品イノベーション・エコシステムを通じた参加者で形成される「Diet and Health Open Innovation Research Club」への1,500万ポンドの投資も含まれている。
一体となった取り組みは食品システム全体の長期的な機会は挑戦に取り組むために必要な科学的、産業的な能力の解放に貢献している。
新しいプログラムを通してBBSRCとDefraは以下の研究とイノベーションを支援する。
(2026年1月29日)
【英文記事】UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovagtion: UKRI)
https://www.ukri.org/news/3-million-investment-to-drive-diet-and-health-innovation/
(13) 報告書「Research and innovation key policy shifts in 2025」の概要
国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business)は2026年1月9日、「Research and innovation key policy shifts in 2025」と題した報告書を公開した。その概要は以下の通り。
2025年、英国政府は研究・イノベーションを経済成長と政府における幅広い目標実現のための重要な戦略資産と位置付けた。
これに対して政策立案者は、英国とその国民への影響と利益を最大化するための一連の重要な政策的な措置を導入した。
その変化は主に以下の特徴を持つ。
本報告書では、これらの変化の内容と、大学や企業、さらにそれらの連携にどのような影響を与えるのかについて詳しく説明している。
Research and innovation/ Key Policy Shifts in 2025: https://www.ncub.co.uk/wp-content/uploads/2026/01/6642_NCUB_Policy_Digests_Research_Innovation_V3.pdf
(2026年1月29日)
【英文記事】国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB):
https://www.ncub.co.uk/insight/research-and-innovation-policy-2025/