2025年9月17日
(1) 留学生の高額な学費が大学の主要な財源との主張は過大評価
(2) 欧州研究大学連盟 (LERU) がHorizon Europeの改善策を歓迎
(3) 英国のAIは世界トップ水準か、それとも遅れているのか?
(4) UKRI:査読方法で画期的な変革の拡大
(5) イングランドの未来に備えた10年健康計画
(6) エジンバラ大学が医療従事者向け医学部コースの初の卒業生を輩出
(7) ARIA:集中研究組織を1年以内に設立
(8) アラン・チューリング研究所:防衛に注力するか、資金を失うか
(9) 大学進学希望者の幸福度が戻ってきた
(10) 英国の学生の声:2025年の全国学生満足度調査結果発表
(11) 科学担当大臣:ARIAを情報公開の対象にしない
(12) 英国、産業界と連携し革新的技術開発を加速、23の繁栄パートナーシップに4,100万ポンド支援
(13) 英国の公共サービス向けAI開発:優秀な技術者向け100万ポンドのフェローシップ応募開始
(14) 英国高等教育の欠陥:技術者育成の欠如
(15) FP10:英国の参加意識高まる中、準参加国が基礎研究の重要性を強調
(16) UKRI戦略「Transforming Tomorrow Together」の進捗報告書(概要)
(17) 大学の学費が実質価値3分の2の落ち込み
(18) 英国政府、ライフサイエンス産業の成長戦略を発表
(19) 2022/23年度の英国大学卒業生の進路と収入に関する統計
(20) 英国大学出願者数が過去最多に ― UCASが最新データを公表
(21) 欧州委、次期研究・教育予算案を発表:Horizon EuropeとErasmus+に大幅増額も、制度の不透明さに懸念も
(22) 英国の研究の第一人者たちが、世界最高の才能の誘致を主導
(23) 2025年7月22日より施行される移民法変更最新情報
(24) ライフサイエンス局新会長が、より健康で豊かな英国を目指す政府のライフサイエンス推進計画を強化
(25) UKRI、研究成果収集サービス契約をResearchfishと更新
(26) ガザの奨学生40人、渡英できず 支援求める声高まる
(27) 院決済委員会の警告:UKRIは説明責任と規模拡大の目標があいまい
(28) 卒業生が世界中の大学の資金をどのように増やしているか
(29) 学生局: 学生・大学・納税者の利益を促進する事業計画を発表
(30) 英国のスキル不足に関する最新データ(2024年調査)
(31) 英国大学、ビザ基準強化で一部の国の学生受け入れ停止
(32) REF2029の行動指針(CoP)の承認手続きが公表
(34) 英国各国にR&D支援 強み生かした経済成長へ
(35) ホライズン・ヨーロッパ保証制度:2025年11月27日最終期限迫る
(36) 英国王室天文官に女性が初めて任命
(37) 教育機関での語学学習機会が破壊的に激減
(38) 英国医学アカデミーの次期CEO決定
(1) 留学生の高額な学費が大学の主要な財源との主張は過大評価
2025年7月2日、英国のシンクタンク“Policy Exchange”が大学の財政構造見直しと留学生制度の縮小に関して提言をした。
留学生による「内部補助金(cross-subsidy)」は過大評価であるとしている。つまり「留学生の高い学費が、英国人学生の教育費や大学の研究活動の財源になっている」という主張は、多くの大学で実態とかけ離れていると指摘している。特に、最近急激に留学生を増やしている中・下位の大学では、留学生1人あたりが生み出す利益が少なく、国内学生や研究への支援にはほとんどつながっていないとしている。そのよう大学での学生1人あたりの黒字額が平均2,900ポンドにとどまり、十分な補助効果はないと指摘。対照的に「上位大学」では、平均黒字額は10,400ポンド。
またGraduate visa(卒業後の就労ビザ)制度に関しては、短期の修士課程で低ランクの大学に来る留学生の温床になっていると指摘。多くがこの制度を「英国での長期就労・永住への足がかり」として利用しているとし、制度そのものの廃止を提案。
これに対し大学関係者は、制度廃止は英国の高等教育の国際競争力を損なうと反発。
大半の留学生は数年で帰国し、制度の悪用は広がっていないと主張。
英国とEUの若者向けモビリティ制度(30歳未満対象)については、EU学生に国内学生と同じ学費が適用される可能性があることに懸念している。Policy Exchangeは「EU学生に国内料金を認めるべきでない」と警告。実施されれば、英国大学は年間約6億5,000万ポンド(約1,300億円)の収入を失うと試算。
これに対する大学関係者の反論として、留学生による年間400億ポンド超の経済貢献については、複数の調査・研究報告が公表されている。
ラッセル・グループのCEOも「留学生は英国全土に社会・文化・経済的利益をもたらしている」と強調。
Policy Exchange*:Policy Exchange は、英国の主要な保守系シンクタンクの一つで、保守党に近い立場から政策提言を行っており、実務寄りかつ政策実装を強く意識したスタイルが特徴。教育、移民、統治、国家安全保障など幅広い分野を扱い、現政権に影響を与える提言もしばしば行っている。
【英文記事】Research Professional News:
(2) 欧州研究大学連盟 (LERU) がHorizon Europeの改善策を歓迎
2025年7月2日、欧州研究大学連盟* (League of European Research Universities: LERU) は、欧州委員会が発表したEUの研究・イノベーションプログラム「Horizon Europe」の2025-27年版作業計画における簡素化の動きを心から歓迎した。LERUは、これらの措置がプログラムを申請者にとってより魅力的でアクセスしやすいものにすることを期待している。
LERUが特に評価している具体的な歓迎点と要望は以下の点:
またLERUは、単一評価よりも二段階評価の導入が増えることを歓迎している。これは、最初の段階で必要な情報が少なくなるため、申請者の負担軽減につながると見ている。
しかし、LERUは、欧州委員会に対し、最初の段階を「はるかに負担の少ないもの」にするよう求めている。例えば、研究アイデアとその関連性にのみ焦点を当てるべきだと提案している。また、申請者が一次審査と二次審査の間に十分な時間を確保できるよう警告している。
LERUはさらに以下の点を求めている:
欧州研究大学連盟*:2002年にヨーロッパの12の世界トップレベルの研究を行う大学が集まり設立された組織で、2024年にはその数が24大学となった。欧州の研究・教育政策への影響力強化を目指している。英国からはCambridge, Edinburgh, Imperial College London, UCL, Oxfordの大学が加盟している。
【英文記事】Research Professional News:
(3) 英国のAIは世界トップ水準か、それとも遅れているのか?
2025年7月3日、英国ではコンピューターサイエンスの志願者が10%減少する中、AI専攻の志願者は15%増加し、特に女性の増加率が男性を上回っている。ただし、AI専攻はまだ全体の5%に過ぎない。
英国はAI研究で強みを持ち、世界AI準備度ランキング4位であるが、米中に比べスーパーコンピューターなど基盤投資が遅れている。教育面でも、中国や米国、フィンランドに比べ、国家的なAI教育戦略が不十分で、現状は一貫性にかける施策にとどまっている。
今後の重点課題は以下の3点:
特に女性志願者の増加は大きなチャンスで、AIを工学だけでなく社会全体の課題として捉え、他分野と連携した実践的な教育が重要である。
英国はAI教育の抜本的な改革と迅速な行動が求められており、今こそ世界をリードする好機だと強調している。
【英文記事】University World News:
https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20250703192248342
(4) UKRI:査読方法で画期的な変革の拡大
2025年7月3日、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、申請者同士が互いの提案を審査する「分散型ピアレビュー(Distributed Peer Review: DPR)」方式を試験導入し、今後本格導入に向けて拡大を検討している。最初の試験導入は、2024年2月に経済社会研究会議(Engineering and Physical Science Research Council: ESRC)が開始した「メタサイエンスAI初期キャリアフェローシップ」制度の応募者を対象に行われ、以下の成果が確認された:
さらに、8割以上の参加者が「分野の知識が深まり、自身の申請書作成スキルも向上した」と回答。この結果を受け、UKRIは2026年春の本格拡大を計画中で、今後さらに試行を重ねて制度を改善する方針である。
背景と意義:
そのほかの試行例として:
UKRIは今後、DPRのさらなる試験と改良を重ねたうえで、迅速で負担の少ない資金審査制度としての本格導入を進める見込みである。
【英文記事】Research Professional News:
(5) イングランドの未来に備えた10年健康計画
2025年7月3日、政府は、未来にふさわしい保健医療体制を築くため「10年健康計画(10 Year Health Plan)」を発表した。この計画では、国民保健サービス(National Health Service: NHS)の抜本的改革として次の3つの大転換を進める:
これを実現するために、政府はNHS全体を改革の準備が整った体制に転換させる方針で、その手段として:
政府はこの計画を、市民・医療介護スタッフ・関係組織と共同で策定するとし、2024年10月に「Change NHS」キャンペーンを開始。
これはNHSの未来に関する史上最大の意見募集で、25万件超の意見(市民・医療介護従事者・医療関係機関など)を集めた。
【英文記事】保健社会省(Department of Health and Social Care:DHSC)
【関連記事】
2025年7月3日、英国大学協会(Universities UK: UUK) CEOのVivienne Stern氏は、政府の10カ年医療計画について、大学がNHSの将来にとって不可欠なパートナーだと述べた。
大学は、NHSに必要な医師や看護師をはじめとする医療従事者を育成しており、入学者のおよそ9人に1人が医療分野に進んでいる。Stern氏は、NHSの将来的な人材ニーズを満たすため、政府と大学が協力し、迅速に取り組む必要性を強調した。
また、大学は地域に根ざし、地元でNHSに必要なスキルを持つ人材を育成・定着させる役割も果たし、これにより、過密な病院の負担を減らし、地域医療への移行を支援する。
さらに、大学は医療従事者の育成だけでなく、命を救う医療の進歩や、全国的な医療の質の向上に繋がる研究とイノベーションも推進している。政府の目標達成に向け、引き続き緊密に連携していくことに期待を示した。
【英文記事】英国大学協会(Universities UK:UUK)
(6) エジンバラ大学が医療従事者向け医学部コースの初の卒業生を輩出
2025年7月3日、エジンバラ大学は、他分野の医療従事者が医師を目指すための5年制プログラム「HCP-Med」の初の卒業生20人を輩出した。このコースは2018年に創設され、看護師や臨床検査技師などが働きながら学べるよう設計されており、最初の3年間はオンラインのパートタイム、最後の2年間は通常の医学生として臨床研修を行う。スコットランド政府の全額支援があり、特に地方出身者や社会的に不利な背景の人々にも門戸を開いている。
卒業生の一人であるCalum MacDonald医師は、ICU看護師としての経験を生かし、家族と仕事を両立させながら学業を修了した。彼は今後、麻酔医か一般診療医を目指す予定。
大学はこの新しい進路が、スコットランドの医師不足対策や医療人材の多様性確保に貢献すると期待している。
【英文記事】BBC News:
https://www.bbc.co.uk/news/articles/c86g44eznyeo
(7) ARIA:集中研究組織を1年以内に設立
2025年7月4日、英国の研究資金機関 である高等研究発明局(Advanced Research and Invention Agency: ARIA)は、米国の非営利組織 Convergent Research と協力して、特化型研究組織(Focused Research Organisations:FRO)の英国設立を目指している。今後12か月以内に、最低1件のFRO(Focused Research Organisation)を英国で立ち上げる計画である。
FROは、特定の科学・技術課題に取組む 期間限定の独立型プロジェクト組織 で、専任のCEOを置き、数年単位で集中型研究を行う点が特徴である。特に大学や企業では対応が難しいボトルネック課題の突破を目指している。ARIAの重点領域(プログラミングによる植物育成、地球観測、神経インターフェース、安全なAI)に沿ったテーマ選定も進行中である。
AREAはConvergent Researchとともに、研究者・技術者の FRO立案・運営スキル取得を支援するための6か月のプログラムを立ち上げ現在、候補者を選抜中で、近く第一期生が発表される予定。公的資金だけでなく民間・海外の支援も含め、FRO設立に向けた準備が着実に進んでいる。
【英文記事】Research Professional News:
(8) アラン・チューリング研究所:防衛に注力するか、資金を失うか
2025年7月4日、英国の科学技術大臣であるPeter Kyle氏は、AIとデータ科学の国立研究機関であるアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute: ATI)に対し、国防・安全保障分野への重点的な取り組みを求める書簡を送付した。政府は、今後3年間は国防・安全保障関連のR&D予算を維持するものの、資金支援は新たな重要業績評価指標(Key Performance Indicator: KPI)達成を条件とし、ATIの非国防分野の活動も国防・安全保障重視へ再編するよう要請している。
また、研究所の執行部や理事会も新たな重点分野に合った人材に刷新するよう求めている。Kyle氏は、これによりATIの中核資金を支える工学・物理科学研究会議(Engineering and Physical Sciences Research Council: EPSRC)への依存を2026年度以降減らすべきだとも指摘し、2026年の中間評価で長期的な資金の見直しも示唆した。
ATI側は、政府の要望を「批判ではなく協力的な提案」と受け止め、引き続き国防・安全保障を含むAI分野での高い社会的インパクトを目指すとしている。政府はこの動きを「AIセキュリティ機関に続く自然な展開」と位置付け、国民の期待に応えるものだとしている。
【英文記事】Research Professional News:
(9) 大学進学希望者の幸福度が戻ってきた
2025年7月8日、英国の学生寮大手Unite Studentsと高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)が共同で発表した「2025年度大学進学希望者意識調査」によれば、大学進学希望者の幸福度が初めてパンデミック前の水準を上回ったことが明らかになった。特に、留学生の幸福度が大きく改善しており、人生の満足度や幸福感、「生きがい」などの指標で、2019年の水準を上回る結果となった。一方、英国出身の志願者の状況はここ数年で大きな変化はなく、やや停滞が続いている。
この調査は、志願者のウェルビーイング(心身の健康/幸福度)、メンタルヘルス、経済状況などを年ごとに追跡する唯一の調査で、今年で4回目の実施となる。報告書によれば、メンタルヘルスの問題は過去2年間で安定傾向を示しており、「不安症」を抱ている学生の割合は2年前の38%から今年は35%に減少した。ただし、留学生と英国人志願者の間には大きな差があり、留学生の62%が「メンタルヘルスに問題はない」と回答しているのに対し、英国人志願者では38%にとどまっている。特に、英国人志願者は不安症やうつ病、摂食障害を経験する割合が留学生より高い傾向が顕著だった。
経済面でも改善の兆しが見られた。2024年には低迷した経済的自信が、今年は2023年の水準に戻りつつある。特に留学生の82%は「予算管理に自信がある」と回答し、前年の70%から大幅に上昇した。一方、英国人志願者で同様に答えた割合は54%にとどまる。
孤独感は依然として大きな課題で、今年の志願者の24%が「常に、もしくはほとんど常に孤独を感じる」と回答した。ただし、留学生ではこの1年で孤独感が大幅に改善し、20%から13%へと減少したのに対し、英国人志願者では27%から28%へとむしろわずかに増加している。
一方、大学に対する「帰属意識」は全体的に向上している。74%の志願者が「大学で歓迎され、帰属意識を感じられるだろう」と考えており、前年の68%から上昇した。特に留学生はその傾向が強く、88%が帰属意識を持てると考え、89%が「学生コミュニティに積極的に参加したい」と答えている。これに対し、英国人志願者はそれぞれ79%帰属意識)、66%(コミュニティ参加)にとどまった。
なお、Unite Studentsは英国最大の学生寮運営会社で、全国23都市・約150の物件を保有し、7万人以上の学生が利用している。同社は「学生が成功するための住まい」を理念に掲げ、大学とも連携しながら学生生活の質向上に努めている。
(10) 英国の学生の声:2025年の全国学生満足度調査結果発表
2025年7月9日、2025年の全国学生満足度調査(National Students Survey: NSS)に英国全体で35万7,000人以上の最終学年の学生が回答、回答率は71.5%であることが発表された。学生は授業や学習支援、評価、学生生活全般について意見を述べており、これらの結果は、将来の進学希望者の参考になるほか、大学・カレッジの教育改善にも活用される。
今年の結果では、すべての調査項目でポジティブな回答が前年(2024年)より増加した。イングランドの学生に関する主な結果は以下の通りです:
【補足】
【英文記事】学生局(Office for Students:OfS)
(11) 科学担当大臣:ARIAを情報公開の対象にしない
2025年7月10日、英国の科学閣外担当大臣であるPatrick Vallance氏は、高等研究発明局(Advance Research Invention Agency: ARIA)を情報公開法(Freedom of Information Act:FOI)の適用対象にする予定はないと発言した。ARIAは2022年、保守党政権の下で「ハイリスク・ハイリターン」の研究支援機関として設立され、当初からFOI法の適用対象外とされていた。
最近、情報公開監督機関(Information Commissioner’s Office: ICO)が別の法律(環境情報規則/ Environmental Information Regulations:EIR)に基づき情報開示を命じたことで、FOI法の適用を求める声が再燃。自由民主党の議員が7月8日、政府に適用を求めたが、Vallance氏は「ARIAは小規模で機動力の高い組織として意図的に設計された」「すでに資金提供先や運営コスト、地域別の支出情報は公開済み」と説明し、適用には否定的な姿勢を示した。
ARIAは環境情報規則には完全準拠しており、公開要請への対応に「過去数か月で300時間を費やした」としている。ただし、公開された情報は限定的で、例えば気候工学の野外実験計画は2027年以降になるとされている。
米国の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)を参考にして成立したARIAであるが、DARPAは米国の情報公開法の適用を受けているため、議員からはその違いを指摘された。これに対し、科学閣外担当大臣は「DARPAははるかに大規模な組織」であり、「ARIAは世界のほかの組織と比べても非常に多くの情報を公開している」と反論した。
【英文記事】Research Professional News:
(12) 英国、産業界と連携し革新的技術開発を加速、23の繁栄パートナーシップに4,100万ポンド支援
2025年7月10日, 英国の工学・物理科学研究会議(Engineering and Physical Sciences Research Council: EPSRC)は、医薬品製造や人工知能(AI)、サイバーセキュリティなどの分野で産業界の課題解決に挑む23の「繁栄パートナーシップ」プロジェクトに対し、総額4,100万ポンドの資金支援を発表した。これに加え、企業や学術機関からさらに5,600万ポンドの資金が拠出される。
今回の取り組みは、英国を代表する大手企業から中小企業まで幅広い産業パートナーと協力し、生活の質向上と経済成長を目指すものだ。プロジェクトは、生命を救う医薬品の開発促進、AIによる試験採点支援、重要インフラのサイバー防御強化、長寿命バッテリーの開発など多岐にわたる。
特に製薬分野では、アストラゼネカと連携し、環境負荷の高い貴金属パラジウムの代替金属開発や、AIを活用したがんや肥満などの生物学的治療薬の製造効率化を目指す。また、Kings College Londonは資格試験機関AQA(国におけるGCSEやAレベルなどの中等教育資格試験を運営する主要な試験機関。試験の作成から採点、認定までを担当)と共に、AIによる公正な採点支援ツールを開発する。
インフラ分野では、Swansea Universityが国家の交通やエネルギー施設のサイバーセキュリティ強化に取り組み、University of Nottinghamは輸送分野の電動化に寄与する新型リチウム硫黄バッテリーの研究を進める。
科学技術閣外担当大臣のVallance氏は、「これらのパートナーシップは英国の最先端研究と産業界の連携を象徴しており、炭素削減や医療アクセス改善など、実社会の課題に取り組む重要な役割を果たしている」とコメントした。
繁栄パートナーシップは2017年の創設以来、100件以上のプロジェクトに6億ポンド超の投資を行い、ゼロエミッションバスの実用化など多くの成果を挙げてきた。今回新たに発表されたUniversity of Edinburghとロールス・ロイスの共同プロジェクトでは、航空分野の環境負荷低減に向け、世界初の完全ガスタービンのシミュレーション解析の実用化を目指す。
英国は今後も産学官の協力を強化し、革新的技術の実用化と経済競争力の強化を推進していく方針だ。
【英文記事】UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation:UKRI)
https://www.ukri.org/news/uk-businesses-and-academia-partner-up-in-cutting-edge-research/
(13) 英国の公共サービス向けAI開発:優秀な技術者向け100万ポンドのフェローシップ応募開始
2025年7月11日, 英国政府は、AI技術を活用して公共サービスの改革を進めるため、新たに「オープンソースAIフェローシップ」を創設した。これは、米テクノロジー企業Metaから100万ドルの資金提供を受け、英国の国立AI研究機関であるアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute)が運営する。フェローシップは12か月間で、参加するAI専門家は政府内でAIツールの開発に取り組む。
政府は、これにより優秀なAIエンジニアを招き、行政手続きの効率化や国家安全保障の強化、生産性の向上を目指す。開発されるAIツールはすべてオープンソースとして公開され、公共の利益に役立てられる予定である。
特に、Metaの提供するオープンソースAIモデル「Llama 3.5」などを活用し、都市計画の承認手続きの迅速化や、国家安全保障のための翻訳ツール、公務員の文書要約・議事録作成支援ツール「Humphrey」の拡張が想定されている。政府はこれらのAIツールを通じて、最大450億ポンドの生産性向上効果を見込む。
すでに政府では、AIを活用したカスタマーサポートツール「Caddy」が一部で導入されている。Caddyは、市民向けの相談窓口である「Citizen’s Advice」と共同で開発されたもので、電話対応時間を半減させ、回答の8割が修正不要という効果を上げている。現在は中央政府の助成金審査業務にも使われ始めており、業務の迅速化と判断の一貫性向上に貢献している。
政府はさらに、各省庁でAI導入を促進するための情報共有プラットフォーム「AIナレッジハブ(AI Knowledge Hub)」の拡充にも着手。実際の活用事例やAIツール、プロンプトの共有を進め、AIの利活用を「試験導入」から「本格運用」へと押し上げる考えだ。
フェローシップは2026年1月に開始され、1年間で開発されたすべてのAIツールはオープンソースとして公開される予定。対象分野には、安全な政府内AIアシスタント、法令・政策対応ツール、緊急時にも稼働可能なオフラインAIシステムなどが含まれる。
政府はAIを「公共の利益のために使うべき技術」と位置づけており、Peter Kyle科学技術大臣は「このフェローシップは、アイデアだけでなく実際のツールを生み出すことを重視する。政府の業務改善に直結する実践的な取り組みだ」と強調する。
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
(14) 英国高等教育の欠陥:技術者育成の欠如
2025年7月11日、英国の大学からの工学系卒業生の不足が深刻で、労働市場の需要に応えられていないと指摘されている。これは労働党政権が経済再生の最重要課題としている「技能労働力の確保」にとって大きな問題である。入学には数学や物理のAレベルが必要で、特に女性や恵まれない層の進学の妨げとなっている。
英国の工学系学生は全体の約6.1%にとどまり、これは求人の25%に対して著しく少ない状況である。女性の工学系学部進学率は約18.5%で、特に物理や数学の科目がネックになっている。これに対し、一部の教育機関は動機や潜在能力を重視した入学方法を導入し、多様性の向上を目指している。
工学教育と労働市場のミスマッチが続く中、大学の拡大は資金不足で困難であり、特に社会的に不利な層へのアクセスに悪影響が出ている。多様性向上や教育システムの見直しが急務とされている。
【英文記事】University World News
https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20250711100249853
(15) FP10:英国の参加意識高まる中、準参加国が基礎研究の重要性を強調
2025年7月15日、欧州委員会によるFramework Programme 10(FP10)の策定が近づく中、英国・カナダ・スイス(ホライズン・ヨーロッパの加盟国ではないが参加している準参加国)の大学団体が、次期Horizon Europeに向けた共同ビジョンをvon der Leyen委員長宛の書簡で表明した。
ラッセルグループ(英国)、U15 Canada(カナダ)、swissuniversities(スイス)は、FP10が「卓越した基礎研究への的確な支援」、「これまでの共同研究の継続的な発展」、「準参加国が早期に参加できる透明な仕組み」を備えるべきだと主張している。
今回の書簡は、ラッセル・グループが発表した英国のホライズン・ヨーロッパ参加状況に関する最新報告にあわせて発表されたもの。(EU離脱に伴う制度面の不透明さによる)2021〜23年の不確実性による参加率低下を経て、英国の大学はUK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)や欧州の研究機関と連携し、研究者への研修や出張支援などを通じて再参加を促進。最新データによると、2024年の第1の柱では英国の研究者が欧州研究会議(European Research Council)の助成で顕著な成果を収めており、たとえばAdvanced Grantの採択件数では全体の中で最多となった。
ラッセル・グループなどは、こうした実績を踏まえ、FP10が引き続き基礎研究を重視し、すべての準参加国が公平に参加できる設計となるよう求めている。また、欧州競争力基金がFP10を補完するものであり、置き換えるものではないとEUが明言したことや、量子研究分野などで準参加国の参加機会が広がっている点を歓迎した。
ラッセル・グループのCEOであるTim Bradshaw博士は、「英国の大学はホライズン復帰に向けて多くの努力をしてきた。ERCのデータは、英国の研究者が再び欧州の協力において中心的役割を担っていることを示している。今こそ、FP10を通じてこうした勢いを維持・発展させ、EUと準参加国がともに革新的成果を実現できるようにすべきだ」と述べた。
FP10に関する共同声明書簡:
【英文記事】ラッセル・グループ:
【関連記事】(抜粋)
2025年7月14日、欧州連合(EU)の研究大臣9名が、次期ホライズン・ヨーロッパにおいて、独立した共同研究の柱を設けることを支持する書簡を、研究担当欧州委員Ekaterina Zaharieva氏に送付した。
この書簡は、スペインとドイツの研究大臣が主導したもので、両国は共同研究を支援する現行のホライズン・ヨーロッパの「第2の柱」において最も積極的に活動している国々である。
大臣たちは、共同研究の価値を強調し、「共同研究と競争および卓越性の原則は、EUが資金を提供する研究・イノベーションプログラムの核であり続けなければならない」と主張している。
【英文記事】Science Business:
(16) UKRI戦略「Transforming Tomorrow Together」の進捗報告書(概要)
2025年7月15日、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は「Transforming Tomorrow Together」戦略の進捗報告書を発表した。
この報告書は、UKRIのパフォーマンスと財政状況についての概要をまとめ、議会に提出されたものである。戦略に掲げた6つの主要目標ごとに成果が報告されている。
【英文記事】UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UUK)
https://www.ukri.org/news/ukri-has-published-its-2024-to-2025-annual-report-and-accounts/
(17) 大学の学費が実質価値3分の2の落ち込み
2025年7月16日、英国の研究集約大学で構成されるラッセル・グループは、授業料および政府補助金の実質的価値が年々低下していることが大学財政に深刻な打撃を与えているとする新たな分析を公表した。
今回の報告書によれば、来年度の学部課程における年間授業料の上限額(名目上9,535ポンド)は、実質約6,700ポンドの価値にまで落ち込んでおり、2017年と比較して26%の実質減少となる。とくに2021年から2025年にかけてはインフレ率の高騰と授業料の据え置きが重なり、その価値の下落が急激に進んだ。
さらに、大学教育を支援する政府補助金「Strategic Priorities Grant(SPG)」も、2018/19年度から2025/26年度の間に実質で19%の減少。支給総額は12億9000万ポンドから13億5000万ポンドへと 数字的にわずかに増加したものの、インフレ調整後では減額とされている。
これらの要因により、英国の大学は国内学生の教育コストを賄いきれず、教育の質と研究基盤の維持に深刻な影響が及び始めている。研究面では、「質に基づく研究(quality-related research: QR)」資金が実質15%減となり、助成金による研究費用の回収率も悪化。結果として、大学が独自に研究資金を補填する額は2016/17年度の39億ポンドから、2023/24年度には62億ポンドにまで膨れ上がっている。
このような財政状況はすでに大学側の経営判断に影響を与え始めており、コースの縮小や研究投資の見直しといった「難しい決断」を迫られているという。また、政府の移民白書発表以降、留学生の募集にも不透明感が広がり、大学にとって最大の教育・研究の赤字補填の資金源である留学生収入にもリスクが生じている。
ラッセル・グループのDr.Hollie Chandle政策担当部長のコメント:
「来年度の授業料引き上げ決定は歓迎すべき動きであるが過去10年近くの授業料凍結と物価上昇、運営コスト増、政府支援の減少により、現場は極めて厳しい状況にある。」
同氏は、大学が持つ教育・研究・地域連携の力を活かし、英国の経済成長や社会的流動性に大きく貢献できると強調した上で、今後の政策として以下の措置を政府に求めた:
ラッセル・グループは、これらの措置が「大学の持続可能性を守り、英国の高等教育と研究の将来に前向きなメッセージを送ることになる」とし、政府との協働による安定した資金制度の構築を訴えている。
【英文記事】ラッセル・グループ:
(18) 英国政府、ライフサイエンス産業の成長戦略を発表
2025年7月16日、英国政府は、ライフサイエンス産業を今後10年間でさらに成長させる新たな戦略を発表した。これは政府の産業戦略の柱の一つとして、科学とイノベーションを活用し、経済成長と予防医療に重点を置いたNHSの実現を目指すものである。
ライフサイエンス産業はすでに年間約1,000億ポンドの規模を持ち、約30万人を雇用する重要分野である。本計画は、最新の研究成果を治療や診断の現場に迅速に反映させ、国内での雇用創出や健康改善、地域経済の活性化につなげることを目的とする。
3つの柱と主な施策
計画は以下の3つの柱に基づき、計20億ポンド超の公的投資(UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)・国立医療・ケア研究機構(National Institute for Health and Care Research: NIHRを含む)により支援される:
具体的なアクションとして、以下の6点が挙げられている:
本計画は、政府の「10年健康計画」と整合をとり、250以上の関係機関(医療従事者、産業界、学術界など)の意見を反映して策定された。ライフサイエンスは、政府の8大重点産業の一つと位置付けられており、経済成長と健康の両面から国の発展を支える。
AIを含む技術革新は研究・診断・治療・製造のすべてに影響を及ぼしており、グローバルな競争力強化に不可欠とされる。
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
https://www.gov.uk/government/news/life-sciences-sector-plan-to-grow-economy-and-transform-nhs
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2025年7月16日、英国政府は、医療研究における主要資金提供機関である国立医療・ケア研究機構(National Institute for Health and Care Research: NIHR)を抜本的に改革すると発表した。これは、ライフサイエンス産業の成長を目的とした政府の新たなセクター戦略の一環である。
この戦略では、今後10年間でライフサイエンス分野に20億ポンドを投資する計画が示されており、NIHRにはこれまでの「健康」重視に加えて、経済成長への貢献が求められるようになる。
NIHRには今後、「健康と成長の二重の使命」が課され、健康成果の向上と並行して、経済効果を最大化する活動への重点化が求められる。政府はまた、NIHRのガバナンス改革として、理事会に非業務執行取締役を増員し、産業界による新たな助言機関を設置するとしている。
さらに、臨床試験などの商業的研究の成果は、業界と合意した主要業績指標(KPI)で測定され、NIHRはその進捗を英国の保健担当大臣に報告することになる。
このセクター戦略では、UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)およびNIHRに対し、科学的発見を現実の医療や産業へと応用する橋渡し研究(translational research)の強化が求められている。
具体的には、UKRIは「生物医学促進プログラム(Biomedical Catalyst):UKRIの一つであるInnovate UKが運営する研究支援プログラム」を強化し、バイオ・メドテックなどの分野の中小企業支援を拡充する。一方、NIHRでは、NIHR 研究開発イノベーション支援機構(NIHR R&D Innovation Catalyst)を新設し、UKRIなどで開発された技術を医療・ケア現場のニーズに即して導入する役割を担う。
政府はこの戦略で、R&D投資の重点を「予防」にシフトする方針も示した。これにより、医療研究会議(Medical Research Council: MRC)とNIHRは、身体的・精神的な長期疾患の予防、早期診断、治療への支出割合を増やす予定である。
MRCのPatrick Chinnery議長は、「好奇心主導型の基礎研究を、予防・診断・治療に役立つ革新へと加速的に橋渡ししていく」と述べており、学術研究と産業との接続が一層強化される見込みである。
【英文記事】Research Professional News
(19) 2022/23年度の英国大学卒業生の進路と収入に関する統計
2025年7月17日、高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)が公表した公式統計によると、2022/23年度の大学卒業生のうち、卒業から15ヶ月後にフルタイムで雇用されていた割合は59%であった。これは過去2年間(61%)より低いものの、コロナ禍 に調査された2018/19年度および2019/20年度の卒業生よりは高い結果であった。
その他の進路
英国で就職した英国人卒業生のうち、76%が高スキル職に就いていた。これは科学系科目の卒業生(82%)の方が、その他の卒業生(72%)よりも高い割合であった。
英国のフルタイム雇用者の全体の給与の中央値は年間28,500ポンドで、前年の27,500ポンドから増加した。科学系科目の卒業生の中央値給与は29,498ポンド、非科学系科目の卒業生は27,998ポンドであった。最も高かったのは医学・歯学系の卒業生(37,924ポンド)で、メディア、ジャーナリズム、コミュニケーション系の卒業生が最も低い(24,925ポンド)結果となった。
女性卒業生はパートタイム雇用に就く可能性が高い一方で、男性卒業生よりも失業する可能性が低いことが示された。フルタイム雇用者の中で、年間33,000ポンドを超える収入を報告したのは男性卒業生の方が多く、一方、女性卒業生はそれ以下の収入を報告する割合が高い傾向があった。
卒業後の活動について、英国の学士課程卒業生の83%が「有意義である」と回答した。74%が「将来の計画に合致している」と感じ、65%が「学習したことを活用している」と回答した。
この統計は、英国最大の年間社会調査である「卒業生進路調査(Graduate Outcomes Survey)」の結果に基づいている。2022/23年度の調査では、917,610人の卒業生が対象となり、358,045人から有効な回答が得られ、回答率は39%。この調査は、卒業から約15ヶ月後の卒業生の活動について尋ねている。
本日公表された公式統計には、国の高レベルの数字に加え、大学ごとの内訳、専攻、卒業生の個人的特性、雇用形態や継続学習の種類といった詳細なオープンデータが含まれている。卒業生の個人的特性や高等教育の経験に関するデータは、HESA学生記録に基づいている。2022/23年度の卒業生に関するデータは、2022/23年度に初めて使用された新しい学生データモデルに基づいている。
Graduate Outcomes 2022/23:Summary Statistics – Summary:https://www.hesa.ac.uk/news/17-07-2025/sb272-higher-education-graduate-outcomes-statistics
【英文記事】高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)
https://www.hesa.ac.uk/news/17-07-2025/88pc-2022-23-graduates-in-work-or-further-study
(20) 英国大学出願者数が過去最多に ― UCASが最新データを公表
2025年7月17日、英国の大学出願を取りまとめる大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS)は、2025年6月30日時点の学部課程出願状況に関する最新データを公表した。それによると、英国18歳の出願者数は32万8,390人に達し、過去最多を記録。前年の32万1,410人から2.2%の増加となった。
同時点での全体の出願者数(年齢・出身地を問わず)は66万5,070人で、2024年から1.3%の増。このうち海外からの出願者(学部課程)は13万8,460人で、前年より2.2%増加している。
出願締切前の1月に申請を行った学生のうち、94.5%が少なくとも1校からオファー仮合格通知を受けていることも明らかになった。UCASの報告によると、今年大学やカレッジが出した仮合格数は過去最多の200万件超で、前年から3.8%の増加。特に英国18歳出願者に対しては仮合格率が80%(+1.2ポイント)と最も高く、一方で非EUの海外からの出願者の仮合格率は63.5%と最も低い水準にとどまっている。
国内の出願者に関しては、イングランド(+1.1%)、スコットランド(+1.3%)、北アイルランド(+1.5%)で増加が見られた一方、ウェールズは0.6%の減少。また、成人学生層(21歳以上)の出願者は前年から3.8%減の8万6,310人となった。
海外からの出願では、中国からの出願者数が3万3,870人と過去最多を記録(前年比+10%)。他にもアイルランド(+15%)、ナイジェリア(+23%)、アメリカ(+14%)など、主要国からの出願が軒並み増加している。
学問分野では、STEM(理工系)への関心が引き続き高く、工学・技術分野への出願が前年比+13%、数学分野も+6%増加。また、英国全体で経済的に不利な地域からの18歳出願者数も増加し、イングランド(+1.5%)、ウェールズ(+4.3%)、スコットランド(+5.2%)、北アイルランド(+1.6%)でそれぞれ増加している。
UCASの最高責任者であるJo Saxton氏は、「若者の大学進学に対する意欲の高さと、大学側の受け入れ体制の強化が反映された結果だ」とコメント。「結果発表を控え、第一志望に進学できる学生が多数いる一方“プランB”の準備も大切。出願時に選んだ5つの志望校を再確認しておくことが重要だ」と学生と保護者に呼びかけた。
2025 cycle applicant figures – 30 June deadline(詳細): https://www.ucas.com/data-and-analysis/undergraduate-statistics-and-reports/ucas-undergraduate-releases/applicant-releases-for-2025-cycle/2025-cycle-applicant-figures-30-june-deadline
【英文記事】大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service: UCAS):
(21) 欧州委、次期研究・教育予算案を発表:Horizon EuropeとErasmus+に大幅増額も、制度の不透明さに懸念も
2025年7月18日、欧州委員会は2025年7月16日に2028年から2034年までのEU次期「多年度財政枠組(Multiannual Financial Framework: MFF)」の提案を公表し、研究と教育分野への大幅な予算増を盛り込んだ。この中で、研究・イノベーションを担う「Horizon Europe(ホライズン・ヨーロッパ)」と学生交流事業「Erasmus+(エラスムス・プラス)」の予算増が目玉となっており、欧州の大学・研究界からは歓迎の声が上がっている。
提案された新MFFの総額は約2兆ユーロで、このうち1,753億ユーロがホライズン・ヨーロッパに、408億ユーロがErasmus+に充てられる見込み。これは現行の2021〜2027年の枠組みでのホライズン・ヨーロッパ(955億ユーロ)、Erasmus+(260億ユーロ)と比較して大幅な増額となる。
この提案により、現在「FP10(第10次フレームワーク・プログラム)」と呼ばれている次期のEU研究・イノベーション計画も、引き続き「ホライズン・ヨーロッパ」の名称で実施されることが確認された。研究者コミュニティからは、「名称を変更せず、継続性を持たせたこと」は重要な成果とみなされている。
ホライズン・ヨーロッパは今後、以下の4本柱で構成される予定:
また、ホライズン・ヨーロッパは今回新設される「欧州競争力基金(European Competitiveness Fund: ECF)」との連携が示されており、ECF全体の予算4,090億ユーロの中から1,753億ユーロが割り当てられる。一方でこの“緊密な連携”については、法的枠組や資金配分ルールの不透明さが指摘されており、研究界からは「独立性を保ちつつ、なぜ連携が必要なのか疑問」との声もある。
研究大学連盟(League of European Research Universities: LERU)のKurt Deketelare事務局長は、Ekaterina Zaharieva研究・スタートアップ担当欧州委員の交渉力を高く評価しつつ、第2の柱(競争力と社会)における透明性の欠如や、マリー・キュリー・プログラムへの政策的な誘導の強まり、ERC代表の任期短縮などを懸念材料として挙げている。また、英国とスイスなど、過去にHorizon Europeに準加盟していた国々に対しては、「新たなFP10でも簡素かつ迅速な手続きで再加盟を可能にすべきだ」と主張した。
Erasmus+に関しては、予算が260億ユーロから408億ユーロへと大幅に増額される予定であり、欧州大学協会(European University Association: EUA)もこの点を歓迎。ただし、予算の内訳や、他のEU制度との資金的な連携方法については不透明な点も多く、「欧州連帯隊」や国際的な学生交流支援(従来は別制度が担当)も同予算内に組み込まれる予定であることから、実質的な増額効果がどの程度あるかは不明としている。
さらに、特定分野への“方向付けられた資金(directional funding)”や、欧州大学アライアンスへの過度な政策誘導を懸念する声もある。EUAは「アライアンスには、独自の学術的使命を自由に発展させる自律性が保障されるべき」と強調している。
なお、今回の提案では、文化・創造産業・メディア分野への支援を目的とした新たな「Agoraプログラム」(予算90億ユーロ)も創設される見通しで、偽情報対策やメディア多様性の保護が重視されている。
今回の欧州委員会の予算提案は、研究・教育分野に対する継続的な支援の意思を示すものとして評価されているが、最終的な制度設計や資金の使途については今後2年間にわたる議会と加盟国との交渉で大きく左右されることになる。研究界は、制度の透明性や参加のしやすさが確保されるよう、引き続き注視と働きかけを続けていく方針だ。
【英文記事】University World News
https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20250718185439298
(22) 英国の研究の第一人者たちが、世界最高の才能の誘致を主導
2025年7月18日、英国政府は、今後5年間で5,400万ポンドを拠出する「グローバル・タレント基金(Global Talent Fund)」を通じて、世界中からトップレベルの研究者60〜80人とその研究チームを英国に招致する計画を発表した。対象となる研究分野は、ライフサイエンスやデジタル技術など、英国の新たな産業戦略で重視される8分野である。
この基金は、英国4地域の12の主要大学・研究機関に均等に配分され、各機関が独自の戦略に基づき、研究者の採用、移住、ビザ取得支援などに活用する。
この取組は、1億1,500万ポンド規模の国際人材誘致策の一部であり、他にもAI分野に特化した「チューリングAIフェローシップ」や、王立協会(Royal Society)や王立工学アカデミー(Royal Academy of Engineering)による迅速な研究助成制度などが含まれている。また、英国の「ホライズン・ヨーロッパ」への参加により、研究者は「Choose Europe」制度を通じてさらなる支援を受けることができる。
選定された12機関:
この基金は、研究費だけでなく、移住費・ビザ費用も全額支援することで、移住に関する障壁を取り除き、英国を世界の科学・研究分野における中心地とすることを目指す。
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT):
(23) 2025年7月22日より施行される移民法変更最新情報
2025年7月22日付けの「IWP(移民白書)ステークホルダー・アップデート」によると、熟練労働者に関する移民規則の変更が同日施行された。
主な変更点は以下の通り:
これらの措置は、英国全体の移民システムが機能するように慎重に設計されており、海外労働力への依存を減らし、国内の労働力を育成することを目的としている 。白書で発表された広範な措置を実現するための作業が進行中であり、さらなる更新は秋に予定されている。
熟練労働者ビザの変更点
給与要件
スキル要件
熟練労働者学歴最低条件のRQF 6への引き上げに伴う移行措置
労働市場証拠グループ(LMEG)
グローバルビジネスモビリティ – 英国拡大労働者ルートの変更点
2025年7月22日より、海外企業が英国に新規支店や子会社を設立するために派遣できる労働者の数が、5人から10人に倍増された。この変更は、企業により大きな柔軟性を提供し、世界的な投資とイノベーションの目的地としての英国の魅力を高めることを目的としている。
卒業生ビザの変更点
【英文書簡】iwp_stakeholder_update__22072025162046.pdf
(24) ライフサイエンス局新会長が、より健康で豊かな英国を目指す政府のライフサイエンス推進計画を強化
2025年7月22日、英国政府は、Steve Bates 氏を「ライフサイエンス局(Office for Life Sciences, OLS)」の新会長に任命した。
この任命は、ライフサイエンス分野と政府の連携強化を掲げる「ライフサイエンス産業戦略」の即時実行策であり、同庁は今後、保健省、科学技術省に加えてビジネス・貿易省にも報告する体制となる。これにより、ライフサイエンスが経済成長と国民の健康向上の両軸において極めて重要な柱であることが明確に位置づけられた。
Bates氏は、UKバイオ産業協会のCEOを長年務め、COVID-19ワクチン・タスクフォースにも創設メンバーとして関与してきた、業界の著名なリーダーである。
OLSは現在、約120名の職員からなる政府内の部局であり、経済成長と健康向上という「変革のための計画(Plan for Change)」の中心課題に貢献している。Bates氏は、英国のライフサイエンス産業の国内外での顔として活動し、政府と産業界の円滑かつ迅速な連携を促進していく役割を担う。
この動きは、同庁が関与したBioNTechとの10億ポンドの投資契約や、UK Biobank・Our Future Health などの先進的研究支援に続くものであり、英国を世界的なライフサイエンス強国としてさらに発展させるための即時的な行動を示すものである。
この施策は、10カ年の国家健康計画と連動し、英国の科学的優位性を活かして新しい治療法や診断法を国内で生み出し、定着させることを目的としている。約30万人が従事し、年1000億ポンド規模のライフサイエンス産業が、英国全土に雇用と健康の恩恵をもたらすよう支援が進められる。
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
(25) UKRI、研究成果収集サービス契約をResearchfishと更新
2025年7月23日、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は、競争入札の結果、Elsevier社傘下のResearchfishとの契約を更新し、研究成果の収集サービスを継続する。これは、公的資金の投資家としてのUKRIの責務を果たし、研究の成果が社会や経済に最大限貢献することを目的としている。
新契約では、研究者の報告負担を軽減することと技術革新の活用が重視されており、その一環として、現在UKRIは報告質問の見直しを進めている。
この見直しには、以下の関係者が関与します:
見直しの目的:
この作業は2025年秋までに完了予定で、その後の収集期間から変更が適用される。新しい質問項目のテストには研究者自身も参加し、意見が反映される予定。
UKRIはResearchfish社と連携し、データ保護に関しては法的基準を厳格に順守。契約はUKRIの法務・データ・分析チームの助言のもと、上級職員が監督する。
収集されたデータは以下の目的で活用される:
【英文記事】UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI):
https://www.ukri.org/news/update-on-research-outcomes-collection-service/
(26) ガザの奨学生40人、渡英できず 支援求める声高まる
2025年7月23日、今秋から英国の大学で学ぶ予定のガザの学生40人が、政府の手続き上の問題で渡英できずにいる。彼らは全額奨学金を得ており、University of OxfordやUCLなど約30大学が受け入れを待っている状態であるが、ビザ申請に必要な生体認証(バイオメトリクス)をガザで取得できない状況である。ガザ唯一の登録センターは2023年に閉鎖され、他国への移動も困難である。
支援者や国会議員は、政府に対しバイオメトリクスの猶予措置と安全な渡航支援を求めている。他国(アイルランド、フランスなど)は既に学生の退避を支援しており、英国政府の対応の遅れが批判されている。中には待機中に亡くなった学生もいるとされ、時間との闘いとなっている。政府は「要請を検討中」としている。
【英文記事】Guadian紙:
(27) 下院決済委員会の警告:UKRIは説明責任と規模拡大の目標があいまい
2025年7月23日、英国下院決算委員会(Public Accounts Committee: PAC)は、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)に関する調査報告書を発表した。その中でUKRIには「その成果を評価するための明確な目標が定められていない」とし、研究の商業化促進にも課題があると指摘があった。
報告書によれば、UKRIおよび科学・イノベーション・技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)は、国際競争の激化と財政制約の中で、英国の研究・イノベーションの商業的拡大を支援する上で深刻な課題に直面しているとされている。特に大学の財政難が、研究やイノベーション活動に影響を及ぼす可能性があるとも警告している。
委員長のGeoffrey Clifton-Brown議員は「UKRIが政府の優先事項を実現するための明確な組織となるには、まだ多くの改善が必要」と述べた。また、UKRIとDSITは英国が量子技術やエンジニアリングバイオロジーの分野で世界をリードする可能性を認識している一方で、スキルギャップや企業のスピンアウトが早すぎるといった構造的問題が依然として残っていると指摘している。
さらに報告書は、政府全体で研究開発投資に対する統一的な方針や優先順位が欠けている点も指摘。UKRI自体も、達成すべき具体的・測定可能・現実的・期限付きの目標(key performance indicator: KPI)を設定しておらず、進捗を評価するのが困難であるとされた。そのため最大10個の明確な目標を設定すべきだと勧告している。
また、UKRIのITシステム刷新が2019年から遅れており、現代的な組織にふさわしいIT基盤が整っていないことも問題視された。PACは、来年2月までに進捗状況の報告を求めている。
これに対しDSITの報道官は、R&Dによる経済成長の推進と革新的ビジネスの拡大支援に取り組んでおり、UKRIに対しても測定可能な新目標を今後導入すると表明。UKRIもまた、PACと会計検査院(National Audit Office: NAO)の報告を歓迎し、DSITと連携して対応にあたると述べている。
【英文記事】Research Professional News:
(28) 卒業生が世界中の大学の資金をどのように増やしているか
2025年7月23日、英国がポスト・ブレグジットのアイデンティティを模索する中で、「グローバル・ブリテン」として確立された分野の一つが「慈善活動」である。追跡が難しい経済活動であるが、中でも海外大学への寄付という形が、英国の国際的な性格を象徴している。
主なポイント:
2023年には、英国から海外の大学が設立した専用の慈善信託を通じて、1億5500万ポンド以上が流れ込んだ。これは10年前の約4倍の額であり、過去10年間で合計約6億9000万ポンドがこれらの仕組みを通じて送金されている。
この傾向は、英国が静かに国境を越えた慈善活動のハブとなり、国際的な卒業生の寄付が専門的かつ急速に成長している分野であることである。
現在、英国には約100の慈善信託があり、少なくとも21カ国の教育機関を支援している。これらの信託により、英国在住の卒業生は海外の母校に税制優遇措置を受けて寄付することが可能。また、英国の財団が英国登録の慈善団体にのみ資金を拠出する場合があるため、これらは非英国の大学にとって重要な資金調達インフラとなっている。
ごく一部の信託(特に米国の主要機関に関連するもの)が年間100万ポンド以上を継続的に調達しており、過去10年間で寄付の55%が米国に流れている。
新しい信託も急速に成長しており、設立されたばかりの団体でも構造的な不利がなく成果を出している。
信託の国の分布は、米国、イスラエル、南アフリカ、オーストラリアといった英国との深い歴史的なつながりを反映している。
過去10年間、国境を越えた協力が圧力にさらされ、大学が批判に直面したにもかかわらず、国際的な卒業生からの寄付は減るどころか増加している。これは、国境や政治を超えて続く市民的および組織的な忠誠心を示している。
慈善活動における英国の役割は、ポスト・ブレグジットの「グローバル・ブリテン」のアイデンティティの一部として確立されている。これらの慈善信託は、人々、機関、国、文化、そして過去の教育経験と未来の世界的な影響を結ぶ重要な架け橋として機能している。
【英文記事】 University World News:
https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20250722104441669
(29) 学生局: 学生・大学・納税者の利益を促進する事業計画を発表
2025年7月24日、学生局(Office for Students: OfS)は2025/26年度の事業計画を発表した。この計画は、学生、大学、カレッジ、そして納税者にとっての利益を促進することを目的としている。
主な内容:
【英文記事】学生局(Office for Students: OfS):
(30) 英国のスキル不足に関する最新データ(2024年調査)
2025年7月24日、教育省(Department for Education: DfE)が発表した2024年版「雇用主スキル調査(Employer Skills Survey)」によると、全求人に占めるスキル(仕事に必要な能力:経験、技術、実践力、問題解決力など)不足による欠員の割合が2022年の36%から2024年には27%へと改善された。ただし、2017年(Covid-19以前)では22%だったことと比べて依然として高く、スキル不足の構造的な課題は続いている。
主な結果
業種別では、建設、保健・介護、製造業で深刻なスキルミスマッチが継続。
企業規模別では:
小規模企業は人材獲得のネットワークや資源に乏しく、「スキル格差による二極化」が生じていると指摘。
国立大学産業センター(National Centre for Universities and Business: NCUB)のCEOであるJoe Marshal博士のコメント:
改善傾向はあるが慢性的なスキルミスマッチは依然として英国経済の成長を妨げている。大学は人材育成において中心的な役割を担うべきだが、産学連携の深化と長期的投資が不可欠であり、特に中小企業向けの支援強化が必要。
スキル供給体制の強化に向け、以下の施策をNCUBから提言:
Calendar Year 2024 Employer Skills Survey: https://explore-education-statistics.service.gov.uk/find-statistics/employer-skills-survey/2024
【英文記事】国立大学産業センター((National Centre for Universities and Business: NCUB)
(31) 英国大学、ビザ基準強化で一部の国の学生受け入れ停止
2025年7月25日、英国の大学は現在、移民法の見直しに伴って学生ビザの拒否率の基準強化に対応するため、留学生の受け入れ方針を見直している。Keir Starmer首相の白書案では、BCA(Basic Compliance Assessment:基本適格評価)の各指標が5ポイント厳格化され、「グリーン」カテゴリーを維持するにはビザ拒否率を5%未満に抑える必要が出てきている。
こうした動きの中、London Metropolitan Universityはバングラデシュからの学生募集を停止する決定をした。同国からの学生のビザ拒否率が高く(全体の60〜65%)、BCA基準を安全圏内で維持するための措置だとしている。同大学は、すでに発行したCAS(入学許可証)も取り下げ、学生が金銭的損失を被らないよう配慮したと述べている。
大学側は、「これは容易な決定ではなかったが、責任あるスポンサーとしての対応であり、学生の将来的なビザ取得への影響も考慮した」と説明している。
同様の対応は他大学にも広がっており、Glasgow Caledonian Universityは、新BCA基準に準拠しない恐れのあるコースでの留学生募集を停止。またUniversity of Sunderlandも、スーダン、イラン、イラク、シリア、イエメンからの新規学生募集を一時停止した。University of Sunderlandは、「UKVI(英国ビザ・入国管理局)のライセンスの下、状況に応じて適切に採用地域を見直している」と述べている。
こうした動きは、今回の移民白書の目的が学生の制限ではなく、大学側の対応や姿勢を見直させることにあることを表している。大学がビザ審査に慎重になり、高リスク地域からの募集を自主的に調整するよう促すのが狙いである。
【英文記事】 Pie News:
https://thepienews.com/london-met-withdraws-from-bangladesh-as-new-bca-thresholds-loom/
(32) REF2029の行動指針(CoP)の承認手続きが公表
2025年7月28日、REF2029に参加するすべての高等教育機関は、研究者の選定や研究成果の帰属に関する手続きの透明性、公平性、包括性を確保するための「Code of Practice(CoP)」を策定し、承認を受ける必要がある。
承認プロセス
【英文記事】 REF2029:
https://2029.ref.ac.uk/publication/code-of-practice-approvals-process/
(33) 「お飾り学位」の蔓延で大卒者の生活保護受給者63万人超に
2025年7月28日、英国で大学卒業者の63万人以上が生活保護を受給していることが明らかとなり、「ミッキーマウス学位」(就職に役立たない学位)の増加に懸念が高まっている。
新たな統計によると、受給者のうち約12%が学位保持者で、無資格者の16%に迫る水準。卒業者の就職率は大卒でない者より高いものの、正規雇用率は低下傾向にあり、最低賃金レベルで働く者も増加。多額の学費を負担しても、十分なスキルや収入を得られない現実に批判が集中している。
保守党議員や教育関係者は、「学生に過度な期待を抱かせ、実際には職に就けず福祉に頼る結果になっている」として、低価値の学位や福祉制度の見直しを訴えている。
一部大学は財政難から、Aレベル成績が振るわなかった学生向けに、「目新しいが学術性に乏しい」とされるコースを導入しており、若者の将来より大学の資金確保を優先しているとの批判が強まっている。実際にUCASのクリアリング制度では、22大学がeスポーツ、9大学がSNS、3大学がデジタルコンテンツ制作、1大学がラップとMCのコースを提供していた。
【英文記事】Daily online:
https://www.dailymail.co.uk/news/article-14948695/graduates-BENEFITS-Mickey-Mouse-degrees.html
(34) 英国各国にR&D支援 強み生かした経済成長へ
2025年7月29日、英国政府は、地域の研究開発(R&D)とイノベーションを強化するため、最大5億ポンド規模の「地域イノベーション・パートナーシップ基金(Local Innovation Partnerships Fund)」を創設し、英国全土の地方自治体に最低3,000万ポンドずつの資金を配分すると発表した。これにより、AIやライフサイエンスなど各地域の強みを活かした研究や産業振興が可能となる。
この資金は、イングランドの7地域に加え、スコットランドのグラスゴー都市圏、ウェールズのカーディフ首都圏、北アイルランドのベルファスト/ロンドンデリー地域にも新たに提供され、今後さらに対象地域が拡大される予定。UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)が運営を担い、産業界や大学との連携によって地域の課題解決や経済成長を目指す。
英国各地で素晴らしい研究が行われており、この基金は地域の専門性を活かし、経済成長と生活の質の向上につなげるチャンスを与える。
本基金は地域が独自の優先分野を定め、大学・産業界・自治体の連携で変革をもたらす仕組みであり、今こそその重要性が増している。
【英文記事】科学イノベーション技術省(Department for Science, Innovation and Technology: DSIT)
(35) ホライズン・ヨーロッパ保証制度:2025年11月27日最終期限迫る
2025年7月29日、英国が2024年1月よりホライズン・ヨーロッパに正式参加したことを受け、英国政府は、2021年、2022年、2023年のホライズン・ヨーロッパ・ワーク・プログラムの公募で採択された英国の研究者やイノベーターへの「ホライズン・ヨーロッパ保証制度」による資金提供の最終申請期限を2025年11月27日午後4時(英国時間)と発表した。
この保証スキームは、英国の研究者やイノベーターが、英国のホライズン・ヨーロッパへの正式参加が交渉中であった期間も、欧州委員会(European Commission: EC)から採択通知を受けたプロジェクトに対して資金を受け取れるように導入された。
2021年、2022年、2023年のワーク・プログラムで採択されたものの、まだ保証制度への申請を行っていない方は、UKリサーチ・イノベーション (UK Research and Innovation: UKRI) に2025年11月27日午後4時までに申請する必要がある。
ECからの採択通知が遅れる場合でも、通知から最低3か月の申請期間が確保されるため、引き続き保証制度からの支援を受けることが可能。
すでに保証制度によって資金提供を受けているプロジェクトは、中断なく引き続き支援を受けられる。
科学閣外担当大臣のPatrick Vallance 氏のコメント:
ホライズン・ヨーロッパ保証制度が英国の研究者、企業、機関にとって貴重な資源であり、まだ対象となる人々に対し期限までに申請するようにお願いする。今後はホライズン・ヨーロッパへの直接参加を通じて、英国の成功を最大化することに注力していく。
UKRIの国際協力推進責任者であるChristopher Smith教授のコメント:
保証制度が英国の研究者やイノベーターを支援し、国際的な科学とイノベーションの最前線に留める上で極めて重要であり、対象者に期限までにこの保証制度を活用し、ホライズン・ヨーロッパへの完全な参加がもたらす機会を最大限に活用していく。
これまでに、この保証制度は4,300件以上のプロジェクトに21.8億ポンド以上の資金を提供し、英国のイノベーターや研究者が地球規模の課題に取り組むことを支援してきた。これには、パーキンソン病患者を支援するAI搭載ARツールや、排出量削減、組織犯罪対策に関する欧州の主要な協力プロジェクトなどが含まれている。
英国はホライズン・ヨーロッパに全面的に参加することになり、英国の研究者、企業、イノベーターは、世界最大規模の共同研究・イノベーションプログラムに自信を持って直接応募できるようになった。UKRIは、英国がホライズン・ヨーロッパへの参加を完全に受け入れる中で、円滑な移行を確保することに引き続き取り組んでいく。
【英文記事】UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)
https://www.ukri.org/news/horizon-europe-guarantee-application-deadline-approaching/
(36) 英国王室天文官に女性が初めて任命
2025年7月30日、英国王室天文官(Astronomer Royal)に、Michele Dougherty教授が任命された。1675年の設立以来、初の女性就任者となった。Dougherty氏は現在、英国科学技術施設会議(Science and Technology Facilities Council: STFC)の議長を務めており、また英国物理学会(Institute of Physics:IOP)の次期会長も決定している、宇宙探査や惑星科学の分野で国際的に高く評価されている。
この役職は英国王室の天文学顧問としての名誉職で、今回の任命はチャールズ3世により7月30日に承認された。前任のMartin Ree卿は30年の任期を経て退任。
Dougherty氏は、女性初の任命について「子どもたちが自分に似た人がこうした職に就くのを見ることで、視野が広がる」と意義を語った。
【英文記事】Research Professional News:
(37) 教育機関での語学学習機会が破壊的に激減
2025年7月31日、英国のシンクタンク高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI)は、語学教育の深刻な衰退に警鐘を鳴らす新たな報告書「The Languages Crisis: Arresting decline」を発表した。報告書の著者は、University of Oxfordで古典語を研究する博士課程学生のMegan Bowler氏で、語学アプリ「Duolingo」がスポンサーとなっている。
報告書は、英国における語学教育の現状について、初等・中等教育から高等教育に至るまでの幅広いデータを提示している。2024年のAレベル試験で語学科目(現代外国語、古典語、ウェールズ語〈第二言語〉、アイルランド語)を選択した割合はわずか2.97%にとどまり、フランス語・ドイツ語・古典語を合わせた受験者数は、体育の受験者数を下回っている。また、貧困地域における中等教育修了試験(General Certificate of Secondary Education: GCSE)での語学選択率は、裕福な地域に比べて20ポイント低く(69%に対し46~47%)なっており、地域格差も深刻だ。
さらに、語学教師の採用も極めて困難な状況にある。政府の目標に対し、2024年にはわずか43%しか採用されておらず、慢性的な教師不足が続いている。高等教育でも語学の学位課程の廃止が相次いでおり、2014年以降、1992年以降に創設された大学のうち17校が語学学位を終了、これまでに28校が語学の専攻を失った。現在、現代語の学位課程を提供する大学は英国全体でわずか10校にまで減っている。
こうした状況を受け、報告書は語学教育の立て直しに向けた10の提言を提示している。具体的には、語学教師の確保に向けた国際人材への支援制度の復活や、18歳までの語学学習の制度化、補習校や家庭内言語に対応した資格制度の整備、大学における語学提供の強化、英国手話(British Sign Language : BSL)への対応、そして国レベルでの戦略的支援体制の構築などが含まれている。
著者のBowler氏は、「AIの時代だからこそ、語学が育む思考力や文化理解力が重要になる。翻訳ツールでは代替できない知的価値がそこにある」と語る。彼女は、語学教育の衰退が「教師不足 → 授業数の減少 → 大学進学者の減少 → 大学課程の廃止 → 教師不足の加速」という悪循環を生んでいると指摘し、「今こそ戦略的介入と投資が必要だ」と訴える。
Duolingo英国代表のMichael Lynas氏も「英国の若者たちは語学への関心を持っている。必要なのは制度と学びの道筋だ」と強調。特に22歳以下の世代では、日本語、韓国語、中国語など非ヨーロッパ言語への関心が高まっており、「興味はあるが、制度が追いついていない」と述べた。
本報告書には、元教育学校担当大臣Nick Gibb氏による序文も収録されており、「語学教育の重要性はますます増している。国際社会で競争力を持つためにも、語学力の向上は不可欠だ」との考えが示されている。
HEPIのNick Hillman所長は「2020年の前回報告書から状況はさらに悪化しているが、今こそ抜本的な改革の機会である。カリキュラムや評価制度の見直しが語学教育再建の鍵になる」として、政府による再投資と政策転換を強く促している。
The Languages Crisis:Arresting Decline: https://www.hepi.ac.uk/wp-content/uploads/2025/07/The-Languages-Crisis-Arresting-decline.pdf
【英文記事】高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute: HEPI):
https://www.hepi.ac.uk/2025/07/31/new-report-shows-decline-in-formal-language-learning/
【関連記事】
2025年7月31日にHEPIがDuolingoの支援で発表した報告書は、英国における学校や大学での言語学習の「壊滅的な」減少に警鐘を鳴らしている。
ラッセル・グループの高等教育政策責任者Joanna Burton氏のコメント:
“言語教育の衰退は国家的な課題であり、国際的なつながりや貿易、研究協力、文化交流に不可欠である。また、教育制度全体の課題を克服するには、語学教員の育成と定着支援が必要であり、大学への安定的な資金提供が地域間の格差を防ぎ、言語教育の維持につながる。”
【英文記事】ラッセル・グループ:
https://www.russellgroup.ac.uk/news/response-new-hepi-report-decline-language-learning
(38) 英国医学アカデミーの次期CEO決定
2025年7月31日、英国政府のライフサイエンス局(Office for Life Sciences: OLS)の現ディレクターであるRosalind Campion氏が、2024年10月20日付で英国医学アカデミー(Academy of Medical Sciences: AMS)の次期最高経営責任者(CEO)に就任することが発表された。
Campion氏はこれまで4年間にわたり政府の研究・イノベーションの医療・介護分野への導入を主導し、EU離脱関連の政策実施や国際戦略、米国・日本での科学技術外交など、多様な政府高官職を歴任してきた。
AMSのAndrew Morris会長や政府のPatrick Vallance科学閣外担当大臣は、彼女の戦略的洞察力や国際的な経験、ライフサイエンス分野での強い関係性を評価しており、今後のアカデミーの発展に大きく寄与すると期待を寄せている。Campion氏は「医科学の進歩は患者の生活や経済・生産性の向上に貢献する」と述べ、アカデミーの使命推進に意欲を示している。
【英文記事】Research Professional News: